【実施例】
【0014】
図1〜
図8に、実施例とその変形とを示す。
図1は針床上のキャリアレールを模式的に示し、2は前ベッド、4は後ベッドで、その間にギャップ6が存在する。ベッド2,4の上部に複数本のキャリアレール8〜11が存在し、キャリアレール8〜11に沿ってキャリア12が図示しないキャリッジに連行されて摺動する。図では成型編みを行っているものとし、14は前身頃などの編幅、15は左袖などの編幅、16は右袖などの編幅で、1枚のガーメントは複数のパーツから成り、パーツは編成の途中で編幅が変化することがある。ガーメントは編幅が一定でも良く、また無縫製編成のように1ガーメント=1パーツでも良い。以下この明細書では、水平面内でベッド2,4の長手方向に平行な方向を左右方向、ベッド2,4の長手方向と直交する方向を前後方向という。
【0015】
20は編成データ生成装置を示し、21はユーザインターフェースで、マウス,トラックボール,デジタイザ,キーボードなどの入力手段と、カラーモニタとから成る。22はネットワークインターフェースで、ネットワークとの間でデータ及びプログラムのやり取りをする。23はディスクドライブで、図示しないディスクとの間でデータとプログラムなどのやり取りをする。24はメモリーで、種々のデータ、特に編成データを記憶する。25はプログラムメモリーで、編成データ生成装置20のプログラムを記憶している。
【0016】
26は変換部で、ユーザインターフェース21、ネットワークインターフェース22、あるいはディスクドライブ23などから入力された、編地のデザインデータを編成データに変換する。この変換では、キャリアの停止位置のデータを生成しないか、または適宜のデフォルト値を割り当てる。27は使用回数抽出部で、編成データで使用する各キャリアに対し、その使用回数とコース毎の移動範囲とを抽出する。28はブロック抽出部で、
図6のアルゴリズムを実行するためのものであり、どのキャリアを使用するかに基づいて、1個のパーツを複数のブロックに分割する。
図3のアルゴリズムを実行する場合、ブロック抽出部28は不要である。ブロックへの分割はパーツのウェール方向に沿って行い、ウェール方向に沿ったブロックの長さに最小値を設けて、最小値未満の長さのブロックは上下いずれかのブロックに合体する。
【0017】
29はリセット補正値割当部で、キャリアに対しリセット補正値を割り当てる。リセット補正値は1パーツの編成の間一定としても良く、あるいは1パーツの編成の途中で変化させるようにしても良い。干渉チェック部30はキャリア間の干渉をチェックし、ここで干渉とは、横編機の前後方向に沿って重なった位置で複数のキャリアが停止することである。キャリアが干渉する状態にある場合、即ち複数のキャリアが前後方向に重なって停止している状態で、図示しないキャリッジがキャリアと交差するように移動すると、キャリッジ中のステッチプレッサなどがキャリアと干渉して損傷する恐れがある。
【0018】
リセット補正値割当部29は、最初各キャリアに対し例えばリセット補正値0を割り当てる。そして干渉チェック部30がキャリア間の干渉を検出すると、干渉を回避するように、例えば使用回数が少ないキャリアのリセット補正値を増加させることにより、干渉を解消する。なお編成データ生成装置20は、横編機内に設けても良く、あるいはガーメントなどのデザインデータを作成し編成データに変換するデザイン装置内に設けてもよい。
【0019】
図3〜
図5に、キャリアの停止位置の決定方法を示す。パーツのデザインが決定され、これを編成データに変換すると、編幅と編目の種類及びコース数、どのキャリアをどのコースでどの範囲で移動させるかなどのデータが定まる。そこでステップ1で、1パーツ内で、キャリアを使用するコースとコース毎の移動範囲とを、キャリア毎に求める。この処理は少なくとも実際に使用するキャリアに対して実行する。1パーツ内でのキャリアの使用回数をキャリア毎に求めると共に、各キャリアの停止位置を最小値に設定する。言い換えると各キャリアに対しリセット補正値を0に設定する(ステップ2)。使用しないキャリアは例えば針床の端部などに退避させておく。
【0020】
図4にリセット補正値の意味を示し、キャリアは編幅の左右を往復し、キャリアの停止位置は、編幅の端部から針0本〜3本程度の最小値分の間隔を置いた位置である。最小値はインターシャ編成の場合例えば0で,これ以外の編成の場合針2〜3本分などである。編幅に最小値を加えたものが、編成データ中のキャリアの移動範囲である。リセット補正値は編幅から最小値分外側にシフトした位置で0で、これがリセット補正値の最小値であり、リセット補正値は編幅の外側に向かって増加する。またリセット補正値の単位は、例えば給糸口1個分の幅である。リセット補正値のリセットはキャリッジがキャリアの連行を中止することで、補正値は最小値からのシフト分である。そしてリセット補正値が最小のキャリアは、編幅から最小値だけ外側にシフトした位置で停止し、リセット補正値が増加するにつれて編幅から外側へ離れた位置に停止する。
【0021】
例えば使用回数の大きなキャリアから小さなキャリアの順に(ステップ3,7)、ステップ4〜ステップ7を実行する。ステップ4で各コース毎に停止時のキャリアの位置をチェックし、干渉するキャリアの有無を検出する。干渉するキャリアが存在する場合、停止位置を外側にシフトさせ、言い換えるとリセット補正値を増加させて、干渉を解消する(ステップ5)。干渉するキャリアの停止位置を変更すると、他のキャリアとの間で連鎖的に干渉が発生することがあるので、干渉が解消するまでキャリアの停止位置を変更する。そしてステップ4,5を全てのコースに対し実行すると、例えば次に使用回数の大きなキャリアに対して同様の処理を行い、使用する全てのキャリアに対して処理が終わると、
図3のアルゴリズムを終了する。
【0022】
図5は、パーツ32を編成する際の、キャリアa,b,cに対するリセット補正値(1点鎖線)と実際の停止位置(2点鎖線)とを示し、パーツ32中のa,b,cの記号は使用するキャリアを示している。またこの明細書で、コース方向とはキャリッジの往復方向に平行な方向で、ウェール方向とはこれに直角な方向である。パーツ32でのキャリアの使用回数は c>a>b の順で、キャリアcに最小のリセット補正値を、キャリアaに次のリセット補正値を、キャリアbに最大のリセット補正値を割り当てる。パーツ32の編幅に増減がなければ、リセット補正値を以上のように定めると、キャリア間の干渉は生じない。
図5の1点鎖線でリセット補正値に従ったキャリアの停止位置を示す。
【0023】
パーツ32の編幅に増減があると、リセット補正値が異なってもキャリアの停止位置が等しくなることがある。例えばキャリアcを使用するブロックで右側へ編幅が増加し、このブロックではキャリアa,bは使用せずに停止したままなので、キャリアcとキャリアa,bとが干渉する。そこで
図3のステップ5によりキャリアa,bの停止位置を
図5の2点鎖線のように自動的に変更するか、マニュアルでキャリアa,bの停止位置を変更する。キャリアaを使用する最後のブロックでは編幅が徐々に減少し、キャリアaがキャリアcと干渉するので、キャリアcの停止位置を例えば
図5の2点鎖線のように変更する。なお
図5では、1点鎖線の軌跡から2点鎖線の軌跡へ、1回のキャリッジの移動でキャリアの停止位置をシフトさせたが、干渉が生じる各コース毎にキャリアの停止位置を少しずつシフトさせても良い。またキャリアの停止位置のシフトは、干渉が生じるコースまでに行えばよい。なおリセット補正値をパーツの途中で変更可能な変数と見なすと、
図5の右側で2点鎖線の軌跡を取るように、リセット補正値を定めても良い。
【0024】
以上のようにすると、
・ キャリアa,b,cの停止位置を自動的に生成でき、
・ キャリアを連行する距離を短くすることにより、キャリッジの移動距離を短縮して生産性を向上でき、
・ キャリア間の干渉を解消できる。
【0025】
図6〜
図8に変形例を示し、特に指摘する点以外は
図1〜
図5の実施例と同様である。最初に
図3のステップ1を実行し、次いでステップ11で、どのキャリアを使用するかに基づいて、パーツをウェール方向に沿って複数のブロックに分割する。この時、ブロックのウェール方向に沿った長さに最小値を定めること等により、コース数が所定値以下の小さなブロックが生じないようにすることが好ましい。またステップ11で各キャリアの使用回数をブロック毎に求めておく。以降の処理はブロック単位で行うものとし、ステップ12で各キャリアの停止位置を最小値に設定する。そして例えば
図3のステップ4〜7と同様にして、ブロック内での干渉を解消する(ステップ13)。
【0026】
図7は、パーツ33へのリセット補正値を1点鎖線で示し、図中のXはリセット補正値を入れ替えることを示している。パーツ33に対し、最下部のキャリアaを使用する小さなブロックと次のキャリアa,bを使用する小さなブロックとを合体し、全体を例えば4ブロックとする。そしてブロック単位でリセット補正値を入れ替える。最初のブロックではキャリアaを主として用い他にキャリアbを用いるので、リセット補正値はキャリアaが最小値の0で、キャリアbでは1,キャリアcでは2とする。次のキャリアbを使用するブロックでは、キャリアaを使用しないため、例えばキャリアa,b間でリセット補正値を入れ替える。同様に、次のキャリアcを使用するブロックでは、キャリアbを使用しないため、キャリアb,c間でリセット補正値を入れ替え、最後のキャリアaを使用するブロックでは、キャリアcを使用しないため、キャリアc,a間でリセット補正値を入れ替える。またキャリアbを使用するブロックと、キャリアcを使用するブロックでは、使用しないために停止位置が一定のキャリアa等と、編幅の増加に伴い右側へ停止位置がシフトして行くキャリアb,c等の間で干渉が生じる。そこで
図5と同様にして、干渉するキャリアの停止位置を編幅から見て遠い側へシフトさせ、干渉を回避する。
【0027】
図8は、変形例でのインターシャ編成におけるリセット補正値を示し、インータシャ用のキャリアは鉛直方向真下へ糸を垂らすように、編幅の端部の直上及び糸を変更する位置の直上で停止できる。この場合、1個のキャリアで編成するエリアを1個の編幅と見なし、パーツ34はコース方向に2個の編幅を持つものとして扱い、最小値は0なので、リセット補正値が0での停止位置はパーツ34の両端部とエリアの境界である。パーツ34を上下2個のブロックに分割し、最初のブロックではキャリアa,bを用いるので、キャリアa,bに小さなリセット補正値を割り当て、次のブロックではキャリアc,dを用いるので、キャリアc,dに小さなリセット補正値を割り当てる。なおキャリアa,bを用いるブロックがキャリアc,dを用いるブロックよりも大きいことに着目し、下側のブロックに対するリセット補正値を上側のブロックに対しても有効とすると、
図1〜
図5の実施例と同じになる。
【0028】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) キャリアの停止位置のデータを自動的に生成できる。
(2) キャリア間の干渉を解消できる。
(3) キャリアの使用頻度に応じてリセット補正値を決定することにより、キャリッジの移動距離を短縮できる。従って編成に要する時間を短縮できる。