特許第5881474号(P5881474)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5881474ガスタービンケーシングの組立分解治具、これを備えているガスタービン、ガスタービンケーシングの組立方法及び分解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881474
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】ガスタービンケーシングの組立分解治具、これを備えているガスタービン、ガスタービンケーシングの組立方法及び分解方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20160225BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20160225BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20160225BHJP
   F01D 25/28 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   F02C7/00 D
   F02C7/00 E
   F01D25/00 U
   F01D25/00 X
   F01D25/24 R
   F01D25/28 E
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-47222(P2012-47222)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-181503(P2013-181503A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真也
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−076633(JP,A)
【文献】 特開2006−052733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F01D 25/00
F01D 25/24
F01D 25/28
B25B 27/16
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を中心として回転するロータの外周を覆い、周方向の一部を形成する第一周割ケーシングと該周方向の他の一部を形成する第二周割ケーシングとが締結具で接続されているガスタービンケーシングの組立分解治具において、
前記第一周割ケーシングと前記第二周割ケーシングとのうち、一方の周割ケーシングに固定される固定部と、該固定部から延びて他方の周割ケーシングの外面に対向するジャッキ受け部とを有する、
ことを特徴とするガスタービンケーシングの組立分解治具。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンケーシングの組立分解治具において、
前記第一周割ケーシング及び前記第二周割ケーシングは、それぞれ、互いに対向して前記締結具で接続されるフランジ部を有しており、
前記固定部は、前記一方の周割ケーシングの前記フランジ部に固定され、前記ジャッキ受け部は、前記他方の周割ケーシングの前記フランジ部に対向する、
ことを特徴とするガスタービンケーシングの組立分解治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスタービンケーシングの組立分解治具において、
前記ジャッキ受け部に、前記他方の周割ケーシングの外面と間隔をあけて対向し、前記回転軸線に対する径方向に垂直な径方向受け面が形成されている、
ことを特徴とするガスタービンケーシングの組立分解治具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のガスタービンケーシングの組立分解治具において、
前記ジャッキ受け部及び前記固定部には、前記回転軸線が延びる軸方向の一方の側を向き且つ該軸方向に垂直な軸方向受け面が形成されている、
ことを特徴とするガスタービンケーシングの組立分解治具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービンケーシングの組立分解治具を複数備え、
複数の前記組立分解治具のうちの一部は、前記第一周割ケーシングに固定される前記固定部を有する第一径方向治具を成し、複数の該組立分解治具のうちの他の一部は、前記第二周割ケーシングに固定される前記固定部を有する第二径方向治具を成す、
ことを特徴とするガスタービンケーシングの組立分解治具セット。
【請求項6】
請求項5に記載のガスタービンケーシングの組立分解治具セットにおいて、
一対の前記第一径方向治具と、一対の前記第二径方向治具とを備え、
一対の前記第一径方向治具のうち、一方の該第一径方向治具は、前記第一周割ケーシングの周方向の一端部に固定される前記固定部を有し、他方の該第一径方向治具は、該第一周割ケーシングの周方向の他端部に固定される前記固定部を有し、
一対の前記第二径方向治具のうち、一方の該第二径方向治具は、前記第二周割ケーシングの周方向の一端部に固定される前記固定部を有し、他方の該第二径方向治具は、該第二周割ケーシングの周方向の他端部に固定される前記固定部を有する、
ことを特徴とするガスタービンケーシングの組立分解治具セット。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービンケーシングの組立分解治具を少なくとも一対備え、
一対の前記組立分解治具は、それぞれ径方向治具を成し、一方の径方向治具は、前記一方の周割ケーシングの周方向の一端部に固定される前記固定部を有し、他方の径方向治具は、該一方の周割ケーシングの周方向の他端部に固定される前記固定部を有する、
ことを特徴とするガスタービンケーシングの組立分解治具セット。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービンケーシングの組立分解治具を複数備え、
複数の前記組立分解治具は、それぞれ軸方向治具を成し、一部の軸方向治具は、第一軸方向治具として前記第一周割ケーシングに固定される前記固定部を有し、他の一部の軸方向治具は、第二軸方向治具として、いずれかの該第一軸方向治具と組を成し、該組を成す該第一軸方向治具と前記回転軸線が延びる軸方向に間隔をあけて、前記第二周割ケーシングに固定される前記固定部を有し、
前記第一軸方向治具の前記ジャッキ受け部と、該第一軸方向治具と組を成す前記第二軸方向治具の前記固定部とには、それぞれ、前記軸方向で互いに間隔をあけて対向する軸方向受け面が形成されている、
ことを特徴とするガスタービンケーシングの組立分解治具セット。
【請求項9】
請求項8に記載のガスタービンケーシングの組立分解治具セットにおいて、
一対の前記第一軸方向治具と、一対の該第一軸方向治具と組を成す一対の前記第二軸方向治具とを備え、
一対の前記第一軸方向治具のうち、一方の該第一軸方向治具は、前記第一周割ケーシングの周方向の一端部に固定される前記固定部を有し、他方の該第一軸方向治具は、該第一周割ケーシングの周方向の他端部に固定される前記固定部を有し、
一対の前記第二軸方向治具のうち、一方の該第二軸方向治具は、前記一方の第一軸方向治具と前記軸方向に間隔をあけて、前記第二周割ケーシングの周方向の一端部に固定される前記固定部を有し、他方の該第二軸方向治具は、前記他方の第一軸方向治具と前記軸方向に間隔をあけて、該第二周割ケーシングの周方向の他端部に固定される前記固定部を有する、
ことを特徴とするガスタービンケーシングの組立分解治具セット。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービンケーシングの組立分解治具と、
前記第一周割ケーシング及び前記第二周割ケーシングを有する前記ガスタービンケーシングと、
を備えていることを特徴とするガスタービン。
【請求項11】
請求項5から9のいずれか一項に記載のガスタービンケーシングの組立分解治具セットと、
前記第一周割ケーシング及び前記第二周割ケーシングを有するガスタービンケーシングと、
を備えていることを特徴とするガスタービン。
【請求項12】
回転軸線を中心として回転するロータの外周を覆い、周方向の一部を形成する第一周割ケーシングと該周方向の他の一部を形成する第二周割ケーシングとが締結具で接続されるガスタービンケーシングの組立方法において、
前記第一周割ケーシングと前記第二周割ケーシングとのうち、一方の周割ケーシングに固定される固定部と、該固定部から延びて他方の周割ケーシングの外面に対向するジャッキ受け部とが形成されている組立分解治具を準備する治具準備工程と、
前記第一周割ケーシングと前記第二周割ケーシングとのうち、周方向の両端部における径方向の間隔が狭い一方の周割ケーシングに前記組立分解治具の前記固定部を固定する治具固定工程と、
前記第二周割ケーシングを前記第一周割ケーシングと対向するよう配置する周割ケーシング配置工程と、
前記第一周割ケーシングと前記第二周割ケーシングとのうち、周方向の両端部における径方向の間隔が狭い前記一方の周割ケーシングに固定されている前記組立分解治具の前記ジャッキ受け部と、周方向の両端部における径方向の間隔が広い他方の周割ケーシングの外面との間にジャッキを配置するジャッキ配置工程と、
前記ジャッキの両端部の間隔を広げて、前記他方の周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔を狭め、前記一方の周割ケーシングの周方向の両端部に該他方の周割ケーシングの周方向の両端部を対向させるジャッキ操作工程と、
前記両端部が互いに対向している前記一方の周割ケーシングと前記他方の周割ケーシングとを前記締結具で接続するケーシング接続工程と、
を実行することを特徴とするガスタービンケーシングの組立方法。
【請求項13】
回転軸線を中心として回転するロータの外周を覆い、該回転軸線が延びている軸方向の一部を形成する中央側ケーシングと該中央側ケーシングに対して該軸方向の端側を形成する端側ケーシングとが第一締結具で接続されているガスタービンケーシングであって、
前記中央側ケーシングは、その周方向の一部を形成する中央側第一周割ケーシングと、周方向の他の一部を形成する中央側第二周割ケーシングとが第二締結具で接続されて構成されており、前記端側ケーシングは、その周方向の一部を形成して前記中央側第一周割ケーシングと前記軸方向で隣り合って前記第一締結具で接続されている端側第一周割ケーシングと、周方向の他の一部を形成して前記中央側第二周割ケーシングと前記軸方向で隣り合って前記第一締結具で接続されている端側第二周割ケーシングとが、第三締結具で接続されて構成されているガスタービンケーシングの分解方法において、
前記端側第一周割ケーシングと前記端側第二周割ケーシングとのうち、一方の周割ケーシングに固定される固定部と、該固定部から延びて他方の周割ケーシングの外面に対向するジャッキ受け部とが形成されている複数の組立分解治具を準備する治具準備工程と、
複数の前記組立分解治具のうち、第一組立分解治具の前記固定部を前記端側第一周割ケーシングに固定し、該第一組立分解治具の前記ジャッキ受け部と前記軸方向で間隔をあけて第二組立分解治具の前記固定部が対向するよう該固定部を前記端側第二周割ケーシングに固定する治具固定工程と、
前記中央側第一周割ケーシングと前記中央側第二周割ケーシングとを接続している前記第二締結具を外し、前記端側第一周割ケーシングと前記端側第二周割ケーシングとを接続している前記第三締結具を外し、前記中央側第二周割ケーシングと前記端側第二周割ケーシングとを接続している前記第一締結具を外す締結具外し工程と、
前記第一組立分解治具の前記ジャッキ受け部と前記第二組立分解治具の前記固定部との間、又は、前記第一組立分解治具の前記固定部と前記第二組立分解治具の前記ジャッキ受け部との間にジャッキを配置するジャッキ配置工程と、
前記ジャッキの両端部の間隔を広げて、前記中央側第二周割ケーシングから前記端側第二周割ケーシングを前記軸方向に離すジャッキ操作工程と、
前記端側第二周割ケーシングが前記軸方向で離れている状態で前記中央側第二周割ケーシングを前記中央側第一周割ケーシングから離す中央側ケーシング外し工程と、
を実行することを特徴とするガスタービンケーシングの分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周方向の一部を形成する第一周割ケーシングと周方向の他の一部を形成する第二周割ケーシングとが締結具で接続されているガスタービンケーシングの組立分解治具、これを備えているガスタービン、ガスタービンケーシングの組立方法及び分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、例えば、以下の特許文献1に記載されているように、外気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、燃料を圧縮空気に混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する複数の燃焼器と、燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えている。圧縮機は、回転軸線を中心として回転する圧縮機ロータと、この圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、を備えている。また、タービンは、圧縮機ロータと接続され前述の回転軸線を中心として回転するタービンロータと、このタービンロータを覆うタービンケーシングと、このタービンロータを駆動させた排気ガスとしての燃焼ガスが通る排気ケーシングとを備えている。
【0003】
圧縮機ケーシング、タービンケーシング、排気ケーシングは、いずれも筒状を成し、相互に、ボルト及びナットにより接続されて、筒状のガスタービンケーシングを構成している。
【0004】
圧縮機ケーシング、タービンケーシング及び排気ケーシングは、一般的に、いずれも、ケーシングの上側を形成する上半ケーシングと下半ケーシングとを備えている。上半ケーシングと下半ケーシングとは、ボルト及びナットにより接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008− 64043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガスタービンを修理・点検する場合には、ガスタービンケーシングを分解する必要がある。このガスタービンケーシングは自重や熱により経年変形するため、ガスタービンケーシングの分解や分解後の組立が困難になる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、ガスタービンケーシングが自重や熱により変形しても、容易に分解や組立を行うことができるようにするガスタービンケーシングの組立分解治具、これを備えているガスタービン、ガスタービンケーシングの組立方法及び分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための発明に係るガスタービンケーシングの組立分解治具は、
回転軸線を中心として回転するロータの外周を覆い、周方向の一部を形成する第一周割ケーシングと該周方向の他の一部を形成する第二周割ケーシングとが締結具で接続されているガスタービンケーシングの組立分解治具において、前記第一周割ケーシングと前記第二周割ケーシングとのうち、一方の周割ケーシングに固定される固定部と、該固定部から延びて他方の周割ケーシングの外面に対向するジャッキ受け部とを有することを特徴とする。
【0009】
まず、ガスタービンケーシングの分解時における当該組立分解治具の利用形態について説明する。
【0010】
ここで、ガスタービンケーシングは、ロータの回転軸線が延びている軸方向の一部を形成する中央側ケーシングと、中央側ケーシングに対して軸方向の端側を形成する端側ケーシングとが第一締結具で接続されて構成されているとする。さらに、中央側ケーシングは、その周方向の一部を形成する中央側第一周割ケーシングと、周方向の他の一部を形成する中央側第二周割ケーシングとが第二締結具で接続されて構成されているとする。また、端側ケーシングは、その周方向の一部を形成して中央側第一周割ケーシングと軸方向で隣り合って第一締結具で接続されている端側第一周割ケーシングと、周方向の他の一部を形成して中央側第二周割ケーシングと軸方向で隣り合って第一締結具で接続されている端側第二周割ケーシングとが、第三締結具で接続されて構成されているとする。
【0011】
まず、当該組立分解治具のうち、第一組立分解治具の固定部を端側第一周割ケーシングに固定し、第一組立分解治具のジャッキ受け部と軸方向で間隔をあけて第二組立分解治具の固定部が対向するよう、この固定部を端側第二周割ケーシングに固定する。
【0012】
次に、中央側第一周割ケーシングと中央側第二周割ケーシングとを接続している第二締結具を外し、端側第一周割ケーシングと端側第二周割ケーシングとを接続している第三締結具を外し、中央側第二周割ケーシングと端側第二周割ケーシングとを接続している第一締結具を外す。
【0013】
次に、第一組立分解治具のジャッキ受け部と第二組立分解治具の固定部との間、又は、第一組立分解治具の固定部と第二組立分解治具のジャッキ受け部との間にジャッキを配置する。
【0014】
続いて、ジャッキの両端部の間隔を広げて、中央側第二周割ケーシングから端側第二周割ケーシングを軸方向に離す。そして、端側第二周割ケーシングが軸方向で離れている状態で、この中央側第二周割ケーシングを中央側第一周割ケーシングから離す。
【0015】
以上のように、中央側第二周割ケーシングを中央側第一周割ケーシングから離す際には、この中央側第二周割ケーシングから端側第二周割ケーシングが軸方向で離れている状態であるため、この中央側第二周割ケーシングを中央側第一周割ケーシングから容易に離すことができる。
【0016】
次に、ガスタービンケーシングの組立時における当該組立分解治具の利用形態について説明する。
【0017】
ここで、ガスタービンケーシングは、周方向の一部を形成する第一周割ケーシングと周方向の他の一部を形成する第二周割ケーシングとが締結具で接続されて構成されているとする。
【0018】
まず、第一周割ケーシングと第二周割ケーシングとのうち、熱による変形により、周方向の両端部における径方向の間隔が狭い一方の周割ケーシングに組立分解治具の固定部を固定する。
【0019】
次に、第二周割ケーシングを第一周割ケーシングと対向するよう配置する。
【0020】
次に、第一周割ケーシングと第二周割ケーシングとのうち、周方向の両端部における径方向の間隔が狭い一方の周割ケーシングに固定されている組立分解治具のジャッキ受け部と、周方向の両端部における径方向の間隔が広い他方の周割ケーシングの外面との間にジャッキを配置する。
【0021】
続いて、ジャッキの両端部の間隔を広げて、他方の周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔を狭め、一方の周割ケーシングの周方向の両端部に他方の周割ケーシングの周方向の両端部を対向させる。
【0022】
そして、両端部が互いに対向している一方の周割ケーシングと他方の周割ケーシングとを締結具で接続する。
【0023】
以上のように、熱による経年変形により、第一周割ケーシングの周方向の両端部と第二周割ケーシングの周方向の両端部とが互いに対向しなくなっても、強制的に、第一周割ケーシングの周方向の両端部と第二周割ケーシングの周方向の両端部とを互いに対向させることができるので、第一周割ケーシングと第二周割ケーシングとを容易に接続することができる。
【0024】
ここで、前記ガスタービンケーシングの組立分解治具において、前記第一周割ケーシング及び前記第二周割ケーシングは、それぞれ、互いに対向して前記締結具で接続されるフランジ部を有しており、前記固定部は、前記一方の周割ケーシングの前記フランジ部に固定され、前記ジャッキ受け部は、前記他方の周割ケーシングの前記フランジ部に対向してもよい。
【0025】
第一周割ケーシングのフランジ部と第二周割ケーシングのフランジ部とは、互いに接触するものある。このため、当該組立分解治具では、両周割ケーシングに跨るように配置しても、大型化を避けることができる。フランジ部は、ケーシング中で比較的剛性が高いため、ジャッキからの力を受けても、この力による変形を最小限にすることができる。
【0026】
また、前記ガスタービンケーシングの組立分解治具において、前記ジャッキ受け部に、前記他方の周割ケーシングの外面と間隔をあけて対向し、前記回転軸線に対する径方向に垂直な径方向受け面が形成されていてもよい。
【0027】
まず、第一周割ケーシングと第二周割ケーシングとのうち、一方の周割ケーシングに当該組立分解治具を固定する。次に、当該組立分解治具と他方の周割ケーシングの外面との間にジャッキを配置する。そして、ジャッキの両端部の間隔を広げて、他方の周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔を狭める。この際、当該組立分解治具では、ジャッキの両端部が広がる方向に対して、垂直な径方向受け面でジャッキが発生する力を受けるので、ジャッキを安定支持することができる。
【0028】
また、前記ガスタービンケーシングの組立治具において、前記ジャッキ受け部及び前記固定部には、前記回転軸線が延びる軸方向の一方の側を向き且つ該軸方向に垂直な軸方向受け面が形成されていてもよい。
【0029】
まず、複数の当該組立分解治具のうち、第一組立分解治具の固定部を端側第一周割ケーシングに固定し、第一組立分解治具のジャッキ受け部と軸方向で間隔をあけて第二組立分解治具の固定部が対向するよう、この固定部を端側第二周割ケーシングに固定する。次に、第一組立分解治具のジャッキ受け部と第二組立分解治具の固定部との間、又は、第一組立分解治具の固定部と第二組立分解治具のジャッキ受け部との間にジャッキを配置する。そして、ジャッキの両端部の間隔を広げて、中央側第二周割ケーシングから端側第二周割ケーシングを軸方向に離す。この際、当該組立分解治具では、ジャッキの両端部が広がる方向に対して、垂直な軸方向受け面でジャッキが発生する力を受けるので、ジャッキを安定支持することができる。
【0030】
上記目的を達成するための発明に係るガスタービンケーシングの組立分解治具セットは、
前記ガスタービンケーシングの組立分解治具を複数備え、複数の前記組立分解治具のうちの一部は、前記第一周割ケーシングに固定される前記固定部を有する第一径方向治具を成し、複数の該組立分解治具のうちの他の一部は、前記第二周割ケーシングに固定される前記固定部を有する第二径方向治具を成してもよい。
【0031】
当該組立分解治具セットでは、第一周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔が熱影響で広がった場合、第二周割ケーシングに第二径方向治具を固定し、第二径方向治具と第一周割ケーシングの外面との間にジャッキを配置する。そして、ジャッキの両端部の間隔を広げて、第一周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔を狭める。
【0032】
また、当該組立分解治具セットでは、第二周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔が熱影響で広がった場合、第一周割ケーシングに第一径方向治具を固定し、第一径方向治具と第二周割ケーシングの外面との間にジャッキを配置する。そして、ジャッキの両端部の間隔を広げて、第二周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔を狭める。
【0033】
よって、当該組立分解治具セットでは、第一周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔が熱影響で広がった場合でも、第二周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔が熱影響で広がった場合でも、対応することができる。
【0034】
また、当該組立治具セットでは、中央側第一周割ケーシングから中央側第二周割ケーシングを外す際、まず、第一径方向治具の固定部を端側第一周割ケーシングに固定し、第一径方向治具のジャッキ受け部と軸方向で間隔をあけて第二径方向治具の固定部が対向するよう、この固定部を端側第二周割ケーシングに固定する。次に、第一径方向治具のジャッキ受け部と第二径方向治具の固定部との間、又は、第一径方向治具の固定部と第二径方向治具のジャッキ受け部との間にジャッキを配置する。続いて、ジャッキの両端部の間隔を広げて、中央側第二周割ケーシングから端側第二周割ケーシングを軸方向に離す。そして、端側第二周割ケーシングが軸方向で離れている状態で、この中央側第二周割ケーシングを中央側第一周割ケーシングから離す。
【0035】
よって、当該組立分解治具セットでは、中央側第二周割ケーシングから端側第二周割ケーシングが軸方向に離れている状態で、この中央側第二周割ケーシングを中央側第一周割ケーシングから離すことができる。
【0036】
また、前記ガスタービンケーシングの組立分解治具セットにおいて、一対の前記第一径方向治具と、一対の前記第二径方向治具とを備え、一対の前記第一径方向治具のうち、一方の該第一径方向治具は、前記第一周割ケーシングの周方向の一端部に固定される前記固定部を有し、他方の該第一径方向治具は、該第一周割ケーシングの周方向の他端部に固定される前記固定部を有し、一対の前記第二径方向治具のうち、一方の該第二径方向治具は、前記第二周割ケーシングの周方向の一端部に固定される前記固定部を有し、他方の該第二径方向治具は、該第二周割ケーシングの周方向の他端部に固定される前記固定部を有してもよい。
【0037】
当該組立分解治具セットでは、第一周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔が熱影響で広がった場合、第二周割ケーシングの周方向の一端部に一方の第二径方向治具を固定し、この第二周割ケーシングの周方向の他端部に他方の第二径方向治具を固定する。次に、一方の第二径方向治具と第一周割ケーシングの外面との間にジャッキを配置すると共に、他方の第二径方向治具と第一周割ケーシングの外面との間にジャッキを配置する。そして、両方のジャッキの両端部の間隔を広げて、第一周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔を狭める。
【0038】
また、当該組立分解治具セットでは、第二周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔が熱影響で広がった場合、第一周割ケーシングの周方向の一端部に一方の第一径方向治具を固定し、この第一周割ケーシングの周方向の他端部に他方の第一径方向治具を固定する。次に、一方の第一径方向治具と第二周割ケーシングの外面との間にジャッキを配置すると共に、他方の第一径方向治具と第二周割ケーシングの外面との間にジャッキを配置する。そして、両方のジャッキの両端部の間隔を広げて、第二周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔を狭める。
【0039】
また、当該組立治具セットでは、中央側第一周割ケーシングから中央側第二周割ケーシングを外す際、まず、一方の第一径方向治具の固定部を端側第一周割ケーシングの周方向の一端部に固定し、この第一径方向治具のジャッキ受け部と軸方向で間隔をあけて、一方の第二径方向治具の固定部が対向するよう、この固定部を端側第二周割ケーシングの周方向の一端部に固定する。さらに、他方の第一径方向治具の固定部を端側第一周割ケーシングの周方向の他端部に固定し、この第一径方向治具のジャッキ受け部と軸方向で間隔をあけて、他方の第二径方向治具の固定部が対向するよう、この固定部を端側第二周割ケーシングの周方向の他端部に固定する。次に、一方の第一径方向治具のジャッキ受け部と一方の第二径方向治具の固定部との間、又は、一方の第一径方向治具の固定部と一方の第二径方向治具のジャッキ受け部との間にジャッキを配置する。さらに、他方の第一径方向治具のジャッキ受け部と他方の第二径方向治具の固定部との間、又は、他方の第一径方向治具の固定部と他方の第二径方向治具のジャッキ受け部との間にジャッキを配置する。続いて、各ジャッキの両端部の間隔を広げて、中央側第二周割ケーシングから端側第二周割ケーシングを軸方向に離す。そして、端側第二周割ケーシングが軸方向で離れている状態で、この中央側第二周割ケーシングを中央側第一周割ケーシングから離す。
【0040】
上記目的を達成するための発明に係るガスタービンケーシングの組立分解治具セットは、
前記ガスタービンケーシングの組立分解治具を少なくとも一対備え、一対の前記組立分解治具は、それぞれ径方向治具を成し、一方の径方向治具は、前記一方の周割ケーシングの周方向の一端部に固定される前記固定部を有し、他方の径方向治具は、該一方の周割ケーシングの周方向の他端部に固定される前記固定部を有してもよい。
【0041】
当該組立分解治具セットでは、第一周割ケーシングと第二周割ケーシングとのうち、他方の周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔が熱影響で広がった場合、一方の周割ケーシングの周方向の一端部に一方の径方向治具を固定する。次に、一方の周割ケーシングの周方向の他端部に他方の径方向治具を固定する。そして、両方のジャッキの両端部の間隔を広げて、他方の周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔を狭める。
【0042】
上記目的を達成するための発明に係るガスタービンケーシングの組立分解治具セットは、
前記ガスタービンケーシングの組立分解治具を複数備え、複数の前記組立分解治具は、それぞれ軸方向治具を成し、一部の軸方向治具は、第一軸方向治具として前記第一周割ケーシングに固定される前記固定部を有し、他の一部の軸方向治具は、第二軸方向治具として、いずれかの該第一軸方向治具と組を成し、該組を成す該第一軸方向治具と前記回転軸線が延びる軸方向に間隔をあけて、前記第二周割ケーシングに固定される前記固定部を有し、前記第一軸方向治具の前記ジャッキ受け部と、該第一軸方向治具と組を成す前記第二軸方向治具の前記固定部とには、それぞれ、前記軸方向で互いに間隔をあけて対向する軸方向受け面が形成されていてもよい。
【0043】
当該組立治具セットでは、中央側第一周割ケーシングから中央側第二周割ケーシングを外す際、まず、第一軸方向治具の固定部を端側第一周割ケーシングに固定し、第一軸方向治具のジャッキ受け部と軸方向で間隔をあけて第二軸方向治具の固定部が対向するよう、この固定部を端側第二周割ケーシングに固定する。次に、第一軸方向治具のジャッキ受け部と第二軸方向治具の固定部との間、又は、第一軸方向治具の固定部と第二軸方向治具のジャッキ受け部との間にジャッキを配置する。続いて、ジャッキの両端部の間隔を広げて、中央側第二周割ケーシングから端側第二周割ケーシングを軸方向に離す。そして、端側第二周割ケーシングが軸方向で離れている状態で、この中央側第二周割ケーシングを中央側第一周割ケーシングから離す。
【0044】
よって、当該組立分解治具セットでは、中央側第二周割ケーシングから端側第二周割ケーシングが軸方向に離れている状態で、この中央側第二周割ケーシングを中央側第一周割ケーシングから離すことができる。
【0045】
また、前記ガスタービンケーシングの組立分解治具セットにおいて、一対の前記第一軸方向治具と、一対の該第一軸方向治具と組を成す一対の前記第二軸方向治具とを備え、一対の前記第一軸方向治具のうち、一方の該第一軸方向治具は、前記第一周割ケーシングの周方向の一端部に固定される前記固定部を有し、他方の該第一軸方向治具は、該第一周割ケーシングの周方向の他端部に固定される前記固定部を有し、一対の前記第二軸方向治具のうち、一方の該第二軸方向治具は、前記一方の第一軸方向治具と前記軸方向に間隔をあけて、前記第二周割ケーシングの周方向の一端部に固定される前記固定部を有し、他方の該第二軸方向治具は、前記他方の第一軸方向治具と前記軸方向に間隔をあけて、該第二周割ケーシングの周方向の他端部に固定される前記固定部を有してもよい。
【0046】
当該組立治具セットでは、中央側第一周割ケーシングから中央側第二周割ケーシングを外す際、まず、一方の第一軸方向治具の固定部を端側第一周割ケーシングの周方向の一端部に固定し、この第一軸方向治具のジャッキ受け部と軸方向で間隔をあけて、一方の第二軸方向治具の固定部が対向するよう、この固定部を端側第二周割ケーシングの周方向の一端部に固定する。さらに、他方の第一軸方向治具の固定部を端側第一周割ケーシングの周方向の他端部に固定し、この第一軸方向治具のジャッキ受け部と軸方向で間隔をあけて、他方の第二軸方向治具の固定部が対向するよう、この固定部を端側第二周割ケーシングの周方向の他端部に固定する。次に、一方の第一軸方向治具のジャッキ受け部と一方の第二軸方向治具の固定部との間、又は、一方の第一軸方向治具の固定部と一方の第二軸方向治具のジャッキ受け部との間にジャッキを配置する。さらに、他方の第一軸方向治具のジャッキ受け部と他方の第二軸方向治具の固定部との間、又は、他方の第一軸方向治具の固定部と他方の第二軸方向治具のジャッキ受け部との間にジャッキを配置する。続いて、各ジャッキの両端部の間隔を広げて、中央側第二周割ケーシングから端側第二周割ケーシングを軸方向に離す。そして、端側第二周割ケーシングが軸方向で離れている状態で、この中央側第二周割ケーシングを中央側第一周割ケーシングから離す。
【0047】
上記目的を達成するための発明に係るガスタービンは、
前記ガスタービンケーシングの組立分解治具と、前記第一周割ケーシング及び前記第二周割ケーシングを有する前記ガスタービンケーシングと、を備えていることを特徴とする。
【0048】
また、上記目的を達成するための発明に係るガスタービンは、
前記ガスタービンケーシングの組立分解治具セットと、前記第一周割ケーシング及び前記第二周割ケーシングを有するガスタービンケーシングと、を備えていることを特徴とする。
【0049】
また、上記目的を達成するためのガスタービンケーシングの組立方法は、
回転軸線を中心として回転するロータの外周を覆い、周方向の一部を形成する第一周割ケーシングと該周方向の他の一部を形成する第二周割ケーシングとが締結具で接続されるガスタービンケーシングの組立方法において、前記第一周割ケーシングと前記第二周割ケーシングとのうち、一方の周割ケーシングに固定される固定部と、該固定部から延びて他方の周割ケーシングの外面に対向するジャッキ受け部とが形成されている組立分解治具を準備する治具準備工程と、前記第一周割ケーシングと前記第二周割ケーシングとのうち、周方向の両端部における径方向の間隔が狭い一方の周割ケーシングに前記組立分解治具の前記固定部を固定する治具固定工程と、前記第二周割ケーシングを前記第一周割ケーシングと対向するよう配置する周割ケーシング配置工程と、前記第一周割ケーシングと前記第二周割ケーシングとのうち、周方向の両端部における径方向の間隔が狭い前記一方の周割ケーシングに固定されている前記組立分解治具の前記ジャッキ受け部と、周方向の両端部における径方向の間隔が広い他方の周割ケーシングの外面との間にジャッキを配置するジャッキ配置工程と、前記ジャッキの両端部の間隔を広げて、前記他方の周割ケーシングの周方向の両端部における径方向の間隔を狭め、前記一方の周割ケーシングの周方向の両端部に該他方の周割ケーシングの周方向の両端部を対向させるジャッキ操作工程と、前記両端部が互いに対向している前記一方の周割ケーシングと前記他方の周割ケーシングとを前記締結具で接続するケーシング接続工程と、を実行することを特徴とする。
【0050】
当該ガスタービンケーシングの組立方法では、周方向の両端部における径方向の間隔が広い他方の周割ケーシングの両端部の径方向の間隔を狭めて、一方の周割ケーシングの周方向の両端部に他方の周割ケーシングの周方向の両端部を対向させる。このため、当該組立方法では、一方の周割ケーシングと他方の周割ケーシングとを容易に締結具で接続することができる。
【0051】
また、上記目的を達成するためのガスタービンケーシングの分解方法は、
回転軸線を中心として回転するロータの外周を覆い、該回転軸線が延びている軸方向の一部を形成する中央側ケーシングと該中央側ケーシングに対して該軸方向の端側を形成する端側ケーシングとが第一締結具で接続されているガスタービンケーシングであって、前記中央側ケーシングは、その周方向の一部を形成する中央側第一周割ケーシングと、周方向の他の一部を形成する中央側第二周割ケーシングとが第二締結具で接続されて構成されており、前記端側ケーシングは、その周方向の一部を形成して前記中央側第一周割ケーシングと前記軸方向で隣り合って前記第一締結具で接続されている端側第一周割ケーシングと、周方向の他の一部を形成して前記中央側第二周割ケーシングと前記軸方向で隣り合って前記第一締結具で接続されている端側第二周割ケーシングとが、第三締結具で接続されて構成されているガスタービンケーシングの分解方法において、
前記端側第一周割ケーシングと前記端側第二周割ケーシングとのうち、一方の周割ケーシングに固定される固定部と、該固定部から延びて他方の周割ケーシングの外面に対向するジャッキ受け部とが形成されている複数の組立分解治具を準備する治具準備工程と、複数の前記組立分解治具のうち、第一組立分解治具の前記固定部を前記端側第一周割ケーシングに固定し、該第一組立分解治具の前記ジャッキ受け部と前記軸方向で間隔をあけて第二組立分解治具の前記固定部が対向するよう該固定部を前記端側第二周割ケーシングに固定する治具固定工程と、前記中央側第一周割ケーシングと前記中央側第二周割ケーシングとを接続している前記第二締結具を外し、前記端側第一周割ケーシングと前記端側第二周割ケーシングとを接続している前記第三締結具を外し、前記中央側第二周割ケーシングと前記端側第二周割ケーシングとを接続している前記第一締結具を外す締結具外し工程と、前記第一組立分解治具の前記ジャッキ受け部と前記第二組立分解治具の前記固定部との間、又は、前記第一組立分解治具の前記固定部と前記第二組立分解治具の前記ジャッキ受け部との間にジャッキを配置するジャッキ配置工程と、前記ジャッキの両端部の間隔を広げて、前記中央側第二周割ケーシングから前記端側第二周割ケーシングを前記軸方向に離すジャッキ操作工程と、前記端側第二周割ケーシングが前記軸方向で離れている状態で前記中央側第二周割ケーシングを前記中央側第一周割ケーシングから離す中央側ケーシング外し工程と、を実行することを特徴とする。
【0052】
当該ガスタービンケーシングの分解方法では、中央側第二周割ケーシングから端側第二周割ケーシングが軸方向で離れている状態で、中央側第二周割ケーシングを中央側第一周割ケーシングから離す。よって、当該分解方法では、中央側第二周割ケーシングを中央側第一周割ケーシングから容易に離すことができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、ガスタービンケーシングが自重や熱により変形しても、容易にガスタービンケーシングの分解や組立を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの側面図である。
図2】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの要部側面図である。
図3】本発明に係る一実施形態における組立分解治具及びその周りのガスタービンケーシングの斜視図である。
図4】本発明に係る一実施形態における組立分解治具及びその周りのガスタービンケーシングの側面図である。
図5】本発明に係る一実施形態における組立分解治具及びその周りのガスタービンケーシングの平面図である。
図6】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンケーシングの分解手順を示すフローチャートである。
図7】本発明に係る一実施形態の分解過程における組立分解治具及びその周りのガスタービンケーシングの平面図である。
図8】本発明に係る一実施形態の分解過程における組立分解治具及びその周りのガスタービンケーシングの側面図である。
図9】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンケーシングの組立手順を示すフローチャートである。
図10】本発明に係る一実施形態の組立過程における組立分解治具及びその周りの排気ケーシングの平面図である。
図11】本発明に係る一実施形態の組立過程で、軸方向から見た組立分解治具及び排気ケーシングを示す説明図(その1)である。
図12】本発明に係る一実施形態の組立過程で、軸方向から見た組立分解治具及び排気ケーシングを示す説明図(その2)である。
図13】本発明に係る一実施形態の組立過程で、軸方向から見た組立分解治具及び排気ケーシングを示す説明図(その3)である。
図14】本発明に係る一実施形態の変形例における組立分解治具及びその周りのガスタービンケーシングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明に係るガスタービンの一実施形態について、図1図13を参照して詳細に説明する。
【0056】
本実施形態のガスタービンは、図1に示すように、外気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機1と、燃料供給源からの燃料を圧縮空気に混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する複数の燃焼器4と、燃焼ガスにより駆動するタービン2と、を備えている。
【0057】
圧縮機1は、水平方向に延びる回転軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ5と、この圧縮機ロータ5の外周を覆う圧縮機ケーシング10と、を備えている。また、タービン2は、圧縮機ロータ5に接続され前述の回転軸線Arを中心として回転するタービンロータ6と、このタービンロータ6の外周を覆うタービンケーシング20と、このタービンロータ6を駆動させる排気ガスとしての燃焼ガスが通る排気ケーシング30とを備えている。タービンケーシング20は、圧縮機ケーシング10の下流側に接続され、排気ケーシング30は、タービンケーシング20の下流側に接続されている。また、複数の燃焼器4は、タービンケーシング20中の上流側の部分に接続されている。ガスタービンケーシング9は、これら圧縮機ケーシング10とタービンケーシング20と排気ケーシング30とを有して構成されている。なお、以下の説明の都合上、回転軸線Arが延びている方向を軸方向Daとし、回転軸線周りの方向を周方向Dcとする。
【0058】
圧縮機ケーシング10、タービンケーシング20(中央側ケーシング)、排気ケーシング30(端側ケーシング)は、いずれも筒状を成す筒部11,21,31を有している。圧縮機ケーシング10の筒部11の下流端部、タービンケーシング20の筒部21の上下流端部、排気ケーシング30の筒部31の上流端部には、各筒部11,21,31の全周に沿って、回転軸線Arを中心とする径方向Drの外側に向って突出する縦方向フランジ部(軸方向フランジ部)12,22,32が形成されている。
【0059】
圧縮機ケーシング10の下流端部の縦方向フランジ部12には、締結具としてのボルト及びナットにより、タービンケーシング20の上流側端部の縦方向フランジ部22が接続されている。また、タービンケーシング20の下流側端部の縦方向フランジ部22には、排気ケーシング30の上流側端部の縦方向フランジ部32が締結具としてのボルト及びナット(第一締結具)により、に接続されている。
【0060】
圧縮機ケーシング10、タービンケーシング20及び排気ケーシング30は、いずれも、周方向Dcの一部であって各ケーシング10,20,30の下側を形成する下半ケーシング(第一周割ケーシング)10a,20a,30aと、周方向Dcの他の一部であって各ケーシング10,20,30の上側を形成する上半ケーシング(第二周割ケーシング)10b,20b,30bとを有している。
【0061】
圧縮機ケーシング10の下半ケーシング10a及び上半ケーシング10bは、いずれも、圧縮機ケーシング10の筒部11の半分を形成する半筒部11a,11bと、縦方向フランジ部12の周方向Dcにおける半分を形成する軸方向半フランジ部12a,12bと、半筒部11a,11bの周方向Dcの両端部に径方向Drの外側に向って突出形成されている水平方向フランジ部(周方向フランジ部)13a,13bと、を有している。タービンケーシング20の下半ケーシング20a及び上半ケーシング20bも、圧縮機ケーシング10と同様、半筒部21a,21bと、軸方向半フランジ部22a,22bと、水平方向フランジ部23a,23bとを有している。また、排気ケーシング30の下半ケーシング30a及び上半ケーシング30bも、圧縮機ケーシング10と同様、半筒部31a,31bと、軸方向半フランジ部32a,32bと、水平方向フランジ部33a,33bとを有している。
【0062】
各ケーシング10,20,30の下半ケーシング10a,20a,30aの水平方向フランジ部13a,23a,33aと上半ケーシング10b,20b,30bの水平方向フランジ部13b,23b,33bとは、互いに対向して締結具としてのボルト及びナットにより接続されている。圧縮機ケーシング10の下半ケーシング10aと上半ケーシング10bとを接続するボルト及びナットと、タービンケーシング20の下半ケーシング20aと上半ケーシング20bとを接続するボルト及びナット(第二締結具)と、排気ケーシング30の下半ケーシング30aと上半ケーシング30bとを接続するボルト及びナット(第三締結具)とは、互いに同じサイズのものであってもよいが、異なるサイズのものであってもよい。
【0063】
本実施形態のガスタービンは、さらに、ガスタービンケーシング9の組立及び分解を容易化するための組立分解治具セットを備えている。
【0064】
この組立分解治具セットは、図2図5に示すように、同一の組立分解治具40を4個備えている。組立分解治具40は、排気ケーシング30の下半ケーシング30aと上半ケーシング30bとのうち、一方の半ケーシング30a(or30b)に固定される固定部41と、この固定部41から延びて他方の半ケーシング30b(or30a)の外面に対向するジャッキ受け部45とを有している。
【0065】
固定部41は、直方体形状を成し、この直方体の一の面が一方の半ケーシング30a(or30b)の水平方向フランジ部33a(or33b)の外面に接する固定面42を成す。固定部41には、この固定面42と対をなす固定対向面42xからこの固定面42に貫通する複数のボルト孔41vが形成されている。なお、以下では、直方体の固定部41で固定面42と隣接する一の面を第一軸方向受け面43とし、この第一軸方向受け面43と対を成す面を受け対向面43xとし、固定面42及び第一軸方向受け面43に隣接して周方向Dcを向く一対の面をそれぞれ周方向面44とする。
【0066】
ジャッキ受け部45は、固定部41の一の周方向面44に対して垂直な方向に延び且つ固定対向面42xに沿って形成されている径方向受け部46と、この周方向面44に対して垂直な方向に延び且つ受け対向面43xに沿って形成されている軸方向受け部48とを有している。すなわち、ジャッキ受け部45は、L字形を成し、L字の縦線と横線とのうち、一方が径方向受け部46を成し、他方が軸方向受け部48を成している。径方向受け部46で、固定部41の固定面42側の面は、この固定面42と平行な径方向受け面47を成している。また、軸方向受け部48で、固定部41の第一軸方向受け面43側の面は、この第一軸方向受け面43と平行な第二軸方向受け面49を成している。
【0067】
本実施形態では、以上で説明した4個の組立分解治具40が排気ケーシング30に予め固定されている。具体的に、4個の組立分解治具40のうちの2個の組立分解治具40は、第一組立分解治具40aとして、排気ケーシング30の下半ケーシング30aにおける一対の水平方向フランジ部33aに固定されている。2個の第一組立分解治具40aのうち、1個の第一組立分解治具40aは、その固定面42が下半ケーシング30aにおける水平方向フランジ部33aの径方向端面と接し、且つその径方向受け面47が上半ケーシング30bにおける水平方向フランジ部33bの径方向端面に対向している状態で、その固定部41のボルト孔41vに挿通されたボルト50(図5)により、下半ケーシング30aの水平方向フランジ部33aに固定されている。また、残りの1個の第一組立分解治具40aは、下半ケーシング30aにおける径方向反対側の水平方向フランジ部33aに、先に説明した第一組立分解治具40aと同様に固定されている。また、4個の組立分解治具40のうちの残りの2個の組立分解治具40は、第二組立分解治具40bとして、排気ケーシング30の上半ケーシング30bにおける一対の水平方向フランジ部33bに固定されている。2個の第二組立分解治具40bのうち、1個の第二組立分解治具40bは、その固定面42が上半ケーシング30bにおける水平方向フランジ部33bの径方向端面と接し、その径方向受け面47が下半ケーシング30aにおける水平方向フランジ部33aの径方向端面に対向し、且つその第一軸方向受け面43が第一組立分解治具40aの第二軸方向受け面49に対向している状態で、その固定部41のボルト孔41vに挿通されたボルト50により、上半ケーシング30bの水平方向フランジ部33bに固定されている。また、残りの1個の第二組立分解治具40bは、上半ケーシング30bにおける径方向反対側の水平方向フランジ部33bに、先に説明した第二組立分解治具40bと同様に固定されている。
【0068】
次に、修理・点検時等におけるガスタービンケーシング9の分解組立手順について説明する。
【0069】
ガスタービンケーシング9は、自重や長期間の使用による経年変化等で変形して、図1中の太破線Lで示すように、ガスタービンケーシング9の軸方向Daの中央部が下がり、ガスタービンケーシング9の軸方向Daの両端部が相対的に上がる。このようにガスタービンケーシング9が変形すると、軸方向Daの端側に配置されている圧縮機ケーシング10の上半ケーシング10bの下端と排気ケーシング30の上半ケーシング30bの下端との軸方向Daの間隔に対して、圧縮機ケーシング10の上半ケーシング10bの上端と排気ケーシング30の上半ケーシング30bの上端との軸方向Daの間隔が相対的に狭まる。このため、ガスタービンケーシング9の分解時に、軸方向Daの中央部に配置されているタービンケーシング20の上半ケーシング20bと他のケーシングとを接続しているボルト及びナットを全て外しても、タービンケーシング20の上半ケーシング30bを持ち上げることが困難になる。
【0070】
そこで、以下では、まず、修理・点検時等におけるガスタービンケーシング9の分解手順について、図6に示すフローチャートに従って説明する。なお、圧縮機ケーシング10、タービンケーシング20、排気ケーシング30の下半ケーシング10a,20a,30aは、そのままで、これらの上半ケーシング10b,20b,30bのみを外すことで、ガスタービンの基本的な修理・点検が可能であるため、以下では、これらの上半ケーシング10b,20b,30bを外す手順(分解手順)について説明する。
【0071】
まず、以上で説明した複数の組立分解治具40を準備する(S1)。次に、複数の組立分解治具40を排気ケーシング30に固定する(S2)。この際、図4及び図5に示すように、排気ケーシング30の下半ケーシング(第一周割ケーシング)30aに、複数の組立分解治具40のうちの第一組立分解治具(第一軸方向治具)40aをボルト50(図5)で用いて固定する。さらに、この第一組立分解治具40aと軸方向Daに間隔をあけて上半ケーシング(第二周割ケーシング)30bに第二組立分解治具(第二軸方向治具)40bをボルト50で固定する。各組立分解治具40a,40bを固定すると、第一組立分解治具40aの第一軸方向受け面43と第二組立分解治具40bの第二軸方向受け面49とは、軸方向Daに垂直になって互いに対向する。また、第一組立分解治具40aの第二軸方向受け面49と第二組立分解治具40bの第一軸方向受け面43とは、軸方向Daに垂直になって互いに対向する。なお、本実施形態の場合、ガスタービンの製造工程で、複数の組立分解治具40が準備され、複数の組立分解治具40が排気ケーシング30に固定されるため、この組立分解治具40の準備工程(S1)及び固定工程(S2)は、ガスタービンの製造工程に含まれることになる。
【0072】
次に、圧縮機ケーシング10の下半ケーシング10aと上半ケーシング10bとを接続しているボルト及びナット、タービンケーシング20の下半ケーシング20aと上半ケーシング20bとを接続しているボルト及びナット、排気ケーシング30の下半ケーシング30aと上半ケーシング30bとを接続しているボルト及びナットを外す。さらに、圧縮機ケーシング10の上半ケーシング10bとタービンケーシング20の上半ケーシング20bとを接続しているボルト及びナット、タービンケーシング20の上半ケーシング20bと排気ケーシング30の上半ケーシング30bとを接続しているボルト及びナットを外す(S3)。なお、ボルト及びナットを外す順序は、以上の順序に限定されない。
【0073】
次に、図7及び図8に示すように、排気ケーシング30の下半ケーシング30aに固定されている第一組立分解治具40aの第二軸方向受け面49と、排気ケーシング30の上半ケーシング30bに固定されている第二組立分解治具40bの第一軸方向受け面43との間に、ジャッキ60を配置する(S4)。この際、第一組立分解治具40aの第二軸方向受け面49と第二組立分解治具40bの第一軸方向受け面43とのうち、一方の受け面43(or49)にジャッキ60のヘッド面61を接触させ、他方の受け面49(or43)にジャッキ60のベース面62を接触させる。なお、この際使用するジャッキ60は、ネジ等を用いた機械式ジャッキでもよいし、油圧ジャッキでもよく、本実施形態では、ジャッキの駆動形式を問わない。
【0074】
なお、ここでは、第一組立分解治具40aの第二軸方向受け面49と第二組立分解治具40bの第一軸方向受け面43との間にジャッキ60を配置している。しかしながら、第一組立分解治具40aの第一軸方向受け面43と第二組立分解治具40bの第二軸方向受け面49との間にジャッキ60を配置してもよい。また、ここでは、下半ケーシング30aの一対の水平方向フランジ部33a,33aのそれぞれに固定されている第一組立分解治具40a,40aと、上半ケーシング30bの一対の水平方向フランジ部33b,33bのそれぞれに固定されている第二組立分解治具40b,40bとの間にジャッキ60,60を配置している。しかしながら、下半ケーシング30aの一対の水平方向フランジ部33aの一方に固定されている第一組立分解治具40aと、上半ケーシング30bの一対の水平方向フランジ部33bの一方に固定されている第二組立分解治具40bとの間にのみジャッキ60を配置してもよい。
【0075】
また、本実施形態では、複数の組立分解治具40が予め排気ケーシング30に固定されているが、複数の組立分解治具40が予め排気ケーシング30に固定されていない場合には、遅くとも、このジャッキ配置工程(S4)の前に、治具準備工程(S1)及び治具固定工程(S2)を実行する必要がある。
【0076】
次に、ジャッキ60を操作して、ガスタービンケーシング9の軸方向Daを向いているジャッキ60のヘッド面61とベース面62との間隔を広げる(S5)。この結果、排気ケーシング30の上半ケーシング30bと下半ケーシング30aとは、軸方向Daで互いに相反する向きに相対移動する。この場合、排気ケーシング30の下半ケーシング30aは固定されているままであり、排気ケーシング30の上半ケーシング30bの上流側にはタービンケーシング20の上半ケーシング20bが位置している。このため、図8に示すように、排気ケーシング30の上半ケーシング30bは、軸方向Daでタービンケーシング20の上半ケーシング20bから遠ざかる向きに、つまり下流側に移動し、タービンケーシング20の上半ケーシング20bから離れる。このように、ステップ1で準備し、ステップ2で固定した複数の組立分解治具40は、分解時にタービンケーシング20の上半ケーシング30bを軸方向Daに移動させるために利用されるため、軸方向治具として機能する。
【0077】
次に、タービンケーシング20の上半ケーシング20bをクレーン等で持ち上げて、この上半ケーシング20bを下半ケーシング20aから外す(S6)。
【0078】
図1を用いて前述したように、ガスタービンケーシング9が自重により変形して、圧縮機ケーシング10の上半ケーシング10bの下端と排気ケーシング30の上半ケーシング30bの下端との間隔に対して、圧縮機ケーシング10の上半ケーシング10bの上端と排気ケーシング30の上半ケーシング30bの上端との間隔が相対的に狭まったとする。しなしながら、本実施形態では、排気ケーシング30の上半ケーシング30bが下流側に移動して、圧縮機ケーシング10の上半ケーシング10bと排気ケーシング30の上半ケーシング30bとの間の軸方向Daにおける間隔が広がるため、タービンケーシング20の上半ケーシング20bのフランジ等を損傷させることなく、この上半ケーシング20bを容易に外すことができる。
【0079】
次に、排気ケーシング30の上半ケーシング30b及び圧縮機ケーシング10の上半ケーシング10bを順次クレーン等で持ち上げて、これらの上半ケーシング30b,10bを外す(S7,8)。以上で、ガスタービンケーシング9の分解作業が終了する。なお、ここでは、タービンケーシング20の上半ケーシング20bを外してから排気ケーシング30の上半ケーシング30bを外しているが、逆に、排気ケーシング30の上半ケーシング30bを外してからタービンケーシング20の上半ケーシング20bを外してもよい。
【0080】
ところで、圧縮機ケーシング10、タービンケーシング20及び排気ケーシング30の下半ケーシング10a,20a,30aと上半ケーシング10b,20b,30bは、熱の影響により、下半ケーシング10a,20a,30aと上半ケーシング10b,20b,30bとを接続するボルト及びナットを外した段階で、図11及び図12に示すように、上半ケーシング30bの周方向Dcの両端部における径方向(水平方向)Drの間隔が下半ケーシング30aの周方向Dcの両端部における径方向(水平方向)Drの間隔に対して、相対的に広がってしまう又は狭まってしまうことがある。特に、高温ガスに晒される排気ケーシング30は、このような変形傾向が高い。このため、ガスタービンケーシング9を分解した後、再度、組み立てる際に、排気ケーシング30の上半ケーシング30bの周方向Dcの両端部と、この排気ケーシング30の下半ケーシング30aの周方向Dcの両端部における径方向Drの位置とが合わず、上半ケーシング30bと下半ケーシング30aとを接続することが困難になる。
【0081】
そこで、以下では、修理・点検時等におけるガスタービンケーシング9の分解後の組立手順について、図9に示すフローチャートに従って説明する。なお、ここでは、高温ガスに晒される排気ケーシング30の組み立て、つまり排気ケーシング30の上半ケーシング30bをその下半ケーシング30aに接続する手順についてのみ説明する。
【0082】
まず、以上で説明した複数の組立分解治具40を準備する(S11)。次に、複数の組立分解治具40を排気ケーシング30に固定する(S12)。この際、排気ケーシング30の下半ケーシング(第一周割ケーシング)30aと上半ケーシング(第二周割ケーシング)30bとのうち、周方向Dcの両端部における径方向(水平方向)Drの間隔が狭い一方の半ケーシング30a(or30b)に組立分解治具40(40a)の固定部41を固定する。各組立分解治具40の固定部41を一方の半ケーシング30a(or30b)に固定すると、各組立分解治具40の径方向受け面47は、排気ケーシング30の径方向Drに垂直な面となる。ここでは、図11に示すように、周方向Dcの両端部における径方向(水平方向)Drの間隔が上半ケーシング30bよりも下半ケーシング30aの方が狭く、この下半ケーシング30aに組立分解治具40を固定するものとする。なお、本実施形態の場合、ガスタービンの製造工程で、複数の組立分解治具40(40a,40b)が準備され、複数の組立分解治具40が予め排気ケーシング30に固定されるため、分解時における組立分解治具40(40a,40b)の準備工程(S1)及び固定工程(S2)と同様、組立時における組立分解治具40の準備工程(S11)及び固定工程(S12)も、ガスタービンの製造工程に含まれることになる。
【0083】
次に、排気ケーシング30の下半ケーシング30aの内面と上半ケーシング30bの内面が対向するよう、下半ケーシング30aの上に上半ケーシング30bを置く(S13)。
【0084】
次に、図10及び図11に示すように、下半ケーシング30aに固定されている組立分解治具40(40a,40b)の径方向受け面47と、上半ケーシング30bの水平方向フランジ部33aにおける径方向Drの端面33cとの間に、ジャッキ60を配置する(S14)。
【0085】
なお、本実施形態では、複数の組立分解治具40(40a,40b)が予め排気ケーシング30に固定されているが、排気ケーシング30に複数の組立分解治具40(40a,40b)が予め固定されていない場合には、遅くとも、このジャッキ配置工程(S14)の前に、治具準備工程(S11)及び治具固定工程(S12)を実行する必要がある。
【0086】
次に、ジャッキ60を操作して、ガスタービンケーシング9の径方向Drを向いているジャッキ60のヘッド面とベース面との間隔を広げる(S15)。この操作で、排気ケーシング30の上半ケーシング30bは、その周方向Dcの両端部における径方向Drの間隔が狭まり、上半ケーシング30bの周方向Dcの両端部に形成されている水平方向フランジ部33bのボルト孔の位置と、下半ケーシング30aの周方向Dcの両端部に形成されている水平方向フランジ部33aのボルト孔の位置とが一致した段階で、このジャッキ60の操作を停止する。このように、ステップ11で準備し、ステップ12で固定した複数の組立分解治具40は、組立時に下半ケーシング30a又は上半ケーシング30bの径方向Drの変形の矯正に利用されるため、径方向治具として機能する。
【0087】
そして、上半ケーシング30bの周方向Dcの両端部に形成されている水平方向フランジ部33bのボルト孔、及び、下半ケーシング30aの周方向Dcの両端部に形成されている水平方向フランジ部33aのボルト孔にボルトを挿通させ、このボルトのネジ部にナットを捻じ込んで、下半ケーシング30aに上半ケーシング30bを接続する(S16)。以上で、排気ケーシング30の組立作業が終了する。
【0088】
前述したように、排気ケーシング30が熱により変形して、上半ケーシング30bの周方向Dcの両端部における径方向(水平方向)Drの間隔が下半ケーシング30aの周方向Dcの両端部における径方向(水平方向)Drの間隔に対して、相対的に広がってしまったとする。しなしながら、本実施形態では、上半ケーシング30bの周方向Dcの両端部における径方向Drの間隔を狭めて、下半ケーシング30aの周方向Dcの両端部における径方向Drの間隔に合わせているため、上半ケーシング30bを容易に下半ケーシング30aに接続することができる。
【0089】
なお、以上では、上半ケーシング30bの周方向Dcの両端部における径方向Drの間隔が下半ケーシング30aの周方向Dcの両端部における径方向Drの間隔に対して、相対的に広がった場合について説明した。しかしながら、逆に、図12に示すように、上半ケーシング30bの周方向Dcの両端部における径方向Drの間隔が下半ケーシング30aの周方向Dcの両端部における径方向Drの間隔に対して、相対的に狭まった場合でも、対応することができる。この場合、周方向Dcの両端部における径方向Drの間隔が下半ケーシング30aよりも狭い上半ケーシング30bに組立分解治具40(40b)を固定する(S12)。そして、上半ケーシング30bに固定されている組立分解治具40の径方向受け面47と、下半ケーシング30aの水平方向フランジ部33aにおける径方向Drの端面との間に、ジャッキ60を配置し(S14)、このジャッキ60を操作する(S15)。この結果、下半ケーシング30aの周方向Dcの両端部における径方向Drの間隔が狭まることになる。
【0090】
また、以上では、下半ケーシング30aの一対の水平方向フランジ部33a,33aのそれぞれに組立分解治具40(40a,40b),40(40a,40b)を固定し、上半ケーシング30bと各組立分解治具40(40a,40b),40(40a,40b)との間にジャッキ60,60を配置している。しかしながら、図13に示すように、下半ケーシング30aの一対の水平方向フランジ部33aの一方にのみ組立分解治具40(40a,40b)を固定し、上半ケーシング30bと一つの組立分解治具40(40a,40b)との間にジャッキ60を配置してもよい。この場合、上半ケーシング30bの他方の水平方向フランジ部33aと下半ケーシング30aの他方の水平方向フランジ部33bとをボルト及びナット51で仮接続又は本接続してから、一方側のジャッキ60を操作することになる。
【0091】
また、以上は、排気ケーシング30が熱により変形した場合の例であるが、タービンケーシング20や圧縮機ケーシング10が熱により変形した場合も同様に対応することが可能である。また、以上は、ロータが水平方向に延びているガスタービンの例であるが、ロータが鉛直方向に延びているガスタービンであっても、ケーシングが変形した場合、このケーシングの周方向Dcの一部を形成する第一周割ケーシングと周方向Dcの他の一部を形成する第二周割ケーシングに対して、同様の作業を行うことで、このケーシングの変形に対応することができる。
【0092】
次に、図14を参照して、上記実施形態における組立分解治具40の変形例について説明する。
【0093】
本変形例の組立分解治具70は、上記実施形態の組立分解治具40と同様、上半ケーシング30bと下半ケーシング30aとのうち、一方の半ケーシング30a(or30b)に固定される固定部71と、この固定部71から延びて他方の半ケーシング30b(or30a)の外面に対向するジャッキ受け部75とを有している。
【0094】
この固定部71は、上記実施形態の組立分解治具40の固定部41と同様、直方体形状を成し、この直方体の一の面が一方の半ケーシング30a(or30b)の水平方向フランジ部33a(or33b)の外面に接する固定面72を成す。なお、以下では、直方体の固定部71で固定面72と対を成す面を固定対向面72xとし、この固定面72に隣接する一対の面を第一軸方向受け面73とし、固定面72及び第一軸方向受け面73に隣接して周方向Dcを向く一対の面を周方向面74とする。この固定部71には、ボルト孔80が形成されている。このため、この固定部71を水平方向フランジ部33a(or33b)に固定する際には、ボルトで固定する。但し、この固定部71を溶接で固定してもよい。
【0095】
ジャッキ受け部75は、上記実施形態の組立分解治具40のジャッキ受け部45と異なり、直方体形状を成し、固定部71の一の周方向面74に上に固定対向面72xに沿って形成されている。直方体形状のジャッキ受け部75で、固定部71の固定面72側の面であってこの固定面72に平行な面は径方向受け面77を成す。また、このジャッキ受け部75で、固定部71の第一軸方向受け面73と平行な面は第二軸方向受け面79を成す。
【0096】
本変形例の組立分解治具70を径方向治具として機能させる場合も、上記実施形態の組立分解治具40を用いる場合と同様、組立分解治具70の径方向受け面77と、この組立分解治具70が固定されていない方の半ケーシング30b(or30a)の水平方向フランジ部33b(or33b)との間にジャッキ60を配置する。また、本変形例の組立分解治具70を軸方向治具として機能させる場合も、上記実施形態の組立分解治具40を用いる場合と同様、軸方向Daに間隔をあけて配置されている二つの組立分解治具70a,70bの一方の組立分解治具70aの第一軸方向受け面73と他方の組立分解治具70bの第二軸方向受け面79との間にジャッキ60を配置する。
【0097】
以上のように、組立分解治具70は、本変形例のように、固定部71にボルト孔が無く、しかもジャッキ受け部75が直方体形状で、極めて単純な形状であっても、上半ケーシング30bと下半ケーシング30aとのうち、一方の半ケーシング30a(or30b)に固定される固定部71と、この固定部71から延びて他方の半ケーシング30b(or30a)の外面に対向するジャッキ受け部75とを有していれば、その機能を達成させることができる。また、径方向治具として組立分解治具40,70を固定した際、この組立分解治具40,70の径方向受け面47,77は、ケーシングの径方向Drに垂直であると、ジャッキ60の安定性が高まるので好ましいが、ケーシングの径方向Drに垂直である必要はない。さらに、軸方向治具として組立分解治具40,70を固定した際、この組立分解治具40,70の軸方向受け面43,49,73,79は、ケーシングの軸方向Daに垂直であると、ジャッキ60の安定性が高まるので好ましいが、ケーシングの軸方向Daに垂直である必要はない。
【符号の説明】
【0098】
1:圧縮機、2:タービン、4:燃焼器、5:圧縮機ロータ、6:タービンロータ、9:ガスタービンケーシング、10:圧縮機ケーシング、10a,20a,30a:下半ケーシング(第一周割ケーシング)、10b,20b,30b:上半ケーシング(第二周割ケーシング)、12a,12b,22a,22b,32a,32b:軸方向半フランジ部、13a,13b,23a,23b,33a,33b:水平方向フランジ部、40,70:組立分解治具、40a:第一組立分解治具、40b:第二組立分解治具、41,71:固定部、42,72:固定面、43,73:第一軸方向受け面、45,75:ジャッキ受け部、47,77:径方向受け面、49,79:第二軸方向受け面、60:ジャッキ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14