(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ボイラ制御手段は、前記主蒸気圧力指令を用いて、前記ボイラへの給水量を決定するためのボイラ入力指令を設定し、該ボイラ入力指令により決定される給水量の一部を前記ボイラの水冷壁をバイパスさせて前記減温器へ供給する請求項1または請求項2に記載の発電システム。
ボイラと、前記ボイラで発生した蒸気を用いて回転する蒸気タービンと、前記蒸気タービンの回転により発電する発電機と、前記ボイラの内部に設けられた過熱器と、前記過熱器の蒸気出口側に設けられた減温器と、前記ボイラと前記蒸気タービンとを接続する蒸気配管に設けられた蒸気加減弁とを備え、発電機要求出力にかかわらずに、前記蒸気加減弁を全開状態で維持する完全変圧運転モードを実行する発電システムの制御方法であって、
発電機要求出力に応じた主蒸気圧力指令を設定する第1過程と、
該主蒸気圧力指令に基づいて前記ボイラを制御する第2過程と
を有し、
前記第1過程においては、発電機要求出力を上昇させる旨の負荷上昇要求信号が入力された場合に、該負荷上昇要求信号の入力から所定時間経過後に、実出力と発電機要求出力との偏差から決定される補正量を前記発電機要求出力に加算し、加算後の発電機要求出力を用いて前記主蒸気圧力指令を設定し、
前記第2過程は、
前記第1過程において設定された主蒸気圧力指令に基づいて補正量を算出する第1演算過程と、
前記発電機要求出力と発電機出力との差分に基づいて前記発電機要求出力を補正する第2演算過程と、
前記第2演算過程において補正された前記発電機要求出力と前記第1演算過程からの補正量とを用いて前記ボイラを制御するための指令であるボイラ入力指令を生成する第3演算過程と
を含む発電システムの制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、発電効率の向上の観点から、蒸気加減弁の弁開度を全開で維持する完全変圧運転が提案されている。完全変圧運転では、蒸気加減弁の弁開度を需要電力である負荷に関係なく全開状態とするため、負荷変動が生じた場合に、蒸気加減弁による蒸気流量の調節が行えず、負荷追従の制御が問題となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、蒸気加減弁の弁開度が全開状態で維持される完全変圧運転モードを採用する場合において、発電機要求出力が上昇した場合に、発電機出力を追従させることのできる発電システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、ボイラと、前記ボイラで発生した蒸気を用いて回転する蒸気タービンと、前記蒸気タービンの回転により発電する発電機と、前記ボイラの内部に設けられた過熱器と、前記過熱器の蒸気出口側に設けられた減温器と、前記ボイラと前記蒸気タービンとを接続する蒸気配管に設けられた蒸気加減弁と、発電機要求出力にかかわらずに、前記蒸気加減弁を全開状態で維持する完全変圧運転モードを有するシステム制御手段とを備え、前記システム制御手段は、発電機要求出力に応じた主蒸気圧力指令を設定する主蒸気圧力設定手段と、前記主蒸気圧力設定手段によって設定された主蒸気圧力指令に基づいて前記ボイラを制御するボイラ制御手段とを備え、前記主蒸気圧力設定手段は、発電機要求出力を上昇させる旨の負荷上昇要求信号が入力された場合に、該負荷上昇要求信号の入力から所定時間経過後において、実出力と発電機要求出力との偏差から決定される補正量を前記発電機要求出力に加算し、加算後の発電機要求出力を用いて前記主蒸気圧力指令を設定し、前記ボイラ制御手段は、前記主蒸気圧力設定手段
によって設定された主蒸気圧力指令に基づいて補正量を算出する第1演算手段と、前記発電機要求出力と発電機出力との差分に基づいて前記発電機要求出力を補正する第2演算手段と、前記第
2演算手段によって補正され
た発電機要求出力と前記第1演算手段からの補正量とを用いて前記ボイラを制御するための指令であるボイラ入力指令を生成する第3演算手段とを有する発電システムを提供する。
【0007】
本発明によれば、主蒸気圧力設定手段では、蒸気加減弁が発電機要求出力に関係なく全開状態が維持される完全変圧運転モードが採用されている場合において、負荷上昇要求信号が入力された場合に、その信号発生時から所定期間経過後において、発電機出力と発電機要求出力との偏差に基づいて発電機要求出力が補正され、補正後の発電機要求出力を用いて主蒸気圧力指令が生成される。負荷上昇要求信号が入力された場合に、この負荷上昇に応じて火炉における燃料量や給水量が増加し、その結果、主蒸気圧力が上昇するまでには時間差が生じる。したがって、負荷上昇要求信号が入力されてから所定期間経過後に発電機出力と発電機要求出力との偏差に基づいて主蒸気圧力指令を補正することにより、主蒸気圧力指令と主蒸気圧力との差の開きを低減させることが可能となる。
更に、ボイラ制御手段においては、発電機要求出力と発電機出力との偏差を発電機要求出力に加算し、加算後の発電機要求出力と主蒸気圧力指令から求められる補正量を用いてボイラ入力指令を生成する。ここで、主蒸気圧力指令には、上述のように、既に発電機出力と発電機要求出力との偏差が補正量として含まれている。従って、このような主蒸気圧力指令を用いて補正量を算出するとともに、発電機要求出力と発電機出力との偏差を用いて発電機要求出力も補正することで、ボイラ入力指令を効果的に増大させることができる。これにより、火炉における燃料投入量及び給水量を速やかに増大させることができ、主蒸気圧力を上昇させることができ、結果、発電機出力を上昇させることができる。
このように、本発明によれば、発電機出力を発電機要求出力の上昇に追従させることができるとともに、主蒸気圧力指令と主蒸気圧力との差の開きを低減させることができる。
【0008】
上記発電システムにおいて、前記所定時間は、主蒸気圧力指令を増加させてから実際に主蒸気圧力が増加し始めるまでに要する時間に基づいて設定されることが好ましい。
【0009】
このような遅延時間とすることで、より効果的に主蒸気圧力を主蒸気圧力指令に追従させることができる。
【0010】
上記発電システムにおいて、前記ボイラ制御手段は、前記主蒸気圧力指令を用いて、前記ボイラへの給水量を決定するためのボイラ入力指令を設定し、該ボイラ入力指令により決定される給水量の一部を前記ボイラの水冷壁をバイパスさせて前記減温器へ供給することが好ましい。
【0011】
このように、ボイラへの給水量の一部をボイラ水冷壁をバイパスさせて減温器へ供給することにより、ボイラにおける水冷壁の過熱度低下を防止することができる。
【0012】
本発明
の参考例としての他の態様は、ボイラと、前記ボイラで発生した蒸気を用いて回転する蒸気タービンと、前記蒸気タービンの回転により発電する発電機と、前記ボイラの内部に設けられた過熱器と、前記過熱器の蒸気出口側に設けられた減温器と、前記ボイラと前記蒸気タービンとを接続する蒸気配管に設けられた蒸気加減弁と、発電機要求出力にかかわらずに、前記蒸気加減弁を全開状態で維持する完全変圧運転モードを有するシステム制御手段とを備え、前記システム制御手段は、発電機要求出力に応じた主蒸気圧力指令を設定する主蒸気圧力設定手段と、前記主蒸気圧力設定手段によって設定された主蒸気圧力指令に基づいて前記ボイラを制御するボイラ制御手段とを備え、前記主蒸気圧力設定手段は、発電機要求出力を上昇させる旨の負荷上昇要求信号が入力されていない期間において、発電機要求出力に応じた第1主蒸気圧力指令を前記主蒸気圧力指令として設定し、前記負荷上昇要求信号が入力されている期間において、前記第1主蒸気圧力指令に所定量加算した第2主蒸気圧力指令を前記主蒸気圧力指令として設定する発電システム
である。
【0013】
上記他の態様に
係る発電システムによれば、蒸気加減弁が発電機要求出力に関係なく全開状態が維持される完全変圧運転モードが採用されている場合において、負荷上昇要求信号が入力された場合に、主蒸気圧力指令を増加させる。この主蒸気圧力指令は、ボイラ制御手段において、ボイラにおける燃料投入量及び給水量を決定させるためのパラメータとして使用されるため、ボイラにおける燃料投入量及び給水量を増加させることができる。ボイラにおける燃料投入量及び給水量が増加することにより、主蒸気圧力が上昇し、発電機出力が上昇する。この結果、発電機出力を発電機要求出力の上昇に追従させることができる。
【0014】
上記
他の態様に係る発電システムにおいて、前記第1主蒸気圧力指令に加算される所定量は、一定量であってもよい。
【0015】
このような構成によれば、第1主蒸気圧力指令に一定量加算するという簡易な処理により、主蒸気圧力指令を容易に増加させることが可能となる。
【0016】
上記
他の態様に係る発電システムにおいて、前記第1主蒸気圧力指令に加算される所定量は、前記発電機要求出力と実出力との差分に基づいて決定されてもよい。
【0017】
このように、発電機要求出力と実出力との差分に基づいて決定される補正値を第1主蒸気圧力指令に加算して主蒸気圧力指令に設定するので、主蒸気圧力指令に発電システムの出力状態を反映させることが可能となる。
【0018】
上記
他の態様に係る発電システムにおいて、前記ボイラ制御手段は、前記主蒸気圧力指令を用いて、前記ボイラへの給水量を決定するためのボイラ入力指令を設定し、該ボイラ入力指令により決定される給水量の一部を前記ボイラをバイパスさせて前記過熱器へ供給することが好ましい。
【0019】
このように、ボイラへの給水量の一部をボイラをバイパスさせて過熱器へ供給することにより、ボイラにおける水冷壁の過熱度低下を防止することができる。
【0020】
本発明は、ボイラと、前記ボイラで発生した蒸気を用いて回転する蒸気タービンと、前記蒸気タービンの回転により発電する発電機と、前記ボイラの内部に設けられた過熱器と、前記過熱器の蒸気出口側に設けられた減温器と、前記ボイラと前記蒸気タービンとを接続する蒸気配管に設けられた蒸気加減弁とを備え、発電機要求出力にかかわらずに、前記蒸気加減弁を全開状態で維持する完全変圧運転モードを実行する発電システムの制御方法であって、発電機要求出力に応じた主蒸気圧力指令を設定する第1過程と、該主蒸気圧力指令に基づいて前記ボイラを制御する第2過程とを有し、前記第1過程においては、発電機要求出力を上昇させる旨の負荷上昇要求信号が入力された場合に、該負荷上昇要求信号の入力から所定時間経過後に、実出力と発電機要求出力との偏差から決定される補正量を前記発電機要求出力に加算し、加算後の発電機要求出力を用いて前記主蒸気圧力指令を設定し、前記第2過程は、前記
第1過程において設定された主蒸気圧力指令に基づいて補正量を算出する第1演算過程と、前記発電機要求出力と発電機出力との差分に基づいて前記発電機要求出力を補正する第2演算過程と、前記第
2演算過程において補正された前記発電機要求出力と前記第1演算
過程からの補正量とを用いて前記ボイラを制御するための指令であるボイラ入力指令を生成する第3演算過程とを含む発電システムの制御方法を提供する。
【0021】
本発明
の参考例としての他の態様は、ボイラと、前記ボイラで発生した蒸気を用いて回転する蒸気タービンと、前記蒸気タービンの回転により発電する発電機と、前記ボイラの内部に設けられた過熱器と、前記過熱器の蒸気出口側側に設けられた減温器と、前記ボイラと前記蒸気タービンとを接続する蒸気配管に設けられた蒸気加減弁とを備え、発電機要求出力にかかわらずに、前記蒸気加減弁を全開状態で維持する完全変圧運転モードを実行する発電システムの制御方法であって、発電機要求出力に応じた主蒸気圧力指令を設定する第1過程と、該主蒸気圧力指令に基づいて前記ボイラを制御する第2過程とを有し、前記第1過程は、発電機要求出力を上昇させる旨の負荷上昇要求信号が入力されていない期間において、発電機要求出力に応じた第1主蒸気圧力指令を前記主蒸気圧力指令として設定し、前記負荷上昇要求信号が入力されている期間において、前記第1主蒸気圧力指令に所定量加算した第2主蒸気圧力指令を前記主蒸気圧力指令として設定する発電システムの制御方法
である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、蒸気加減弁の弁開度が全開状態で維持される完全変圧運転モードを採用する場合において、発電機要求出力が上昇した場合に、発電機出力を追従させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る発電システムの全体構成を概略的に示したブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る主蒸気圧力設定部の制御ロジックを示した図である。
【
図3】第1主蒸気圧力指令と第2主蒸気圧力指令とを比較して示した図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るボイラ制御部の制御ロジックを示した図である。
【
図5】従来の発電システムにおける出力の追従性を示した図であり、
図5(a)は発電機要求出力に対する実出力の追従性を示した図、
図5(b)は主蒸気圧力指令に対する主蒸気圧力の追従性を示した図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る発電システムにおける出力の追従性を示した図であり、
図6(a)は発電機要求出力に対する実出力の追従性を示した図、
図6(b)は主蒸気圧力指令に対する主蒸気圧力の追従性を示した図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る主蒸気圧力設定部の制御ロジックを示した図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る発電システムにおける出力の追従性を示した図であり、
図8(a)は発電機要求出力に対する実出力の追従性を示した図、
図8(b)は主蒸気圧力指令に対する主蒸気圧力の追従性を示した図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る主蒸気圧力設定部の制御ロジックを示した図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係るボイラ制御部の制御ロジックを示した図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る発電システムにおける出力の追従性を示した図であり、
図11(a)は発電機要求出力に対する実出力の追従性を示した図、
図11(b)は主蒸気圧力指令に対する主蒸気圧力の追従性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態に係る発電システム及びその制御方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る発電システム1の全体構成を概略的に示したブロック図である。
図1において、発電システム1は、ボイラ10と、ボイラ10で発生した蒸気を用いて回転する蒸気タービン3と、蒸気タービン3の回転により発電する発電機5と、蒸気タービン3の制御を行うシステム制御装置15とを備えている。
ボイラ10内には、固体燃料または液体燃料を燃焼させる火炉2が設けられている。火炉2に設けられた水冷壁2´において発生した蒸気は、蒸気配管L1によって蒸気タービン3に供給される。蒸気配管L1には、一次過熱器4a、減温器16、二次過熱器4bが直列に設けられている。なお、
図1では、減温器16が1台の場合を示しているが、二次過熱器4bの後段に更に設けられている構成としてもよい。
【0025】
ボイラ10と蒸気タービン3との間の蒸気配管L1には、蒸気タービン3への蒸気供給量を調整するための蒸気加減弁6が設けられている。なお、本実施形態においては、完全変圧運転モードが採用されるので、この蒸気加減弁6は、発電機要求出力MWDに関係なく全開状態が維持される。
【0026】
また、発電システム1は、火炉2に設けられた水冷壁2´に水を供給する給水ポンプ8、蒸気タービン3から排出された蒸気を回収し、水(液体)に戻す復水器9、復水器9にて発生した水を給水ポンプ8へ導く配管L2等を備えている。
【0027】
また、蒸気配管L1における二次過熱器4bと蒸気加減弁6との間には、主蒸気圧力を計測するための圧力センサ11が設けられている。圧力センサ11の計測値は、システム制御装置15に出力され、蒸気タービン3の制御に用いられる。
【0028】
このような構成を備える発電システム1においては、火炉2にて、固体燃料または液体燃料を燃焼させると共に、給水ポンプ8を起動させて火炉2に設けられた水冷壁2´に水を流通させることにより蒸気を発生させる。
火炉2の水冷壁2´にて発生した蒸気は、一次過熱器4aへ導かれて過熱された後、減温器16において減温され、二次過熱器4bにおいて再過熱される。二次過熱器4bにて再過熱された蒸気は蒸気タービン3へ導入され、蒸気タービン3を駆動するために用いられる。蒸気タービン3の回転により発電機5は発電し、この発電電力が、例えば、電力系統(図示略)などに送られる。
【0029】
蒸気タービン3を駆動した後の蒸気は、復水器9へ導かれ、復水器9により水(液体)に戻される。復水器9にて発生した水は、配管L2に設けられている図示しない各種装置を経由して再び給水ポンプ8に戻され、ボイラ2において再び再利用される。
【0030】
次に、
図1に示したシステム制御装置15について説明する。
システム制御装置15は、発電機要求出力MWDに関係なく蒸気加減弁6を全開状態で維持する完全変圧運転モードを有しており、蒸気タービン3に供給される蒸気圧力を制御するための主蒸気圧力指令を設定する主蒸気圧力設定部20(
図2参照)と、主蒸気圧力設定部20によって設定された主蒸気圧力指令に基づいてボイラ2を制御するボイラ制御部40(
図4参照)とを備えている。
【0031】
図2は、主蒸気圧力設定部20の制御ロジックを示した図である。
図2に示すように、主蒸気圧力設定部20は、第1設定部21と、第2設定部22と、信号切換部23とを備えている。
第1設定部21は、発電機要求出力MWDに応じた第1主蒸気圧力指令を設定する。具体的には、第1設定部21は、発電機要求出力MWDを第1主蒸気圧力指令に変換する関数器31と、関数器31からの信号を遅延させる遅延回路32、33とを備えている。
第2設定部22は、発電機要求出力MWDに応じた第2主蒸気圧力指令を設定する。ここで、第2主蒸気圧力指令は、第1主蒸気圧力指令に一定量加算した指令とされる。具体的には、第2設定部22は、発電機要求出力MWDを第2主蒸気圧力指令に変換する関数器34を備えている。
【0032】
図3に、関数器31により得られる第1主蒸気圧力指令と、関数器32により得られる第2主蒸気圧力指令とを比較して示す。
図3からわかるように、第2主蒸気圧力指令は、第1主蒸気圧力指令に対して一定量加算された値とされている。
【0033】
信号切換部23は、要求負荷を上昇させる旨の負荷上昇要求信号が入力された場合に、第2設定部22からの第2主蒸気圧力指令を主蒸気圧力指令として設定し、負荷上昇要求信号が入力されていない場合に、第1設定部21からの第1主蒸気圧力指令を主蒸気圧力指令として設定する。
【0034】
ここで、負荷上昇要求信号とは、中央給電指令所からの指示により、発電所の要求負荷(発電機要求出力MWD)が上昇された場合、遠隔もしくは運転員が手動で、目標とする負荷(発電機出力)に到達するまで入力される信号である。
【0035】
主蒸気圧力設定部20によって設定された主蒸気圧力指令は、
図4に示すボイラ制御部40において用いられる。
図4は、本実施形態に係るボイラ制御部40の制御ロジックを示した図である。
図4に示すように、ボイラ制御部40は、第1演算部42と、加算部(第3演算手段)43とを備えている。
【0036】
第1演算部42は、
図2に示した主蒸気圧力設定部20によって設定された主蒸気圧力指令と圧力センサ11(
図1)によって計測された主蒸気圧力との差分に基づいて補正量を算出する。具体的には、第1演算部42は、主蒸気圧力指令と主蒸気圧力との差分を算出する減算部55と、該差分に基づいてPI制御を行うPI制御部56とを備えている。
【0037】
第1演算部42によって算出された主蒸気圧力に基づく補正量は加算部43に出力される。加算部43は、発電機要求負荷MWDに第1演算部42からの補正量を加算し、ボイラ入力指令BID(Boiler Input Demand)を生成する。
【0038】
ボイラ入力指令BIDは、例えば、火炉2における燃料流量指令及び水冷壁2´における給水流量指令を作成するのに用いられる。ボイラ入力指令BIDが増加すれば、火炉2における燃料流量指令及び水冷壁2´への給水流量指令も増加することとなり、結果として、主蒸気圧力が上昇することとなる。
【0039】
上述のような制御ロジックによれば、通常運転時、換言すると、負荷上昇要求信号が入力されていない状態においては、主蒸気圧力設定部20において第1設定部21により設定された第1主蒸気圧力指令が主蒸気圧力指令としてボイラ制御部40に出力される。
ボイラ制御部40では、主蒸気圧力指令と主蒸気圧力の計測値との偏差に基づく補正量が、発電機要求負荷MWDに加算されてボイラ入力指令BIDが生成され、このボイラ入力指令BIDに基づいて、例えば、火炉2への燃料投入量及び水冷壁2´への給水量が制御される。
【0040】
このような制御が行われている場合において、負荷上昇要求信号が入力されると、主蒸気圧力設定部20では、第1設定部21によって設定される第1主蒸気圧力指令に対して一定量上乗せされた第2主蒸気圧力指令が主蒸気圧力指令として設定される。これにより、ボイラ制御部40における第1演算部42から出力される補正量は、通常時に比べて大きくなり、ボイラ入力指令BIDの値が増加する。
【0041】
これにより、火炉2への燃料投入量及び水冷壁2´への給水量が増加することとなり、主蒸気圧力が次第に増加することとなる。主蒸気圧力が増加することにより、蒸気タービン3の回転数が増加し、発電量が増加することとなる。この結果、負荷変動に応じて、発電機出力を速やかに追従させることが可能となる。
【0042】
以上、説明したように、本実施形態に係る発電システム及びその制御方法によれば、蒸気加減弁6が発電機要求出力に関係なく全開状態が維持される完全変圧運転モードが採用されている場合において、負荷上昇要求信号が入力された場合に、主蒸気圧力指令の値を増加させることにより、ボイラ入力指令BIDを増加させて、ボイラ2における燃料投入量及び給水量を増加させる。これにより、蒸気タービン3に供給される主蒸気圧力を増加させることでき、蒸気タービン3の出力を増加させることが可能となる。この結果、発電機出力を発電機要求出力の上昇に追従させることができる。
【0043】
図5は、従来の発電システム、すなわち、主蒸気圧力指令部20の第2設定部22を有さず、負荷上昇要求信号が入力されている期間も第1設定部21からの第1主蒸気圧力指令を主蒸気圧力指令として設定する発電システムにおける出力の追従性を示した図である。
図5(a)は発電機要求出力MWDに対する実出力(実MW)の追従性を示した図、
図5(b)は主蒸気圧力指令に対する主蒸気圧力の追従性を示した図である。
図6は、本実施形態に係る発電システム1における出力の追従性を示した図であり、
図6(a)は発電機要求出力MWDに対する実出力(実MW)の追従性を示した図、
図6(b)は主蒸気圧力指令に対する主蒸気圧力の追従性を示した図である。
【0044】
図5(a)及び
図6(a)から、従来のシステムに比べて本実施形態に係る発電システムの追従性が優れていることが確認できた。
【0045】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る発電システム及びその制御方法について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る発電システム及びその制御方法は、システム制御装置が備える主蒸気圧力設定部の構成が
図2に示した第1実施形態に係る主蒸気圧力設定部20の構成と異なる。以下、第1実施形態と共通の構成については同様の符号を付して説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0046】
図7は、本実施形態に係る主蒸気圧力設定部20aの制御ロジックを示した図である。
図7に示すように、本実施形態に係る主蒸気圧力設定部20aは、負荷上昇要求信号が入力された場合に、発電機要求出力と実出力との差分に基づいて補正量を決定する。そして、この補正量を第1設定部21によって設定された第1主蒸気圧力指令に加算することで、主蒸気圧力指令を設定する。
【0047】
すなわち、上述した第1実施形態では、負荷上昇要求信号が入力された場合に、第1主蒸気圧力指令に加算される所定量は運転状態にかかわらず一定とされていたが、本実施形態では、発電機要求出力MWDと実出力との差分に基づいて動的に設定される。
【0048】
このように、負荷上昇要求信号が入力されている期間において、発電機要求出力MWDと実出力との差分に基づいて決定される補正値を第1主蒸気圧力指令に加算して主蒸気圧力指令に設定するので、主蒸気圧力に発電システム1の出力状態を反映させることが可能となる。
【0049】
図8に、本実施形態に係る発電システムにおける出力の追従性を示す。
図8(a)は発電機要求出力MWDに対する実出力(実MW)の追従性を示した図、
図8(b)は主蒸気圧力指令に対する主蒸気圧力の追従性を示した図である。
図5(a)及び
図8(a)から、従来のシステムに比べて本実施形態に係る発電システムの追従性が優れていることが確認できた。
【0050】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る発電システム及びその制御方法について、図面を参照して説明する。
図9は、本実施形態に係る主蒸気圧力設定部20bの制御ロジックを示した図、
図10は本実施形態に係るボイラ制御部40bの制御ロジックを示した図である。
図9に示すように、本実施形態に係る主蒸気圧力設定部20bは、上述した第1実施形態に係る主蒸気圧力設定部20における第2設定部22を有していない点、及び、第1設定部21に入力される発電機要求出力MWDを補正する要求補正部70を備えている点で上述した第1実施形態と異なる。
【0051】
要求補正部70は、第1設定部21の信号入力側に設けられている。要求補正部70は、負荷上昇要求信号が入力された場合に、該負荷上昇要求信号の入力から所定期間経過後において、発電機要求出力MWDと実出力との差分に基づいて補正量(要求出力偏差バイアス信号)を設定し、この補正量を発電機要求出力MWDに加算する。
【0052】
より具体的には、要求補正部70は、減算部71、PI制御部72、信号発生器73、遅延回路74、信号切換部75、及び加算部76を備えている。
減算部71は、発電機要求出力MWDと実出力との差分を算出して、PI制御部72に出力する。PI制御部72は、該差分に基づいてPI制御を行い、制御値を信号切換部75に出力する。信号発生器73は、ゼロ信号を発生させ、信号切換部75に出力する。
【0053】
遅延回路74は、負荷上昇要求信号が入力された場合に、該負荷上昇要求信号を所定期間遅延させて信号切換部75に出力する。ここで、遅延回路74の遅延時間は、主蒸気圧力指令を増加させてから実際の主蒸気圧力が増加し始めるまでに要する時間に基づいて設定されることが好ましい。信号切換部75は、遅延回路73から負荷上昇要求信号が入力されている期間において、PI制御部72からの制御値を加算部76に出力し、負荷上昇要求信号が入力されていない期間において信号発生器73からのゼロ信号を加算部76に出力する。加算部76は、発電機要求出力MWDに信号切換部75からの信号を加算し、算出結果を第1設定部21に出力する。これにより、負荷上昇要求信号が入力されている期間においては、発電機要求出力MWDと発電機出力との差分に基づく補正量が所定の遅延時間を持たせて発電機要求出力MWDに加算され、加算後の発電機要求出力MWDを用いて第1設定部21により主蒸気圧力指令が生成されることとなる。
【0054】
また、主蒸気圧力設定部20bによって設定された主蒸気圧力指令は、
図10に示すボイラ制御部40bにおいて用いられる。
図10に示すように、本実施形態に係るボイラ制御部40bは、
図4に示したボイラ制御部40に対して、発電機要求指令を補正する第2演算部45を更に追加した構成とされている。
【0055】
第2演算部45は、発電機要求出力MWDと発電機出力との差分に基づく補正量を算出し、これを発電機要求出力MWDに足しこむことにより、発電機要求出力MWDを増加させる。ここで、実出力は、発電機出力の値を計測することにより得ることができる。
【0056】
具体的には、第2演算部45は、発電機要求出力MWDと実出力との差分を算出する減算部51、該差分に基づいてPI制御を行うPI制御部52、及びPI制御部52からの制御値を発電機要求出力MWDに加算する加算部53を備えている。
【0057】
加算部53から出力される補正後の発電機要求出力MWD´は、加算部43に出力される。加算部43には、第1演算部42から、
図9に示した主蒸気圧力設定部20bによって設定された主蒸気圧力指令と圧力センサ11(
図1)によって計測された主蒸気圧力との差分に基づいて生成された補正量が入力される。
【0058】
加算部43は、第2演算部45によって補正された発電機要求出力MWD´に、第1演算部42からの補正量を加算し、ボイラ入力指令BID(Boiler Input Demand)を生成する。
【0059】
このような構成によれば、通常運転時、換言すると、負荷上昇要求信号が入力されていない状態においては、主蒸気圧力設定部20bにおいて発電機要求負荷MWDに基づいて生成された主蒸気圧力指令がボイラ制御部40bに出力される。
ボイラ制御部40bでは、主蒸気圧力指令と主蒸気圧力の計測値との偏差に基づく補正量が、発電機要求負荷MWDと発電機出力との差分に基づく補正量が加算された補正後の発電機要求出力MWD´に加算されてボイラ入力指令BIDが生成され、このボイラ入力指令BIDに基づいてボイラにおける燃料投入量及び給水量が制御される。
【0060】
このような制御が行われている場合において、負荷上昇要求信号が入力されると、その信号発生時から所定期間経過後において、PI制御部72からの制御値が発電機要求出力MWDに加算されることとなり、加算後の発電機要求出力MWDが第1設定部21に入力信号として入力されることとなる。
これにより、負荷上昇要求信号が発生してから所定期間経過後において、主蒸気圧力指令が増加することとなる。そして、これに伴い、ボイラ入力指令BIDも更に増加することとなる。また、ボイラ制御部40bにおいては、発電機要求出力MWDと発電機出力との偏差が大きくなることから、発電機要求負荷MWDに足しこまれる補正量も増加され、この結果、ボイラ入力指令BIDを効果的に増加させることができる。
この結果、ボイラの出力を速やかに上昇させることができ、主蒸気圧力を上昇させ、発電機出力を発電機要求出力MWDに速やかに追従させることができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る発電システム及びその制御方法によれば、
図10に示すように、ボイラ制御部40bにおいて、発電機要求出力MWDと実出力との偏差をPI制御した値を補正量として発電機要求出力MWDに加算し、加算後の発電機要求出力MWD´を用いてボイラ入力指令BIDを生成する。これにより、火炉2への燃料投入量及び水冷壁2´への給水量を効果的に増加させることができ、ボイラ出力を効果的に増大させることが可能となる。
また、火炉2への燃料投入量及び水冷壁2´への給水量を増加させてから主蒸気圧力が実際に上昇するまでは時間差が生じる。そこで、主蒸気圧力指令設定部20bにおいては、負荷上昇要求信号が入力されてから所定期間経過後において要求補正部70による発電機要求出力MWDの補正を開始させるので、主蒸気圧力指令を負荷上昇要求信号の発生時から遅れて上昇させることができる。これにより、主蒸気圧力指令の動きを主蒸気圧力の動きに合わせることができ、主蒸気圧力指令と主蒸気圧力との差の開きを低減させることが可能となる。
【0062】
図11に、本実施形態に係る発電システムにおける出力の追従性を示す。
図11(a)は発電機要求出力MWDに対する実出力(実MW)の追従性を示した図、
図11(b)は主蒸気圧力指令に対する主蒸気圧力(実測値)の追従性を示した図である。
図5(a)及び
図11(a)から、従来のシステムに比べて本実施形態に係る発電システムの追従性が優れていることが確認できた。また、
図6(b)、
図8(b)、及び
図11(b)から、第1又は第2実施形態に係る発電システムに比べて、主蒸気圧力指令に対する主蒸気圧力の追従性も優れていることが確認できた。
【0063】
なお、上記各実施形態では、負荷上昇の要求が入力された場合に、火炉2への燃料投入量と水冷壁2´への給水量とを増加させるが、火炉2における燃料の応答性よりも給水の応答性の方が早い。従って、燃料流量指令と給水流量指令とが同時に増加されると、まずは、水冷壁2´に供給される水の量が増え、その後、火炉2内の温度が徐々に上がり始めることとなる。このため、水冷壁2´に供給される給水量によっては、水冷壁2´の出口過熱度が低下するおそれがある。このような事態を回避するために、給水量の一部を水冷壁2´をバイパスして1次過熱器4aの蒸気出口側に設置された減温器16に供給し、スプレとして噴霧することとしてもよい。この場合、減温器16においては、スプレ量が増加することとなる。
このように、水冷壁2´に供給する水の一部を減温器16にバイパスさせることで、上述のような水冷壁2´の出口過熱度の低下を防止することが可能となる。
なお、二次過熱器4bの蒸気出口側に減温器が更に設けられている場合には、各減温器のスプレ量を増加させることとしてもよい。