特許第5881273号(P5881273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881273
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】電気絶縁テープ
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/56 20060101AFI20160225BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20160225BHJP
   B32B 17/04 20060101ALI20160225BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20160225BHJP
   C09D 5/25 20060101ALI20160225BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160225BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   H01B17/56 A
   B32B7/02 104
   B32B17/04 Z
   B32B27/20 Z
   C09D5/25
   C09D7/12
   C09D201/00
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-529171(P2009-529171)
(86)(22)【出願日】2007年7月25日
(65)【公表番号】特表2010-503975(P2010-503975A)
(43)【公表日】2010年2月4日
(86)【国際出願番号】US2007016685
(87)【国際公開番号】WO2008036151
(87)【国際公開日】20080327
【審査請求日】2010年4月30日
【審判番号】不服2014-15388(P2014-15388/J1)
【審判請求日】2014年8月5日
(31)【優先権主張番号】11/523,238
(32)【優先日】2006年9月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、マーク エル
【合議体】
【審判長】 木村 孔一
【審判官】 鈴木 正紀
【審判官】 河本 充雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−58314(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/123825(WO,A1)
【文献】 特開昭63−146308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/56
B32B 7/02, 17/04, 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁を提供するために適用される電気絶縁テープにおいて、
熱硬化性樹脂である第2樹脂により含浸されており、高熱伝導性充填材粒子を含有していない第1及び第2の担体層と;
前記第1及び第2の担体層の間に配置されている誘電性充填材層と;
を含んでなる電気絶縁テープであって、
前記誘電性充填材層は、マイカフレーク小片、充填材粒子及び第1の樹脂からなる結合剤樹脂を含んでなり;
前記誘電性充填材層は、前記第1の樹脂と前記マイカフレーク小片及び前記充填材粒子との均一な混合物からなる、前記第1の担体層の上の塗被層であり、
前記誘電性充填材層においては、前記マイカフレーク小片及び前記充填材粒子からなる層へ前記第1の樹脂浸透しておらず
前記充填材粒子に対する前記マイカフレーク小片の比は、体積で、少なくとも1:1であり;
前記誘電性充填材層における前記結合剤樹脂の百分率は、25〜50体積%であり
記充填材粒子は、ZnO、BeO及びSiCのうちの少なくとも1つからなり;
前記充填材粒子は、1〜100,000nmの長さと、5〜50のアスペクト比を有している
ことを特徴とする前記適用前の電気絶縁テープ。
【請求項2】
前記第2樹脂がBステージレジンである、請求項1に記載の電気絶縁テープ。
【請求項3】
前記担体層がガラス繊維である、請求項1に記載の電気絶縁テープ。
【請求項4】
前記充填材粒子が円板及びプレート小片である、請求項1に記載の電気絶縁テープ。
【請求項5】
前記充填材粒子が、ZnO、BeO及びSiCのうちの少なくとも1つの表面処理物であって、前記結合剤樹脂との本質的に完全な共反応性を可能にする表面官能基を有する充填材粒子である、請求項1に記載の電気絶縁テープ。
【請求項6】
官能基が、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン及びビニル各基のうちの少なくとも1個を含んでなる、請求項5に記載の電気絶縁テープ。
【請求項7】
結合剤樹脂が、エポキシ、ポリイミドエポキシ、液晶エポキシ又はシアネートエステルを包含する、請求項1に記載の電気絶縁テープ。
【請求項8】
電気絶縁を提供するために適用される電気絶縁テープであって、
熱硬化性重合体樹脂である第2樹脂により含浸されており、高熱伝導性充填材粒子を含有していない第1及び第2のガラス繊維層と;
前記第1及び第2のガラス繊維層の間に配置されている誘電性充填材層と;
を含んでなる電気絶縁テープであって、
前記誘電性充填材層は、マイカフレーク小片、無機熱伝導性電気抵抗性充填材粒子及び第1の樹脂からなる結合剤樹脂を含んでなり;
前記誘電性充填材層は、前記第1の樹脂と前記マイカフレーク小片及び前記無機熱伝導性電気抵抗性充填材粒子との均一な混合物からなる、前記第1のガラス繊維層の上の塗被層であり、
前記誘電性充填材層においては、前記マイカフレーク小片及び前記無機熱伝導性電気抵抗性充填材粒子からなる層へ前記第1の樹脂浸透しておらず
前記充填材粒子に対する前記マイカフレーク小片の比は、体積で、少なくとも1:1であり;
前記誘電性充填材層における前記結合剤樹脂の百分率は、25〜50体積%であり
記無機熱伝導性電気抵抗性充填材粒子は、高熱伝導性材料で被覆された非高熱伝導性材料からなる;ことを特徴とする
前記適用前の電気絶縁テープ。
【請求項9】
前記第2の樹脂が、Bステージレジンである、請求項8に記載の電気絶縁テープ。
【請求項10】
前記非高熱伝導性材料がシリカからなる請求項8に記載の電気絶縁テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、多目的電気絶縁テープに関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧又は大電流キャリヤ伝導体を始めとする任意の形態の電気器具を使用する場合、典型的には、絶縁材料の熱放散性が必要とされる。サイズの縮小並びに全ての電気及び電子系の合理化を絶え間なく推進する場合、より良好でよりコンパクトな絶縁体及び絶縁系が対応して必要とされる。
【0003】
エポキシ、ポリエステル及びフェノール系配合物等の様々な有機重合体熱硬化性樹脂物質が、それらが有する実用的な利点の故に、電気絶縁系において広範囲に使用されている。これらは、表面に容易に接着しうる強靱で柔軟な電気絶縁材料である。フレーク又は薄片形態のマイカ粒子及びガラス繊維等の伝統的な高電圧電気絶縁材料は、一般的な熱硬化性重合体樹脂で表面コーティングされ、それで結合されると、機械的強度、耐化学薬品性及び電気絶縁特性が向上した複合材料を与える。多くの場合、その調整可能な液体特性、様々な材料への優れた結合強度及び抜群の誘電特性により、エポキシ系重合体樹脂が使用される。
【0004】
その本来の性質により、良好な電気絶縁体は、また、良好な熱絶縁体である傾向を有するが、この特性は、望ましくない。特に空冷電気器具及び構成部品の場合、熱絶縁特性は、構成部品、更には器具全体の効率及び耐久性を低下させる。最大電気絶縁及び最小熱絶縁特性を有する電気絶縁系を生産することが望ましい。
【0005】
電気絶縁は往々にして、それ自体が様々な層を有する絶縁テープの形態で現れる。これらのタイプのテープには、誘電体層が、共通しているが、誘電体層は、引張強さのために、担体層に界面で結合されており、両層が重合体樹脂で含浸されていることが多い。好ましいタイプの電気絶縁材料は、マイカテープである。マイカテープの改善には、米国特許第6103882号明細書に教示されている触媒添加マイカテープが包含される。マイカテープを伝導体の周囲に巻き付けると、極めて良好な絶縁を生じさせることができる。この一つの例が図1に示されている。そこでは、複数回巻きつけられた伝導体14からなるコイル13が図示されており、伝導体14は、そこに図示されている例では、ベークライト処理されたコイルに組立てられている。伝導体絶縁体15は、繊維材料、例えばガラス繊維若しくはガラスマット及びダクロンマット、又は熱処理されているポリエステル若しくはポリイミドから製造された重合体フィルムから調製されている。コイルのための接地絶縁は、1つ又は複数の層の複合マイカテープ16をベークライト処理されたコイル14の周りに巻き付けることによりもたらされる。このような複合テープは、例えば、ガラス繊維布又はポリエチレングリコールテレフタレートマットでできた柔軟な裏当てシート18と組み合わされた小さなマイカフレークでできた紙又はフェルトであってよく、ここで、マイカ20の層は、液体樹脂結合剤によりそれに結合されている。通常、複数層の複合テープ16を、電圧要求に応じてコイルの周りに巻き付ける。強靱な繊維材料の外側テープ21、例えばガラスベースのテープ、の巻き付けをコイルに適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6103882号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、多重の薄層マイカテープ16をコイルの周りに巻き付けるが、高電圧コイルには、16以上の層が、通常、使用される。次いで、重合体樹脂がテープ層に含浸される。これらの含浸樹脂も、また、絶縁テープとは独立に、絶縁体として使用することができる。残念ながら、この絶縁量により更に、熱放散の複雑さが増す。電気絶縁並びに機械的及び熱容量を始めとする他の性能因子を低下させることなく、更に、幅広い用途で使用することができ、従来の方法の伝導性よりも高い伝導性で熱を伝導させることができる電気絶縁が必要とされている。
【0008】
先行技術には他の問題点が存在し、これらのうちのいくつかは、更に読み進めば明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述のことを念頭において、テープの巻きつけによる絶縁を特に容易にする、本発明と一致する方法及び装置は、誘電性熱伝導性電気絶縁性充填材層を挟持する2枚のガラスベースの担体を包含するテープを包含する。熱伝導性電気絶縁性充填材層は、マイカ粒子/フレーク小片(flaklet)及び他の熱伝導性充填材粒子の組合せである。充填材粒子は、高熱伝導性であり、比較的非電気伝導性である。これらは、様々なサイズを有してよいが、特には、その最長寸法で1〜1,000nmであり、特に、窒化物、炭化物及び酸化物から形成される。充填材層における、マイカフレーク小片に対する充填材粒子の比は、体積で1:1以下である。
【0010】
充填材層は、また、マイカフレーク小片及び充填材粒子と均一に混合されている結合剤樹脂を有する。充填材層における樹脂の量は変動しうるが、充填材層の体積に対して最小で約25〜50%に保持されるべきである。ガラス担体層を、また、熱硬化性重合体樹脂で含浸する。充填材層で使用されるものとは異なる種類のものであってよいが、典型的には、同じ種類の重合体樹脂(即ち、エポキシ樹脂)を、全テープ構成成分の化学的相溶性のために使用する。取り扱いの容易さのために、樹脂を、テープの適用前に、部分的に硬化させることができ、いくつかの用途では、B段階テープが有利であることがある。
【0011】
充填材層の厚さは、用途に応じて変動しうるが、通常、約3〜5ミル(0.076〜0.127mm)厚である。ガラス担体層は、それぞれ、約1〜3ミル(0.025〜0.050mm)厚である。
【0012】
本発明によるこれら及び他の目的、形態及び利点を、第1及び第2の担体層、並びにマイカフレーク小片、充填材粒子及び結合剤樹脂を含有してなり、第1及び第2の担体層の間に配置されている誘電性充填材層を含有してなる電気絶縁テープによる特定の実施態様で提供する。一側面では、充填材粒子は、円板及びプレート小片(platelet)であり、他の側面では、結合剤樹脂には、エポキシ、ポリイミドエポキシ、液晶エポキシ及びシアン酸エステルが包含される。
【0013】
より特定の側面では、担体層は、ガラス繊維である。充填材粒子に対するマイカフレーク小片の比は、体積で、少なくとも1:1であり、誘電性充填材層における結合剤樹脂の百分率は、25〜50体積%であり、第1及び第2の担体層が、第2樹脂で含浸される。
【0014】
特定の側面では、第2樹脂は、エポキシ等の熱硬化性重合体樹脂又は他の前述の熱硬化性樹脂であり、他の側面では、第2樹脂は、B段階樹脂である。
【0015】
一側面では、無機充填材粒子は、1〜100,000nmの長さ及び約5〜50のアスペクト比を有する。他の側面では、無機充填材粒子は、酸化物、窒化物及び炭化物のうちの少なくとも1種から選択され、又は、他の側面では、誘電性充填材層は、Al23、AlN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si34、SiC及びSiO2を含む酸化物、窒化物及び炭化物のうちの少なくとも1種であり、これらの混合化学量論的及び非化学量論的組合せであってもよい。
【0016】
更に他の側面では、無機充填材粒子は、表面処理されて、結合剤樹脂との本質的に完全な共反応性を可能にする表面官能基が導入されており、より特定の側面では、官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン及びビニルの各基のうち、少なくとも1個を含む。
【0017】
他の実施態様では、本発明は、第1及び第2のガラス繊維層、並びにマイカフレーク小片、無機熱伝導性電気抵抗性充填材粒子及び結合剤樹脂を含有してなり、第1及び第2のガラス繊維層の間に配置されている誘電性充填材層を含有してなる、電気絶縁テープを提供する。この実施態様は、体積で、少なくとも1:1の充填材粒子に対するマイカフレーク小片の比を提供し、充填材層における結合剤樹脂の百分率は、25〜50体積%である。最終的に、第1及び第2のガラス繊維層を、第2熱硬化性重合体樹脂で予備含浸する。より特定の側面では、第2熱硬化性重合体樹脂は、B段階樹脂である。
【0018】
更に他の実施態様では、本発明は、ガラス繊維等の第1担体層及び第2担体層を得る段階、第2樹脂を第1及び第2の担体層に含浸する段階を含んでなる、絶縁テープを製造する方法を提供する。担体層は、第2樹脂で予備含浸することができる。第1担体層を誘電性充填材層でコーティングし、第2担体層を誘電性充填材層に加える。
【0019】
特定の側面では、第1担体層上への誘電性充填材層のコーティングを、無機粒子充填材を高度に充填したゾル−ゲル液体セラミック/ガラス変性重合体配合結合剤により、行なう。誘電性充填材層は、マイカフレーク小片、充填材粒子及び結合剤樹脂からなり、誘電性充填材層における結合剤樹脂の百分率は、25〜50体積%であり、誘電性充填材層における充填材粒子に対するマイカフレーク小片の比は、体積で、少なくとも1:1であり、誘電性充填材層は、酸化物、窒化物及び炭化物のうちの少なくとも1種である。そして最終的に、一側面では、電気デバイスに適用した後に、絶縁テープは完全に硬化される。
【0020】
本発明の他の実施態様も、また、存在し、これらは、詳細な説明を更に読むと明らかになるであろう。
【0021】
本発明を、例示のために次の図面を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】巻線型伝導体コイルに巻き付けられている絶縁テープの使用を示す図である。
図2】本発明によるテープの様式化された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、2枚のガラス担体層の間に挟持されている高熱伝導性誘電体層を含有してなる多用途の絶縁テープを提供する。先行技術では、マイカテープは、脆く、取り扱いが難しく、断熱性であり、幅広い工業に適用することができない。本発明は、マイカの電気抵抗特性、誘電体層における特殊な熱伝導性電気絶縁性充填材の熱伝導性並びにガラス担体の強度及び柔軟性を利用する、電気絶縁テープを提供する。
【0024】
テープは、重合体結合剤中のマイカ粒子及び熱伝導性電気絶縁性粒子を備えた誘電体層を挟持する2つのガラス担体を含む。誘電性熱伝導性電気絶縁性充填材層は、マイカ粒子/フレーク小片と熱伝導性充填材粒子との組合せである。充填材粒子は、高度に熱伝導性であり、相対的に電気伝導性ではない。これらは、様々なサイズを有してよいが、特には、その最長寸法で1〜1,000nmであり、特に、窒化物、炭化物及び酸化物から形成される。充填材層における、マイカフレーク小片に対する充填材粒子の比は、体積で1:1以下である。即ち、充填材層における固体相は、少なくとも50%がマイカである。無機充填材粒子は、様々な形状を有してよいが、好ましくは、隣接する充填材粒子と接触する表面積を最大化するために、マイカ粒子に相補的な形状、例えばプレート小片及び円板形状、を有する。
【0025】
誘電性充填剤層は、また、マイカフレーク小片及び充填材粒子と均一に混合されている樹脂を有する。充填材層における樹脂の量は変動しうるが、有機分含量を最小化するために、充填材層の約25〜50体積%である。ガラス担体層を、また、熱硬化性重合体樹脂で含浸するが、これは、充填材層で使用されるものとは異なる種類のものであってよい。取り扱いの容易さのために、誘電体層中の結合剤樹脂及び担体樹脂を、テープの適用前に、部分的に硬化又は完全に硬化させることができる。
【0026】
充填材層の厚さは、用途に応じて変動しうるが、通常、約3〜5ミル(0.076〜0.127mm)厚である。ガラス担体層は、それぞれ、約1〜3ミル(0.025〜0.050mm)厚である。
【0027】
テープの組立てにおいては、樹脂誘電性充填材層を、樹脂処理されたガラス担体の第1層上にコーティングする。次いで、樹脂処理されたガラス担体の第2層を、誘電性充填材層の上に置く。テープが巻きつけられた伝導体集成体中の空隙を除去するために、後で、熱硬化性重合体樹脂を、巻きつけられたテープに含浸してもよい。
【0028】
例えば、第1ガラス層を充填材層でコーティングする場合に、ゾル−ゲルセラミック/ガラス変性重合体配合物を、無機熱伝導性電気絶縁性粒子を高充填した結合剤として使用することができる。次いで、誘電体層を熱硬化性樹脂処理されたガラス担体により被覆する。次いで、有機樹脂処理されたガラス担体の表面層が、引張強度を高めるために加えられる。
【0029】
図2を参照すると、本発明の実施態様が示されている。様式化されているが、テープ24の一般的な割合の例が示されている。誘電性充填材層28は、樹脂含浸されたガラス担体の2層の間に挟持されており、ガラス担体は、フリース、マット又は布構造26であってよい。ガラス担体中の樹脂は、通常、半硬化樹脂であり、これは、テープの取り扱いをより容易にし、適用の際の硬化時間を改善する。絶縁耐力の大部分をテープにもたらす充填材層28は、3種の物質:通常、直径が0.01から0.05mmであるマイカフレーク小片30、熱伝導性及び電気絶縁性である無機充填材32、並びに熱硬化性重合体結合剤樹脂34からなる。
【0030】
KAl2 AlSi310(OH)2(白雲母)又はKMg3 AlSi310(OH2)(金雲母)等の一群のケイ酸塩であるマイカは、その特に高い絶縁耐力、低い誘電損失、高い抵抗率、優れた熱安定性及び優れたコロナ抵抗性の故に、これまで長らく、440Vを上回る電気機械における高圧電気絶縁の重要成分であった。現在、例えば米国特許第4,112,183号明細書及び同第4,254,351号明細書(Smith及びSmithら)に、それぞれ、示されているように、マイカは、ガラス担体裏打ち材上でフレークの形態で使用されており、コイルの機械巻き付けのために必要な機械的強度を提供している。多くの場合に、マイカテープは、コイルの周りに巻き付けられ、次いで、低粘度液体絶縁樹脂で、真空圧含浸(「VPI」)により、含浸される。このプロセスは、マイカテープに捕捉されている空気及び水分を除去するために、コイルを封じ込めたチャンバーを排気し、次いで、絶縁樹脂を圧力下に導入して、マイカテープを完全に樹脂で含浸させ、こうして、空隙を排除して、マイカマトリックス中の樹脂絶縁を生じさせる。この樹脂を、次いで、長時間加熱サイクルにより硬化させる。
【0031】
充填材は、金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物、並びに、数種の非金属の酸化物、窒化物及び炭化物であってよい。例えば、アルミナ、マグネシア、ジルコニア及び他の金属酸化物、並びに、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、他の金属窒化物、金属炭化物及び天然又は合成由来のダイアモンドである。充填材粒子は、列挙された各タイプの様々な物理的形態を有するものであってよく、粒子は、前述の材料の混成体であってよく、化学量論的及び非化学量論的混合酸化物、窒化物及び炭化物を有していてよい。これらのより具体的な例には、Al23、AlN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si34、SiC、SiO及びSiO2が包含され、これらの混合化学量論的及び非化学量論的組合せであってもよい。また、ケイ化物又は窒化物等の高熱伝導性を有する非酸化物セラミックであってもよい。更に、これらの粒子を表面処理して、誘電性充填材層のホスト有機重合体樹脂結合剤との反応に関与しうる様々な表面官能基を導入してもよい。また、シリカ及び他の充填材粒子材料等の非−高熱伝導性(HTC)材料を、HTC材料で、コーティングすることもできる。特定の実施態様では、充填材粒子は、主軸長さが5〜100,000nmであり、3〜100のアスペクト比を有する。これらの無機ナノ粒子は、また、密に共有結合した混成有機−無機均質材料を形成するために、反応性表面を有していてもよい。
【0032】
使用し得る1種の樹脂組成物は、二価フェノール1モル当たり1から2モル以上のエピクロロヒドリンを使用して、アルカリ性媒体中、エピクロロヒドリンを二価フェノールと約50℃で反応させることにより、得ることができる。加熱を数時間継続して、反応を進行させ、次いで生成物を洗浄して、塩及び塩基を含まなくする。生成物は、単一の簡単な化合物ではなく、通常、グリシジルポリエーテルの複雑な混合物であり、ビスフェノールA型エポキシドのジグリシジルエーテル又はビスフェノールF型エポキシドのジグリシジルエーテルが得られる。ビスフェノールエポキシドは、1を超える1,2−エポキシ当量を有し、通常、ジエポキシドである。
【0033】
有用な他のグリシジルエーテル樹脂には、エピハロヒドリンをアルデヒド、例えばフェノールホルムアルデヒド縮合物、と反応させることにより調製されるノボラックのポリグリシジルエーテルが包含される。グリシジルエステルエポキシ樹脂と同様に、脂環式タイプのエポキシドもまた有用であり、両方とも非グリシジルエーテルエポキシドであるが、これらは全て当分野でよく知られており、Smithらにより、米国特許第4254351号明細書に詳細に記載されている。この明細書には、本発明でも有用なエポキシ化ポリブタジエンが記載されている。これらの樹脂組成物は、ポリエポキシド樹脂と称される。熱硬化性樹脂の例には、エポキシ樹脂、ポリエステル、フェノール樹脂、シアン酸エステル、ポリイミド、シリコーン樹脂及びスチレン化樹脂が包含される。液晶熱硬化(LCT)構造に基づく特殊な変種のエポキシ樹脂は、非晶質エポキシ重合体樹脂に対して改善された熱伝導性をもたらす。
【0034】
他の有用な樹脂には、ポリエステル及び1,2−ポリブタジエンが包含されるが、これらは、全て、当分野ではよく知られている。通常、ポリエステル樹脂は、大きな群の合成樹脂であり、ほぼ全てが、二塩基酸と二価アルコールとの反応により製造される。いくつかの場合には、グリセリンやクエン酸等の三官能性モノマーが使用される。ポリエステル樹脂との用語は、マレイン酸等の不飽和二塩基酸から製造された生成物に特に適用される。不飽和ポリエステル樹脂を、架橋により更に重合させることができる。往々にして、スチレン等のもう一つの不飽和モノマーを、重合のこの第2段階の間に加えるが、重合は、適切な過酸化物触媒を用いると常温で行なうことができる。無水マレイン酸及びフマル酸は、一般的な不飽和酸成分であり、無水フタル酸又はアジピン酸若しくはアゼライン酸は、対応する飽和物質である。一般的に使用されるグリコールには、エチレン、プロピレン、ジエチレン、ジプロピレン及びある種のブチレンのグリコールが包含される。添加される重合可能なモノマーには、スチレン、ビニルトルエン、フタル酸ジアリル又はメタクリル酸メチルが包含される。不飽和ポリエステル樹脂に加えて、他の重要なタイプが存在する。1つの大きな群は、アルキド樹脂であり、これは、飽和酸及びアルコールモノマーから製造されるが、多種の変形があり、通常、不飽和脂肪酸を包含する。
【0035】
一般的に使用されるエポキシ樹脂は、ビスフェノールA及びビスフェノールF樹脂であり、これらは、ダウケミカル社(Dow Chemical Co)及び他の樹脂供給者から容易に市場で入手できる。ビスフェノールFは、より流動性があり、従って、多くの状況において、損傷部位に、より容易に浸透しうる。本発明の補修樹脂は、用途に応じて広い範囲の粘度を有してよいが、好ましい実施態様では、粘度は、100〜300センチポアズ(cp)であり、特定の粘度は120〜175cpである。
【0036】
一実施態様では、本発明は、第1及び第2の担体層、並びに、マイカ粒子、熱伝導性電気絶縁性充填材粒子及び結合剤樹脂を含んでなり、第1及び第2の担体層の間に配置されている誘電性熱伝導性電気絶縁充填材層を、含んでなる、電気絶縁テープを提供する。一側面では、熱伝導性電気絶縁性充填材粒子は、円板及びプレート小片であり、もう一つの側面では、結合剤樹脂には、エポキシ、ポリイミドエポキシ、液晶エポキシ及びシアン酸エステルが包含される。
【0037】
より特定の側面では、担体層は、ガラス繊維である。熱伝導性電気絶縁性充填材粒子に対するマイカ粒子の比は、体積で、少なくとも1:1であり、誘電性熱伝導性電気絶縁性充填材層における結合剤樹脂の百分率は、25〜50体積%であり、第1及び第2の担体層は、第2樹脂で含浸されている。
【0038】
特定の側面では、第2樹脂は、エポキシ等の熱硬化性重合体樹脂又は他の前述の熱硬化性樹脂であり、もう一つの側面では、第2樹脂は、B段階樹脂である。
【0039】
一側面では、無機熱伝導性電気絶縁性充填材粒子は、1〜100,000nmの長さ及び約5〜50のアスペクト比を有する。もう一つの側面では、無機熱伝導性電気絶縁性充填材粒子は、酸化物、窒化物及び炭化物のうちの少なくとも1種から選択され、又は、もう一つの側面では、誘電性熱伝導性電気絶縁性充填材層は、Al23、AlN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si34、SiC及びSiO2からなる酸化物、窒化物及び炭化物のうちの少なくとも1種であり、これらの混合化学量論的及び非化学量論的組合せであってもよい。
【0040】
更に他の側面では、無機熱伝導性電気絶縁性充填材粒子は、表面処理されて、結合剤樹脂との実質的に完全な共反応性を可能にする表面官能基が導入されていてもよく、より特定の側面では、官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン及びビニルの各基のうちの少なくとも1個を含有する。
【0041】
もう一つの実施態様では、本発明は、第1及び第2のガラス繊維層、並びに、マイカ粒子、無機熱伝導性電気抵抗性熱伝導性電気絶縁性充填材粒子及び結合剤樹脂を含んでなり、第1及び第2のガラス繊維層の間に配置されている誘電性熱伝導性電気絶縁性充填材層を含んでなる、電気絶縁テープを提供する。この実施態様は、体積で、少なくとも1:1の熱伝導性電気絶縁性充填材粒子に対するマイカ粒子の比、及び、25〜50体積%の熱伝導性電気絶縁性充填材層における結合剤樹脂の百分率を提供する。最終的に、第1及び第2のガラス繊維層を、第2熱硬化性重合体樹脂で予備含浸する。より特定の側面では、第2熱硬化性重合体樹脂は、B段階樹脂である。
【0042】
更にもう一つの実施態様では、本発明は、ガラス繊維等の第1担体層及び第2担体層を得る段階、第2樹脂で第1及び第2の担体層を含浸する段階を含む絶縁テープを製造する方法を提供する。担体層を、第2樹脂で予備含浸することができる。第1担体層に誘電性熱伝導性電気絶縁性充填材粒子をコーティングし、第2担体層を誘電性熱伝導性電気絶縁性充填材層に加える。
【0043】
特定の側面では、第1担体層上への誘電性熱伝導性電気絶縁性充填材層のコーティングを、無機粒子熱伝導性電気絶縁性充填材を高充填したゾル−ゲル液体セラミック/ガラス変性重合体配合結合剤により行なう。誘電性熱伝導性電気絶縁性充填材層は、マイカ粒子、熱伝導性電気絶縁性充填材粒子及び結合剤樹脂からなり、誘電性熱伝導性電気絶縁性充填材層における結合剤樹脂の百分率は、25〜50体積%であり、誘電性熱伝導性電気絶縁性充填材層における熱伝導性電気絶縁性充填材粒子に対するマイカ粒子の比は、体積で、少なくとも1:1であり、誘電性熱伝導性電気絶縁性充填材層は、酸化物、窒化物及び炭化物のうちの少なくとも1種である。そして最終的に、一側面では、絶縁テープは、電気デバイスに適用した後に、完全に硬化される。
【0044】
本明細書で使用される担体との用語は、絶縁テープで一般的に使用される任意の種類のガラス繊維ベース又は有機繊維ベースの材料を指している。担体の物理的形態には、ポリエステル、E−ガラス又はセラミック金属酸化物等の材料から構成されるマット、布及びフリースが包含されうる。高熱伝導性ガラス又はセラミック金属酸化物担体が、本発明の一般的な実施態様であり、本発明は、また、ダクロン(商標)、ポリエステルテレフタレート(PET)又はNomex(商標)として一般に知られている高密度アラミド紙等の有機重合体担体と共に使用することもできる。
【0045】
本発明の具体的な実施態様を詳述したが、当業者であれば、これらの詳細に対して様々な変更及び別法を、開示の教示全体を考慮すれば開発することができることを理解するであろう。従って、開示されている特定の配列は、単なる例示であることを意図しており、本発明の範囲を制限することを意図しておらず、本発明の範囲は、添付の請求項の全範囲並びにその任意及び全ての同等物に示されているとおりである。
【符号の説明】
【0046】
24 テープ
26 ガラス担体
28 誘電性充填材層
30 マイカフレーク小片
32 無機充填材
34 結合剤樹脂
図1
図2