【実施例】
【0067】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
以下の実施例および比較例において、破断強度および保形性は、次のようにして測定あるいは評価した。
【0069】
<破断強度測定>
破断強度(単位:×10
4N/m
2)の測定は、山電製卓上型物性測定器TPUを用い、以下の形状とした測定試料について、平成6年2月23日付けの厚生労働省(旧厚生省)の「高齢者用食品の表示許可の取扱いについて」と題された「各都道府県・各政令市・各特別衛生主管部(局)長あて厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知」に記載の「高齢者用食品の試験方法」に準拠して下記条件にて測定した。なお、プランジャーとしては、特に記載のない限りは厚労省基準通り直径20mmのものを、破断強度が高くこの条件の測定が困難なサンプル(マッシュルームの測定の一部)については直径3mmのものをそれぞれ用いて測定を行った。測定値は各3回測定した平均値を採用した。
1)試料サイズ
・大根:厚さ15mm
・りんご:厚さ15mm
・セロリ:
A) 断面から縦方向に測定
B) 表面から測定
・マッシュルーム:縦方向に2分割し、表面から中心部の軸部分を外して測定
2)測定ポイント:なるべく中心部
3)プランジャーサイズ:直径20mmまたは3mm
4)破断スピード:10mm/sec
5)クリアランス:凝集率70%
<保形性>
保形性は、目視により次の基準で評価した。
【0070】
5:生と同等 離水殆ど無し
4:少し角が取れて、変形が生じ始めている程度。ほぼ生と同等。離水殆ど無し
3:角が取れるなどして変形が生じ、素材が柔らかく自重でへたってみえるものの、全体としての形状は維持している。一般的な煮物やブランチした状態と同等。離水が若干生じ始めている状態。
【0071】
2:明らかな変形が生じ、自重に耐えられず元の体積の半分以上へたっている。明らかに離水が発生している状態。
【0072】
1:原型を留めていないほど自重で潰れたりしている。著しい離水が生じている状態。
【0073】
[実施例1]
生の大根(直径約7cm)を、3cm厚さに輪切りし、皮をむいたものを原料食材として用い、これを15×15cmのステンレス製バスケットに並べ、バスケット上部にポリエチレンネットをかぶせ、ネットをステンレス製針金で固定して、これを16×16cmのステンレス製容器(内タンク)内にいれた。このステンレス製容器を真空加圧含浸装置((株)エフコム製)内に設置し、真空排気を行い、装置内を6000Paまで減圧し、そのまま3分間排気を継続した後、原料食材が完全に浸漬されるまで、45℃に加温した酵素液a(約2リットル)をタンク内に導入した。ここで、酵素液aとしては、アマノエンザイム製のセルラーゼA「アマノ3」0.25重量%と、アマノエンザイム製のヘミセルラーゼ「アマノ90」0.25重量%とを含有する酵素液(酵素製剤濃度0.5重量%)を、酵素および水を攪拌混合することにより調製して用いた。
【0074】
なお、酵素液の調製に用いたアマノエンザイム製のセルラーゼA「アマノ3」は、酵素製剤中の酵素含有率が28.0%、力価30,000(u/g)の酵素製剤であり、アマノエンザイム製のヘミセルラーゼ「アマノ90」は酵素製剤中の酵素含有率が60.0%、力価90,000(u/g)の酵素製剤であって、本実施例における酵素濃度は酵素製剤濃度である。
【0075】
酵素液aの導入後、真空加圧含浸装置内をエアパージして大気圧(0.1MPa)まで昇圧した。このとき装置内の酵素液温度は約40℃であった。続いて圧搾空気を導入してタンク内を加圧して、0.3MPaで30分間保持した(加圧時間:30分間)。このとき装置内の酵素液温度は約39℃に保たれていた。次いでエアパージして含浸処理を完了し、装置より酵素液が含浸された食材を取り出した。
【0076】
酵素液aを含浸した後の重量は、含浸前重量と比較して16.2%増加し、含浸前重量の116.2重量%となった。
【0077】
このようにして酵素液が含浸された食材について、含浸直後、および、含浸終了後に45℃にて90分、180分および360分保持して酵素反応させた後に、破断強度および保形性を評価した。結果を表1に示す。なお、含浸直後の食材では、含浸工程において加圧状態を30分間保持する間に、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。
【0078】
また、実施例1において、加圧時間を1分、3分とした以外は上記と同様にして酵素液を含浸した場合の重量変化率を
図1のグラフに、酵素の含有率(含浸後の食材中における酵素(乾燥重量)の割合)を
図2のグラフに、それぞれ加圧時間30分の場合とともに示す。
【0079】
[実施例2〜4]
実施例1において、酵素液aに代えて、酵素液b(実施例2)、酵素液c(実施例3)または酵素液d(実施例4)を用いたことの他は、実施例1と同様にして原料食材であるカット済み大根に各酵素液を含浸した。
【0080】
ここで、酵素液bとしては、アマノエンザイム製のセルラーゼA「アマノ3」0.5重量%と、アマノエンザイム製のヘミセルラーゼ「アマノ90」0.5重量%とを含有する酵素液(酵素製剤濃度1.0重量%)を、
酵素液cとしては、アマノエンザイム製のセルラーゼA「アマノ3」0.25重量%、アマノエンザイム製のヘミセルラーゼ「アマノ90」0.25重量%、および濃縮調味料(テンヨのだしつゆ「ビミサン」、(株)テンヨ武田製)20重量%を含有する酵素液(酵素製剤濃度0.5重量%)を、
酵素液dとしては、アマノエンザイム製のセルラーゼA「アマノ3」0.5重量%、アマノエンザイム製のヘミセルラーゼ「アマノ90」0.5重量%、および濃縮調味料(テンヨのだしつゆ「ビミサン」、(株)テンヨ武田製)20重量%を含有する酵素液(酵素製剤濃度1.0重量%)をそれぞれ用いた。これらの酵素液の調製は、酵素、水および必要に応じて調味成分を攪拌混合することにより行った。
【0081】
このようにして酵素液が含浸された各食材について、含浸直後、および、含浸終了後に45℃にて90分、180分および360分保持して酵素反応させた後に、破断強度および保形性を評価した。結果を表1に示す。
【0082】
また、実施例2〜4において、加圧時間を1分、3分とした以外は上記と同様にして酵素液を含浸した場合の重量変化率を
図1のグラフに、酵素の含有率(含浸後の食材中における酵素(乾燥重量)の割合)を
図2のグラフに、それぞれ加圧時間30分の場合とともに示す。
【0083】
これらの結果より、酵素液aを用いた実施例1と、酵素液bを用いた実施例2では、加圧時間を長くすると、含浸による重量変化率が高くなる傾向が確認された。一方、酵素液cを用いた実施例3と、酵素液dを用いた実施例4とでは、含浸による重量変化率は酵素液a、bを用いた実施例1、2の場合よりも明らかに低く、また加圧時間30分間では重量変化率がマイナスに転じた。これは、酵素液c、dには濃縮調味料(テンヨのだしつゆ「ビミサン」、(株)テンヨ武田製)が含まれ、その浸透圧が、実験を行った45℃にてc、d共に約2,000Pa程度あるものと推量され、よって含浸処理により満遍なく食品に染み渡った調味成分を含む酵素液の浸透圧の作用で食材中の水分が食材外部へ置換流出し、酵素液が導入された量以上に流出した水分量が多かったことが原因と考えられる。
【0084】
【表1】
【0085】
[比較例1]
実施例1で用いたのと同様の原料食材(カット済み大根)について、95℃の湯中で13分間ブランチング処理し、得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。ここで、ブランチング処理とは〔1〕15×15cmのステンレス製バスケットに並べる 〔2〕バスケット上部にポリエチレンネットをかぶせ、ネットをステンレス製針金で固定する 〔3〕16×16cmのステンレス製容器に2Lの水を入れて95℃にしたところに投入する処理であり、以下の実施例および比較例においても同様である。結果を表2に示す。
【0086】
[比較例2]
実施例1で用いたのと同様の原料食材(カット済み大根)について、95℃の湯中で13分間ブランチング処理し、次いでこれをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、これを水道水(18℃)流水下にて60分間で解凍し、処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表2に示す。
【0087】
[比較例3]
実施例1で用いたのと同様の原料食材(カット済み大根)について、95℃の調味液(テンヨのだしつゆ「ビミサン」((株)テンヨ武田製)20重量%水溶液)中で13分間ブランチング処理し、得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表2に示す。
【0088】
[比較例4]
実施例1で用いたのと同様の原料食材(カット済み大根)について、95℃の調味液(テンヨのだしつゆ「ビミサン」((株)テンヨ武田製)20重量%水溶液)中で13分間ブランチング処理し、次いでこれをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、これを水道水(18℃)流水下にて60分間で解凍し、処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表2に示す。
【0089】
[比較例5]
実施例1で用いたのと同様の原料食材(カット済み大根)について、95℃の湯中で13分間ブランチング処理し、次いでこれをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、これを水道水(18℃)流水下にて60分間で解凍し、さらに45℃に加温して60分間保持し、処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
大根を原料とした実施例1〜4の結果より、これらの実施例すべてにおいて、酵素反応時間を延ばすほど破断強度が低下し、食材が軟化されたことが確認された。また、酵素濃度が高い方が、破断強度が低く、より軟化された食材が得られることが確認された。
【0092】
酵素濃度および含浸操作が同じ場合には、調味成分(塩分、糖分等)を含む酵素液を用いたほうが、含浸後の重量が減少し、破断強度が低く、より軟化された食材が得られることが確認された。これは浸透圧により含浸が行われると同時に食材自体の水分が外に出て、内部の酵素濃度が高めになったためではないかと考えられる。
【0093】
実施例1〜4で得られた軟化大根は、実施例1で含浸直後のもの(酵素濃度が低く、調味成分を含まない酵素液を用いて得られ、酵素反応時間が短かったもの)以外のいずれもが、酵素含浸処理を行わずにブランチを行ったもの(比較例1)および、ブランチング処理後冷凍解凍したもの(比較例2)よりも破断強度が低く、高度に軟化されていた。保形性は酵素濃度が高いほど、また調味液未添加よりも添加したほうが、また酵素反応時間が長くなるほど損なわれることが判ったが、酵素濃度が高く調味成分を含む酵素液dを用いた実施例4中の酵素反応時間が180分以上と長いもの以外は、外観として損傷のない「評価3」以上だった。
【0094】
以上より、本発明(実施例1〜4)では、内側から均一に酵素反応させることにより、ブランチングのみを行った大根(比較例1)と同等の保形性を維持した状態で、所望の軟化度合を達成でき、含浸する酵素液と、含浸時およびその後の酵素反応の制御によって、軟化度合を適宜調節できることがわかった。
【0095】
[実施例5]
実施例1と同様にして、カット済み大根に前記酵素液aを含浸し、酵素反応をそれぞれ0分(含浸直後。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間に、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。)、90分、180分、360分行った。次いでそれぞれ95℃以上の水に13分間浸漬することにより加熱調理して酵素失活を行い、取り出して常温まで放冷して処理食材を得た。得られた処理食材について実施例1と同様にして破断強度および保形性を評価した。結果を表3に示す。
【0096】
[実施例6〜8]
酵素液aに代えて、前記酵素液b(実施例6)、前記酵素液c(実施例7)または前記酵素液d(実施例8)を用いたことの他は、実施例5と同様にして酵素含浸、酵素反応、酵素失活、および放冷を行って処理食材を製造し、それぞれについて破断強度および保形性を評価した。結果を表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
実施例5〜8の結果より、酵素液含浸、酵素反応、および加熱調理による酵素失活によって、ブランチングのみを行った大根と同等の保形性を保持した状態で、食材の内側から均一に酵素反応させることで食材を軟化並びにその度合いを調節できることがわかると同時に、加熱調理による酵素失活工程によっても著しく保形性を損なうことがなく、安定した性状の軟化食品を提供できることがわかった。
【0099】
[実施例9]
実施例5と同様にして、カット済み大根に前記酵素液aを含浸し、酵素反応をそれぞれ0分(含浸直後。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間に、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。)、90分、180分、360分行った後、それぞれ加熱調理による酵素失活を行った。次いでこれをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、これを水道水(18℃)流水下にて60分間で解凍し、それぞれ実施例1と同様にして破断強度および保形性を評価した。結果を表4に示す。
【0100】
[実施例10〜12]
酵素液aに代えて、前記酵素液b(実施例10)、前記酵素液c(実施例11)または前記酵素液d(実施例12)を用いたことの他は、実施例9と同様にして酵素含浸、酵素反応、酵素失活、および凍結・解凍を行い、それぞれについて破断強度および保形性を評価した。結果を表4に示す。
【0101】
【表4】
【0102】
実施例9〜12の結果より、酵素液含浸、酵素反応、加熱調理による酵素失活、および冷凍・解凍によって、食材内部で均一に酵素反応軟化した食材を冷凍解凍工程で更に軟化させつつ、形状保持並びにその度合いを調節できることがわかった。
【0103】
[実施例13、14]
実施例1と同様にして、カット済み大根に前記酵素液a(実施例13)または前記酵素液b(実施例14)を含浸し、含浸完了直後にこれをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、ナイロンポリ袋ごと試料を水道水(18℃)流水下にて60分間で解凍した。解凍完了後、ナイロンポリ袋ごと試料を45℃湯浸加温して保持する酵素反応を、それぞれ0分(解凍直後)、30分、60分、90分および120分行い、実施例1と同様にして破断強度および保形性を評価した。結果を表5に示す。
【0104】
【表5】
【0105】
酵素液含浸、冷凍・解凍、およびその後の酵素反応を行った実施例13および14の結果より、冷凍状態で酵素活性を一旦休止した食材について、解凍後に酵素反応を行うことで食材を軟化させつつ、形状保持並びにその度合いを調節できることがわかった。酵素反応の前に冷凍解凍を行うことで食材組織が破壊される。よってその後の酵素反応による組織分解の効率が高まったものと思われる。
【0106】
[実施例15、16]
生のリンゴ(品種:サンフジ)を、皮むきし、縦1/4に切断し、20mm厚さの銀杏切りにしたカット済みリンゴを原料食材として用い、酵素液aに代えて酵素液e(実施例15)またや酵素液f(実施例16)を用いたことの他は実施例1と同様にして加圧時間30分で酵素液を含浸した。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間に、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。
【0107】
ここで、酵素液eとしては、アマノエンザイム製のセルラーゼA「アマノ3」0.1重量%、アマノエンザイム製のヘミセルラーゼ「アマノ90」0.1重量%、およびショ糖10重量%を含有する酵素液(酵素製剤濃度0.2重量%)を、
酵素液fとしては、アマノエンザイム製のセルラーゼA「アマノ3」0.2重量%、アマノエンザイム製のヘミセルラーゼ「アマノ90」0.2重量%、およびショ糖10重量%を含有する酵素液(酵素製剤濃度0.4重量%)をそれぞれ用いた。
【0108】
実施例15において酵素液eを含浸した後の重量は、含浸前重量と比較して40.1重量%増加し、また、実施例16において酵素液fを含浸した後の重量は、含浸前重量と比較して35.8重量%増加していた。
【0109】
このようにして酵素液が含浸された各食材について、含浸直後、および、含浸終了後に45℃にて20分、40分および60分保持して酵素反応させた後に、破断強度および保形性を評価した。結果を表6に示す。
【0110】
また、実施例15および16において、加圧時間を1分、3分とした以外は上記と同様にして酵素液を含浸した場合の重量変化率を
図3のグラフに、加圧時間30分の場合とともに示す。
【0111】
【表6】
【0112】
[比較例6](比較用リンゴ食品の製造)
実施例15で用いたのと同様の原料食材(カット済みリンゴ)95℃の10重量%ショ糖水溶液中で5分間ブランチング処理し、得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表7に示す。
【0113】
[比較例7](比較用リンゴ食品の製造)
実施例15で用いたのと同様の原料食材(カット済みリンゴ)95℃の10重量%ショ糖水溶液中で5分間ブランチング処理した。これをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、次いで水道水(18℃)流水下にて30分間で解凍し、処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表7に示す。
【0114】
[比較例8]
実施例15で用いたのと同様の原料食材(カット済みリンゴ)について、95℃の10重量%ショ糖水溶液中で5分間ブランチング処理した。これをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、次いで水道水(18℃)流水下にて30分間で解凍し、処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表7に示す。
【0115】
[比較例9]
実施例15で用いたのと同様の原料食材(カット済みリンゴ)について、95℃の10重量%ショ糖水溶液中で5分間ブランチング処理し、次いでこれをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させた。これを真空凍結乾燥用トレーに並べ、真空凍結乾燥装置(東洋技研製 TFD50LF4)中に導入し、棚温度45℃×48時間、真空度:40Pa以下の条件で、真空凍結乾燥し、フリーズドライ(FD)リンゴを得た。ここで、FD歩留(凍結乾燥前重量に対する凍結乾燥後重量の割合)は16.7%であった。
【0116】
得られたFDリンゴを水戻しし、破断強度および保形性を評価した。結果を表7に示す。
【0117】
ここで水戻しは、ボールに300ccの水道水(18℃)をそそぎ、そこに水戻しするFD試料を入れ(押し沈めたりはしない)、3分間静置した後、ネット状の篩にあけることにより行った。
【0118】
水戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)は、467%であった。
【0119】
[比較例10]
比較例9と同様にして得たFDリンゴを湯戻しし、破断強度および保形性を評価した。結果を表7に示す。
【0120】
ここで湯戻しは、ボールに300ccの熱湯をそそぎ、そこに湯戻しするFD試料を入れ(押し沈めたりはしない)、3分間静置した後、ネット状の篩にあけることにより行った。
【0121】
湯戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)は、387%であった。
【0122】
【表7】
【0123】
実施例15および16の結果より、酵素液含浸後の酵素反応時間を延ばすにつれて、軟化が進み破断強度が小さくなることがわかり、酵素濃度の高い実施例16では、保形性の評価が2以下と形状が保持されないほどに軟化が進んだことがわかった。これより、酵素濃度および酵素反応時間を制御することによって、軟化程度および形状維持程度を制御でき、所望の軟化程度および形状を達成できることがわかった。
【0124】
また、実施例15および16と、比較例6〜10の結果より、酵素液を含浸し、酵素反応を行う本発明では、食材の内側から均一に酵素反応させることにより、ブランチングしたリンゴまたはブランチング後に冷凍解凍したリンゴと同等の形状を保持した状態で、食材を所望の程度軟化することができることがわかった。
【0125】
[実施例17]
実施例15で用いたのと同様の原料食材(カット済みリンゴ)について、実施例15と同様に前記酵素液eを含浸した。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間には、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。酵素液含浸直後の食材、および、含浸終了後に45℃にて20分、40分および60分保持して酵素反応させた後の食材を、95℃以上の10%ショ糖液に5分間浸漬して加熱調理することにより酵素失活を行い、取り出して放冷して処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表8に示す。
【0126】
[実施例18]
実施例17において、酵素液eを用いる代わりに、前記酵素液fを用いたことの他は、実施例17と同様にして処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表8に示す。
【0127】
【表8】
【0128】
実施例17および18より、酵素液を含浸し、酵素反応した後、加熱調理による酵素失活を行うことによって、食材の内側から均一に酵素反応させることにより、ブランチングのみを行ったリンゴと同等の保形性を保持した状態で、食材を所望の程度軟化することができることがわかった。酵素反応後の段階で保形性を保っているものは、加熱調理による酵素失活工程によって著しく保形性を損なうことはなかった。
【0129】
[実施例19]
実施例15で用いたのと同様の原料食材(カット済みリンゴ)について、実施例15と同様に前記酵素液eを含浸した。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間に、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。酵素液含浸直後の食材、および、含浸終了後に45℃にて20分、40分および60分保持して酵素反応させた後の食材を、95℃以上の10%ショ糖液に5分間浸漬して加熱調理することにより酵素失活を行い、取り出して放冷した。次いでこれをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、次いで水道水(18℃)流水下にて30分間で解凍し、処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表9に示す。
【0130】
[実施例20]
実施例19において、酵素液eを用いる代わりに、前記酵素液fを用いたことの他は、実施例19と同様にして処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表9に示す。
【0131】
【表9】
【0132】
実施例19および20より、酵素液を含浸し、食材の内側から均一に酵素反応した後、加熱調理による酵素失活を行い、さらに冷凍・解凍することによって、ブランチングのみを行ったリンゴと同等の保形性を保持した状態で、食材を所望の程度軟化することができることがわかった。酵素反応後の段階で保形性を保っているものは加熱調理による酵素失活工程および冷凍・解凍工程によっては、著しく保形性を損なうことはなかった。
【0133】
[実施例21]
実施例15で用いたのと同様の原料食材(カット済みリンゴ)について、実施例15と同様に前記酵素液eを含浸した。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間には、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。これをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、次いでナイロンポリ袋ごと試料を水道水(18℃)流水下にて60分間で解凍した。解凍完了後、ナイロンポリ袋ごと試料を45℃湯浸加温して保持する酵素反応を、それぞれ0分(解凍直後)、20分、40分および60分間行い処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表10に示す。
【0134】
[実施例22]
実施例21において、酵素液eを用いる代わりに、前記酵素液fを用いたことの他は、実施例21と同様にして処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表10に示す。
【0135】
【表10】
【0136】
実施例21および22より、酵素液を含浸し、冷凍・解凍した後に酵素反応を行うことによって、食材の内側から均一に酵素反応させることにより、ブランチングおよび冷凍・解凍を行ったリンゴと同等の保形性を保持した状態で、食材を所望の程度軟化することができることがわかった。これらの結果は、酵素反応後に冷凍・解凍したものよりも破断強度が低いものであって、より軟化が進んでいることが分かった。酵素反応の前に冷凍解凍を行うことで食材組織が破壊される、よってその後の酵素反応による組織分解の効率が高まったものと思われる。
【0137】
[実施例23]
実施例15で用いたのと同様の原料食材(カット済みリンゴ)について、実施例15と同様に前記酵素液eを含浸した。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間には、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。酵素液含浸直後の食材、および、含浸終了後に45℃にて20分、40分および60分保持して酵素反応させた後の食材を、95℃以上の10%ショ糖液に5分間浸漬して加熱調理することにより酵素失活を行い、取り出して放冷した。次いでこれをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させた。これを真空凍結乾燥用トレーに並べ、真空凍結乾燥装置(東洋技研製 TFD50LF4)中に導入し、棚温度45℃×48時間、真空度:40Pa以下の条件で、真空凍結乾燥し、フリーズドライ(FD)リンゴを得た。それぞれのFD歩留(凍結乾燥前重量に対する凍結乾燥後重量の割合(%))を表11に示す。
【0138】
得られたFDリンゴを水戻しし、破断強度および保形性を評価した。結果を表11に示す。また、水戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)を表11にあわせて示す。
【0139】
ここで水戻しは、ボールに300ccの水道水(18℃)をそそぎ、そこに水戻しするFD試料を入れ(押し沈めたりはしない)、3分間静置した後、ネット状の篩にあけることにより行った。
【0140】
[実施例24]
実施例23において、酵素液eを用いる代わりに、前記酵素液fを用いたことの他は、実施例23と同様にしてFDリンゴを製造した。それぞれのFD歩留(凍結乾燥前重量に対する凍結乾燥後重量の割合(%))を表11に示す。得られたFDリンゴを実施例23と同様に水戻しし、破断強度および保形性を評価した。また、水戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)を求めた。結果を表11に示す。
【0141】
[実施例25]
実施例23と同様にして酵素液eを用いて得たFDリンゴを湯戻しし、破断強度および保形性を評価した。結果を表11に示す。また、湯戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)を表11にあわせて示す。
【0142】
ここで湯戻しは、ボールに300ccの熱湯をそそぎ、そこに湯戻しするFD試料を入れ(押し沈めたりはしない)、3分間静置した後、ネット状の篩にあけることにより行った。
【0143】
[実施例26]
実施例24と同様に酵素液fを用いて得たFDリンゴを、実施例25と同様に湯戻しし、破断強度、保形性および戻し重量変化率を評価した。結果を表11に示す。
【0144】
【表11】
【0145】
実施例23〜26より、酵素液を含浸し、酵素反応、酵素失活した後に凍結乾燥して得た処理食材は、酵素含浸を行わずにブランチング後に凍結乾燥したもの(比較例9、10)と比較して、形状を保持した状態で同等もしくはそれ以下の破断強度まで軟化できることがわかった。また、酵素含浸のない比較例9と比較して、同条件での凍結乾燥によるFD歩留りが低かった。このことは、酵素液を含浸し、食材の内側から均一に酵素反応したことで食材中の繊維などが加水分解された分、より高度に乾燥されたFD食材が得られたことが分かった。さらに実施例23〜26で得られたFD食材は、水戻りあるいは湯戻りがスムーズで戻り速度が速く、中心部まで素早く均一な戻りが見られ、戻り特性に優れていた。尚、戻り重量変化率については酵素濃度の低い酵素液を用いた実施例23、25ではそれぞれ比較例9、10よりも同等若しくはそれ以上の傾向が確認され、酵素濃度の高い酵素液を用いた実施例24、25ではそれぞれ比較例9、10よりも同等若しくはそれ以下の傾向が確認された。酵素反応を伴う加水分解が促進され、かつ保形性が維持された実施例23、25では加水分解の分戻り重量変化が高くなり、高濃度のため酵素による加水分解が進みすぎた24、26では保形性が損なわれたため、その分戻り重量変化が低かったと思われる。戻り後の破断強度および保形性の結果より、酵素含浸後に凍結乾燥した実施例のFDリンゴでは、ブランチング後に凍結乾燥したものと同等の保形性を維持した状態で、軟化程度を制御できることがわかった。
【0146】
[実施例27]
生のセロリを長さ3cmに切断したものを原料食材として用い、これを15×15cmのステンレス製バスケットに並べ、バスケット上部にポリエチレンネットをかぶせ、ネットをステンレス製針金で固定して、これを16×16cmのステンレス製容器(内タンク)内にいれた。このステンレス製容器を真空加圧含浸装置((株)エフコム製)内に設置し、真空排気を行い、装置内を6000Pa以下まで減圧し、そのまま3分間排気を継続した後、原料食材が完全に浸漬されるまで、45℃に加温した前記酵素液b(酵素製剤濃度1.0%)約2リットルをタンク内に導入した。
【0147】
酵素液bの導入後、真空加圧含浸装置内をエアパージして大気圧まで昇圧し、続いて圧搾空気を導入してタンク内を加圧して、0.3MPaで30分間保持した(加圧時間:30分)。このとき装置内の酵素液温度は約39℃に保たれていた。次いでエアパージして含浸処理を完了し、装置より酵素液が含浸された食材を取り出した。
【0148】
酵素液bを含浸した後の重量は、含浸前重量と比較して6.7%増加し、含浸前重量の106.7重量%となった。
【0149】
このようにして酵素液が含浸された食材について、含浸直後、および、含浸終了後に45℃にて90分、180分および360分保持して酵素反応させた後に、外皮および断面の破断強度と、保形性とを評価した。結果を表12に示す。なお、含浸直後の食材では、含浸工程において加圧状態を30分間保持する間に、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。
【0150】
[実施例28]
実施例27において、酵素液bに代えて、酵素製剤濃度が2.0%の酵素液gを用いたことの他は、実施例27と同様にしてセロリに酵素液を含浸した。ここで、酵素液gとしては、アマノエンザイム製のセルラーゼA「アマノ3」1.0重量%と、アマノエンザイム製のヘミセルラーゼ「アマノ90」1.0重量%とを含有する酵素液を、酵素および水を攪拌混合することにより調製して用いた。
【0151】
酵素液gを含浸した後の重量は、含浸前重量と比較して5.4%増加し、含浸前重量の105.4重量%となった。
【0152】
このようにして酵素液が含浸された食材について、実施例27と同様に評価した。結果を表12に示す。
【0153】
また、実施例27および28において、加圧時間を1分、3分とした以外は上記と同様にして酵素液を含浸した場合の重量変化率を
図4のグラフに、加圧時間30分の場合とともに示す。
【0154】
【表12】
【0155】
[比較例11]
実施例27で用いたのと同様の原料食材(カット済みセロリ)を、95℃の湯中で5分間ブランチング処理し、得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表13に示す。
【0156】
[比較例12]
実施例27で用いたのと同様の原料食材(カット済みセロリ)を、95℃の湯中で5分間ブランチング処理した。これをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、次いで水道水(18℃)流水下にて30分間で解凍し、処理食材を得た。得られた処理食材について、外皮および断面の破断強度と、保形性とを評価した。結果を表13に示す。
【0157】
[比較例13]
実施例27で用いたのと同様の原料食材(カット済みセロリ)を、95℃の湯中で5分間ブランチング処理した。これをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させた。これを真空凍結乾燥用トレーに並べ、真空凍結乾燥装置(東洋技研製 TFD50LF4)中に導入し、棚温度45℃×48時間、真空度:40Pa以下の条件で、真空凍結乾燥し、フリーズドライ(FD)セロリを得た。FD歩留(凍結乾燥前重量に対する凍結乾燥後重量の割合(%))は7.3%であった。
【0158】
得られたFDセロリを水戻しし、外皮および断面の破断強度と、保形性とを評価した。結果を表13に示す。
【0159】
ここで水戻しは、ボールに300ccの水道水(18℃)をそそぎ、そこに水戻しするFD試料を入れ(押し沈めたりはしない)、10分間静置した後、ネット状の篩にあけることにより行った。
【0160】
水戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)は、895%であった。
【0161】
[比較例14]
比較例13と同様にして得たFDセロリを湯戻しし、外皮および断面の破断強度と、保形性とを評価した。結果を表13に示す。
【0162】
ここで湯戻しは、ボールに300ccの熱湯をそそぎ、そこに湯戻しするFD試料を入れ(押し沈めたりはしない)、3分間静置した後、ネット状の篩にあけることにより行った。
【0163】
湯戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)は、990%であった。
【0164】
【表13】
【0165】
実施例27,28および比較例11〜14より、実施例ではいずれも保形性が良好で、酵素反応時間を延ばすほど破断強度が低下して軟化が進行し、酵素濃度の高い方がより軟化の程度が高いことが確認された。以上より、実施例27,28では、酵素液の含浸およびその後の酵素反応によって、内側まで均一に酵素反応が生じ、ブランチングまたはブランチング後に冷凍解凍して軟化したセロリ(比較例11,12)と同等の形状を保持した状態で、適宜軟化の度合いを調節してセロリ食材を軟化できることが分かった。
【0166】
[実施例29]
実施例27と同様にして、カット済みセロリに前記酵素液bを含浸し、酵素反応をそれぞれ0分(含浸直後。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間に、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。)、90分、180分、360分行った。次いでそれぞれ95℃以上の水に6分間浸漬することにより加熱調理して酵素失活を行い、取り出して常温まで放冷して処理食材を得た。得られた処理食材について実施例27と同様にして、外皮および断面の破断強度と、保形性とを評価した。結果を表14に示す。
【0167】
[実施例30]
実施例29において、酵素液bに代えて、前記酵素液g(酵素製剤濃度2.0%)を用いたことの他は、実施例29と同様にして酵素含浸、酵素反応、酵素失活、および放冷を行って処理食材を製造し、外皮および断面の破断強度と、保形性とを評価した。結果を表14に示す。
【0168】
【表14】
【0169】
実施例29および30の結果より、酵素液の含浸およびその後の酵素反応によって、内側まで均一に酵素反応が生じ、ブランチングまたはブランチング後に冷凍解凍して軟化したセロリ(比較例11,12)と同等の形状を保持した状態で、適宜軟化の度合いを調節してセロリ食材を軟化できることが分かった。また、加熱調理による酵素失活工程によっても著しく保形性を損なうことがなく、安定した性状の軟化食品を提供できることが分かった。
【0170】
[実施例31]
実施例27で用いたのと同様の原料食材(カット済みセロリ)について、実施例27と同様に前記酵素液b(酵素製剤濃度1.0%)を含浸した。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間に、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。酵素液含浸直後の食材、および、含浸終了後に45℃にて90分、180分および360分保持して酵素反応させた後の食材を、95℃以上の水に6分間浸漬して加熱調理することにより酵素失活を行い、取り出して放冷した。次いでこれをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、次いで水道水(18℃)流水下にて30分間で解凍し、処理食材を得た。得られた処理食材の外皮および断面の破断強度と、保形性とを評価した。結果を表15に示す。
【0171】
[実施例32]
実施例31において、酵素液bを用いる代わりに、前記酵素液g(酵素製剤濃度2.0%)を用いたことの他は、実施例31と同様にして処理食材を得た。得られた処理食材の外皮および断面の破断強度と、保形性とを評価した。結果を表15に示す。
【0172】
【表15】
【0173】
実施例31および32より、酵素液を含浸し、食材の内側から均一に酵素反応した後、加熱調理による酵素失活を行い、さらに冷凍・解凍することによって、ブランチングのみを行ったセロリと同等の保形性を保持した状態で、食材を所望の程度軟化することができることがわかった。加熱調理による酵素失活工程および冷凍・解凍工程によっては、著しく保形性を損なうことはなかった。
【0174】
[実施例33]
実施例27で用いたのと同様の原料食材(カット済みセロリ)について、実施例27と同様に前記酵素液b(酵素製剤濃度1.0%)を含浸した。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間に、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。含浸完了直後にこれをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、次いでナイロンポリ袋ごと試料を水道水(18℃)流水下にて60分間で解凍した。解凍完了後、ナイロンポリ袋ごと試料を45℃湯浸加温して保持する酵素反応を、それぞれ0分(解凍直後)、30分、60分、90分および120分行い、処理食材を得た。得られた処理食材の外皮および断面の破断強度と、保形性とを評価した。結果を表16に示す。
【0175】
[実施例34]
実施例33において、酵素液bを用いる代わりに、前記酵素液g(酵素製剤濃度2.0%)を用いたことの他は、実施例33と同様にして処理食材を得た。得られた処理食材の外皮および断面の破断強度と、保形性とを評価した。結果を表16に示す。
【0176】
【表16】
【0177】
[実施例35]
実施例27で用いたのと同様の原料食材(カット済みセロリ)について、実施例27と同様に前記酵素液b(酵素製剤濃度1.0%)を含浸した。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間に、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。酵素液含浸直後の食材、および、含浸終了後に45℃にて90分、180分および360分保持して酵素反応させた後の食材を、95℃以上の水に6分間浸漬して加熱調理することにより酵素失活を行い、取り出して放冷した。
【0178】
これをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させた。これを真空凍結乾燥用トレーに並べ、真空凍結乾燥装置(東洋技研製 TFD50LF4)中に導入し、棚温度45℃×48時間、真空度:40Pa以下の条件で、真空凍結乾燥し、フリーズドライ(FD)セロリを得た。それぞれのFD歩留(凍結乾燥前重量に対する凍結乾燥後重量の割合(%))を表17に示す。
【0179】
得られたFDセロリを比較例13と同様に水戻しし、外皮および断面の破断強度、保形性、および水戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)を評価した。結果を表17に示す。
【0180】
[実施例36]
実施例35において、酵素液bに代えて、酵素製剤濃度が2.0%の前記酵素液gを用いたことの他は、実施例35と同様にしてFDセロリを得た。それぞれのFD歩留(凍結乾燥前重量に対する凍結乾燥後重量の割合(%))を表17に示す。得られたFDセロリを比較例13と同様に水戻しし、外皮および断面の破断強度、保形性、および水戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)を評価した。結果を表17に示す。
【0181】
[実施例37]
実施例35と同様にして酵素液bを用いて得たFDセロリを、比較例14と同様に湯戻しし、外皮および断面の破断強度、保形性、および湯戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)を評価した。結果を表17に示す。
【0182】
[実施例38]
実施例36と同様にして前記酵素液gを用いて得たFDセロリを、比較例14と同様に湯戻しし、外皮および断面の破断強度、保形性、および湯戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)を評価した。結果を表17に示す。
【0183】
【表17】
【0184】
酵素を導入し、酵素反応後にフリーズドライを行った実施例35〜38では、水戻しまたは湯戻し後にいずれも十分な軟化が確認され、比較例13,14の結果と比較して戻し重量変化率が高く、水または湯による戻り特性が良好であることがわかった。重量変化率が比較例13、14と比較して明らかに高かった実施例35〜37では、酵素液を含浸し、食材の内側から均一に酵素反応したことで食材中の繊維などが加水分解され、かつその時良好な保形性を維持していた分重量変化率が高くなったと思われ、高濃度の酵素液及び高温の湯を戻しに用いた実施例38では保形性が低下した分重量変化率が低くなる傾向が確認されたものと思われる。
【0185】
[実施例39]
生のマッシュルーム(ホールのまま)を原料食材として用い、これを15×15cmのステンレス製バスケットに並べ、バスケット上部にポリエチレンネットをかぶせ、ネットをステンレス製針金で固定して、これを16×16cmのステンレス製容器(内タンク)内にいれた。このステンレス製容器を真空加圧含浸装置((株)エフコム製)内に設置し、真空排気を行い、装置内を6000Pa以下まで減圧し、そのままさらに3分間排気を継続した後、原料食材が完全に浸漬されるまで、45℃に加温した前記酵素液b(酵素製剤濃度1.0%)約2リットルをタンク内に導入した。
【0186】
酵素液bの導入後、真空加圧含浸装置内をエアパージして大気圧(0.1MPa)まで昇圧した。このとき装置内の酵素液温度は約40℃であった。続いて圧搾空気を導入してタンク内を加圧して、0.3MPaで30分間保持した(加圧時間:30分)。このとき装置内の酵素液温度は約39℃に保たれていた。次いでエアパージして含浸処理を完了し、装置より酵素液が含浸された食材を取り出した。
【0187】
酵素液bを含浸した後の重量は、含浸前重量と比較して83.6%増加し、含浸前重量の183.6重量%となった。
【0188】
このようにして酵素液が含浸された食材について、含浸直後、および、含浸終了後に45℃にて90分、180分および360分保持して酵素反応させた後に、破断強度および保形性を評価した。ここで、破断強度の測定は、直径3mmのプランジャーを用いて行った。結果を表18に示す。なお、含浸直後の食材では、含浸工程において加圧状態を30分間保持する間に、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。
【0189】
[実施例40]
実施例39において、酵素液bに代えて、前記酵素液g(酵素製剤濃度2.0%)を用いたことの他は、実施例39と同様にしてマッシュルームに酵素液を含浸した。酵素液gを含浸した後の重量は、含浸前重量と比較して89.6%増加し、含浸前重量の189.6重量%となった。
【0190】
このようにして酵素液が含浸された食材について、実施例39と同様に評価した。結果を表18に示す。
【0191】
また、実施例39および40において、加圧時間を1分、3分とした以外は上記と同様にして酵素液を含浸した場合の重量変化率を
図5のグラフに、加圧時間30分の場合とともに示す。
【0192】
【表18】
【0193】
[比較例15]
実施例39で用いたのと同様のマッシュルームを原料食材とし、これを95℃の湯中で5分間ブランチング処理し、得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。破断強度試験には、直径3mmおよび20mmのプランジャーを用いた。結果を表19に示す。
【0194】
[比較例16]
実施例39で用いたのと同様のマッシュルームを原料食材とし、95℃の湯中で5分間ブランチング処理した。これをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、次いで水道水(18℃)流水下にて30分間で解凍し、処理食材を得た。得られた処理食材について、破断強度および保形性を評価した。破断強度試験には、直径3mmおよび20mmのプランジャーを用いた。結果を表19に示す。
【0195】
[比較例17]
実施例39で用いたのと同様のマッシュルームを原料食材とし、95℃の湯中で5分間ブランチング処理した。これをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させた。これを真空凍結乾燥用トレーに並べ、真空凍結乾燥装置(東洋技研製 TFD50LF4)中に導入し、棚温度45℃×48時間、真空度:40Pa以下の条件で、真空凍結乾燥し、フリーズドライ(FD)マッシュルームを得た。FD歩留(凍結乾燥前重量に対する凍結乾燥後重量の割合(%))は10.7%であった。
【0196】
得られたFDマッシュルームを比較例9と同様にして水戻しし、破断強度および保形性を評価した。破断強度試験には、直径3mmおよび20mmのプランジャーを用いた。結果を表19に示す。
【0197】
水戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)は、629%であった。
【0198】
[比較例18]
比較例17と同様にして得られたFDマッシュルームを、比較例10と同様に湯戻しし、破断強度および保形性を評価した。破断強度試験には、直径3mmおよび20mmのプランジャーを用いた。結果を表19に示す。
【0199】
湯戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)は、611%であった。
【0200】
【表19】
【0201】
[実施例41]
実施例39で用いたのと同様のマッシュルームについて、実施例39と同様に前記酵素液b(酵素製剤濃度1.0%)を含浸した。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間には、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。酵素液含浸直後の食材、および、含浸終了後に45℃にて90分、180分および360分保持して酵素反応させた後の食材を、95℃以上の水に5分間浸漬して加熱調理することにより酵素失活を行い、取り出して放冷して処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。ここで、破断強度の測定は、直径3mmのプランジャーを用いて行った。結果を表20に示す。
【0202】
[実施例42]
実施例41において、酵素液bを用いる代わりに、前記酵素液g(酵素製剤濃度2.0%)を用いたことの他は、実施例41と同様にして処理食材を製造し、得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表20に示す。
【0203】
【表20】
【0204】
[実施例43]
実施例39で用いたのと同様のマッシュルームについて、実施例39と同様に前記酵素液b(酵素製剤濃度1.0%)を含浸した。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間には、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。酵素液含浸直後の食材、および、含浸終了後に45℃にて90分、180分および360分保持して酵素反応させた後の食材を、95℃以上の水に5分間浸漬して加熱調理することにより酵素失活を行い、取り出して放冷した。次いでこれをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、次いで水道水(18℃)流水下にて60分間で解凍し、処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。ここで、破断強度の測定は、直径3mmおよび20mmのプランジャーを用いて行った。結果を表21に示す。
【0205】
[実施例44]
実施例43において、酵素液bを用いる代わりに、前記酵素液g(酵素製剤濃度2.0%)を用いたことの他は、実施例43と同様にして処理食材を製造し、得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表21に示す。
【0206】
【表21】
【0207】
[実施例45]
実施例39で用いたのと同様のマッシュルームについて、実施例39と同様に前記酵素液b(酵素製剤濃度1.0%)を含浸した。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間には、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。これをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させ、次いでナイロンポリ袋ごと試料を水道水(18℃)流水下にて60分間で解凍した。解凍完了後、ナイロンポリ袋ごと試料を45℃湯浸加温して保持する酵素反応を、それぞれ0分(解凍直後)、30分、60分、90分および120分行い処理食材を得た。得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。ここで、破断強度の測定は、直径3mmおよび20mmのプランジャーを用いて行った。結果を表22に示す。
【0208】
[実施例46]
実施例45において、酵素液bを用いる代わりに、前記酵素液g(酵素製剤濃度2.0%)を用いたことの他は、実施例45と同様にして処理食材を製造し、得られた処理食材の破断強度および保形性を評価した。結果を表22に示す。
【0209】
【表22】
【0210】
[実施例47]
実施例39で用いたのと同様のマッシュルームについて、実施例39と同様に前記酵素液b(酵素製剤濃度1.0%)を含浸した。含浸工程において加圧状態を30分間保持する間には、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。酵素液含浸直後の食材、および、含浸終了後に45℃にて90分、180分および360分保持して酵素反応させた後の食材を、95℃以上の水に5分間浸漬して加熱調理することにより酵素失活を行い、取り出して放冷した。次いでこれをナイロンポリ袋に入れて軽く空気を抜き、シール後に−25℃のフリーザー内に入れ、24時間以上保持して内部まで完全に凍結させた。これを真空凍結乾燥用トレーに並べ、真空凍結乾燥装置(東洋技研製 TFD50LF4)中に導入し、棚温度45℃×48時間、真空度:40Pa以下の条件で、真空凍結乾燥し、フリーズドライ(FD)マッシュルームを得た。それぞれのFD歩留(凍結乾燥前重量に対する凍結乾燥後重量の割合(%))を表23に示す。
【0211】
得られたFDマッシュルームを比較例9と同様にして水戻しし、破断強度および保形性を評価した。破断強度試験には、直径3mmおよび20mmのプランジャーを用いた。また、水戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)を求めた。結果を表23に示す。
【0212】
[実施例48]
実施例47において、酵素液bを用いる代わりに、前記酵素液g(酵素製剤濃度2.0%)を用いたことの他は、実施例47と同様にして処理食材であるFDマッシュルームを得た。それぞれのFD歩留(凍結乾燥前重量に対する凍結乾燥後重量の割合(%))を表23に示す。得られたFDマッシュルームを実施例47と同様に水戻しし、破断強度、保形性、および水戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)を評価した。結果を表22に示す。
【0213】
[実施例49]
実施例47と同様にして酵素液bを用いて得たFDマッシュルームを、比較例14と同様に湯戻しし、実施例47と同様に破断強度および保形性を評価した。結果を表23に示す。また、湯戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)を表22にあわせて示す。
【0214】
[実施例50]
実施例48と同様にして前記酵素液gを用いて得たFDマッシュルームを、比較例14と同様に湯戻しし、実施例47と同様に破断強度および保形性を評価した。結果を表23に示す。また、湯戻しの前後における重量変化率(FD食材に対する、戻し後の食材の重量割合)を表23にあわせて示す。
【0215】
【表23】
【0216】
[実施例51]
計量した生のさつまいも(品種:高系14号)を、20mm厚さにダイスカットしたものを原料食材として用い、これを15×15cmのステンレス製バスケットに並べ、バスケット上部にポリエチレンネットをかぶせ、ネットをステンレス製針金で固定して、これを16×16cmのステンレス製容器(内タンク)内にいれた。このステンレス製容器を真空加圧含浸装置((株)エフコム製)内に設置し、真空排気を行い、装置内を5000Paまで減圧した後、直ちに原料食材が完全に浸漬されるまで、10℃に調温した酵素液h(約1.5リットル)をタンク内に導入した。ここで、酵素液hとしては、アマノエンザイム製の「クライスターゼT10S」0.1重量%を含有する酵素液(酵素製剤濃度0.1重量%)を、酵素および水を攪拌混合することにより調製して用いた。なお、酵素液の調製に用いたアマノエンザイム製のクライスターゼT10Sは、酵素製剤中の酵素(α−アミラーゼ)含有率が77.5%、力価13,100(LJ/g)の酵素製剤である。
【0217】
酵素液hの導入後、真空加圧含浸装置内をエアパージして大気圧(0.1MPa)まで昇圧した。続いて圧搾空気を導入してタンク内を加圧して、0.3MPaで10分間保持した(加圧時間:10分間)。このとき装置内の酵素液温度は約10℃に保たれていた。次いでエアパージして含浸処理を完了し、装置より酵素液が含浸された食材を取り出し、その食材の表面に付着した水分を良くきった。
【0218】
酵素液hを含浸した後の食材の重量は、含浸前重量と比較して23.7%増加し、含浸前重量の123.7重量%となった。
【0219】
このようにして得られた食材を、150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持して加熱調理し、その後食材を白絞油から引き上げ、十分その油を切った。加熱調理後の食材の重量は、すべての処理を行う前の食材の初期重量と比較して11.6%減少し、初期重量の88.4重量%となった。なお、酵素反応は、含浸工程で加圧状態に保持されている間だけでなく、この加熱調理の間にも、食材中で生じているものと考えられる。
【0220】
この加熱調理後の食材を室温(約20℃)になるまで降温させて、以下記載の方法により糖度(ブリックス)の測定を行った。結果を表24および
図6に示す。
【0221】
<糖度(ブリックス)測定>
1)測定試料液の調製
測定する処理食材を包丁でみじん切りして乳鉢に投入し、乳棒でペースト状になるまですり潰した。ついで、このすり潰した食材を計量(Ag)した後、その食材に計量した水を(Bg)添加し、ペースト状になるまで十分に混合し、懸濁液を作製した。この懸濁液をキッチンペーパーにとり、これを搾汁して測定試料液を作製した。
【0222】
2)測定方法
測定試料液の糖度(ブリックス)を、以下の手持屈折計により測定した。
手持屈折計:アタゴ社製:MASTER−M
上記屈折計で測定された実測値S
0(%)から、以下の換算方法により、加熱調理後の食材のブリックスS
1(%)を求めた。
【0223】
S
1=S
0×(A+B)/A
また、すべての処理を行う前の食材の初期重量に対する、加熱調理後の食材の重量百分率Wf(%)と加熱調理後の食材のブリックスS
1(%)から、以下の換算方法により、原料食材換算のブリックスS
2(%)を求めた。
【0224】
S
2=S
1×Wf/100
[実施例52〜54]
実施例51において、その加熱調理の条件を、100℃に調温された白絞油に投入して5分間保持した後、さらに150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持(実施例52)、100℃に調温された白絞油に投入して10分間保持した後、さらに150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持(実施例53)、100℃に調温された白絞油に投入して15分間保持した後、さらに150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持(実施例54)に変更することの他は、実施例51と同様にして、食材への酵素液の含浸、加熱調理を行い、食材の糖度(ブリックス)を測定した。結果を表24および
図6に示す。
【0225】
[実施例55]
実施例51において、酵素液hに代えて、酵素液iを用いたことの他は、実施例51と同様にして、食材への酵素液の含浸、加熱調理を行い、食材の糖度(ブリックス)を測定した。結果を表24および
図6に示す。
【0226】
ここで、酵素液iとしては、アマノエンザイム製の「クライスターゼT10S」0.3重量%を含有する酵素液(酵素製剤濃度0.3重量%)を用いた。この酵素液の調製は、酵素および水を攪拌混合することにより行った。
【0227】
[実施例56〜58]
実施例55において、その加熱調理の条件を、100℃に調温された白絞油に投入して5分間保持した後、さらに150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持(実施例56)、100℃に調温された白絞油に投入して10分間保持した後、さらに150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持(実施例57)、100℃に調温された白絞油に投入して15分間保持した後、さらに150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持(実施例58)に変更することの他は、実施例51と同様にして、食材への酵素液の含浸、加熱調理を行い、食材の糖度(ブリックス)を測定した。結果を表24および
図6に示す。
【0228】
【表24】
【0229】
[比較例19]
生のさつまいも(品種:高系14号)をおろし器ですり下ろしたものをキッチンペーパーにとり、これを搾汁して測定試料液を作製し、実施例51と同様の方法により、糖度(ブリックス)の測定を行った。結果を表25および
図6に示す。
【0230】
[比較例20]
実施例51において、酵素液hによる含浸処理を行わなかったことの他は、実施例51と同様にして、食材への加熱調理を行い、食材の糖度(ブリックス)を測定した。結果を表25および
図6に示す。
【0231】
[比較例21〜23]
比較例20において、その加熱調理の条件を、100℃に調温された白絞油に投入して5分間保持した後、さらに150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持(比較例21)、100℃に調温された白絞油に投入して10分間保持した後、さらに150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持(比較例22)、100℃に調温された白絞油に投入して15分間保持した後、さらに150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持(比較例23)に変更することの他は、比較例20と同様にして、食材への加熱調理を行い、食材の糖度(ブリックス)を測定した。結果を表25および
図6に示す。
【0232】
[比較例24]
実施例51において、酵素液hに代えて、水を用いたことの他は、実施例51と同様にして、食材への水の含浸、加熱調理を行い、食材の糖度(ブリックス)を測定した。結果を表25および
図6に示す。
【0233】
[比較例25〜27]
比較例24において、その加熱調理の条件を、100℃に調温された白絞油に投入して5分間保持した後、さらに150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持(比較例25)、100℃に調温された白絞油に投入して10分間保持した後、さらに150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持(比較例26)、100℃に調温された白絞油に投入して15分間保持した後、さらに150℃に調温された白絞油に投入し5分間保持(比較例27)に変更することの他は、比較例24と同様にして、食材への水の含浸、加熱調理を行い、食材の糖度(ブリックス)を測定した。結果を表25および
図6に示す。
【0234】
【表25】
【0235】
さつまいもを原料とした実施例51〜58の結果より、これらすべての実施例において、同等の加熱調理条件で、単に加熱調理する場合、水を含浸させてから加熱調理する場合と比較して、糖度(ブリックス)が上昇することが確認された。また、酵素濃度が高い方が、糖度(ブリックス)の高い食材が得られることが確認された。さらに、これら実施例で得られる糖度(ブリックス)の高い食材は、糖漬け、糖煮などのような糖の甘さではなく、さつまいもが本来持っている甘さを強く感じ取ることができる。
【0236】
[実施例59]
実施例51において、酵素液hに代えて、酵素液jを用いたことの他は、実施例51と同様にして、食材への酵素液の含浸、加熱調理を行い、食材の糖度(ブリックス)を測定した。結果を表26に示す。
【0237】
ここで、酵素液jとしては、アマノエンザイム製の「クライスターゼT10S」1.0重量%を含有する酵素液(酵素製剤濃度1.0重量%)を用いた。この酵素液の調製は、酵素および水を攪拌混合することにより行った。
【0238】
[実施例60]
実施例59において、酵素液jに代えて、酵素液j2を用いたことの他は、実施例59と同様にして、食材への酵素液の含浸、加熱調理を行い、食材の糖度(ブリックス)を測定した。結果を表26に示す。
【0239】
ここで、酵素液j2としては、ショ糖(三井製糖社製 上白糖J)を水に溶解して得た65重量%濃度のショ糖液に、アマノエンザイム製の「クライスターゼT10S」1.0重量%を含有するように添加した酵素液(酵素製剤濃度1.0重量%)を用いた。この酵素液の調製は、酵素およびショ糖液を攪拌混合することにより行った。
【0240】
[比較例28]
実施例59において、酵素液jに代えて、65重量%濃度のショ糖液を用いたことの他は、実施例59と同様にして、食材へのショ糖液の含浸、加熱調理を行い、食材の糖度(ブリックス)を測定した。結果を表26に示す。
【0241】
【表26】
【0242】
さつまいもを原料とした実施例59の結果より、65重量%ショ糖液を含浸した食材と比較しても高い糖度(ブリックス)の食材が得られることが確認された。この食材は、さつまいも本来の自然な甘みを強く感じることができる食材で、ショ糖のみにより糖度を高めた食材とは異なる甘みを有する。また、実施例60の結果より、さつまいも本来の自然な甘みと、ショ糖の有する甘みがあいまって、より一層甘みの強い食材が得られることが確認された。
【0243】
[実施例61]
実施例59において、酵素液jに代えて、酵素液j3を用いたことの他は、実施例59と同様にして、食材への酵素液の含浸、加熱調理を行い、食材の糖度(ブリックス)を測定した。結果を表27に示す。
【0244】
ここで、酵素液j3としては、いちご果汁液に、アマノエンザイム製の「クライスターゼT10S」1.0重量%を含有するように添加した酵素液(酵素製剤濃度1.0重量%)を用いた。この酵素液の調製は、酵素およびいちご果汁液を攪拌混合することにより行った。なお、いちご果汁液は、35°BXいちご透明果汁(日本果実加工社製)70重量%と還元水飴(物産フードサイエンス社製 エスイー600)30重量%とを混合して得られる混合液100重量%に対して、1重量%のいちご香料(内外香料社製 ストロベリーオイル)を添加し、十分に攪拌混合して得られる。
【0245】
[比較例29]
実施例61において、酵素液j3に代えて、実施例61で得られたいちご果実液を用いたことの他は、実施例59と同様にして、食材へのいちご果汁液の含浸、加熱調理を行い、食材の糖度(ブリックス)を測定した。結果を表27に示す。
【0246】
【表27】
【0247】
[実施例62]
計量した大豆(ホクレン農業協同組合連合会製)を原料食材として用い、これを15×15cmのステンレス製バスケットに並べ、バスケット上部にポリエチレンネットをかぶせ、ネットをステンレス製針金で固定して、これを16×16cmのステンレス製容器(内タンク)内にいれた。このステンレス製容器を真空加圧含浸装置((株)エフコム製)内に設置し、真空排気を行い、装置内を5000Paまで減圧した後、直ちに原料食材が完全に浸漬されるまで、15℃に調温した酵素液k(約1.5リットル)をタンク内に導入した。ここで、酵素液kとしては、アマノエンザイム製のプロテアーゼA「アマノ」G 0.5重量%を含有する酵素液(酵素製剤濃度0.5重量%)を、酵素および水を攪拌混合することにより調製して用いた。なお、酵素液の調製に用いたアマノエンザイム製のプロテアーゼA「アマノ」Gは、酵素製剤中の酵素(プロテアーゼ)含有率が30.0%、力価10,000(u/g)の酵素製剤である。
【0248】
酵素液kの導入後、真空加圧含浸装置内をエアパージして大気圧(0.1MPa)まで昇圧した。続いて圧搾空気を導入してタンク内を加圧して、0.3MPaで30分間保持した(加圧時間:30分間)。このとき装置内の酵素液温度は約10℃に保たれていた。次いでエアパージして含浸処理を完了し、装置より酵素液が含浸された食材を取り出し、ステンレスバスケットに入った状態で軽くエアーブローして、食材表面に残存する水分を飛ばし、計量した。
【0249】
酵素液kを含浸した後の食材の重量は、含浸前重量と比較して39.2%増加し、含浸前重量の139.2重量%となった。なお、含浸直後の食材では、含浸工程において加圧状態を30分間保持する間に、食材中での酵素反応が生じているものと考えられる。
【0250】
このようにして得られた食材を圧力鍋に入れ、食材が完全に水に浸るまで水を入れた後蓋を閉め、圧力鍋の調圧弁から蒸気が勢い良く噴出すまで強火で加熱をし、さらに弱火にして5分間保持して加熱調理した。その後、火を止めて圧力鍋から食材を取り出し、ステンレスバスケットに移し、軽くエアーブローして、食材表面に残存する水分を飛ばし、計量した。
【0251】
加熱調理した後の食材の重量は、すべての処理を行う前の食材の初期重量と比較して92.4%上昇し、初期重量の192.4%となった。
【0252】
[比較例30]
実施例62において、酵素液kによる含浸処理を行わなかったことの他は、実施例62と同様にして、食材への加熱調理、重量変化を測定した。結果を表28に示す。
【0253】
[比較例31]
実施例62において、酵素液kによる含浸処理を行わず、大気圧下で15℃近辺に調温した水に食材を30分間浸漬させた後に圧力鍋による加熱処理を行ったことの他は、実施例62と同様にして、食材への加熱調理、重量変化を測定した。結果を表28に示す。
【0254】
[比較例32]
実施例62において、酵素液kに代えて、水による含浸処理を行ったことの他は、実施例62と同様にして、食材への加熱調理、重量変化を測定した。結果を表28に示す。
【0255】
【表28】
【0256】
実施例62の結果より、酵素反応により、食材の含水量が上昇するとともに、さらにその後の加熱調理によって、大きく含水率が高められた加工食材が得られていることが確認された。