特許第5881471号(P5881471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881471
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】透明エラストマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/87 20060101AFI20160225BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20160225BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20160225BHJP
   C08G 18/04 20060101ALI20160225BHJP
   C08G 18/12 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   C08G18/87
   C08G18/75 Z
   C08G18/73 Z
   C08G18/04
   C08G18/12
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-45408(P2012-45408)
(22)【出願日】2012年3月1日
(65)【公開番号】特開2013-181094(P2013-181094A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】生方 稔
(72)【発明者】
【氏名】原 智隆
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/021363(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/87
C08G 18/04
C08G 18/12
C08G 18/73
C08G 18/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を複数有するウレタンプレポリマーと、チオール基を有するモノチオールまたはポリチオールとを光重合反応させることにより得られる透明エラストマーであって、
前記ウレタンプレポリマーを合成するために用いられるポリイソシアネートが、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのみを含み、 全チオール基の全当量数の、各ウレタンプレポリマーのアリルエーテル基、若しくはビニルエーテル基の全当量数に対する比率が、1.25〜1.5であり、
色相(YI値)(JIS K7105−1981)が、0.5以下であることを特徴とする透明エラストマー。
【請求項2】
伸び(JIS K6251:2010)が300%以上であることを特徴とする請求項1に記載の透明エラストマー。
【請求項3】
前記ウレタンプレポリマーを合成するために用いられるポリオールが、1種類のポリオールのみを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の透明エラストマー。
【請求項4】
当該透明エラストマーが、
チオール基を1個有するモノチオールを含み、そのモノチオールと、前記ウレタンプレポリマーと、チオール基を複数有するポリチオールとを光重合反応させることにより得られることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の透明エラストマー。
【請求項5】
チオール基を1個有するモノチオールと、チオール基を複数有するポリチオールとのチオール基の平均官能基数が、1.9以上であることを特徴とする請求項4に記載の透明エラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を複数有するウレタンプレポリマーと、チオール基を有するモノチオールまたはポリチオールとを光重合反応させることにより得られる透明エラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン,パソコン等の画像表示装置において、液晶ディスプレイ,プラズマディスプレイ,EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示用のディスプレイと、保護パネル,タッチパネル等のパネルとの間に介挿される透明エラストマーの開発が進められている。また、ライトガイドフィルム,フレキシブル光ファイバー,光学用機器の光透過する接合部材やシール部材等において光透過性の高い材料が求められている。そのような透明エラストマーとしては、透明であることが望まれており、下記特許文献1に記載されているように、アクリル系の透明エラストマーが多く採用されている。
【0003】
しかしながら、アクリル系のエラストマーには、アクリル酸に起因する腐食性が有るため、液晶ディスプレイ等に多く用いられるITO(Indium Tin Oxide),IZO(IndiumZinc Oxide)等の透明導電膜に対して悪影響が懸念されている。このため、エラストマ
ーではないが、接着剤、つまり、被接着物への塗布時にはある程度粘度があり、時間の経過,熱,光等により硬化することで、被接着物を接着させるものとして、下記特許文献2に記載されているエンチオール系の接着剤の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4458515号公報
【特許文献2】WO2011/021363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に記載されているエンチオール系の接着材であれば、透明導電膜に対する腐食性は低いことから、その接着剤を透明エラストマーとして用いることができれば、実用性の高いエラストマーを開発することが可能となる。さらに、上記特許文献2に記載のエンチオール系の接着材では、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を有する化合物として、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を有するウレタンプレポリマーが採用されている。ウレタン樹脂は、アクリル樹脂と比較して、一般的に、抗張力が高く、強靭であることが知られており、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を有するウレタンプレポリマーを採用することで、抗張力が高く、強靭な組成物を得ることが可能となる。しかしながら、上記特許文献2に記載されているエンチオール系の組成物は、接着剤として開発されているため、その組成物を、単に、エラストマーに転用させた場合に、透明度が低くなる虞が有る。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、透明度の高いエンチオール系のエラストマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を有するウレタンプレポリマーと、チオール基を有する化合物とのエンチオール反応により得られるエラストマーにおいて、芳香族イソシアネートを含まないポリイソシアネートを用いて上記ウレタンプレポリマーを合成することで、透明度の高いエンチオール系のエラストマーを成形できることの知見を得えた。そして、かかる知見に基き本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明の透明エラストマーは、上記課題を解決するために、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を複数有するウレタンプレポリマーと、チオール基を有するモノチオールまたはポリチオールとを光重合反応させることにより得られる透明エラストマーであって、前記ウレタンプレポリマーを合成するために用いられるポリイソシアネートが、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのみを含み、全チオール基の全当量数の、各ウレタンプレポリマーのアリルエーテル基、若しくはビニルエーテル基の全当量数に対する比率が、1.25〜1.5であり、色相(YI値)(JIS K7105−1981)が、0.5以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の透明エラストマーでは、ウレタンプレポリマーを合成するために用いられるポリイソシアネートが、芳香族イソシアネートを含まず、色相(YI値)(JIS K7105−1981)が、0.5以下とされている。これにより、エンチオール系のエラストマーの透明度を高くすることが可能となり、透明導電膜に対する腐食性の低い透明エラストマーを製造することが可能となる。したがって、本発明の透明エラストマーは、画像表示用のディスプレイと、保護パネル,タッチパネル等のパネルとの間に介挿される素材として適したものとなっている。また、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を有するウレタンプレポリマーが採用されることで、抗張力が高く、強靭なエラストマーを得ることが可能となっている。さらに言えば、本発明の透明エラストマーは、光重合反応により成形されており、熱等を加えるための工程が必要無く、溶剤等も必要無い。したがって、本発明の透明エラストマーによれば、設備投資を抑制し、省スペース化を図ることが可能となる。また、人体への有害性,環境汚染等に対しても非常に有利である。また、ポリイソシアネートとして、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのみを含むことで、エラストマーの透明度を高くすることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1〜6の透明エラストマーを製造するための原料の配合量(モル比)、および、実施例1〜6の透明エラストマーの物性評価を示す表である。
図2】実施例7〜12の透明エラストマーを製造するための原料の配合量(モル比)、および、実施例7〜12の透明エラストマーの物性評価を示す表である。
図3】実施例14〜17及び比較例3、4の透明エラストマーを製造するための原料の配合量(モル比)、および、実施例14〜17及び比較例3、4の透明エラストマーの物性評価を示す表である。
図4】比較例の透明エラストマーを製造するための原料の配合量(モル比)、および、比較例の透明エラストマーの物性評価を示す表である。
図5図1〜4に示すプレポリマーA〜Fを製造するための原料の配合量(重量比)を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の「透明エラストマー」は、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を複数有するウレタンプレポリマーと、チオール基を複数有するポリチオールとに光を照射し、エンチオール反応により得られるものである。そして、上記ウレタンプレポリマーを合成するために用いられるポリイソシアネートは、芳香族イソシアネートを含まず、色相(YI値)(JIS K7105−1981)が、0.5以下とされている。
【0011】
ポリイソシアネートは、1つの分子に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、一般的なウレタンプレポリマーに用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート等が挙げられる。しかしながら、本発明に記載の「ウレタンプレポリマー」を合成するためのポリイソシアネートは、芳香族イソシアネートを含まず、脂肪族イソシアネートと脂環族イソシアネートとの少なくとも一方のみを含む。脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族イソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)等が挙げられる。それら脂肪族イソシアネートと脂環族イソシアネートとの少なくとも一方であれば、種々のイソシアネートのうちの1種または2種以上を併用したものを、上記ウレタンプレポリマーの原料として用いることが可能であるが、特に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのみを含むことで、エラストマーの透明度を高くすることが可能となっている。
【0012】
透明エラストマーの透明度を指標するものとして、JIS K7105−1981に基づく方法(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠して測定された色相(YI値)を採用することが好ましい。色相(YI値)は、それの値が高いほど黄色の度合いが高いことを示しており、0.5以下であることが好ましく、さらに言えば、0.2以下であることが好ましい。これは、アクリル系の透明エラストマーでは、材料の特性上、黄色の度合いが高くなり、アクリル系の透明エラストマーを、画像表示用のディスプレイとパネルとの貼り合わせに使用した場合には、画質への悪影響が懸念されるためである。
【0013】
また、透明エラストマーの透明度を指標するものとして、JIS K7105−1981に基づく方法に準拠して測定された透過率(%)を採用することが可能である。透過率(%)は、それの値が高いほど透明度が高いことを示しており、その値は、92%より高いことが好ましい。また、透明度を指標するものとして、JIS K7105−1981に基づく方法に準拠して測定されたHAZE(%)を採用することが可能である。HAZE(%)は、それの値が低いほど透明度が高いことを示しており、0.5%未満であることが好ましい。
【0014】
また、ポリイソシアネートとの反応によりウレタンプレポリマーを合成するポリオールは、1つの分子に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合反応により得られるものがある。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられ、これらを1種または2種以上併用して用いることが可能である。多価カルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられ、これらを1種または2種以上併用して用いることが可能である。さらに、カプロラクトン、メチルバレロラクトン等を開環縮合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0015】
また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の多価アルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のオキサイドを付加重合させたものが挙げられる。それら種々のポリオールのうちの1種または2種以上を併用したものを、上記ウレタンプレポリマーの原料として用いることが可能である。ただし、上記ウレタンプレポリマーの原料として、1種類のポリオールのみを採用することで、透明度の高いエラストマーを得ることが可能となっている。
【0016】
また、上記ウレタンプレポリマーの合成において、触媒を用いることが好ましい。触媒は、ウレタンプレポリマーの原料として通常に採用されるものであればよく、例えば、アミン系触媒、有機金属系触媒等が挙げられる。アミン系触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N−エチルモルホリン等が挙げられる。有機金属系触媒としては、例えば、スターナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、オクテン酸鉛、オクチル酸カリウム等が挙げられる。それら種々の触媒のうちの1種または2種以上を併用したものを、上記ウレタンプレポリマーの原料として用いることが可能である。
【0017】
上述したポリイソシアネートとポリオールとの合成により得られるウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、1000〜15000であることが好ましい。さらに言えば、2500〜12000であることが好ましく、特に、3000〜5000であることが好ましい。また、官能基数は、1〜3であることが好ましく、特に2であることが好ましい。
【0018】
また、ポリイソシアネートとポリオールとの合成により得られるウレタンプレポリマーに、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を有する化合物を付加することで、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を複数有するウレタンプレポリマーが得られる。合成されたウレタンプレポリマーに付加させるアリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を有する化合物は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に付加可能なものであればよく、アリルエーテルグリコール,ヒドロキシエチルアリルエーテル,ヒドロキシプロピルビニルエーテル,ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0019】
アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を複数有するウレタンプレポリマーとエンチオール反応するポリチオールは、チオール基を複数有するものであればよく、例えば、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル、脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオールが挙げられる。脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオールとしては、エタンジチオール、プロパンジチオール、ヘキサメチレンジチオール、デカメチレンジチオール、トリレン−2,4−ジチオール、キシレンジチオール等が挙げられる。
【0020】
また、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステルでは、メルカプトカルボン酸として、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸等が挙げられ、多価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等が挙げられる。これらの中では、臭気が少ない点で、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類が好ましく、具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)が挙げられる。なお、それら種々のポリチオールのうちの1種または2種以上を併用したものを、上記ウレタンプレポリマーとのエンチオール反応の原料として用いることが可能である。
【0021】
また、上記ウレタンプレポリマーとのエンチオール反応の原料として、ポリチオールだけでなく、チオール基を1個有するモノチオールも採用することで、エンチオール反応により得られるエラストマーの粘着力を高くすることが可能となる。そのモノチオールとしては、例えば、脂肪族モノチオール,メルカプトカルボン酸とアルコールとのエステル等が挙げられる。脂肪族モノチオールとしては、例えば、メチルチオール、エチルチオール、1−プロピルチオール、イソプロピルチオール、1−ブチルチオール、イソブチルチオール、tert−ブチルチオール、1−ペンチルチオール、イソペンチルチオール、3−ペンチルチオール、1−ヘキシルチオール、シクロヘキシルチオール、4−メチル−2−ペンチルチオール、1−ヘプチルチオール、1−オクチルチオール、イソオクチルチオール、2−エチルヘキシルチオール、1−ノニルチオール、イソノニルチオール、1−デシルチオール、1−ドデシルチオール、1−ミリスチルチオール、セチルチオール、1−ステアリルチオール、イソステアリルチオール、2−オクチルデシルチオール、2−オクチルドデシルチオール、2−ヘキシルデシルチオール、ベヘニルチオール等が挙げられる。
【0022】
また、メルカプトカルボン酸とアルコールとのエステルとしては、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート(EHMP)、メトキシブチル−3−メルカプトプロピオネート(MBMP)、ステアリル−3−メルカプトプロピオネート(STMP)、メチル−3−メルカプトプロピオネート(MBM)、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート(NOMP)等が挙げられる。なお、それら種々のモノチオールのうちの1種または2種以上を併用したものを、上記ウレタンプレポリマーとのエンチオール反応の原料として用いることが可能である。
【0023】
粘着力を指標するものとして、JIS A5759:2008に基づく方法(180°引きはがし試験方法)に準拠して測定された粘着力(N/25mm)を採用することが可能であり、その方法に準拠して測定された粘着力(N/25mm)は、15(N/25mm)以上であることが好ましい。さらに言えば、15〜35(N/25mm)であることが好ましく、特に、20〜30(N/25mm)であることが好ましい。
【0024】
また、上述したポリチオールのうちの官能基数が2のものと3以上のものとを併用することで、さらに、適切な粘着力を備えたエンチオール系の透明エラストマーを得ることが可能となっている。具体的には、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を複数有するウレタンプレポリマーと反応が行われるチオール基の平均官能基数、つまり、モノチオールと、チオール基が2個のポリチオールと、チオール基が3個以上のポリチオールとのチオール基の平均官能基数を、1.9以上とすることで、適切な粘着力を備えたエンチオール系の透明エラストマーを得ることが可能となっている。さらに言えば、平均官能基数を2以上とすることで、さらに適切な粘着力を備えたエンチオール系の透明エラストマーを得ることが可能となっている。
【0025】
また、本発明の「透明エラストマー」は、原料にウレタンプレポリマーが採用されることで、抗張力が高く、強靭な透明エラストマーを得ることが可能となっている。抗張力を指標するものとして、JIS K6251:2010に基づく方法(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの引っ張り特性を求める方法)に準拠して測定された引張強度(MPa)及び伸び(%)を採用することが可能であり、それらの値が高いほど抗張力が高いことを示している。ちなみに、上記方法での試験片は、ダンベル状とされており、3号形試験片とされている。上記方法での引張強度(MPa)は、0.05〜5.00であることが好ましく、さらに言えば、0.20〜3.00であることが好ましい。また、伸び(%)は、100〜1500であることが好ましく、さらに言えば、200〜1200であることが好ましい。また粘着力を有する透明エラストマーとしては、伸びは300%以上であることが好ましい。
【0026】
エラストマーの強靭さを指標するものとしては、JIS K7215−1986に基づく方法(プラスチックのデュ路メータ硬さ試験方法)に準拠して測定された硬度(A)を採用することが可能であり、それの値が高いほど強靭であることを示している。硬度(A)は、1〜100であることが好ましく、さらに言えば、3〜90であることが好ましい。
【0027】
また、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を複数有するウレタンプレポリマーと反応が行われるチオール基の量は、特に限定されないが、全チオール基の全当量数の、ウレタンプレポリマーが有するアリルエーテル基、若しくはビニルエーテル基の全当量数に対する比率(エン/チオール比)が1〜1.5となることが好ましい。さらに言えば、1.2〜1.4であることが好ましく、特に、1.3であることが好ましい。
【0028】
また、ウレタンプレポリマーに付加されたアリルエーテル基、若しくはビニルエーテル基と、チオール基との光重合反応を効果的に行うべく、本発明の「透明エラストマー」には、光重合開始剤が含まれることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の化合物が挙げられる。アセトフェノン系としては、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等が挙げられる。
【0029】
ベンゾフェノン系としては、例えば、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。また、チオキサントン系としては、例えば、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等が挙げられる。
【0030】
なお、光重合開始剤の含有量は、上記ウレタンプレポリマー,チオールの合計100質量部当たり0.01〜5質量部であることが好ましく、さらに言えば、0.1〜3質量部であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が少なすぎると、光重合開始能力が不足し、原料の重合が速やかに行われず、好ましくない。一方、光重合開始剤の含有量が多すぎると、重合が過度に促進され、架橋密度が高くなり過ぎたり、架橋構造が不均一に形成されたりして好ましくない。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0032】
<透明エラストマーの原料及び製造>
図1図4に示す配合の原料から、実施例1〜12、14〜17および比較例1、3、4の透明エラストマーを製造した。以下に、各原料の詳細を示す。なお、比較例2は、アクリル系の透明エラストマーである。
【0033】
図1図4に示す各「プレポリマー」は、図5に示す配合(重量比)の原料を以下の方法に従って反応させることで得られる。
【0034】
まず、1リットル容量のセパラブルフラスコにポリオールを図に示す量入れて、窒素を流しながらポリイソシアネートを攪拌しながら図に示す量添加する。内容物が均一になったことを確認後、触媒(0.3g)を添加する。そして、1時間かけて80〜90℃になるように、ゆっくりと昇温する。目的の温度に昇温してから2時間後にイソシアネート基含有率をJIS Z1603−1:2007に基づく方法(ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法)に準拠して測定する。その測定値によって、所定量のイソシアネートが消費されていることを確認する。イソシアネートの消費量が所定量に満たない場合には、反応時間を延長する。
【0035】
所定量のイソシアネートが消費されていることを確認後、アリルエーテル、若しくはビニルエーテルを図に示す量、ゆっくりと滴下し、2時間反応を行わせる。2時間経過後に、再度、上記方法に従ってイソシアネート基含有率を測定し、完全にイソシアネートが消費されているか否かを確認する。そして、イソシアネートの消費が確認されたことを条件として、図に示す各「プレポリマー」が得られる。
【0036】
・ポリオールa;ポリプロピレングリコール(PPG)、商品名:サンニックスPP−1000、三洋化成(株)製、重量平均分子量:1000、水酸基数:2
・ポリオールb;ポリプロピレングリコール(PPG)、商品名:サンニックスPP−3000、三洋化成(株)製、重量平均分子量:3000、水酸基数:2
・ポリオールc;ポリプロピレングリコール(PPG)、商品名:プレミノールS4011、旭硝子(株)製、重量平均分子量:10000、水酸基数:2
・ポリオールd;エチレンオキサイド(EO)付加ポリプロピレングリコール(PPG)、商品名:プレミノール5005、旭硝子(株)製、重量平均分子量:4000、水酸基数:2
・ポリイソシアネートa;水添MDI、商品名:デスモジュールW、バイエル(株)製
・ポリイソシアネートb;TDI、商品名:ルプラネートT−80、BASF(株)製
・アリルエーテル;ヒドロキシエチルアリルエーテル、日本乳化剤(株)製・ビニルエーテル;ヒドロキシブチルビニルエーテル、日本カーバイド(株)製
【0037】
上述のようにして得られた各「プレポリマー」と後述する複数のチオールを図1〜4に示す配合比(モル比)となるように計量し、80℃に加温した後に混合撹拌し粘着剤材料を配合した。ナイフコーターを用いてシリコーン離型PETフィルム(t50μm)上に前記粘着剤材料の厚みが100μmになる様に塗工し、次いでUVランプ(高圧水銀ランプ)にて1200mJ/cm(365nm積算光量)UV照射し、粘着性組成物を得た。
【0038】
・モノチオール;官能基数1、重量分子量218.4、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート、EHMP、SC有機化学(株)製
・チオールA;官能基数2、重量分子量238.6、ブタンジオールビスチオグリコレート、1,4−BDTG、淀化学(株)製
・チオールB;官能基数3、重量分子量398.5、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、TMMP、SC有機化学(株)製
・チオールC;官能基数6、重量分子量783.0、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、DPMP、SC有機化学(株)製
・光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、D
AROCUR1173、BASF社製
【0039】
ちなみに、各ウレタンプレポリマーと反応が行われるチオール基の平均官能基数を、図1図4の「平均官能基数」の欄に示し、全チオール基の全当量数の、各ウレタンプレポリマーのアリルエーテル基、若しくはビニルエーテル基の全当量数に対する比率を、図1図4の「エン/チオール比」の欄に示しておく。
【0040】
<透明エラストマーの物性評価>
上述のように製造された実施例1〜12、14〜17、比較例1、3、4の透明エラストマー、および、比較例2としてのアクリル系の透明エラストマーに対して、以下の方法によって物性評価を行った。
【0041】
まず、エラストマーの透明度を評価するべく、JIS K7105−1981に基づく方法に準拠して透過率(%),HAZE(%),色相(YI値)を測定した。それぞれの測定結果は、図1の「透過率」,「HAZE」,「色相(YI値)」の欄にその値を示しておく。また、エラストマーの抗張力および強靭さを評価するべく、JIS K6251:2010に基づく方法に準拠して引張強度(MPa),伸び(%),硬度(A)を測定した。それぞれの測定結果は、図1図4の「引張強度」,「伸び」,「硬度」の欄にその値を示しておく。
【0042】
そして、エラストマーの粘着力を評価するべく、JIS A5759:2008に基づく方法(180°引きはがし試験方法)に準拠して粘着力(N/25mm)を測定した。その測定結果は、図1図4の「粘着力」の欄にその値を示しておく。
【0043】
また、エラストマーをパネル等に密着させた場合に、その密着させたエラストマーをパネル等から剥がす際の剥がし易さも考慮する必要がある。これは、リワークと呼ばれ、スマートフォン,パソコン等の画像表示装置製造時に、一旦、パネル等に密着されたエラストマーを、パネル等への装着ミスにより剥がす場合があるためである。エラストマーのパネル等からの剥がし易さを評価するべく、まず、シート状のエラストマーをガラスに密着させる。そして、その密着されたエラストマーを剥がし、エラストマーが密着していたガラス面にエラストマーが糊状に残留しているか否かを、目視にて確認した。具体的には、上記JIS A5759:2008に基づく方法(180°引きはがし試験方法)に準拠して粘着力を測定した後に、エラストマーが引きはがされたガラス面を目視にて確認した。ガラス面全体にエラストマーが糊状に残留していた場合には、「×」と評価し、ガラス面にエラストマーが残留して無い場合には、「○」と評価した。この評価を、図1図4の「糊残り」の欄に示しておく。
【0044】
さらに、ITO(Indium Tin Oxide),IZO(Indium Zinc Oxide)等の透明導電膜
が多く用いられるディスプレイに、エラストマーを密着させることを考慮して、ITOフィルムに対する腐食性の試験も行った。具体的には、まず、エラストマーが密着される前のITOフィルムの電気抵抗値を測定しておく。そして、ITOフィルムにエラストマーを密着させ、60℃,90%RHの条件下に240時間放置する。その後に、ITOフィルムからエラストマーを剥がし、エラストマーが剥がされたITOフィルムの電気抵抗値を測定する。その240時間放置後のITOフィルムの電気抵抗値の、放置前のITOフィルムの電気抵抗値に対する比率が、高くなっている場合には、電流が流れ難くなっていることを示しており、ITOフィルムの腐食が進んでいると考えられる。つまり、試験後のITOフィルムの電気抵抗値の、試験前のITOフィルムの電気抵抗値に対する比率が、高いほど、ITOフィルムに対する腐食性が高いことを示している。なお、図1図4の「ITO腐食性」の欄に、その比率を示しておく。
【0045】
さらに、エラストマーの対候性を評価すべく、湿熱試験も行った。具体的には、60℃,90%RHの条件下に240時間放置し、その後に、エラストマーを目視にて評価した。この評価を、図1図4の「湿熱試験」の欄に示しておく。
【0046】
以上の評価結果から、ウレタンプレポリマーを合成する際のポリイソシアネートとして、芳香族イソシアネートを用いることで、透明エラストマーの透明度が低下することが解る。具体的には、比較例1の透明エラストマーの原料であるプレポリマーFを合成する際のポリイソシアネートbは、トリレンジイソシアネート(TDI)であり、芳香族イソシアネートである。一方、実施例1〜12、14〜17の透明エラストマーの原料であるプレポリマーA〜Eを合成する際のポリイソシアネートaは、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)であり、脂環族イソシアネートである。比較例1の透明エラストマーの「色相(YI値)」は、実施例1〜12、14〜17の透明エラストマーの「色相(YI値)」より高く、比較例1の透明エラストマーの「透過性」は、実施例1〜12、14〜17の透明エラストマーの「透過性」より低い。このことから、比較例1の透明エラストマーが黄色っぽく、透明度が低いことが解る。特に、比較例1の透明エラストマーの「色相(YI値)」は、実施例1〜12、14〜17の透明エラストマーの「色相(YI値)」の約4倍の値となっており、イソシアネートとして芳香族イソシアネートを採用することで、透明エラストマーが黄色っぽくなることが解る。このため、ポリイソシアネートとして、芳香族イソシアネートを用いないことが好ましく、脂環族イソシアネートを採用することが好ましい。特に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)を採用することが好ましい。
【0047】
また、ウレタンプレポリマーを合成する際のポリオールとして、EO付加プロピレングリコール(PPG)、つまり、多価アルコールにエチレンオキサイドを付加重合させることにより得られるEO付加ポリオールを用いることで、透明エラストマーの透明度が低下する。具体的には、実施例11の透明エラストマーの原料であるプレポリマーDを合成する際のポリオールdは、EO付加PPGであり、実施例11以外の透明エラストマーの原料であるプレポリマーA〜Cを合成する際のポリオールa〜cは、多価アルコールにプロピレンオキサイドを付加重合させたPPGである。実施例11の透明エラストマーの「色相(YI値)」,「HAZE」は、実施例11以外の透明エラストマーの「色相(YI値)」,「HAZE」より高く、実施例11の透明エラストマーの「透過性」は、実施例11以外の透明エラストマーの「透過性」より低い。このことから、実施例11の透明エラストマーでは、透明度が低くなっていることが解る。特に、実施例11の透明エラストマーの「HAZE」は、実施例11以外の透明エラストマーの「HAZE」の約3〜6倍の値となっている。このため、ポリオールとして、EO付加PPGを用いないことが好ましい。
【0048】
また、全チオール基の全当量数の、各ウレタンプレポリマーのアリルエーテル基、若しくはビニルエーテル基の全当量数に対する比率(エン/チオール比)が高い場合、若しくは、低い場合には、「硬度」、「引張強度」、「伸び」の評価が悪くなっている。具体的には、エン/チオール比が1.2の比較例3の透明エラストマーおよび、エン/チオール比が1.6の比較例4の透明エラストマーでは、エン/チオール比が1.25〜1.4の実施例14〜17の透明エラストマーと比較して、「硬度」、「引張強度」、「伸び」の評価が悪い。このため、エン/チオール比は、1.25〜1.5であることが好ましい。さらに言えば、1.25〜1.45であることが好ましく、特に、1.25〜1.35程度であることが好ましい。
【0049】
また、アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を複数有するウレタンプレポリマーに、ポリチオールだけでなく、モノチオールをもエンチオール反応によって重合させることで、粘着力の高いエラストマーを得ることが可能であることが解る。具体的には、例えば、モノチオールが配合されていない実施例7のエラストマーでは、粘着力が12(N/25mm)であるが、モノチオールが配合されている実施例4〜6,8,12のエラストマーでは、粘着力が15(N/25mm)以上となっており、粘着力の向上にモノチオールが有効であることが解る。
【0050】
また、各ウレタンプレポリマーと反応が行われるチオール基の平均官能基数が少ない場合には、リワーク性が低いことも解る。具体的には、実施例8の透明エラストマーでは、チオール基の平均官能基数が1.72であり、評価試験の「糊残り」の評価は「×」となっている。つまり、チオール基の平均官能基数が低い場合には、ガラス等に密着させた透明エラストマーを剥がすと、ガラス等に糊残りが生じ、リワーク性が低下するのである。このため、チオール基の平均官能基数は、1.9以上、さらに言えば2以上であることが好ましい。
【0051】
最後に、比較例2のエラストマー、つまり、アクリル系のエラストマーと、実施例のエラストマーとを比較すると、全ての物性評価において、実施例のエラストマーが、アクリル系のエラストマーより優れていることが解る。特に、透明度,ITOフィルムに対する腐食性に優れており、実施例のエラストマーが、アクリル系のエラストマーより、ITOフィルムが多く用いられる画像表示用のディスプレイと、保護パネル,タッチパネル等のパネルとの間に介挿される組成物やライトガイドフィルム、フレキシブル光ファイバー、光学用機器の光透過する接合部材やシール部材等として、適していることが分かる。
【0052】
以下、本発明の諸態様について列記する。
【0053】
(1)アリルエーテル基とビニルエーテル基との少なくとも一方を複数有するウレタンプレポリマーと、チオール基を有するモノチオールまたはポリチオールとを光重合反応させることにより得られる透明エラストマーであって、
前記ウレタンプレポリマーを合成するために用いられるポリイソシアネートが、芳香族イソシアネートを含まず、
色相(YI値)(JIS K7105−1981)が、0.5以下であることを特徴とする透明エラストマー。
【0054】
(2)前記ポリイソシアネートが、脂肪族イソシアネートと脂環族イソシアネートとの少なくとも一方のみを含むことを特徴とする(1)項に記載の透明エラストマー。
【0055】
(3)前記ポリイソシアネートが、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのみを含むことを特徴とする(1)項または(2)項に記載の透明エラストマー。
【0056】
(4)前記ウレタンプレポリマーを合成するために用いられるポリオールが、1種類のポリオールのみを含むことを特徴とする(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の透明エラストマー。
【0057】
(5)前記ウレタンプレポリマーを合成するために用いられるポリオールが、多価アルコールにエチレンオキサイドを付加重合させることにより得られるEO付加ポリオールを含まないことを特徴とする(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の透明エラストマー。
【0058】
(6)HAZE(JIS K7105−1981)が0.5%未満であることを特徴とする(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の透明エラストマー。
【0059】
(7)透過率(JIS K7105−1981)が92%より高いことを特徴とする(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の透明エラストマー。
【0060】
(8)当該透明エラストマーが、
チオール基を1個有するモノチオールを含み、そのモノチオールと、前記ウレタンプレポリマーと、チオール基を複数有するポリチオールとを光重合反応させることにより得られることを特徴とする(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の透明エラストマー。
【0061】
(9)チオール基を1個有するモノチオールと、チオール基を複数有するポリチオールとのチオール基の平均官能基数が、1.9以上であることを特徴とする(8)項に記載の透明エラストマー。
【0062】
(10)前記モノチオールが有するチオール基と前記ポリチオールが有するチオール基との全当量数の、前記ウレタンプレポリマーが有するアリルエーテル基、若しくはビニルエーテル基の全当量数に対する比率が1〜1.5であることを特徴とする(8)項または(9)項に記載の透明エラストマー。
【0063】
(11)粘着力(JIS A5759:2008)が、15N/25mm以上であることを特徴とする(8)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の透明エラストマー。
【0064】
(12)前記ウレタンプレポリマーの重量平均分子量が、1000〜15000であることを特徴とする(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の透明エラストマー。
図1
図2
図3
図4
図5