(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作業を行うエンドエフェクタを先端に設けた作業部と、入力操作される操作入力部及び前記エンドエフェクタを駆動するために前記操作入力部の操作内容に応じて動作する駆動源を含み前記作業部が着脱自在に装着される操作部とを有するマニピュレータと、
前記操作部が接続可能であり、前記駆動源を制御し、前記作業部の使用回数のカウントを行う機能を有するコントローラと、
前記作業部毎の使用履歴データを保持する使用履歴保持部と、を備え、
前記作業部には、前記作業部の個体識別情報を保持するID保持部が設けられ、
前記操作部には、前記ID保持部の前記個体識別情報を検出するID検出部が設けられ、
前記コントローラは、所定の症例開始条件及び症例終了条件に基づいて、症例の開始及び終了を判断すると共に、該症例の開始又は終了により前記作業部の1回の使用回数をカウントし、前記作業部の使用回数が設定回数を超えている場合には、前記作業部の動作を制限し、
前記コントローラは、前記作業部が使用開始条件を満たすことによって症例が開始する毎に当該作業部の使用回数をカウントアップし、1つの症例内で第1設定時間を超えて使用される前記作業部については、前記第1設定時間を超える毎に使用回数をカウントアップする、
ことを特徴とする医療用マニピュレータシステム。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る医療用マニピュレータシステム(以下、マニピュレータシステムという。)について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0030】
まず、
図1を参照し、本発明の一実施形態に係るマニピュレータシステム10の全体構成について説明する。マニピュレータシステム10は、先端に設けられた先端動作部12で生体の一部を把持し又は生体に触れて、所定の処置を行うための医療用の器具であるマニピュレータ11と、マニピュレータ11にケーブル28を介して接続されたコントローラ29とを備える。マニピュレータ11は、ボディ21と、ボディ21から延出するシャフト18と、シャフト18の先端に設けられた先端動作部12とを有する。
【0031】
以下の説明では、シャフト18の延在方向をZ方向と規定し、さらに、シャフト18の前方(先端側)をZ1方向、後方(根元側)をZ2方向と規定する。また、Z方向に直角な方向であって、マニピュレータ11を
図1の姿勢にしたときのマニピュレータ11を基準とした左右方向をX方向とし、特に、マニピュレータ11の左側方向をX1方向、右側方向をX2方向と規定する。また、Z方向に直角な方向であって、マニピュレータ11を
図1の姿勢にしたときのマニピュレータ11の上下方向をY方向とし、特に、上方向をY1方向、下方向をY2方向と規定する。
【0032】
なお、特に断りのない限り、これらの方向の記載はマニピュレータ11が基準姿勢(中立姿勢)である場合を基準として表すものとする。これらの方向は説明の便宜上のものであり、マニピュレータ11は任意の向きで(例えば、上下を反転させて)使用可能であることは勿論である。
【0033】
マニピュレータ11は、人手によって把持及び操作される操作部14と、該操作部14に対して着脱自在な作業部16とを有する。操作部14は、上述したボディ21の一部を構成し、筐体を構成しZ1方向及びY2方向に略L字状に延在する左右一対の上部カバー25a、25bと、上部カバー25a、25b内に収容された駆動部30と、人手によって操作される複合入力部24(操作入力部)とを有する。
【0034】
駆動部30は、先端動作部12の姿勢を変更させるための駆動源50として2つのモータ50a、50bを有し、駆動源50の駆動力が先端動作部12に機械的に伝達されることで、エンドエフェクタ19の姿勢を変更できるように構成されている。
【0035】
操作部14のY1方向頂部近傍には、上部カバー25a、25bから露出してマスタスイッチ34が設けられ、マスタスイッチ34のZ1方向で視認しやすい箇所にLED35が設けられている。
【0036】
操作部14の基端側でY2方向に延びた部分は、人手によって把持されるグリップハンドル26として構成されている。複合入力部24は、グリップハンドル26の上部の傾斜面に設けられており、左右方向への回動操作及び傾動操作を単独又は複合的に行うことで、その操作に応じた信号がコントローラ29に送信され、コントローラ29が駆動部30の駆動を制御することにより、エンドエフェクタ19の姿勢変更が行われる。
【0037】
作業部16は、Z方向で略対称に分割された一対の下部カバー37a、37bを筐体としており、上記の先端動作部12と、この先端動作部12を先端に設けた長尺且つ中空のシャフト18と、このシャフト18の基端側が固定され、下部カバー37a、37b内に収容されたプーリボックス32と、プーリボックス32の後方に設けられ、トリガ軸39を支点としてX方向の軸心を中心に回動可能に軸支されたトリガレバー36とを有する。下部カバー37a、37b、プーリボックス32及びトリガレバー36は、上述したボディ21の一部を構成する。
【0038】
作業部16は、操作部14に設けられた左右一対の着脱レバー40、40によって当該操作部14と連結・固定されると共に、着脱レバー40の開放操作によって操作部14から分離可能であり、特別な器具を用いることなく、手術現場で容易に交換作業等を行うことができる。
【0039】
先端動作部12は、トリガレバー36の操作に基づいて開閉動作するエンドエフェクタ19と、複合入力部24の操作に基づいてエンドエフェクタ19の姿勢を変化させる姿勢変更機構13とを有する。エンドエフェクタ19は、例えば、生体の一部や縫合用の針を把持するグリッパ、生体の一部を切断するハサミ等として、所定の開閉動作軸を基準に開閉動作可能に構成される。
【0040】
先端動作部12及びシャフト18は細径に構成されており、患者の腹部等に装着された円筒形状のトラカール20を通して体腔22内に挿入可能であり、複合入力部24及びトリガレバー36の操作によって体腔22内で患部切除、把持、縫合及び結紮等の様々な手技を行うことができる。
【0041】
トリガレバー36は、下部カバー37a、37b内のZ2方向側の端部に設けられたトリガ軸39に軸支されたアーム部36aと、このアーム部36aのY2側に設けられたトリガ操作子36bとを有する。トリガ操作子36bは、指輪部36cと、この指輪部36cのY2側に設けられた略円弧状の指掛け突起36dとを有する。
【0042】
エンドエフェクタ19の開閉動作は、人手によるトリガレバー36の操作(押し引き操作)に基づく力が機械的に伝達されることで行われる。具体的には、作業部16の内部には、ロッド、ワイヤ(動力伝達部材)、プーリ等から構成される伝達機構が設けられており、トリガレバー36の押し引き操作が、伝達機構によりエンドエフェクタ19の開閉動作に変換されるようになっている。
【0043】
姿勢変更機構13は、先端を指向するロール軸(中立姿勢時にはZ軸)を基準に回転するロール動作と、Y方向のヨー軸を基準に傾動するヨー動作(傾動動作)とが可能であり、ロール動作と傾動動作とを選択的に又は複合的に行うことが可能である。従って、先端動作部12は、エンドエフェクタ19の開閉動作、ロール動作及びヨー動作からなる3軸の動作が可能である。
【0044】
本実施形態の場合、エンドエフェクタ19の姿勢変更の動作(ロール動作及びヨー動作)は、複合入力部24の操作に基づいて駆動源50が駆動し、この駆動源50の駆動力が先端動作部12に機械的に伝達されることで行われる。複合入力部24は、グリップハンドル26の上部に設けられた傾斜面26aに配置され、回転操作部90及び傾動操作部92を有する。図示例のマニピュレータ11では、回転操作部90に対して左右方向の回転操作を行うことで、先端動作部12のロール動作が行われ、傾動操作部92に対して傾動操作を行うことで、先端動作部12のヨー動作が行われる。
【0045】
図2に示すように、駆動部30は、上述したモータ50a、50bと、モータ50a、50bの各出力軸56a、56bに対して固定された駆動傘歯車58a、58bと、駆動傘歯車58a、58bと噛み合う2つの従動傘歯車62a、62bと、従動傘歯車62a、62bが固定された駆動軸60a、60bとを有する。駆動軸60a、60bの下端部には、例えば断面波形状の係合凸部64a、64bが設けられている。この構成により、モータ50a(50b)の回転駆動力が、駆動傘歯車58a(58b)、従動傘歯車62a(62)、駆動軸60a(60b)及び係合凸部64a(64b)へと伝達される。
【0046】
プーリボックス32には、プーリ70a、70bが設けられている。このプーリ70a、70bは、作業部16が操作部14に装着された状態で、駆動軸60a、60bに対して同軸である。プーリ70a、70bの上端には、プーリボックス32の上面から露出した、例えば断面波形状の係合凹部74a、74bが設けられている。従って、操作部14と作業部16との装着時、係合凸部64a、64bと係合凹部74a、74bとが係合し、これにより、駆動軸60a、60bからの回転駆動力をプーリ70a、70bへと伝達することができる。なお、係合凸部64aや係合凹部74aの係合構造は他の構造であってもよい。
【0047】
プーリ70a、70bには、それぞれ、動力伝達部材として、図示しないワイヤが巻き掛けられている。これらのワイヤは、シャフト18内に挿通されており、先端動作部12(
図1参照)に設けられた姿勢変更機構13に駆動力を伝達する。これにより、駆動軸60a、60bからの回転駆動力が、プーリ70a、70b、前記ワイヤを介して姿勢変更機構13に伝達され、エンドエフェクタ19の姿勢変更が行われる。
【0048】
なお、トリガレバー36の操作をエンドエフェクタ19の開閉動作に変換する機構、及び、駆動源50の駆動をエンドエフェクタ19の姿勢変更の動作に変換する機構としては、例えば、特開2008−104855号公報や特開2009−106606号公報に記載された構成と同様の構成を採用してよい。
【0049】
操作部14には、操作部14と作業部16の着脱を検出する着脱検出機構42が設けられている。この着脱検出機構42は、センサドグとして機能する検出シャフト43と、検出シャフト43の一端部(上端部)を検出する検出部44とを有する。検出シャフト43は、操作部14内でY方向に移動自在に支持され、図示しないコイルバネによってY2方向(
図2で下方)に弾性的に付勢されると共に、図示しないスナップリングによって抜け止めがなされている。
【0050】
検出部44は、例えば、対向配置された投光器及び受光器からなるフォトセンサで構成することができ、このようなフォトセンサでは、投光器と受光器との間に検出シャフト43が進入して光路を遮断することで、検出シャフト43の存在が検出される。着脱検出機構42は上記のように構成されているため、作業部16が操作部14に装着されると、検出シャフト43が作業部16によりY1方向に押圧されて移動し、検出部44により検出シャフト43の上端が検出される。コントローラ29は、検出部44からの信号に基づいて、作業部16が操作部14に装着されたことを認識する。
【0051】
プーリボックス32とアーム部36aとの間の位置には、トリガ軸39の両端を支持する一対の支持プレート45、45間にID表示プレート46が架設して固定され、ID表示プレート46の表面に、作業部16に係る各種情報を保持するID保持部48として、作業部16に係る各種情報の内容に対応した画像パターンを表示するバーコード(表示手段)48Aが設けられている。バーコード48Aは、下部カバー37a、37bの上面に形成された切欠き部52を通して、作業部16の上方に露出している。
【0052】
バーコード48Aとしては、幅の異なる白色及び黒色の線が交互に配列して印刷された一次元バーコード、又は桝目に従って白色部及び黒色部が印刷されたQRコード(登録商標)のようなマトリクス型二次元コードを採用し得る。バーコード48Aには、作業部16の個体識別情報(ID)、仕様、タイムスタンプ(製造日等)やシリアルナンバー、使用制限回数等の情報が含まれている。バーコード48Aが保持している個体識別情報は、作業部16毎に識別が可能なように異なる値が付与されている。
【0053】
なお、ID保持部48として、接触又は非接触で読出し書込みが可能な記憶素子(不揮発性記憶媒体)を用いてもよい。非接触で読出し書込みが可能な記憶素子としては、例えば、ICタグが挙げられる。このような記憶素子をID保持部48として用いる場合、当該記憶素子は、滅菌及び洗浄に対する耐性を有するものであることが必要である。
【0054】
操作部14の内部には、バーコード48Aを検出するためのID検出部54として、バーコード48Aを撮像するためのカメラ54Aが配設されている。また、操作部14において、作業部16が操作部14に装着された状態でバーコード48Aに対向する位置に、光を透過する部材からなる撮影窓56が設けられ、さらに、撮影窓56を介してバーコード48Aからの光(像)をカメラ54Aに向けて反射させるミラー55が設けられている。このため、バーコード48Aは、鏡像となってカメラ54Aにより撮像される。なお、カメラ54Aの近傍には、図示しないLEDが設けられており、バーコード48Aは、ミラー55を介してLEDにより照明される。このようなLEDは、十分な光量が得られるように複数設けられるとよい。
【0055】
このようなバーコード48Aを作業部16に設けたことにより、操作部14及びコントローラ29では、カメラ54Aを用いて作業部16の個体識別情報を認識することができ、作業部16の種類(例えば、グリッパやはさみ、電気メス)に応じて、適切に且つ正確にモータ50a、50b等を駆動制御することができる。
【0056】
なお、接触又は非接触で読出し書込みが可能な記憶素子をID保持部48として用いる場合、操作部14には、当該記憶素子に対して接触又は非接触でデータの読出し及び書込みが可能なリーダライタが設けられる。また、当該記憶素子がICタグとして構成される場合、リーダライタは、ICタグに対して電磁波を利用して非接触でデータの読出し書込みが可能な送受信器として構成される。
【0057】
図1に示すように、コントローラ29は、グリップハンドル26の下端部から延在するケーブル28と接続される。コントローラ29は、マニピュレータ11を総合的に制御する制御部であって、コントローラ29の機能の一部又は全部は、例えば操作部14に一体的に搭載することもできる。コントローラ29には電源ケーブル31を介して外部電源(AC電源)から電力が供給されるようになっている。電源ケーブル31は、コントローラ29に対して接続及び取外しが可能となっている。
【0058】
コントローラ29は、複数の接続ポート27(図示例では、第1ポート27a及び第2ポート27bの2つ)を備えており、接続ポート27に接続された複数のマニピュレータ11を独立的に同時に制御することができる。なお、コントローラ29に設ける接続ポート27の数は、3以上であってもよい。
【0059】
コントローラ29では、着脱検出機構42による作業部16の装着の検出を、カメラ54A及びLEDを起動制御してバーコード48Aから個体識別情報を取得するためのトリガ信号とすることもできる。すなわち、コントローラ29は、作業部16が操作部14に装着されたと略同時に、カメラ54A及びLEDを駆動制御してバーコード48Aから個体識別情報を取得する。コントローラ29では、少なくとも作業部16が操作部14に装着されたときにカメラ54A及びLEDを駆動制御してバーコード48Aから個体識別情報を取得し、それ以外のときにはカメラ54A及びLEDの動作を停止しておくことで、処理負荷が低減すると共に省電力化を図ることができる。
【0060】
図示例のコントローラ29には、作業部16毎の使用履歴データを保持する使用履歴保持部38が設けられている。使用履歴保持部38は、不揮発性記憶媒体で構成され、作業部16毎の使用履歴データとして、使用回数、滅菌日時、エンドエフェクタ19の開閉回数等を記憶している。
【0061】
コントローラ29は、LAN等の通信手段(ネットワーク)を介してサーバーとしてのホストコンピュータ33(
図3参照)と通信可能に構成されてもよく、使用履歴保持部38はホストコンピュータ33に設けられてもよい。この場合、ホストコンピュータ33の使用履歴保持部38は、使用履歴テーブルを記録しており、コントローラ29又は前記LANにより接続された複数台のコントローラ29に対して要求された個体番号(識別番号)に応じた使用履歴データを送受信し、管理する。ホストコンピュータ33は、コントローラ29から独立的な構成に限らず、コントローラ29内にその機能を設けてもよい。
【0062】
また、ID保持部48として記憶素子を用いる場合、当該記憶素子を使用履歴保持部38として利用してもよい。このように、使用履歴保持部38は、作業部16、コントローラ29及びホストコンピュータ33のうちのいずれかに設けられ、使用履歴を参照し、書き換えることが可能であればよい。
【0063】
コントローラ29は、作業部16の使用回数及エンドエフェクタ19の開閉回数をカウントする機能を有する。使用回数及び開閉回数のカウント方法の詳細については後述する。
【0064】
図3に示すように、マニピュレータ11は、トリガレバー36の操作状態を検出する検出機構100をさらに備える。
図3に示す検出機構100は、トリガレバー36が引き位置に達したことを検出するように構成されている。すなわち、検出機構100は、エンドエフェクタ19であるグリッパ19Aが閉じた状態又は殆ど閉じた状態に対応する動作位置にトリガレバー36が達したことを検出するものである。
【0065】
なお、トリガレバー36に関し、「押出し位置」とは、トリガレバー36を十分に押し出した位置(トリガレバー36の可動範囲のうち最もZ1方向側に回動した位置)又はその近傍位置を意味する。また、トリガレバー36に関し、「引き位置」とは、トリガレバー36を十分に引いた位置(トリガレバー36の可動範囲のうち最もZ2方向側に回動した位置)又はその近傍位置を意味する。
図3では、押出し位置にあるときのトリガレバー36を実線で描いており、引き位置にあるときのトリガレバー36を二点鎖線で描いている。
【0066】
検出機構100は、トリガレバー36に設けられたカム体(検出用突出片)102と、操作部14に設けられた検出部104とを有する。カム体102は、トリガレバー36のアーム部に固定され(設けられ)、図示例では、Z2方向に突出するように設けられており、トリガレバー36と一体的に動作する。すなわち、トリガレバー36が前後方向(Z方向)に揺動すると、カム体102も、トリガ軸39を回転支点として揺動する。検出部104は、作業部16を操作部14に装着した状態での操作部14における、カム体102に対向する位置に設けられており、作業部16が操作部14に装着された状態でカム体102を検出することによりトリガレバー36が上記の引き位置に達したことを検出する。
【0067】
図4Aは、
図3においてトリガレバー36が押出し位置にあるときの検出機構100及びその周辺の一部省略拡大構成図である。
図4Bは、
図3においてトリガレバー36が引き位置にあるときの検出機構100及びその周辺の一部省略拡大構成図である。
図4A及び
図4Bに示すように、検出部104は、カム体102により押圧されてZ方向に移動する作動ロッド106と、作動ロッド106が挿通されて作動体の移動をガイドする筒状ガイド部材112と、作動ロッド106により押圧されるタクトスイッチ108と、タクトスイッチ108が設けられたスイッチ基板109と、タクトスイッチ108を覆い弾性変形可能な柔軟材料(例えば、シリコーンゴム)からなるスイッチカバー110とを有する。
【0068】
作動ロッド106は、筒状ガイド部材112に挿通され一部がタクトスイッチ108側に突出する軸部106aと、この軸部106aよりもカム体102側に設けられ上部カバー25a、25bの一部である隔壁17からカム体102側に露出する頭部106bとを有する。軸部106aの外周には、フランジ部106cが設けられ、このフランジ部106cと頭部106bとの間にはシール部材(図示例では、Oリング)120が配設さている。このシール部材120により、作動ロッド106の外周と筒状ガイド部材112の内周との間が液密にシールされている。
【0069】
筒状ガイド部材112の内部には、作動ロッド106をカム体102側に向けて弾性的に付勢するコイルバネ116が設けられている。コイルバネ116は、一端が作動ロッド106のフランジ部106cに当接し、他端が筒状ガイド部材112の内部に形成された肩部に当接している。作動ロッド106の軸部106aには、係止部材107が固定されており、係止部材107により筒状ガイド部材112から作動ロッド106がカム体102側に抜け出ることを防止している。
【0070】
筒状ガイド部材112は、中空円筒形であり、隔壁17に設けられた孔部119に挿通され、上部カバー25a、25bの内部において、筒状ガイド部材112の外周に設けられたネジ部にナット114が螺合している。これにより、筒状ガイド部材112が隔壁17に固定されている。隔壁17と筒状ガイド部材112との間には、シール部材(図示例では、Oリング)118が配設されており、シール部材118により、孔部119の内周面と筒状ガイド部材112の外周面とが液密にシールされている。
【0071】
スイッチ基板109は、ケーブルを介してコントローラ29に電気的に接続されており、スイッチ基板109から出力される信号がコントローラ29に送信される。一方、カム体102には、作動ロッド106の頭部106bと当接するカム面102aが設けられている。また、カム体102には、Z2方向に向かうに従ってY2方向に寄るように傾斜すると共に上記のカム面102aに連なる傾斜部102bが設けられている。
図4Aで、カム体102がトリガ軸39を中心に反時計回りの方向に回動すると、カム面102aにより作動ロッド106がZ2方向に押圧され、コイルバネ116の弾発力に抗して移動するようになっている。
【0072】
上記のように構成された検出部104では、トリガレバー36が押出し位置にあるときには、
図4Aに示すように、カム体102が作動ロッド106をZ2方向に押し込まないので、タクトスイッチ108は作動ロッド106に押圧されない。一方、トリガレバー36がZ2方向に回動操作され、引き位置まで達すると、
図4Bに示すように、カム体102が作動ロッド106を押圧し、Z2方向に移動させるので、タクトスイッチ108がスイッチカバー110を介して押圧され、トリガレバー36が引き位置に達したことが検出される。すなわち、押圧されたことに対応する信号がタクトスイッチ108から出力され、この信号がコントローラ29に送信されることで、コントローラ29において、トリガレバー36が引き位置に達したことが認識される。
【0073】
検出機構100では、カム体102に適度な傾斜部102bを設けているので、トリガレバー36がどのような角度にあっても、作業部16を操作部14に装着することができる。トリガレバー36が引き位置にある場合でも、作業部16を操作部14に装着すると共に、作動ロッド106の先端部が、カム体102の傾斜部102bに接触し、Z2方向に押し込まれ、装着完了時には、トリガレバー36が引き位置にあることを検出することができる。
【0074】
なお、図示例の検出機構100は、トリガレバー36が引き位置に達したことを検出するように構成されているが、これに代えて、トリガレバー36が押出し位置に達したことを検出するように構成されてもよい。また、検出機構100は、トリガレバー36が、引き位置に達しときと押出し位置に達したときの両方を検出するように構成されてもよい。検出機構100において、カム体102をトリガ操作子36bに設け、上記の検出部104をグリップハンドル26に設けてもよい。
【0075】
検出機構100を備えたマニピュレータシステム10では、トリガレバー36が引き位置(又は押出し位置)に達する毎に、検出部104からの信号がコントローラ29に送信され、その回数がカウントされ、作業部16の識別番号毎の使用履歴データとして使用履歴保持部38に記憶される。また、コントローラ29は、トリガレバー36が引き位置(又は押出し位置)に達した回数をエンドエフェクタ19の開閉回数とみなして使用履歴保持部38に記憶する。
【0076】
このようにマニピュレータシステム10では、検出機構100により、トリガレバー36の操作状態として、引き位置又は押出し位置に達したことを検出するので、トリガレバー36の操作回数や使用状態の把握、分析を行うことが可能であり、このような分析を通じて、トリガレバー36自体や、トリガレバー36の操作に基づく力を機械的に伝達する機構の寿命予測等を行うことが可能である。
【0077】
なお、検出機構100の検出部104において、タクトスイッチ108に代えて、投光器と受光器とにより構成されるフォトセンサを設けてもよい。このようなフォトセンサを設ける場合、トリガレバー36が引き位置に来たときに作動ロッド106が投光器と受光器との間に入って投光器からの光を遮断するように、投光器及び受光器を配置することで、トリガレバー36が引き位置に達したことを検出できる。
【0078】
次に、
図5及び
図6を参照し、変形例に係る検出機構130について説明する。
図5は、検出機構130を備えたマニピュレータシステム10の側面図であり、
図6は、検出機構130を備えたマニピュレータシステム10の一部省略平面図である。検出機構130は、トリガレバー36の動作方向、つまり回動方向の位置を検出するように構成されている。
図5に示すように、トリガレバー36は、最もZ1側に回動した最進出位置P1から、最もZ2側に回動した最後退位置P2までの角度θの可動範囲を有する。
【0079】
検出機構130は、トリガレバー36と一体的に動作する駆動要素132と、操作部14に設けられ作業部16が操作部14に装着された状態で駆動要素132に連動する従動要素134と、従動要素134の動作方向の位置を検出する検出部136とを有する。図示例において、駆動要素132は、トリガレバー36の回動軸心回りに周方向に延在する歯を有する第1ギア部132Aであり、従動要素134は、操作部14に回動自在に設けられ作業部16が操作部14に装着された状態で第1ギア部132Aと噛み合う第2ギア部134Aであり、検出部136は、第2ギア部134Aの回転角度を検出する回転検出器136Aである。
【0080】
図6に示すように、第1ギア部132Aは、トリガレバー36と一体的に回転するように設けられている。すなわち、第1ギア部132Aは、トリガレバー36と一体的に回転するトリガ軸39に固定されており、トリガレバー36が前後方向(Z方向)に回動すると、第1ギア部132Aも、トリガ軸39を回転支点として回動する。なお、図示例の第1ギア部132Aでは、全周に歯が形成されているが、トリガレバー36の可動範囲の全範囲で第2ギア部134Aと噛み合うことができれば、外周の一部のみに歯が形成されてもよい。
【0081】
第2ギア部134Aは、上部カバー25bの側面に設けられている。回転検出器136Aは、上部カバー25a、25bの内部23に設けられている。第2ギア部134Aと回転検出器136Aとは、上部カバー25a、25bを貫通する軸140を介して連結されている。上部カバー25a、25bと軸140との間には、シール部材(図示例では、Oリング)138が配置され、シール部材138により、外部から上部カバー25a、25bの内部23への液体や塵埃の進入が防止される。
【0082】
回転検出器136Aとしては、例えば、ロータリエンコーダ、ポテンショメータ、レゾルバ等を用いることができる。ロータリエンコーダとしては、インクリメンタルエンコーダとアブソリュートエンコーダとがあるが、いずれを用いてもよい。回転検出器136Aは、ケーブル28を介してコントローラ29に電気的に接続されており、回転検出器136Aから出力される信号は、コントローラ29に送信されるようになっている。
【0083】
上記のように構成された検出機構130では、トリガレバー36が回動操作されると、トリガレバー36に設けられた第1ギア部132Aがトリガレバー36と一体的にトリガ軸39を中心に回転する。また、第1ギア部132Aの回転に伴い、第1ギア部132Aと噛み合う第2ギア部134Aが回転し、第2ギア部134Aの回転角度が回転検出器136Aにより検出され、トリガレバー36の動作角度が検出される。すなわち、回転検出器136Aから回転角度に対応する信号が出力され、この信号がコントローラ29に送信され、コントローラ29において、回転検出器136Aからの信号に基づいてトリガレバー36の動作角度が演算される。
【0084】
なお、回転検出器136Aがインクリメンタルエンコーダである場合、インクリメンタルエンコーダからは回転角度の変化に応じてパルスが出力されるだけであり、トリガレバー36の絶対角度を直接検出することはできない。一方、トリガレバー36の可動範囲(最大回転角度)θは既知であるので、使用時の回転角度範囲からトリガレバー36の絶対角度を推測することが可能である。そこで、回転検出器136Aがインクリメンタルエンコーダである場合、コントローラ29は、マニピュレータ11の使用時において、トリガレバー36の可動範囲θと回転検出器136Aで検出した回転角度範囲とに基づいて、トリガレバー36の絶対角度を推定(演算)する。このように、インクリメンタルエンコーダの検出信号からトリガレバー36の絶対角度を推定することで、簡素な構成で、トリガレバー36の動作角度の検出を行うことができる。
【0085】
検出機構130を搭載したマニピュレータシステム10では、マニピュレータ11の使用中、所定のサンプリングタイム毎に、トリガレバー36の動作角度が検出され、作業部16の識別番号毎の使用履歴データとして記憶される。すなわち、マニピュレータシステム10では、トリガレバー36の操作回数(エンドエフェクタ19の開閉回数)や使用状態を検出・記憶でき、この操作回数や使用状態を利用して、トリガレバー36自体や、トリガレバー36の操作に基づく力を機械的に伝達する機構の寿命予測等を行うことが可能である。特に、変形例に係る検出機構130によれば、トリガレバー36の動作角度を検出するので、上述した検出機構100と比較して、トリガレバー36の使用状態をより詳細に把握することが可能となり、寿命予測等の信頼性が向上する。
【0086】
本実施形態に係るマニピュレータシステム10は、作業部16の使用履歴データの収集・更新・保管を好適に行うことが可能なシステムとして構成されている。マニピュレータシステム10において、電源が入ってシステムが稼動しているコントローラ29に操作部14を接続すると共に、操作部14に作業部16を装着すると、コントローラ29が作業部16の装着を認識してカメラ54Aに対して固体識別情報を取得するための制御指令を出力する。すると、カメラ54Aがバーコード48Aから作業部16の個体識別情報を取得、解析し、解析結果をコントローラ29に転送する。
【0087】
作業部16の個体識別情報に基づき、コントローラ29は、得られた個体識別情報と、コントローラ29に設けられた記憶部(使用履歴保持部38)の使用履歴データを参照し、作業部16が使用可能であるか否かを判断する。すなわち、作業部16の使用回数が使用制限回数(設定回数)以内である場合には、使用可能と判断し、作業部16の使用回数が使用制限回数を超える場合には、使用不可と判断する。
【0088】
作業部16を使用可能と判断した場合、コントローラ29は、使用回数をカウントアップすると共に使用履歴データを更新する。このようにして使用可能と判断された作業部16を装着したマニピュレータ11の複合入力部24を操作すると、コントローラ29が複合入力部24の操作内容に応じてモータ50a、50bを駆動制御し、これにより先端動作部12が動作する。一方、作業部16を使用不可と判断した場合、すなわち作業部16の使用回数が使用制限回数を超えている場合、コントローラ29は、複合入力部24からの指示を無効とみなすことで、作業部16の動作を制限する。このため、操作者が複合入力部24を操作してもモータ50a、50bが駆動せず、先端動作部12が動作しない。
【0089】
コントローラ29は、使用回数カウントルールに従い、作業部16の着脱の状況及びその時間に基づいて、症例の開始及び終了を判断し、作業部16の使用回数をカウントする。この使用回数カウントルールでは、第1設定時間を使用して、個々の作業部16について1回当たりの最大使用時間を制限する。また、この使用回数カウントルールでは、第2設定時間及び第3設定時間を使用して、症例の切り替わり(症例の終了)を判断する。以下、第1設定時間、第2設定時間及び第3設定時間を利用した使用回数カウントルールについて具体的に説明する。
【0090】
まず、
図7を参照し、第1設定時間を利用した使用回数カウントルールについて説明する。実際の手術が長時間に及ぶ症例に作業部16を使用する場合に、これを無制限に1回の使用とみなしたのでは作業部16の耐久性に問題が生じる可能性がある。そこで、使用回数カウントルールでは、第1設定時間(例えば、5時間)内での使用を1回の使用とみなして使用回数をカウントする。従って、コントローラ29は、作業部16が所定の使用開始条件を満たすことによって症例が開始する毎に作業部16の使用回数をカウントアップし、1つの症例内で第1設定時間を超えて使用される作業部16については、第1設定時間を超える毎に使用回数をカウントアップする。
【0091】
ここで、作業部16の「使用開始条件」とは、作業部16の使用が開始されたことを判断するための条件である。具体的には、後述する「症例終了条件」を満たした後、もしくは作業部16の使用回数がカウントアップされた後に、初めて作業部16の操作がされた(複合入力部24に対して入力操作がなされてモータ50a、50bの駆動により先端動作部12が動作した)とき、使用開始条件を満たす。
【0092】
「症例開始条件」とは、所定のルールに基づいて1症例の開始を判断するための条件である。具体的には、症例終了条件を満たした後、もしくは新規システム使用時に、初めて作業部16の使用開始条件を満たしたとき、症例開始条件を満たす。
【0093】
「症例終了条件」とは、所定のルールに基づいて1症例の終了を判断するための条件であり、第2設定時間及び第3設定時間は、症例終了条件を満たすか否かの判断に際して利用される。
【0094】
「1症例」とは、マニピュレータ11を用いて治療的処置である外科的手術を行う1単位、すなわち1回の手術を意味する。
【0095】
図7において、横軸は時間であり、操作部14(B1、B2とする)のコントローラ29に対する接続状態と、操作部B1、B2に装着される作業部16(それぞれ、A1、A2とする)の装着状態とを横軸方向に延びるバーの有無で表現している。すなわち、白抜きのバーが存在する部分は、作業部A1(A2)が操作部B1(B2)に装着されている期間を示し、ハッチング付きのバーが存在する部分は、操作部B1(B2)がコントローラ29に接続されている期間を示す。
【0096】
ここで、第1設定時間を5時間と設定し、使用制限回数(設定回数)を20回とした場合を例に、第1設定時間を利用した使用回数のカウントの具体例を説明する。
図7に示すように、例えば、時刻aにおいて操作部B1がコントローラ29に接続されると共に、その操作部B1に作業部A1が装着されると、コントローラ29において作業部A1の個体識別情報が認識される。時刻aより以前に操作部B1のみがコントローラ29に接続され、時刻aにおいて操作部B1に作業部A1が装着された場合でも、同様に作業部A1の個体識別情報が認識される。
【0097】
次に、作業部A1の複合入力部24に対して何らかの入力操作がなされると、作業部A1の使用開始条件が満たされ、これにより症例開始条件が満たされる。従って、コントローラ29は、症例1が始まったと判断し、作業部A1の使用回数をカウントアップすると共に、タイマー機能を利用して、作業部A1について、使用開始条件を満たした時点からの使用時間を監視する(5時間のカウントダウンを開始する)。このとき、作業部A1の使用回数は、1回目(残り19回)となったものとする。
【0098】
また、時刻aより後の時刻bで、操作部B2がコントローラ29に接続されると共に、その操作部B2に作業部A2が装着されると、コントローラ29において作業部A2の個体識別情報が認識される。次に、作業部A2の複合入力部24に対して何らかの入力操作がなされると、作業部A2の使用開始条件が満たされ、作業部A2の使用回数がカウントアップされる。このとき、作業部A2の使用回数は、20回目(残り0回)となったものとする。なお、作業部A2の使用開始条件が満たされた時点(時刻b)では、すでに症例開始条件を満たすことで症例1が開始し、且つ症例1の症例終了条件は満たされていないため、作業部A2の使用開始条件が満たされることで症例開始条件が満たされることはない。
【0099】
時刻cにおいて、作業部A1の使用時間が5時間(第1設定時間)に達したため、コントローラ29は、作業部A1の使用回数をカウントアップする。この結果、作業部A1の使用回数は、2回目(残り18回)となる。一方、時刻cの時点では、作業部A2の使用時間は5時間に達していないため、作業部A2については使用回数がカウントアップされない。
【0100】
時刻dにおいて、作業部A2の使用時間が5時間に達したため、コントローラ29は、作業部A2の使用回数をカウントアップする。この結果、作業部A2の使用回数は21回目となり、使用制限回数を超えるが、直ちに作業部A2の使用を制限すると、手術の遂行に影響を及ぼす可能性がある。そこで、1つの症例中での使用時間が第1設定時間を超えた結果、使用回数が使用制限回数を超えることとなった作業部A2については、
図7に示すように、第1設定時間より長く設定された特別設定時間(
図7の例では、10時間)に達するまで作業部A2の動作を許容するのがよい。これにより、使用途中で作業部A2の動作が停止することによる、手術の円滑な遂行に対する影響を回避又は少なくすることができる。特別設定時間は、1回の症例に関して想定される最大時間に対応させて設定しておくのがよい。
【0101】
時刻eにおいて、作業部B1の使用時間が10時間(特別設定時間)に達したため、コントローラ29は、作業部A2の使用を制限する。すなわち、時刻e以降に作業部A2が装着された操作部B2の複合入力部24が操作されても、コントローラ29は複合入力部24からの指示を無効とみなし、モータ50a、50bの駆動制御を行わない。
【0102】
上述したように、マニピュレータシステム10によれば、作業部16の着脱の状況及びその時間に基づいて、作業部16の使用回数をカウントアップし、作業部16の使用回数が設定回数(使用制限回数)を超えている場合には、作業部16の動作を制限するので、操作者が複合入力部24を操作しても駆動源50が駆動しない。すなわち、複合入力部24に対する操作が無効となることで、エンドエフェクタ19を含む先端動作部12が動作しない。これにより、使用制限回数に達した作業部16を強制的に使用不能とすることができる。
【0103】
また、マニピュレータシステム10によれば、1つの症例内であっても、使用時間が第1設定時間を超える毎に作業部16の使用回数をカウントアップするので、作業部16を無制限に使用されることが防止される。これにより、無制限に使用されることによる耐久性の問題を未然に回避することができる。
【0104】
作業部16の使用回数のカウントに際しては、作業部16の寿命に関わるパラメータ、すなわち作業部16の使用に伴って増大するパラメータを加味してもよい。このようなパラメータとしては、例えば、エンドエフェクタ19の開閉回数(トリガレバー36の操作回数)が挙げられる。エンドエフェクタ19の開閉により、エンドエフェクタ19を動作させるための駆動系に負荷がかかるため、作業部16の寿命に影響を及ぼすからである。
【0105】
また、作業部16の寿命に関わるパラメータは、トリガレバー36の操作・動作回数だけでなく、他の種類のパラメータでもよく、あるいは、異なる複数種類のパラメータを複合的に加味したパラメータであってもよい。例えば、トリガレバー36の操作・動作回数だけでなく、ヨー動作及びロール動作の各動作回数や、それらの位置・速度・電流値等の積分値や、それらに重み付けを行い、複合的な演算により計算されたパラメータであってもよい。
【0106】
上述したように、マニピュレータシステム10は、検出機構100、130(
図4A、
図5等参照)によりトリガレバー36の操作状態を検出することで、エンドエフェクタ19の開閉回数をカウントできるように構成されているため、作業部16の使用に伴って増大するパラメータを加味して作業部16の使用回数をカウントすることが可能である。また、マニピュレータシステム10は、複合入力部24に対する操作内容を使用履歴保持部38に記憶しておくことにより、ヨー動作及びロール動作の各動作回数を計測することができる。マニピュレータシステム10は、モータ50a、50bに付設されたエンコーダ(図示せず)の検出信号に基づいて、ヨー動作及びロール動作の位置・速度を検出し、使用履歴保持部38に記憶しておくことができる。モータ50a、50bに供給する電流値を検出するセンサを操作部14に設けておけば、その電流値を使用履歴保持部38に記憶しておくことができる。
【0107】
作業部16の使用に伴って増大するパラメータを利用した使用回数のカウントは、次のように行う。すなわち、コントローラ29は、作業部16の使用に伴って増大するパラメータ(例えば、エンドエフェクタ19の開閉回数)を計測又は演算し、1つの症例中にパラメータが作業部16の使用回数に応じて定められた基準値に達したときは、第1設定時間が経過する前であっても、当該作業部16の使用回数をカウントアップする。
【0108】
具体的には、上記パラメータをP、作業部16の寿命が尽きる開閉回数(以下、ストレス度という)をQ、作業部16の使用制限回数をN
max、作業部16の現在の使用回数をNとした場合、下記(1)式を満たしたとき、作業部16の使用回数をカウントアップする。
P=Q×(N/N
max)・・・(1)
【0109】
例えば、ストレス度Qが1000回、作業部16の使用制限回数N
maxが20回、作業部16の現在の使用回数Nが6回目であるとき、Q×(N/N
max)=300であるので、エンドエフェクタ19の開閉回数(パラメータP)が300に達したとき、コントローラ29は、作業部16の使用回数をカウントアップする。
【0110】
図8を参照し、第1設定時間を5時間と設定し、ストレス度Qを1000回、使用制限回数N
maxを20回とした場合を例に、上記パラメータPを利用した使用回数のカウントの具体例を説明する。
図8に示すように、例えば、時刻aにおいて、作業部A1の使用開始条件が満たされ、症例1が開始し、作業部A1の使用回数が1回目(残り19回)となったものとする。
【0111】
時刻bにおいて、作業部A1の使用時間は第1設定時間に達していないが、エンドエフェクタ19の開閉回数(パラメータP)が50回に達し、Q×(N/N
max)=1000×(1/20)=50であるため、コントローラ29は、作業部A1の使用回数をカウントアップする。この結果、作業部A1の使用回数は2回目(残り18回)となる。またこのとき、第1設定時間のカウントダウンは停止し、タイマーがリセットされて再スタートする。
【0112】
時刻cにおいて、作業部A1の使用時間が5時間(第1設定時間)に達したため、コントローラ29は、作業部A1の使用回数をカウントアップする。この結果、作業部A1の使用回数は、3回目(残り17回)となる。症例1は時刻dで終了する。
【0113】
時刻eから作業部A1の4回目(残り16回)の使用が開始され、症例2が開始する。この場合、Q×(N/N
max)=200であり、症例2の途中の時刻fで、エンドエフェクタ19の開閉回数(パラメータP)は200回に達したため、コントローラ29は、作業部A1の使用回数をカウントアップする。この結果、作業部A1の使用回数は5回目(残り15回)となる。
【0114】
以上のように、作業部16の実際の使用状況としてエンドエフェクタ19の開閉回数を加味して使用回数をカウントアップするので、作業部16の使用回数に基づく使用制限の時期の適正化を図ることができる。
【0115】
次に、第2設定時間を利用した使用回数カウントルールについて説明する。第2設定時間は、第1設定時間の適用の下に重複して適用される。
【0116】
症例が切り替わるときには、コントローラ29の電源を入れっぱなしでも、滅菌等のために操作部14をコントローラ29から一時的に(例えば、10分以上)取り外す可能性がある。また、エラー等により操作部14を交換せざるを得なくなった場合には、比較的短時間(例えば10分以内)に交換を行える可能性が高い。そこで、コントローラ29の電源が入った状態でも、第2設定時間(例えば10分)を超えてコントローラ29に操作部14が接続されていない状態が続いた場合には、症例が切り替わった(終了した)と判断する。第2設定時間は、上述した第1設定時間よりも短く設定される。
【0117】
コントローラ29の電源が入った状態で、操作部14がコントローラ29から取り外され、その後、同じ又は別の操作部14がコントローラ29に接続された場合において、操作部14がコントローラ29から取り外されてから第2設定時間以内にコントローラ29に操作部14が接続されたときは、コントローラ29は、症例が切り替わっていないと判断する。この場合、接続された作業部16の使用回数のカウントアップを行わない。一方、操作部14がコントローラ29から取り外されてから第2設定時間を超えてコントローラ29に操作部14が接続されたときは、コントローラ29は、症例が切り替わったと判断して、接続された作業部16の使用回数をカウントアップする。
【0118】
ここで、
図9を参照し、第1設定時間を5時間と設定し、第2設定時間を10分と設定し、使用制限回数を20回とした場合を例に、使用回数のカウントの具体例を説明する。なお、
図9における各記号及び図形の意味は、
図7と同様である。
【0119】
図9に示すように、時刻aにおいて操作部B1がコントローラ29に接続され、その操作部B1に作業部A1が装着され、コントローラ29において作業部A1の個体識別情報が認識され、さらに操作部B1の複合入力部24に対して何らかの入力操作がなされると、作業部A1の使用開始条件が満たされる。これにより、コントローラ29は症例1が開始したと判断し、第1設定時間(5時間)のカウントダウンを開始すると共に、作業部A1の使用回数をカウントアップする。この結果、1回目(残り19回)となったものとする。
【0120】
時刻bにおいて、作業部A1と共に操作部B1がコントローラ29から取り外されると、コントローラ29には操作部が1つも接続されていない状態となるため、第2設定時間(10分)のカウントダウンが始まる。時刻bより10分後の時刻cの時点で、コントローラ29には操作部14が1つも接続されていない状態が継続しているため、第2設定時間に基づくルールにより、コントローラ29は症例1が終了したと判断する。
【0121】
時刻dにおいて、操作部B1がコントローラ29に接続され、操作部B1に作業部A1が装着され、コントローラ29において作業部A1の個体識別情報が認識され、さらに操作部B1の複合入力部24に対して何らかの入力操作がなされると、コントローラ29は、症例2が開始したと判断し、作業部A1の使用回数をカウントアップする。
【0122】
上記の構成によれば、コントローラ29から操作部14が取り外された状態の継続時間が第2設定時間以内であるか否かによって、症例が切り替わったか否かを判断する。従って、例えば、操作部14をコントローラ29から取り外して滅菌等を行うのに要すると想定される最短時間を第2設定時間として設定しておくことにより、滅菌等を行うために操作部14をコントローラ29から外し、その後に操作部14を接続した場合には、第2設定時間が経過していることになるため、次の症例であるとみなして使用回数がカウントアップされる。一方、エラー等により操作部14を交換せざるを得なくなったときには、第2設定時間以内に交換を完了できる可能性が高い。従って、第2設定時間以内に操作部14の交換が完了することで、使用回数が不適切にカウントアップされることが防止される。
【0123】
次に、第3設定時間を利用した使用回数カウントルールについて説明する。第3設定時間は、第1設定時間の適用の下に重複して適用される。
【0124】
症例が切り替わるときには、コントローラ29の電源を切るか、電源ケーブル31(
図1参照)を抜き、コントローラ29を移動させる可能性がある。また、不意に電源スイッチを切ってしまったり、電源ケーブル31を抜いてしまったりした等の場合には、比較的短時間(例えば、10分以内)でコントローラ29のシステムを復帰できる可能性が高い。そこで、第3設定時間(例えば、10分間)より長くコントローラ29の電源が切られているか、電源ケーブル31が抜かれたことを症例の切り替わりの判断に使用する。第3設定時間は、上述した第1設定時間よりも短く設定される。第3設定時間は、第2設定時間と同じであってもよい。
【0125】
コントローラ29へ電力が供給されない状態又はコントローラ29の電源が切られた状態(これを「電源停止状態」と定義する。)になった後に、コントローラ29が再起動した場合において、再起動が電源停止状態の開始時点から第3設定時間以内に完了したときは、コントローラ29は、症例が切り替わっていないと判断する。一方、再起動が電源停止状態の開始時点から第3設定時間を超えて完了したときは、コントローラ29は、症例が切り替わった(終了した)と判断する。
【0126】
ここで、
図10を参照し、第1設定時間を5時間と設定し、第3設定時間を10分と設定し、使用制限回数を20回とした場合を例に、使用回数のカウントの具体例を説明する。なお、
図10における各記号及び図形の意味は、
図7と同様である。
【0127】
図10に示すように、時刻aにおいて操作部B1がコントローラ29に接続され、その操作部B1に作業部A1が装着され、コントローラ29において作業部A1の個体識別情報が認識され、さらに操作部B1の複合入力部24に対して何らかの入力操作がなされると、コントローラ29は、症例1が開始したと判断し、作業部A1の使用回数をカウントアップする。
【0128】
時刻bにおいて、意図的にコントローラ29の電源が切られて電源停止状態となり、第3設定時間のカウントダウンが始まる。その後の時刻cにおいて、コントローラ29から作業部A1及び操作部B1が取り外される。時刻bより10分後の時刻dの時点で、コントローラ29は依然として電源停止状態となっているため、第3設定時間に基づくルールにより、コントローラ29は症例1が終了したと判断する。
【0129】
一方、何らかの原因によりコントローラ29の電源が切られ、その後すぐに電源が入れられることで、時刻bより10分以内にコントローラ29のシステムの起動が完了した場合には、第3設定時間のカウントダウンが停止する。これにより、コントローラ29は症例1が終わっていないと判断する。
【0130】
時刻eにおいて、コントローラ29のシステムの起動が完了して稼動状態となり、その後の時刻fにおいて、操作部B1がコントローラ29に接続され、操作部B1に作業部A1が装着され、コントローラ29において作業部A1の個体識別情報が認識され、さらに操作部B1の複合入力部24に対して何らかの入力操作がなされると、コントローラ29は、症例2が開始したと判断し、作業部A1の使用回数をカウントアップする。
【0131】
上記の構成によれば、不意に電源停止状態となった場合でも、すぐにコントローラ29の電源を入れる操作を行い、第3設定時間以内にコントローラ29が再起動することで、電源が落ちた時点の症例と同じ症例であると判断され、結果として、作業部16の使用回数が不適切にカウントアップされることが防止される。一方、ある症例の終了から次の症例の開始までは、通常は、第3設定時間を超えるため、ある症例から次の症例の間に電源を切った場合には、第3設定時間が経過していることにより、電源が落ちた時点の症例は終了したと判断され、次にコントローラ29に操作部14が接続されると共に、操作部14に作業部16が装着された時点で次の症例が始まったと判断され、作業部16の使用回数がカウントアップされる。
【0132】
ところで、ある症例が終了して、コントローラ29の電源を入れたまま、作業部16の洗浄、滅菌等の必要な処理を行った後、次の症例のために同じ作業部16を同じコントローラ29に接続し、且つ前回の症例の開始から第1設定時間が経過していない場合には、そのコントローラ29に対する操作部14の着脱のタイミングによっては、コントローラ29から操作部14が接続されていない状態の時間が第2設定時間以内となる場合があり得る。この場合、上述した第2設定時間及び第3設定時間に基づく症例終了条件だけでは、実際には症例が切り替わっているにもかかわらず症例の切り替わりが認識されず、作業部16の使用回数を適切にカウントできないことが懸念される。
【0133】
そこで、本実施形態のように、コントローラ29に複数(N個)の接続ポート27(
図1参照)が設けられる場合には、コントローラ29は、1つの症例中に接続された操作部14の数が(N+α)個に達した場合には、別の症例に切り替わったと判断するとよい。上記αは、システムの信頼性、ユーザの使い勝手等を考慮して任意に設定することができる。
【0134】
例えば、システムの信頼性が高く、操作部14について何らかのエラー等が発生する可能性が極めて低い場合には、αとして1を設定してよい。この場合、1症例中に接続ポート27の個数Nより1だけ多い台数目(接続ポートが2つの場合、3台目)の操作部14を接続したら、コントローラ29は、症例が切り替わったと判断する。
【0135】
一方、操作部14について何らかのエラー等が発生する可能性を考慮し、ユーザの使い勝手を優先する場合には、例えば、αとして2を設定してよい。この場合、操作部14について何らかのエラー等が発生し、操作部14を交換せざるを得ない事態が生じた場合でも、コントローラ29は、1台だけの操作部14の交換であれば症例が切り替わったと判断しない。1症例中に接続ポート27の数より2だけ多い台数目(接続ポートが2つの場合、4台目)の操作部14がコントローラ29に接続された場合には、コントローラ29は、症例が切り替わったと判断する。
【0136】
2つの接続ポート27が設けられたコントローラ29を備えたマニピュレータシステム10において、上記αを2に設定し、第1設定時間を5時間に設定し、第2設定時間を10分に設定し、第3設定時間を10分に設定し、使用制限回数を20回とした場合を例に、使用回数のカウントの具体例を、
図11に基づいて説明する。
【0137】
図11に示すように、時刻aにおいて、操作部B1がコントローラ29に接続され、その操作部B1に作業部A1が装着され、コントローラ29において作業部A1の個体識別情報が認識され、さらに操作部B1の複合入力部24に対して何らかの入力操作がなされると、コントローラ29は、症例1が開始したと判断し、作業部A1の使用回数をカウントアップする。操作部B2に装着された作業部A2についても、時刻aの時点で、同様に使用回数がカウントアップする。
【0138】
時刻bにおいて、操作部B2にエラーが発生したため、操作部B2はコントローラ29から取り外され、作業部A2は時刻cにおいて、別の操作部B3に装着される。この操作部B3は症例1中では3台目であるが、N+α=4に達していないため、コントローラ29は、症例が切り替わったと判断しない。
【0139】
時刻dにおいて、コントローラ29から操作部B1が取り外され、作業部A1には、次の症例での使用に備えて滅菌、洗浄等の所定の処理が施される。時刻eにおいて、操作部B3がコントローラ29から取り外される。その後、時刻eより10分(第2設定時間)以内の時刻fにおいて、別の操作部B4がコントローラ29に接続され、この操作部B4に作業部A3が装着されるが、操作部B4は症例1中では4台目であり、N+α=4に達するため、コントローラ29は、症例1が終了し、症例2が開始したと判断する。
【0140】
上記の構成によれば、コントローラ29の電源を入れたままで、接続ポート27の個数Nよりもα個だけ多い台数目の操作部14をすぐさま接続した場合に、実際には症例が切り替わっているにもかかわらず症例の切り替わりが認識されない事態を回避することができる。従って、作業部16の使用回数をより適切にカウントすることが可能となる。
【0141】
また、上記αを2に設定した場合、接続ポート27の個数に対してプラス1個だけ別の操作部を接続しても症例が切り替わったと判断されないので、エラー等により操作部を交換せざるを得ない事態が生じた場合でも、すでに接続していた作業部16の使用回数が不必要にカウントされることがない。従って、作業部16の使用回数をより適切にカウントすることが可能となる。
【0142】
コントローラ29は、以下に説明する変形例に係る使用回数カウントルールに従い、作業部16の着脱の状況及びその時間に基づいて、症例の開始及び終了を判断し、作業部16の使用回数をカウントしてもよい。変形例に係る使用回数カウントルールに従う場合、コントローラ29は、少なくとも1つのルールに基づいて1症例を定義して作業部16の使用回数のカウントアップを行う機能を有する。
【0143】
具体的には、コントローラ29は、1症例毎に作業部16の使用回数をカウントし、作業部16の使用回数が使用制限回数(設定回数)を超えている場合には、複合入力部24からの指示を無効とみなす。すなわち、作業部16の使用回数が使用制限回数を超えている場合には、コントローラ29は、複合入力部24が操作されても、モータ50a、50bを駆動する制御を行わない。
【0144】
本実施の形態において、コントローラ29は、以下に説明する第1〜第3ルールを適用して1症例を定義し、作業部16の使用回数をカウントする。
【0145】
まず、第1ルールについて説明する。第1ルールでは、1症例を定義するための基本ルールである。実際の手術が長時間に及ぶ症例に作業部16を使用する場合に、これを1回の使用とみなしたのでは作業部16の耐久性に問題が生じる可能性がある。そこで、第1ルールでは、1症例の最大時間を第1設定時間(例えば、5時間)と考え、使用回数を第1設定時間でカウントアップする。
【0146】
具体的には、第1ルールでは、どのルールも適用されていない状態で操作部14に作業部16が装着されてコントローラ29が個体識別情報を認識したとき、作業部16の使用回数をカウントアップし、作業部16が第1設定時間を超えて装着される場合には、第1設定時間を超えるごとに症例を切り替え、症例毎に作業部16の使用回数をカウントアップする。
【0147】
ここで、
図12を参照し、第1設定時間を5時間と設定し、使用制限回数(設定回数)を20回とした場合を例に、第1ルールに係る使用回数のカウントの具体例を説明する。
図12に示すように、例えば、時刻aにおいて操作部B1がコントローラ29に接続されると共に、その操作部B1に作業部A1が装着されると、コントローラ29において作業部A1の個体識別情報が認識される。すると、コントローラ29は、症例1が始まったと判断し、作業部A1の使用回数をカウントアップすると共に、タイマー機能を利用して、第1ルールのカウントダウンを開始する。このとき、作業部A1の使用回数は、1回目(残り19回)となったものとする。
【0148】
また、時刻aより後に、操作部B2がコントローラ29に接続されると共に、その操作部B2に作業部A2が装着されると、コントローラ29において作業部A2の個体識別情報が認識され、作業部A2の使用回数がカウントアップされる。このとき、作業部A2の使用回数は、20回目(残り0回)となったものとする。
【0149】
時刻bより少し前に操作部B2及び作業部A2が取り外され、その後、時刻bに再接続された場合、作業部A2は同じ症例内ですでに使用回数がカウントされているため、作業部A2の使用回数はカウントアップされない。
【0150】
時刻cにおいて、第1ルールでの使用が5時間(第1設定時間)に達したため、コントローラ29は、症例2(次の症例)が開始したとみなし、作業部A1、A2の使用回数をカウントアップする。この場合、作業部A2については、使用制限回数を超えているため、使用不能となる。すなわち、時刻c以降に複合入力部24が操作されても、コントローラ29は複合入力部24からの指示を無効とみなし、モータ50a、50bの駆動制御を行わない。
【0151】
このように、作業部16の着脱の状況及びその時間に基づいて、症例の切り替わりの有無を判断するので、作業部16の着脱の状況及びその時間に関して所定の条件設定を行うことで、1症例を適切に定義し、結果として、作業部16の使用回数を適切にカウントすることができる。すなわち、1つの症例(手術)とみなす最大時間に対応させて第1設定時間を設定することにより、第1設定時間以内の使用を1回の使用としてみなして使用回数をカウントする。
【0152】
また、上記の構成では、作業部16の使用時間が第1設定時間を超える毎に症例が切り替わったと判断するので、手術時間が相当に長い症例の場合には、複数回の使用とみなしてカウントすることになる。従って、使用回数に基づく使用制限の時期の適正化を図ることができる。
【0153】
また、作業部16の使用回数が使用制限回数(設定回数)を超えている場合には、複合入力部24からの指示を無効とするので、操作者が複合入力部24を操作しても駆動源が駆動せず、従って、エンドエフェクタ19を含む先端動作部12が動作しない。これにより、使用制限回数に達した作業部16を強制的に使用不能とすることができる。
【0154】
次に、第2ルールについて説明する。第2ルールは、第1ルールの適用の下に重複して適用される。すなわち、第2ルールは、第1ルールに従属するカウントルールである。
【0155】
第2ルールでは、コントローラ29の電源が入った状態で、操作部14がコントローラ29から取り外され、その後、同じ又は別の操作部14がコントローラ29に接続された場合を想定する。この場合において、コントローラ29は、操作部14がコントローラ29から取り外されてから第2設定時間以内にコントローラ29に操作部14が接続されたときは、症例が切り替わっていないと判断し、接続された作業部16の使用回数のカウントアップを行わず、操作部14がコントローラ29から取り外されてから第2設定時間を超えてコントローラ29に操作部14が接続されたときは、症例が切り替わったと判断して、接続された作業部16の使用回数をカウントアップする。この第2ルールは、
図9を参照して説明したカウントルールを、変形例に係る使用回数カウントルールに適用したものである。
【0156】
図13を参照し、第1設定時間を5時間と設定し、第2設定時間を10分と設定し、使用制限回数を20回とした場合を例に、第2ルールに係る使用回数のカウントの具体例を説明する。
図13に示すように、例えば、時刻aにおいて操作部B1がコントローラ29に接続されると共に、その操作部B1に作業部A1が装着されると、コントローラ29において作業部A1の個体識別情報が認識される。すると、コントローラ29は、症例1が始まったと判断し、作業部A1の使用回数をカウントアップすると共に、第2ルールのカウントダウンを開始する。このとき、作業部A1の使用回数は、1回目(残り19回)となったものとする。
【0157】
時刻bにおいて、作業部A1と共に操作部B1がコントローラ29から取り外され、第2ルールのカウントダウンが始まる。このとき、コントローラ29には、1台も操作部14が接続されていない状態となっている。時刻bより9分後の時刻cにおいて、コントローラ29に操作部B2が接続され、第2ルールのカウントダウンが停止する。時刻bから時刻cの間も、第1ルールのカウントダウンは進んでいる。
【0158】
時刻dにおいて、操作部B2に作業部A2が装着され、作業部A2の使用回数がカウントアップされる。時刻eにおいて、操作部B2がコントローラ29より取り外され、第2ルールのカウントダウンが始まる。時刻eより10分が経過した時刻fにおいて、症例1が終わったと判断する。
【0159】
時刻gにおいて、操作部B2がコントローラ29に接続されると共に、操作部B2に作業部A2が装着されるが、作業部A2の使用回数が上限に達しているため、使用することができない。このとき、新規症例とはされず、第1ルールのカウントダウンも始まらない。
【0160】
時刻hにおいて、操作部B1がコントローラ29に接続されると共に、操作部B1に作業部A1が装着されると、コントローラ29は、症例2が開始したと判断し、作業部A1の使用回数をカウントアップする。
【0161】
以上のように、第2ルールでは、コントローラ29から操作部14が取り外された状態の継続時間が第2設定時間以内であるか否かによって、症例が切り替わったか否かを判断する。従って、例えば、操作部14をコントローラ29から取り外して滅菌等を行うのに要すると想定される最短時間を第2設定時間として設定しておくことにより、症例が切り替わったのか、あるいはエラー等により操作部14を交換したのかを判別でき、結果として、使用回数を適切にカウントすることが可能となる。
【0162】
次に、第3ルールについて説明する。第3ルールは、第1ルールの適用の下に重複して適用される。すなわち、第3ルールは、第1ルールに従属するカウントルールである。
【0163】
第3ルールでは、コントローラ29が電源停止状態になった後に、コントローラ29が再起動した場合を想定する。この場合において、コントローラ29は、再起動が電源停止状態の開始時点から第3設定時間以内に完了したときは、症例が切り替わっていないと判断し、再起動が電源停止状態の開始時点から第3設定時間を超えて完了したときは、症例が切り替わったと判断する。この第3ルールは、
図10を参照して説明したカウントルールを、変形例に係る使用回数カウントルールに適用したものである。
【0164】
図14を参照し、第1設定時間を5時間と設定し、第3設定時間を1分と設定し、使用制限回数を20回とした場合を例に、第3ルールに係る使用回数のカウントの具体例を説明する。なお、第3ルールの説明において、コントローラ29は、外部電源からの電力供給がなくなると自動的にシステムが終了して電源が切られ、また、電源を入れてからシステムが起動するまでに約30秒を要する仕様となっているものとする。
【0165】
図14に示すように、時刻aにおいて操作部B1がコントローラ29に接続されると共に、その操作部B1に作業部A1が装着されると、コントローラ29において作業部A1の個体識別情報が認識される。すると、コントローラ29は、症例1が始まったと判断し、作業部A1の使用回数をカウントアップすると共に、第3ルールのカウントダウンを開始する。このとき、作業部A1の使用回数は、1回目(残り19回)となったものとする。
【0166】
時刻bにおいて、電源ケーブル31がコントローラ29から取り外され、これによりコントローラ29の電源が落ちる。時刻bから20秒後の時刻cにおいて、電源ケーブル31がコントローラ29に接続されると共に、コントローラ29の電源が入れられる。時刻bから55秒後の時刻dにおいて、コントローラ29のシステムの起動が完了し、第3ルールのカウントダウンが停止する。
【0167】
時刻bから時刻dまでの間も、第1ルールのカウントダウンは進んでいる。時刻eにおいて、電源ケーブル31がコントローラ29から取り外され、これによりコントローラ29の電源が落ちる。時刻eから35秒後の時刻fにおいて、電源ケーブル31がコントローラ29に接続され、コントローラ29の電源が入れられる。時刻eから65秒後の時刻gにおいて、コントローラ29のシステムの起動が完了するが、すでに時刻eから65秒が経過しているので、コントローラ29は、症例1が終わったと判断する。
【0168】
時刻hにおいて、操作部B1がコントローラ29に接続されると共に、操作部B1に作業部A1が装着されると、コントローラ29は、症例2が開始したと判断するとと共に、作業部A1の使用回数をカウントアップする。
【0169】
以上のように、第3ルールでは、コントローラ29の再起動が、電源停止状態の開始時点から第3設定時間以内であるか否かによって、症例が切り替わったか否かを判断する。従って、例えば、不意に電源スイッチを切ってしまったり、コントローラ29から電源ケーブルを抜いてしまったりした等の場合に、コントローラ29を再起動するまでに要すると見込まれる時間の最大値に対応させて第3設定時間を設定しておくことにより、症例が切り替わったのか、あるいは不意に電源停止状態となったのかを判別でき、結果として、使用回数を適切にカウントすることが可能となる。
【0170】
なお、変形例に係る使用回数カウントルールでは、コントローラ29において作業部16の個体識別情報が認識されたときを症例開始の判断基準時(判断条件)としたが、作業部16が操作部14に装着され、且つ操作部14がコントローラ29に接続された状態で、操作部14の複合入力部24に対して何らかの入力操作がなされたときを症例開始の判断基準時としてもよい。
【0171】
また、上述した実施形態では、症例の開始時(コントローラ29に作業部16の個体識別情報が認識されたとき)に作業部16の使用回数をカウントする場合を説明したが、代わりに、症例が終了したと判断したときに作業部16の使用回数をカウントするようにしてもよい。
【0172】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。