(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板用の収納ケースと、この収納ケースに嵌め合わされるカバーケースとを備え、これら収納ケースとカバーケースのうち、少なくとも収納ケースを、熱可塑性樹脂100質量部に極細長導電繊維を2〜15質量部添加した成形材料により成形した基板収納容器であって、
収納ケースは、周面にカバーケース用の被施錠部を備えた台座と、この台座よりも狭い幅に形成され、基板を起立させて収納する略筒形の収納部とを含み、台座を下部が開口した断面略U字形に形成し、この台座上に収納部を一体的に設けて台座の上部と収納部の両側外周面との間に段差を形成するとともに、台座と収納部の内部との間に仕切り壁を形成し、収納部の一対の対向面に基板用の複数の支持溝をそれぞれ形成し、
カバーケースは、収納部の開口した上部を覆う天板と、この天板の周縁部から下方に伸びて収納部の外周面に対向する周壁とを含み、この周壁の一部の端を台座と収納部との段差に対向可能とし、周壁の残部を台座の周面に対向可能に伸長するとともに、この周壁の残部には、台座の被施錠部に干渉する施錠部を形成したことを特徴とする基板収納容器。
カバーケースを平面視で略長方形に形成してその周壁の一部を対向する一対の長壁とし、カバーケースの周壁の残部を短壁として一対の長壁の両端部間にそれぞれ架設し、カバーケースの天板の内面に、基板を保持する弾性片を設けるとともに、天板の外面に、積層用の突起を形成し、カバーケースの短壁には、台座の被施錠部に対向可能な施錠部を形成し、この短壁の両側部に切り欠き溝をそれぞれ形成することにより、短壁に可撓性を付与した請求項3記載の基板収納容器。
収納ケースとカバーケースのうち、少なくとも収納ケースに設けられ、台座の長壁外面の長手方向に複数の凹部が配列される位置決め搬送手段を含んでなる請求項3又は4記載の基板収納容器。
【背景技術】
【0002】
半導体業界では各種サイズの半導体ウェーハが取り扱われている。この半導体ウェーハは、φ200mmサイズも少なからず扱われているが、現在では生産性を向上させる観点から、大口径の重いφ300mmサイズが主流として扱われている。
【0003】
φ200mmサイズの半導体ウェーハを収納する基板収納容器は、図示しない複数枚の半導体ウェーハを水平方向に並べて整列収納するトップオープンボックスタイプの収納ケースと、この収納ケースの開口した上面を開閉する着脱自在のカバーケースとを備え、手動操作を前提に構成されている。収納ケースの上部周縁とカバーケースの周縁部とには、凹部と凸部とが嵌合する係止機構が配設され、収納ケース内の相対向する対向面には、半導体ウェーハを支持する凸形の仕切り部が複数配列されており、収納ケースの外面が平坦面に成形されている(特許文献1参照)。
【0004】
これに対し、φ300mmサイズの半導体ウェーハを収納する基板収納容器は、図示しない複数枚の半導体ウェーハを上下方向に並べて整列収納する大型のフロントオープンボックスタイプの収納ケースと、この収納ケースの開口した正面を着脱自在に開閉するカバー体とを備え、このカバー体には、半導体加工装置に併設された蓋体開閉装置に自動操作される施錠機構が内蔵されている(特許文献2参照)。
【0005】
ところで近年、製造コストの増大や資金調達の困難性等に鑑み、集積回路ICを一つ作るのに十分な小口径の0.5インチウェーハを使用してICを1チップずつ作る構想が提唱され、注目されている。この構想によれば、半導体加工装置が小型になるので、工場を縮小してコストや無駄を省くことができ、しかも、研究・開発・生産を一体化することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、φ200mmサイズの半導体ウェーハを収納するタイプの場合、収納ケースの開口した上部周縁に係止機構が配設されているので、カバーケースの取り付け取り外し時の接触でパーティクルが収納ケースの開口上部付近で発生し、このパーティクルが半導体ウェーハに付着して汚染を招くおそれがある。
【0008】
このような懸念を払拭する手法としては、基板収納容器を導電材料で形成して基板収納容器に導電性を付与し、パーティクルの付着を防止する方法が提案されている。しかしながら、導電材料としてカーボンブラックを利用し、基板収納容器に導電性を確保しようとすると、導電性は確保することができるものの、カーボンブラックの脱離や色移り(他の部品に押し付けると、黒い跡が残る現象)という問題が新たに生じることとなる。
【0009】
また、φ300mmサイズの半導体ウェーハを収納するタイプの場合、半導体ウェーハの質量を考慮して自動操作を前提に構成されているので、自動機での取り扱いが容易であり、同一部品を大量生産する場合には、効率良く使用することができる。しかし、直径0.5インチの半導体ウェーハを使用して少量生産したり、短納期の試作品を収納等する場合、これらを考慮して構成されていないので、必ずしも効率的に使用することができないという問題がある。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたもので、カバーケースの取り付け取り外し時に塵埃が発生して基板を汚染するのを抑制し、少量生産したり、短納期の試作品を収納等する場合にも効率的に使用することのできる基板収納容器を提供することを目的としている。また、例え導電性を付与しても、導電材料の脱離や色移りという問題を排除できる基板収納容器の提供を他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては上記課題を解決するため、基板用の収納ケースと、この収納ケースに嵌め合わされるカバーケースとを備え、これら収納ケースとカバーケースのうち、少なくとも収納ケースを、熱可塑性樹脂100質量部に極細長導電繊維を2〜15質量部添加した成形材料により成形したものであって、
収納ケースは、周面にカバーケース用の被施錠部を備えた台座と、この台座よりも狭い幅に形成され、基板を起立させて収納する略筒形の収納部とを含み、台座を下部が開口した断面略U字形に形成し、この台座上に収納部を一体的に設けて台座の上部と収納部の両側外周面との間に段差を形成するとともに、
台座と収納部の内部との間に仕切り壁を形成し、収納部の一対の対向面に基板用の複数の支持溝をそれぞれ形成し、
カバーケースは、収納部の開口した上部を覆う天板と、この天板の周縁部から下方に伸びて収納部の外周面に対向する周壁とを含み、この周壁の一部の端を台座と収納部との段差に対向可能とし、周壁の残部を台座の周面に対向可能に伸長するとともに、この周壁の残部には、台座の被施錠部に干渉する施錠部を形成したことを特徴としている。
【0012】
なお、極細長導電繊維を、直径5〜100nmのカーボンナノチューブとしてその長さを0.1〜100μmとすることができる。
また、収納ケースを平面視で略長方形に形成し、
台座と収納部の内部との間の仕切り壁に、基板用の接触回避部と位置規制部とをそれぞれ形成し、台座の短壁には、カバーケース用の被施錠部を形成し、収納部における一対の長壁の内面長手方向に複数の支持溝をそれぞれ所定のピッチで配列形成することができる。
【0013】
また、収納部の長壁内面を開口上部から仕切り壁方向に向かうにしたがい徐々に狭まるよう傾斜させ、支持溝を開口上部から仕切り壁方向に向かうにしたがい徐々に狭めることができる。
また、支持溝を、仕切り壁から収納部の開口上部方向に向かうにしたがい徐々に広がる縦長の断面略U字形あるいは略V字形に形成することが可能である。
【0014】
また、収納部の各長壁の傾斜する内面を、開口上部側に位置する傾斜角の大きい大傾斜領域と、この大傾斜領域の下方に位置する傾斜角の小さい小傾斜領域とに二分し、大傾斜領域に断面略Y字形の支持溝を、小傾斜領域には断面略U字形あるいは略V字形の支持溝をそれぞれ形成し、これら大傾斜領域の支持溝と小傾斜領域の支持溝とを連通させることが可能である。
【0015】
また、カバーケースを平面視で略長方形に形成してその周壁の一部を対向する一対の長壁とし、カバーケースの周壁の残部を短壁として一対の長壁の両端部間にそれぞれ架設し、カバーケースの天板の内面に、基板を保持する弾性片を設けるとともに、天板の外面に、積層用の突起を形成し、カバーケースの短壁には、台座の被施錠部に対向可能な施錠部を形成し、この短壁の両側部に切り欠き溝をそれぞれ形成することにより、短壁に可撓性を付与することも可能である。
【0016】
また、収納ケースとカバーケースのうち、少なくとも収納ケースに設けられ、台座の長壁外面の長手方向に複数の凹部が配列される位置決め搬送手段を含むことが好ましい。この場合、位置決め搬送手段を、台座の各長壁外面の長手方向に連続して配列された複数の噛合溝により形成し、この複数の噛合溝の間に凸部である噛合歯を形成することができる。
【0017】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも小口径の半導体ウェーハ(例えば、0.5インチやφ100mmサイズ等)、ガラスウェーハ、液晶ガラスが含まれる。また、収納ケースとカバーケースとには、極細長導電繊維である極細長金属繊維、金属酸化物ナノチューブ、極細長金属酸化物繊維等の添加により、導電性をそれぞれ付与することができる。収納ケースの台座の短壁には、カバーケースの短壁を隙間を介して挟み持つ複数の案内規制片を形成することができる。この台座の被施錠部は、必要数の凹部でも良いし、凸部でも良い。同様にカバーケースの施錠部は、必要数の凸部でも良いし、凹部でも良い。
【0018】
位置決め搬送手段は、必要に応じ、収納ケースとカバーケースのいずれにも設けることが可能である。この位置決め搬送手段は、台座の各長壁外面の長手方向に所定の間隔で一列に配列された複数の貫通穴により形成することができる。また、台座の各長壁外面の長手方向に所定の間隔で一列に配列された複数の凹み穴により形成し、隣接する凹み穴の間に凸部である支柱を形成することも可能である。
【0019】
本発明によれば、基板収納容器に基板を収納して保管する場合には、収納ケースの収納部に基板を支持溝を介して収納し、収納ケースにカバーケースを嵌め入れる。すると、収納ケースの台座の被施部とカバーケースの施錠部とが干渉してカバーケースの取り外しを規制し、基板を外部から有効に保護することができるので、基板収納容器に基板を収納して保管することができる。
【0020】
これに対し、基板収納容器から基板を取り出したい場合には、カバーケースの周壁残部を撓ませ、カバーケースを引き上げる。すると、収納ケースの台座の被施錠部とカバーケースの施錠部との干渉が解除されるので、収納ケースからカバーケースを取り外し、収納ケースから基板を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カバーケースの取り付け取り外し時に塵埃が発生して基板を汚染するのを抑制し、しかも、少量生産したり、短納期の試作品を収納等する場合にも効率的に使用することができるという効果がある。また、熱可塑性樹脂に極細長導電繊維を添加した成形材料により、少なくとも収納ケースを成形して導電性を確保するので、収納ケースに基板を収納する際、パーティクル等が付着して汚染を招くのを抑制することができる。また、極細長導電繊維の添加により、導電材料の脱離や色移りという問題を防ぐこともできる。
また、台座と収納部との段差にカバーケースを対向接触させることができるので、気体等の流入を規制することが可能になる。さらに、台座の壁と収納部の壁とを仕切り壁が分離するので、例え台座に何らかの外力が作用して変形しても、収納部が同時に変形するのを抑制することができ、収納された基板の損傷や破損等を防ぐことが可能になる。
【0022】
また、請求項2記載の発明によれば、細長導電繊維を、直径5〜100nmのカーボンナノチューブとしてその長さを0.1〜100μmとすれば、カーボンの脱離や色移りを防ぐことができる。
【0023】
また、請求項3記載の発明によれば、収納ケースを単なる矩形ではなく、平面視で略長方形に形成するので、基板の収納枚数の
増大が期待できる。
【0024】
また、基板用の接触回避部が基板に接触せず、基板との接触面積を低減するので、基板との接触に伴う塵埃の発生量の抑制が期待できる。また、位置規制部が基板の挿入限度を規制するので、収納ケースの収納部内に基板を無理に挿入して損傷や破損等を招くのを防ぐことが可能になる。
【0025】
また、請求項4記載の発明によれば、天板の弾性片により、収納された基板を保持してその位置ずれやガタツキ等を防ぐことができる。また、カバーケースの積層用の突起を他の基板収納容器の台座内に嵌め合わせれば、複数の基板収納容器が上下方向に積層して一体化するので、複数の基板収納容器を省スペースで保管したり、効率的な輸送等が期待できる。また、カバーケースの切り欠き溝がカバーケースの短壁の変形を容易にするので、カバーケースの短壁を撓ませた取り付け取り外し作業の容易化が期待できる。
【0026】
また、請求項5記載の発明によれば、位置決め搬送手段の複数の凹部を使用すれば、少なくとも収納ケースを保持したり、所定のピッチで搬送することができる。さらに、例えば光電センサ等から凹部に照射した光線の反射の有無等により、搬送中の収納ケースを停止して位置決めすることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図6に示すように、直径0.5インチの半導体ウェーハWを複数枚収納する収納ケース1と、この収納ケース1に上方から着脱自在に嵌合されるカバーケース20と、これら収納ケース1とカバーケース20のうち少なくとも収納ケース1に設けられる外部の自動機40用の位置決め搬送手段30とを備え、0.5インチの半導体ウェーハWを使用する構想を前提に小型に構成される。
【0029】
収納ケース1とカバーケース20とは、所定の樹脂を含有する成形材料を使用してそれぞれ平面視で細長い略長方形に射出成形され、半導体ウェーハWの収納時にパーティクルが付着して汚染を招くのを防止する観点から、少なくともカバーケース20が取り外された後に工程内の搬送で使用される収納ケース1に導電性が付与される。
【0030】
成形材料に含まれる樹脂としては、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマーからなる熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。これらの樹脂には、導電材料として、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等が選択的に添加される。
【0031】
収納ケース1に導電性を付与する場合、熱可塑性樹脂に極細長導電繊維であるカーボンナノチューブを添加した成形材料により収納ケース1を成形することが最も好ましい。具体的には、ポリカーボネート100質量部に対して極細長導電繊維であるカーボンナノチューブを2〜15質量部、好ましくは3〜10質量部添加した成形材料で収納ケース1を射出成形するのが最適である。この場合に添加するカーボンナノチューブは、直径5〜100nm、好ましくは5〜10nm、長さ0.1〜100μm、望ましくは0.1〜10μmであるのが良い。
【0032】
こうすれば、収納ケース1に導電性を付与してその表面抵抗値を10
3〜10
9Ω/□に低減し、半導体ウェーハWにパーティクルが付着して汚染するのを未然に防止することができ、しかも、剛性に優れる収納ケース1を高精度の寸法で成形することもできる。また、カーボンナノチューブを3〜10質量部の範囲で添加すれば、上記効果の他、カーボンの脱離や色移りを防止することができる。
【0033】
収納ケース1は、
図1や
図2等に示すように、外周面にカバーケース20用の被施錠ピン8を複数備えた台座2と、この台座2よりも左右方向の幅が狭く形成されて複数枚の半導体ウェーハWを起立させて整列収納する角筒形の収納部3とを備え、台座2の上部に収納部3が一体的に設けられており、台座2の上部と収納部3の両側外周面との間に平坦な段差4が区画形成される。
【0034】
台座2は、他の基板収納容器との積層や成形時の変形防止の観点から、下部が開口した断面略U字形に形成され、収納部3の内部との間に平坦な仕切り壁5が水平に形成されるとともに、この仕切り壁5の中央部には、半導体ウェーハWの下部周縁に接触せずに接触面積を低減する半導体ウェーハW用の接触回避部6が断面略U字形に凹み形成されており、この接触回避部6の周縁における一対の角部が上方から挿入された半導体ウェーハWの挿入限度を規制する位置規制部7にそれぞれ形成される。仕切り壁5は、幅の異なる台座2と収納部3とを分割し、台座2の変形に伴い収納部3が変形するのを抑制する。
【0035】
台座2の相対向する左右一対の長壁の外面には位置決め搬送手段30が配設され、対向する前後一対の短壁の外面下部にはカバーケース20用の被施錠ピン8がそれぞれ水平に突出形成されており、各短壁の外面両側部には、カバーケース20用の一対の案内規制片9がそれぞれ上下方向に伸長形成される(
図3、
図4参照)。各被施錠ピン8は、例えば短い円柱形、角柱形、断面略矢印形等に形成される。また、各案内規制片9は、必要に応じ、板片や断面略L字形等に形成されたり、可撓性やバネ性が適宜付与される。
【0036】
収納部3は、半導体ウェーハWの収納枚数を増大させる観点から、上部が開口した細長いトップオープンボックスタイプに形成され、相対向する左右一対の長壁10の内面には、半導体ウェーハWの側部周縁を左右から挟んで垂直に支持する一対の支持溝11が対設されており、この左右一対の支持溝11が長壁10の長手方向に所定のピッチで配列形成される。
【0037】
収納部3の各長壁10は、
図2に示すように、仕切り壁5から収納部3の開口上部方向に向かうにしたがい、徐々に薄くなるよう内面が傾斜形成される。また、各支持溝11は、半導体ウェーハWの上方からの挿入を容易にする観点から、仕切り壁5から収納部3の開口上部方向に向かうにしたがい、僅かながら徐々に拡開する直線縦長のU字溝あるいはV溝に凹み形成される。
【0038】
このように収納部3は、長壁10の内面が開口上部から仕切り壁5方向に向かうにしたがい徐々に狭まるよう傾斜し、支持溝11が開口上部から仕切り壁5方向に向かうにしたがい徐々に狭まるので、半導体ウェーハWを上方から挿入して収納する作業が容易になり、しかも、挿入した半導体ウェーハWの適切な位置決め停止を図ることができる。
【0039】
カバーケース20は、
図1ないし
図4に示すように、収納ケース1の収納部3の開口した上部を覆う細長い平坦な天板21と、この天板21の周縁部から下方に伸長して収納部3の外周面に僅かな隙間をおいて対向する周壁24とを備えた断面略U字形に形成され、収納部3に遊嵌される。
【0040】
カバーケース20の天板21の内面中央部付近には、収納された半導体ウェーハWの上部周縁を保持してガタツキを防ぐ一対の弾性片22が配列形成され、天板21の外面には、積層用のスタッキングリブ23が細長い平面略枠形に形成されており、このスタッキングリブ23が他の基板収納容器の台座2内に嵌合するよう機能する。各弾性片22は、例えば先細りの板片に形成され、半導体ウェーハWの上部周縁を保持する先端部に保持溝が形成されたり、切り欠かれる。
【0041】
カバーケース20の周壁24は、間隔をおいて相対向する左右一対の長壁25と、この左右一対の長壁25の両端部間に架設されて相対向する前後一対の短壁26とを備え、収納部3との摺接に伴う抵抗を抑制するため、左右一対の長壁25の内面が収納部3の長壁10外面に僅かな隙間をおいて対向する。
【0042】
一対の長壁25は、その下端部が平坦に形成され、この平坦な下端部が台座2と収納部3との間の段差4に対向して接触する。また、一対の短壁26は、台座2の短壁に対向するようそれぞれ下方に伸長して一対の案内規制片9間に挿入可能とされ、断面略L字形に折曲形成されてその短い下端部が手動用の操作摘み27として利用される。
【0043】
各短壁26の下部には、台座2の被施錠ピン8に対向して嵌合する施錠孔28が矩形に穿孔され、各短壁26の両側部には、上下方向に指向する切り欠き溝29がそれぞれ切り欠かれる。この一対の切り欠き溝29は、カバーケース20の長壁25から短壁26を部分的に分離し、短壁26に可撓性を付与して操作片とする。
【0044】
位置決め搬送手段30は、
図1、
図3、
図4、
図5に示すように、確実な動力伝達と省スペース化を図る観点から、台座2の各長壁外面の長手方向に連続して配列形成された複数の噛合溝31からなり、この複数の噛合溝31の間が連続したラック形の噛合歯32に形成されており、外部の自動機40により位置決めされたり、搬送される。
【0045】
複数の噛合溝31は、外部の自動機40によりピッチ送りしながら半導体ウェーハWを取り扱うことができるよう、配列ピッチが収納ケース1における複数の支持溝11の配列ピッチと同一のピッチに整合される。各噛合溝31は、例えばV溝に凹み形成されて隣接する噛合歯32を尖った山形に形成し、位置決め機能と搬送機能とを発揮する。
【0046】
自動機40は、
図5に示すように、特に限定されるものではないが、例えば複数の噛合溝31と噛合歯32とに左右横方向からから接離可能な圧接ブロック42のラック部43をそれぞれ噛合させて少なくとも収納ケース1を自動的に位置決めする位置決め機構41と、複数の噛合溝31と噛合歯32とに左右横方向から歯車44をそれぞれ噛合させて少なくとも収納ケース1をその長手方向に自動的に搬送する搬送機構45とを備えて構成される。
【0047】
これら位置決め機構41と搬送機構45とは、必要に応じ、同一の半導体加工装置に付設されたり、異なる半導体加工装置に別々に設置される。搬送機構45の複数の歯車44は、必要に応じ、回転駆動されたり、上下動可能に構成されたり、固定されて位置決め機能を発揮する。
【0048】
上記構成において、基板収納容器に半導体ウェーハWを収納して保管する場合には、収納ケース1の収納部3に複数枚の半導体ウェーハWを支持溝11を介して整列収納し、収納ケース1にカバーケース20を上方から嵌合すれば良い。
【0049】
すると、台座2の一対の案内規制片9間にカバーケース20の短壁26が案内されて下降し、台座2の被施錠ピン8にカバーケース20の施錠孔28の周縁が干渉してカバーケース20の短壁26を外方向(台座2の短壁から離れる方向)に撓ませ、この撓んだ短壁26が元の状態に復帰して台座2の被施錠ピン8と施錠孔28とを嵌合するとともに、台座2と収納部3との段差4にカバーケース20の長壁25が対向接触して気体等の流入を規制する。
【0050】
この際、台座2の一対の案内規制片9にカバーケース20の短壁26を横方向から挟持させてカバーケース20を拘束すれば、例えカバーケース20に外力が作用しても、カバーケース20が簡単に外れるのを規制することができる。したがって、半導体ウェーハWを外部から有効に保護することができ、基板収納容器に半導体ウェーハWを収納して適切に保管することができる。
【0051】
このような基板収納容器を複数保管したり、輸送したい場合には、カバーケース20のスタッキングリブ23を他の基板収納容器の台座2内に密嵌すれば良い(
図6参照)。この密嵌作用により、複数の基板収納容器が上下方向にスタッキングされて一体化するので、複数の基板収納容器を省スペースで保管したり、まとめて効率的に輸送することができる。
【0052】
次に、基板収納容器から半導体ウェーハWを取り出したい場合には、カバーケース20の操作摘み27を摘み、カバーケース20の短壁26を操作片として外方向に撓ませ、カバーケース20を引き上げて取り外せば良い。
【0053】
すると、台座2の被施錠ピン8とカバーケース20の施錠孔28とが離れて嵌合が解除されるので、収納ケース1からカバーケース20を引き上げて取り外せば、半導体ウェーハWの取り出しが可能になる。この際、カバーケース20の切り欠き溝29が短壁26の変形を容易にするので、短壁26を操作片として変形させ、カバーケース20を簡単、かつ安定した状態で取り外すことができる。
【0054】
カバーケース20を取り外した後、収納ケース1を半導体チップの製造工程に自動機40で供給したい場合には、自動機40の搬送機構45に収納ケース1をセットすれば良い。すると、搬送機構45は、収納ケース1の左右に位置する複数の噛合溝31と噛合歯32とに歯車44をピニオンとしてそれぞれ噛合させ、この一対の歯車44を回転させることにより、収納ケース1を所定のピッチで半導体チップの製造工程に供給することとなる。
【0055】
この際、複数の支持溝11と噛合溝31の配列ピッチが同一ピッチに揃えられているので、収納ケース1をピッチ送りしながら半導体ウェーハWを取り出したり、収納ケース1に再び収納することができる。
【0056】
半導体チップの製造工程に供給される収納ケース1を位置決めしたい場合には、自動機40の位置決め機構41で位置決めすれば良い。この際、位置決め機構41は、収納ケース1の左右に位置する複数の噛合溝31と噛合歯32とに圧接ブロック42表面のラック部43をそれぞれ噛合させ、収納ケース1を左右から挟持して所定の箇所に正確に位置決めするので、選択した任意の半導体ウェーハWを確実に取り出したり、収納ケース1に再度収納することができる。
【0057】
上記構成によれば、収納ケース1の開口上部から下方に離れた台座2の周辺に被施錠ピン8と施錠孔28とが位置して施錠するので、カバーケース20の取り付け取り外し時にパーティクルが収納ケース1の開口上部付近で発生することが少なく、しかも、収納ケース1の収納部3にパーティクルが侵入することを防止することができる。したがって、パーティクルが収納された半導体ウェーハWに付着して汚染を招くおそれを有効に排除することができる。
【0058】
また、収納ケース1を成形する成形材料にカーボンブラックではなく、カーボンナノチューブを添加すれば、少ない添加量で十分な導電性を確保することができ、導電材料の脱離や色移りという問題も有効に排除することができる。また、従来においては、0.5インチの半導体ウェーハWを使用する構想を前提とした基板収納容器は存在しなかったが、係る構想を前提に基板収納容器を小型に構成しているので、直径0.5インチの半導体ウェーハWを使用して少量生産したり、短納期の試作品を収納等する場合にも効率的に使用することが可能になる。
【0059】
また、台座2の長壁と収納部3の長壁10とを仕切り壁5が分離するので、例え搬送機構45の複数の歯車44間に台座2が過剰に挟まれて変形しても、収納部3に外力が作用して同時に変形するのを防止することができ、収納された半導体ウェーハWの損傷や破損の防止が大いに期待できる。さらに、台座2の長壁外面を平坦にするのではなく、複数の噛合溝31と噛合歯32とを形成して凹凸に形成するので、収納ケース1を成形する場合、成形した収納ケース1が冷却段階で収縮して変形するのを有効に防止できる。
【0060】
次に、
図7は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、収納部3を形成する各長壁10の傾斜する内面を、開口上部側に位置する傾斜角の大きい大傾斜領域12と、この大傾斜領域12の下方に位置する傾斜角の小さい小傾斜領域13とに二分割するようにしている。
【0061】
大傾斜領域12には、大きく拡開する断面略Y字形の支持溝11Aが長手方向に複数配列形成され、小傾斜領域13には、断面略U字形又は略V字形の支持溝11が長手方向に複数配列形成されており、各支持溝11Aの下端部と各支持溝11の上端部とが揃えて連通される。各支持溝11Aの幅方向についても、上記と同様に大傾斜領域と小傾斜領域とに二分割し、開口上部方向に向かって拡開して形成することができる。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0062】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、上方に向かうにしたがい、小傾斜領域13よりも大傾斜領域12が大きく拡開して半導体ウェーハWを下方に誘導する機能を発揮するので、半導体ウェーハWを上方から挿入する作業がさらに容易化するのは明白である。また、支持溝11Aの幅方向についても、大傾斜領域と小傾斜領域とに二分割し、開口上部方向に拡開形成すれば、半導体ウェーハWの出し入れが容易になり、擦れに伴う半導体ウェーハWの汚染を防止することができるのは明らかである。
【0063】
次に、
図8は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、位置決め搬送手段30を、台座2の各長壁外面の長手方向に所定の間隔で一列に配列形成された複数の貫通穴33により形成するようにしている。
【0064】
複数の貫通穴33は、必要に応じ、配列ピッチが収納ケース1における複数の支持溝11の配列ピッチと同一のピッチに整合され、各貫通穴33が図示しない光電センサから光線が照射される円形に穿孔されており、位置決め機能と搬送機能とを発揮する。貫通穴33は、必要に応じ、矩形や多角形等に穿孔することができる。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0065】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、複数の貫通穴33を利用して収納ケース1を把持したり、ピッチ送りすることができるのは明らかである。また、光電センサから所定の貫通穴33に照射した光線の反射の有無により、収納ケース1の搬送を停止して位置決めすることができるのは明白である。
【0066】
次に、
図9は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、位置決め搬送手段30を、台座2の各長壁外面の長手方向に所定の間隔で一列に配列形成された複数の凹み穴34により形成し、隣接する凹み穴34と凹み穴34との間に、上下方向に指向する支柱35を一体形成するようにしている。
【0067】
複数の凹み穴34は、必要に応じ、配列ピッチが収納ケース1における複数の支持溝11の配列ピッチと同一のピッチに整合され、各凹み穴34が位置決め機能と搬送機能を発揮する。凹み穴34は、貫通穴33よりも大きい矩形に穿孔されて支柱35を相対的に突出させ、光電センサから光線が照射される。各支柱35は、断面矩形に形成されるが、断面略台形等でも良い。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0068】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、複数の凹み穴34や支柱35を用いて収納ケース1を保持したり、ピッチ送りすることができる。さらに、光電センサから所定の凹み穴34に照射した光線の反射の有無により、搬送中の収納ケース1を所定の支柱35の配列箇所で停止させ、位置決めすることも可能である。
【0069】
なお、上記実施形態では極細長導電繊維としてカーボンナノチューブを示したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、極細長導電繊維として、カーボンナノワイヤ、カーボンナノファイバ、グラファイトフブリル、白金や銀等の金属ナノチューブ、金属ナノワイヤ等からなる極細長金属繊維、酸化亜鉛等の金属酸化物ナノチューブ、金属酸化物ナノワイヤ等の極細長金属酸化物繊維等でも良い。これらは、例えば直径が1〜100nm、長さが0.1〜100μmに形成され、長さが太さの100倍程度かそれ以上であることが好ましい。
【0070】
また、上記実施形態では台座2と収納部3との間に段差4を単に形成したが、何らこれに限定されるものではなく、例えば段差4上に弾性のシールガスケットを積層し、このシールガスケットにカバーケース20の長壁25下端部を圧接してシールするようにしても良い。また、カバーケース20の天板21内面に一対の弾性片22を配列形成したが、これに限定されるものではない。例えば、必要数の弾性片22を着脱自在に取り付けても良いし、単一の弾性片22を一体成しても良い。
【0071】
また、台座2の一方の短壁外面に被施錠ピン8を突出形成し、この一方の短壁外面に案内規制片9を伸長形成することもできる。また、カバーケース20の一方の短壁26に施錠孔28を穿孔し、この一方の短壁26に切り欠き溝29を切り欠くこともできる。また、台座2の短壁に施錠穴を穿孔し、カバーケース20の短壁26に被施錠ピン8を形成することもできる。さらに、位置決め搬送手段30として、台座2に複数の噛合溝31等を形成する他、カバーケース20の各長壁25の外面長手方向に複数の噛合溝31等を配列形成することも可能である。