(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881375
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/20 20110101AFI20160225BHJP
B60R 21/231 20110101ALI20160225BHJP
【FI】
B60R21/20
B60R21/231
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-242158(P2011-242158)
(22)【出願日】2011年11月4日
(65)【公開番号】特開2013-95361(P2013-95361A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寿一
【審査官】
三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−300057(JP,A)
【文献】
特開2007−001362(JP,A)
【文献】
特開2003−054353(JP,A)
【文献】
特開2000−159045(JP,A)
【文献】
特開2002−046562(JP,A)
【文献】
特開平05−213144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳んで収納された状態から膨張ガスが導入されて車両の乗員に対向してこの乗員とこの乗員の前方に位置する構造物との間に膨張展開する袋状のエアバッグ本体部を備えたエアバッグであって、
前記エアバッグ本体部は、
乗員の側方に位置するセンタコンソールに取り付けられ、車幅方向に沿って導入された膨張ガスによりこの乗員の腹部と前記構造物との間へと車幅方向に沿って展開する第1の気室と、
この第1の気室に隣接し、膨張ガスの導入により前記乗員の上体と対向する位置へと前記第1の気室よりも上方の位置に展開する第2の気室と、
前記第1の気室と前記第2の気室とを区画する壁部と、
この壁部に前記第1の気室への膨張ガスの流入方向に沿って複数配置され、前記第1の気室内の膨張ガスを前記第2の気室へと導く通気孔とを有している
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
第1の気室は、第2の気室よりも内圧が大きく設定されている
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員とインストルメントパネル部との間に膨張展開するエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、あるいはオートバイなどに搭載されるエアバッグの拘束性能を向上させる取り組みがなされている。例えば、自動車の助手席乗員用のエアバッグ装置においては、通常、構造物であるインストルメントパネル部の乗員対向部、あるいはインストルメントパネルの上部などに設けた扉予定部を、エアバッグの膨張圧力によって開くことで乗員の正面に展開させ、乗員に加わる衝撃を緩和するようになっている。
【0003】
助手席乗員の着座位置とエアバッグ装置の搭載位置との位置関係は、例えば運転者の着座位置とエアバッグ装置の搭載位置との位置関係のような、ステアリング操作などのために自ずと決定される関係がなく、運転席用エアバッグ装置と比較して、搭載位置から拘束面までの距離が一般的に長い傾向にある。
【0004】
助手席の座席位置は、乗員がインストルメントパネル部に過剰に接近して圧迫感を受けないように、あるいは、インストルメントパネル部の乗員対向部に備えられるグローブボックスなどの収納装置を開いた際にボックス部分が助手席乗員の膝などに当たらないように、インストルメントパネル部に対して距離を置いて着座するようにレイアウトされる。したがって、助手席用エアバッグは、運転席用エアバッグと比較して、一般的に前後寸法が大きく、大容量であることが求められる。
【0005】
また、車両の室内デザインは、乗員の快適性に大きく影響する。乗員が車室によって適度に包まれている感じ、すなわち適度な包まれ感は好ましいものの、過剰であれば閉じ込められているような感覚となって逆効果となる。
【0006】
一方で、視界の良好な室内デザインが好まれることがある。このような室内デザインは、乗員の開放感、爽快感、及び、車室が広々とした感じ(広々感)に繋がり、快適性向上に寄与できる。
【0007】
そこで、各部のバランスを取りながら、開放的な室内デザインを狙って種々の試みがなされる。そのための手法の一つとして、前方視界の拡大がある。
【0008】
助手席を含め自動車の座席は一部の例外を除いて前向きとなっている。したがって、前方視界を拡大することにより、開放感が増す効果が大きく、走行安全性の面でも好ましい効果がある。
【0009】
一方で、空力性能や都市部での駐車事情などを考慮すると、車体の天井を過剰に高くすることができない。
【0010】
したがって、インストルメントパネル部の高さを相対的に低くするデザインが採用されることがある。
【0011】
しかしながら、インストルメントパネル部の高さを低く形成すると、そのインストルメントパネル部にエアバッグを設ける場合、エアバッグの膨出基点が低くなる。そして、このようにエアバッグの膨出基点を低くすると、斜め上方に展開させて乗員の胸部及び頭部に対して柔らかい感触で接触させる従来の手法を見直す必要がある。すなわち、インストルメントパネル部の高さが低いと、従来の打ち上げ展開方向に乗員の胸部及び頭部が対向する関係になり、エアバッグをさらに高角に展開させると、エアバッグの腹部の保護部分を下方へとより大きく、かつ、より素早く展開させることが求められる。また、インストルメントパネル部の容積が、高さを低くすることで小さくなり、エアバッグ装置の設置スペースの確保が容易でなくなるので、エアバッグの大容量を確保しながらエアバッグ装置の小型化が必要になる。
【0012】
そこで、インストルメントパネル部の上部から乗員の胸部に向けて突出する下側の膨張部と、この下側の膨張部の上部に連続して乗員の頭部などに対向する上側の膨張部とを備えた、いわゆる2チャンバー構造のエアバッグ本体部を備えることで、エアバッグ本体部の容量を確保しつつ小型化したエアバッグ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−160016号公報 (第3−5頁、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記のエアバッグ装置の場合には、エアバッグ本体部の下側の膨張部が乗員の腹部とインストルメントパネル部との間に位置していないため、乗員の腰部が前方へと移動しやすくなるとともに、下側の膨張部の反乗員側に対して、この反乗員側が当接して反力を与えるための反力面が遠く、その面積が少ないため、下側の膨張部での反力を向上することが容易でないという問題がある。
【0015】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、構造物のデザインに拘らず、乗員を好適に保護できるエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載のエアバッグは、折り畳んで収納された状態から膨張ガスが導入されて車両の乗員に対向してこの乗員とこの乗員の前方に位置する構造物との間に膨張展開する袋状のエアバッグ本体部を備えたエアバッグであって、前記エアバッグ本体部は、乗員の側方に
位置するセンタコンソールに取り付けられ、車幅方向に沿って導入された膨張ガスによりこの乗員の腹部と前記構造物との間へと車幅方向に沿って展開する第1の気室と、この第1の気室に隣接し、膨張ガスの導入により前記乗員の上体と対向する位置へと前記第1の気室よりも上方の位置に展開する第2の気室と、前記第1の気室と前記第2の気室とを区画する壁部と、この壁部に前記第1の気室への膨張ガスの流入方向に沿って複数配置され、前記第1の気室内の膨張ガスを前記第2の気室へと導く通気孔とを有しているものである。
【0017】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、第1の気室は、第2の気室よりも内圧が大きく設定されているものである
。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載のエアバッグによれば、
センタコンソールに取り付けられ乗員の前方の構造物によって支持された第1の気室により乗員の腹部を拘束することで、乗員の上体が前方に倒れながら、第1の気室の上方に展開する第2の気室に当接するので、例えば構造物の高さが低いデザインであっても、第2の気室を構造物の上側で支持でき、第2の気室により乗員の上体を拘束できる。したがって、構造物のデザインに拘らず、乗員を好適に保護できる。また、第1の気室と第2の気室とを区画する壁部に、車幅方向に沿って第1の気室に導入された膨張ガスを第2の気室へと導く通気孔を、膨張ガスの流入方向に沿って設けることにより、第1の気室に続いて第2の気室を展開させることができるとともに、この通気孔の個数や形状を適宜設定することで第1の気室と第2の気室とのそれぞれの内圧及び展開時間などを容易に制御できる。
【0019】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加え、第1の気室の内圧を第2の気室の内圧よりも大きくすることにより、乗員の腹部を第1の気室によってより確実に拘束できるので、乗員の上体を第2の気室へとより確実に倒れさせることができる
。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のエアバッグの一
関連技術のエアバッグ本体部の展開状態を模式的に示す側面図である。
【
図2】同上エアバッグ本体部の展開状態を模式的に示す平面図である。
【
図3】同上エアバッグ本体部の展開状態を模式的に示す正面図である。
【
図4】同上エアバッグ本体部の収納状態を示す断面図である。
【
図5】本発明のエアバッグの
一実施の形態を備えた車室の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のエアバッグの一
関連技術を図面を参照して説明する。
【0022】
図1ないし
図4において、10はエアバッグ装置で、このエアバッグ装置10は、車両としての自動車11の助手席、すなわち被保護物としての助手席12の乗員Dの前方に位置する構造物であるインストルメントパネル部13の内側に配置され、助手席乗員用のエアバッグ装置10を構成している。なお、以下、前後方向、両側方向、及び上下方向は、それぞれエアバッグ装置10を自動車に取り付けた状態における自動車11の直進方向を基準として説明する。また、各図において、乗員Dはダミーで示している。
【0023】
そして、このエアバッグ装置10は、エアバッグモジュールとも呼び得るもので、基布にて構成された袋状の外殻部であるエアバッグ本体部15などを有するエアバッグ16、エアバッグ本体部15にガスを供給するインフレータ17、これらエアバッグ16とインフレータ17となどが取り付けられるケース体18、リテーナ19、展開前のエアバッグ16を覆うカバー体20、及びインフレータ17の動作を制御する図示しない制御手段などを備えている。さらに、このエアバッグ装置10は、例えば自動車11の助手席12の側方を開閉するドア21の内部に取り付けられ、センサなどを備えた制御装置に電気的に接続して構成される。
【0024】
ケース体18は、略箱状に形成され、ドア21の内部に形成された空間部である設置部23内にてこのドア21の内部のサイドガラス24の下方、すなわちドア21の内部の上側寄りの位置に収納され、乗員D側に向かう一側部を開口部である矩形状の突出口25とし、内側が、折り畳んだエアバッグ本体部15(エアバッグ16)を収納するエアバッグ収納部とされている。また、このケース体18の底部には、インフレータ17の取り付け用の取付孔26が形成されている。そして、この突出口25は、通常時は、カバー体20により覆われている。
【0025】
また、インフレータ17は、例えば円盤状をなす本体部31を備え、この本体部31の周囲にフランジ部32が突設され、このフランジ部32には通孔が形成されている。そして、この本体部31の外周面に、複数のガス噴射口33が形成されている。そして、本体部31の内側には、点火器及び薬剤が収納され、底部に接続された図示しないコネクタを介して伝えられる制御手段からの電気信号により、点火器が薬剤を燃焼させ、ガス噴射口33から膨張ガスを急速に供給するようになっている。そして、このインフレータ17は、ガス噴射口33を設けた本体部31をエアバッグ本体部15の内側に挿入した状態で、ケース体18の底部に取り付けられている。なお、インフレータ17は、種々の形状があり、例えば、円柱状の本体部をエアバッグ本体部15の内側に配置する構成を採ることもできる。
【0026】
また、リテーナ19は、枠状に形成されており、エアバッグ本体部15(エアバッグ16)とともにインフレータ17を取り付けるための取付ボルト35が突設されている。
【0027】
また、カバー体20は、樹脂にてインストルメントパネル部13と一体あるいは別体をなして形成され、他の部分より薄肉で容易に破断するテアライン37が平面略H字状などに形成されている。
【0028】
そして、エアバッグ本体部15は、単数、あるいは複数の基布を縫製、接着あるいは溶着などにより組み合わせて接合することで全体としては袋状に形成され、展開状態で相対的に下側に位置する第1の気室(チャンバー)である水平膨張部41と、展開状態でこの水平膨張部41の上側に連続する第2の気室(チャンバー)である縦膨張部42とを一体的に有する、いわゆる2チャンバー構造となっている。さらに、これら水平膨張部41と縦膨張部42とは、壁部43によって上下に区画されて互いに隣接しており、この壁部43に設けられた通気孔44によって互いに連通している。
【0029】
水平膨張部41は、下チャンバーとも呼び得るもので、インフレータ17から導入された膨張ガスにより、乗員Dの腹部Aに対向し、かつ、この腹部Aとインストルメントパネル部13との間の位置に展開する。すなわち、この水平膨張部41は、乗員Dの側方、すなわち乗員Dに対して車幅方向の一側に位置するドア21に一側が取り付けられ、車幅方向に沿う水平方向に沿って展開するように構成されている。したがって、ドア21の内部にてケース体18に取り付けられている一側がガス導入部46となっており、このガス導入部46に対向する他側が前後方向及び上下方向に沿って延びる第1の側面部である下側面部47となっている。また、展開状態の水平膨張部41の乗員Dの腹部Aに対向する後部は、車幅方向及び上下方向に延びる第1の乗員拘束面部である乗員腹部拘束面部48となっている。さらに、展開状態の水平膨張部41の反乗員D側である前部は、インストルメントパネル部13の乗員D側の端部である第1の支持部としての第1の反力面部である後端部13aに対向して車幅方向及び上下方向に延びる第1の対向面部である下対向面部49となっている。したがって、この下対向面部49がインストルメントパネル部13の後端部13aに当接して支持されることで、水平膨張部41が前後方向に固定され、乗員腹部拘束面部48が前方へと移動しようとする乗員Dの腹部Aに対して反力を与え、乗員Dの腹部Aを拘束する(乗員Dの腰部Wの前方への移動を抑制する)ように構成されている。そして、この展開状態の水平膨張部41の乗員腹部拘束面部48の下部と下対向面部49の下部との間に連続する部分は、車幅方向及び前後方向に延びエアバッグ本体部15の下部を区画する下面部50となっている。この下面部50は、乗員Dの脚部(膝部)Lの上方にてこの脚部Lに対向して位置している。
【0030】
また、縦膨張部42は、上チャンバーとも呼び得るもので、通気孔44を介して水平膨張部41から導入された膨張ガスにより、乗員Dの上体B、すなわち、胸部C及び頭部Hなどを含む部分に対向する位置に展開してインストルメントパネル部13の上部を構成し上側へと徐々に前方に傾斜する第2の支持部としての第2の反力面部である傾斜部13bに対向し、かつ、ウインドシールドであるフロントガラス53の後方に位置する。したがって、展開状態の縦膨張部42の乗員Dの上体Bに対向する後部は、車幅方向及び上下方向に延びる第2の拘束面部である乗員上体拘束面部54となっている。この乗員上体拘束面部54の乗員の頭部Hに対向する上側の部分は、上側へと徐々に前方に傾斜した傾斜拘束面部54aとなっている。また、展開状態の縦膨張部42の反乗員D側である前部は、インストルメントパネル部13の傾斜部13bの位置に対向して車幅方向及び上下方向に延びる第2の対向面部である上対向面部55となっている。したがって、この上対向面部55がインストルメントパネル部13の傾斜部13bに当接して支持されることで、縦膨張部42が前後方向に固定され、乗員上体拘束面部54が前方へと倒れる乗員Dの上体Bに対して反力を与えることで乗員Dの上体Bを拘束するように構成されている。さらに、この展開状態の縦膨張部42の乗員上体拘束面部54と上対向面部55との間に連続する部分は、車幅方向及び上下方向に延びエアバッグ本体部15の上部を区画する上面部56となっている。この上面部56は、縦膨張部42の展開状態で後方に向けて上方へと傾斜して形成され、インストルメントパネル部13の上方でかつフロントガラス53の乗員D側すなわち後方の位置に、このフロントガラス53に対して離間されて対向している。また、展開状態の縦膨張部42の両側部は、それぞれ前後方向及び上下方向に沿って延びる第2の側面部である上側面部57となっている。そして、これら上側面部57には、それぞれ前側下部寄りの位置に膨張ガスの排出を許容するベントホール58が形成されている。これらベントホール58は、縦膨張部42の展開状態での余剰の膨張ガスを排出することでエアバッグ本体部15の内圧を適切に設定するものである。
【0031】
また、壁部43は、エアバッグ本体部15の展開状態で前後方向及び左右方向に延びる水平状の面部であり、各膨張部41,42を形成する基布、あるいはこれら膨張部41,42を構成する基布とは異なる基布などによって形成されている。
【0032】
さらに、通気孔44は、水平膨張部41から縦膨張部42への膨張ガスの通過を許容するものであり、壁部43に複数設けられている。そして、これら通気孔44の個数、あるいは形状(開口寸法)を制御することにより、本
関連技術では、水平膨張部41の内圧が、縦膨張部42の内圧よりも大きくなるように設定されている。
【0033】
次に、エアバッグ装置10の展開挙動を説明する。
【0034】
このエアバッグ装置10の動作の概略としては、自動車11の衝突などの際に、制御装置がインフレータ17を作動させ、このインフレータ17から膨張ガスを噴射させると、折り畳み状態でエアバッグ収納部に収納されたエアバッグ本体部15が、ガス導入部46からの膨張ガスの流入に伴い膨張展開してカバー体20のテアライン37を破断して突出口25から突出し、インストルメントパネル部13及びフロントガラス53の後方の位置で乗員D側へと展開する。
【0035】
すなわち、エアバッグ本体部15は、ガス導入部46から流入した膨張ガスによって、まず水平膨張部41がドア21に対して水平方向に向けて突出し、乗員Dの腹部Aとインストルメントパネル部13の後端部13aとの間に迅速に展開する。
【0036】
次いで、水平膨張部41に流入した膨張ガスが通気孔44を通過することにより、この水平膨張部41に対して縦膨張部42が上方に向けて突出し、乗員Dの上体Bとインストルメントパネル部13の傾斜部13bとの間に迅速に展開してフロントガラス53の後方に対向する。
【0037】
この状態で、水平膨張部41の乗員腹部拘束面部48が、縦膨張部42の乗員上体拘束面部54よりも後方、すなわち乗員D側に突出して位置している。
【0038】
したがって、前方へ移動しようとする乗員Dの腹部Aが水平膨張部41の乗員腹部拘束面部48に当接すると、水平膨張部41の下対向面部49がインストルメントパネル部13の後端部13aに支持されることで水平膨張部41が前後方向に固定され、乗員Dの腹部Aに対して反力が与えられて乗員Dの腹部Aが拘束される。そのため、乗員Dは腰部Wの前方への移動が抑制されて上体Bが腹部Aを支点としてお辞儀をするように前方下側へと倒れ、縦膨張部42の乗員上体拘束面部54に当接する。そして、縦膨張部42の上対向面部55がインストルメントパネル部13の傾斜部13bに支持されることで縦膨張部42が前後方向に固定され、乗員Dの上体Bに対して反力が与えられて乗員Dの上体Bが拘束される。
【0039】
このように、本
関連技術によれば、インストルメントパネル部13の後端部13aによって支持された水平膨張部41により乗員Dの腹部Aを拘束することで、乗員Dの上体Bが前方に倒れながら、水平膨張部41の上方に展開する縦膨張部42に当接するので、例えばインストルメントパネル部13の高さが低いデザインであっても、縦膨張部42をインストルメントパネル部13の上側の傾斜部13bで支持でき、この縦膨張部42により乗員Dの上体Bを拘束できる。したがって、インストルメントパネル部13の高低などのデザインに拘らず、乗員Dを好適に安定して保護できる。
【0040】
そのため、インストルメントパネル部13の高さを相対的に低くして、自動車11の室内デザインを、前方視界を拡大した視界の良好なものとすることができるので、開放感が増すとともに、走行安全性の面でも好ましい。また、インストルメントパネル部13の容積が、その高さを低くすることで小さくなっても、エアバッグ装置10の設置スペースをドア21の内部に確保できるので、エアバッグ装置10を必要以上に小型化することもない。
【0041】
そして、縦膨張部42の反力面部としてフロントガラス53を用いていないため、種類が異なる自動車11間での共用設計とすることも可能となるなど、エアバッグ16の汎用性が良好である。
【0042】
また、水平膨張部41の内圧を縦膨張部42の内圧よりも大きくすることにより、乗員Dの腹部Aを水平膨張部41によってより確実に拘束できるので、乗員Dの上体Bを縦膨張部42へとより確実に倒れさせることができる。
【0043】
さらに、水平膨張部41と縦膨張部42とを区画する壁部43に、水平膨張部41の膨張ガスを縦膨張部42へと導く通気孔44を設けることにより、水平膨張部41に続いて縦膨張部42を展開させることができるとともに、この通気孔44の個数や形状を適宜設定することで水平膨張部41と縦膨張部42とのそれぞれの内圧及び展開時間などを容易に制御できる。
【0044】
したがって、水平膨張部41を縦膨張部42よりも相対的に先に展開させることができるので、先に展開した水平膨張部41によって乗員Dの腹部Aをより確実に拘束でき、この拘束によって前方へと倒れる乗員Dの上体を、水平膨張部41に続いて展開した縦膨張部42によって、より確実に保護できる。
【0045】
なお、上記の一
関連技術において、エアバッグ装置10は、専用の支持構造を設けて車室61内に配置してもよく、この支持構造を内装部品に設けてもよい。この内装品としては、例えば
図5に示す
一実施の形態のように、助手席12と運転席62との間に配置された設置部としてのセンタコンソール63
に用いることができ、他の関連技術として設置部としてのアームレスト64などを用いることができる。なお、この
図5においては、説明をより明確にするために、左ハンドル(LHD)仕様の自動車11を示し、ハンドルすなわちステアリングホイールなどは省略している。
【0046】
また、水平膨張部41と縦膨張部42との圧力は、水平膨張部41を縦膨張部42よりも高圧として乗員Dの腰部Wを拘束するようにしているが、例えば、乗員Dが座席のインストルメントパネル部13に最接近した位置(フロントモスト位置)かそれよりも前に存在する場合には、水平膨張部41の圧力上昇を抑制し、縦膨張部42の圧力を高めにする、との圧力制御を行ってもよい。上記ダクト部からガス供給を行う縦膨張部42がこのような制御に好適で、水平膨張部41と縦膨張部42をほぼ同一の内圧にする、あるいは幾分縦膨張部42を高圧気味にするようにしてもよい。
【0047】
また、エアバッグ装置10は、前席用に限らず、後席用として配置してもよい。この場合には、インストルメントパネル部13に代えて、例えば乗員Dの前方に位置する構造物である前席の後部などのデザインに拘らず乗員Dを好適に保護できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば自動車の助手席乗員用のエアバッグとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
11 車両としての自動車
13 構造物であるインストルメントパネル部
15 エアバッグ本体部
16 エアバッグ
41 第1の気室である水平膨張部
42 第2の気室である縦膨張部
43 壁部
44 通気孔
A 腹部
B 上体
D 乗員