(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、伝動面にフィルム層が設けられた伝動ベルトでは、プーリとの接触によってフィルム層が摩耗し易いので、フィルム層を厚くすることが考えられるものの、フィルム層を厚くすると、例えば、小プーリ径での逆曲げなどの伸長ひずみが大きくなる場合に、クラックが発生し易くなってしまう。したがって、伝動面にフィルム層が設けられた伝動ベルトでは、耐摩耗性及び耐クラック性がトレードオフの関係にある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、伝動面にフィルム層が設けられた伝動ベルトにおいて、耐摩耗性と耐クラック性とを両立させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、フィルム層が、発泡構造を有し、内部に繊維成分を含有するようにしたものである。
【0010】
具体的に本発明に係る伝動ベルトは、心線が埋設された接着ゴム層と、上記接着ゴム層のベルト内面側に積層するように設けられた圧縮ゴム層と、上記圧縮ゴム層を覆うように設けられた
樹脂製のフィルム層とを備えた伝動ベルトであって、上記フィルム層は、発泡構造を有し、内部に
短繊維、不織布又は編み物からなる繊維成分を含有していることを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、圧縮ゴム層を覆うように伝動面に設けられたフィルム層が発泡構造を有しているので、フィルム層自体の剛性が低下することにより、フィルム層におけるクラックの発生が抑制される。また、フィルム層の内部に繊維成分が含有されているので、フィルム層の表面が摩耗し始めても、その表面に摩耗の抑制に有効な繊維成分が継続的に存在し易くなることにより、フィルム層の摩耗が抑制される。したがって、伝動面にフィルム層が設けられた伝動ベルトにおいて、耐摩耗性と耐クラック性とを両立させることが可能になる。
【0012】
また、伝動面にフィルム層が設けられているので、ベルト走行時において、異音の発生が抑制される。
【0013】
また、伝動面に設けられたフィルム層が発泡構造を有しているので、発泡構造を構成するフィルム層の気泡内に水分を保持することにより、例えば、プーリ表面の水被膜が除去され易くなり、注水下での伝動能力が向上し、ベルト走行時のスリップが抑制されると共に、スリップが発生しても、スリップ時の異音の発生が抑制される。
【0014】
上記繊維成分は、上記フィルム層の内部に分散されていてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、繊維成分がフィルム層の内部に分散されているので、フィルム層の表面が摩耗し始めても、その表面に繊維成分が常に存在することになり、フィルム層の摩耗が抑制される。
【0016】
上記フィルム層は、上記圧縮ゴム層側に設けられた第1フィルム層と、該第1フィルム層に積層するように設けられた第2フィルム層とを有し、上記繊維成分は、上記第1フィルム層及び第2フィルム層の間に設けられ、上記第1フィルム層及び第2フィルム層の少なくとも一方は、発泡構造を有していてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、繊維成分が第1フィルム層及び第2フィルム層の間に設けられているので、伝動面側の第2フィルム層が摩耗により除去されても、その第2フィルム層が除去された表面、すなわち、第1フィルム層の表面に繊維成分が露出するので、圧縮ゴム層側の第1フィルム層の摩耗が抑制される。また、第1フィルム層及び第2フィルム層の少なくとも一方が発泡構造を有しているので、第1フィルム層及び第2フィルム層の少なくとも一方自体の剛性が低下することにより、第1フィルム層及び第2フィルム層からなるフィルム層におけるクラックの発生が抑制される。
【0018】
上記フィルム層は、上記圧縮ゴム層側に設けられ、上記繊維成分が内部に含有された第1フィルム層と、該第1フィルム層に積層するように設けられた第2フィルム層とを有し、上記第1フィルム層及び第2フィルム層の少なくとも一方は、発泡構造を有していてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、圧縮ゴム層側に設けられた第1フィルム層が内部に繊維成分を含有しているので、伝動面側の第2フィルム層が摩耗により除去されても、その第2フィルム層が除去された表面、すなわち、第1フィルム層の表面に繊維成分が露出するので、圧縮ゴム層側の第1フィルム層の摩耗が抑制される。また、第1フィルム層及び第2フィルム層の少なくとも一方が発泡構造を有しているので、第1フィルム層及び第2フィルム層の少なくとも一方自体の剛性が低下することにより、第1フィルム層及び第2フィルム層からなるフィルム層におけるクラックの発生が抑制される。
【0020】
上記圧縮ゴム層は、各々、上記フィルム層に覆われ、ベルト長さ方向に沿って互いに平行に延びるように設けられた複数のリブを備えていてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、圧縮ゴム層が、各々、フィルム層に覆われ、ベルト長さ方向に沿って互いに平行に延びる複数のリブを備えているので、例えば、Vリブドベルトが具体的に構成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フィルム層が、発泡構造を有し、内部に繊維成分を含有しているので、伝動面にフィルム層が設けられた伝動ベルトにおいて、耐摩耗性と耐クラック性とを両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0025】
《発明の実施形態1》
図1〜
図5は、本発明に係るVリブドベルトの実施形態1を示している。具体的に、
図1は、本実施形態のVリブドベルト10aの斜視図である。また、
図2は、Vリブドベルト10aの要部断面図である。また、
図3は、Vリブドベルト10aを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置50のプーリレイアウトを示す図である。また、
図4及び
図5は、Vリブドベルト10aの製造方法をそれぞれ示す説明図である。
【0026】
Vリブドベルト10aは、
図1及び
図2に示すように、心線1が埋設された接着ゴム層2と、接着ゴム層2のベルト内面側に積層するように設けられた圧縮ゴム層3と、圧縮ゴム層3を覆うように設けられたフィルム層4と、接着ゴム層2のベルト外面側に積層するように設けられた背面ゴム層7とを備えている。ここで、Vリブドベルト10aは、例えば、ベルト周長700mm〜3000mm程度、ベルト幅10mm〜36mm程度、及びベルト厚さ4.0mm〜5.0mm程度に形成されている。
【0027】
心線1は、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリケトン繊維などの撚り糸により、外径0.7mm〜1.1mm程度に形成されている。また、心線1は、ベルト長さ方向に伸びると共に、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように設けられている。
【0028】
接着ゴム層2は、
図1及び
図2に示すように、原料ゴム成分に種々の配合剤が配合されたゴム組成物により、断面横長矩形の帯状に形成されている。ここで、接着ゴム層2を構成する構成するゴム組成物の原料ゴム成分としては、例えば、エチレン・プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリルニトリルゴム(H−NBR)などが挙げられる。そして、耐熱性及び耐寒性の点で優れた性質を示す観点から、接着ゴム層2を構成するゴム組成物の原料ゴム成分としては、エチレン−α−オレフィンエラストマーが好ましい。また、配合剤としては、例えば、架橋剤(例えば、硫黄、有機過酸化物など)、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、カーボンブラックなどの補強材、充填材などが挙げられる。なお、接着ゴム層2を構成するゴム組成物は、原料ゴム成分に配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたものである。
【0029】
圧縮ゴム層3は、例えば、原料ゴム成分に種々の配合剤が配合されたゴム組成物により、
図1に示すように、ベルト内面側の表面に、各々、断面V字形の複数の溝条が互いに平行に延びるように配列された帯状に形成されている。ここで、圧縮ゴム層3は、
図1に示すように、各溝条の間にそれぞれ設けられ、互いに平行に延びる複数のVリブ8を備えている。また、圧縮ゴム層3を構成するゴム組成物の原料ゴム成分としては、例えば、エチレン・プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリルニトリルゴム(H−NBR)などが挙げられる。そして、耐熱性及び耐寒性の点で優れた性質を示す観点から、圧縮ゴム層3を構成する構成するゴム組成物の原料ゴム成分としては、エチレン−α−オレフィンエラストマーが好ましい。また、配合剤としては、例えば、架橋剤(例えば、硫黄、有機過酸化物など)、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、カーボンブラックなどの補強材、充填材、短繊維などが挙げられる。さらに、短繊維は、例えば、ナイロン短繊維、ビニロン短繊維、アラミド短繊維、ポリエステル短繊維、綿短繊維などにより、長さ0.2mm〜5.0mm程度で繊維径10μm〜50μmで形成されている。なお、圧縮ゴム層3を構成するゴム組成物は、原料ゴム成分に配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたものである。
【0030】
フィルム層4は、
図2に示すように、発泡構造、すなわち、複数の気泡6を有し、内部に繊維成分5が分散状態で含有している。ここで、フィルム層4は、例えば、ポリエチレン樹脂やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂などにより、厚さ100μm程度に形成されている。また、フィルム層4の断面において、気泡6の占有率は、10%〜50%程度である。また、繊維成分5は、例えば、ナイロン短繊維、ビニロン短繊維、アラミド短繊維、ポリエステル短繊維、綿短繊維などにより、長さ0.2mm〜5.0mm程度で繊維径10μm〜50μmで形成されている。また、フィルム層4には、例えば、ポリエチレン樹脂やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂などの粒状の粉体が含まれていてもよい。なお、フィルム層4は、例えば、アゾジカルボンアミドなどの発泡剤により、シート状のフィルム材料を発泡させたものである。
【0031】
背面ゴム層7は、
図1及び
図2に示すように、原料ゴム成分に種々の配合剤が配合されたゴム組成物により、断面横長矩形の帯状に形成されている。ここで、背面ゴム層7を構成する構成するゴム組成物の原料ゴム成分としては、例えば、エチレン・プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリルニトリルゴム(H−NBR)などが挙げられる。そして、耐熱性及び耐寒性の点で優れた性質を示す観点から、背面ゴム層7を構成するゴム組成物の原料ゴム成分としては、エチレン−α−オレフィンエラストマーが好ましい。なお、背面ゴム層7を構成するゴム組成物は、原料ゴム成分に配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたものである。
【0032】
ここで、接着ゴム層2、圧縮ゴム層3及び背面ゴム層7は、互いに異なるゴム組成物で形成されていても、全く同じゴム組成物で形成されていてもよい。
【0033】
上記構成のVリブドベルト10aは、
図3に示すように、自動車の補機駆動ベルト伝動装置50に用いられるものである。ここで、補機駆動ベルト伝動装置50は、
図3に示すように、図中最上位置のパワーステアリングプーリ51と、パワーステアリングプーリ51の図中下側に配置されたジェネレータプーリ52と、パワーステアリングプーリ51の図中左下側に配置された平プーリのテンショナプーリ53と、テンショナプーリ53の図中下側に配置された平プーリのウォーターポンププーリ54と、テンショナプーリ53の図中左下側に配置されたクランクシャフトプーリ55と、クランクシャフトプーリ55の図中右下側に配置されたエアコンプーリ56とを備えている。そして、補機駆動ベルト伝動装置50では、平プーリであるテンショナプーリ53及びウォーターポンププーリ54以外は、全てリブプーリである。また、Vリブドベルト10aは、Vリブ8側が接触するようにパワーステアリングプーリ51に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面が接触するようにテンショナプーリ53に巻き掛けられた後、Vリブ8側が接触するようにクランクシャフトプーリ55及びエアコンプーリ56に順に巻き掛けられ、さらに、ベルト背面が接触するようにウォーターポンププーリ54に巻き掛けられ、そして、Vリブ8側が接触するようにジェネレータプーリ52に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ51に戻るように設けられている。
【0034】
次に、本実施形態のVリブドベルト10aの製造方法について
図4及び
図5を用いて説明する。なお、本実施形態のVリブドベルト10aの製造方法は、準備工程及び成形工程を備える。
【0035】
ここで、Vリブドベルト10aの製造に用いるベルト成形型20について説明する。
【0036】
ベルト成形型20は、
図4及び
図5に示すように、円筒状に設けられた内型(ゴムスリーブ)20aと、内型20aに同心状に配置する円筒状の外型20bとを備えている。ここで、内型20aは、例えば、ゴムなどの可撓性材料により形成されている。また、内型20aは、例えば、内部に高温の水蒸気を供給することなどにより、半径方向に膨らんで、外型20bに圧接するように構成されている。また、内型20aは、例えば、外径が700mm〜800mm程度、厚さが8mm〜20mm程度、及び高さが500mm〜1000mm程度である。さらに、外型20bは、例えば、金属などの剛性材料により形成されている。また、外型20bの内周面には、
図4及び
図5に示すように、Vリブ8、言い換えれば、V字状の溝条を形成するための複数の突状部が設けられている。
【0037】
<準備工程>
接着ゴム層2となる原料ゴム及び配合剤などをニーダーなどの混練機にて混練することによって塊状の未架橋ゴム組成物を形成した後に、その未架橋ゴム組成物を、例えば、カレンダーロールを用いて、厚さ0.4mm〜0.8mm程度のシート状に加工することにより、ゴムシート2a及び2b(
図4参照)を作製する。
【0038】
また、圧縮ゴム層3となる原料ゴム及び配合剤などをニーダーなどの混練機にて混練することによって塊状の未架橋ゴム組成物を形成した後に、その未架橋ゴム組成物を、例えば、カレンダーロールを用いて、厚さ0.6mm〜1.0.mm程度のシート状に加工することにより、ゴムシート3a(
図4参照)を作製する。
【0039】
また、背面ゴム層7となる原料ゴム及び配合剤などをニーダーなどの混練機にて混練することによって塊状の未架橋ゴム組成物を形成した後に、その未架橋ゴム組成物を、例えば、カレンダーロールを用いて、厚さ0.4mm〜0.8mm程度のシート状に加工することにより、ゴムシート7a(
図4参照)を作製する。
【0040】
また、フィルム層4となる原料樹脂、発泡剤(例えば、原料樹脂100質量部に対して0.1質量部〜5質量部程度)及び短繊維(例えば、原料樹脂100質量部に対して5質量部〜40質量部程度)などをニーダーなどの混練機にて混練することによって塊状の樹脂組成物を形成し、その樹脂組成物を、例えば、カレンダーロール(例えば、150℃程度)を用いて、厚さ50μm程度のシート状に加工した後に、発泡剤のガス化温度(例えば、190℃程度)以上の温度(例えば、195℃程度)で加熱することにより、厚さ100μm程度のフィルムシート4a(
図4参照)を作製する。
【0041】
<成形工程>
まず、離型剤を塗布した内型20aの外周面にゴムシート7a及びゴムシート2aを順に巻き付けた後に、ゴムシート2aの外周面に心線1となる撚り糸1aを螺旋状に巻き付ける。
【0042】
続いて、撚り糸1aが巻き付けられたゴムシート2aの外周面に、ゴムシート2b及びゴムシート3aを順に巻き付ける。
【0043】
そして、巻き付けられたゴムシート3aの外周面にフィルムシート4aを被せた後に、
図4に示すように、内型20aに対して同心状に外型20bを取り付ける。
【0044】
さらに、内型20aの内部に、例えば、高温の水蒸気を供給して、内型20aを膨張させることにより、内型20a及び外型20bの間でベルト材料を加熱(例えば、150℃〜180℃程度)及び加圧(例えば、0.5MPa〜1.0MPa程度)する。これにより、ゴム成分の架橋反応が進行すると共に、ゴム成分と撚り糸1a及びフィルムシート4aとの接着反応も進行し、円筒状のベルトスラブが作製される。
【0045】
最後に、作製されたベルトスラブをベルト成形型20から取り外した後に、ベルトスラブを所定幅に輪切りし、表裏を反転させる。
【0046】
以上のようにして、本実施形態のVリブドベルト10aを製造することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のVリブドベルト10aによれば、圧縮ゴム層3を覆うように伝動面に設けられたフィルム層4が発泡構造を有しているので、フィルム層自体の剛性が低下することにより、フィルム層4におけるクラックの発生を抑制することができる。また、フィルム層4の内部に繊維成分5が分散状態で含有されているので、フィルム層4の表面が摩耗し始めても、その表面に摩耗の抑制に有効な繊維成分5が常に存在することにより、フィルム層4の摩耗を抑制することができる。したがって、伝動面にフィルム層4が設けられたVリブドベルト10aにおいて、耐摩耗性と耐クラック性とを両立させることができる。
【0048】
また、本実施形態のVリブドベルト10aによれば、伝動面にフィルム層4が設けられているので、ベルト走行時において、異音の発生を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態のVリブドベルト10aによれば、伝動面に設けられたフィルム層4が発泡構造を有しているので、フィルム層4の気泡6内に水分を保持することにより、プーリ表面の水被膜が除去され易くなり、注水下での伝動能力が向上し、ベルト走行時のスリップが抑制することができると共に、スリップが発生しても、スリップ時の異音の発生を抑制することができる。
【0050】
《発明の実施形態2》
図6は、Vリブドベルト10bの要部断面図である。なお、以下の各実施形態において、
図1〜
図5と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0051】
上記実施形態1では、1層構造のフィルム層4を備えたVリブドベルト10aを例示したが、本実施形態では、2層構造のフィルム層4bを備えたVリブドベルト10bを例示する。
【0052】
Vリブドベルト10bは、
図6に示すように、心線1が埋設された接着ゴム層2と、接着ゴム層2のベルト内面側に積層するように設けられた圧縮ゴム層3と、圧縮ゴム層3を覆うように設けられたフィルム層4bと、接着ゴム層2のベルト外面側に積層するように設けられた背面ゴム層7とを備え、上記実施形態1のVリブドベルト10aと同様に、自動車の補機駆動ベルト伝動装置50に用いられるものである。ここで、Vリブドベルト10bは、例えば、ベルト周長700mm〜3000mm程度、ベルト幅10mm〜36mm程度、及びベルト厚さ4.0mm〜5.0mm程度に形成されている。
【0053】
フィルム層4bは、
図6に示すように、圧縮ゴム層3側に設けられた第1フィルム層4baと、第1フィルム層4baに積層するように設けられた第2フィルム層4bbとを備えている。そして、フィルム層4bでは、
図6に示すように、第1フィルム層4ba及び第2フィルム層4bbの間に繊維成分5が設けられている。
【0054】
第1フィルム層4ba及び第2フィルム層4bbは、
図6に示すように、発泡構造、すなわち、複数の気泡6を有している。なお、本実施形態では、第1フィルム層4ba及び第2フィルム層4bbが発泡構造を有している構成を例示したが、第1フィルム層4ba及び第2フィルム層4bの一方が発泡構造を有していてもよい。
【0055】
繊維成分5は、例えば、ナイロン短繊維、ビニロン短繊維、アラミド短繊維、ポリエステル短繊維、綿短繊維などにより、長さ0.2mm〜5.0mm程度で繊維径10μm〜50μmで形成されている。
【0056】
本実施形態のVリブドベルト10bは、上記実施形態1の準備工程において、例えば、まず、第1フィルム層4ba及び第2フィルム層4bbとなるポリエチレン樹脂やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂などの原料樹脂、並びに発泡剤などをニーダーなどの混練機にて混練することによって塊状の樹脂組成物を形成し、その樹脂組成物を、例えば、カレンダーロール(例えば、150℃程度)を用いて、厚さ50μm程度のシート状に加工し、続いて、そのシート状に加工された一対のシート体の間に繊維成分5を挟み込んだ状態でそれらの一対のシート体を接着剤を介して貼り合わせることにより、ラミネート加工し、さらに、ラミネート加工された一対のシート体を発泡剤のガス化温度以上の温度で加熱して、フィルム層4bとなるフィルムシートを作製することにより、製造することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態のVリブドベルト10bによれば、圧縮ゴム層3を覆うように伝動面に設けられたフィルム層4bが発泡構造を有しているので、フィルム層4b自体の剛性が低下することにより、フィルム層4bにおけるクラックの発生を抑制することができる。また、第1フィルム層4ba及び第2フィルム層4bbの間に繊維成分5が設けられているので、伝動面側の第2フィルム層4bが摩耗により除去されても、その第2フィルム層4bが除去された表面、すなわち、第1フィルム層4baの表面付近に繊維成分5が露出するので、圧縮ゴム層3側の第1フィルム層4baの摩耗を抑制することができる。したがって、伝動面にフィルム層4bが設けられたVリブドベルト10bにおいて、耐摩耗性と耐クラック性とを両立させることができる。
【0058】
また、本実施形態のVリブドベルト10bによれば、伝動面にフィルム層4bが設けられているので、ベルト走行時において、異音の発生を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態のVリブドベルト10bによれば、伝動面に設けられたフィルム層4bが発泡構造を有しているので、フィルム層4bの気泡6内に水分を保持することにより、プーリ表面の水被膜が除去され易くなり、注水下での伝動能力が向上し、ベルト走行時のスリップが抑制することができると共に、スリップが発生しても、スリップ時の異音の発生を抑制することができる。
【0060】
《発明の実施形態3》
図7は、Vリブドベルト10cの要部断面図である。
【0061】
上記実施形態2では、第1フィルム層4ba及び第2フィルム層4bbの間に繊維成分5が設けられた2層構造のフィルム層4bを備えたVリブドベルト10bを例示したが、本実施形態では、第1フィルム層4ca内に繊維成分5が含有された2層構造のフィルム層4cを備えたVリブドベルト10cを例示する。
【0062】
Vリブドベルト10cは、
図7に示すように、心線1が埋設された接着ゴム層2と、接着ゴム層2のベルト内面側に積層するように設けられた圧縮ゴム層3と、圧縮ゴム層3を覆うように設けられたフィルム層4cと、接着ゴム層2のベルト外面側に積層するように設けられた背面ゴム層7とを備え、上記実施形態1のVリブドベルト10aと同様に、自動車の補機駆動ベルト伝動装置50に用いられるものである。ここで、Vリブドベルト10cは、例えば、ベルト周長700mm〜3000mm程度、ベルト幅10mm〜36mm程度、及びベルト厚さ4.0mm〜5.0mm程度に形成されている。
【0063】
フィルム層4cは、
図7に示すように、圧縮ゴム層3側に設けられた第1フィルム層4caと、第1フィルム層4caに積層するように設けられた第2フィルム層4cbとを備えている。そして、第1フィルム層4caは、
図7に示すように、内部に繊維成分5が含有している。
【0064】
第1フィルム層4ca及び第2フィルム層4cbは、
図7に示すように、発泡構造、すなわち、複数の気泡6を有している。なお、本実施形態では、第1フィルム層4ca及び第2フィルム層4cbが発泡構造を有している構成を例示したが、第1フィルム層4ca及び第2フィルム層4cbの一方が発泡構造を有していてもよい。
【0065】
繊維成分5は、例えば、ナイロン短繊維、ビニロン短繊維、アラミド短繊維、ポリエステル短繊維、綿短繊維などからなる不織布、織物、編み物などにより形成されている。
【0066】
本実施形態のVリブドベルト10cは、上記実施形態1の準備工程において、例えば、まず、第2フィルム層4cbとなるポリエチレン樹脂やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂などの原料樹脂、並びに発泡剤などをニーダーなどの混練機にて混練することによって塊状の樹脂組成物を形成し、その樹脂組成物を、例えば、カレンダーロール(例えば、150℃程度)を用いて、厚さ50μm程度のシート状に加工し、続いて、そのシート状に加工されたシート体の表面に、ディピング処理、フリクション処理、トッピング処理などにより、繊維成分5、並びに第1フィルム層4caとなるポリエチレン樹脂やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂などの原料樹脂及び発泡剤を含む樹脂組成物を平坦に配置し、さらに、樹脂組成物が配置されたシート体を発泡剤のガス化温度以上の温度で加熱して、フィルム層4cとなるフィルムシートを作製することにより、製造することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態のVリブドベルト10cによれば、圧縮ゴム層3を覆うように伝動面に設けられたフィルム層4cが発泡構造を有しているので、フィルム層4c自体の剛性が低下することにより、フィルム層4cにおけるクラックの発生を抑制することができる。また、圧縮ゴム層3側に設けられた第1フィルム層4caが内部に繊維成分5を含有しているので、伝動面側の第2フィルム層4cbが摩耗により除去されても、その第2フィルム層4cbが除去された表面、すなわち、第1フィルム層4caの表面付近に繊維成分5が露出するので、圧縮ゴム層3側の第1フィルム層4caの摩耗を抑制することができる。したがって、伝動面にフィルム層4cが設けられたVリブドベルト10cにおいて、耐摩耗性と耐クラック性とを両立させることができる。
【0068】
また、本実施形態のVリブドベルト10cによれば、伝動面にフィルム層4cが設けられているので、ベルト走行時において、異音の発生を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態のVリブドベルト10cによれば、伝動面に設けられたフィルム層4cが発泡構造を有しているので、フィルム層4cの気泡6内に水分を保持することにより、プーリ表面の水被膜が除去され易くなり、注水下での伝動能力が向上し、ベルト走行時のスリップが抑制することができると共に、スリップが発生しても、スリップ時の異音の発生を抑制することができる。
【0070】
なお、上記各実施形態では、伝動ベルトとして、Vリブドベルトを例示したが、本発明は、Vベルトなどの他の伝動ベルトにも適用することができる。