(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
路面凍結防止や雪崩対策等のため、気象状態の観測が重要であるところから気象状態の観測を行う技術が従来より開発されている。例えば、特許文献1には、雨、雪、霧の判別を行う方法が開示されている。
【0003】
特許文献1は気象状態の判別のために赤外光を用いるものであり、単一波長の赤外光を空中に投光する発光器と、空中の雪、雨等の降下物から反射された後方散乱光を受光する受光器とを備えている。そして受光器の受光量に基づいて得られる平均値、偏差値及びこれらを関数とした変異係数を演算し、変異係数の値によって雨、雪、霧の判別を行うものである。受光量における平均値は雪、霧>雨であり、偏差値は雨、雪>霧であるところから、これらを関数とした変異係数が雨>雪>霧となることにより判別を行うものである。
【0004】
特許文献1に加え、近年では、光学センサ、感雨センサ、温度センサを組み合わせた降雪センサを気象観測に用いることがなされている。すなわち、波長875nmの単一波長の近赤外光を用い、この近赤外光の前方散乱光における光学センサのデータ、感雨センサのデータ、温度センサのデータを処理して雪と霙の判別を行うものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
山地等の積雪状態に対して、霙が降ると積雪している表層部分が重くなるため、雪崩発生の原因となる。このため、気象状態が雪であるか、霙であるかを判別することは雪山遭難を防止する観点から重要なこととなっている。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、雪、雨、霧の判別が可能であるとしても、霙の判別ができないものとなっている。霙は雨と雪が混ざって降る気象現象であり、雨と雪の限界領域のため、単一波長の赤外光を用い、この単一波長の赤外光の受光量だけでは雪や雨との判別が分かり難いためである。
光学センサ、感雨センサ、温度センサを組み合わせた降雪センサも同様であり、単一波長の近赤外光を用いることから雪、霙の判別が曖昧となっている。又、この降雪センサでは、各種センサを組み合わせていることから構成部品が多く、操作や制御が面倒であり、しかも得られたデータの処理が面倒となる問題も有している。
【0008】
本発明はこのような従来の問題点を考慮してなされたものであり、雪、雨の判別だけでなく、霙を雪や雨と明確に判別することが可能な判別方法を提供すると共に、これらの判別が簡単な構成で可能であり、その際の操作や制御、処理が簡単な判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の雪、霙、雨の判別方法は、水による吸収量が多い波長域の近赤外光及び水による吸収量が少ない波長域の近赤外光のそれぞれを空中の降下物に向けて投光する投光段階と、前記それぞれの波長域の近赤外光を前記空中の降下物から受光する受光段階と、前記投光した近赤外光の強度に対する前記受光した近赤外光の強度の変動値を前記各波長域ごとに測定し、測定した変動値に基づいた値を所定の基準値と比較して雪、霙、雨のいずれかを判別する判別段階とを
備え、前記受光段階は、前記投光段階で投光した近赤外光が空中の降下物を透過した透過光を受光することを特徴とする。
【0010】
この場合、前記判別段階は、前記各波長域ごとの近赤外光の強度の変動値に対して所定の閾値を設定し、閾値以上の変動値を各波長域の有効値とし、双方の波長域の有効値の比較演算によって判別値を得、この判別値を前記所定の基準値と比較して雪、霙、雨のいずれかを判別することが好ましい。
又、前記水による吸収量が多い波長域の近赤外光は1400nm〜1500nmの波長域であり、前記水による吸収量が少ない波長域の近赤外光は900nm〜1350nmの波長域であることが好ましい。
【0011】
本発明の雪、霙、雨の判別装置は、水による吸収量が多い波長域の近赤外光を空中の降下物に向けて投光した後、前記近赤外光を前記空中の降下物から受光する第1光路部と、水による吸収量が少ない波長域の近赤外光を空中の降下物に向けて投光した後、前記近赤外光を前記空中の降下物から受光する第2光路部と、前記投光した近赤外光の強度に対する受光した近赤外光の強度の変動値を前記第1光路部及び第2光路部ごとに測定し、測定した変動値に基づいた値を所定の基準値と比較して雪、霙、雨のいずれかを判別する判別手段とを
備え、前記第1光路部及び第2光路部は、前記空中の降下物を透過した透過光を受光することを特徴とする。
【0012】
この場合、前記判別手段は、前記近赤外光の強度の変動値に対して所定の閾値以上のときに有効値とし、前記第1光路部側の有効値及び第2光路部側の有効値の比較演算によって判別値を得、この判別値を前記所定の基準値と比較して雪、霙、雨のいずれかを判別することが好ましい。
又、前記第1光路部は1400nm〜1500nmの波長域の近赤外光を発光する第1発光器とを備え、前記第2光路部は900nm〜1350nmの波長域の赤外光を発光する第2発光器を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の雪、霙、雨の判別方法によれば、水の吸収量が多い波長域及び水の吸収量が少ない波長域の2つの波長域の近赤外光を用い、それぞれの波長域の近赤外光を空中の降下物に向けて投光し、
空中の降下物を透過した透過光を受光し、投光したときの強度及び降下物から受光したときの強度を波長域ごとに比較するため、雪、霙、雨を明確に判別することができる。
【0014】
本発明の雪、霙、雨の判別装置によれば、水の吸収量が多い波長域及び水の吸収量が少ない波長域の2つの波長域の近赤外光のそれぞれを空中の降下物に向けて
投光し、空中の降下物を透過した透過光を受光する第1光路部及び第2光路部を備え、それぞれの光路部における投光時の強度及び受光時の強度を比較するため、雪、霙、雨を明確に判別することができる。又、これらの光路部と、光路部からの強度に基づいて雪、霙、雨を判別する判別手段とからなる構成のため、簡単な構成とすることができ、操作、制御及び処理が簡単となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による雪、霙、雨の判別は、波長が異なっている2つの波長域の近赤外光を空中の降下物に向けて投光し、それぞれの波長域の近赤外光を空中の降下物から受光し、投光した近赤外光の強度と受光した近赤外光の強度とを波長域ごとに比較することによって雪、霙、雨の気象状態を判別するものである。このような本発明は、水による近赤外光の吸収量が近赤外光の波長域によって異なることを利用するものである。
【0017】
図1は水の近赤外吸収スペクトルを示す。
図1に示すように、水は1400nm〜1500nmの波長域の吸光度が大きく、この波長域の近赤外光の吸収量が多い一方、900nm〜1350nmの波長域の近赤外光の吸光度が小さく、この波長域の近赤外光の吸収量が少ない特性を有している。空から降る降下物のうち、雨は水であり、雪は結晶であるところから、雨は1400nm〜1500nmの波長域の近赤外光の吸収量が多く、900nm〜1350nmの波長域の近赤外光の吸収量が少なく、これらの2つの波長域での吸収量のばらつきが大きいのに対し、雪は波長の差異に関係なく近赤外光を反射するため2つの波長域での近赤外光の吸収量は左程ばらつくことがない。霙は雨と雪が混ざった気象現象であるから2つの波長域では雨と雪の中間の特性を示す。従って、以上の定性的な特性に基づくことにより、空中の降下物が雪、霙、雨のいずれかであることを判別することが可能となる。
【0018】
本発明において、空中の降下物に向けて投光した2つの近赤外光を受光する態様として、空中の降下物を透過した透過光を受光する
ものであり、以下、透過光を受光する実施形態について説明する。
【0019】
図2は透過光を受光する実施形態に適用される判別装置1を示す。判別装置1は、水による吸収量が多い波長域の近赤外光を空中の降下物2に向けて投光した後、空中の降下物2を透過した透過光を受光する第1光路部3と、水による吸収量が少ない波長域の近赤外光を空中の降下物2に向けて投光した後、空中の降下物2を透過した透過光を受光する第2光路部4と、空中の降下物2が雪、霙、雨のいずれかであることを判別する判別手段5とを備える。以下の説明において、水による吸収量が多い波長域を1450nmとし、水による吸収量が少ない波長域を945nmとするが、これらの2つの波長域としては上述した範囲内であれば適宜変更可能である。
【0020】
第1光路部3は波長1450nmの近赤外光を発光する第1発光器31を備え、第2光路部4は波長945nmの近赤外光を発光する第2発光器41を備えている。これらの発光器31,41はLEDが用いられるものであり、1450nmの第1発光器31としては、例えば、商品名「L23888−01」(浜松ホトニクス(社)製)のLEDを用いることができ、945nmの第2発光器41としては、例えば、商品名「L10660−01」(浜松ホトニクス(社)製)のLEDを用いることができる。
【0021】
第1発光器31及び第2発光器41はLED点滅回路8に接続されて発光する。LED点滅回路8は電源6及び発振器7に接続されることにより駆動する。LED点滅回路8は発振器7から信号が入力されることにより第1発光器31及び第2発光器41を同時に発光させる。又、発振器7はLED点滅回路8に信号を出力すると同時にその同期信号を参照信号としてロックインアンプ11,12に出力する。
【0022】
第1光路部3及び第2光路部4は、降下物2を挟んで設けられて第1発光器31及び第2発光器41のそれぞれに対向する受光器32,42を有している。受光器32,42は対応した発光器31,41の発光によって降下物2に向けて投光されて降下物2を透過した透過光を受光する。受光器32,42としては、降下物の判別に用いられる範囲の波長域の近赤外光を受光可能なものが選択される。このため受光器32,42は900nm〜1500nmの範囲の近赤外光を受光可能なフォトダイオードが用いられる。この受光器32,42としては、例えば、商品名「G8370−81」(浜松ホトニクス(社)製)からなるInGaAsフォトダイオードを用いることができる。かかるInGaAsフォトダイオードは25℃において、約900nm〜1700nmの波長範囲の近赤外光を受光する波長感度特性を有している。
【0023】
第1光路部3は第1発光器31の出射側に平凸レンズ33及び偏光板34を備え、受光器32の入射側に偏光板35及び平凸レンズ36を備えている。第2光路部4も同様であり、第2発光器41の出射側に平凸レンズ43及び偏光板44を備え、受光器42の入射側に偏光板45及び平凸レンズ46を備えている。出射側の平凸レンズ33,43はそれぞれの発光器31,41が発光する近赤外光を平行ビームとし、平凸レンズ33,43に続く偏光板34,44は近赤外光を直線偏光とする。入射側の偏光板35,45は出射側の偏光板34,44とスレットの向きが同じとなるように配置されることにより外乱光を遮断する。これにより降下物2を透過した透過光が平凸レンズ36,46を通過して集光され、それぞれの受光器32,42に入射して受光される。
【0024】
図3は第1光路部3における具体的な構造を示す。近赤外光の光路となる支持パイプ37及び支持パイプ38が降下物2を挟んで対向している。支持パイプ37,38は距離Dを有して離隔されており、離隔された支持パイプ37,38の間が降下物2の測定空間となっている。支持パイプ37内には第1発光器31、平凸レンズ33、偏光板34が配置され、支持パイプ38内には偏光板35、平凸レンズ36、受光器32が配置されている。支持パイプ37,38はポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂によって筒状に形成される。
図3において、Lは第1発光器31と受光器32との間の光路長である。光路長Lとしては例えば500mm、測定空間となる距離Dとしては例えば300mmと設定することができる。なお、平凸レンズ33としては、例えば、商品名「SLSQ−30−50P」(シグマ光機(社)製)、偏光板34としては、通過波長900nm〜2000nmとなっている例えば商品名「NT48−889」(エドモンド(社)製)が用いられる。以上の
図3に示す第1光路部3の構造は、第2光路部4に対しても同様となっている。
【0025】
判別手段5は2つの波長域のそれぞれに対応したロックインアンプ11,12と、ロックインアンプ11,12が接続される判別部9とを備えている。
【0026】
判別手段5のロックインアンプ11は第1光路部3の受光器32に接続され、ロックインアンプ12は第2光路部4の受光器42に接続されている。フォトダイオードからなる受光器32,42はそれぞれの波長(1450nm、945nm)の近赤外光を受光すると、その光信号を電気信号に変換した後、測定信号としてそれぞれのロックインアンプ11、12に出力する。かかるロックインアンプ11、12には、LED点滅回路8に出力される信号の同期信号が参照信号として入力されているからロックインアンプ11、12には発光器31,41から降下物2に向けて投光された近赤外光の強度(参照信号に同期)及び各受光器32、42が受光した降下物2の透過光の強度(測定信号)が各波長ごとに入力される。そして、各ロックインアンプ11、12は投光側の近赤外光の強度(参照信号に同期)に対する受光側の近赤外光の強度(測定信号)の変動に対応したロックイン出力を測定する。降下物2が降っていないときは、投光及び受光の間で近赤外光の強度が変化しないためロックイン出力が一定であるのに対し、降下物2が降っているときは透過光の強度が弱まるため、ロックイン出力が変動する。各ロックインアンプ11、12にはA/D変換器13、14が接続されており、各波長ごとのロックイン出力の変動値がA/D変換された後、パソコン等からなる判別部9に出力される。
【0027】
判別部9は入力されたロックイン出力の変動値に基づいて降下物2が雪、霙、雨のいずれかであるかを判別する。判別手法としては、ロックインアンプ11、12からのそれぞれのロックイン出力の変動値に対して閾値を測定し、閾値以上の変動値を各波長(1450nm、945nm)における有効値とし、各波長における有効値を比較演算して判別値とし、この判別値を基準値と比較して雪、霙、雨のいずれかを判別する手法を採用することができる。
【0028】
上記手法における閾値は、ロックイン出力の変動値が明確に変動しているか否かの区別を行うことが可能な値に設定されるものであり、入力されるロックイン出力の変動値のデータ数、変動値の分布状態、その他に応じて適宜設定される。上記手法における各波長における有効値の比較演算は、例えば波長1450nmの有効値と945nmの有効値との間の比率を得る演算によって行われ、例えば波長1450nmの有効値と945nmの有効値との除算を行って比較演算することができる。このような2つの波長の有効値の比較演算によって判別値が得られ、この判別値を基準値と比較して降下物2の判別を行う。基準値は実際の雪、霙、雨の気象状態を観察することにより経験的に設定されるものであり、基準値は気象観測を行う地域や時期、気温等に応じて適宜変更される。
【0029】
次に、この実施形態による降下物2の判別を具体的に説明する。
【0030】
図2に示す判別装置1を屋外に設置する。設置に際しては、光学長Lを500mm、支持パイプ37,38の距離Dを300mmとし、支持パイプ37,38の間に降下物2が降下するように設定する。この設置の後、実際の雨、雪又は霙の気象状態に対して判別装置1を駆動する。判別装置1は所定の時間(例えば10分間)を駆動して10000点のロックイン出力の変動値を得、このロックイン出力の変動値をデータ処理する。データ処理は10000点のロックイン出力の変動値の内、最大の変動値を「1」とし、他のロックイン出力の変動値を比例計算して規格化する。これにより
図4〜
図6のグラフを得る。
図4〜
図6のグラフは10000点における各点のロックイン出力の変動値を示している。
図4〜
図6のグラフから閾値を0.2と設定する。この閾値0.2以上の場合のロックイン出力の変動値が有効値となり、この有効値の数を計測する。
【0031】
図4は気象状態が雨の時の測定グラフであり、(A)は波長945nm、(B)は波長1450nmのデータである。雨の場合には、波長945nmの近赤外光では有効値が3 個であるの対し、波長1450nmの近赤外光では有効値が422個となっている。これは波長1450nmの赤外光が雨粒に吸収されることにより降下物2を透過する透過光が弱まったためである。
【0032】
図5は気象状態が雪の時の測定グラフであり、(A)は波長945nm、(B)は波長1450nmのデータである。
図5(A)、(B)で示すように波長945nmの近赤外光では、有効値が107個、波長1450nmの近赤外光では有効値が222個となっており、2つの波長の近赤外光の有効値が多く発生している。これは雪の表面や内部で近赤外光の反射が起きたためである。雪の形状はいびつであり、空気を含んでいるため雪の内部や表面で反射しやすく、波長の差異に関係なく近赤外光が反射する。この反射により透過光が弱まって有効値が多く発生したものである。
【0033】
図6は気象状態が霙の時の測定グラフであり、(A)は波長945nm、(B)は波長1450nmのデータである。
図6(A)で示すように、波長945nmの近赤外光では有効値が6個となっており、雨の場合よりも若干有効値が多く発生している。
図6(B)で示すように波長1450nmの近赤外光では有効値が84個となっており、波長945nmの近赤外光よりも有効値が多くなっている。霙は雪と雨が混ざった気象現象であることから霙を透過する波長1450nmの近赤外光が吸収され、有効値が多くなったものである。このような霙における波長945nm及び波長1450nmの有効値は雪と雨の中間の値となる。
【0034】
表1は以上の
図4〜
図6のグラフから有効値の数を定性的に示したものである。表1において、「○」は有効値が多くあるもの、「△」は有効値が若干あるもの、「×」は有効値がほとんどないものを示す。
【0036】
表2は
図4〜
図6のグラフを定量的にまとめて示している。この場合、雪のデータは約6000点、霙のデータは約4000点が得られていることから雪の有効値の数を1.7倍し、霙の有効値の数を2.5倍することにより10000点に規格化してある。
【0038】
以上の表2の有効値では、雪、雨、霙が降っている量によって測定値が異なってくることから各気象状態における2つの波長の有効値を比例演算して判別値を算出する。比例演算は、2つの波長の有効値の除算によって行うものであり、判別値=(波長1450nmの有効値の個数)/(波長945nmの有効値の個数)により算出する。表3は比例演算した結果を示す。
【0040】
表3で示すように、雨と雪の判別値は2桁の相違があり、霙の場合は雪の判別値よりも幾分多い判別値となっている。これは霙が雪と雨が混ざった気象現象によるものである。表3で示す判別値に対し基準値を以下のように設定する。基準値は雨、霙、雪の気象状態を区分けするように設定されるものであり、この実施形態においては、雨の場合の基準値は100以上、霙の基準値は6〜20程度の範囲、雪の基準値は2〜3の範囲と設定し、この基準値と判別値とを比較する。これにより降下物2が雪、霙、雨のいずれかであることを明確に判別することができる。
【0041】
なお、この実施形態では光路長Lを500mmとしたが、1000mm等のように光路長Lを長くすることが可能である。これにより発光器31、41と受光器32、42との間の光路を通過する降下物の量が増えるため、雪と霙の判別をさらに明確にすることができる。又、本発明においては、変動値に対する閾値や基準値を適宜変更することができる。
【0042】
このような実施形態によれば、1450nm及び945nmの2つの波長域の近赤外光を用いて空中の降下物2に投光し、投光した近赤外光の強度と降下物2を透過した近赤外光の強度を2つの波長域ごとに比較するため、雪、霙、雨を明確に判断することができる。
【0043】
又、この実施形態の判別装置によれば、1450nm及び945nmの2つの波長域の近赤外光を降下物2に投光して受光する2つの光路部と、これらの光路部からの強度に基づいて雪、霙、雨を判別する判別手段とによって構成されるため、簡単な構成であり、操作、制御、処理が簡単となる。
【0044】
図7は、
参考例における判別装置を示す。
図7は判別装置における光学系を示し、
図2と同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。この
参考例の光学系は空中の降下物2から反射した反射光を受光するものである。
【0045】
図7に示すように、光学系は第1光路部3及び第2光路部4を備えている。第1光路部3は、水による吸収量が多い波長域の近赤外光(例えば波長1450nm)を空中の降下物2に向けて投光した後、空中の降下物2から反射した反射光を受光する。このため、第1光路部3は、水による吸収量が多い波長域の近赤外光を発光する第1発光器31と第1発光器31の出射側に配置された平凸レンズ33及び偏光板34とによって投光側が形成され、降下物2によって反射された近赤外光を受光する受光器32と受光器32の入射側に配置された偏光板35及び平凸レンズ36とによって受光側が形成されている。第2光路部4は水による吸収量が少ない波長域の近赤外光(例えば波長945nm)を空中の降下物2に向けて投光した後、空中の降下物2を反射した反射光を受光する。第2光路部4は第1光路部3と同様な配置構造となっており、水による吸収量が少ない波長域の近赤外光を発光する第1発光器41と第1発光器41の出射側に配置された平凸レンズ43及び偏光板44とによって投光側が形成され、降下物2によって反射された近赤外光を受光する受光器42と受光器42の入射側に配置された偏光板45及び平凸レンズ46とによって受光側が形成されている。
【0046】
第1光路部3及び第2光路部4においては、投光側の光路に対し、受光側の光路が直交した位置に配置される。従って降下物2を透過した後、投光側の光路に沿って直進する近赤外光は受光側に達することがなく、投光側から投光され降下物2で受光側に反射された近赤外光だけが受光側で受光される。
【0047】
かかる降下物2における反射において、2つの波長の近赤外光が雪に当たると、双方の波長の近赤外光はいずれも雪の表面で反射して受光側に屈折する。従って雪の場合は、波長の差異に関係なく近赤外光を反射するため、2つの波長の近赤外光の吸収量に生じるばらつきが少ない。雨の場合は、その外表面で反射する近赤外光と、雨の内部に侵入した後、内表面で反射する近赤外光とが発生する。雨の外表面で反射する近赤外光は吸収されることなく受光側に反射するが、雨の内表面で反射する近赤外光は雨の内部で吸収される。このため雨の場合は、水による吸収量が多い波長域の近赤外光と、水による吸収量が少ない近赤外光ととの間で吸収量に大きな差が発生する。霙は雨と雪が混ざった気象現象であるから、2つの波長域の近赤外光で雨と雪の中間の特性を示す。従って、空中の降下物2からの反射光の場合においても、上述した透過光と同様な条件で雪、霙、雨の判別を明確に行うことができる。