(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突出部は、前記カバー部材の側面部の下端から8mm以内の位置に設けられており、かつ前記カバー部材の側面部からの前記突出部の突出厚みが0.25〜1.5mmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の栓体。
前記栓本体は、体液採取用容器の開口部に圧入可能な弾性部材からなり、かつ、体液採取針が刺通される刺通部を有し、該刺通部の肉厚が1mm〜4mmである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の栓体。
前記栓本体は、体液採取用容器の開口部に圧入可能な弾性部材からなり、かつ、体液採取針が刺通される刺通部を有し、前記刺通部は、前記栓本体上面に刺通部の周囲に比べて肉厚を相対的に薄くするように凹部を設けることにより形成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の栓体。
下端に開口を有し、上端が閉じられている筒状のホルダー本体と、該ホルダー本体の上端を貫くように前記ホルダー本体に固定されており、一端がホルダー本体外に、他端がホルダー本体内に延ばされている体液採取針と、前記体液採取針の前記他端側を覆うように前記ホルダー本体または体液採取針に取り付けられている弾性材料からなる鞘を有するホルダーと、
前記ホルダーの下端の開口から挿入され得るように構成されており、かつ上端に開口を有する体液採取用容器と、前記体液採取用容器の前記開口に固定されている請求項1〜12のいずれか1項に記載の栓体とを備える、体液採取器具セット。
【背景技術】
【0002】
従来、血液などの体液を採取するのに、中空の体液採取針が固定されたホルダーが広く用いられている。下記の特許文献1には、この種のホルダーを用いた体液採取方法が開示されている。この体液採取方法を、
図10及び
図11を参照して説明する。
【0003】
まず、
図10に示すように、筒状のホルダー101と、体液採取用容器102とを用意する。
図11に断面図で示されているように、ホルダー101の上端面を貫くように、中空の体液採取針103が固定されている。体液採取針103は、両端に針先を有する。一端側の針先103aがホルダー101外に位置しており、他端側の針先103bがホルダー101内に延ばされている。また、体液採取針103のホルダー101内に位置している部分を覆うように、ゴムなどの弾性材料からなる鞘104が設けられている。
図11では、鞘104が圧縮され、針先103bが鞘104から露出している状態が示されている。使用前には、鞘104は針先103bを覆っている。
【0004】
また、体液採取用容器102の上端の開口102aを密封するために、栓体105が体液採取用容器102に固定されている。
【0005】
栓体105は、ゴムからなる栓本体106と、栓本体106の外表面を覆うように栓本体106に取り付けられたカバー部材107とを有する。栓本体106の下端部分が体液採取用容器102に圧入されて、開口102aが気密封止されている。栓本体106の上面中央には凹部106aが設けられている。凹部106aが設けられている部分の肉厚は凹部以外の部分よりも薄くされている。この肉厚の相対的に薄い部分が、体液採取針103を刺通させる刺通部である。また、カバー部材107の側面部107aの外表面には、上下方向に延びる複数のリブ107bが設けられている。リブ107bは、体液採取後に栓体105を体液採取用容器102から取り外し易くしたり、体液採取用容器が不意に転がったりするのを防止する等、体液採取用容器の取り扱い性を向上させるために形成されている。
【0006】
体液の採取に際しては、例えば、真空採血管である体液採取用容器血液を採取する場合は、体液採取針103の一端側の針先103aを血管に挿入する。血液が体液採取針内に導かれるが、鞘104が針先103bを覆っているため、この時点では体液採取針103に導かれた針血液が外部に漏洩することはない。その状態で、
図11に示すように、ホルダー101内に栓体105が固定された体液採取用容器102を挿入する。この状態で、体液採取用容器102を挿入し続けると、
図11に示すように、針先103bが刺通部を刺通する。体液採取用容器102内は減圧されているので、血液が体液採取針103を介して体液採取用容器102内に吸引される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記体液採取用容器102をホルダー101内に挿入し、血液を採取する場合、
図11に示すように、栓本体106により鞘104が圧縮されることになる。そのため、弾性材料からなる鞘104の弾発力によって、栓本体106には、矢印Aで示す方向に力が加わる。針先103bが栓本体106を刺通できていなかったり、栓本体106から抜けたりすると、血液の採取が不完全な状態で中断することとなる。従って、採血従事者は、上記体液採取用容器102が鞘104の弾発力によって押し戻されないよう、体液採取用容器102の後退を規制するように力を加えねばならない。そのため、採血従事者に大きな負担がかかる。
【0009】
上記のような採血従事者の負担を軽減するために、従来、栓本体106と体液採取針103との間の摩擦抵抗を高めることにより、体液採取用容器102が後退しないようにしている。
【0010】
しかしながら、上記体液採取針103と栓本体106との間の摩擦抵抗を高めるには、上記栓本体106の刺通部の肉厚をある程度厚くする必要がある。その結果、刺通部において、最初に体液採取針103を刺通させる際の抵抗も高くなる。従って、ホルダー101に体液採取用容器102を挿入し、体液採取針103により栓本体106を確実に刺通させるための採血従事者の負担が大きくなる。また、ホルダー101内に体液採取用容器102を挿入していった場合、体液採取針103は栓本体106の刺通部を貫く際に大きな抵抗を受け、刺通部を貫いた後には、該抵抗が急激に減少する。そのため、採血中にホルダー101がぐらつきがちになる。よって、安定にかつ確実に血液などの体液を採取することが非常に困難となる。
【0011】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、血液などの体液を採取するに際し、中空の体液採取針による栓本体への刺通を容易にかつ確実に行うことができ、しかも体液採取開始後には、鞘の弾発力による栓本体からの体液採取針の抜けが生じ難く、容易にかつ確実に体液を採取することを可能とする栓体及び該栓体を有する体液採取用容器を備えた体液採取器具セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る栓体は、筒状のホルダーに挿入される筒状の体液採取用容器の開口部に装着し、開口部を密閉するための栓体であって、体液採取用容器の開口部に固定される栓本体と、前記栓本体の外表面を覆うように栓本体に外装されているカバー部材とを備える。前記カバー部材は、少なくとも前記栓本体の外側面を覆う側面部を有する。前記ホルダーに挿入された際にホルダーの内壁と接触して摩擦抵抗を与えるように前記カバー部材の側面部の径方向外側に突出しており、ホルダー内に圧接される最大外径部分を構成している突出部が、前記側面部に設けられている。
【0013】
本発明に係る栓体のある特定の態様では、前記カバー部材の側面部において、下端に至る複数本のスリットが設けられている。
【0014】
また、本発明に係る栓体のある特定の態様では、前記突出部は、前記カバー部材の側面部を周方向に延びる環状の帯状体からなる。
【0015】
本発明に係る栓体のさらに他の特定の態様では、前記帯状体は、カバー部材側面部の径方向における最大外径が17.0〜18.5mmである。
【0016】
本発明に係る栓体のさらに別の特定の態様では、前記突出部は、前記カバー部材の側面部の下端から上方に隔てられた位置に設けられている。
【0017】
本発明に係る栓体のさらに他の特定の態様では、前記突出部は、前記カバー部材の側面部の下端から8mm以内の位置に設けられており、かつ前記カバー部材の側面部からの前記突出部の突出厚みが0.25〜1.5mmである。
【0018】
本発明に係る栓体のさらに別の特定の態様では、前記突出部の上下方向の長さが1〜8mmである。
【0019】
本発明に係る栓体のさらに別の特定の態様では、前記突出部は、前記カバー部材とは異なる材料からなり、かつ前記カバー部材の側面部に固定されている。
【0020】
本発明に係る栓体のさらに別の特定の態様では、前記突出部は、前記カバー部材と同じ材料からなり、突出部とカバー部材とは一体成形により形成されている。
【0021】
本発明に係る栓体のさらに別の特定の態様では、前記栓本体は、体液採取用容器の開口部に圧入可能な弾性部材からなり、かつ、体液採取針が刺通される刺通部を有し、該刺通部の肉厚が1mm〜4mmである。
【0022】
本発明に係る栓体のさらに別の特定の態様では、前記栓本体は、体液採取用容器の開口部に圧入可能な弾性部材からなり、かつ、体液採取針が刺通される刺通部を有し、前記刺通部は、前記栓本体上面に刺通部の周囲に比べて肉厚を相対的に薄くするように凹部を設けることにより形成されている。
【0023】
本発明に係る栓体のさらに他の特定の態様では、前記凹部の深さが4mm〜8mmである。
本発明に係る体液採取用容器は、上端に開口を有し、開口に本発明に従って構成された栓体を備える。
【0024】
本発明に係る体液採取器具セットは、下端に開口を有し、上端が閉じられている筒状のホルダー本体と、該ホルダー本体の上端を貫くように前記ホルダー本体に固定されており、一端がホルダー本体外に、他端がホルダー本体内に延ばされている体液採取針と、前記体液採取針の前記他端側を覆うように前記ホルダー本体または体液採取針に取り付けられている弾性材料からなる鞘を有するホルダーと、前記ホルダーの下端の開口から挿入され得るように構成されており、かつ上端に開口を有する体液採取用容器と、前記体液採取用容器の前記開口に固定されている本発明に従って構成された栓体とを備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、カバー部材の側面部の外表面に径方向外側に突出している突出部が設けられているので、ホルダーの内壁と栓体との間の摩擦抵抗を高めることができる。従って、鞘の弾発力によって、体液採取針が栓本体から抜けるのを抑制することができる。
【0026】
加えて、上記突出部を設けたことにより上記摩擦抵抗を高めることができるので、栓本体の刺通部の肉厚を薄くすることができ、それによって最初に体液採取針103を刺通させる際の抵抗を低くすることができる。従って、従体液採取を容易にかつ確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0029】
図1(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る栓体の平面図、正面図、正面断面図及び要部を拡大して示す部分切欠正面断面図である。また、
図2は、本発明の第1の実施形態に係る栓体が設けられた体液採取用容器をホルダーに挿入する工程を示す正面図である。
【0030】
栓体1は、栓本体2と、カバー部材3とを有する。栓本体2は、体液採取用容器の開口を密閉する。栓本体2は、体液採取用容器の開口に圧入される圧入部2aと、圧入部2aの上端において圧入部2aの外周縁から外側水平方向に広がる段差2bを介して圧入部2aに連ねられた把持部2cとを有する。本実施形態では、栓体1を装着する体液採取用容器14の開口の平面形状が円形であるため、圧入部2aは、外周面が円筒状の形状を有している。把持部2cの外周面もまた円筒状の形状を有している。もっとも、圧入部2a及び把持部2cは円筒状の外周面以外の形状を有していてもよい。
【0031】
上記圧入部2aの外径は、適用される体液採取用容器の上端開口を気密封止し得るように、体液採取用容器14の上端開口の径よりも若干大きくされている。上記把持部2cの外径は圧入部2aの外径よりも大きくされており、それによって、上記段差2bが形成されている。
【0032】
把持部2cは、中央に凹部2dを有する。凹部2dを囲むように、把持部2cは環状の形状を有する。また、凹部2dの下方の圧入部2aにおいては、下方に開いた凹部2eが形成されている。凹部2d及び凹部2eが設けられているため、凹部2dと凹部2eとが対向している部分の肉厚が、その周囲の部分よりも薄くされている。この肉厚が相対的に薄い部分が、刺通部2fを構成している。
【0033】
刺通部2fの肉厚が上記のように薄くされているので、後述するように、体液採取針を容易にかつ確実に刺通部に刺通させることができる。
【0034】
特に限定されるわけではないが、本実施形態では刺通部2fは、その平面形状が円形とされている。
【0035】
上記栓本体2は、体液採取用容器14を気密封止するように体液採取用容器14に固定されるものであるため、弾力性を有する弾性材料からなることが望ましい。このような弾性材料としては、合成ゴムまたは熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
【0036】
カバー部材3は、上記栓本体2の上面2gに接触するように設けられた環状の天板部3aを有する。天板部3aの中央の開口3bが、上記凹部2dに連ねられている。
【0037】
天板部3aの外周縁には、側面部3cが連ねられている。側面部3cは、上端に第1の開口3dを有し、下端に第2の開口3eを有する円筒状の部材からなる。もっとも、本実施形態では、第1の開口3d側における内径に対して、下方に位置している第2の開口3e側における内径が相対的に大きくされている。従って、カバー部材3は、その上方部分から下方部分にいくにつれて、開口径が漸次大きくなるように形成されている。
【0038】
他方、本実施形態では、側面部3cは、上記天板部3aよりも上方に延びており、この天板部3aよりも上方の部分が環状側壁3fを構成している。また、上記側面部3cの内面には、側面部3cの内壁が上下方向に延びる方向と交叉する方向に段差3gが形成されている。段差3gが設けられている部分よりも下方部分では、側面部3cの内径が上記栓本体2の把持部2cの下端の外径よりも小さくされている。従って、段差3gにより、カバー部材3に挿入されている栓本体2が下方に落下しない。
【0039】
好ましくは、天板部3aの下面と、段差3gとの間の距離は、栓本体2の把持部2cの上下方向寸法と同等もしくは該上下方向寸法より若干小さくされている。それによって、栓本体2を、天板部3aと段差3gとの間に圧入し、その位置を確実に固定することができる。
【0040】
側面部3cのうち、上記環状側壁3fより下方であって、段差3gまでの部分3hが、上記栓本体2の把持部2cの外周面に密着されている。
【0041】
従って、本実施形態では、上記天板部3aの内面と部分3hの内面が栓本体2の把持部2cの外表面に密着している。
【0042】
側面部3cは、上記部分3hの下方に連ねられているスカート部3iを有する。該スカート部3iは、後述するように、体液採取用容器の外周面の外側に位置される。
【0043】
上記スカート部3iの下端が上記第2の開口3eを形成している。そして、スカート部3iにおいては、複数本のスリット3jが下端から上方に延びるように設けられている。スリット3jの上端は、上記栓本体2の圧入部2aの下端よりも下方に位置している。
【0044】
複数本のスリット3jが設けられていることにより、スカート部3iは、径方向に外力が加わった際に容易に変形し得るように構成されている。これにより、ホルダーに挿入された際に、スカート部3iは、ホルダーの内壁と接触して容易に管の中心方向に変形し、適度な摩擦抵抗を与える。それと同時に、該変形した部分がその弾力により管の中心から外側方向へ力を加えることになるため、栓体1がホルダーに適度な力で保持される。それによって、市販のホルダーの内径のメーカー間差への対応も可能であり、ホルダーの種類によらずキックバックを容易に防止できるとともに、ホルダーへの採血管の抜き挿しも容易となる。
【0045】
また、スカート部3iにおいては、外表面に本発明の突出部である帯状体3kが設けられている。突出部3kは、栓体1中の最大外径部分を構成している。この最大外径部分とは、ホルダーに挿入された際に、ホルダー内壁に圧接されて、摩擦抵抗を与える大きさとされている。本実施形態では、帯状体3kは、カバー部材3と異なる材料で形成されている。帯状体3kは、カバー部材3の側面部3cの周方向に延びる環状の帯状体である。もっとも、本発明における突出部は、カバー部材3の側面部3cを周方向に延びる環状体でなくてもよい。すなわち、周方向に沿って、複数の突出部が設けられてもよい。
【0046】
突出部としての帯状体3kの外表面は、側面部3cの外表面よりも径方向外側に突出されている。この帯状体3kの最大外径部分が、側面部3cの最大外径部分を構成している。すなわち、別体で構成されているカバー部材3の最大外径部分よりも、帯状体3kの最大外径部分の径が大きくされている。また、上記帯状体3kの最大外径部分は、後述するホルダーに挿入された際に、ホルダーの内壁と接触し、摩擦抵抗を与える大きさとされている。それによって、ホルダーの内壁と栓体1との摩擦抵抗が高められ、体液採取時の針からの栓本体2の抜けを防止することが可能とされている。
【0047】
上記帯状体3kを構成する材料は、上記摩擦抵抗を高め得る材料であることが望ましい。このような材料としては、ゴムや熱可塑性エラストマーなどの弾性材料、低密度ポリエチレンや線状低密度ポリエチレンなどの比較的柔軟なポリオレフィン、低密度ポリエチレンや線状低密度ポリエチレンなどと高密度ポリエチレンとの混合物等が挙げられる。
【0048】
また、帯状体3kと別体で形成されているカバー部材3は、成形が容易であるため、合成樹脂からなることが望ましい。このような合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン等を挙げることができる。
【0049】
図1(d)に示すように、上記側面部3cにおいて、帯状体3kが設けられている部分では、帯状体3kの形状に応じた環状溝3mが形成されている。この環状溝3m内に、帯状体3kの一部が入り込んでおり、それによって、帯状体3kの上下方向の位置が固定されている。よって、上記帯状体3kの側面部3cの外表面からの突出量X1は、帯状体3kの厚みより薄くなっている。もっとも、このような環状溝3mは必ずしも設けられずともよい。すなわち、接着等により、帯状体3kが側面部3cの外周面に固定されていてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、上記帯状体3kの下端は、側面部3cの下端よりも上方に位置している。
【0051】
本実施形態の栓体1の特徴は、上記帯状体3kからなる突出部がカバー部材3の側面部3cの外表面に設けられていることにある。それによって、前述したように、ホルダーに体液採取用容器を挿入した際の栓体1とホルダーの内壁との摩擦抵抗を高めることができる。従って、上記突出部を構成している帯状体3kの寸法や、栓体1の他の部分の寸法は、使用するホルダーの寸法に応じて選択することが望ましい。以下、一例として、採血容器などと組み合わされて広く用いられているホルダーは、内径が、16mm〜18mmであり、ホルダー内の空間の高さ方向寸法は44mm〜49mmである。また、この一般的なホルダーは、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなる。
【0052】
従って、このようなホルダーと組み合わせて用いられる場合の好ましい寸法を以下において説明する。
【0053】
上記栓体1において、帯状体3kの最大外径は、17.0〜18.5mmの範囲であることが好ましい。一般に用いられる採血容器などと組み合わされるホルダーの内径は、上記の通り、通常、16mm〜18mmである。従って、上記帯状体3kの最大外径が17.0〜18.5mmの範囲である場合、ホルダー内壁と帯状体3kとの間の摩擦抵抗の大きさを適度な値とすることができる。17.0mm未満の場合には、上記摩擦抵抗の大きさが小さくなり、ホルダーに固定されている体液採取針の栓体1からの抜けを確実に防止することが困難となることがある。18.5mmを超えると、栓体1を挿入することが困難となることがある。
【0054】
また、栓体1において、帯状体3kの上端と側面部3cとの間の下端の距離X2は、8mm以内であることが望ましい。ホルダー内部の上端側の体液採取針を装着する位置の近傍には、取り扱い性を向上させるために付加的な構造を形成することが多いが、距離X2を8mm以内にすることにより、ホルダー挿入時に、ホルダー先端の針装着部近傍の内部形状に影響されることなく、効果を発現することができる。また、帯状体3kの幅すなわち
図1(d)における幅Wは、1〜8mmの範囲であることが望ましい。1mm未満では、上記摩擦抵抗を高める効果が充分に得られないことがあり、8mmを超えると、摩擦抵抗が高くなりすぎるおそれがある。
【0055】
さらに、上記突出量X1については、0.25mm〜1.5mmであることが望ましい。この範囲の突出量とすることにより、上記摩擦抵抗を適度な値とすることができる。0.25mm未満では、摩擦抵抗を高める効果が充分に得られないことがあり、1.5mmを超えると、摩擦抵抗が高くなりすぎ、ホルダーへの挿入及びホルダーからの抜き取りが困難となることがある。
【0056】
帯状体3kは、本実施形態では、JIS K7215におけるショアー硬度がA10〜A99の加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーで構成されている。このような硬度範囲の加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーを用いることにより、ホルダーの内壁との間に適度な摩擦抵抗を与えることができ、望ましい。
【0057】
また、上記天板部3aの上方の環状側壁3fの高さと、前記栓本体2に設けられた凹部2dの深さとの合計の寸法X3は、好ましくは、4mm〜8mmである。この寸法X3が4mm〜8mmの範囲内とすることにより、刺通部2fの上方に適度な容積の空間が形成される。それによって、後述する圧縮された鞘を無理なく収納する空間を確保することができる。
【0058】
また、上記複数本のスリット3jは、上記のようにスカート部3iの径方向に加わる外力に対する柔軟性を高めるために設けられているが、スリットの幅X4は、好ましくは1〜3mmとされる。この範囲の幅のスリットを用いることにより、スカート部3iの変形容易性を高めることができる。また、スリット3jの深さX5、すなわちカバー部材3の下端からスリット3jの上端までの長さX5は、好ましくは8mm以内とされる。8mmを超えると、カバー部材3の上下方向寸法が大きくなり、栓体1が大型化する。8mm以内であれば、柔軟性を高める効果を充分に得ることができ、かつ栓体1の小型化を図ることができる。
【0059】
尚、本発明の栓体を備えた体液採取容器を横置きした場合、例えば後述の
図7(d)の3iもしくは3p部分の下端で接地することになるが、上述の如くスリットを設けることにより、3iもしくは3p部分の下端外周に切り欠き部分ができるため該体液採取容器の転がりをも抑制できる。それ故、体液採取後等に机上に本発明の栓体を備えた体液採取容器を横置きした場合に、転がって机上から落下するのを防止できる。
【0060】
上記複数本のスリット3jの数は任意であるが、3本以上設けることが望ましい。それによって、柔軟性をより一層高めることができる。
なお、スリット数の上限は、スリットが無い場合にホルダー内面と接触可能な帯状体の全周長のうち、スリットにより欠落する部分が該全周長の50%以下であれば特に限定されない。例えば、帯状体の外径が17.0mmで、スリット幅を3mmと設定する場合のスリット数は8個以下が望ましく、帯状体の外径が18.5mmで、スリット幅を3mmと設定する場合のスリット数は9個以下が望ましい。
【0061】
なお、上記刺通部2fの厚みX6は、21Gのような規格の体液採取針の場合、1mm〜4mmの範囲であることが望ましい。1mm未満では、刺通性は高められるものの、体液採取針の抜けが生じやすくなるおそれがある。4mmを超えると、刺通抵抗が高くなりすぎ、刺通作業が困難となることがある。
【0062】
なお、側面部3cにおいては、上記帯状体3kの上方において、上下方向に延びる複数本のリブ3nが形成されている。リブ3nは、栓体1を手で把持した際に、栓体1を体液採取用容器から容易に取り外すことを可能とする。
【0063】
次に、
図2〜
図4を参照して、栓体1の使用方法及び作用効果を説明する。体液の採取に際しては、
図2及び
図3に示すような筒状のホルダー11を用意する。なお、
図2及び
図3に示した筒状のホルダー11は、従来から真空採血針による採血操作などに用いられている一般的なホルダーの概略図である。ホルダー11は、合成樹脂からなり、略円筒状の形状を有する。ホルダー11の下端には、開口11aが形成されている。ホルダー11の上端は天板部11bにより閉じられている。天板部11bを貫くように体液採取針12が設けられており、かつ固定されている。体液採取針12はステンレスなどの金属からなる。体液採取針12は全体が直線状の形状を有しており、かつ内部が中空である中空針である。体液採取針12は、第1の端部に第1の針先12aを有し、反対側の第2の端部に第2の針先12bを有する。第1の針先12aがホルダー11の外側に位置しており、第2の針先12bがホルダー11内に位置している。
【0064】
ホルダー11内においては、体液採取針12を覆うように、ゴムなどの弾性材料からなる鞘13が設けられている。鞘13は、上端側において、ホルダー11の天板部11bの下面に固定されている。また、鞘13の下端は、第2の針先12bよりも下方に位置しており、ホルダー11内の体液採取針12が鞘13により覆われている。
【0065】
血液などの体液を採取するにあたっては、上記ホルダー11に固定されている体液採取針12の第1の針先12aを例えば血管内に挿入する。他方、血液等の体液を採取する体液採取用容器14に、上記栓体1を固定しておく。通常は、予め栓体1が
図2及び
図3に示すように体液採取用容器14に固定された構造を用意する。ここでは、上記栓体1の栓本体2の圧入部2aが体液採取用容器14の上端の開口14aから圧入されている。それによって、体液採取用容器14内が気密封止されている。また、圧力差により体液を吸引するために、体液採取用容器14内は減圧されている。
【0066】
前述したように、栓本体2には、圧入部2aと把持部2cとの間に上記段差2bが形成されているため、段差2bが体液採取用容器14の上端に当接することにより、上記栓本体2の体液採取用容器14への圧入が終了する。従って、栓本体2を体液採取用容器14に確実に圧入し、かつ圧入状態を一定とすることができる。
【0067】
図3に示すように、圧入部2aが体液採取用容器14に圧入された状態において、カバー部材3の前述したスカート部3iは体液採取用容器14の外周側面を取り囲むように位置していることとなる。この場合、スカート部3iの内径は、図示のように、体液採取用容器14の外径よりも若干大きくされている。従って、栓本体2の体液採取用容器14への圧入を妨げることはない。
【0068】
次に、上記体液採取用容器14を、栓体1側からホルダー11に挿入する。その結果、
図4に示すように、栓体1の栓本体2の刺通部2fを体液採取針12の第2の針先12bが刺通し、第2の針先12bが体液採取用容器14内に位置されることとなる。それによって、圧力差によって、血液などの体液が体液採取用容器14内に導かれる。
【0069】
ところで、上記ホルダー11への体液採取用容器14の挿入が行われると、鞘13は、栓本体2に接触し、さらに鞘13の内面に針先12bが接触していくことにより針先12bにより突き破られることとなる。従って、鞘13は、栓本体2の上部に残存する。しかも、挿入作業が進行するにつれて、上記鞘13が圧縮され、
図4に示すように、鞘13は、上記栓本体2の凹部2d及び環状側壁3fで囲まれた空間に位置することとなる。この場合、鞘13が圧縮されると、矢印Z1で示す弾発力が栓本体2に働くこととなる。
【0070】
上記弾発力が大きすぎると、体液採取針12に対し、栓本体2が下方に移動され、針先12bが栓本体2から抜け落ちるおそれがある。
【0071】
しかしながら、本実施形態の栓体1では、上記帯状体3kの外表面とホルダー11の内壁との摩擦抵抗が高められているため、栓本体2が下方に移動され難い。すなわち上記摩擦抵抗により、上記弾発力による作用を抑制することができる。従って、針先12bが栓本体2から抜けることがない。
【0072】
よって、帯状体3kにより上記抜けを抑制することができるので、栓体1の刺通部2fの肉厚を薄くすることができる。従って、ホルダー11内に体液採取用容器14を挿入し、体液を採取する作業を無理なくかつ確実に行うことができる。
【0073】
また、上記針先12bの抜けを抑制する機能を栓本体2が担う必要がないため、栓本体2を構成する材料や栓本体2の形状の設計の自由度を高めることもできる。
【0074】
なお、上記実施形態では、カバー部材3の上部に上記環状側壁3fが設けられていたが、
図5に示す変形例の栓体21のように、天板部3aの上方に環状側壁が設けられずともよい。
【0075】
次に、
図6及び
図7を参照して、第2及び第3の実施形態の栓体を説明する。
【0076】
図6(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態に係る栓体31を示す平面図、正面図、正面断面図及びその要部を拡大して示す正面断面図である。
【0077】
第2の実施形態の栓体31は、複数本のスリット3jが設けられていないことを除いては、第1の実施形態と同様とされている。このように、複数本のスリット3jは必ずとも設けられずともよい。
【0078】
図7(a)〜(d)に示す第3の実施形態の栓体41では、帯状体3kに代えて突出部3pが設けられていることにある。突出部3pは、カバー部材3と同じ材料により一体成形により形成されている。このように、本発明における突出部は、カバー部材3と同じ材料で一体成形されていてもよい。この場合には、材料の種類を低減することができ、かつ製造コストを低くすることができる。
【0079】
次に、具体的な実施例及び比較例を対比して、本発明の効果を明らかにする。以下の実施例及び比較例では、栓本体はいずれもショアー硬度A50のブチルゴムにより形成した。また、カバー部材は、いずれも、ポリエチレンからなる合成樹脂成形品により合成した。
【0080】
(実施例1)
上記
図1に示した第1の実施形態の栓体1を実施例1として用意した。但し、帯状体3kはショアー硬度A25のスチレン系熱可塑性エラストマーで構成した。また、実施例1では、上記帯状体3kの突出量X1=0.7mm、帯状体3kの幅W=4mm、帯状体3kにおける最大外径部分の外径を18mmとした。また帯状体3kの上端とスカート部3iの下端との距離X2を7mmとした。さらに、環状側壁3fの高さと、凹部2dの深さの合計である寸法X3=7.5mmとした。さらに、スリット3jの幅X4を1mm、高さX5を5mmとした。スリット3jの数は3本とした。
【0082】
(実施例2)
上記第2の実施形態の栓体31を実施例2として用いた。実施例2は、スリット3jを有しないことを除いては、実施例1と同様とした。
【0083】
(実施例3)
第3の実施形態の栓体41を実施例3として用いた。帯状体はカバー部材と同様に線状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合物からなる樹脂を一体成形することにより構成した。なお、一体に設けられた突出部の突出量X1は0.5mmとし、幅Wは4mmとし、突出部が設けられている部分の最大外径は17.5mmとした。他の寸法は実施例1と同様とした。帯状の突出部の上端からカバー部材下端までの距離は7mmとした。
【0084】
(比較例1)
図8(a)〜(c)に示す栓体111を比較例1として用意した。ここでは、刺通部の肉厚Tを6.5mmとし、カバー部材113の最大外径16.5mmとした。栓本体112の上面には、深さ5.5mmの凹部112aが形成されている。
【0085】
(比較例2)
図9(a)〜(c)に示す栓体121を比較例2として用意した。ここでは、刺通部の肉厚Tを1=2mmとした。カバー部材123の最大外径は16.5mmとした。栓本体122の上面に、深さ5.5mmの凹部122aが形成されている。
【0086】
(実施例及び比較例の評価)
実施例及び比較例で用意した栓体を、有底円筒状の7ccの採取容量の体液採取用容器の上端開口にはめ込み、
図2に示したホルダー11に手により挿入した。この体液採取用容器の上端の開口径は11mmである。ホルダー11の内部空間の高さ方向寸法は48mmである。用意したホルダーの寸法は以下の通りである。また、ホルダー11は、ポリプロピレンからなる樹脂により形成されている。このようなホルダー11は、採血等において広く用いられている汎用品であり、ここではテルモ社製のホルダー(ベノジェクトIIホルダーSD)、体液採取針(ベノジェクトII採血針S、21G)を検討に用いた(尚、
図2や
図3は概略図であるため、体液採取針の保持部分等は実際のホルダーとことなっている)。
【0087】
ホルダー11の下端の開口径=17mm、ホルダー11は略円筒状であり、内径はその長さ方向にわかりほぼ一定である。従って、ホルダー11の内径は上記開口径と同等である。また、ホルダー11の内部空間の高さ方向寸法は48mmとした。また、ホルダー11には、21Gの規格の体液採取針が固定されている。体液採取針の外径は0.8mmである。体液採取針のホルダー11の天板部から第2の針先までの長さは17mmである。また、体液採取針はステンレスからなる。
【0088】
上記ホルダーに、栓体が固定された体液採取用容器を挿入した際の衝撃感、さらに針先が刺通部を刺通した後、ホルダーから手を離した際に、体液採取用容器の抜けが生じるか否かを目視により観察した。結果を下記の表1に示す。なお、表1の評価記号の意味は以下の通りである。
【0089】
(衝撃感の評価)
挿入時の衝撃:衝撃感が小:○、衝撃感が中:△、衝撃感が大:×
(手を離した際の抜けの評価)
自然に戻らない:○、自然に戻る:×
【0091】
(刺通抵抗の測定)
上記実施例1、2、3及び比較例1で用意した栓体、体液採取用容器、ホルダー、体液採取針を使用して、栓体が固定された体液採取用容器をホルダーへ200mm/minで挿入した際の抵抗の最大値(刺通抵抗の最大値)を測定した。結果を下記の表2に示す。なお、表2の評価記号の意味は表1と同じである。
実施例1、2、3は、何れも比較例1より低い刺通抵抗の最大値を示し、体液採取用容器を挿入して体液採取を行う作業者の負担を軽減出来ることが判る。