(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881335
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】流路切換弁
(51)【国際特許分類】
F16K 11/076 20060101AFI20160225BHJP
F16K 3/22 20060101ALI20160225BHJP
F16K 31/04 20060101ALN20160225BHJP
【FI】
F16K11/076 Z
F16K3/22 Z
!F16K31/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-183989(P2011-183989)
(22)【出願日】2011年8月25日
(65)【公開番号】特開2013-44415(P2013-44415A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2014年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 忠志
(72)【発明者】
【氏名】田村 葉子
【審査官】
関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−81122(JP,A)
【文献】
特開2005−29097(JP,A)
【文献】
実開昭58−60066(JP,U)
【文献】
特開2006−283677(JP,A)
【文献】
特開平10−137163(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/073898(WO,A1)
【文献】
特開平1−145472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11
F16K 3
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室及び該弁室の左右に開口する第1入出口と第2入出口を有する弁本体と、該弁本体に回動自在に支持された回動軸及び前記第1入出口と第2入出口を開閉するための平面視円弧状の円筒状弾性シール部を有するフラップ弁体と、を備えた流路切換弁であって、
前記円筒状弾性シール部は、上下方向幅が回転方向先端側ほど狭くなるようにその上下面に左右方向に所定角度傾斜せしめられる傾斜上下面が形成されるとともに、回転方向後端に半径方向外方に突出する後端シール用突部が設けられ、前記弁室における前記第1入出口と第2入出口の開口部には、前記円筒状弾性シール部の回転方向先端面部が押し付けられる先端受け面部が設けられるとともに、該先端受け面部に前記回転方向先端面部が押し付けられたとき、それと同時に、前記傾斜上下面が押し付けられる上下傾斜受け面部、並びに、前記後端シール用突部が押し付けられる後端受け用突部が設けられており、
前記円筒状弾性シール部は、その周方向中央部に前記後端シール用突部が設けられ、該後端シール用突部を含むその左半分で前記第1入出口を開閉するようにされ、前記後端シール用突部を含むその右半分で前記第2入出口を開閉するようにされていることを特徴とする流路切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れ方向(流路)を切り換えるための三方弁等の流路切換弁に係り、特に、入出口を開閉するための円筒状(平面視円弧状)の弁体を備えた流路切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流れ方向(流路)を切り換えるための三方弁等の流路切換弁としては、円筒状弁体あるいはボール弁体に開口ないし断面L形等の流路を設け、弁体を回動軸を介してモータ等の回転駆動源で回動させることにより入出口を選択的に開閉するようにしたものが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−308165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の流路切換弁では、弁体駆動時(入出口開閉時)において摺動部が多いので、摩擦抵抗が大きく、大きな駆動トルクが必要であり、また、弁体駆動時にはシール面(弁体外周面)が摺動する構成なので、シール面に摩耗が生じやすいとともに、シール面を弁座(パッキン)に強く押し付けられず、シール性がさほど良いとは言えなかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、弁体駆動時における摺動部を少なくして摩擦抵抗を可及的に低減し得るとともに、シール面の摩耗抑制、耐久性やシール性の向上等をも図ることのできる流路切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る流路切換弁は、基本的には、弁室及び該弁室
の左右に開口する
第1入出口と第2入出口を有する弁本体と、該弁本体に回動自在に支持された回動軸及び前記
第1入出口と第2入出口を開閉するための平面視円弧状の円筒状弾性シール部を有するフラップ弁体と、を備え、前記円筒状弾性シール部は、上下方向幅が回転方向先端側ほど狭くなるようにその上下面
に左右方向に所定角度傾斜せしめられる
傾斜上下面が形成されるとともに、回転方向後端に半径方向外方に突出する後端シール用突部が設けられ、前記弁室における前記
第1入出口と第2入出口の開口部には、前記円筒状弾性シール部の回転方向先端面部が押し付けられる先端受け面部が設けられるとともに、該先端受け面部に前記回転方向先端面部が押し付けられたとき、それと同時に、前記傾斜上下面が押し付けられる上下傾斜受け面部、並びに、前記後端シール用突部が押し付けられる後端受け用突部が設けられて
おり、前記円筒状弾性シール部は、その周方向中央部に前記後端シール用突部が設けられ、該後端シール用突部を含むその左半分で前記第1入出口を開閉するようにされ、前記後端シール用突部を含むその右半分で前記第2入出口を開閉するようにされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る流路切換弁では、フラップ弁体駆動時において摺動部となるのは実質的に回動軸と弁本体との接触部分だけであり、シール面となる円筒状弾性シール部にはほとんど摺接部が存在しないので、従来のものに比して摩擦抵抗が小さくなり、そのため、必要駆動トルクが小さくて済むとともに、シール面(円筒状弾性シール部)に摩耗が生じ難くなるので、耐久性が向上する。
【0009】
さらに、入出口の閉時には、円筒状弾性シール部の4辺(回転方向先端面部、傾斜上面部、傾斜下面部、及び後端シール用突部)が弁座形成部分(先端受け面部、傾斜上面部、傾斜下面部、後端受け用突部)に押し付けられるので、十分なシール性が得られ、従来のものに比して漏れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る流路切換弁の一実施形態(第1実施例)を示す正面図。
【
図2】第1実施例で使用されているフラップ弁体を示し、(A)は平面図、(B)は正面図。
【
図3】第1実施例で使用されている弁本体(の弁箱部)を示す平面図。
【
図4】
図3のX-X矢視線に従う、弁箱部と蓋状ホルダとからなる弁本体の断面図。
【
図5】第1実施例の動作説明(第1、第2流出口:開)に供される図であり、(A)は蓋状ホルダを取り除いた平面図、(B)は弁室内壁部及び円筒状弾性シール部の展開図。
【
図6】第1実施例の動作説明(第1流出口:閉、第2流出口:開)に供される図。
【
図7】第1実施例の動作説明(第1流出口:開、第2流出口:閉)に供される図。
【
図8】第2実施例の構成及び動作説明(第1流出口:開)に供される図であり、(A)は蓋状ホルダを取り除いた平面図、(B)は弁室内壁部及び円筒状弾性シール部の展開図。
【
図9】第2実施例の構成及び動作説明(第1流出口:閉)に供される図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の流路切換弁の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る流路切換弁の一実施形態(第1実施例)を示す正面図、
図2は第1実施例で使用されているフラップ弁体を示し(A)は平面図、(B)は正面図、
図3は第1実施例で使用されている弁本体(の弁箱部)を示す平面図、
図4は
図3のX-X矢視線に従う、弁箱部と蓋状ホルダとからなる弁本体の断面図、
図5から
図7は第1実施例の動作説明に供される図である。
【0012】
図示第1実施例の流路切換弁1は、三方弁の形態をとるもので、上面が開口した有底円筒状の弁箱部5Aとこの弁箱部5Aの上面開口部5aに装着固定された蓋状ホルダ7とからなる弁本体5と回動軸15を有するフラップ弁体14を備えている。
【0013】
弁本体5内には、蓋状ホルダ7を天井部とする弁室6が画成され、弁本体5の正面(前面)と左右の側面には、それぞれ前記弁室6に開口する入出口10、11、12が設けられている。ここでは、前面に設けられた入出口が流入口10とされ、左右の側面に設けられた入出口が第1流出口11と第2流出口12となっており、第1流出口11と第2流出口12は平面視で180度の角度間隔をあけて対向配置され、それらに等角度(90度)間隔で流入口10が配置されている。
【0014】
前記フラップ弁体14は、
図2に示される如くに、上部軸部15a、中間大径部15b、及び下部小径軸部15cからなる回動軸15と、下部小径軸部15cから半径方向に突出する連結アーム部16と、この連結アーム部16の先端に設けられた平面視円弧状(ここでは中心角が概略90度から100度程度)の円筒状部18と、該円筒状部18の内周面以外(外周面、上下端面、及び左右端面)を覆うように被着固定されたゴム製の円筒状弾性シール部30とを備えている。
【0015】
蓋状ホルダ7の中央に設けられた嵌挿穴7aには、前記フラップ弁体14の回動軸15の上部軸部15aが回動自在に支持され、フラップ弁体14の中間大径部15bは蓋状ホルダ7の嵌挿穴7a下部に設けられた大径穴部7bに嵌挿され、下部小径軸部15cの下端部は、弁室6の底部5bに設けられた軸受穴5cに嵌挿されている。このフラップ弁体14(の回動軸15)は、図示されていないステッピングモータ等の回転駆動源により正逆両方向に任意に回転せしめられるようになっている。
【0016】
前記フラップ弁体14の円筒状弾性シール部30は、半径方向内方に突出する突出部(回転方向先端面部31、31)を有し、その周方向中央部に、円筒状の他の部分より半径方向外方に突出する断面矩形の後端シール用突部35が設けられ、該後端シール用突部35を含むその左半分で第1流出口11を開閉するようにされ、後端シール用突部35を含むその右半分で第2流出口12を開閉するようにされている。
【0017】
より詳細には、円筒状弾性シール部30は、
図2(B)に示される如くに、上下方向幅Hが回転方向先端側ほど狭くなるように、言い換えれば、前記中央部に設けられている後端シール用突部35から回転方向(反時計回り、及び、時計回りの両方)先端側にかけてその上下面32、33がそれぞれ回転軸線Oに直交する平面に対して所定角度αだけ傾斜せしめられている。したがって、後端シール用突部35は、反時計回り時及び時計回り時の両方においてそれぞれ後端に位置し、その軸方向の長さ(上下方向幅H)は最も長くなっており、左右の回転方向先端面部31、31は、上下方向幅Hが最も短くなっている。
【0018】
前記弁室6における流出口11、12の開口部(の流入口10側)には、前記フラップ弁体14の円筒状弾性シール部30の回転方向先端面部31、31が押し付けられる先端受け面部21、21が設けられている。また、蓋状ホルダ7の下面部と弁本体5の底部5bとには、前記先端受け面部21に前記回転方向先端面部31が押し付けられたとき、それと同時に、傾斜上面部32及び傾斜下面部33がそれぞれ押し付けられる上側傾斜受け面部22及び下側傾斜受け面部23が設けられ、さらに、弁本体5(の弁箱部5A)における反流入口10側の左右には、それぞれ前記後端シール用突部35の上角部が押し付けられる断面三角形状の後端受け用突部25、25が設けられている。
【0019】
このような構成の本実施例の流路切換弁1では、フラップ弁体14が
図5に示される如くの中立位置にあるとき、すなわち、左右の回転方向先端面部31が左右の先端受け面部21から大きく離間(略同角度離間)し、同様に傾斜上面部32及び傾斜下面部33がそれぞれ上側傾斜受け面部22及び下側傾斜受け面部23から大きく離れるとともに、後端シール用突部35が後端受け用突部25、25から大きく離れているときは、第1、第2流出口11、12が共に開状態とされ、このときは、流入口10からの流体は第1流出口11及び第2流出口12の両方に流れる。
【0020】
一方、フラップ弁体14が
図5に示される中立位置から反時計回りに所定角度回転せしめられて、
図6に示される如くに、左側の先端受け面部21に回転方向先端面部31が押し付けられると、それと同時に、傾斜上面部32及び傾斜下面部33がそれぞれ上側傾斜受け面部22及び下側傾斜受け面部23に押し付けられるとともに、後端シール用突部35が
図6の左側に描かれている後端受け用突部25に押し付けられ、これにより、第1流出口11が全閉され、円筒状弾性シール部30により完璧にシールされる。
【0021】
逆に、フラップ弁体14が
図5に示される中立位置から時計回りに所定角度回転せしめられて、
図7に示される如くに、右側の先端受け面部21に回転方向先端面部31が押し付けられると、それと同時に、傾斜上面部32及び傾斜下面部33がそれぞれ上側傾斜受け面部22及び下側傾斜受け面部23に押し付けられるとともに、後端シール用突部35が
図7の右側に描かれている後端受け用突部25に押し付けられ、これにより、第2流出口12が全閉され、円筒状弾性シール部30により完璧にシールされる。
【0022】
このように本実施例の流路切換弁1では、フラップ弁体14の駆動時(=回動時=流出口11、12開閉時)において摺動部となるのは実質的に回動軸15と弁本体5との接触部分だけであり、シール面となる円筒状弾性シール部30にはほとんど摺接部が存在しないので、従来のものに比して摩擦抵抗が小さくなり、そのため、必要駆動トルクが小さくて済むとともに、シール面(円筒状弾性シール部30)に摩耗が生じ難くなるので、耐久性が向上する。
【0023】
さらに、流出口11、12の閉時には、ゴム製の円筒状弾性シール部30の4辺(回転方向先端面部31、傾斜上面部32、傾斜下面部33、及び後端シール用突部35)が弁座形成部分(先端受け面部21、上側傾斜受け面部22、下側傾斜受け面部23、後端受け用突部25)に押し付けられるので、十分なシール性が得られ、従来のものに比して漏れを低減することができる。
【0024】
また、上記実施例では、一つの流入口10と二つの流出口11、12を有する三方弁に本発明を適用した場合を例示したが、本発明は他の形態の三方弁や
図8、
図9に示される如くの二方弁にも適用可能である。
【0025】
図8、
図9に示される二方弁の形態をとる流路切換弁2(第2実施例)は、上記した三方弁の形態をとる第1実施例の流路切換弁1の弁本体5から第2流出口12を取り除くとともに、フラップ弁体14の円筒状弾性シール部30から第2流出口12の開閉に関与する部分を取り除いて、第1実施例の約半分となった円筒状弾性シール部30’を有するフラップ弁体14’で、第1流出口11の開閉のみを行うようにしたものである。
【0026】
かかる構成の流路切換弁2でも、第1実施例と同様に、弁体駆動時における摩擦抵抗を可及的に低減し得るとともに、シール面の摩耗抑制、耐久性やシール性の向上等を図ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 流路切換弁
5 弁本体
6 弁室
7 蓋状ホルダ
10 流入口
11 第1流出口
12 第2流出口
14 フラップ弁体
15 回動軸
21 先端受け面部
22 上側傾斜受け面部
23 下側傾斜受け面部
25 後端受け用突部
30 円筒状弾性シール部
31 回転方向先端面部
32 傾斜上面部
33 傾斜下面部
35 後端シール用突部