特許第5881244号(P5881244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5881244部品実装装置、基板検出方法及び基板製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881244
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】部品実装装置、基板検出方法及び基板製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20160225BHJP
   H05K 13/02 20060101ALI20160225BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   H05K13/08 A
   H05K13/08 U
   H05K13/02 U
   H05K13/04 A
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-70882(P2012-70882)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-206912(P2013-206912A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】314006938
【氏名又は名称】JUKIオートメーションシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘朗
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−081165(JP,A)
【文献】 特開2009−278014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する搬送ユニットと、
部品を保持するヘッドと、前記ヘッドを移動させる移動機構とを有し、前記部品を前記基板に実装する実装ユニットと、
前記移動機構に支持されて移動可能であり、前記基板を検出する検出器と、
前記移動機構を用いて前記搬送ユニットの搬送方向の成分を含む方向を走査方向として前記検出器を走査させ、前記検出器により検出された情報に基づき、前記搬送ユニットにおける前記基板の有無を判定する制御ユニットと
を具備する部品実装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部品実装装置であって、
前記制御ユニットは、前記検出器により検出された値を取得し、前記取得した値と閾値との比較により得られる情報に基づいて、前記基板の有無を判定する
部品実装装置。
【請求項3】
請求項2に記載の部品実装装置であって、
前記検出器はカメラであり、
前記制御ユニットは、前記カメラにより撮影された画像の輝度に基づく検出輝度値を取得し、前記検出輝度値が前記閾値を上回る場合に、前記基板が存在すると判定する
部品実装装置。
【請求項4】
請求項3に記載の部品実装装置であって、
前記搬送ユニットに前記基板が存在しない場合の輝度に基づく第1の輝度値を記憶する記憶ユニットをさらに具備し、
前記制御ユニットは、前記基板が存在する場合の輝度値として、前記基板の表面の輝度に基づく第2の輝度値を取得し、前記記憶ユニットに記憶された前記第1の輝度値及び前記取得した第2の輝度値に基づいて前記閾値を算出する
部品実装装置。
【請求項5】
請求項1に記載の部品実装装置であって、
前記制御ユニットは、前記移動機構により前記走査方向における所定の移動ピッチで前記検出器を移動させ、前記移動ピッチ毎に前記検出器により検出された値を取得する
部品実装装置。
【請求項6】
請求項5に記載の部品実装装置であって、
前記制御ユニットは、前記基板の搬送方向長さの情報を取得し、前記基板の前記搬送方向長さの情報に基づいて前記移動機構による移動ピッチを算出する
部品実装装置。
【請求項7】
請求項1に記載の部品実装装置であって、
前記基板を識別する基板識別情報と、前記基板の実装面内における、複数の部品のそれぞれの実装すべき位置である複数の座標情報と、前記複数の座標情報のうち、前記部品が実装された位置の座標である実装済座標情報とを対応付ける対応情報を記憶する記憶ユニットをさらに具備し、
前記制御ユニットは、前記基板が存在すると判定した場合に、前記対応情報が、前記記憶ユニットに記憶されているか否かを判定する
部品実装装置。
【請求項8】
請求項7に記載の部品実装装置であって、
前記記憶ユニットは、前記基板識別情報及び前記複数の座標情報に、前記複数の部品の実装順序情報をさらに対応させた情報を、前記対応情報として記憶し、
前記制御ユニットは、前記対応情報が前記記憶ユニットに記憶されていると判定した場合、前記検出器を用いて、前記対応情報に基づいて、前記複数の座標情報のうち、前記基板の実装面内における最後に実装すべき座標情報に対応する最終位置に、前記複数の部品のうち最後に実装されるべき最終部品が実装されているか否かを検出する
部品実装装置。
【請求項9】
請求項8に記載の部品実装装置であって、
前記制御ユニットは、前記最終位置に前記最終部品が実装されていないことを検出した場合、前記部品実装装置の動作が中断されるまで前記記憶ユニットに記憶された前記実装済座標情報に基づいて、前記基板の実装面内における未だ実装されていない位置に対応する座標情報を抽出し、前記対応情報に基づいて、前記抽出した座標情報に対応する実装すべき一または複数の部品の実装を開始する
部品実装装置。
【請求項10】
基板に部品を実装するヘッドを移動させる移動機構を用い、前記基板を搬送する搬送ユニットの搬送方向の成分を含む方向を走査方向として、前記移動機構に支持されて移動可能である検出器を走査させ、
前記検出器により検出された情報に基づき、前記搬送ユニットにおける前記基板の有無を判定する
基板検出方法。
【請求項11】
部品の実装対象である基板を搬送ユニットにより搬送し、
前記基板に前記部品を実装するヘッドを移動させる移動機構を用い、前記搬送ユニットの搬送方向の成分を含む方向を走査方向として、前記移動機構に支持されて移動可能である検出器を走査させることにより前記基板を検出し、
前記ヘッドにより前記部品を保持し、前記ヘッドに保持された前記部品を前記基板に実装する
基板製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、基板に部品を実装する部品実装装置、基板の検出方法及び基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装装置は、一般に、ヘッドが電子部品を供給するフィーダにアクセスして電子部品を取り出し、実装のための領域に配置された回路基板等にその電子部品を実装する装置である。
【0003】
特許文献1には、回路部品装着システムにおいて搬送方向に複数の搬送装置を配列し、互いに隣り合う搬送装置を協働させて配線板を搬送し、装着装置の所定の作業領域に位置させる技術が開示されている。この技術では、配線板の存在位置を把握する必要があるため、搬送装置の搬送方向における上流側及び下流側に光電センサが設けられ、それぞれの光電センサが配線板の有無を検出することによって、配線板の存在位置を認識するようにしている(例えば、特許文献1の明細書段落[0190]、[0191]、図24等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−161414
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなセンサによって基板が検出されるのは、その基板が少なくともいずれかのセンサの検出範囲に位置する場合に限られる。上記の技術では、センサの検出範囲に含まれない領域については、基板が存在していたとしても検出されず、基板の有無を確実に判断することができないという問題があった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、装置内の基板の有無を確実に判断することができる部品実装装置、基板検出方法及び基板製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術に係る部品実装装置は、搬送ユニットと、実装ユニットと、検出器と、制御ユニットとを具備する。
前記搬送ユニットは、基板を搬送する。
前記実装ユニットは、部品を保持するヘッドと、前記ヘッドを移動させる移動機構とを有し、前記部品を前記基板に実装する。
前記検出器は、前記移動機構に支持されて移動可能であり、前記基板を検出する。
前記制御ユニットは、前記移動機構を用いて前記搬送ユニットの搬送方向の成分を含む方向を走査方向として前記検出器を走査させる。前記制御ユニットは、前記検出器により検出された情報に基づき、前記搬送ユニットにおける前記基板の有無を判定する。
【0008】
本技術では、実装ユニットの移動機構を利用して検出器を搬送方向の成分を含む方向に走査させることにより、搬送ユニットに基板がある場合にその基板を確実に検出できる。つまり、検出器の検出範囲が移動することによって、搬送ユニットにおいて基板の検出が可能な領域を広げることができる。したがって、装置内の基板の有無を確実に判断することができる。
【0009】
前記制御ユニットは、前記検出器により検出された値を取得し、前記取得した値と閾値との比較により得られる情報に基づいて、前記基板の有無を判定してもよい。検出された情報から基板の有無を判定する方法が閾値で定義されるので、確実に判定することができる。
【0010】
前記検出器はカメラであり、前記制御ユニットは、前記カメラにより撮影された画像の輝度に基づく検出輝度値を取得し、前記検出輝度値が前記閾値を上回る場合に、前記基板が存在すると判定してもよい。カメラを走査させる簡易な方法で確実に基板を検出し、基板の有無を判断することができる。
【0011】
前記部品実装装置は、前記搬送ユニットに前記基板が存在しない場合の輝度に基づく第1の輝度値を記憶する記憶ユニットをさらに具備してもよい。その場合、前記制御ユニットは、前記基板が存在する場合の輝度値として、前記基板の表面の輝度に基づく第2の輝度値を取得し、前記記憶ユニットに記憶された前記第1の輝度値及び前記取得した第2の輝度値に基づいて前記閾値を算出する。実際に検出しようとする基板の輝度の情報を用いて閾値を算出することにより、基板の種類等に応じて閾値を適切に変更することができ、基板の有無の判定結果の信頼性を向上させることができる。
【0012】
前記制御ユニットは、前記移動機構により前記走査方向における所定の移動ピッチで前記検出器を移動させ、前記移動ピッチ毎に前記検出器により検出された値を取得してもよい。検出器に検査させる位置を移動ピッチ毎とすることによって、それぞれの位置における基板の有無を判定できる。
【0013】
前記制御ユニットは、前記基板の搬送方向長さの情報を取得し、前記基板の前記搬送方向長さの情報に基づいて前記移動機構による移動ピッチを算出してもよい。基板のサイズに応じて適切な移動ピッチを設定することができ、走査の効率を高めることができる。
【0014】
前記部品実装装置は、対応情報を記憶する記憶ユニットをさらに具備してもよい。前記対応情報は、前記基板を識別する基板識別情報と、前記基板の実装面内における、複数の部品のそれぞれの実装すべき位置である複数の座標情報と、前記複数の座標情報のうち、前記部品が実装された位置の座標である実装済座標情報とを対応付ける情報である。その場合、前記制御ユニットは、前記基板が存在すると判定した場合に、前記対応情報が、前記記憶ユニットに記憶されているか否かを判定する。
例えば、部品実装装置の動作が中断されたとき、装置内の基板を検出した場合に、製造中の基板についての対応情報が記憶されているか否かによって、装置内の基板の製造を続行できるか否かがわかる。
【0015】
前記記憶ユニットは、前記基板識別情報及び前記複数の座標情報に、前記複数の部品の実装順序情報をさらに対応させた情報を、前記対応情報として記憶してもよい。その場合、前記制御ユニットは、前記対応情報が前記記憶ユニットに記憶されていると判定した場合、前記検出器を用いて、前記対応情報に基づいて、前記複数の座標情報のうち、前記基板の実装面内における最後に実装すべき座標情報に対応する最終位置に、前記複数の部品のうち最後に実装されるべき最終部品が実装されているか否かを検出する。
装置内の基板について、最後に実装されるべき部品がその実装すべき位置に実装されているか否かによって、その基板の部品実装工程が完了したか否かがわかる。
【0016】
前記制御ユニットは、前記最終位置に前記最終部品が実装されていないことを検出した場合、前記部品実装装置の動作が中断されるまで前記記憶ユニットに記憶された前記実装済座標情報に基づいて、前記基板の実装面内における未だ実装されていない位置に対応する座標情報を抽出してもよい。その場合、前記制御ユニットは、前記対応情報に基づいて、前記抽出した座標情報に対応する実装すべき一または複数の部品の実装を開始してもよい。
すなわち、部品実装装置の動作が中断されたとき、基板への部品実装工程が途中または開始前の場合を検出し、その場合に未だ実装されていない位置を対象として残りの部品の実装を開始することができるため、装置内の基板の製造を再開することができる。
【0017】
本技術にかかる基板検出方法は、基板に部品を実装するヘッドを移動させる移動機構を用い、前記基板を搬送する搬送ユニットの搬送方向の成分を含む方向を走査方向として、前記移動機構に支持されて移動可能である検出器を走査させることを含む。
前記検出器により検出された情報に基づき、前記搬送ユニットにおける前記基板の有無が判定される。
【0018】
本技術に係る基板製造方法は、部品の実装対象である基板を搬送ユニットにより搬送することを含む。
前記基板に前記部品を実装するヘッドを移動させる移動機構を用い、前記搬送ユニットの搬送方向の成分を含む方向を走査方向として、前記移動機構に支持されて移動可能である検出器を走査させることにより、前記基板が検出される。
前記ヘッドにより前記部品が保持され、前記ヘッドに保持された前記部品が前記基板に実装される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本技術によれば、装置内に存在する基板の有無を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本技術の一実施形態に係る部品実装装置を示す模式的な正面図である。
図2図2は、図1に示す部品実装装置の平面図である。
図3図3は、図1に示す部品実装装置の側面図である。
図4図4は、部品実装装置の制御システムの構成を示すブロック図である。
図5図5は、部品実装装置の第1の実施形態に係る動作を示すフローチャートである。
図6図6は、図1に示す部品実装装置の基板の検出動作を説明するための模式的な図である。
図7図7は、部品実装装置の第3の実施形態に係る動作を示すフローチャートである。
図8図8は、第3の実施形態に係る動作に用いられるルックアップテーブル(対応情報)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[参考例]
上記のように、搬送される基板が通過する所定の位置で、センサによって基板を検出する場合、センサの検出範囲に含まれない領域があることが問題となる。例えば、停電停止またはエラーの発生等により部品実装装置の動作が中断された場合、再稼働のためのメンテナンスを行うオペレータ(または装置の制御システム)は、停止中の装置内に残っている基板の有無を把握する必要がある。この場合に、基板の有無の判断に上記のセンサを用いた場合、検出範囲から外れた領域に位置する基板を見落としたまま装置を再稼働させてしまうおそれがある。
以下に説明する本技術は、以上の問題を解決することができる。以下、図面を参照しながら、本技術の実施形態を説明する。
【0022】
[部品実装装置の構成]
図1は、本技術の一実施形態に係る部品実装装置を示す模式的な正面図である。図2は、図1に示す部品実装装置100の平面図であり、図3はその側面図である。
【0023】
部品実装装置100は、フレーム10と、図示しない電子部品を保持しこれを実装対象である回路基板(以下、単に基板という)Wに実装する実装ヘッド30と、テープフィーダ90が搭載されるテープフィーダ搭載部20と、基板Wを保持して搬送する搬送ユニット16(図2参照)とを備える。
【0024】
フレーム10は、底部に設けられたベース11と、ベース11に固定された複数の支柱12とを有する。複数の支柱12の上部には、図中X軸に沿って架け渡された例えば2本のXビーム13を有するX軸移動機構130が設けられている。例えば2本のXビーム13の間には、Y軸に沿ってYビーム14を有するY軸移動機構140が架け渡され、このY軸移動機構14に実装ヘッド30が接続されている。X軸移動機構130及びY軸移動機構140は、X軸及びY軸に沿って実装ヘッド30を移動させる。X軸移動機構130及びY軸移動機構140は、典型的にはボールネジ駆動機構により構成されるが、ベルト駆動機構等の他の機構であってもよい。
【0025】
これら、実装ヘッド30、X軸移動機構130及びY軸移動機構140により実装ユニット40が構成される。この実装ユニット40は、主に生産性の向上のため複数設けられる場合もあり、その場合、複数の実装ヘッド30が独立してX及びY軸方向で駆動される。
【0026】
図2に示すように、テープフィーダ搭載部20は、部品実装装置100の前部側(図2中下側)及び後部側(図2中上側)の両方に配置されている。図中Y軸方向が部品実装装置100の前後方向となる。テープフィーダ搭載部20には、X軸方向に沿ってテープフィーダ90が複数配列されて搭載されるようになっている。例えば40〜70個のテープフィーダ90がこのテープフィーダ搭載部20に搭載可能である。本実施形態では、前部及び後部側でそれぞれ58個、合計116個のテープフィーダ90が搭載可能とされている。
【0027】
なお、テープフィーダ搭載部20が、部品実装装置100の前部側及び後部側の両方に設けられる構成としたが、これは、前部側及び後部側のいずれかに一方に設けられる構成であってもよい。
【0028】
テープフィーダ90は、Y軸方向に長く形成されている。テープフィーダ90の詳細は図示しないが、リールを備え、コンデンサ、抵抗、LED、ICパッケージング等の電子部品を収納したキャリアテープがそのリールに巻き付けられている。また、テープフィーダ90は、このキャリアテープをステップ送りで送り出すための機構を備えており、そのステップ送りごとに電子部品が1つずつ供給される。図2に示すように、テープフィーダ90のカセットの端部の上面には供給窓91が形成され、この供給窓91を介して電子部品が供給される。複数のテープフィーダ90が配列されることによってX軸方向に沿って形成される、複数の供給窓91が配列された領域が、電子部品の供給領域Sとなる。
【0029】
なお、1つのテープフィーダ90のキャリアテープには、多数の同じ電子部品が収納される。テープフィーダ搭載部20に搭載されるテープフィーダ90のうち、複数のテープフィーダ90にまたがって同じ電子部品が収容される場合もある。
【0030】
部品実装装置100のY軸方向での中央部に上記搬送ユニット16が設けられ、この搬送ユニット16はX軸方向に沿って基板Wを搬送する。搬送ユニット16は、基板Wが搬送される領域として、搬送領域Cを有する。例えば、図2に示すように、搬送ユニット16上の、X軸方向におけるほぼ中央位置で搬送ユニット16に支持されている基板Wが配置される領域が、実装ヘッド30によりアクセスされて電子部品の実装が行われる実装領域Mとなる。実装領域Mは、搬送領域C内に設定される。
【0031】
搬送ユニット16は、典型的にはベルトタイプのコンベヤであるが、これに限られず、ローラタイプ、基板Wを支持する支持機構がスライドして移動するタイプ、あるいは非接触式等、何でもよい。搬送ユニットは、X軸方向に沿って敷設されたガイドレール16aを有する。これにより、搬送される基板WのY軸方向のずれが規制されながら搬送される。
【0032】
実装ヘッド30は、Y軸移動機構140に接続されたキャリッジ31と、キャリッジ31から斜め下方に延びるように設けられたターレット32と、ターレット32に周方向に沿って取り付けられた複数の吸着ノズル33とを備える。吸着ノズル33は、真空吸着の作用によりキャリアテープから電子部品を取り出して保持する。吸着ノズル33は、電子部品を基板Wに実装するために上下動可能となっている。吸着ノズル33は、例えば12本設けられている。
【0033】
実装ヘッド30は、上述のX軸移動機構130及びY軸移動機構140によりX及びY軸方向に移動可能とされており、それらの吸着ノズル33は、供給領域Sと実装領域Mとの間で移動し、また、実装領域M内で実装を実行するために実装領域M内でX及びY軸方向に移動する。
【0034】
ターレット32は、その斜め方向の軸を回転の中心軸として回転(自転)可能となっている。複数の吸着ノズル33のうち、その吸着ノズル33の長さ方向がZ軸方向に沿って配置されたものが、基板Wに電子部品を実装するために選択された吸着ノズル33である。ターレット32の回転により任意の1つの吸着ノズル33が選択される。選択された吸着ノズル33がテープフィーダ90の供給窓91にアクセスして電子部品を吸着して保持し、実装領域Mまで移動して下降することにより、電子部品が基板Wに実装される。
【0035】
実装ヘッド30は、ターレット32を回転させながら、複数の吸着ノズル33に、1工程で連続して複数の電子部品をそれぞれ保持させる。また、複数の吸着ノズル3に吸着された電子部品は、1工程で連続して1つの基板Wに実装される。
【0036】
図1に示すように、実装ヘッド30には、基板Wの位置を検出する基板カメラ17が取り付けられている。基板カメラ17は、実装ヘッド30と一体的に、X軸移動機構130及びY軸移動機構140により移動可能となっている。基板カメラ17は、例えば、部品の実装時に基板Wの位置を検出する時は、搬送ユニット16の上部に配置され、上部側から基板Wの画像を撮影する。この時、基板カメラ17は、基板Wに設けられた図示しないアライメントマークを認識し、実装ユニット40は、このアライメントマークを基準位置として基板Wに電子部品を実装する。
【0037】
後述するように、基板カメラ17は、上記のような部品の実装時の動作とは別に、搬送ユニット16における搬送領域C内の各位置の画像を撮影することが可能である。基板カメラ17は、輝度の情報を検出することにより、基板Wを検出する検出器として機能する。
【0038】
基板カメラ17は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等を有する。基板カメラ17は、主に可視光の波長領域を有する光を認識するものであってもよいし、主に赤外線の波長領域を有する光を認識するものであってもよい。
【0039】
図4は、部品実装装置100の制御システムの構成を示すブロック図である。
【0040】
この制御システムはメインコントローラ21(あるいはホストコンピュータ)を有している。メインコントローラ21には、テープフィーダ90、基板カメラ17、搬送ユニット16、実装ユニット40、入力部18、表示部19及び記憶ユニット22が電気的に接続されている。
【0041】
テープフィーダ90は図示しない内蔵メモリを有している。テープフィーダ90がテープフィーダ搭載部20にセットされることにより、その内蔵メモリがメインコントローラ21に電気的に接続される。内蔵メモリには、そのテープフィーダ90に収められている電子部品の情報が予め記憶されている。これにより、メインコントローラ21は、テープフィーダ搭載部20のどの位置に、どのような種類の電子部品を持つテープフィーダ90がセットされているかを認識する。電子部品の情報とは、電子部品の種類、そのテープフィーダ90の持つ電子部品の数等の情報である。
【0042】
あるいは、テープフィーダ搭載部20のどの位置に、どのような種類の電子部品を持つテープフィーダ90がセットされているかの情報を、オペレータが手動によって、入力部18を介してメインコントローラ21に入力してもよい。
【0043】
実装ユニット40の各移動機構(X軸移動機構130及びY軸移動機構140)及び実装ヘッド30には、これらに搭載された図示しないモータ、また、これらのモータをそれぞれ駆動するドライバが設けられている。メインコントローラ21はこれらのドライバに制御信号を出力することにより、ドライバがその制御信号に従って実装ユニット40の各移動機構及び実装ヘッド30を駆動する。
【0044】
入力部18は、例えばオペレータが、これから実装対象となる基板Wの種類等、実装処理に必要な情報、及び、後述する基板Wの検出処理に関する情報をメインコントローラ21に入力するために、オペレータにより操作される機器である。表示部19は、例えばオペレータにより入力部18を介して入力された情報、その入力の操作に必要な情報、その他必要な情報を表示する機器である。
【0045】
メインコントローラ21及び記憶ユニット22は、例えばCPU、RAM及びROM等のコンピュータの機能を有する。メインコントローラ21は、制御ユニットとして機能する。メインコントローラ21は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)、その他ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデバイスにより実現されてもよい。
【0046】
[第1の実施形態に係る動作(基板の検出方法)]
図5は、部品実装装置100の第1の実施形態に係る動作を示すフローチャートである。このフローチャートは、基板カメラ17を検出器として用い、基板Wを検出する時の、主にメインコントローラ21の処理を示している。図6は、基板Wの検出動作を説明するための模式的な図である。
【0047】
ここで、後でも説明するが、基板Wの検出処理は、基板カメラ17を走査させ、搬送ユニット16の各位置で撮影される画像の輝度に基づく値(検出輝度値)を取得して、取得した値と所定の閾値とを比較することにより行われる。
【0048】
部品実装装置100が動作する前に、オペレータは、上記したように実装対象となる基板Wに関する情報、及び、上記閾値の設定に関する情報を、入力部18を介してメインコントローラ21に入力する。メインコントローラ21は、入力された情報を、例えば記憶ユニット22に記憶させる。
【0049】
「閾値の設定に関する情報」とは、オペレータが、既定の値を閾値とするデフォルトモードを選択するか、メインコントローラ21に自動で基板Wの表面の輝度の情報を取得させ、その情報を用いて閾値を設定させる自動ティーチングモードを選択するかの情報である。つまり、閾値を固定とするか、基板Wの種類等に応じて可変とするかを、オペレータが選択することができる。
【0050】
なお、以下では、オペレータがデフォルトモードを選択した場合の動作を説明する。
【0051】
オペレータがメインコントローラ21に必要な情報を入力し、部品実装装置100の動作を開始させると、部品実装装置100は、搬送ユニット16により実装領域Mまで基板Wを搬送し、実装ヘッド30により電子部品を実装する。
【0052】
ここで、例えば、このような部品実装装置100の動作が、中断されるような場合を想定する。中断される場合とは、停電停止、緊急停止、エラーによる中断(例えば基板詰まりエラー)、または、オペレータにより調整のため中断される場合等である。このような場合に、メインコントローラ21は、基板Wをどの位置まで搬送したか(または、現時点で部品実装装置100内に基板Wが存在するか否か)を把握していない可能性がある。
【0053】
そこで、メインコントローラ21は、部品実装装置100の通常運転による動作が中断された場合、本実施形態に係る動作である、基板Wの検出処理を開始する。
【0054】
図5及び図6を参照して、基板Wの検出処理を開始する時、メインコントローラ21は、まず、基板カメラ17を最端位置へ移動させる(ステップ101)。図6(a)は、この時の基板カメラ17の位置を示している。最端位置とは、実装ヘッド30を移動させる移動機構(X軸移動機構130及びY軸移動機構140)による、基板カメラ17の可動範囲のうち、搬送ユニット16の搬送方向における最端の位置である。典型的には、図6(a)に示すように、基板Wの搬送方向と直交する幅方向(Y軸方向)における中央付近で、かつ、搬送方向(X軸方向)における上流側の最端位置に、基板カメラ17が移動する。
【0055】
メインコントローラ21は、基板カメラ17の走査に必要な情報として、上述した移動機構による、走査方向における移動ピッチを取得する(ステップ102)。移動機構による走査方向は、搬送ユニット16の搬送方向の成分を含む方向であり、典型的には、図6に示すとおり搬送方向と実質的に同一の方向(X軸方向)である。メインコントローラ21は、取得すべき移動ピッチ(ここではX軸移動機構130による移動ピッチ)を、基板Wの搬送方向長さの情報に基づいて算出する。例えば、基板カメラ17による検出範囲の大きさの情報を用いて、次のように算出する。
【0056】
メインコントローラ21は、まず、部品実装装置100の動作前に入力された基板Wに関する情報に基づき、基板Wの搬送方向長さL[mm]の情報を取得する。そして、検出範囲の大きさの情報として、基板カメラ17の視野(撮影範囲)の、X軸方向における幅d[mm]の情報を取得する。これらの情報に基づき、移動ピッチD[mm]を、D=(L−d)/2[mm]とする。
【0057】
基板Wの搬送方向長さに対応させて、このように移動ピッチを決めた場合、これよりも細かい移動ピッチとする場合に比べて効率的に基板カメラ17を走査させることができる。また、走査において基板Wを見落とすことなく確実に検出することができる。なお、この方法で算出された移動ピッチによると、基板Wの長さ方向において、基板カメラ17の撮影範囲(幅dを有する視野)を移動ピッチD毎に移動させたとき、基板Wの長さLの範囲に基板カメラ17の視野を2回収めることができる。
【0058】
続いて、メインコントローラ21は、基板Wの有無の判定に必要な閾値を取得する(ステップ103)。デフォルトモードによる動作の場合、取得される閾値は既定の値であり、例えば記憶ユニット22に記憶されている。この閾値は、基板カメラ17によって検出される値を、基板Wが存在する場合の値と基板Wが存在しない場合の値とに分類可能と考えられる値であれば、何でもよい。例えば、輝度レベルを0から255までの256段階としたうちの127が、閾値(既定の値)とされる。
【0059】
続いて、メインコントローラ21は、基板カメラ17により画像を取得する(ステップ104)。基板カメラによる撮影(画像の取得)は、基板カメラ17に備え付けられた図示しない光源を用いて搬送領域Cに光を照射し、反射される光を検出することで行われる。基板カメラ17は、その位置(ここでは、最端位置)で搬送領域Cを撮影して検出した輝度の情報を、メインコントローラ21に出力する。
【0060】
メインコントローラ21は、基板カメラ17によって検出された輝度に基づく値である検出輝度値を取得し、検出輝度値が閾値を上回るか否かを判定する(ステップ105)。
【0061】
例えば、基板カメラ17の撮影範囲に基板Wが存在しない場合、メインコントローラ21は、検出輝度値が閾値以下であると判定する。図6(a)に示すように、基板カメラ17の撮影範囲に基板Wが存在しない場合、基板Wの表面(実装面)よりもZ軸方向奥側の領域が撮影される。このように、搬送領域Cのうち基板Wの表面以外の領域が撮影された場合、メインコントローラ21は、比較的輝度が小さい画像(暗い画像)の輝度に基づく検出輝度値を取得する。その場合は、検出輝度値が閾値以下となるので、基板カメラ17の撮影範囲に基板Wが存在しないと判断される。
【0062】
検出輝度値が閾値以下であると判定した場合、メインコントローラ21は移動機構を用いて、基板カメラ17を走査方向に移動ピッチ分移動させる(ステップ106)。そして、基板カメラ17により画像を取得する(ステップ104)。図6(b)を参照して、図6(a)に示した位置から移動ピッチ分移動した位置で、基板カメラ17が搬送領域Cを撮影する。この場合、基板カメラ17の撮影範囲に基板Wが存在するので、基板カメラ17により基板Wの表面が撮影される。その輝度に基づいて得られる検出輝度値は、閾値を上回る。
【0063】
そこで、メインコントローラ21は、検出輝度値が閾値を上回ると判定し(ステップ105のYES)、基板Wの有無について、「基板あり」と決定する(ステップ107)。このように、検出輝度値と閾値とを比較することによって、検出輝度値が閾値を上回る場合に、その場合の基板カメラ17の位置で基板Wが存在すると判定することができる。
【0064】
ここで、基板Wの有無をより確実に判断するために、メインコントローラ21は、検出された情報に基づき「基板あり」と決定した場合に、「基板あり」と決定したのが2回目であるか否かを判定する(ステップ108)。例えば、図6(b)に示す位置では、メインコントローラ21は、「基板あり」の決定が2回目ではないと判定する。このように判定すると、メインコントローラ21は、走査方向においてさらに移動ピッチ分、基板カメラ17を移動させ(ステップ106)、図6(c)に示す位置で基板カメラ17による画像を取得する(ステップ104)。
【0065】
メインコントローラ21は、図6(c)の位置で得られた検出輝度値が閾値を上回ると判定し(ステップ105のYES)、「基板あり」と決定する(ステップ107)。メインコントローラ21は、その「基板あり」の決定が2回目であるか否かを判定する(ステップ108)。この場合は、「基板あり」の決定が2回目であると判定される。
【0066】
「基板あり」の決定が2回目であった場合、メインコントローラ21は、基板Wの検出位置を取得する(ステップ109)。メインコントローラ21は、基板カメラ17の現在位置、すなわちX軸移動機構130及びY軸移動機構140により得られるX−Yの位置を、基板Wのおよその位置と判断する。ここで得られる基板Wのおよその位置と、基板Wの実際の位置との間には、移動ピッチDの範囲内の誤差が生じている。
【0067】
メインコントローラ21は、例えば基板カメラ17を用いて基板Wのエッジ部を検出することにより、搬送領域Cにおける基板Wの詳細な位置を特定する。例えば、メインコントローラ21は、移動機構によって基板カメラ17を、2回目の「基板あり」の決定をした位置(図6(c)の位置)から走査方向(図6の矢印A方向)に移動させながら、基板カメラ17を介して得られる画像の輝度の変化をモニターする。これにより観測される輝度が閾値以下になった時に、メインコントローラ21は、基板Wの下流側(図6右側)のエッジ部を検出したことを判断する。
【0068】
続いて、メインコントローラ21は、基板Wの実装面における、エッジ部から所定の距離離れて設けられた図示しないアラインメントマークを撮影範囲に入れるように、基板カメラ17を移動させる。そして、基板カメラ17がアラインメントマークを認識すると、メインコントローラ21は、その時の移動機構によるX−Yの位置を特定し、基板Wの検出位置として取得する。
【0069】
このように、メインコントローラ21は、上記の検出処理によって検出された基板Wの位置を特定する際に、基板Wのおよその位置の情報を利用して、基板Wの位置を調べるためのエッジ検出等の探索範囲を、狭い範囲(移動ピッチDの範囲内)に絞ることができる。仮に、検出処理の最初から搬送領域C全体を対象として基板カメラ17によって基板Wのエッジ部を探そうとする場合には、基板Wの存在しない位置も含めて探索する分、余計な時間がかかることになる。その場合に比べると、本実施形態によれば、基板Wが存在すると判断した場合のおよその位置(少なくとも、基板Wの実装面内の位置)でエッジ部の探索を開始することができるので、基板Wの位置の特定にかかる時間を短縮することができる。
【0070】
メインコントローラ21は、ステップ109で特定した基板Wの(アラインメントマークの)X−Yの位置と、実装領域Mにおける、部品を実装される際の基板Wのアラインメントマークが位置されるべきX−Yの位置とを比較して、搬送方向における両者の位置の差分を算出する。メインコントローラ21は、搬送ユニット16を用いて、検出された基板Wの位置と実装領域Mの位置との差分に対応する距離分、基板Wを移動させることによって、実装領域Mに搬送する(ステップ110)。そして、実装ユニット40の実装動作を開始させ、実装領域Mに移動した基板Wに部品を実装する(ステップ111)。
【0071】
このように、本実施形態は、部品実装装置100の通常運転による動作が中断した場合であっても、再稼働時に基板Wを検出し、製造を再開することができる。
【0072】
ステップ108でNOの場合、メインコントローラ21は、検出輝度値が閾値を上回ると判定するに至るまで、または、基板カメラ17を走査方向の終点に到達させるまで、ステップ106、ステップ104、ステップ105の処理をこの順で繰り返し実行する。ステップ105でNOの場合も、ステップ108でNOの場合と同様である。
【0073】
メインコントローラ21は、基板カメラ17を走査方向の終点に到達させた場合に、基板Wの検出処理を終了する。その場合、基板Wが存在しないと判断することができる。
【0074】
以上のように、メインコントローラ21は、走査方向における移動ピッチ毎の位置で検出による情報を取得するように基板カメラ17を走査させることで、部品実装装置100内に存在する基板Wの有無を検出することができる。
【0075】
本実施形態では、基板Wの搬送方向長さの範囲に基板カメラ17の視野を2回収めることができる移動ピッチDで基板カメラ17を走査させることにより、基板が存在する場合に少なくとも2回連続で基板Wを撮影することができる。これにより、メインコントローラ21は、基板Wの有無をより正確に判断できる。
【0076】
本実施形態では、メインコントローラ21は、2回目の「基板あり」の判定により基板Wが存在すると判断した。しかし、メインコントローラ21は、1回目の「基板あり」の判定により、基板Wが存在すると判断し、その時の基板カメラ17の位置を基板Wのおよその位置としてもよい。
【0077】
なお、そのように1回目の「基板あり」の判定により基板Wが存在すると判断する場合には、移動ピッチとしては、基板Wの搬送方向長さLから、検出範囲の搬送方向における長さdを引いた長さ以下であれば、上記D=(L−d)/2とは異なる移動ピッチD’(D’≦L−d)を採用してもよい。
【0078】
[第2の実施形態に係る動作]
部品実装装置100の動作前にオペレータが自動ティーチングモードを選択した場合、メインコントローラ21は、例えば基板Wの搬送を開始する前に、入力された基板Wに関する情報に基づき、基板種に変更があるか否かを判定する。
【0079】
メインコントローラ21は、これから搬送しようとする基板Wと直前に実装処理をした基板とが異種であると判定した場合に、基板Wが存在する場合の輝度値を取得する。例えば、基板Wの搬送開始時に、基板Wの表面(実装面)の数箇所の輝度を基板カメラ17によって測定し、これら数箇所の輝度に基づいて平均輝度値を算出する。この平均輝度値を基板Wが存在する場合の輝度値として取得することができる。基板Wが存在する場合の輝度値は、平均値に代えて、中央値または最高値等としてもよい。
【0080】
メインコントローラ21は、基板Wが存在する場合の輝度値を取得すると、基板Wが存在する場合の輝度値と基板Wが存在しない場合の輝度値とに基づいて、設定すべき閾値を算出する。基板Wが存在しない場合の輝度値は、例えば、記憶ユニット22に記憶された既定の値である。本実施形態では、基板Wが存在しない場合の輝度値をB1(第1の輝度値)、基板Wが存在する場合の輝度値をB2(第2の輝度値)とすると、閾値Tは、T=(B2+B1)/2である。
【0081】
このように、自動ティーチングモードで基板Wの種類に変更がある場合には、メインコントローラ21は、既定の値に代えて、実際に搬送する基板Wの種類に応じて閾値Tを算出してから、部品実装装置100の動作を開始させる。これ以降の部品実装装置100の動作は、上記説明したデフォルトモードによる動作と実質的に同一であり、ステップ103で取得する閾値を、上記の閾値Tとする点が異なる。このように、実際の基板Wの輝度に対応させた閾値を用いて、基板の有無の判断の精度を向上させることができる。
【0082】
自動ティーチングモードでメインコントローラ21が、基板Wの種類に変更がないと判定した場合には、例えば、それまでの動作中に設定されていた閾値をそのまま設定する。
【0083】
本実施形態では、メインコントローラ21は、基板Wの種類に変更がある場合に、新たな閾値Tを算出して設定した。しかし、メインコントローラ21は、基板Wの搬送を開始する際に毎回、基板Wが存在する場合の輝度値を取得し、新たな閾値Tを算出するようにしてもよい。また、本実施形態では、メインコントローラ21は、基板Wが存在する場合の輝度値を、基板カメラ17によって測定して算出したが、予め入力された基板Wに関する情報に基づいて、輝度値の情報を取得するようにしてもよい。
【0084】
[第3の実施形態に係る動作]
メインコントローラ21が、上記の第1または第2の実施形態で説明したように基板Wの検出処理を実行した場合、実装等の処理は以下の方法で開始されてもよい。上記の実施形態に係る部品実装装置100が含む部材及び機能、また、図5及び図6で示した動作等について同様のものは説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0085】
図7は、部品実装装置100の第3の実施形態に係る動作を示すフローチャートである。このフローチャートは、基板カメラ17を検出器として用いた検出処理によって基板Wの有無を判定した以降の、主にメインコントローラ21の処理を示している。
【0086】
図8は、この動作に用いられるルックアップテーブル(対応情報)を示す図である。部品実装装置100の動作前に、記憶ユニット22は、このルックアップテーブルを記憶する。
【0087】
ルックアップテーブルは、基板識別情報(基板ID)、部品の種類の情報(部品番号)、それぞれの基板の実装面内における、複数の部品のそれぞれの実装すべき位置の情報(座標情報)及び実装すべき順序の情報(実装順序情報)を対応付けている。
【0088】
基板IDは、これから実装対象となる基板を個別に識別する情報である。ルックアップテーブルは、例えば、オペレータがメインコントローラ21に基板Wに関する情報を入力した時に、基板Wの種類の情報等に基づいて作成される。ルックアップテーブルは、今現在に実装対象とされている基板ごとに作成されてもよいし、複数の基板IDに対応したテーブルが一覧で作成されてもよい。
【0089】
部品実装装置100の通常運転による動作が開始すると、メインコントローラ21は、基板Wを実装領域Mに搬送し、記憶ユニット22に記憶されたルックアップテーブルの各座標情報及び実装順序情報に基づいて、部品を実装する。基板Wに部品が実装されると、メインコントローラ21は、記憶ユニット22に記憶されたルックアップテーブルの複数の座標情報のうち、その部品が実装された位置の座標を、実装済座標情報をルックアップテーブルに書き込む。本実施形態では、実装済座標情報として、その座標位置に部品が実装済か否かの情報が記憶される。このように、ルックアップテーブルには、部品実装工程の状況(実装されるべき複数の部品のうちのどの部品が、基板Wのどの位置に実装されたか)が記録される。
【0090】
部品実装装置100の通常運転による動作が中断された場合、メインコントローラ21は、上記第1及び第2の実施形態と同様に、基板カメラ17を検出器として用いた基板Wの検出処理を開始する。そして、部品実装装置100の動作は、基板Wが検出された場合、または、基板Wが存在しないことが判明した場合に、図7に示す動作に移行する。例えばメインコントローラ21が、図5に示した処理において、基板の有無について「基板あり」の決定を2回目にしたと判定した場合(ステップ108で「YES」の場合)に、ステップ109以降の処理を実行する代わりに、以下の処理を開始する。
【0091】
図7を参照して、基板Wが検出された場合(ステップ201のYES)、メインコントローラ21は、記憶ユニット22が上記の対応情報(例えば、図8のルックアップテーブルの情報)を記憶しているか否かを、判定する(ステップ202)。記憶ユニット22に記憶された対応情報が存在することが、基板Wへの部品実装工程の再開に必要となるからである。
【0092】
以下、部品実装装置の動作が部品実装工程の途中で中断された状態で、記憶ユニット22が対応情報を記憶していると判定した場合について説明する。
【0093】
この場合、上記の検出処理によって検出した基板Wについて、基板Wの位置が実装領域Mにあるか否かを、判定する(ステップ203)。ステップ203では、最初に、メインコントローラ21が、上記のステップ109と実質的に同様の処理を実行することにより、基板Wの検出位置を取得する。例えば、メインコントローラ21は、X軸移動機構130及びY軸移動機構140により、基板カメラ17のX−Yの位置(基板Wのおよその位置)を取得する。その位置から、メインコントローラ21は基板カメラ17によるエッジ検出を実行し、エッジ部を検出した場合、基板カメラ17をアラインメントマークの位置に移動させて移動機構によるX−Y位置から基板Wの位置を特定する(ステップ109)。そして、特定した基板Wの位置と実装領域Mの位置とを比較することによって、基板Wの位置が実装領域Mにあるか否かを判定する。
【0094】
メインコントローラ21は、基板Wの位置が実装領域Mにないと判定した場合(ステップ203でNOの場合)、基板WのX−Yの位置と実装領域MのX−Yの位置との差分を算出する。そして、算出された差分を搬送の際の移動距離として、搬送ユニット16を用いて基板Wを実装領域Mへ搬送する(ステップ204)。
【0095】
続いて、メインコントローラ21は、図8に示したルックアップテーブルを参照し、実装領域Mに位置する基板Wの実装面内における、複数の座標情報のうち、実装順序情報に基づいて最後に実装すべきとされる座標情報に対応する最終位置を、基板カメラ17によって撮影する。基板カメラ17によって検出される情報に基づいて、メインコントローラ21は、部品実装工程で実装される複数の部品のうち、最後に実装されるべき部品(最終部品)が最後に実装すべき位置(最終位置)に、実装済みであるか否かを判定する(ステップ205)。メインコントローラ21は、基板Wの位置が実装領域Mにあると判定した場合(ステップ203でYESの場合)も同様に、基板カメラ17を用いて最終位置に最終部品が実装されているか否かを検出し、ステップ205の処理を実行する。
【0096】
図8を参照して、基板Wに実装される部品の個数が合計n個である場合の、ステップ205の処理は、例えば次のように行われる。メインコントローラ21は、基板Wの実装面内における、実装順序情報が「n」である座標情報の「X=121、Y=59」に対応するX−Yの位置(最終位置)を撮影範囲に入れるように、基板カメラ17を移動させる。そして、基板カメラ17によって基板Wの最終位置を撮影し、実装順序情報が「n」の部品である「部品26」(最終部品)が実装されているか否かを、撮影された画像の情報によって判断する。
【0097】
メインコントローラ21は、最終位置に最終部品が実装されていないと判定した場合(ステップ205でNOの場合)、図8のルックアップテーブル内の情報から、部品実装装置100の動作が中断されるまで記憶ユニット22に記憶された実装済か否かの情報に基づいて、基板Wの実装面における未だ実装されていない位置に対応する座標情報を抽出する。
【0098】
メインコントローラ21は、対応情報に基づいて、実装済となっていない座標情報を、未だ実装されていない位置に対応する座標情報として全て抽出する。そして、抽出したそれぞれの座標情報と、それぞれに対応付けられた部品の情報及び実装順序情報に基づいて、部品の実装されていない位置の座標より、残りの部品の実装を開始する(ステップ206)。
【0099】
これにより、メインコントローラ21は、部品実装装置100の動作が中断された時点で部品実装工程の途中または部品実装前であった基板Wについて、部品の実装を完了させる(ステップ207)。メインコントローラ21は、部品の実装を完了させると、その基板Wを搬送ユニット16によって次工程へ搬送する(ステップ208)。
【0100】
このように、部品実装装置100の動作が中断された場合に基板Wの位置及び状態が不明であったとしても、メインコントローラ21が自動で基板Wを検出し、その基板Wへの部品実装工程が途中または開始前の場合を判断して再開させる。これにより、装置内の基板Wの製造を続行することができる。
【0101】
部品実装工程の最後に実装される最終部品が最後に実装すべき最終位置に実装済みであると判定した場合(ステップ205でYESの場合)に、メインコントローラ21は、基板Wに全ての部品が実装されたことを判断することができる。その場合も、基板Wを次工程へ搬送して(ステップ208)、製造を続行することができる。
【0102】
以下、ステップ202において、記憶ユニット22が対応情報を記憶していないと判定された場合について説明する。
【0103】
この場合、メインコントローラ21は、オペレータに通知する(ステップ209)。現在製造中の基板についての対応情報が記憶されていなければ、メインコントローラ21は検出した基板Wの製造を続行することができないからである。
【0104】
例えば、部品実装装置100の動作が中断されたと同時に、記憶ユニット22に記憶されたルックアップテーブルの情報が消えてしまった場合に、オペレータは、部品実装装置100を再び動作させる前に、装置内に残った基板Wを取り除く必要がある。そこで、上記のようにメインコントローラ21が自動で、搬送領域Cに基板Wが存在する場合を検出して基板Wの有無についての情報をオペレータに通知することにより、部品実装装置100の動作の停止時の、オペレータによる基板の抜き取り等の作業における負担を軽減することができる。例えば、各工程の装置が密集して配置されている場合や、装置の小型化等により、装置内で基板が存在すると考えられる領域の状態を、装置の外側から目視によって確認することが困難な場合がある。このような場合であっても、装置内に設けられている基板カメラを検出器として機能させることによって、外部から観測できない基板の有無を確実に検出することができる。
【0105】
部品実装装置100内に基板を検出しなかったと判定した場合(ステップ201でNOの場合)、メインコントローラ21は、生産待機の状態に移行する(ステップ210)。
【0106】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、基板Wの検出処理の開始時に基板カメラ17を位置させる最端位置を、搬送方向における上流側の端部とした。しかし、メインコントローラ21は、図5のステップ101における最端位置として、搬送方向における下流側の端部に基板カメラ17を位置させ、その場合に、搬送ユニット16の搬送方向の上流側へ向かう方向を走査方向として基板カメラ17を走査させてもよい。
【0107】
上記実施形態で説明した、移動ピッチの取得(ステップ102)と閾値の取得(ステップ103)は、順序が逆であってもよく、検出輝度値と閾値との比較(ステップ105)の前であれば、いつ実行されてもよい。
【0108】
上記実施形態では、実装ヘッド30に設けられた基板カメラ17に検出器としての機能を持たせるようにした。しかし、検出器は、ヘッドを移動させる移動機構に支持されて移動可能であれば、ヘッド以外の箇所に設けられていてもよい。また、そのような検出器として、カメラ以外のセンサを用いても構わない。例えば、光電センサ、レーザセンサ、超音波センサ等、移動機構に設けることのできるセンサであれば何でもよい。
【0109】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)基板を搬送する搬送ユニットと、
部品を保持するヘッドと、前記ヘッドを移動させる移動機構とを有し、前記部品を前記基板に実装する実装ユニットと、
前記移動機構に支持されて移動可能であり、前記基板を検出する検出器と、
前記移動機構を用いて前記搬送ユニットの搬送方向の成分を含む方向を走査方向として前記検出器を走査させ、前記検出器により検出された情報に基づき、前記搬送ユニットにおける前記基板の有無を判定する制御ユニットと
を具備する部品実装装置。
(2)前記(1)に記載の部品実装装置であって、
前記制御ユニットは、前記検出器により検出された値を取得し、前記取得した値と閾値との比較により得られる情報に基づいて、前記基板の有無を判定する
部品実装装置。
(3)前記(2)に記載の部品実装装置であって、
前記検出器はカメラであり、
前記制御ユニットは、前記カメラにより撮影された画像の輝度に基づく検出輝度値を取得し、前記検出輝度値が前記閾値を上回る場合に、前記基板が存在すると判定する
部品実装装置。
(4)前記(3)に記載の部品実装装置であって、
前記搬送ユニットに前記基板が存在しない場合の輝度に基づく第1の輝度値を記憶する記憶ユニットをさらに具備し、
前記制御ユニットは、前記基板が存在する場合の輝度値として、前記基板の表面の輝度に基づく第2の輝度値を取得し、前記記憶ユニットに記憶された前記第1の輝度値及び前記取得した第2の輝度値に基づいて前記閾値を算出する
部品実装装置。
(5)前記(1)から(4)のうちいずれか1つに記載の部品実装装置であって、
前記制御ユニットは、前記移動機構により前記走査方向における所定の移動ピッチで前記検出器を移動させ、前記移動ピッチ毎に前記検出器により検出された値を取得する
部品実装装置。
(6)前記(5)に記載の部品実装装置であって、
前記制御ユニットは、前記基板の搬送方向長さの情報を取得し、前記基板の前記搬送方向長さの情報に基づいて前記移動機構による移動ピッチを算出する
部品実装装置。
(7)前記(1)から(6)のうちいずれか1つに記載の部品実装装置であって、
前記基板を識別する基板識別情報と、前記基板の実装面内における、複数の部品のそれぞれの実装すべき位置である複数の座標情報と、前記複数の座標情報のうち、前記部品が実装された位置の座標である実装済座標情報とを対応付ける対応情報を記憶する記憶ユニットをさらに具備し、
前記制御ユニットは、前記基板が存在すると判定した場合に、前記対応情報が、前記記憶ユニットに記憶されているか否かを判定する
部品実装装置。
(8)前記(7)に記載の部品実装装置であって、
前記記憶ユニットは、前記基板識別情報及び前記複数の座標情報に、前記複数の部品の実装順序情報をさらに対応させた情報を、前記対応情報として記憶し、
前記制御ユニットは、前記対応情報が前記記憶ユニットに記憶されていると判定した場合、前記検出器を用いて、前記対応情報に基づいて、前記複数の座標情報のうち、前記基板の実装面内における最後に実装すべき座標情報に対応する最終位置に、前記複数の部品のうち最後に実装されるべき最終部品が実装されているか否かを検出する
部品実装装置。
(9)前記(8)に記載の部品実装装置であって、
前記制御ユニットは、前記最終位置に前記最終部品が実装されていないことを検出した場合、前記部品実装装置の動作が中断されるまで前記記憶ユニットに記憶された前記実装済座標情報に基づいて、前記基板の実装面内における未だ実装されていない位置に対応する座標情報を抽出し、前記対応情報に基づいて、前記抽出した座標情報に対応する実装すべき一または複数の部品の実装を開始する
部品実装装置。
(10)基板に部品を実装するヘッドを移動させる移動機構を用い、前記基板を搬送する搬送ユニットの搬送方向の成分を含む方向を走査方向として、前記移動機構に支持されて移動可能である検出器を走査させ、
前記検出器により検出された情報に基づき、前記搬送ユニットにおける前記基板の有無を判定する
基板検出方法。
(11)部品の実装対象である基板を搬送ユニットにより搬送し、
前記基板に前記部品を実装するヘッドを移動させる移動機構を用い、前記搬送ユニットの搬送方向の成分を含む方向を走査方向として、前記移動機構に支持されて移動可能である検出器を走査させることにより前記基板を検出し、
前記ヘッドにより前記部品を保持し、前記ヘッドに保持された前記部品を前記基板に実装する
基板製造方法。
【符号の説明】
【0110】
W…基板
D…移動ピッチ
16…搬送ユニット
17…基板カメラ(検出器)
21…メインコントローラ(制御ユニット)
22…記憶ユニット
30…実装ヘッド
40…実装ユニット
100…部品実装装置
130…X軸移動機構
140…Y軸移動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8