特許第5881431号(P5881431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881431
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】電解液及び光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   H01G9/20 107A
   H01G9/20 107B
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-9338(P2012-9338)
(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公開番号】特開2013-149491(P2013-149491A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2015年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 仁
(72)【発明者】
【氏名】松好 弘明
(72)【発明者】
【氏名】冨田 晴雄
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−317447(JP,A)
【文献】 特開2010−123462(JP,A)
【文献】 特開2007−317446(JP,A)
【文献】 特開2006−024565(JP,A)
【文献】 特開2005−085587(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/093253(WO,A1)
【文献】 特開2009−231008(JP,A)
【文献】 特開2011−040261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
H01M 14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムを含むヨウ化物及び溶媒を含有する電解液であって、
(1)前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムは、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムを含
満たし、且つ、
前記溶媒は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドである、電解液。
【請求項2】
前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムを3.0モル/リットル以上含有する、請求項に記載の電解液。
【請求項3】
前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムは、さらに、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム及び/又はヨウ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムを含む、
請求項又はに記載の電解液。
【請求項4】
前記ヨウ素を0.1〜10モル/リットル含有する、請求項1〜のいずれかに記載の電解液。
【請求項5】
前記ヨウ化物は、さらに、ヨウ化リチウムを含む、請求項1〜のいずれかに記載の電解液。
【請求項6】
前記ヨウ化リチウムを0.05〜0.3モル/リットル含有する、請求項に記載の電解液。
【請求項7】
さらに、4−ターシャルブチルピリジン及びN−メチルベンズイミダゾールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性物質を含有する、請求項1〜のいずれかに記載の電解液。
【請求項8】
前記塩基性物質を0.01〜10モル/リットル含有する、請求項に記載の電解液。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の電解液を用いて得られる光電変換素子。
【請求項10】
請求項に記載の光電変換素子を用いて得られる色素増感太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液及び光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感太陽電池の高温における耐久性向上のために、電解液の溶媒としてイオン液体を用いる検討がなされている。特に、色素増感太陽電池モジュールを屋外に設置する場合には、夏場の晴天時に表面の温度が80℃以上の高温になる可能性がある点から、高温における耐久性が要求されている。イオン液体は蒸気圧がほぼゼロである、化学的安定性が高い、熱的安定性が高い等の特性を有しているため、色素増感太陽電池の80℃以上の高温での耐久性向上が期待できる。
【0003】
色素増感太陽電池の電解液としてのイオン液体の応用例としては、例えば、ヨウ化物としての電解質としてヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、溶媒として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートを用いること(非特許文献1)、電解質としてヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、溶媒として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートを用いること(非特許文献2)、電解質と溶媒を兼用したヨウ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムを単独で用いること(非特許文献3)が知られている。
【0004】
しかしながら、イオン液体は一般に吸水性が高く、色素増感太陽電池等の電気化学セルに適用する場合、電解液への水分の浸入による性能劣化が課題となる。
【0005】
また、上述のヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム及びヨウ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムは、液体でありかつ、ヨウ化物イオン(I)を高濃度で含み、それ自身で不揮発性電解液となりえる。一方、それぞれの25℃における粘度は、865mPa・s、965mPa・sとかなり粘性が高い。これらのヨウ化物を色素増感太陽電池の電解液に添加して使用した場合、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I)の拡散が遅くなる。そのため、短絡電流密度の値が低くなり、光電変換効率の値も低くなっていた。
【0006】
さらに、他のイオン液体についても、電解液中の濃度を大きくすると、電解液の粘度が大きくなることから、同様に、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I)の拡散が遅くなる。そのため、短絡電流密度の値が低くなり、光電変換効率の値も低くなると考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of American Chemical Society 128, 4146-4154 (2006)
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society 128, 7732-7733 (2006)
【非特許文献3】Journal Photochemistry & Photobiology A 164, 67-73 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの理由から、色素増感太陽電池セルを組み立てたときに充分な光電変換効率を有し、且つ、高温耐久性を有するイオン液体を用いた電解液はいまだ存在しておらず、このような電解液を提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、溶媒として、疎水性の高い1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを用いることで、水分進入による性能劣化を抑制できることを見出した。また、従来は、上述のように、粘度の高いイオン液体を用いたり、イオン液体の濃度を高くしたりすると、粘度が高いことから、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I)の拡散が遅くなることから性能が悪化すると考えられていたが、上記のように、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドと組合せると、水分進入による性能劣化を抑制できるため、予想外にも、粘度を低く抑えるよりも粘度が高いほうが、光電変換効率が高く、高温耐久性にも優れることを見出した。その後、さらに研究を重ね、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.ヨウ素、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムを含むヨウ化物及び溶媒を含有する電解液であって、
(1)前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムは、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムを含む、
(2)前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムを3.0モル/リットル以上含む、
(3)前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムは、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムを含む
の少なくとも1つを満たし、且つ、
前記溶媒は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドである、電解液。
項2.前記電解液は、
(1)前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムは、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムを含む
を満たす、項1に記載の電解液。
項3.前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムを3.0モル/リットル以上含有する、項2に記載の電解液。
項4.前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムは、さらに、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム及び/又はヨウ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムを含む、
項2又は3に記載の電解液。
項5.前記電解液は、
(2)前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムを3.0モル/リットル以上含む
を満たす、項1に記載の電解液。
項6.前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムは、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムを含む、項5に記載の電解液。
項7.前記電解液は、
(3)前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムは、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムを含む
を満たす、項1に記載の電解液。
項8.前記ヨウ素を0.1〜10モル/リットル含有する、項1〜7のいずれかに記載の電解液。
項9.前記ヨウ化物は、さらに、ヨウ化リチウムを含む、項1〜8のいずれかに記載の電解液。
項10.前記ヨウ化リチウムを0.05〜0.3モル/リットル含有する、項9に記載の電解液。
項11.さらに、4−ターシャルブチルピリジン及びN−メチルベンズイミダゾールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性物質を含有する、項1〜10のいずれかに記載の電解液。
項12.前記塩基性物質を0.01〜10モル/リットル含有する、項11に記載の電解液。
項13.項1〜12のいずれかに記載の電解液を用いて得られる光電変換素子。
項14.項13に記載の光電変換素子を用いて得られる色素増感太陽電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電解液を光電変換素子に用いれば、従来のイオン液体を溶媒とした電解液を使用した場合と比較し、光電変換効率を向上させて、かつ高温における耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.電解液
(1)第1の態様
本発明の第1の態様における電解液は、
ヨウ素、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムを含むヨウ化物及び溶媒を含有する電解液であって、
前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムは、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムを含み、且つ、
前記溶媒は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドである。
【0012】
<電解質>
本発明では、電解質として、ヨウ素と、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとしてヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムヨウ化物とを含む。
【0013】
ヨウ素とヨウ化物とは、本発明の電解液中で酸化還元対であるI/Iを形成する(I存在下にIを添加することでIが生成する)。
【0014】
その結果、チタニア伝導帯を下げて色素からチタニアへの電子注入速度を向上させる効果がある。また、チタニアに注入された電子の輸送を促進させる効果もある。これにより、短絡電流密度を向上させ、結果的に光電変換効率を向上させることができる。
【0015】
本発明では、上述のとおり、溶媒として、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを使用している。1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドは、高い極性を有しつつも疎水性を有し、水分進入による劣化を抑制するはたらきがある。また、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドは、25℃における粘度が19mPa・s程度であり、有機溶媒より粘度が高い(例えば、25℃における粘度が0.378mPa・sであるアセトニトリルの約50倍である)。このため、溶媒として有機溶媒を用いた電解液よりも、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I)の移動速度は遅くなる。このため、溶媒として有機溶媒を用いた電解液と比較し、ヨウ素及びヨウ化物の濃度を高めに設定することが好ましい。
【0016】
しかしながら、これら電解質の濃度を単に高くすると、電解液の粘度が上昇する。また、ヨウ素濃度が高くなると光の吸収量が増す。本発明では、ヨウ化物イオン(I)源として使用しているヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムの合計濃度を高く設定し、ヨウ素の添加量を抑制すれば、光の吸収量をより抑制し、イオン伝導度をより高くすることができる。
【0017】
このような観点から、ヨウ素の濃度は、0.1〜10モル/リットル(特に0.2〜5モル/リットル)程度が好ましい。
【0018】
また、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムの濃度は、3.0モル/リットル以上(特に5〜20モル/リットル)程度が好ましい。
【0019】
なお、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとして電解液中に存在するヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムそれぞれの濃度は、同じでも異なっていてもよく、特に制限されないが、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムが1.5モル/リットル以上(特に2.5〜10モル/リットル)程度、ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムが1.5モル/リットル以上(特に2.5〜10モル/リットル)程度が好ましい。
【0020】
また、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムとヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムとの濃度の比は、特に制限されないが、共に単独では3モル/リットル以上溶解するのが困難であるが、共存させることで極性溶媒に溶解しやすくなるという理由から、1:9〜9:1(モル比)、特に4:6〜6:4(モル比)が好ましい。
【0021】
なお、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムとヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムとは常温で固体であり、ともに単独では、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドに対して常温で3M程度までしか溶解しない。しかし、共存下で70℃程度に加熱すれば、3Mより多くの量(例えば30M程度)でも溶解させることができる。また、その後、常温に冷却しても析出することなく、多量に溶解させ続けることが可能である。
【0022】
本発明では、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとしては、上記のヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム以外にも、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、等(好ましくはヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム等)の他のヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムを含ませてもよい。
【0023】
この際、他のヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムの濃度は、本発明の効果を損ねない程度であればよい。
【0024】
また、本発明では、ヨウ化物として、ヨウ化リチウムを含ませてもよい。
【0025】
このヨウ化リチウムを使用することによっても、ヨウ素との間で酸化還元対であるI/Iを形成することができるため、よりチタニア伝導帯を下げて色素からチタニアへの電子注入速度をさらに向上させることができる。また、チタニアに注入された電子の輸送をさらに促進させる効果もある。これにより、より短絡電流密度を向上させ、さらに光電変換効率を向上させることができる。
【0026】
なお、ヨウ化リチウムの添加により生成するリチウムイオンは、色素増感太陽電池のチタニア負極等に用いられる多孔質チタニアに吸着すると考えられる。
【0027】
また、色素増感太陽電池の開放電圧を充分に保持して充分な光電変換効率を得る観点から、ヨウ化物イオンIの主な供給源としてはヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウム(特にヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム)とするのが好ましい。そのため、ヨウ化リチウムの濃度は、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウム(特にヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム)と比較して少なくすることが好ましい。
【0028】
この観点から、ヨウ化リチウムの濃度は、0.05〜0.3モル/リットル(特に0.1〜0.2モル/リットル)が好ましい。また、ヨウ化リチウムとヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとの濃度比は、1:30〜1:300(モル比)、特に1:60〜1:200(モル比)、さらに1:70〜1:120(モル比)が好ましい。
【0029】
<溶媒>
本発明の電解液は、溶媒として、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドを使用する。ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドの融点は−14℃、25℃における粘度は19mPa・sであり、疎水性である。
【0030】
この1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドの25℃における粘度は、1−エチル−3-メチルイミダゾリウムカチオンを有するイオン液体の中では低い部類で、従来から使用されている、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート(23.1mPa・S;融点は−50℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(28mPa・S;融点は−16℃)等よりも低い値であり、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I)が拡散しやすいという面で有利である。
【0031】
また、1−メチル−3−イミダゾリウムテトラシアノボレートは、テトラシアノボレートアニオン(B(CN))が、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I)の移動を阻害し、短絡電流密度(Jsc)が低下するため、変換効率及び高温耐久性が悪化する。
【0032】
また、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドは疎水性を有することから、水分進入による性能劣化を抑制することができる。
【0033】
なお、溶媒としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドと有機溶媒又は他のイオン液体との混合溶媒とすることも考えられる。しかし、有機溶媒との混合溶媒とすると、高沸点の有機溶媒でも蒸気圧を有しているため、高温での封止維持が困難で、耐久性が欠如する。また、他のイオン液体との混合溶媒とすると、カチオン及びアニオンの種類を増加させることになり、色素増感太陽電池の安定性に問題が生じる。したがって、本発明では、溶媒としては、イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドを単独で使用することが好ましい。
【0034】
<その他の成分>
本発明の電解液には、上記した成分以外にも、塩基性物質、例えば、4−ターシャルブチルピリジン、N−メチルベンズイミダゾール等を含有させることもできる。これらの塩基性物質を含有させれば、光電変換素子を作製した際に、チタニア電極のチタニア表面に吸着し、チタニア電極からの逆電子移動を防ぐことができ、開放電圧をより向上させるとともに、光電変換効率をより向上させることができる。
【0035】
また、チタニアに吸着した増感色素を脱離させないため、塩基性物質の添加量は、0.01〜1モル/リットル程度とすることが好ましい。特に、金属錯体色素を使用する場合は、0.1〜1.0モル/リットル程度、特に0.3〜0.8モル/リットル程度が好ましい。また、有機色素を使用する場合は、0.01〜0.1モル/リットル程度、特に0.03〜0.08モル/リットル程度が好ましい。
【0036】
他にも、本発明の電解液には、上述のヨウ化リチウムと同様に、チタニアの伝導帯を下げて色素からチタニアへの電子注入速度を向上させる効果のあるグアニジンチオシアネート等も添加することができる。この場合、これらの添加量は、0.1〜1.0モル/リットル程度とすればよい。
【0037】
なお、本発明の電解液においては、上記成分以外にも、粘度調整剤(ポリエチレングリコール等)や脱水剤(ゼオライト、シリカゲル等)等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含ませることができる。
【0038】
(2)第2の態様
本発明の第2の態様における電解液は、
ヨウ素、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムを含むヨウ化物及び溶媒を含有する電解液であって、
前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムを3.0モル/リットル以上含み、
前記溶媒は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドである。
【0039】
<電解質>
本発明では、電解質として、ヨウ素と、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとを含む。
【0040】
ヨウ素とヨウ化物とは、本発明の電解液中で酸化還元対であるI/Iを形成する(I存在下にIを添加することでIが生成する)。
【0041】
その結果、チタニア伝導帯を下げて色素からチタニアへの電子注入速度を向上させる効果がある。また、チタニアに注入された電子の輸送を促進させる効果もある。これにより、短絡電流密度を向上させ、結果的に光電変換効率を向上させることができる。
【0042】
ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとしては、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム等が好ましい。
【0043】
これらのなかでも、高温耐久性の観点から、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムが好ましい。
【0044】
ただし、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムとヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムとは常温で固体であり、ともに単独では、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドに対して常温で3M程度までしか溶解しない。しかし、70℃程度に加熱すれば、3Mより多くの量(例えば30M程度)でも溶解させることができる。また、その後、常温に冷却しても析出することなく、多量に溶解させ続けることが可能である。
【0045】
一方、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムは常温で液体であるため、そのまま電解液中に多量に含ませることができる。このことから、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとして、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムを採用してもよい。当然のことながら、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムを上述のヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムと併用してもよい。
【0046】
本発明では、上述のとおり、溶媒として、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを使用している。1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドは、高い極性を有しつつも疎水性を有し、水分進入による劣化を抑制するはたらきがある。また、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドは、25℃における粘度が19mPa・s程度であり、有機溶媒より粘度が高い(例えば、25℃における粘度が0.378mPa・sであるアセトニトリルの約50倍である)。このため、溶媒として有機溶媒を用いた電解液よりも、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I)の移動速度は遅くなる。このため、溶媒として有機溶媒を用いた電解液と比較し、ヨウ素及びヨウ化物の濃度を高めに設定することが好ましい。
【0047】
しかしながら、これら電解質の濃度を単に高くすると、電解液の粘度が上昇する。また、ヨウ素濃度が高くなると光の吸収量が増す。本発明では、ヨウ化物イオン(I)源として使用しているヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムの濃度を高く設定することで、ヨウ素の添加量を抑制している。これにより、光の吸収量を抑制し、イオン伝導度を高くすることができる。
【0048】
このような観点から、ヨウ素の濃度は、0.1〜10モル/リットル(特に0.2〜5モル/リットル)程度が好ましい。
【0049】
また、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムの濃度は、3.0モル/リットル以上(特に5〜20モル/リットル)程度が好ましい。
【0050】
なお、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとしてヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムを使用する場合、電解液中に存在するヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムそれぞれの濃度は、同じでも異なっていてもよく、特に制限されないが、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムが1.5モル/リットル以上(特に2.5〜10モル/リットル)程度、ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムが1.5モル/リットル以上(特に2.5〜10モル/リットル)程度が好ましい。
【0051】
また、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムとヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムとを使用する場合、その濃度の比は、特に制限されないが、共に単独では3モル/リットル以上溶解するのが困難であるが、共存させることで極性溶媒に溶解しやすくなる点から、1:9〜9:1(モル比)、特に4:6〜6:4(モル比)が好ましい。
【0052】
ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムを上述のヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムと併用する場合には、合計で、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムの濃度が3モル/リットル以上(特に5〜20モル/リットル)程度となるように設定すればよい。ただし、高温耐久性を維持する観点から、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムの添加量は、0.1〜5モル/リットル(特に0.1〜3モル/リットル)程度とすることが好ましい。
【0053】
また、本発明では、ヨウ化物として、ヨウ化リチウムを含ませてもよい。
【0054】
このヨウ化リチウムを使用することによっても、ヨウ素との間で酸化還元対であるI/Iを形成することができるため、よりチタニア伝導帯を下げて色素からチタニアへの電子注入速度をさらに向上させることができる。また、チタニアに注入された電子の輸送をさらに促進させる効果もある。これにより、より短絡電流密度を向上させ、さらに光電変換効率を向上させることができる。
【0055】
なお、ヨウ化リチウムの添加により生成するリチウムイオンは、色素増感太陽電池のチタニア負極等に用いられる多孔質チタニアに吸着すると考えられる。
【0056】
また、色素増感太陽電池の開放電圧を充分に保持して充分な光電変換効率を得る観点から、ヨウ化物イオンIの主な供給源としてはヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとするのが好ましい。そのため、ヨウ化リチウムの濃度は、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムと比較して少なくすることが好ましい。
【0057】
この観点から、ヨウ化リチウムの濃度は、0.05〜0.3モル/リットル(特に0.1〜0.2モル/リットル)が好ましい。また、ヨウ化リチウムとヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとの濃度比は、1:30〜1:300(モル比)、特に1:60〜1:200(モル比)、さらに1:70〜1:120(モル比)が好ましい。
【0058】
<溶媒>
本発明の電解液は、溶媒として、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドを使用する。ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドの融点は−14℃、25℃における粘度は19mPa・sであり、疎水性である。
【0059】
この1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドの25℃における粘度は、1−エチル−3-メチルイミダゾリウムカチオンを有するイオン液体の中では低い部類で、従来から使用されている、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート(23.1mPa・S;融点は−50℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(28mPa・S;融点は−16℃)等よりも低い値であり、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I)が拡散しやすいという面で有利である。
【0060】
また、1−メチル−3−イミダゾリウムテトラシアノボレートは、テトラシアノボレートアニオン(B(CN))が、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I)の移動を阻害し、短絡電流密度(Jsc)が低下するため、変換効率及び高温耐久性が悪化する。
【0061】
また、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドは疎水性を有することから、水分進入による性能劣化を抑制することができる。
【0062】
なお、溶媒としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドと有機溶媒又は他のイオン液体との混合溶媒とすることも考えられる。しかし、有機溶媒との混合溶媒とすると、高沸点の有機溶媒でも蒸気圧を有しているため、高温での封止維持が困難で、耐久性が欠如する。また、他のイオン液体との混合溶媒とすると、カチオン及びアニオンの種類を増加させることになり、色素増感太陽電池の安定性に問題が生じる。したがって、本発明では、溶媒としては、イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドを単独で使用することが好ましい。
【0063】
<その他の成分>
本発明の電解液には、上記した成分以外にも、塩基性物質、例えば、4−ターシャルブチルピリジン、N−メチルベンズイミダゾール等を含有させることもできる。これらの塩基性物質を含有させれば、光電変換素子を作製した際に、チタニア電極のチタニア表面に吸着し、チタニア電極からの逆電子移動を防ぐことができ、開放電圧をより向上させるとともに、光電変換効率をより向上させることができる。
【0064】
また、チタニアに吸着した増感色素を脱離させないため、塩基性物質の添加量は、0.01〜1モル/リットル程度とすることが好ましい。特に、金属錯体色素を使用する場合は、0.1〜1.0モル/リットル程度、特に0.3〜0.8モル/リットル程度が好ましい。また、有機色素を使用する場合は、0.01〜0.1モル/リットル程度、特に0.03〜0.08モル/リットル程度が好ましい。
【0065】
他にも、本発明の電解液には、上述のヨウ化リチウムと同様に、チタニアの伝導帯を下げて色素からチタニアへの電子注入速度を向上させる効果のあるグアニジンチオシアネート等も添加することができる。この場合、これらの添加量は、0.1〜1.0モル/リットル程度とすればよい。
【0066】
なお、本発明の電解液においては、上記成分以外にも、粘度調整剤(ポリエチレングリコール等)や脱水剤(ゼオライト、シリカゲル等)等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含ませることができる。
【0067】
(3)第3の態様
本発明の第3の態様における電解液は、
ヨウ素、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムを含むヨウ化物及び溶媒を含有する電解液であって、
前記ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムは、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムを含み、
前記溶媒は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドである。
【0068】
<電解質>
本発明では、電解質として、ヨウ素と、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとしてヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムを含む。
【0069】
ヨウ素とヨウ化物とは、本発明の電解液中で酸化還元対であるI/Iを形成する(I存在下にIを添加することでIが生成する)。
【0070】
その結果、チタニア伝導帯を下げて色素からチタニアへの電子注入速度を向上させる効果がある。また、チタニアに注入された電子の輸送を促進させる効果もある。これにより、短絡電流密度を向上させ、結果的に光電変換効率を向上させることができる。
【0071】
本発明では、上述のとおり、溶媒として、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドを使用している。1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドは、高い極性を有しつつも疎水性を有し、水分進入による劣化を抑制するはたらきがある。また、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドは、25℃における粘度が19mPa・s程度であり、有機溶媒より粘度が高い(例えば、25℃における粘度が0.378mPa・sであるアセトニトリルの約50倍である)。このため、溶媒として有機溶媒を用いた電解液よりも、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I)の移動速度は遅くなる。このため、溶媒として有機溶媒を用いた電解液と比較し、ヨウ素及びヨウ化物の濃度を高めに設定することが好ましい。
【0072】
しかしながら、これら電解質の濃度を単に高くすると、電解液の粘度が上昇する。また、ヨウ素濃度が高くなると光の吸収量が増す。本発明では、ヨウ化物イオン(I)源として使用しているヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムの濃度を高く設定し、ヨウ素の添加量を抑制すれば、光の吸収量をより抑制し、イオン伝導度をより高くすることができる。
【0073】
このような観点から、ヨウ素の濃度は、0.1〜0.6モル/リットル(特に0.2〜0.5モル/リットル)程度が好ましい。
【0074】
また、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウム(特にヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム)の濃度は、3.0モル/リットル以上(特に5〜20モル/リットル)程度が好ましい。
【0075】
なお、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムは常温で液体であるため、そのまま電解液中に多量に含ませることができる。
【0076】
本発明では、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとしては、上記のヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム以外にも、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム、ヨウ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム。好ましくはヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及びヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム)の他のヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムを含ませてもよい。
【0077】
ただし、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムとヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウムとは常温で固体であり、ともに単独では、ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドに対して常温で3M程度までしか溶解しない。しかし、70℃程度に加熱すれば、3Mより多くの量(例えば30M程度)でも溶解させることができる。また、その後、常温に冷却しても析出することなく、多量に溶解させ続けることが可能である。
【0078】
この際、他のヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムの濃度は、上記のヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムと合計で、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムの濃度が3モル/リットル以上(特に5〜20モル/リットル)程度となるように設定すればよい。ただし、高温耐久性を維持する観点から、他のヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムの添加量は、0.1〜5モル/リットル(特にに0.1〜3モル/リットル)程度とすることが好ましい。
【0079】
また、本発明では、ヨウ化物として、ヨウ化リチウムを含ませてもよい。
【0080】
このヨウ化リチウムを使用することによっても、ヨウ素との間で酸化還元対であるI/Iを形成することができるため、よりチタニア伝導帯を下げて色素からチタニアへの電子注入速度をさらに向上させることができる。また、チタニアに注入された電子の輸送をさらに促進させる効果もある。これにより、より短絡電流密度を向上させ、さらに光電変換効率を向上させることができる。
【0081】
なお、ヨウ化リチウムの添加により生成するリチウムイオンは、色素増感太陽電池のチタニア負極等に用いられる多孔質チタニアに吸着すると考えられる。
【0082】
また、色素増感太陽電池の開放電圧を充分に保持して充分な光電変換効率を得る観点から、ヨウ化物イオンIの主な供給源としてはヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウム(特にヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム)とするのが好ましい。そのため、ヨウ化リチウムの濃度は、ヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウム(特にヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム)と比較して少なくすることが好ましい。
【0083】
この観点から、ヨウ化リチウムの濃度は、0.05〜0.3モル/リットル(特に0.1〜0.2モル/リットル)が好ましい。また、ヨウ化リチウムとヨウ化1,3−ジアルキルイミダゾリウムとの濃度比は、1:30〜1:300(モル比)、特に1:60〜1:200(モル比)、さらに1:70〜1:120(モル比)が好ましい。
【0084】
<溶媒>
本発明の電解液は、溶媒として、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドを使用する。ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドの融点は−14℃、25℃における粘度は19mPa・sであり、疎水性である。
【0085】
この1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドの25℃における粘度は、1−エチル−3-メチルイミダゾリウムカチオンを有するイオン液体の中では低い部類で、従来から使用されている、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート(23.1mPa・S;融点は−50℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(28mPa・S;融点は−16℃)等よりも低い値であり、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I)が拡散しやすいという面で有利である。
【0086】
また、1−メチル−3−イミダゾリウムテトラシアノボレートは、テトラシアノボレートアニオン(B(CN))が、ヨウ化物イオン(I)及び三ヨウ化物イオン(I)の移動を阻害し、短絡電流密度(Jsc)が低下するため、変換効率及び高温耐久性が悪化する。
【0087】
また、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミドは疎水性を有することから、水分進入による性能劣化を抑制することができる。
【0088】
なお、溶媒としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドと有機溶媒又は他のイオン液体との混合溶媒とすることも考えられる。しかし、有機溶媒との混合溶媒とすると、高沸点の有機溶媒でも蒸気圧を有しているため、高温での封止維持が困難で、耐久性が欠如する。また、他のイオン液体との混合溶媒とすると、カチオン及びアニオンの種類を増加させることになり、色素増感太陽電池の安定性に問題が生じる。したがって、本発明では、溶媒としては、イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビススルホニルイミドを単独で使用することが好ましい。
【0089】
<その他の成分>
本発明の電解液には、上記した成分以外にも、塩基性物質、例えば、4−ターシャルブチルピリジン、N−メチルベンズイミダゾール等を含有させることもできる。これらの塩基性物質を含有させれば、光電変換素子を作製した際に、チタニア電極のチタニア表面に吸着し、チタニア電極からの逆電子移動を防ぐことができ、開放電圧をより向上させるとともに、光電変換効率をより向上させることができる。
【0090】
また、チタニアに吸着した増感色素を脱離させないため、塩基性物質の添加量は、0.01〜1モル/リットル程度とすることが好ましい。特に、金属錯体色素を使用する場合は、0.1〜1.0モル/リットル程度、特に0.3〜0.8モル/リットル程度が好ましい。また、有機色素を使用する場合は、0.01〜0.1モル/リットル程度、特に0.03〜0.08モル/リットル程度が好ましい。
【0091】
他にも、本発明の電解液には、上述のヨウ化リチウムと同様に、チタニアの伝導帯を下げて色素からチタニアへの電子注入速度を向上させる効果のあるグアニジンチオシアネート等も添加することができる。この場合、これらの添加量は、0.1〜1.0モル/リットル程度とすればよい。
【0092】
なお、本発明の電解液においては、上記成分以外にも、粘度調整剤(ポリエチレングリコール等)や脱水剤(ゼオライト、シリカゲル等)等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含ませることができる。
【0093】
2.光電変換素子及び色素増感太陽電池
本発明の光電変換素子は、チタニア電極の多孔質チタニア膜の上に対向電極(対極)を形成し、これら電極間を本発明の電解液で満たすことにより得られる。
【0094】
上記チタニア電極は、例えば、樹脂基板又はガラス基板上に多孔質チタニア膜を形成してなる。
【0095】
多孔質チタニア膜に使用されるチタニアとしては、例えば、公知又は市販のチタニアナノ粒子;公知又は市販のチタニアナノチューブ;チタニアナノロッド;チタニアナノファイバー;チタニアナノ粒子のチューブ状集合体(特開2010−24132号公報等)等を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。また、「チタニア」とは、二酸化チタンのみを指すものではなく、三酸化二チタン(Ti);一酸化チタン(TiO);Ti、Ti等に代表される二酸化チタンから酸素欠損した組成のもの等も含むものである。また、末端OH基に代表されるように一部酸化チタンの合成に起因するTi−O−Ti以外の基を含んでいても良い。
【0096】
樹脂基板としては、導電性の樹脂基板であれば特に制限されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート樹脂基板(PEN樹脂基板)、ポリエチレンテレフタレート樹脂基板(PET樹脂基板)等のポリエステル;ポリアミド;ポリスルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンサルファイド;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリメチルメタクリレート;ポリスチレン;トリ酢酸セルロース;ポリメチルペンテン等が挙げられる。
【0097】
ガラス基板としても特に制限はなく、公知又は市販のものを使用すればよく、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等のいずれでもよい。
【0098】
この樹脂基板又はガラス基板としては、板厚が0.05〜10mm程度のものを使用すればよい。
【0099】
本発明では、多孔質チタニア膜は、樹脂基板又はガラス基板の表面上に直接形成されていてもよいが、透明導電膜を介して形成されていてもよい。
【0100】
透明導電膜としては、例えば、スズドープ酸化インジウム膜(ITO膜)、フッ素ドープ酸化スズ膜(FTO膜)、アンチモンドープ酸化スズ膜(ATO膜)アルミニウムドープ酸化亜鉛膜(AZO膜)、ガリウムドープ酸化亜鉛膜(GZO膜)等が挙げられる。これらの透明導電膜を介することで、発生した電流を外部にとりだすことが容易となる。これらの透明導電膜の膜厚は、0.02〜10μm程度とするのが好ましい。
【0101】
樹脂基板又はガラス基板上に多孔質チタニア被膜を形成する方法としては、特に制限されるわけではないが、例えば、上述したチタニアを含む被膜形成用組成物を作製し、樹脂基板又はガラス基板上に当該被膜形成用組成物を塗布及び乾燥させればよい。また、乾燥させた後、得られた被膜に、必要に応じて加熱処理を施して焼成させてもよい。
【0102】
塗布方法は特に制限はなく、スクリーン印刷、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、スキージ法等の常法を採用すればよい。
【0103】
また、乾燥条件及び焼成条件は特に制限はなく、乾燥温度を60〜250℃程度、焼成温度を250〜800℃程度とすればよい。
【0104】
多孔質チタニア膜の作製に当たっては、得られる膜の膜厚が0.5〜50μm程度となるように塗布すればよい。
【0105】
対極は、導電性材料からなる単層構造でもよいし、導電層と基板とから構成されていてもよい。基板としては、特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、樹脂でも良い。かかる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテン等が挙げられる。また、電荷輸送層上に直接導電性材料を塗布、メッキ又は蒸着(PVD、CVD)して対極を形成しても良い。
【0106】
導電性材料としては、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀、タングステン等の金属や、炭素材料、導電性有機物等の比抵抗の小さな材料が用いられる。
【0107】
また、対極の抵抗を下げる目的で金属リードを用いても良い。金属リードは白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀、タングステン等の金属からなるのが好ましく、アルミニウム又は銀からなるのが特に好ましい。
【0108】
本発明では、対極を形成する前に、前記チタニア電極の光吸収効率を向上すること等を目的として、多孔質チタニア膜に色素を担持(吸着、含有など)させることが好ましい。
【0109】
色素は、可視域や近赤外域に吸収特性を有し、チタニアの光吸収効率を向上(増感)させる色素であれば特に限定されないが、金属錯体色素、有機色素、天然色素、半導体等が好ましい。また、多孔質チタニア被膜への吸着性を付与するために、色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ホスホニル基、カルボキシルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホニルアルキル基、ホスホニルアルキル基等の官能基を有するものが好適に用いられる。
【0110】
金属錯体色素としては、例えば、ルテニウム、オスミウム、鉄、コバルト、亜鉛、水銀の錯体(例えば、メリクルクロム等)や、金属ポルフィリン、金属フタロシアニン、クロロフィル等を用いることができる。また、有機色素としては、例えば、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、金属フリーフタロシアニン系色素、ペリレン系色素、クマリン系色素、ポリエン系色素、インドリン系色素、カリバゾール系色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。色素として用いることができる半導体としては、i型の光吸収係数が大きなアモルファス半導体や直接遷移型半導体、量子サイズ効果を示し、可視光を効率よく吸収する微粒子半導体が好ましい。通常、各種の半導体や金属錯体色素や有機色素の一種、又は光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合することができる。また、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように、混合する色素とその割合を選ぶことができる。
【0111】
色素を多孔質チタニア膜に吸着させる方法としては、例えば、溶媒に色素を溶解させた溶液を、多孔質チタニア膜上にスプレーコートやスピンコート等により塗布した後、乾燥する方法により形成することができる。この場合、適当な温度に基板を加熱しても良い。また、多孔質チタニア膜を溶液に浸漬して吸着させる方法を用いることもできる。浸漬する時間は色素が充分に吸着すれば特に制限されることはないが、好ましくは10分〜30時間、より好ましくは1〜20時間である。また、必要に応じて浸漬する際に溶媒や基板を加熱しても良い。溶液にする場合の色素の濃度としては、0.01〜100mmol/L、好ましくは0.1〜10mmol/L程度である。
【0112】
色素溶液に用いる溶媒は特に制限されるものではないが、水及び有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、2−ブタノン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0113】
色素間の凝集等の相互作用を低減するために、界面活性剤としての性質を持つ無色の化合物を色素吸着液に添加し、多孔質酸化チタン膜に共吸着させてもよい。このような無色の化合物の例としては、カルボキシル基やスルホ基を有するコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸等のステロイド化合物やスルホン酸塩類等が挙げられる。
【0114】
未吸着の色素は、吸着工程後、速やかに洗浄により除去するのが好ましい。洗浄は湿式洗浄槽中でアセトニトリル、アルコール系溶媒等を用いて行うのが好ましい。
【0115】
色素を吸着させた後、アミン類、4級アンモニウム塩、少なくとも1つのウレイド基を有するウレイド化合物、少なくとも1つのシリル基を有するシリル化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を用いて、多孔質酸化チタン膜の表面を処理してもよい。好ましいアミン類の例としては、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。好ましい4級アンモニウム塩の例としては、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド等が挙げられる。これらは有機溶媒に溶解して用いてもよく、液体の場合はそのまま用いてもよい。
【0116】
本発明の色素増感太陽電池は、本発明の光電変換素子をモジュール化するとともに、所定の電気配線を設けることによって製造することができる。
【実施例】
【0117】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0118】
[チタニアを含む膜形成用組成物の作製]
チタンイソプロポキシド0.05molに酢酸0.05molを加えて15分撹拌した。蒸留水73mlを加えて1時間撹拌した。さらに濃硝酸1mlを加えて80℃で75分間加熱及び撹拌を行った。蒸留水を加えて全量を93mlとしてチタニアゾル水溶液を得た。このチタニアゾル水溶液40mLを内容積125mlの圧力反応容器に入れて250℃で12時間加熱した。得られた白色沈殿物(チタニア)をエタノールで溶媒置換した後、100mlエタノール分散液とした。これにα−テルピネオール7gとエチルセルロースの10重量%エタノール溶液8.65gを加えて撹拌した。十分に撹拌した後、エバポレータを用いてエタノールを留去してチタニアを含む膜形成用組成物10gを得た。
【0119】
[チタニア負極の作製]
フッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜付きガラス(日本板硝子(株)製;4mm厚)にポリエステル製スクリーン印刷版(225メッシュ)を用いて、上記で作製したチタニアを含む膜形成用組成物を、5ミリ角の大きさに膜厚14μmになるまで繰り返しスクリーン印刷を行った。さらに電気炉に入れて500℃にて1時間焼成を行った。
【0120】
[増感色素の固定]
ダイソル社製のN−719色素をターシャルブチルアルコールとアセトニトリルの容量比1:1の混合溶媒に0.5ミリモル/リットルの濃度で溶解したものに上記500℃で焼成したチタニア負極を25℃で20時間浸漬して色素を固定した。
【0121】
[小型セルの組み立て]
色素を固定した上記チタニア負極に、スペーサー兼シール剤として厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルム(デュポン社製バイネル)を用いて、白金をスパッタしたフッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜付きガラス(ピルキントン社製;2.2mm厚)を貼り合わせた。その後、後述する実施例1〜7及び比較例1〜4の電解液を注入して封止を行い、光電変換素子を作製した。
【0122】
[小型セルの性能評価]
作製した小型セルに(株)三永電機製作所製のソーラーシミュレータでAM1.5(JISC8912Aランク)の条件下の100mW/cmの強度の光を照射して上記小型セルの光電変換特性(光電変換効率;η(%))を25℃にて評価した。
【0123】
[小型セルの85℃耐久評価]
作製した小型セルを85℃の乾燥炉に入れて、1000時間保持した。1000時間保持した後、上記の性能評価と同様に、小型セルの光電変換特性(光電変換効率の高温での維持率;(高温保持後の光電変換効率)/(高温保持前の光電変換効率)×100(%))を評価した。
【0124】
実施例1
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
4−ターシャルブチルピリジン(TBP):0.5M
ヨウ化1−メチル−3−プロピルミダゾリウム(MPImI):4.0M
溶媒は1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド(EMIm−FSI)を使用した。
【0125】
比較例1
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
4−ターシャルブチルピリジン(TBP):0.5M
ヨウ化1−メチル−3−プロピルミダゾリウム(MPImI):4.0M
溶媒は1−メチル−3−エチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EMIm−TCB)を使用した。
【0126】
比較例2
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
4−ターシャルブチルピリジン(TBP):0.5M
ヨウ化1−メチル−3−プロピルミダゾリウム(MPImI):4.0M
溶媒は1−メチル−3−エチルイミダゾリウムジシアノアミド(EMIm−DCA)を使用した。
【0127】
比較例3
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
4−ターシャルブチルピリジン(TBP):0.5M
ヨウ化1−メチル−3−プロピルミダゾリウム(MPImI):4.0M
溶媒は1−メチル−3−エチルイミダゾリウムチオシアネート(EMIm−SCN)を使用した。
【0128】
実施例1及び比較例1〜3の結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
比較例4
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
4−ターシャルブチルピリジン(TBP):0.5M
ヨウ化1−メチル−3−プロピルミダゾリウム(MPImI):1.8M
溶媒は1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド(EMIm−FSI)を使用した。
【0131】
実施例2及び比較例4の結果を表2に示す。
【0132】
【表2】
【0133】
実施例2
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
4−ターシャルブチルピリジン(TBP):0.5M
ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMImI):2.0M
ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム(DMImI):2.0M
溶媒は1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド(EMIm−FSI)を使用した。
【0134】
実施例3
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
4−ターシャルブチルピリジン(TBP):0.5M
ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMImI):3.0M
ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム(DMImI):3.0M
溶媒は1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド(EMIm−FSI)を使用した。
【0135】
実施例4
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
4−ターシャルブチルピリジン(TBP):0.5M
ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMImI):2.0M
ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム(DMImI):2.0M
ヨウ化1−メチル−3−プロピルミダゾリウム(MPImI):1.5M
溶媒は1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド(EMIm−FSI)を使用した。
【0136】
実施例5
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
4−ターシャルブチルピリジン(TBP):0.5M
ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMImI):5.0M
ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム(DMImI):5.0M
溶媒は1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド(EMIm−FSI)を使用した。
【0137】
実施例6
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。
ヨウ素:0.4M
ヨウ化リチウム:0.1M
4−ターシャルブチルピリジン(TBP):0.5M
ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMImI):5.0M
ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム(DMImI):5.0M
溶媒は1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド(EMIm−FSI)を使用した。
【0138】
実施例7
電解液の組成を以下のようにして、小型セルの評価を行った。
ヨウ素:0.2M
ヨウ化リチウム:0.1M
4−ターシャルブチルピリジン(TBP):0.5M
ヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMImI):10.0M
ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム(DMImI):10.0M
溶媒は1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド(EMIm−FSI)を使用した。
【0139】
実施例1〜7の結果を表3に示す。
【0140】
【表3】