(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図1は、第1の実施形態である露光装置を模式的に示した斜視図である。
【0025】
露光装置10は、フォトレジストなどの感光材料を塗布した(あるいは貼り付けた)基板SWへパターン光を直接照射するマスクレス露光装置であって、ゲート状構造体12、基台14を備える。基台14には、描画テーブル18を支持するX−Yステージ駆動機構56が搭載され、描画テーブル18上に基板SWが設置される。
【0026】
ゲート状構造体12には光源20a、20bが備えられており、また、パターン形成用の露光ヘッド20
1、20
2が基板SWの上方に並んで配設されている。露光ヘッド20
1は、DMD(Digital Micro-mirror Device)、投影光学系(ここでは図示せず)を備え、光源20aから放射される光に基づいてパターン像を基板SWに投影する。露光ヘッド20
2も同様の構成であり、光源20bの光によってパターン像を投影する。
【0027】
矩形状の基板SWは、例えばプリント基板、ドライフィルム、ガラス基板などの電子回路用基板であり、プリベイク処理、感光剤慮の塗布/貼り付け処理等が施されたブランクスの状態で描画テーブル18に搭載される。基板SW(描画テーブル18)には、互いに直交するX−Y−Z座標系が規定されており、描画テーブル18はX、Y方向に沿って移動可能であり、さらに、Z軸周りに回転可能である。ここでは、X方向を主走査方向、Y方向を副走査方向と規定する。
【0028】
露光装置10は、露光動作を制御する描画制御部(ここでは図示せず)を備える。描画制御部には、ここで図示しないモニタ、キーボードなどが接続されており、オペレータの操作に従って描画処理に関するセッティングが行われる。突出部31に設けられたCCD19は、基板SWの変形状態を検出し、アライメントが調整された後に露光動作が行われる。
【0029】
図2は、露光ヘッド20
1の内部構成を模式的に示した図である。露光ヘッド20
2も同様の内部構成になっている。
【0030】
光源である超高圧水銀ランプ20aは、紫外光である照明光を放射し、照明光学系32へ導かれる。照明光学系32によって平行光に成形された光は、ミラー群(図示せず)を経てDMD22に導かれる。DMD22は、数μm〜数十μmの微小矩形状マイクロミラーをマトリクス状に2次元配列させた光変調デバイスであり、ここでは1024×768のマイクロミラーによって構成される。なお、光源20aは超高圧水銀ランプに限らず、LD、LEDなど他の光源を用いることも可能である。また、光源20bについても、光源20aと同様の構成となっている。
【0031】
DMD22では、メモリセルに格納される制御信号(露光データ)に基づいて、各マイクロミラーがそれぞれ選択的にON/OFF制御される。ON状態のマイクロミラーで反射した光は投影すべきパターンに応じた光束であり、ミラー(図示せず)を介して投影光学系24へ導かれる。
【0032】
投影光学系24は、パターン光を基板SWの露光面に結像させる光学系であり、第1結像光学系26、画像分割光学系27、第2結像光学系28を備える。第1結像光学系26は、DMD22からのパターンに応じた光を焦点位置にある結像面(第1結像面)に結像させるとともに、パターン像全体を所定倍率で拡大する。
【0033】
画像分割光学系27は、後述するように、第1結像光学系26の結像面に形成されるパターン像を、結像面上において3分割し、3つのパターン像(以下、分割パターン像という)を形成する。画像分割光学系27によって形成された3つの分割パターン像は、第2結像光学系28によって露光面に形成される。像形成に関して言えば、画像分割光学系27は第2結像光学系28に組み込まれた光学系とみなすことができ、第2結像光学系28の前側焦点位置にある結像面は第1結像光学系26の結像面(焦点位置)に一致し、また、後側焦点位置にある結像面は、基板SWの露光面と一致する。
【0034】
基板SWが主走査方向Xに沿って移動するのに伴い、DMD22による投影エリア(露光エリア)は基板SWに対して相対的に移動する。投影エリアの位置に応じたパターン光を照射するように露光動作が定められた露光ピッチに従って実行される。これにより、パターンが主走査方向に沿って形成されていく。
【0035】
他の露光ヘッド20
2も同様であり、ラスタ走査をしながら露光動作が行われ、基板全体にパターンが形成されていく。描画処理が終了すると、現像処理、エッチング又はメッキ、レジスト剥離処理などが施され、パターンの形成された基板が製造される。
【0036】
ここでは基板SWの移動方向を主走査方向に一致させているが、基板SWを主走査方向Xに対し微小傾斜した状態で描画テーブル18に配置してもよい。この場合、描画テーブル18が主走査方向Xに沿って移動するとき、露光エリアは基板SWの長手方向(X方向)に対し傾斜した状態で相対移動する。
【0037】
露光方式としては、ステップ&リピート方式あるいは連続移動方式による多重露光方式が適用可能である。ステップ&リピート方式では、描画テーブル18は間欠的にX方向に沿って移動し、それに合わせて各マイクロミラーがON/OFF制御される。一方、連続移動方式では、描画テーブル18が連続的に移動しながら露光ピッチに応じて各マイクロミラーがON/OFF制御される。ここでは、連続移動方式が適用されている。
【0038】
次に、
図3、4を用いて、パターン像の分割および投影位置について説明する。
【0039】
図3は、3つの分割パターン像に応じたDMDにおける分割領域を示した図である。
図4は、露光面に投影される3つの分割パターン像の位置を示した図である。
【0040】
図3に示すように、DMD22の反射面には、主走査方向に応じた横方向に関して3等分した部分領域DM1、DM2、DM3(以下、分割反射領域という)が規定されている。DMD22全体によるパターン像は、画像分割光学系27によって部分領域DM1、DM2、DM3ごとに異なる位置へ投影される。
【0041】
図4に示すように、画像分割光学系27によって生成される3つの分割パターン像MP1、MP2、MP3は、副走査方向Yに沿って配列し、それぞれ走査バンドSB1〜SB3に投影される。
【0042】
画像分割光学系27が設けられない場合、DMD22全体から成る投影エリア(露光エリア)は、走査バンドSB2に沿って相対移動するが(
図4では符号TAで表す)、本実施形態では、DMD22の部分領域DM1、DM3に応じた投影エリアTA1、TA3(以下、部分投影エリアという)が、走査バンドSB2の上下に隣接する走査バンドSB1、SB3に沿ってそれぞれ相対移動し、中間部の部分投影エリアTA2だけが走査バンドSB2に沿って相対移動する。
【0043】
3つの部分投影エリアTA1、TA2、TA3は、一度に投影できるエリアであって、全体として3つの走査バンドSB1〜SB3に渡る露光幅Kをもち、同時にパターン形成可能となる。DMD22の部分領域DM1、DM2、DM3では、それぞれ走査バンドSB1、SB2、SB3に形成すべきパターン像の描画データに基づき、各マイクロミラーがON/OFF制御される。
【0044】
また、露光動作中の部分投影エリアTA1、TA2、TA3は、主走査方向に沿って互いに所定間隔Lだけ離れている。DMD22の部分領域DM1に応じた部分投影エリアTA1が先頭の投影位置に該当し、部分投影エリアTA2、TA3が所定時間遅れて同じX方向座標位置を通過していく。
【0045】
次に、
図5〜7を用いて、画像分割光学系の構成について説明する。
【0046】
図5は、画像分割光学系の概略的斜視図である。
図6は、画像分割光学系の概略的分解斜視図である。
図7は、画像分割光学系の一部構成を示した図である。
【0047】
画像分割光学系27は、プリズムなどの光学部材から構成されており、一対の反射光学系によって構成される。ただし、
図5、6では、一方の反射光学系27Aのみ図示している。
【0048】
画像分割光学系27は、露光面SWに平行な第1結像光学系26の結像面FSに形成されるパターン像MPを、結像面FS上において3分割する。反射光学系27Aは、DMD22の部分領域DM1に応じた分割パターン像MP1を形成し、投影する光学系であり、図示しない他方の反射光学系は、部分領域DM3に応じた分割パターン像MP3を形成する。
【0049】
反射光学系27Aは、2つのプリズム42、44と、光路長調整光学部材46から構成される。プリズム42は、互いに平行平面関係にある一対の反射面42R1、42R2を有し、また、プリズム44も、互いに平行平面関係にある一対の反射面44R1、44R2を有する(
図5、6参照)。
【0050】
反射光学系27Aの光入射面となるプリズム表面42Sは、第1結像光学系26の結像面FSに位置し、DMD22の部分領域DM1(
図4参照)からの反射光によって形成される画像部分MP01の光、すなわち分割パターン像の光がプリズム42に入射する。他方の反射光学系には、部分領域DM3からの反射光によって形成される画像部分MP03の光が入射する。部分領域DM2に応じた画像部分MP02の光は、どちらの反射光学系にも入射せずそのまま直進する。
【0051】
図7に示すように、プリズム42に設けられた反射面42R1は、第1投影光学系26の結像面FSに対して交差せず、接している。具体的には、その一辺42REがプリズム表面42Sに位置し、プリズム表面42Sに対し傾斜している。また、反射面42R1の辺42REは、副走査方向に応じた方向に沿って延び、DMD22に規定された部分領域DM1〜DM3の境界ライン方向に対応している。
【0052】
反射面42R1は、パターン像MPの画像部分MP01における境界ライン全体を結像面FSに規定する。他の反射光学系においても同様に反射面が配置構成されており、パターン像MPの画像部分MP03を規定する境界ライン全体が反射面の一辺に対応し、結像面FS上に位置する。
【0053】
このようにパターン像MPは、結像面FSに位置する反射面の辺(境界ライン)に従い、結像面FS上で3つの画像部分MP01〜MP03に分割され、それぞれ分割パターン像として規定される。画像部分MP01を形成する反射光は、反射光学系27Aに入射すると、プリズム42の反射面42R1で反射する。
【0054】
上述したように、プリズム42の一対の反射面42R1、42R2は、平行平面関係にあり、入射光が反射面42R1、反射面42R2によって順に反射することにより、画像部分MP01の投影位置は、主走査方向Xに沿って移動(シフト)する。反射面42R2において反射した光は、プリズム44に入射する。
【0055】
ブロック44A、44Bから成るプリズム44に入射した光は、平行平面関係にある一対の反射面44R1、44R2によって順次反射する。これにより、主走査方向Xに沿って移動された画像部分MP01の投影位置が、さらに副走査方向Yに沿って移動する。
【0056】
他方の反射光学系も反射光学系27Aと同一形状の光学系で構成されており、同様に2つのプリズムを備え、各プリズムには平行平面関係にある1対の反射面が設けられている。ただし、他方の反射光学系は反射光学系27Aと対向するように回転して配置されている。そのため、反射光学系27Aでは、画像部分MP01の投影位置を、主走査方向Xに関してプラス方向、副走査方向Yに関してマイナス方向に移動させるに対し、他方の反射光学系では、画像部分MP03の投影位置を、主走査方向Xに関してマイナス方向、副走査方向Yに関してプラス方向に移動させる。
【0057】
反射光学系27のプリズム44から出射した光は、光路長調整光学部材46に入射する。光路長調整光学部材46は、2つの反射光学系いずれにも入射しない画像部分MP02の光に対する露光面SWまでの光路長と、反射光学系27Aに入射する画像部分MP01の光の光路長を一致させるように、所定のサイズ、屈折率を有する。
【0058】
そして、他方の反射光学系にも、同じように光路長調整光学部材が設けられている。これにより、第1結像面FSにおいて分割規定された3つの分割パターン像MP1、MP2、MP3は、第2結像光学系28により露光面SWに合焦画像(ピントの合った画像)として形成される。
【0059】
なお、画像部分MP01と画像部分MP03の光に対しそれぞれ光路長の調整を行う代わりに、画像部分MP02の光にのみ光路長の調整を行ってもよい。また、光路長調整光学部材は、所定のサイズ、屈折率を有する透明体を用いる代わりに、複数の反射面を組み合わせて光路長を調整する反射光学系を用いても良いし、リレーレンズなどの屈折光学系、あるいはそれらの組み合わせを用いても良い。
【0060】
図8は、描画装置に設けられた描画制御部のブロック図である。
【0061】
描画制御部50は、外部のワークステーション(図示せず)と接続され、モニタ50B、キーボード50Cが接続される露光制御部52を備える。露光制御部52は、露光動作処理を制御し、露光データ生成部76、タイミングコントロール回路73、描画テーブル制御回路53、光源制御部61などの回路へ制御信号を出力する。露光動作処理を制御するプログラムは、露光制御部52内のROM(図示せず)に格納されている。
【0062】
ワークステーション(図示せず)から露光制御部52に入力されるパターンデータは、描画パターンの位置情報(輪郭位置情報)をもつベクタデータ(CAD/CAMデータ)であり、X−Y座標系に基づいた位置座標データとして表される。
【0063】
第1、第2、第3ラスタデータ生成部72A、72B、72Cは、ベクタデータを変換し、それぞれ、走査バンドSB1、SB2、SB3に描画すべきパターンのラスタデータを順次生成する。生成されたラスタデータは、それぞれ第1、第2、第3バッファメモリ74A、74B、74Cに一時的に格納される。
【0064】
各バッファメモリに一時的に格納されるラスタデータは、露光ピッチにあわせて出力される。すなわち、露光ピッチ分だけ部分投影エリアが移動して次の露光動作を実行可能となったとき、ラスタデータ出力が行なわれる。第1、第2、第3ラスタデータ生成部72A、72B、72Cにおけるラスタデータの出力制御は、露光制御部52に設けられたアドレス制御回路(図示せず)から出力される制御信号に基づいて行われる。
【0065】
ラスタデータが露光データ生成部76へ送られると、露光データ生成部76では、部分投影エリアTA1、TA2、TA3の位置に応じたラスタデータが統合し、DMD22の各マイクロミラーをON/OFF制御する信号が、DMD22全体に対する1つの露光データとして生成される。DMD22では、露光データ生成部76から出力される露光データに基づき、マイクロミラーがON/OFF制御される。
【0066】
タイミングコントロール回路73は、バッファメモリ74A、74B、74C、露光データ生成部76等に対し、タイミング調整のためクロックパルス信号を同期信号として出力する。また、CCDセンサ19から出力される画像信号に基づき、画像処理部62は基板SWに形成されたアライメントマークの位置を検出する。
【0067】
描画テーブル制御回路53は、駆動回路54を介してモータ(図示せず)を備えたX−Yステージ駆動機構56を制御し、これによって描画テーブル18の移動速度、基板送り方向等が制御される。位置検出センサ55は、描画テーブル18の位置、すなわち部分投影エリアTA1、TA2、TA3の描画テーブル18に対する相対的位置を検出する。
【0068】
露光ヘッド20
2に対しても、同様にラスタデータ変換処理、DMD駆動処理等に関する回路(図示せず)が設けられており、同様の露光動作処理が行われる。
【0069】
次に、
図9、10を用いて、バッファメモリの構造と、ラスタデータ生成処理および露光データ生成処理について説明する。
【0070】
図9は、バッファメモリの容量およびラスタデータ生成位置を示した図である。
図10は、露光面上の分割パターン像の投影位置を示した図である。
【0071】
ラスタデータの生成処理と、DMD22を駆動制御する露光データ生成処理は、別々かつ非同期で行なわれている。本実施形態では、ラスタデータ生成処理において、主走査方向Xに沿って共通の基準位置X0に従い、ラスタデータを生成する。露光制御部52は、ラスタデータ生成部72A、72B、72Cに対し、共通の同期信号でラスタデータ出力タイミングを調整する。
【0072】
一方で、バッファメモリ74A、74B、74Cを設けることにより、露光データ生成部76に入力されるラスタデータのタイミングが、部分投影エリアTA1、TA2、TA3の実際の位置に合わせて調整される。
【0073】
バッファメモリ74A、74B、74Cは、シフトレジスタによって構成されるFIFO型、同期型メモリであり、メモリ容量は、それぞれ部分投影エリアの位置に従って異なる。DMD22の部分領域DM1に応じたバッファメモリ74Aのメモリ容量(サイズ)が最も少なく、部分投影エリアTA2、TA3のメモリ容量が相対的に大きい。
【0074】
各バッファメモリはシフトレジスタで構成されることから、メモリ容量が多いほど、入力した露光データの出力タイミングが遅くなる。その結果、部分領域DM2、DM3に対するラスタデータは、部分領域DM1のラスタデータよりもタイミングが遅れて露光データ生成部76へ出力される。第2バッファメモリ74B、第3バッファメモリ74Cのメモリ容量は、部分投影エリアTA1に対する部分投影エリアTA2、TA3の距離間隔L、2Lに合わせた容量に定められている。
【0075】
部分投影エリアTA1の位置が基準位置X0として定められており、対応するバッファメモリ74Aのメモリサイズは、例えば部分領域DM1のサイズに相当する容量に設定できる。一方、部分投影エリアTA2は主走査方向Xに沿って部分投影エリアTA1よりも距離間隔Lだけ後方に位置するため、その距離間隔L分だけメモリ容量が大きい。さらに、部分投影エリアTA2は、距離間隔2L分だけメモリ容量が大きい。
【0076】
バッファメモリ74Aとバッファメモリ74Bのメモリ容量の差は、以下の式によって表すことができる。ただし、部分投影エリアTA2のX座標をX1、露光ピッチをPP、そして、MA、MBは、それぞれ第1バッファメモリ74A、第2バッファメモリ74Bのメモリ容量を示す。また、[・・]は整数部分の値を表す。
[(X0−X1)/PP]=MB−MA ・・・・(1)
【0077】
同様に、バッファメモリ74Aとバッファメモリ74Cのメモリ容量の差は、以下の式によって表すことができる。ただし、MCはバッファメモリ74Cのメモリ容量を表す。
[(X0−X2)/PP]=MC−MA ・・・・(2)
【0078】
したがって、(1)、(2)式に基づき、データ処理上で座標単位となる露光ピッチPP、第1バッファメモリ74のメモリ容量が定められると、部分投影エリアTA1、TA2、TA3の相互の距離間隔に基づき、第2、第3バッファメモリ74B、74Cのメモリ容量を定めることができる。その結果、バッファメモリ74A、74B、74Cから出力されるラスタデータは、実際の部分投影エリアTA1、TA2、TA3の位置に対応するデータとなる。
【0079】
なお、[(X0−X1)/PP]、[(X0−X2)/PP]の小数値については、あらかじめオフセット値として設定され、露光位置に加算されている。
【0080】
図11は、ラスタデータ生成処理を示したフローチャートである。
【0081】
最初の露光位置が設定されて描画処理が開始されると、走査バンドSB1〜SB3に対するラスタデータが生成される。生成される3つのラスタデータは、走査バンドSB1を相対移動する部分投影エリアTA1の基準位置X0に合わせて順次生成される(S101、S102)。
【0082】
第1〜第3バッファメモリ74A〜74Cにデータ書き込み可能な空き容量がある場合、生成された3つのラスタデータを第1〜第3バッファメモリ74A〜74Cに送信する(S103、S104)。ラスタデータが送信されると、次の新たなラスタデータが生成される。描画が終了するまで、ラスタデータの生成処理が繰り返し実行される(S105)。
【0083】
図12は、露光データ生成処理、露光動作処理を示したフローチャートである。
【0084】
最初の露光位置が設定されて描画処理が開始されると、描画ステージ18が所定速度で移動するように制御される(S201、S202)。露光位置に到達すると、対応するラスタデータが、第1〜第3バッファメモリ74A〜74Cから読み出され、露光データ生成部76へ送られる。これにより、DMD22全体に対する1つの露光データが生成される(S203、S204)。
【0085】
露光動作処理は、露光データに基づいて各マイクロミラーがON/OFF制御されることによって実行される。ここでは多重露光方式が適用されているため、露光ピッチは部分投影エリア幅より短い。露光時間は、露光ピッチよりも短い時間に定められている。
【0086】
描画テーブル18は連続的に移動しており、露光ピッチPP分の距離だけ描画テーブル18がさらに移動すると、新たな露光位置に応じたラスタデータが、第1〜第3バッファメモリ74A〜74Cから読み出される。描画が終了するまで、露光データ生成処理および露光動作処理が繰り返し行われる。
【0087】
このように本実施形態によれば、画像分割光学系27により、パターン像MPが第1投影光学系26の結像面FSにおいて3分割される。そして、第1結像光学系の結像面FSに規定された分割パターン像の光を露光面SWに結像させる過程において、中間部の画像部分MP02以外の両側の画像部分MP01、MP03が、画像分割光学系27により、主走査方向、そして副走査方向へ順に移動する。これにより、3つの分割パターン像MP1、MP2、MP3が、主走査方向Xに関して互いに間隔を空けながら、副走査方向Yに沿って並んで形成される。
【0088】
パターン像MPの分割ライン(境界ライン)は、アパーチャーの枠部分に相当し、光量不足になると分割画像周辺の不鮮明になる。反射光学系27Aの反射面42R1が結像面FSに交差せず、一辺42REが結像面FS上に位置することにより、パターン像MPの分割ライン全体が合焦位置(パターン像のピントが合う位置)にある。そのため、光量不足になることなく、各分割パターン像とも全体的に鮮明な合焦画像として形成することができる。
【0089】
さらに、本実施形態では、ラスタデータ生成部72A、72B、72Cにおいて共通する基準位置に基づくラスタデータが生成された後、ラスタデータが一時的にバッファメモリ74A、74B、74Cに格納される。シフトレジスタで構成されるバッファメモリ74A、74B、74Cは、部分投影エリアTA1、TA2、TA3の相互距離間隔に応じてそれぞれメモリ容量が相違し、ラスタデータの入力から出力するまでにかかる時間が相違することによって、分割パターン像の投影位置が結果的に等距離間隔で互いに離れた位置になる。
【0090】
ラスタデータ生成、露光データ生成を含めた一連のデータ処理では、ラスタデータ生成処理と露光データ生成処理が非同期で独立している構成を採用し、ラスタデータ生成処理がタクトタイムに影響しないように構成されている。そして、ラスタデータの生成、読み出しは共通の基準位置に合わせて実行し、バッファメモリ74A、74B、74Cからの出力タイミングを別々に調整することにより、実際の部分投影エリアTA1、TA2、TA3の位置に応じたラスタデータが統合され、DMD22全体に対する1つの露光データが生成される。
【0091】
ラスタデータ生成処理においては、部分投影エリアTA1、TA2、TA3の主走査方向Xに沿った位置の相違に関係なく共通の基準位置に基づいてラスタデータ生成処理を行なうことができるため、主走査方向Xに関する描画開始位置、終了位置付近で余分なデータ処理をする必要がなくなる。
【0092】
また、共通の基準位置に基づいてラスタデータ生成処理を行なうため、部分投影エリアごとに読み出しアドレス演算する必要がなく、1つのアドレス制御回路によるアドレス制御によって複数のラスタデータ生成処理、読み出し処理を行うことができる。
【0093】
さらに、露光データの入力(統合)タイミングはバッファメモリの容量サイズによって調整されるため、1つの部分投影エリアだけを必要な位置情報として検出すれば、他の部分投影エリアの位置情報については特に検出する必要がなく、自動的に部分投影エリアの位置にあわせたパターン像が投影される。
【0094】
また、シフトレジスタで構成されるバッファメモリの容量サイズを調整することによってラスタデータの出力タイミング調整を行なうことにより、バッファメモリ容量を必要最低限の容量に抑えることができる。
【0095】
画像分割に関しては、パターン像を2つに分割してもよい。この場合、パターン像を2等分されてそれぞれ上述した反射光学系により移動させてよく、あるいは、一方の分割部分だけを反射光学系によって移動させるように構成してもよい。
【0096】
分割パターン像MP1、MP2、MP3については、副走査方向に沿って互いにオーバラップするように副走査方向に沿って配列させることも可能であり、あるいは、副走査方向に沿って互いに間隔が設けられるように投影位置を移動させることも可能である。
【0097】
副走査方向に沿った複数の部分画像の配列については、反射光学系以外の光学系を用いて特定の画像部分を移動させるようにすることも可能である。また、移動させる画像部分および移動方向については、上述した構成以外でも可能であり、例えば、パターン像の一方の端部側にある画像部分を移動させず、中間部、他方の端部の画像部分を移動させるように構成してもよい。
【0098】
バッファメモリについては、入力タイミングと出力タイミングを非同期にするFIFO型バッファメモリを代わりに使用することにより、複数のラスタデータの出力タイミングをそれぞれ調整することも可能である。
【0099】
次に、
図13、14を用いて第2の実施形態である露光装置について説明する。第2の実施形態では、パターン像を90度回転して露光面に投影する画像分割光学系が用いられ、分割パターン像が副走査方向に沿って一列に並ぶ。それ以外の構成については、第1の実施形態とほぼ同じである。
【0100】
図13は、第2の実施形態における画像分割光学系の概略的斜視図である。
図14は、第2の実施形態における分割パターン像の投影位置を示した図である。
【0101】
画像分割光学系127は、プリズム142と、プリズム142に対して対称的に配置される一対のプリズム144、146を備える。DMDからのパターン光は、第1の実施形態と異なり、露光面に平行な方向に沿ってプリズム142に入射する。
【0102】
三角柱状のプリズム142の1辺は、ここでは図示しない第1結像光学系の結像面上に位置し、副走査方向に沿っている。これにより、パターン像MPが結像面上において2分割される。ただし、第1結像光学系の結像面は、露光面に直交する。
【0103】
分割パターン像となる画像部分MP01、MP02の光は、プリズム142の表面に形成された反射面によって互いに逆方向に導かれる。このとき、反射面は、入射した光を直角に反射させる。さらに、プリズム142からの光は、プリズム144、146の表面にそれぞれ形成された反射面に反射することにより、画像部分MP01、MP02の光は、直角に反射し、これによって分割パターン像MP1、MP2が露光面に形成される。
【0104】
図14に示すように、分割パターン像MP1、MP2は、主走査方向Xに関して同じ位置に投影される。また、分割パターン像MP1、MP2は、副走査方向Yに沿って互いに離れた位置に投影される。なお、第2の実施形態では、バッファメモリによるラスタデータの出力タイミング調整は行われず、また、光路長補正用光学部材も配置されない。
【0105】
なお、画像分割光学系を特徴とした露光装置を考慮すれば、上述したような、ラスタデータ生成処理と露光データ生成処理の間にバッファメモリを設けてタイミング調整する構成だけでなく、ラスタデータ生成処理、露光データ生成処理を一体的な処理とし、ラスタデータの生成、出力タイミングを走査バンドごとに異なるタイミングに設定してもよい。