特許第5881337号(P5881337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5881337熱融通可視化装置および熱融通可視化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881337
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】熱融通可視化装置および熱融通可視化システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   F24F11/02 103D
   F24F11/02 103C
   F24F11/02 105Z
   F24F11/02 105B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-189915(P2011-189915)
(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公開番号】特開2013-50286(P2013-50286A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年6月2日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度、平成23年度、平成24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代型ヒートポンプシステム研究開発/都市域における下水管路網を活用した下水熱利用・熱融通技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願(委託先:公立大学法人大阪市立大学、関西電力株式会社、株式会社総合設備コンサルタント、中央復建コンサルタンツ株式会社、再委託先:株式会社NTTファシリティーズ総合研究所、三菱重工業株式会社))
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591124846
【氏名又は名称】株式会社総合設備コンサルタント
(73)【特許権者】
【識別番号】593122310
【氏名又は名称】中央復建コンサルタンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000128083
【氏名又は名称】株式会社 NTTファシリティーズ総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】中尾 正喜
(72)【発明者】
【氏名】中曽 康壽
(72)【発明者】
【氏名】三毛 正仁
(72)【発明者】
【氏名】上田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】栂野 良枝
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−136014(JP,A)
【文献】 特開2008−075968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒が流通する熱媒流通路と、前記熱媒流通路に接続されるとともに、該熱媒流通路を流通する熱媒の熱を利用可能な複数の拠点とを含む熱媒系統を可視化した基本フレームが格納されている第1記憶手段と、
前記拠点のそれぞれに設けられた通信装置から所定の時間間隔で各前記拠点における熱利用に関する情報を受信する受信手段と、
前記第1記憶手段に格納されている前記基本フレームを読み出し、該基本フレーム上に、各前記通信装置から受信した各前記拠点の熱利用に関する情報に基づく熱利用の状況が付加された熱媒系統図を作成する処理手段と、
前記処理手段によって作成された前記熱媒系統図を前記拠点のクライアント端末に送信する送信手段と
を具備し、
前記熱媒は、下水処理水や下水などのように熱量が成り行きである熱媒である熱融通可視化装置。
【請求項2】
前記受信手段は、前記通信装置から採熱量または排熱量を受信し、
前記処理手段は、前記受信手段によって受信された各前記拠点における前記採熱量または前記排熱量を前記基本フレーム上の各前記拠点に関連付けて表示する表示処理手段を具備する請求項1に記載の熱融通可視化装置。
【請求項3】
前記受信手段は、前記通信装置から採熱量または排熱量を算出するためのパラメータを受信し、
前記処理手段は、
前記受信手段によって受信された各前記拠点における前記パラメータに基づいて、各前記拠点における採熱量または排熱量を算出するデータ処理手段と、
前記データ処理手段によって算出された各前記拠点における採熱量または排熱量を前記基本フレーム上の各前記拠点に関連付けて表示する表示処理手段と
を具備する請求項1に記載の熱融通可視化装置。
【請求項4】
前記受信手段は、前記通信装置から各前記拠点における採熱前後の熱媒温度または排熱前後の熱媒温度を受信し、
前記表示処理手段は、前記受信手段によって受信された情報に基づいて求められた前記熱媒流通路を流通する熱媒温度を前記基本フレーム上の熱媒流通路に関連付けて表示する請求項2または請求項3に記載の熱融通可視化装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱融通可視化装置と、
複数の拠点のそれぞれに設けられ、前記熱融通可視化装置に対して当該拠点における熱利用の情報を送信する複数の通信装置と、
前記熱融通可視化装置と通信ネットワークを介して接続され、前記熱融通可視化装置によって作成された熱媒系統図を表示可能なクライアント端末と
を具備する熱融通可視化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱融通可視化装置および熱融通可視化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場プロセスや空調など様々な用途において、ある熱媒への排熱や、熱媒からの採熱が行われる。排熱または採熱される熱の温度や量は様々であり、最近ではある地点で排熱した熱を別の地点で採熱するなどして、熱を有効利用する「熱融通」という考え方が提案され、注目されている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、特許文献1には、工場や地域などの域内で発生した熱を相互に補完するようにエンドループを形成し、複数の地点における熱の有効利用を可能とする技術が開示されている。
このような熱融通は、工場程度の規模から都市のような大規模な場合もあり、規模は様々である。
また、近年、都市などでは、下水処理水や下水などの下水熱を用いた熱融通が期待されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2002/065034号
【特許文献2】特開2008−241226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
将来、上記のような熱融通が導入された場合、熱利用が行われる各拠点における熱利用の状況を集約し、各拠点のユーザに対して提供する仕組みが必要となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、熱利用が行われる各拠点における熱利用の状況を集約し、採熱および排熱の熱利用バランスを各拠点のユーザに対して提示することのできる熱融通可視化装置および熱融通可視化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、熱媒が流通する熱媒流通路と、前記熱媒流通路に接続されるとともに、該熱媒流通路を流通する熱媒の熱を利用可能な複数の拠点とを含む熱媒系統を可視化した基本フレームが格納されている第1記憶手段と、前記拠点のそれぞれに設けられた通信装置から所定の時間間隔で各前記拠点における熱利用に関する情報を受信する受信手段と、前記第1記憶手段に格納されている前記基本フレームを読み出し、該基本フレーム上に、各前記通信装置から受信した各前記拠点の熱利用に関する情報に基づく熱利用の状況が付加された熱媒系統図を作成する処理手段と、前記処理手段によって作成された前記熱媒系統図を前記拠点のクライアント端末に送信する送信手段とを具備し、前記熱媒は、下水処理水や下水などのように熱量が成り行きである熱媒である熱融通可視化装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、熱媒が流通する熱媒流通路と熱媒流通路に接続されて熱媒流通路を流通する熱媒の熱を利用可能な複数の拠点が表示された基本フレーム上に、各拠点の熱利用に関する状況が表示された熱媒系統図を各拠点のクライアント端末に送信するので、各拠点で行われている熱利用の状況が表示された熱媒系統図をクライアント端末の表示装置に表示させることができる。これにより、熱利用が行われる各拠点における熱利用の状況を集約し、採熱および排熱の熱利用バランスを各拠点のユーザに対して提示することが可能となる。
【0008】
上記熱融通可視化装置において、前記受信手段は、前記通信装置から採熱量または排熱量を受信し、前記処理手段は、前記受信手段によって受信された各前記拠点における前記採熱量または前記排熱量を前記基本フレーム上の各前記拠点に関連付けて表示する表示処理手段を具備することとしてもよい。
【0009】
このような構成によれば、通信装置から採熱量または排熱量を受信するので、表示処理手段は、受信した情報をそのまま基本フレーム上に表示することで、熱媒系統図を作成することが可能となる。
【0010】
上記熱融通可視化装置において、前記受信手段は、前記通信装置から採熱量または排熱量を算出するためのパラメータを受信し、前記処理手段は、前記受信手段によって受信された各前記拠点における前記パラメータに基づいて、各前記拠点における採熱量または排熱量を算出するデータ処理手段と、前記データ処理手段によって算出された各前記拠点における採熱量または排熱量を前記基本フレーム上の各前記拠点に関連付けて表示する表示処理手段とを具備することとしてもよい。
【0011】
このような構成によれば、通信装置から受信したパラメータに基づいて熱融通可視化装置側で各拠点における採熱量または排熱量の算出が行われ、算出された採熱量または排熱量が基本フレーム上に表示されて、熱媒系統図が作成される。
【0012】
上記熱融通可視化装置において、前記受信手段は、前記通信装置から各前記拠点における採熱前後の熱媒温度または排熱前後の熱媒温度を受信し、前記表示処理手段は、前記受信手段によって受信された情報に基づいて求められた前記熱媒流通路を流通する熱媒温度を前記基本フレーム上の熱媒流通路に関連付けて表示することとしてもよい。
【0013】
このような構成によれば、通信装置から受信された各拠点における採熱前後の熱媒温度または排熱前後の熱媒温度に基づいて求められた熱媒流通路を流通する熱媒温度が基本フレーム上に表示されることとなる。これにより、ユーザは熱媒の温度についても逐次把握することが可能となる。
【0014】
本発明は、上記いずれかの熱融通可視化装置と、複数の拠点のそれぞれに設けられ、前記熱融通可視化装置に対して当該拠点における熱利用の情報を送信する複数の通信装置と、前記熱融通可視化装置と通信ネットワークを介して接続され、前記熱融通可視化装置によって作成された熱媒系統図を表示可能なクライアント端末とを具備する熱融通可視化システムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱利用が行われる各拠点における熱利用の状況を集約し、採熱および排熱の熱利用バランスを各拠点のユーザに対して提示することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】熱融通を概念的に示した図である。
図2】本発明の一実施形態に係る熱融通可視化システムの全体概略構成を示したブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る熱融通可視化装置が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
図4】熱媒系統図の一例を示した図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る熱融通可視化装置の機能ブロック図である。
図6】熱媒系統が広域化した場合における熱媒可視化システムの全体構成を概念的に示した図である。
図7】熱媒系統が広域化した場合における熱媒可視化システムの全体構成を概念的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態に係る熱融通可視化装置および熱融通可視化システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、熱融通を概念的に示した図である。図1に示すように、熱の授受が行われる複数の拠点Aが点在しており、拠点A間は熱媒が流通する熱媒流通路Lによって接続されている。拠点Aは、例えば、ヒートポンプや冷凍機などの熱源機が設置されている場所であり、熱の授受が行われる場所である。図1において、熱媒流通路Lに向けて矢印が描かれている拠点Aは排熱が行われている拠点であり、熱媒流通路Lから拠点Aに向けて矢印が描かれている拠点Aは採熱が行われている拠点である。
【0018】
図1に示されるように、ある拠点Aにおいて排熱されることにより温められた熱媒が他の拠点において熱源として用いられることにより熱の再利用が行われ、ある拠点において採熱されることにより冷やされた熱媒が他の地点において冷却源として用いられることにより熱の再利用が行われていることがわかる。このような熱融通が行われることにより、エネルギ効率を高めている。
上記熱融通の一例としては、下水道熱の供給が挙げられる。このような場合、熱融通は、例えば、都市等の下水道局等により運営される。
【0019】
本実施形態における熱融通可視化装置1は、各拠点における上記のような熱の授受の状況をリアルタイムで示した熱媒系統図を作成し、これを各拠点に提供するものである。
【0020】
図2は、本実施形態に係る熱融通可視化システムの全体構成を示したブロック図である。熱融通可視化システムは、熱融通可視化装置1と、各拠点Aに設置された通信装置2と、クライアント端末3とを備えている。
熱融通可視化装置1と各拠点Aに設置されている複数の通信装置2とは所定の通信ネットワーク6を介して接続されている。この通信ネットワーク6に関しては特に限定されない。熱融通可視化装置1とクライアント端末3とは、所定の通信ネットワーク7、例えば、インターネットで接続されている。なお、通信ネットワーク6および通信ネットワーク7とは同一であってもよく、個別のネットワークであってもよい。
【0021】
各拠点Aに設置された通信装置2は、その拠点Aに設置されている熱源機による熱利用に関する情報を熱融通可視化装置1に所定の時間間隔で送信する。熱利用に関する情報としては、例えば、排熱温度および排熱量、または、採熱温度および採熱量が一例として挙げられる。
【0022】
排熱量は、例えば、以下の(1)式にて求められる。
Q=(Tout−Tin)×F×C×γ/3600 (1)
(1)式において、Qは排熱量(kW)、Tinは熱源機の冷却水入口温度(℃)、Toutは熱源機の冷却水出口温度(℃)、Fは熱源機の冷却水流量(m/h)、Cは比熱(kJ/kg・K)、γは比重(kg/m)である。
【0023】
採熱量は以下の(2)式にて求められる。
Q=(Tin−Tout)×F×C×γ/3600 (2)
(2)式において、Qは採熱量(kW)、Tinは熱源機の熱源水入口温度(℃)、Toutは熱源機の熱源水出口温度(℃)、Fは熱源機の熱源水流量(m/h)、Cは比熱(kJ/kg・K)、γは比重(kg/m)である。
【0024】
上記排熱量または採熱量の演算は、例えば、各熱源機が備える制御基板などで行われ、算出結果が通信装置2に出力されるような構成とされている。
通信装置2は、各熱源機から通知された熱利用に関する情報を所定の時間間隔で通信ネットワーク6を介して熱融通可視化装置1へ送信する。なお、複数の熱源機が設けられている拠点については、例えば、平均温度および各熱源機における熱量の合計が熱融通可視化装置1へ送信される。
【0025】
ここで、通信装置2が熱利用に関する情報を熱融通可視化装置1へ送信する時間間隔は、例えば、後述する熱媒系統図に反映される熱量および温度の要求精度などに基づいて任意に決定される。一例としては、数秒、数分、十数分の時間間隔が考えられる。また、送信する時間間隔が、各熱源機における熱量や温度の計測のサンプリング間隔よりも長い場合は、データ送信の時間間隔におけるサンプリングデータの平均値を送ることとしてもよい。
【0026】
熱融通可視化装置1は、各拠点Aに設置されている通信装置2から取得した各拠点Aにおけるリアルタイムの熱利用の情報を可視化した熱媒系統図を作成し、この熱媒系統図をクライアント端末3に提供する。具体的には、熱融通可視化装置1は、固有のURLが割当られたWEBサーバ4を内蔵しており、固有のURLと対応づけて熱媒系統図を保存する。
【0027】
クライアント端末3は、WEBブラウザを搭載したコンピュータであり、所定のURLからデータを取得し、表示装置5に表示する機能を有している。すなわち、クライアント端末3がWEBサーバ4に割り当てられているURLにアクセスすることで、熱媒系統図を表示装置5に表示させることが可能となる。
また、クライアント端末3は、例えば、各拠点A内または各拠点Aにおける熱利用を管理する管理設備内などに設置されている。したがって、表示装置5に熱媒系統図が表示されることにより、周辺における他の拠点での熱利用の状況などをユーザに提供することが可能となる。これにより、ユーザは、他の周辺拠点との排熱および採熱のバランスに基づいて当該拠点における熱利用の状況の変更の要否の判断や、将来的な熱利用のスケジューリングを行うことが可能となる。
【0028】
図3は、熱融通可視化装置1が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図3に示すように、熱融通可視化装置1は、第1記憶部(第1記憶手段)11と、第1通信部(受信手段)12と、処理部(処理手段)13と、第2記憶部14と、第2通信部(送信手段)15とを備えている。
【0029】
第1記憶部11には、熱融通可視化装置1の担当区域内に存在し、熱の授受が行われる複数の拠点Aと、該拠点A間をつなぐ熱媒流通路Lを含む熱媒系統を示した基本フレームが記憶されている。本実施形態では、所定の担当区域として都市の一区域を想定し、熱媒流通路Lとして下水網を利用した場合の熱融通を想定している。
【0030】
第1通信部12は、通信装置2との通信インターフェースであり、第2通信部15はクライアント端末3との通信インターフェースである。なお、通信ネットワーク6と通信ネットワーク7とが同一の場合は、第1通信部12および第2通信部15とは共通化されてもよい。
【0031】
処理部13は、表示処理部(表示処理手段)13aを備えている。表示処理部13aは、第1記憶部11から熱媒系統の基本フレームを読み出し、読み出した基本フレーム上に示された各拠点Aに、第1通信部12により受信された各拠点Aの排熱量または採熱量および熱媒温度を関連付けて表示することにより、熱媒系統図を作成する。
【0032】
図4に、表示処理部13aにより作成された熱媒系統図の一例を示す。図4において、各拠点Aには採熱量または排熱量が数値として表示されている。また、採熱か排熱かは矢印の方向によって表わされ、拠点Aに向けて矢印が表示されている箇所は採熱が、拠点Aから熱媒系統へ向けて矢印が表示されている箇所は排熱が行われている。また、採熱量または排熱量に応じて矢印の太さが変えられている。また、熱媒流通路Lを流通する熱媒温度については、色で表わされている。図4では、温度を複数の温度帯に分割し、各温度帯に対してそれぞれ異なる色をそれぞれ割り付けている。熱媒温度は、各拠点に流入する温度および排出される温度に基づいて決定され、また、拠点間の距離が長い場合にはその間における熱損失も考慮して決められる。このような熱媒流通路Lにおける熱媒温度の算出は、例えば、処理部13が備える熱媒温度算出部(図示略)により行われ、その結果が表示処理部13aに通知されるようになっている。
【0033】
表示処理部13aによって作成された熱媒系統図は、WEBサーバ4に割り当てられた所定のURLに対応付けて第2記憶部14に保存される。
そして、クライアント端末3がWEB上の当該URLにアクセスすることにより、第2記憶部14に保存されている熱媒系統図が第2通信部15によってクライアント端末3に送信される。これにより、クライアント端末3の表示装置5に熱媒系統図が表示されることとなる。
【0034】
次に、上記構成を備える熱融通可視化システムの動作について説明する。
まず、各拠点Aにおける熱源機の熱量および温度が各熱源機の制御基板において取得および算出され、これらの情報が通信装置2に送られる。通信装置2は、入力された情報を当該拠点Aの識別情報と対応付けて熱融通可視化装置1へ送信する。
【0035】
熱融通可視化装置1においては、通信装置2から送信された拠点Aの識別情報と拠点Aの熱量および温度が第1通信部12により受信され、この情報が表示処理部13aに出力される。表示処理部13aは、第1記憶部11に格納されている熱媒系統の基本フレーム上に表示された該当拠点Aの場所に、受信した熱量と温度を反映させ、第2記憶部14に保存する。なお、すでに熱媒系統図が第2記憶部14に保存されている場合には、表示処理部13aは、第2記憶部14に保存されている熱媒系統図における該当箇所の情報を更新する処理を行えばよい。
そして、このような処理が所定の時間間隔で各拠点Aについてそれぞれ行われることにより、各拠点における最新の熱利用の情報が反映された熱媒系統図が第2記憶部14に保存されることとなる。
ここで、各通信装置2から受信した熱利用に関する情報は、第2記憶部14に格納されている熱媒系統図に反映された時点で削除されてもよいし、履歴として他の記憶部(図示略)に保存されることとしてもよい。
【0036】
そして、クライアント端末3から熱媒系統図が保存されているWEBサーバ4のURLにアクセスすることにより、第2記憶部14に格納されている最新の熱媒系統図が第2通信部15を介してクライアント端末3へ送信され、クライアント端末3の表示装置5に各拠点における最新の熱利用の状況が反映された熱媒系統図が表示される。
【0037】
以上説明してきたように、本実施形態に係る熱融通可視化装置1および熱融通可視化システムによれば、各拠点Aで行われている熱利用の状況ならびに熱媒の温度が表示された熱媒系統図をクライアント端末3の表示装置5に表示させることができる。これにより、熱融通可視化装置1の担当区域における熱融通の様子を可視化してユーザに提示することができる。この結果、ユーザはこの熱媒系統図を確認することにより、他の拠点における熱利用の状況との関係を考慮した自身の拠点の熱利用の変更作業や、今後における熱利用のスケジューリングを行うことが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態では、各拠点Aにおいて熱量の計算やデータ更新間隔におけるデータの平均化などを行う場合について説明したが、これに限らず、これらの両方、あるいは、一方を熱融通可視化装置1において行うこととしてもよい。
【0039】
この場合、図5に示すように、熱融通可視化装置1は、計算処理を行うデータ処理部13bを更に備えている。そして、通信装置2から熱量の算出に必要なパラメータ、例えば、排熱量に関しては冷却水入口温度、冷却水出口温度、および冷却水流量など、採熱量に関しては熱源水入口温度、熱源水出口温度、および熱源水流量などを熱融通可視化装置1にて受信し、データ処理部13bが、これらの情報を用いて、上述した(1)式または(2)式を用いて、熱量Qの算出やデータの平均化処理を行う。
算出した熱量Qなどの情報は表示処理部13bに出力され、各拠点Aにおける温度および熱量が熱源系統図に反映されることとなる。
【0040】
また、本実施形態においては、熱融通可視化装置1が地区の一部を担当区域とした場合について説明したが、担当区域の規模については限定されない。例えば、拠点数が多い場合には、担当区域を更に細分化することも可能であるし、拠点数が少ない場合には、拡大することも可能である。
【0041】
また、担当区域において熱媒系統が閉回路とされていない場合、すなわち、担当区域以外からの熱媒の流入や担当区域以外への熱媒の流出がある場合には、隣接する区域を担当する熱融通可視化装置1から、流入する熱媒や流出する熱媒の情報を取得し、これらを熱媒系統図に反映させればよい。
【0042】
この場合、例えば、図6に示すように、各担当区域に設けられている熱融通可視化装置1を連携させて、隣接する担当区域同士で熱媒の情報をやり取りすることとしてもよいし、或いは、図7に示すように、各担当区域の熱融通可視化装置1の情報を集約する上位装置20を設け、上位装置20において各区域における熱融通の情報を集約し、各担当区域の熱融通可視化装置1に必要な熱媒情報を送信するような構成としてもよい。
【0043】
また、クライアント端末3側で広範囲における熱融通の状況を把握したい場合には、例えば、上位装置20が各担当区域における熱融通可視化装置1から所定の時間間隔で熱媒系統図を受信し、これらをつなぎ合わせることで広域の熱媒系統図を作成し、これをクライアント端末3に提供することとしてもよい。この場合、クライアント端末3は、上位装置20にアクセスすればよい。
更に、図7に示したシステムを複数設け、上位システムを連携あるいは更に階層化することにより、より広範囲にわたる熱媒系統図を作成することも可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 熱融通可視化装置
2 通信装置
3 クライアント端末
4 WEBサーバ
5 表示装置
11 第1記憶部
12 第1通信部
13 処理部
13a 表示処理部
13b データ処理部
14 第2記憶部
15 第2通信部
20 上位装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7