特許第5881261号(P5881261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5881261
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】既設支柱管補強材及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 12/08 20060101AFI20160225BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20160225BHJP
   E04H 12/22 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   E04H12/08
   E04G23/02 F
   E04H12/22
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-264180(P2014-264180)
(22)【出願日】2014年12月26日
【審査請求日】2015年9月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504345850
【氏名又は名称】株式会社不二電業社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】秋間 勝仁
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5014520(JP,B1)
【文献】 特開2013−147884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/08
E04H 12/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設支柱管の腐食部近傍の外周囲を取り巻き、前記既設支柱管との間にシリコン充填空間が形成される防錆カバーと、前記既設支柱管の腐食部近傍の内部に上下方向に沿って挿入された内管と、前記既設支柱管と同径で、前記内管の周囲に嵌合されたリングと、前記内管の内部に充填された内部モルタルと、前記シリコン充填空間に充填された変成シリコンとを備え、前記防錆カバーに複数のシリコン注入用ネジ孔が穿設されると共に、前記シリコン注入用ネジ孔に閉鎖用ネジがそれぞれ外側から内側に向けて着脱可能に螺合され、前記リングの内面に、該リングの上下へ突出する複数の補強帯板が周方向に等間隔で取り付けられていることを特徴とした既設支柱管補強材。
【請求項2】
前記防錆カバーの上部及び高さ方向中間部に、それぞれ複数の前記シリコン注入用ネジ孔が周方向に適宜間隔をおいて穿設されていることを特徴とする請求項1に記載の既設支柱管補強材。
【請求項3】
既設支柱管の腐食部を切除してから、前記既設支柱管において切除した部分よりも下方の下部鋼管柱の内側下部に内管支持モルタルを充填した後、前記下部鋼管柱の内部に前記内管の下部を挿入すると共に、前記リングの下端面を前記下部鋼管柱の上端面に当接して、前記リングの下方へ突出する補強帯板を前記下部鋼管柱の内面に嵌合し、次に、前記内管の内側に内部モルタルを充填し、次いで、前記既設支柱管において切除した部分よりも上方の上部鋼管柱の下端面を前記リングの上端面に当接すると共に、前記リングの上方へ突出する補強帯板を前記上部鋼管柱の内面に嵌合し、さらに、前記上部鋼管柱の外周面に仮固定された前記防錆カバーを下方へ移動させ、前記内筒、リング及び既設支柱管の外側に被せて固定し、次いで、前記シリコン注入用ネジ孔を通してシリコン充填空間に変成シリコンを充填した後、前記閉鎖用ネジを前記シリコン注入用ネジ孔に螺合して、前記シリコン注入用ネジ孔を閉鎖することを特徴とする請求項1又は2に記載された既設支柱管補強材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路標識等に用いられる既設支柱管において、腐食しやすく、大きな負荷の加わりやすい地表面近傍を補強する既設支柱管補強材及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路標識等の支柱管は、長期間風雨に曝されると、腐食して一部が破損したり強度が低下することも多い。特に、支柱管の地表部近傍は、湿気や溜まり水の悪影響を受けて最も腐食しやすい部位であり、この部位が腐食すると強風等によって支柱管全体が倒れる心配もある。
このような事態に対応するため、従来、既設支柱管の地表部近傍に発生した腐食部を補強する技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、既設支柱管の地表部近傍の外周囲を取り巻き、前記既設支柱管との間にモルタル充填空間が形成される補強管と、前記既設支柱管の地表部近傍の内部に上下方向に沿って挿入される一対の半割り管と、既設支柱管と同径で、一対の半割り管の周囲に嵌合されたリングとを備え、補強管に複数のネジ孔が周方向に適宜間隔をおいて穿設され、ネジ孔に芯出しネジがそれぞれ外側から内側に向けて螺合されている、既設支柱管補強材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5014520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、既設支柱管の補強部分が薄くて済み、防水性が高く、施工し易い既設支柱管補強材及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の既設支柱管補強材は、既設支柱管の腐食部近傍の外周囲を取り巻き、前記既設支柱管との間にシリコン充填空間が形成される防錆カバーと、前記既設支柱管の腐食部近傍の内部に上下方向に沿って挿入された内管と、前記既設支柱管と同径で、前記内管の周囲に嵌合されたリングと、前記内管の内部に充填された内部モルタルと、前記シリコン充填空間に充填された変成シリコンとを備え、前記防錆カバーに複数のシリコン注入用ネジ孔が穿設されると共に、前記シリコン注入用ネジ孔に閉鎖用ネジがそれぞれ外側から内側に向けて着脱可能に螺合され、前記リングの内面に、該リングの上下に突出する複数の補強帯板が周方向に等間隔で取り付けられている。
前記防錆カバーの上部及び高さ方向中間部に、それぞれ複数の前記シリコン注入用ネジ孔を周方向に適宜間隔をおいて穿設すると良い。
【0007】
本発明の既設支柱管補強材の施工方法は、既設支柱管の腐食部を切除してから、前記既設支柱管において切除した部分よりも下方の下部鋼管柱の内側下部に内管支持モルタルを充填した後、前記下部鋼管柱の内部に前記内管の下部を挿入すると共に、前記リングの下端面を前記下部鋼管柱の上端面に当接して、前記リングの下方へ突出する補強帯板を前記下部鋼管柱の内面に嵌合し、次に、前記内管の内側に内部モルタルを充填し、次いで、前記既設支柱管において切除した部分よりも上方の上部鋼管柱の下端面を前記リングの上端面に当接すると共に、前記リングの上方へ突出する補強帯板を前記上部鋼管柱の内面に嵌合し、さらに、前記上部鋼管柱の外周面に仮固定された前記防錆カバーを下方へ移動させ、前記内筒、リング及び既設支柱管の外側に被せて固定し、次いで、前記シリコン注入用ネジ孔を通してシリコン充填空間に変成シリコンを充填した後、前記閉鎖用ネジを前記シリコン注入用ネジ孔に螺合して、前記シリコン注入用ネジ孔を閉鎖する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防錆カバーと既設支柱管の間に変成シリコンを充填したので、シリコン充填空間を薄くしても、防錆カバーと既設支柱管とが強固に接着されると共に、十分な防水性が得られ、防錆カバーを細くできる。
また、防水性が高まるため、防錆カバーで被覆された既設支柱管の錆びの発生を抑制できる。
さらに、防錆カバーには複数のシリコン注入用ネジ孔を形成したので、シリコン充填空間が狭くても変成シリコンを充填し易く、充填後にはシリコン注入用ネジ孔を閉鎖用ネジで閉鎖することにより、シリコンが漏れだすのを防止できると共に、閉鎖用ネジで既設支柱管を押えて、防錆カバーを既設支柱管に強固に接続できる。
また、既設支柱管の腐食部分を切除しても、既設支柱管と同径のリングが切除部分の長さを補い、リングの内面に設けた複数の補強帯板によって、上下の既設支柱管とリングが正確な位置に安定して接続される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る道路標識等の補強後における一部破断正面図。
図2】本発明の実施例を示す既設支柱管補強材の断面図。
図3】本発明の実施例に係る防錆カバーの斜視図。
図4】本発明の実施例に係る内管及びリングの斜視図。
図5】本発明の実施例に係る施工方法の第1工程を示す一部破断正面図。
図6】本発明の実施例に係る施工方法の第2工程を示す一部破断正面図。
図7】本発明の実施例に係る施工方法の第3工程を示す一部破断正面図。
図8】本発明の実施例に係る施工方法の第4工程を示す一部破断正面図。
図9】本発明の実施例に係る施工方法の第5工程を示す一部破断正面図。
図10】本発明の実施例に係る施工方法の第6工程を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施例において、発明の既設支柱管補強材は、図1及び図2に示すように、道路標識等に用いられている既設支柱管1の腐食部近傍を補強するものであって、既設支柱管1の腐食部近傍の外周囲を取り巻き、既設支柱管1との間に厚さ数mm程度のシリコン充填空間5が形成される防錆カバー2と、既設支柱管1の腐食部近傍の内部に上下方向に沿って挿入された内管3と、内管3の周囲に嵌合されたリング4とを備える。
既設支柱管1は、比較的小型のものであって、既設支柱管1の下部は地中に打設された基礎コンクリート6に埋設されている。
【0011】
防錆カバー2は、鋼等の金属を素材とする高さ350mm程度の周方向に連続した筒体である。なお、防錆カバー2の高さ及び外径は既設支柱管1の寸法によって適宜変更することができる。
図2及び図3に示すように、防錆カバー2の下部には、複数の(本実施例では4個の)ネジ孔8が周方向に等間隔で穿設され、ネジ孔8に芯出しネジ9がそれぞれ外側から内側に向けて螺合される。
また、防錆カバー2の上部及び高さ方向中間部には、それぞれ複数の(本実施例では4個の)シリコン注入用ネジ孔7が周方向に等間隔で穿設され、シリコン注入用ネジ孔7に六角穴付きネジ等の閉鎖用ネジ10が、それぞれ外側から内側に向けて着脱可能に螺合されている。
【0012】
内管3は、図2及び図4に示すように、外径が既設支柱管1及びリング4の内径より小さく、高さが防錆カバー2と同じかやや高い筒体より成る。
また、内管3の内部には、その直径に沿う補強板11が上下方向全長に亘って設けられる。補強板11の両端は内管3の内面に溶接されている。
リング4は、既設支柱管1と同径で、高さが80mm程度の筒体より成り、複数の(本実施例では4個の)固定用ネジ孔12が周方向に等間隔で穿設されると共に、固定用ネジ孔12に固定ネジ13が外側から内側に向かって螺合されている。
そして、固定ネジ13を締め込んでその先端を内管3の外周面に圧接することにより、リング4は内管3に固定される。
また、リング4の内面には、上下方向に延びる複数の補強帯板20が周方向に等間隔で取り付けられる。補強帯板20はリング4の高さよりやや長く、リング4の上下に突出している。
【0013】
この既設支柱管補強材で、既設支柱管1の地表面付近に発生した腐食部近傍を補強するには、まず、図5に示すように、既設支柱管1の周囲において基礎コンクリート6の上部を斫り、既設支柱管1の補強部分を露出させる。基礎コンクリート6の斫り部分14の深さは、防錆カバー2の下端よりもやや深くなるようにする。
次に、既設支柱管1の腐食部15を切除し、既設支柱管1を切除した部分よりも下方の下部鋼管柱1aと、切除した部分よりも上方の上部鋼管柱1bとに分割する。
【0014】
次いで、図6に示すように、下部鋼管柱1aの内部に、速乾性の内管支持モルタル16を充填した後、下部鋼管柱1aの内部に内管3の下部を挿入すると共に、リング4の下端面を下部鋼管柱1aの上端面に当接する。この時、リング4の下方に突出した補強帯板20が下部鋼管柱1aの内面上部に嵌合されて、リング4は下部鋼管柱1aの上に中心軸を共有して安定して載置される。
次に、図7に示すように、内管3の内側に内部モルタル17を充填する。内部モルタル17は、内管3の上方に盛り上がるよう充填する。
さらに、上部鋼管柱1bの下部外周囲に防錆カバー2を被せ、防錆カバー2を芯出しネジ9によって上部鋼管柱1bの外周面に仮固定する。
【0015】
次いで、上部鋼管柱1bの下部を内管3の上部周囲に被せ、その下端面をリング4の上端面に当接する。すると、リング4の上方に突出した補強帯板20が上部鋼管柱1bの内面下部に嵌合されて、上部鋼管柱1bはリング4及び下部鋼管柱1aの直上に安定して載置される。
さらに、固定ネジ13を締め込んで、リング4及びリング4の上端面に載った上部鋼管柱1bを確実に位置決めする。
次に、内部モルタル17が硬化する前に上部鋼管柱1bを叩く。すると、内管3の内部に充填された内部モルタル17が内管3の内面に密着する。
【0016】
次いで、図8に示すように、防錆カバー2を下降させ、防錆カバー2の下半部を基礎コンクリート6の斫り部分14の内部に配置する。
その後、芯出しネジ9を進退させてその先端を既設支柱管1の外周面に当接させ、防錆カバー2の外側に露出する芯出しネジ9の長さが全て同じくなるよう調節することにより、防錆カバー2の中心を既設支柱管1の中心に合わせると共に、防錆カバー2を既設支柱管1に固定する。これにより、防錆カバー2と既設支柱管1及びリング4との間に均一な厚みのシリコン充填空間5が形成される。
【0017】
次に、図9に示すように、基礎コンクリート6の斫り部分14を速乾モルタル18で埋める。斫り部分14に充填した速乾モルタル18の上面は、既設支柱管1に近付くほど高くなるよう勾配をつけ、頂部は30mm以上の高さとする。
さらに、防錆カバー2の高さ方向中間に設けた閉鎖用ネジ10を外し、開口したシリコン注入用ネジ孔7を通してシリコン充填空間5に変成シリコン19(図2)を注入する。変成シリコン19は防錆カバー2の上端から溢れるまで注入するが、十分に注入できない場合は、防錆カバー2の上部に形成されたシリコン注入用ネジ孔7を開口させて補充する。
変成シリコン19の注入が完了したら、閉鎖用ネジ10でシリコン注入用ネジ孔7を閉鎖する。閉鎖用ネジ10は、シリコン注入用ネジ孔7を閉鎖するだけでなく、防錆カバー2を既設支柱管1に固定する機能も有する。
【0018】
次いで、既設支柱管1の上端から速乾モルタル21を投入し、内管3の上方へ10cm程度突出するよう内部モルタル17上に重ねる。
その後、図10に示すように、防錆カバー2の上方に噴き出た変成シリコン19をコテ等で仕上げ、閉鎖用ネジ10を確実に締めてあるか確認する。
このようにして、既設支柱管1の腐食部近傍の外側及び内側がそれぞれ防錆カバー2と内管3で倒れないようよう二重に補強され、しかも、防錆カバー2と既設支柱管1とが強固に接着された強靭な構造が得られる。
なお、閉鎖用ネジ10は防錆カバー2の外面に露出しているので、変成シリコン19が完全に硬化したら、閉鎖用ネジ10を取り外して再利用することができる。
また、必要であれば、既設支柱管1の上端から速乾モルタルをさらに追加して投入することもできる。
【符号の説明】
【0019】
1 既設支柱管
1a 下部鋼管柱
1b 上部鋼管柱
2 防錆カバー
3 内管
4 リング
5 シリコン充填空間
6 基礎コンクリート
7 シリコン注入用ネジ孔
8 ネジ孔
9 芯出しネジ
10 閉鎖用ネジ
11 補強板
12 固定用ネジ孔
13 固定ネジ
14 斫り部分
15 腐食部
16 内管支持モルタル
17 内部モルタル
18 速乾モルタル
19 変成シリコン
20 補強帯板
21 速乾モルタル
【要約】
【課題】既設支柱管の補強部分が薄くて済み、防水性が高く、施工し易い既設支柱管補強材を提供すること。
【解決手段】既設支柱管の腐食部近傍の外周囲を取り巻き、既設支柱管との間にシリコン充填空間5が形成される防錆カバー2と、既設支柱管の腐食部近傍の内部に上下方向に沿って挿入される内管3と、既設支柱管と同径で、内管の周囲に嵌合されたリング4と、内管3の内部に充填された内部モルタル17と、シリコン充填空間5に充填される変成シリコン19とを備え、防錆カバー2に複数のシリコン注入用ネジ孔7が穿設されると共に、シリコン注入用ネジ孔7に閉鎖用ネジ10がそれぞれ外側から内側に向けて着脱可能に螺合され、リング4の内面に、リング4の上下へ突出する複数の補強帯板20が周方向に等間隔で取り付けられている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10