特許第5881246号(P5881246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881246
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】ラインセンサカメラを用いた撮影装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/225 20060101AFI20160225BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20160225BHJP
   E21F 17/00 20060101ALN20160225BHJP
   E01D 22/00 20060101ALN20160225BHJP
【FI】
   H04N5/225 C
   G03B15/00 V
   !E21F17/00
   !E01D22/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-205132(P2012-205132)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-60633(P2014-60633A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】500519987
【氏名又は名称】株式会社ジェイアール総研情報システム
(74)【代理人】
【識別番号】100079212
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 義治
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 正人
(72)【発明者】
【氏名】長峯 望
(72)【発明者】
【氏名】関根 朝次
(72)【発明者】
【氏名】蒲地 秀矢
(72)【発明者】
【氏名】下田 一也
【審査官】 ▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−287114(JP,A)
【文献】 特開平11−088753(JP,A)
【文献】 特開2001−043353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225
G03B 15/00
E01D 22/00
E21F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定車両に搭載された第1のラインセンサカメラで車速パルスと同期しない、所定のスキャンレートで被写体を撮影して被写体原画像を取得する手段、車速パルスに対応して点滅する車速パルス光を第2のラインセンサカメラで前記第1のラインセンサカメラと同期しながら撮影して車速パルス画像を取得する手段、及び、前記車速パルス画像を参照して前記被写体原画像に距離に基づく補正を施す手段とで構成されたラインセンサカメラを用いた撮影装置。
【請求項2】
前記車速パルス光は、車速パルスを発生する車速パルス発生装置、前記車速パルスを所定の比率で分周して発光用パルス信号を出力する分周装置、及び、前記発光用パルス信号で駆動される発光装置で構成された車速パルス光発生装置によって発生させられるものであることを特徴とする請求項1に記載のラインセンサカメラを用いた撮影装置。
【請求項3】
車速パルス光発生装置は、前記車速パルス発生装置と前記分周装置の間に絶縁装置を介在させて構成されていることを特徴とする請求項2に記載のラインセンサカメラを用いた撮影装置。
【請求項4】
前記車速パルス発生装置は測定車両に取り付けられた速度発電機であることを特徴とする請求項2若しくは3に記載のラインセンサカメラを用いた撮影装置。
【請求項5】
前記車速パルス画像を参照して前記被写体原画像に距離に基づく補正を施す手段は、記憶部とCPUを含んで構成された画像処理装置であることを特徴とする請求項1に記載のラインセンサカメラを用いた撮影装置。
【請求項6】
前記被写体は鉄道トンネルであり、前記測定車両はレール上を走行する車両であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のラインセンサカメラを用いた撮影装置。
【請求項7】
前記被写体は高欄であり、前記測定車両はレール上を走行する車両であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のラインセンサカメラを用いた撮影装置。
【請求項8】
前記被写体は鉄道長大構造物であり、前記測定車両はレール上を走行する車両であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のラインセンサカメラを用いた撮影装置。
【請求項9】
前記被写体は道路トンネルであり、前記測定車両は道路を走行する車両であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のラインセンサカメラを用いた撮影装置。
【請求項10】
前記被写体は路上駐車車両であり、前記測定車両は道路を走行する車両であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のラインセンサカメラを用いた撮影装置。
【請求項11】
前記被写体は地上の長大構造物であり、前記測定車両は道路を走行する車両であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のラインセンサカメラを用いた撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定車両に搭載されたラインセンサで被写体を撮影するラインセンサカメラを用いた撮影装置に関する。前記被写体とは、トンネル覆工面や高欄などの長大構造物や路上駐車の車両である。
【背景技術】
【0002】
静止したラインセンサカメラで搬送コンベヤに載置された物体を撮影する場合、速度制御装置により搬送速度を一定に保持し、ラインセンサカメラの走査のタイミングを搬送速度に対応させることによって、撮影画像の移動方向の解像度を一定に保つことができる。
ところが、移動するラインセンサカメラで静止した物体を撮影する場合には、移動方向の撮影画像は速度が遅い場合は間延びし、速い場合は押しつぶされたようになる。換言すれば、移動方向の撮影画像は速度が遅い場合は距離が長くなり、速い場合は距離が短くなる。そこで、撮影装置の移動方向の解像度を一定に保つためには、移動速度に応じて撮影画像を補正する必要がある。
【0003】
特開平6−42300号公報(特許文献1)には、トンネル内を走行する車両上に設置されたトンネル壁面撮影用センサカメラを用い、カメラ前面に配置した曲面鏡を介してトンネル壁面に対して進行方向と直角方向のトンネル断面スキャンを行い、車上に設置されたデータ蓄積装置に順次そのデータを蓄積することにより、トンネル壁面の展開画像を得るトンネル検査装置が開示されている。このトンネル検査装置では、トンネル壁面を曲面鏡に映し、これを1台の1次元センサカメラで撮影して、トンネル周方向のラインデータとし、このラインデータを移動距離に応じて並べることにより、トンネル壁面の展開画像を得ている。
【0004】
特開2001−43353号公報(特許文献2)には、トンネル内を移動可能な車両と、前記車両に搭載され、前記トンネルの周方向に沿ったラインを複数に分割した分割ラインのそれぞれに対応づけられて設置され、その対応づけられた分割ラインを撮影して分割ラインデータとして出力する複数のラインセンサカメラと、所定タイミングごとに前記複数のラインセンサカメラが出力した分割ラインデータを取り込むデータ取込手段と、前記データ取込手段によって取り込まれた各分割ラインデータにつき、分割ラインデータを構成する各画素の位置をラインセンサカメラの結像面上からトンネル壁面上に変換し、該変換後の位置間隔を求め、その位置間隔に応じて分割ラインデータの画素間隔を補正する画素間隔補正手段と、前記画素間隔補正手段による補正後の分割ラインデータに基づいて前記トンネル壁面の展開画像を作成する展開画像作成手段とを備えたことを特徴とするトンネル壁面の展開画像作成装置が開示されている。前記所定のタイミングとは、車両の車輪に取り付けたロータリエンコーダが所定量回転するごとにパルス信号を発生するタイミングである。
【0005】
特開2010−106495号公報(特許文献3)には、撮影対象のトンネル内の線路上を走行する車両に搭載されたラインセンサカメラで撮影して得られたトンネル壁面画像を前記車両の進行方向の速度データによって補正するトンネル壁面撮影装置において、前記車両の進行方向の速度データを、車両の車輪に取り付けたロータリエンコーダでなく、前記車両に設置されたビデオカメラを用いて取得することを特徴とするトンネル壁面撮影装置が開示されている。
即ち、前記車両の進行方向の速度データは前記ラインセンサカメラによるトンネル壁面撮影と同時に前記ビデオカメラでトンネル壁面を撮影したビデオ画像を信号処理装置で処理して得られたものであり、前記信号処理装置の処理は、前記ビデオ画像の各フレーム画像間で画像相関を取って画素移動量を算出するステップ、算出された画素移動量から画像解像度を用いて実際の移動量を取得するステップ、及びビデオフレームレートを用いて車両速度に変換して速度データを取得するステップからなる。
【0006】
特許第3230998号公報(特許文献4)には、車両に搭載され電気信号を読出出力として送出するラインセンサカメラと、前記読出出力を記録するメモリ手段と、前記車両の車輪回転を検出する回転センサと、この回転センサの出力にしたがってその車両の一定移動距離毎に前記ラインセンサカメラの第一の読取信号を発生する回路手段とを備えたことを特徴とする移動撮影装置が開示されている。一定時間毎にではなく、検出車両の一定移動距離毎にラインセンサカメラに読取信号を与えることにより、ラインセンサカメラの出力は速度変化による画像の歪みを生じなくなる。
【0007】
ところで、ラインセンサカメラを用いた撮影装置で得られたトンネル壁面画像において、トンネルの断面方向(縦方向)の解像度はカメラの画素数で決まるが、測定車両の進行方向(横方向)の解像度はカメラのスキャンレートと測定車両の速度で決まる。トンネル壁面の変状検査に用いられるトンネル壁面画像は高解像度のものでなければならない。例えば5150画素、駆動クロックが40MHzであるラインセンサカメラを用いて縦横の解像度を約1mm/画素になるようにするには、測定車両の速度は時速約28km/h(40×1000÷5150×3.6)となる。スキャンレートは所定の値に維持できるが、測定車両の速度を約28km/hに維持することは現実には不可能である。しかも、鉄道車両に設置されている速度計は回転数に基づくものであり、計測される距離の単位はミリメートルではなくメートルであるため、高解像度の画像に必要な精度で車両速度を測定することは極めて難しい。
【0008】
鉄道車両の車輪の空転は避けられないものであるが、空転による回転数と速度との対応関係の不一致は軽微であり実用上問題にならない。速度計の出力データは列車の速度や位置の測定に用いられ、更に自動列車制御システムの入力データとして用いられるものであるからである。しかしながら、上述した如く、高解像度のトンネル壁面画像を取得するためには、速度発電機やエンコーダの出力である車速パルスは使えないのである。そこで、特許文献3に記載する如くビデオカメラを用いた測定車両の速度計測方法が開発された。この速度計測方法は、ラインセンサカメラで撮影されたトンネル壁面画像を補正する速度データを出力するものであるが、速度データを取得する車両速度検出装置のコストが高いことと、画像補正を後処理で行うことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−42300号公報
【特許文献2】特開2001−43353号公報
【特許文献3】特開2010−106495号公報
【特許文献4】特許第3230998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする第1の課題は、測定車両に搭載されたラインセンサカメラを用いた撮影装置において、測定車両の移動速度に依存しない高精度の被写体画像を得ることができるようにすることである。
本発明が解決しようとする第2の課題は、測定車両に搭載されたラインセンサカメラを用いた撮影装置の信頼性を高めることである。
本発明が解決しようとする第3の課題は、測定車両に搭載されたラインセンサカメラを用いた撮影装置の操作性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題を解決するために、測定車両に搭載されたラインセンサカメラで車速パルスと同期しないで撮影した被写体原画像を、撮影後に前記測定車両が走行した距離に基づいて補正することにした。測定車両に搭載されたラインセンサカメラで車速パルスと同期しないで撮影した被写体原画像は、所定速度で移動しながら撮影した地点の適正な画像、所定速度よりも遅い速度で移動しながら撮影した地点の伸びた画像、所定速度よりも速い速度で移動しながら撮影した地点の縮んだ画像が混在している。画像の伸縮の度合いは、測定車両の移動速度に対応している。そこで、移動距離ごとの測定車両の移動速度を正確に把握することによって、測定車両に搭載されたラインセンサカメラで車速パルスと同期しないで撮影した被写体原画像を、撮影後に距離に基づいた補正ができるのである。
本発明において、移動距離ごとの測定車両の移動速度を正確に把握する手段は、車速パルス可視化手段であって、測定車両の車速パルスに対応して点滅する車速パルス光を、被写体撮影用ラインセンサカメラとは別のラインセンサカメラで撮影して取得した車速パルス画像である。
【0012】
即ち、本発明の課題を解決するラインセンサカメラを用いた撮影装置は、測定車両に搭載された第1のラインセンサカメラで車速パルスと同期しないで撮影して被写体原画像を取得する手段、測定車両の車速パルスに対応して点滅する車速パルス光を第2のラインセンサカメラで前記第1のラインセンサカメラと同期して撮影して車速パルス画像を取得する手段、及び、車速パルス画像を参照して前記被写体原画像に距離に基づく補正を施す手段とで構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、車速パルスと同期しないで撮影した被写体原画像に距離に基づく補正を施して適正な被写体画像を得るようにしたラインセンサカメラを用いた撮影装置である。従って、本発明により測定車両の移動速度に依存しない高精度の被写体画像を得ることができるようになった。
また、本発明においては、移動距離ごとの測定車両の移動速度を正確に把握する手段を、既存の車両に特殊な加工を加えずに且つ既存の車速パルス発生装置を利用して実現できるので、長大鉄道構造物をラインセンサカメラで撮影して高解像度の被写体画像を得ることができる撮影装置を低価格で提供することが可能になった。
また、本発明においては、第1のラインセンサカメラは安定した内部クロックパルスを同期信号として使用しており、直接車速パルスを入力していないので、万一車輪が空転・滑走して車速パルスが乱れても、第1のラインセンサカメラで撮影した被写体画像が、間延びしたり、寸断したりすることはない。第2のラインセンサカメラで撮影された車速パルスを利用して、第1のラインセンサカメラで撮影した被写体画像を、オフラインで距離に基づく補正を行うという2重系になっているため、測定車両に搭載されたラインセンサカメラを用いた撮影装置の信頼性を高めることができた。
また、本発明においては、測定車両に搭載された第1のラインセンサカメラで移動速度変動を考慮しないで撮影した被写体画像にはノイズが含まれることはない。また、第2のラインセンサカメラは第1のラインセンサカメラと同じ同期信号を使用しているが、これは二つの効果をもたらす。一つ目は、測定車両の車速パルスにノイズが発生しても、或いは車速パルスが一時的に途切れても、第2のラインセンサカメラは車速パルス画像を安定して取得できることである。二つ目は、第1のラインセンサカメラ画像と第2のラインセンサカメラ画像のラインと位置は完全に一致することになり、間引きや内挿といった距離補正のための画像処理を位置ずれなく正確に実行できることである。つまり、距離による補正が確実にできるので、測定車両に搭載されたラインセンサカメラを用いた撮影装置の信頼性を高めることができた。
更に、本発明においては、移動距離ごとの測定車両の移動速度を視覚的に把握することができるので、測定車両に搭載されたラインセンサカメラを用いた撮影装置の操作性が高まった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のラインセンサを用いた撮影装置の構成を示すブロック回路図である。
図2】本発明のラインセンサを用いた撮影装置を構成する車速パルス光発生装置の一実施例の構成を示すブロック回路図である。
図3】車速パルス信号(A)とラインセンサカメラ露光周期(B)誤差を含む場合の車速パルス光(C)の関係を示す波形図である。
図4】車速パルス信号(A)と車速パルス画像(G)との関係を示す波形図である。
図5】測定車両に搭載された被写体撮影用ラインセンサカメラで、基準速度よりも遅い速度で移動しながら撮影した巻尺が置かれた路面の被写体原画像(E)と補正後の被写体画像(F)である。
図6】前記被写体原画像(E)とこれに対応付けて撮影された車速パルス画像(G)である。
図7】測定車両に搭載された被写体撮影用ラインセンサカメラで、基準速度よりも遅い速度で移動しながら撮影したトンネルの壁面に設置されているキロ程銘板の被写体原画像と、これに対応付けて撮影された車速パルス画像、及び前記補正後の被写体画像を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るラインセンサカメラを用いた撮影装置は、測定車両に搭載された第1のラインセンサカメラで移動速度変動を考慮しないで撮影して被写体画像を取得する手段、測定車両の移動速度を表す車速パルスに対応して点滅する車速パルス光を第2のラインセンサカメラで前記第1のラインセンサカメラと同期しながら撮影して車速パルス画像を取得する手段、及び、車速パルス画像を参照して前記被写体画像を距離に基づく補正を行う手段とで構成されたものである。そして、前記車速パルス光は、測定車両の速度を表す車速パルスを発生する車速パルス発生装置、前記車速パルスを所定の比率で分周して発光用パルス信号を出力する分周装置、及び、前記発光用パルス信号で駆動される発光装置で構成された車速パルス光発生装置によって発生させられるものであることを特徴とする。
【実施例】
【0016】
本発明の一実施例のラインセンサカメラを用いた撮影装置は、図1に示す如く、測定車両に搭載された第1のラインセンサカメラ並びに第2のラインセンサカメラ、車速パルス光発生装置3、及び画像処装置4を備える。ラインセンサカメラ制御装置5は、第1のラインセンサカメラと第2のラインセンサカメラに同期信号を与える。
【0017】
第1のラインセンサカメラは被写体撮影用ラインセンサカメラ1であって、車速パルスと同期しないで所定のスキャンレートで被写体を撮影して被写体原画像を取得する。前記スキャンレートは測定車両の移動速度に関係なく一定のタイミングでスキャンしているので、前記被写体画像は測定車両の移動速度の影響を直に反映した画像である。
【0018】
第2のラインセンサカメラは車速パルス光撮影用ラインセンサカメラ2であって、被写体撮影用ラインセンサカメラ1と同期しながら車速パルス光発生装置3の点滅光を撮影して車速パルス画像を取得する。
【0019】
車速パルス光発生装置3は、測定車両の速度を表す車速パルスを発生する車速パルス発生装置である速度発電機31、前記車速パルスを所定の比率で分周して発光用パルス信号を出力する分周装置33、前記発光用パルス信号で駆動されて点滅光を発生する発光装置34、及び速度発電機31と分周装置33の間に配置された絶縁装置32で構成されている。
【0020】
車速パルス画像を参照しながら被写体画像に距離に基づく補正を施す画像処理装置4は、CPU41、記憶部42、入力部43、表示部44、及び出力部45で構成されている。具体的には、画像処理装置4はパーソナルコンピュータ、ディスプレイ及びプリンタで構成される信号処理装置である。記憶部42には、被写体原画像データと車速パルス画像データが記憶される。
【0021】
図3は車速パルス信号(A)とラインセンサカメラ露光周期(B)と誤差を含む場合の車速パルス光(C)の関係を示す波形図、図4は車速パルス信号(A)と車速パルス光(D)との関係を示す波形図である。図3図4から理解される通り、車速パルス信号(A)の1周期(c)はHigh(a)とLow(b)で構成されているが、High(a)とLow(b)の比率(デューティ)は必ずしも1:1になるとは限らない。このような条件下で、車速パルス信号をそのまま発光装置34の駆動信号とした場合、発光装置34が発生する車速パルス光(C)は図3に示す如く、点灯時間と消灯時間が大幅に異なってしまう場合が発生する。このような誤差を含む場合の車速パルス光(C)を、車速パルス光撮影用ラインセンサカメラ2で撮影して取得した画像は測定車両の速度を表示するものではないので、無意味である。
【0022】
これに対して、車速パルス信号(A)を分周装置33で1/2に分周したパルス信号を発光装置34の駆動信号とした場合、発光装置34が発生する車速パルス光(D)は図4に示す如く、点灯時間(d)と消灯時間(e)が車速パルス信号(A)の1周期(c)と必ず一致する。従って、車速パルス光(D)は点灯時間(d)と消灯時間(e)がほぼ同じ点滅光となる。測定車両の速度が遅くなると車速パルス信号(A)の1周期(c)は長くなり、速くなると短くなる。点灯時間(d)と消灯時間(e)が完全に一致するのは、測定車両の速度が一定の場合だけである。しかし、多少の速度変動は分周装置33の分周比を大きくすることにより変動分を吸収できる。本発明の一実施例では、分周比を1/8に設定した。その結果、発光装置34が発生する車速パルス光(D)は点灯時間(d)と消灯時間(e)が実質的に同じ点滅光となった。
【0023】
(被写体原画像の距離に基づく補正)
以下、被写体原画像を距離に基づいて補正する方法について記述する。図5の上段の画像は、被写体撮影用ラインセンサカメラ1が撮影して取得した被写体原画像(E)である。被写体は路面であって、前記路面には巻尺が置かれている。被写体撮影用ラインセンサカメラを搭載した測定車両が例えば時速約28km/hの所定速度で路面を移動すると、距離補正を必要としない適正な被写体画像が得られる。図5の被写体原画像(E)は、移動方向に間延びした画像である。間延びしていることは、円形の巻尺のケースが移動方向に大きく伸びていることから理解される。これは、測定車両が所定速度よりも遅い速度で移動したためである。この間延びした被写体原画像(E)に、距離に基づく補正を施した画像が図5の下段の被写体画像(F)である。即ち、所定速度で移動する測定車両に搭載された被写体撮影用ラインセンサカメラで得られた被写体画像(F)である。
【0024】
図6の右側の画像は被写体撮影用ラインセンサカメラ1が撮影した被写体原画像(E)である。一方、図6の左側の白黒の縞模様の画像は車速パルス光撮影用ラインセンサカメラ2が撮影した車速パルス画像(G)である。この白黒の縞模様を構成する白線と黒線の幅の合計は1単位の距離であって、車速パルスの周波数に反比例する。車速パルスの周波数は車両の速度に比例するから、測定車両の速度が速くなれば白線と黒線の幅は狭くなり、速度は遅くなれば幅は広くなる。この車速パルス画像(G)の白黒の縞模様の白線と黒線の幅から、測定車両の速度、従ってこの時点での測定車両の移動距離、従って1単位の距離が判明する。測定車両が所定速度の時速約28km/hで移動した場合の1単位の距離を1単位の基準距離とすれば、1単位の距離は測定車両の速度が速い場合は基準距離よりも短くなり、速度が遅ければ基準距離よりも長くなる。
【0025】
被写体原画像の距離に基づく補正は次のようにして行われる。CPU41は、プログラムに従って、車速パルス画像(G)を図示しない基準の車速パルス画像と比較し、比較結果から測定車両が所定速度の時速約28km/hからどの程度の割合遅い、または速い速度で移動しながら被写体を撮影したかを判定する。
【0026】
一例として、被写体原画像(E)は、測定車両が所定速度の時速約28km/hよりも遅い速度で移動しながら被写体撮影用ラインセンサカメラ1で撮影された画像である。被写体撮影用ラインセンサカメラ1のスキャンレートは一定であるから、測定車両の移動速度が遅くなれば画像を構成するライン数は速度に反比例して増加する。被写体原画像(E)の構成ライン数は、測定車両が所定速度の時速約28km/hで移動した場合に撮影された適正な被写体画像を構成するライン数よりも多いのである。そこで、CPU41は、プログラムに従って、上述した車速パルス画像(G)を図示しない基準の車速パルス画像との比較結果から得られた情報に基づいて、被写体原画像(E)の構成ライン数が基準のライン数よりも何本多いかを算出する。そして、CPU41は、プログラムに従って、不要なラインを被写体原画像(E)から取り除く。このようにして、被写体原画像(E)に距離に基づく補正が施され、適正な被写体画像(F)が得られるのである。
【0027】
被写体の画像と車速パルス画像を模式的に示した図7を参照しながら、距離に基づく補正の流れを説明すると、次のようになる。被写体撮影用ラインセンサカメラ1は、基準速度よりも遅い速度で移動しながらトンネルの壁面に設置されているキロ程銘板を撮影し、被写体原画像6を画像処理装置4に記憶する。車速パルス光撮影用ラインセンサカメラ2は、被写体撮影用ラインセンサカメラ1と同期し、且つ同一のスキャンレートで車速パルス光を撮影し、車速パルス画像7を画像処理装置4に記憶する。画像処理装置4は、車速パルス画像7からどの程度の遅い速度で測定車両が移動したかを判定する。この判定結果に基づいて、画像処理装置4は被写体原画像6から不要なラインを抜き去る処理を行う。これにより、補正された適正な被写体画像、即ち適正なキロ程銘板の画像8が得られる。
また、被写体撮影用ラインセンサカメラ1が、基準速度よりも速い速度で移動しながらトンネルの壁面に設置されているキロ程銘板を撮影した場合には、画像処理装置4は、車速パルス画像7からどの程度の速い速度で測定車両が移動したかを判定する。この判定結果に基づいて、画像処理装置4は被写体原画像6に対して適宜ラインを内挿する処理を行う。
【符号の説明】
【0028】
1 被写体撮影用ラインセンサカメラ
2 車速パルス光撮影用ラインセンサカメラ
3 車速パルス光発生装置
4 画像処理装置
5 ラインセンサカメラ制御装置
6 キロ程銘板を撮影した模式的な被写体原画像
7 模式的な車速パルス画像
8 キロ程銘板を撮影した模式的な補正後の被写体画像
31 速度発電機
32 絶縁装置
33 パルス分周装置
34 発光装置
41 CPU
42 記憶部
43 入力部
44 表示部
45 出力部
A 車速パルス信号
B ラインセンサカメラ露光周期
C 誤差を含む場合の車速パルス光
D 誤差を含まない場合の車速パルス光
E 被写体原画像
F 適正な被写体画像
G 車速パルス画像
































図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7