特許第5881467号(P5881467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5881467ガス分流供給装置及びこれを用いたガス分流供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881467
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】ガス分流供給装置及びこれを用いたガス分流供給方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20160225BHJP
   G05D 11/13 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   G05D7/06 B
   G05D11/13 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-43090(P2012-43090)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-178709(P2013-178709A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
(72)【発明者】
【氏名】土肥 亮介
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−240352(JP,A)
【文献】 特開平09−217898(JP,A)
【文献】 特開2004−005308(JP,A)
【文献】 特開平06−318116(JP,A)
【文献】 特開2000−305630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
G05D 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力式流量制御装置(4)と、圧力式流量制御装置(4)からのガスをプロセスチャンバ(15)へ分流供給する並列に接続した複数の分流路(L〜L)と、各分流路(L〜L)に介設した熱式流量センサ(6a〜6n)と、熱式流量センサ(6a〜6n)の下流側に設けた電動弁(7a〜7n)と、各電動弁(7a〜7n)の開閉を制御する切換型コントローラ(16a〜16n)とを備えると共に、前記切換型コントローラ(16a〜16n)を、前記圧力式流量制御装置(4)が未流量制御状態下では弁開度制御指令信号(Sp)により前記電動弁(7a〜7n)を所定の一定弁開度に保持する弁開度制御と、前記圧力式流量制御装置(4)が流量制御状態下では分流量制御指令信号(Ss)により前記熱式流量センサ(6a〜6n)の流量検出信号(Sm)に基づくフィードバック制御により前記電動弁(7a〜7n)の開度を調節する分流量制御とに、自動又は手動切換え可能な構成としたことを特徴とするガス分流供給装置。
【請求項2】
設定流量下で定常運転中の電動弁(7)の弁開度(%)を予め読み取りすると共に、予め読み取りした弁開度を、弁開度制御時の予め定めた弁開度とするようにした請求項1に記載のガス分流供給装置。
【請求項3】
分流路の数を2〜4とした請求項1に記載のガス分流供給装置。
【請求項4】
圧力式流量制御装置(4)と、圧力式流量制御装置(4)からのガスをプロセスチャンバ(15)へ分流供給する並列に接続した複数の分流路(L〜L)と、各分流路(L〜L)に介設した熱式流量センサ(6a〜6n)と、熱式流量センサ(6a〜6n)の下流側に設けた電動弁(7a〜7n)と、各電動弁(7a〜7n)の開閉を制御する切換型コントローラ(16a〜16n)とを備えると共に、前記切換型コントローラ(16a〜16n)を、弁開度制御指令信号(Sp)により前記電動弁(7a〜7n)を所定の一定弁開度に保持する弁開度制御と、分流量制御指令信号(Ss)により前記熱式流量センサ(6a〜6n)の流量検出信号(Sm)に基づくフィードバック制御により前記電動弁(7a〜7n)の開度を調節する分流量制御とに、切換え可能な構成としたガス分流供給装置を用いた分流ガス供給に於いて、圧力式流量制御装置(4)が稼動する前には、切換型コントローラ(16)を介して電動弁(7a〜7n)の開度を予め定めた一定開度に保持し、その後、流量制御装置(4)が稼動して総流量(Q)の流量制御が行われた時点で、前記切換型コントローラ(16)を介して電動弁(7a〜7n)の開度を熱式流量センサ(6a〜6n)からの流量検知信号(Sm)に基づくフィードバック制御にし、設定流量の分流量(Q〜Qn)を供給するようにしたガス分流供給方法。
【請求項5】
分流路の数を2〜4とすると共に、弁開度制御時の電動弁(7)の弁開度を全開時の40〜70%とするようにした請求項に記載のガス分流供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給源側に設けた圧力式流量制御装置から熱式流量センサを設けた複数のガス分流供給路へガスを分流供給するようにしたガス分流供給システムの改良に関するものであり、各ガス分流供給路へのガス供給開始初期に於ける所謂ガスの過剰な流れ込み(オーバーシュート)の発生を簡単且つ確実に防止できるようにしたガス分流供給装置とこれを用いたガス分流供給方法に関するものである。
【0002】
近年、半導体製造装置関係の分野に於いては、プロセスチャンバの大型化に伴って所謂ガスの分流供給システムが多く採用されるようになりつつあり、様々な形式のガス分流供給システムが開発されている。
図5は、従前の熱式流量制御装置MFC(マスフローコントローラ)又は圧力式流量制御装置FCSを用いたガス分流供給装置の一例を示すものであり、ガス供給源SからのガスGが流量制御装置を通してプロセスチャンバCへ流量Q、Qの割合で分流供給されて行く。
【0003】
ところで、流量制御装置MFC(又はFCS)に於いては、ガス供給開始時に所謂ガスの流れ込み現象(オーバーシュート現象)を生じ易く、特に熱式流量制御装置MFCの場合には、前記オーバーシュートの発生が不可避の状態にある。
【0004】
例えば、本願発明者等が、図6に示すような構成のガス供給装置を用いて、ガス供給開始直後に生ずる流体のオーバーシュート現象の発生原因を解析した結果によれば、従前のマスフローコントローラを用いたガス供給装置50に於いては、a各切換弁V〜Vと各マスフローコントローラMFC〜MFCとを連結する管路L〜L内に滞留しているガスが、オーバーシュートするガスの大部分を占めていること、及び、bマスフローコントローラMFC〜MFCの構造そのものが前記オーバーシュートの原因となるガスの滞留を増加させるようになっていることを見出した。尚、51はチャンバである。
【0005】
即ち、図7は従前のマスフローコントローラの基本構造を示すブロック図であるが、一次側から流入したガスは層流バイパス部59とセンサーバイパス部60に分流され、センサー61によりガスの質量流量をこれに比例した温度変化としてとらえると共に、この温度変化をブリッジ回路62で電気信号に変換し、増幅回路63等を経てリニヤー電圧信号として表示器64と比較制御回路65へ出力される。また、外部からの設定信号は設定器66から比較制御回路65へ入力され、ここで前記検出信号との差が演算されると共に、当該差信号をバルブ駆動部67へ送り、この差信号が零となる方向に流量制御バルブ68が開閉制御される。尚、69は電源部である。
【0006】
今、マスフローコントローラの使用中に二次側に設けた切換弁Vを急閉すると、センサー61内を流通するガス流が止まるため、マスフローコントローラの制御系は過渡的にガスの流れを増加する方向に作動し、流量制御弁68が開放される。その結果、二次側ラインL内のガス圧が上昇し、ここにガスが滞留することになる。そして、この滞留ガスが、次に切換弁Vを開放した際に急激に切換弁Vを通してチャンバ側へ流れ込み、前記ガスのオーバーシュート現象を引き起こすことになる。
【0007】
而して、ガス分流供給装置に於ける上記のようなガスのオーバーシュートの発生は、必然的に半導体製造設備の稼動率の低下や製品の品質低下を招くことになる。そのため、オーバーシュートの発生は可能な限り防止する必要がある。
【0008】
一方、近年この種の半導体製造装置のガス分流供給装置に於いては、ガス分流供給装置の小型化や低コスト化に対する要望が高まっている。
これ等の要望に対応するものとして、図8に示すように、圧力式流量制御装置(FCS)4を用いてガス供給源からの供給ガス総量Qの流量制御を行うと共に、各分流供給路L〜Lnの分流ガス流量Q〜Qn流量制御を行うようにしたガス分流供給装置が開発されている。
【0009】
尚、図8に於いて、1はガス供給源、2は圧力調整器、3は圧力センサ、4は圧力式流量制御装置(FCS)、5a・5bは圧力計、6は熱式流量センサ(MFM)、7は電動弁、8は弁駆動部、9は真空ポンプ、10は絞り弁、11は信号発生器、12はPIDコントローラ、13はプロセスチャンバ、Smは流量検出信号、Saは流量設定信号、Svは弁駆動信号である。
【0010】
上記図8のガス分流供給装置にあっては、圧力式流量制御装置4で流量制御された総流量Qのガスが、分流路L、L、Lnへ夫々分流量Q、Q、Qnでもって供給される。即ち、各分流路L、L、Lnを流れる分流流量Q、Q、Qnは、例えば分流路Lのように、流量センサ6からの流量検出信号Smによりコントローラ12を介して電動弁7をフィードバック制御することにより、信号発生器11からの流量設定信号Saに等しい分流量Qに制御され、チャンバ13へ供給されて行く。尚、図8に於いては、分流路L、L、Lnの分流量制御機構は省略されている。
【0011】
しかし、当該ガス分流供給装置に於いても、例えば、信号発生器11から流量設定信号Saを入力し、圧力式流量制御装置FCS4を起動して分流路Lへのガス導入を開始した直後には(ガスの供給導入時と呼ぶ)、図9に示すように熱式流量センサ(MFM)6の流量検出信号SmにピークSmpが表れることになり、所謂分流路Lの流量Qにオーバーシュートが発生することになる。
【0012】
即ち、図9に示すように、点tに於いてコントローラ12へ定格流量(100%F.S流量出力)に相当する流量設定信号Saが入力され、その後熱式流量センサ(MFM)6へ点tに於いてガスが供給されて流量検出信号Smがコントローラ12へ入力されるような場合には、流量検出信号SmにピークSmpが発生し、分流流量Qにオーバーシュートが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2004−114038号公報
【特許文献2】特開平11−212653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本願発明は、従前のガス分流供給装置に於ける上述の如き問題、即ち分流路へのガス導入開始時に生ずるガスのオーバーシュートを簡単且つ安価に、しかもほぼ完全に防止できるようにしたガス分流供給装置の提供を発明の主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者等は、前記図8のガス分流供給装置に於けるガス導入開始初期に生ずるオーバーシュートを解析するため、図1に示すような評価試験装置を作成し、ガス導入時の装置の作動状況等を検討した。尚、図1の評価試験装置は、実質的に前記図8の分流量制御装置と同じ構造のものである。
【0016】
その結果、得られた試験結果も前記図9の場合と同様であり、図9に示されているように、点toに於いて、図1のコントローラ12へ100%流量に相当する流量設定信号Saが入力されることにより、コントローラ12から弁駆動信号Svが弁駆動部8へ入力され、電動弁7は瞬時に全開状態に保持される。そしてこの電動弁7の全開状態は、熱式流量センサ(MFM)6から流量検出信号Smがコントローラ12へ入力され、フィードバック制御によって前記弁駆動信号Svが調整されるまで保持される。
【0017】
いま、圧力式流量制御装置(FCS)4が作動され、この圧力式流量制御装置(FCS)4の流量出力Sfが点tに於いて100%流量に相当する値になると、即ち圧力式流量制御装置による流量制御が開始されて熱式流量センサ(MFM)6へガス供給が始まると、熱式流量センサ(MFM)6からの流量検出信号Smが増加し、コントローラ12に於いて所謂フィードバック制御が行われることにより、流量設定信号Saに対応する設定流量のガスが流通するように弁駆動信号Svが調整され、電動弁7の開度が全開状態から所定開度まで開度制御される事になる。
即ち、熱式流量センサ(MFM)6の流量検出値Smと流量設定信号Saとが一致する点で弁駆動信号Svが0となり、電動弁7の開度が設定流量Qが流通する一定の開度に保持される。
【0018】
換言すれば、熱式流量センサ(MFM)6へのガス供給が点toから点tのあいだ遅れることにより、電動弁7は流量設定信号Saによってその開度が支配され、全開状態に保持される。この全開状態の電動弁7が流量検出信号Smの入力により順次閉鎖方向へ駆動され、所定の設定流量Saに相当する弁開度に到達するまでに時間遅れが在るため、この遅れ時間内に全開状態の電動弁7に流れ込むガスが、所謂オーバーシュートとして現出することになることが判明した。
【0019】
本願発明は、前記図1に示した評価試験装置を用いて得られたデータの解析結果を基にして創作されたものであり、従前のように、各分流路に設けた電動弁7の弁開度をガス導入開始時に全開状態とせずに、予め定めた所定の弁開度に保持するようにすることにより、電動弁7の制御時間遅れに起因するガス導入開始時のオーバーシュートを防止せんとするものであり、請求項1の発明は、圧力式流量制御装置4と、圧力式流量制御装置4からのガスをプロセスチャンバ15へ分流供給する並列に接続した複数の分流路L〜Lと、各分流路L〜Lに介設した熱式流量センサ6a〜6nと、熱式流量センサ6a〜6nの下流側に設けた電動弁7a〜7nと、各電動弁7a〜7nの開閉を制御する切換型コントローラ16a〜16nとを備えると共に、前記切換型コントローラ16a〜16nを、前記圧力式流量制御装置4が未流量制御状態下では弁開度制御指令信号Spにより前記電動弁7a〜7nを所定の一定弁開度に保持する弁開度制御と、前記圧力式流量制御装置4が流量制御状態下では分流量制御指令信号Ssにより前記熱式流量センサ6a〜6nの流量検出信号Smに基づくフィードバック制御により前記電動弁7a〜7nの開度を調節する分流量制御とに、自動又は手動切換え可能な構成としたものである。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1の発明に於いて、設定流量下で定常運転中の電動弁7の弁開度(%)を予め読み取りすると共に、予め読み取りした弁開度を、弁開度制御時の予め定めた弁開度とするようにしたものである。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1の発明に於いて、分流路の数を2〜4としたものである。
【0022】
請求項4の発明は、圧力式流量制御装置4と、圧力式流量制御装置4からのガスをプロセスチャンバ15へ分流供給する並列に接続した複数の分流路L〜Lと、各分流路L〜Lに介設した熱式流量センサ6a〜6nと、熱式流量センサ6a〜6nの下流側に設けた電動弁7a〜7nと、各電動弁7a〜7nの開閉を制御する切換型コントローラ16a〜16nとを備えると共に、前記切換型コントローラ16a〜16nを、弁開度制御指令信号Spにより前記電動弁7a〜7nを所定の一定弁開度に保持する弁開度制御と、分流量制御指令信号Ssにより前記熱式流量センサ6a〜6nの流量検出信号Smに基づくフィードバック制御により前記電動弁7a〜7nの開度を調節する分流量制御とに、切換え可能な構成としたガス分流供給装置を用いた分流ガス供給に於いて、圧力式流量制御装置4が稼動する前には、切換型コントローラ16を介して電動弁7a〜7nの開度を予め定めた一定開度に保持し、その後、流量制御装置4が稼動して総流量Qの流量制御が行われた時点で、前記切換型コントローラ16a〜16nを介して電動弁7a〜7nの開度を熱式流量センサ6a〜6nからの流量検知信号Smに基づくフィードバック制御にし、設定流量の分流量Q〜Qnを供給するようにしたガス分流供給方法。
【0023】
請求項5の発明は、請求項4の発明に於いて、分流路の数を2〜4とすると共に、弁開度制御時の電動弁7の弁開度を全開時の40〜70%とするようにしたものである。
【発明の効果】
【0024】
本願発明に於いては、各分流路の熱式流量センサ6a〜6nの下流側に設けた電動弁7a〜7nの開閉制御を、総流量Qを制御する圧力式流量制御装置7が未稼働の状態下にあるときには、その開度を全開状態ではなしに予め定めた一定開度に保持すると共に、前記圧力式流量制御装置7が稼動状態下にあって総流量Qが流量制御された状態になれば、各電動弁7a〜7nを熱式流量センサ6a〜6nの流量検出信号Smに基づいて、フィードバック制御による分流量制御に切換えする構成としている。
【0025】
その結果、各分流路L〜Lへのガス導入開始時の分流ガスの過渡的な流れ込み(オーバーシュート)が完全に防止されることになり、高精度な分流量制御下で各分流路L〜Lを通してプロセスチャンバ13へガスを供給することができ、より高品質な半導体製品の製造が可能になる。
【0026】
また、切換型コントローラ16そのものも構造の簡単なものでよく、製造コスト等の大幅な上昇を来たすこともない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る基礎試験装置に係る系統図である。
図2】本発明の実施形態に係るガス分流供給装置の説明図である。
図3】本発明で使用する切換型コントローラの構成及び作動の説明図である。
図4】本発明の実施形態に係るガス導入時のガス分流量特性の説明図である。
図5】従前のガス分流供給装置の一例を示す系統図である。
図6】従前の熱式流量制御装置(マスフローコントローラ)を用いたガス供給装置の一例を示す系統図である。
図7】熱式流量制御装置の構成を示す説明図である。
図8】従前のPIDコントローラを用いたガス分流供給装置の一例を示す説明図である。
図9図8のガス分流供給装置に於けるガス導入開始時のガス分流量特性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図2は、本発明に係るガス分流供給装置の全体構成図であり、本実施形態に於いては一つの大型プロセスチャンバ15へ4系統(n=4)の分流路L〜Lを通して所定流量Q〜QのガスGが供給されている。
尚、図2の装置に於いて、前記図1及び図8等と共通する部位、部材には、これと同一の参照番号が付されている。
また、図2に於いて、15は大型プロセスチャンバ、16a〜16dは切換型コントローラ、Sv〜Svは弁駆動信号、Sk〜Skは弁開度制御信号である。
【0029】
図2を参照して、定常状態に於いては、ガス供給源1から圧力調整器2により圧力300〜500Kpaabsに調整されたガスGが、圧力式流量制御装置4に於いて所望の設定流量Q(例えば1000〜3000sccm)に流量制御されて、各分流路L〜Lへ供給される。
【0030】
各分流路L〜Lに於いては、分流量制御指令信号Ssの入力により、フィードバック分流量制御が行われる切換型コントローラ16a〜16dから弁駆動信号Sv〜Svが弁駆動部8a〜8bへ入力され、電動弁7a〜7dが駆動されることにより、流量設定信号Sa〜Saに対応する分流流量Q〜Qがチャンバ15へ供給されて行く。
即ち、弁駆動信号Sv〜Svが、熱式流量センサ6a〜6dからの流量検出信号Sm〜Smによってフィードバック制御されることにより、各分流量Q〜Qが流量設定信号Sa〜Saに対応する設定分流量に制御されることになる。
【0031】
また、ガスGの供給を一時中止したあと再度ガス供給を行う場合(即ち、ガスの導入開始時)のように、圧力式流量制御装置4が流量未制御の状態下で各分流路L〜Lへガス供給を行う場合には、先ず、各切換型コントローラ16a〜16dへ開度制御指令信号Spが入力され、これによって切換型コントローラ16a〜16dが電動弁7a〜7bを開度制御の状態に保持することになる。
【0032】
その結果、後述するように、各電動弁7a〜7dの弁駆動部8a〜8dへ切換型コントローラ16a〜16dから弁開度制御信号Sk〜Skが出力され、各電動弁7a〜7dは全開されるのではなしに、予め定められた弁開度まで絞られた状態の開弁に保持される。
【0033】
一定時間(例えば0.1〜1秒間)が経過して圧力式流量制御装置4による流量制御が行われ、流量制御された制御流量Qのガスが供給される状態になれば、切換型コントローラ16a〜16dは自動的(又は手動)に弁開度制御状態から分流量制御状態に切換えられ、前述の如く熱式流量センサ6a〜6dからの流量検出信号Sm〜Smによるフィードバック制御により、各分流路L〜Lの分流量Q〜Qの制御が行われる。
【0034】
尚、前記予め設定される弁開度制御信号Sk〜Skは、圧力式流量制御装置4の流量や分流比(Q1/Q2/Q3/Q4)等により適宜に選定されることになる。
また、本実施形態に於いては、電動弁7a〜7dとしてパルスモータを駆動源とするカム駆動型開閉弁が用いられている。
【0035】
図3は、本実施形態で用いた切換型コントローラ16の構成説明図であり、図3に於いて、17は弁開度制御指令信号発信器、18は分流量制御指令信号発信器、19は制御切換ユニット、20は弁開度制御ユニット、21は熱式流量センサ6からの流量検出信号Smによる分流量制御ユニット、23は流量検出信号Smの入力端子、24は圧力式流量制御装置4からの制御切換信号Sxの入力端子である。
【0036】
ガスの導入開始時(圧力式流量制御装置4が未流量制御の状態下で分流路へガスを供給する場合)には、先ず、弁開度制御指令信号発信器17から開度制御指令信号Spが弁開度制御ユニット20へ入力され、ここに予め設定されている弁開度信号(例えば、40%開度、50%開度等)Skがユニット20から弁駆動部8へ入力され、電動弁7が所定の弁開度に保持される。
尚、前記弁開度制御指令信号発信器17には、弁開度設定信号Skの入力機構が付設されている事は勿論である。
【0037】
前記圧力式流量制御装置4による流量制御が実行されると、端子24から制御切換信号Sxが制御切換ユニット19へ入力され、これにより分流量制御指令信号Ssが発信されて分流量制御ユニット21が作動し、熱式流量センサ6からの流量検出信号Smと分流量制御指令信号発信器18に付設された流量設定機構からの流量設定信号Saにより、弁駆動信号Svのフィードバック制御が行われ、電動弁7による分流量制御が行われる。
【0038】
尚、上記分流量制御ユニット21による分流量制御への切換は、弁開度制御ユニット20の作動後一定時間が経過すると自動的に制御切換信号Sxを発信して行うことも可能であり、また、分流量制御指令信号発信器18から指令信号Ssを入力することにより、分流量制御に切換えしてもよいことは勿論である。
【0039】
図4は、本発明を実施したガスの導入開始時における分流量制御の結果を示すものであり、先ず、弁開度制御ユニット20により弁開度を全開(100%)から52%開度に保持したあと、時刻tにおいて、分流量制御ユニット21により分流量Q〜Qを流量制御(フィードバック流量制御)するようにした場合を示すものである。
【0040】
図4からも明らかなように、熱式流量センサの流量検出信号Smには、従前の図9に示した開度制御を行わない場合の特性曲線のようなピークが見られず、電動弁7の開度を適宜に絞ることによって、分流路に於けるガスのオーバーシュートを完全に防止できることが判別できる。
尚、図4に於いて、曲線Sfは、圧力式流量制御装置4の流量出力曲線である。
【0041】
また、図4の試験に於いては、弁開度を52%としているが、当該弁開度(即ち、弁開度制御信号Sk)の設定は、当該ガス分流供給装置を用いて目標流量(設定流量Sa)の流量制御を行っている時の電動弁7の弁開度をメモリしておき、これを弁開度制御ユニット20に,弁開度制御信号Skとして予め設定入力しておくのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、半導体製造装置用のガス分流供給装置のみならず、総流量の制御に流量制御装置を用いる装置であれば、化学品製造装置用ガス供給設備等へも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0043】
Q 総流量
、Qn 分流流量
、Ln 分流路
Ss 分流量制御検出信号
Sm 流量検出信号
Smp 流量検出信号のピーク
Sa 流量設定信号
Sv 弁駆動信号
Sk 弁開度制御信号
流量設定信号Saの入力時点
流量検出信号Smの入力時点
Sf 圧力式流量制御装置の流量出力曲線
1 ガス供給源
2 圧力調整器
3 圧力センサ
4 圧力式流量制御装置FCS
5a・5b 圧力計
6 熱式流量センサ
7 電動弁
8 弁駆動部
9 真空ポンプ
10・10a 絞り弁
11 信号発信器
12 PIDコントローラ
13 プロセスチャンバ
14 真空ポンプ
15 大型プロセスチャンバ
16a〜16d 切換型コントローラ
17 弁開度指令信号発信器
18 分流量制御指令発信器
19 制御切換ユニット
20 弁開度制御ユニット
21 分流量制御ユニット
Sv〜Sv 弁駆動信号
Sk〜Sk 弁開度制御信号
Sp 開度指令信号
Ss 分流量制御指令信号
Sx 制御切換信号
Sf 圧力式流量制御出力信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9