(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
<A.光放射特性測定>
本実施の形態に従う光放射特性測定装置(以下、単に「測定装置」とも称す。)は、光源を中心とする所定の空間座標系における複数の位置での光度をそれぞれ測定することで、光源の光度の空間分布を取得する。以下では、光放射特性の典型例として、各種の光源についての配光特性を測定する例について説明する。
【0019】
先に、配光特性の測定およびそれに用いられる空間座標系について説明する。
図1は、配光特性の測定に係る空間座標系を説明するための図である。
【0020】
配光特性の測定に関する規格として、日本工業規格は、JIS C8105−5:2011「照明器具−第5部:配光測定方法」を定めている。また、国際照明委員会(CIE:Commission Internationale de l’Eclairage)は、CIE 121−SP1:2009「The Photometry and Goniophotometry of Luminaires - Supplement 1: Luminaires for Emergency Lighting」を定めている。いずれの規格においても、配光特性の測定に係る3種類の空間座標系が定義されている。
【0021】
より具体的には、
図1に示すように、xy座標系(CIE規格では、A−Plane)、αβ座標系(CIE規格では、B−Plane)、θφ座標系(CIE規格ではA−Plane)が定義されている。いずれの空間座標系においても、被測定光源(対象の照明器具)の発光面と直交し、その発光中心を通過する照明器具の基準軸を中心として、空間上の各座標値が定義される。
【0022】
xy座標系(A−Plane)では、照明器具の基準軸と直交する鉛直方向に極軸を定義し、基準軸と極軸とからなる座標系上の角度をxと定義し、基準軸および極軸のいずれとも直交する第3の軸と基準軸とからなる座標系上での角度をyと定義する。そして、空間座標系上の各位置がこの角度xおよびyを用いて定義される。
【0023】
αβ座標系(B−Plane)では、照明器具の基準軸と直交する水平方向に極軸を定義し、基準軸と極軸とからなる座標系上の角度をαと定義し、基準軸および極軸のいずれとも直交する第3の軸と基準軸とからなる座標系上での角度をβと定義する。そして、空間座標系上の各位置がこの角度αおよびβを用いて定義される。すなわち、xy座標系(A−Plane)とαβ座標系(B−Plane)とは、極軸の定義される方向のみが異なっている。
【0024】
θφ座標系(C−Plane)では、照明器具の基準軸と同じ方向に極軸を定義し、基準軸(極軸)とのなす角度をθと定義し、基準軸(極軸)を中心とする角度をφと定義する。そして、空間座標系上の各位置がこの角度θおよびφを用いて定義される。
【0025】
図1に示されるように、いずれの空間座標系についても、被測定光源(対象の照明器具)の発光面および測光中心を基準として定義される。そのため、いずれかの空間座標系で測定された配光特性から他の空間座標系の配光特性を導出することもできる。すなわち、以下に示すような変換式を用いることで、ある空間座標系での配光特性を用いて他の空間座標系での配光特性を導出できる。
【0027】
したがって、
図1に示すいずれか1つの空間座標系で配光特性を測定すれば、他の空間座標系での配光特性が必要になった場合であっても、変換式を用いて適宜変換することができる。
【0028】
<B.全体構成>
次に、本実施の形態に従う測定装置の全体構成について説明する。
図2は、本発明の実施の形態に従う光放射特性測定装置1の全体構成を示す斜視図である。
図2を参照して、測定装置1は、光源支持装置100と、受光装置200とを含む。後述するように、受光装置200により検出された検出結果を処理する処理装置をさらに設けてもよい。
【0029】
測定装置1においては、配光特性の測定対象となる被測定光源(以下、「サンプル光源」とも称す。)を光源支持装置100に装着し、さらに光源支持装置100が装着されたサンプル光源を予め定められた回転軸について予め定められた角度ずつ順次回転させることで、サンプル光源と受光装置200との間の相対的な位置関係が順次変化する。このように相対的な位置関係を順次変化させることで、光源の光度の空間分布を測定する。
【0030】
サンプル光源の種類は制限されることなく、白熱球、蛍光灯、LED(Light Emitting Device)、有機EL(Electro Luminescence)などの各種の光源に適用できる。さらに、光源支持装置100は、直管型の蛍光灯といった管状光源だけではなく、白熱球、蛍光球、LED球のような球状光源などを測定することもできる。この点については、後述する。さらに、LEDや有機ELのような面光源をサンプル光源とすることもできる。
【0031】
図1を参照して、光源支持装置100は、ベース部20と、ベース部20と一体的に形成される固定アーム部30と、ベース部20から着脱することができる着脱可能アーム部40とを含む。これらの部材は、支持台10上に設けられた回転支持部12を介して、鉛直回転軸Ax1を中心として回転可能に取り付けられる。すなわち、光源支持装置100は、ベース部20を第1の軸である鉛直回転軸Ax1について回転可能に支持する回転支持部12を含む。
【0032】
固定アーム部30および着脱可能アーム部40の先端には、それぞれサンプル光源を回転可能に支持する固定治具32および42がそれぞれ設けられる。固定治具32および42の両方、または固定アーム部30に設けられた固定治具32を用いて、サンプル光源が固定される。後述するように、固定治具32および42は、点灯治具としての機能を兼ねており、配光特性の測定中は、サンプル光源を点灯するための電力を供給する。
【0033】
このように、光源支持装置100は、ベース部20の両端にそれぞれ接続され、第1の軸である鉛直回転軸Ax1と平行な方向に延在する、固定アーム部30および着脱可能アーム部40を含む。さらに、光源支持装置100は、固定アーム部30および着脱可能アーム部40の互いに対向するそれぞれの位置に設けられたサンプル光源を支持するための一対の支持部である固定治具32および42を含む。そして、固定治具32および42は、支持するサンプル光源を鉛直回転軸Ax1とは直交する水平回転軸Ax2について回転できるように構成される。
【0034】
本実施の形態に従う光源支持装置100は、少なくとも着脱可能アーム部40は、ベース部20に対して着脱自在になっている。これにより、直管型の蛍光灯といった管状のサンプル光源を測定するような場合には、固定アーム部30および着脱可能アーム部40の両方がサンプル光源を支持し、球状のサンプル光源を測定するような場合には、固定アーム部30のみがサンプル光源を支持する。その上で、ベース部20を鉛直回転軸Ax1について回転させることで、サンプル光源と受光装置200との相対的な位置関係を最適化できる。
【0035】
固定アーム部30についてもベース部20から着脱できるように構成してもよい。この場合には、必要な側のアーム部を取り外すことになる。両方のアーム部を着脱可能にすることで、不使用時に光源支持装置100をコンパクトに収納できる。
【0036】
受光装置200は、支持台90と、支持台90上に配置された受光ユニット92とを含む。支持台90は、サンプル光源の基準軸Ax3上に受光ユニット92が位置するように、高さを調整する。
【0037】
受光ユニット92は、サンプル光源からの照射された光の光度を検出する。受光ユニット92としては、フォトダイオードのような光の強度を検出するようなデバイスを採用してもよいし、波長毎の強度(スペクトル)を検出するための分光検出器を採用してもよい。また、受光ユニット92は、光を収集するためのレンズ系などを含む。
【0038】
受光ユニット92で検出された検出結果は、対応する相対位置を示す情報と関連付けて順次格納される。このような空間座標系の各座標値における検出値の対応付けにより、配光特性が測定される。受光ユニット92で検出された検出結果を処理する装置については、後述する。
【0039】
<C.測定準備および測定動作>
次に、本実施の形態に従う測定装置1を用いて、直管型の蛍光灯(サンプル光源SMP1)および球状光源(サンプル光源SMP2)のそれぞれについて、配光特性を取得する際の測定準備および測定動作について、
図3〜
図9を参照して説明する。
【0040】
図3〜
図9は、本発明の実施に従う光放射特性測定装置1を用いた測定準備および測定動作を説明するための図である。
【0041】
(c1:サンプル光源SMP1(B−planeでの測定))
まず、
図3および
図4を参照して、サンプル光源SMP1を測定する場合の手順について説明する。測定装置1においては、管状光源であるサンプル光源SMP1は、
図1に示すαβ座標系(B−plane)で測定される。すなわち、鉛直回転軸Ax1についてベース部20を回転することで角度αが変化し、水平回転軸Ax2についてサンプル光源SMP1を回転することで角度βが変化する。
【0042】
図3に示すように、まず、サンプル光源SMP1を測定する場合には、着脱可能アーム部40がベース部20に装着された状態で、固定治具32と固定治具42との間にサンプル光源SMP1が装着される。そして、電源が供給されてサンプル光源SMP1が点灯状態におかれる。このとき、支持台90上に配置された受光ユニット92は、鉛直回転軸Ax1および水平回転軸Ax2のいずれとも直交する基準軸Ax3上に配置される。
【0043】
続いて、
図4に示すように、サンプル光源SMP1を、鉛直回転軸Ax1および水平回転軸Ax2についてそれぞれΔαおよびΔβずつ所定順序に従って回転するとともに、各回転位置において受光ユニット92での検出結果を記録する。
【0044】
すべての相対的な位置関係での検出結果の測定が完了すると、配光特性(B−Plane)が出力される。なお、必要に応じて、他の座標系で定義される配光特性を導出してもよい。
【0045】
図3および
図4に示すように、管状光源であるサンプル光源SMP1を測定する場合には、水平回転軸Ax2が、サンプル光源SMP1の長手方向が鉛直回転軸Ax1および基準軸Ax3のいずれとも直交する軸と一致する(平行になる)必要がある。そのため、回転支持部12は、ベース部20の長手方向が水平回転軸Ax2と平行になる状態でベース部20を固定できるようにすることが好ましい。
【0046】
(c2:サンプル光源SMP2(C−planeでの測定))
続いて、
図5〜
図9を参照して、サンプル光源SMP2を測定する場合の手順について説明する。測定装置1においては、球状のサンプル光源SMP2は、
図1に示すθφ座標系(C−plane)で測定される。すなわち、鉛直回転軸Ax1についてベース部20を回転することで角度αが変化し、水平回転軸Ax2についてサンプル光源SMP2を回転することで角度φが変化する。
【0047】
図5に示すように、まず、サンプル光源SMP2を測定する場合には、着脱可能アーム部40がベース部20から取り外される。そして、
図6および
図7に示すように、着脱可能アーム部40がベース部20から取り外された状態で、ベース部20が鉛直回転軸Ax1について回転される。すなわち、水平回転軸Ax2は、サンプル光源の基準軸Ax3と一致する(平行になる)。
【0048】
そして、
図8に示すように、固定治具32にサンプル光源SMP2が装着される。そして、電源が供給されてサンプル光源SMP2が点灯状態におかれる。このとき、支持台90上に配置された受光ユニット92は、鉛直回転軸Ax1と直交する基準軸Ax3(水平回転軸Ax2と一致する)上に配置される。
【0049】
さらに、
図9に示すように、サンプル光源SMP2を、鉛直回転軸Ax1および水平回転軸Ax2についてそれぞれΔθおよびΔφずつ所定順序に従って回転するとともに、各回転位置において受光ユニット92での検出結果を記録する。
【0050】
すべての相対的な位置関係での検出結果の測定が完了すると、配光特性(C−Plane)が出力される。なお、必要に応じて、他の座標系で定義される配光特性を導出してもよい。
【0051】
図9に示すように、球状のサンプル光源SMP2を測定する場合には、水平回転軸Ax2が、基準軸Ax3と一致する(平行になる)必要がある。そのため、回転支持部12は、ベース部20の長手方向が基準軸Ax3(鉛直回転軸Ax1および水平回転軸Ax2のいずれとも直交する軸)と平行になる状態でベース部20を固定できるようにすることが好ましい。
【0052】
<D.測定距離>
上述した日本工業規格JIS C8105−5:2011においては、配光特性を測定中の測光距離(サンプル光源から受光ユニット92までの距離)は、一定にすべきであることが規定されている。そして、この測光距離は、サンプル光源(照明器具)の発光面の最大寸法の5倍以上が望ましいとされている。例えば、1.2mの蛍光灯の配光特性を測定する場合の測光距離は、6m以上とすることが好ましい。
【0053】
但し、この発光面の最大寸法の5倍という条件は、光源から照射される光のビームの開きが120%であっても、光度の誤差を1%以下にできるという仮定で決定されたものである。そのため、サンプル光源が集光性の配光特性を有する場合には、発光面の最大寸法の5倍では不十分であり、より長い測光距離が必要になる。
【0054】
本実施の形態に従う測定装置1では、光源支持装置100に装着されるサンプル光源の基準軸Ax3上に受光ユニット92が存在するという条件さえ満たせば、任意の測光距離の位置に受光装置200を配置できる。
【0055】
図10および
図11は、本発明の実施に従う光放射特性測定装置1における測光距離を説明するための図である。
【0056】
図10(a)を参照して、管状光源であるサンプル光源SMP1の配光特性を測定する場合には、サンプル光源SMP1の長さの5倍以上となる距離L1だけ離して、光源支持装置100と受光装置200とが配置される。この距離L1は、サンプル光源SMP1の長さにも依存するが、例えば、12m程度にすることが好ましい。
【0057】
光源支持装置100と受光装置200との間の測光距離が長くなると、その光学経路上に本来意図しない部分で反射した迷光成分が混入することがある。なお、
図10に示す光学系は暗室内に配置されるが、迷光成分は生じ得る。このような迷光成分が測定誤差の要因となり得る。そのため、光源支持装置100と受光装置200との間の光学経路上に、遮光板220−1,220−2,220−3を設けることが好ましい。
【0058】
これに対して、サンプル光源SMP1の配光特性が測定する場合に比較して、球状のサンプル光源SMP2の配光特性を測定する場合の測光距離はより短くてよい。すなわち、
図10(b)に示すように、距離L1より短い距離L2だけ離して、光源支持装置100と受光装置200とが配置される。この距離L2は、サンプル光源SMP2の直径などにも依存するが、例えば、2m程度にすることが好ましい。
【0059】
図10には、サンプル光源の分光光度を測定可能な構成を示す。すなわち、受光ユニット92には、分光光度計94が接続されており、各座標値において測定された検出結果(スペクトル)が処理装置300へ出力される。
【0060】
なお、配置スペースの関係上、
図10(a)に示すような距離L1(例えば、12m)もの測光距離を確保できない場合も多いと想定される。このような場合には、
図11に示すように、配置スペースを遮光板272で区画するとともに、ミラー262および264を適宜配置して、測光距離を確保するようにしてもよい。この例では、測定装置1を配置するエリア、受光ユニット92(受光装置200)を配置するエリア、および処理装置300を配置するエリアの3区画に配置スペースを区切り、サンプル光源からのビームをミラー262および264でそれぞれ伝搬方向を変えていくことで、(2×距離L3+距離L4)の測光距離を確保できる。例えば、一辺の距離L5=15mで、他辺の距離L6=6mの配置スペースがあれば、距離L3=10.5mおよび距離L4=3mを確保できるので、測光距離としては約24mを確保できる。この測光距離によれば、直径lが2.4m程度のサンプル光源の光放射特性(配光特性)を十分に高い精度で測定できる。
【0061】
<E.処理装置>
次に、本実施の形態に従う処理装置300について説明する。
【0062】
図12は、本発明の実施の形態に従う処理装置300のハードウェア構成を示す概略図である。
図12を参照して、処理装置300は、典型的にはコンピュータによって実現される。具体的には、処理装置300は、オペレーティングシステム(OS:Operating System)を含む各種プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)302と、CPU302でのプログラムの実行に必要なデータを一時的に記憶するメモリ312と、CPU302で実行されるプログラムを不揮発的に記憶するハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)310とを含む。また、ハードディスク310には、後述するような処理を実現するためのプログラムが予め記憶されており、このようなプログラムは、CD−ROMドライブ314によって、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)314aなどから読取られる。あるいは、CPU302は、サーバ装置などからネットワークインターフェイス(I/F)306を介してネットワークを経由してプログラムを受信し、それをハードディスク310へ格納してもよい。
【0063】
CPU302は、I/O(Input Output)ユニット316を介して、受光装置200により検出された検出結果を受信し、また光源支持装置100へ各種の制御指令を与える。
【0064】
CPU302は、キーボードやマウスなどからなる入力部308を介してユーザなどからの指示を受け取るとともに、プログラムの実行によって算出される配光特性などをディスプレイ304などへ出力する。
【0065】
処理装置300に搭載される機能の一部または全部を専用のハードウェアで実現してもよい。
【0066】
<F.電気的構成>
次に、本実施の形態に従う光源支持装置100の電気的構成について説明する。
【0067】
図13は、本発明の実施の形態に従う光源支持装置100の電気的構成を示す概略図である。
図13を参照して、光源支持装置100は、固定治具32および42をそれぞれ回転駆動するモータ34および44と、サンプル光源と電気的に接続されてサンプル光源に電力を供給するためのコネクタ36および46とをさらに含む。モータ34およびコネクタ36は、固定アーム部30の固定治具32の内部または周辺に配置される。同様に、モータ44およびコネクタ46は、着脱可能アーム部40の固定治具42の内部または周辺に配置される。着脱可能アーム部40をベース部20へ着脱可能にするためのコネクタ60が接合部に設けられる。
【0068】
光源支持装置100は、ベース部20を回転駆動するモータ14をさらに含む。モータ14は、回転支持部12の内部に配置される。
【0069】
モータ14,34,44は、回転角を高精度に制御できるように、回転位置(位相)を制御できるステッピングモータなどが好ましい。
【0070】
光源支持装置100は、通信インターフェイス(I/F)50と、モータドライバ52,54,56と、光源駆動部58とをさらに含む。通信インターフェイス50は、処理装置300からの制御指令をデコードして、モータドライバ52,54,56および光源駆動部58に対して、内部コマンドを与える。
【0071】
モータドライバ52,54,56は、通信インターフェイス50からの内部コマンドに従って、モータ14,34,44を駆動する。光源駆動部58は、通信インターフェイス50からの内部コマンドに従って、サンプル光源を点灯するための電力を生成する。そして、光源駆動部58は、コネクタ36および46を介してサンプル光源へ電力を供給する。このように、サンプル光源を支持するための一対の支持部である固定治具32および42は、支持するサンプル光源に電源を供給することができる。
【0072】
<G.測定手順>
次に、本実施の形態に従う測定装置1を用いてサンプル光源の配光特性を測定する手順について説明する。以下では、一例として、鉛直回転軸Ax1を主として回転しつつ、水平回転軸Ax2を従として回転させることで、配光特性を算出する処理例について説明する。
【0073】
図14は、本発明の実施の形態に従う測定装置1を用いてサンプル光源の配光特性を測定する手順を示すフローチャートである。
図14を参照して、ユーザは、配光特性を測定する光源の種類に応じて、
図3および
図4に示すαβ座標系(B−Plane)での測定モード、および
図7〜
図9に示すθφ座標系(C−Plane)での測定モードのいずれかを選択する(ステップS100)。
【0074】
αβ座標系(B−Plane)での測定モードを選択すると(ステップS100において「B−Plane」の場合)、ユーザは、ベース部20をその長手方向が水平回転軸Ax2と平行になる状態にセットする(ステップS102)。続いて、ユーザは、サンプル光源を固定治具32および42に装着し(ステップS104)、続いてサンプル光源を点灯する(ステップS106)。
【0075】
一方、θφ座標系(C−Plane)での測定モードを選択すると(ステップS100において「C−Plane」の場合)、ユーザは、ベース部20から着脱可能アーム部40を取り外し(ステップS112)、ベース部20をその長手方向が基準軸Ax3と平行になる状態にセットする(ステップS114)。続いて、ユーザは、サンプル光源を固定治具32に装着し(ステップS116)、続いてサンプル光源を点灯する(ステップS118)。
【0076】
続いて、配光特性の測定が開始される。すなわち、処理装置300は、鉛直回転軸Ax1および水平回転軸Ax2についての角度がいずれも初期値となるように、回転支持部12、ならびに、固定治具32および/または固定治具42を回転する(ステップS120)。処理装置300は、受光装置200により検出された検出結果を鉛直回転軸Ax1および水平回転軸Ax2についてのそれぞれの角度と関連付けて格納する(ステップS122)。続いて、処理装置300は、回転支持部12を鉛直回転軸Ax1について一定角度だけ回転させる(ステップS124)。処理装置300は、回転支持部12が鉛直回転軸Ax1について一周したか否かを判断する(ステップS126)。
【0077】
回転支持部12が鉛直回転軸Ax1について一周していない場合(ステップS126においてNOの場合)には、ステップS122以下の処理が再度実行される。これに対して、回転支持部12が鉛直回転軸Ax1について一周している場合(ステップS126においてYESの場合)には、処理装置300は、固定治具32および/または固定治具42を水平回転軸Ax2について一定角度だけ回転させる(ステップS128)。
【0078】
処理装置300は、固定治具32および/または固定治具42が水平回転軸Ax2について一周したか否かを判断する(ステップS130)。
【0079】
固定治具32および/または固定治具42が水平回転軸Ax2について一周していない場合(ステップS130においてNOの場合)には、処理装置300は、ステップS122以下の処理が再度実行される。これに対して、固定治具32および/または固定治具42が水平回転軸Ax2について一周している場合(ステップS130においてYESの場合)には、処理装置300は、ステップS122において繰り返し取得された検出結果と対応する座標値とから、配光特性を算出する(ステップS132)。
【0080】
処理装置300は、ステップS132に算出された配光特性を出力する(ステップS134)。このとき、要求された空間座標系とは異なる空間座標系で配光特性が取得された場合には、要求された空間座標系となるように所定の変換処理を行なった上で、配光特性を出力する。
【0081】
なお、上述のフローチャートでは、鉛直回転軸Ax1を主として回転しつつ、水平回転軸Ax2を従として回転させる処理手順を示したが、それぞれの軸の回転順序などは、適宜設定すればよく、上述した処理手順に限定されるものではない。
【0082】
<H.変形例(スライド機構)>
次に、上述した光源支持装置において、アーム部間の相対的な距離を変更できるようなスライド機構を採用することで、より汎用性を高める構成について説明する。
【0083】
図15〜
図18は、本発明の実施の変形例に従う光源支持装置100Aの構成を示す斜視図である。
図15を参照して、本変形例に従う光源支持装置100Aは、上述の光源支持装置100と比較して、着脱可能アーム部30Aおよび着脱可能アーム部40Aをベース部20Aに沿ってスライド可能になっている点が異なっている。その他の基本的な構成は、光源支持装置100と同様であるので、その他の部位の詳細な説明は繰り返さない。
【0084】
より具体的には、ベース部20Aの両端にスライド部22および24が設けられている。スライド部22および24によって、着脱可能アーム部30Aおよび40Aは、水平回転軸Ax2に沿って相対移動できるようになっている。すなわち、ベース部20Aは、着脱可能アーム部30Aと着脱可能アーム部40Aとの間の距離を伸縮可能にするスライド機構(スライド部22および24)を含む。
【0085】
スライド部22とスライド部24との間では、各々のスライド量が互いに一致するように、例えば、ダブルラック・ピニオン方式を採用することが好ましい。このような方式を採用することで、スライド部22とスライド部24との間の中心位置を鉛直回転軸Ax1上に維持することができる。
【0086】
このようなスライド機構を採用することで、
図16に示すように、管状のサンプル光源SMP1Sの長さが複数存在する場合であっても、その発光面の中心位置を鉛直回転軸Ax1、水平回転軸Ax2および基準軸Ax3の3軸が交わる点と一致させることができる。すなわち、基本的には、どのような長さのサンプル光源SMP1Sであっても、本来の測定位置に支持することができる。
【0087】
また、球状のサンプル光源SMP2を測定する場合にも、発光の中心位置からプラグまでの距離が光源毎に異なる場合がある。このような場合にも、
図17および
図18に示すように、スライド機構を採用することで、発光部の中心位置を、鉛直回転軸Ax1、水平回転軸Ax2および基準軸Ax3の3軸が交わる点と一致させることができる。すなわち、基本的には、どのような長さのサンプル光源SMP2Sであっても、本来の測定位置に支持することができる。
【0088】
以上のように、スライド機構を採用することで、管状のサンプル光源SMP1Sについての長手方向の長さ、および球状のサンプル光源SMP2についての発光の中心位置からプラグまでの距離などに影響されることなく、複数種類のサンプル光源についての光放射特性を共通の光源支持装置100を用いて測定できる。
【0089】
<I.変形例(温度変化に伴う特性変化に対する補正)>
一般的に、LEDや有機ELといった面光源では、発熱量が少ないこともあり、温度変化に伴う光放射特性は生じにくい。これに対して、蛍光灯などでは、点灯時間が長くなったり、周囲環境が変化したりすると、局所的な温度上昇を生じる。このような温度変化に伴って光放射特性も変化し得る。特に、配光特性をより高い精度で測定しようとすると、より多くの測定点でサンプル光源の光度を測定する必要があり、測定時間がより長くなってしまい、その結果サンプル光源に温度変化が生じるという課題がある。
【0090】
そこで、配光特性の測定中において、サンプル光源を予め定めた基本の点灯姿勢に戻してその光度を測定し、その測定された光度を用いて、対応する時間帯での測定値を補正するようにしてもよい。
【0091】
より具体的には、測定開始の初期においてサンプル光源を基本の点灯姿勢に支持するとともに、そのときに測定される光度を補正の基準値とする。そして、所定数の座標値において光源の光度を測定する。これらの所定数の測定後、再度、サンプル光源を基本の点灯姿勢に支持するとともに、その点灯姿勢での光度を測定する。この測定された光度と補正の基準値とから補正係数を算出する。そして、この算出された補正係数を用いて、その前後で測定された光度を補正する。測定された光度が基準値と同一であれば、補正係数はほぼ「1」になるので、基本的には、測定された光度は実質的に補正されない。これに対して、測定された光度が基準値と乖離していれば、補正係数は「1」以外の値になるので、測定された光度は、そのときのサンプル光源の光放射特性に応じた値に補正される。
【0092】
このような補正処理を周期的に行なうことで、配光特性の測定中にサンプル光源の光放射特性が変化した場合であっても、その変化を補正した光度を取得することができる。
【0093】
<J.利点>
本実施の形態に従う光放射特性測定装置1(光源支持装置100および受光装置200)によれば、直管型の蛍光灯といった管状のサンプル光源だけではなく、白熱球、蛍光球、LED球のような球状のサンプル光源についても、光放射特性(配光特性)を測定することができる。そのため、サンプル光源の種類別に測定装置を用意する必要がなく、ユーザの経済性および利便性を高めることができる。
【0094】
また、本実施の形態に従う光放射特性測定装置1によれば、測定空間の高さがそれほど必要はなく、装置の配置スペースの高さが3m程度であっても、長さ1.2mの蛍光灯の光放射特性(配光特性)を高い精度で測定できる。
【0095】
また、本実施の形態に従う光放射特性測定装置1によれば、光源支持装置100と受光装置200との間の距離を自由に調整できるので、サンプル光源から照射される光強度が相対的に小さいものから大きいものまで、多種類のサンプル光源の光放射特性(配光特性)を測定できる。
【0096】
すなわち、本実施の形態に従う光放射特性測定装置1によれば、測光距離や光源の種類・大きさについての制限が少なく、より高い汎用性を実現できる。また、装置構成が簡単なので、全体サイズを小型化できるという利点がある。
【0097】
また、本実施の形態に従う光放射特性測定装置1によれば、光源支持装置100に装着されたサンプル光源を回転させてその点灯姿勢(特に、重力方向に対する相対的な向き)を変化させることになる。LEDや有機ELなどの光源では、このような点灯姿勢を変化させることによる影響はほぼ無視できるので、本実施の形態に従う測定方法であっても、測定精度を維持できる。また、点灯姿勢によって光放射特性(配光特性)が時間的に変化するような光源については、上述の変形例において説明した補正処理を追加的に行なうことで、測定精度を維持できる。
【0098】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。