(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881483
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】多流路機器
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20160225BHJP
F28D 9/00 20060101ALI20160225BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20160225BHJP
F28F 9/02 20060101ALN20160225BHJP
【FI】
B01J19/00 321
F28D9/00
B81B1/00
!F28F9/02 301A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-54487(P2012-54487)
(22)【出願日】2012年3月12日
(65)【公開番号】特開2013-188640(P2013-188640A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】松岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】野一色 公二
【審査官】
神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−130987(JP,A)
【文献】
特開2001−295707(JP,A)
【文献】
特開2003−171102(JP,A)
【文献】
特開2001−336896(JP,A)
【文献】
特表平7−503056(JP,A)
【文献】
特開2008−238117(JP,A)
【文献】
特開2007−113801(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/139651(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00−19/32
B81B 1/00−7/04
F28D 9/00
F28F 9/02
G01N 37/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凹状溝を流路として表面に有すると共に、一方側に前記流路の入口又は出口が形成され、他方側に前記流路の出口又は入口が形成されている方形の流路板が当該流路板の厚み方向に積層されてなり、且つ前記流路に導入された媒体の熱交換乃至は化学反応を行わせるユニットを有しており、
前記ユニットは、平面視において前記入口と出口とが異なる位置にある流路板を前記流路板の厚み方向に積層することで、各層に流れる流体が混ざらない構成とされていて、
前記ユニットが、前記流路板の厚み方向に複数積層されていて、
一のユニット内を流通してきて前記出口から流出した媒体を当該ユニットに隣接する他のユニットの前記入口へと流入させる流路が、一のユニット及び他のユニットの外側に設けられた外部流路とされている
ことを特徴とする多流路機器。
【請求項2】
前記ユニットは、前記流路板を互い違いに前記厚み方向に積層することで構成されていて、
前記外部流路は、ユニットの側面に接して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の多流路機器。
【請求項3】
前記外部流路の内部には、一のユニットから流出した媒体を混合して、他のユニットに対して媒体を再分配可能とする再分配手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の多流路機器。
【請求項4】
前記再分配手段は、前記外部流路の内部に媒体流通方向に交わるように配備され且つ媒体が流通可能とされた多孔板からなることを特徴とする請求項3に記載の多流路機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器や化学反応機器に採用されるマイクロチャネルリアクタのように、媒体を流す流路が内部に多数形成された多流路機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温度の低い方から高い方へと熱を伝達する機器として、ヒートポンプ装置が用いられている。ヒートポンプ装置の構成としては、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器と、これらを結ぶ配管から成っている。このヒートポンプ装置に用いられている蒸発器、凝縮器には、薄い伝熱プレートを積層し、その伝熱プレート間にできた隙間に媒体を通す構造の熱交換器(プレート式熱交換器)や、複数の凹状溝を流体の流路として表面に有している流路板が積層されてなる熱交換器を採用することができる。いずれの熱交換器も、内部に媒体を流す多数の流路が形成された多流路機器である。
【0003】
熱交換のための多流路機器としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1には、ガスケットを介して掌合して相互間に熱交換媒体用の交互の通路を形成しさらに前記通路へおよび該通路から媒体を導くための開口および隣接プレート間で相互に衝合して前記通路内に支持点を形成する波形部を備えた複数のプレートからなり、前記複数のプレートのうち少なくとも各外側端における一対の隣接プレートがそれらの周辺ならびに前記開口のまわりにおいて、さらに前記プレート間の前記支持点において恒久的に合体接合されている多流路機器(プレート式熱交換器)が開示されている。
【0004】
一方、従来より、特許文献2に示す如く、互いに可溶性を有する液体(反応剤)同士を接触させ、混合することにより、所望の反応生成物を製造するための方法として、いわゆるマイクロチャネルリアクタと呼ばれる流路形成体を用いるものが知られている。このマイクロチャネルリアクタは、表面に溝が形成された基体を備え、当該溝により微細流路が構成される。この微細流路内に混合対象液体を流すことにより、単位体積あたりにおける混合対象液体同士の接触面積が飛躍的に増大し、このことが当該混合対象液体同士の混合の効率を高めるものとされている。
【0005】
特許文献2は、第1反応剤と第2反応剤を流通させながらそれらを反応させる反応装置であって、特定方向に延びるとともにその方向に沿って前記第1反応剤と前記第2反応剤を流通させる流路を内部に持つ流路構造体を備え、前記流路は、当該流路の入口側に配置されるとともに前記第1反応剤が導入される第1導入路と、前記流路構造体に設けられた仕切壁を挟んで前記第1導入路と離間して配置され、前記第2反応剤が導入される第2導入路と、前記第1導入路と前記第2導入路の下流側に繋がり、前記第1導入路を通じて流れる前記第1反応剤と前記第2導入路を通じて流れる前記第2反応剤を互いに分離した層流の状態で合流させる合流路と、この合流路の下流側に繋がり、前記1反応剤の層流と前記第2反応剤の層流を両反応剤が互いに接触した状態で流通させるとともにそれら両反応剤を互いの接触界面において反応させる反応流路とを含み、前記反応流路の前記接触界面に垂直な層厚方向の寸法は、前記第1導入路の前記層厚方向の寸法と前記第2導入路の前記層厚方向の寸法との和よりも小さくなるように設定されている多流路機器(マイクロチャネルリアクタ)を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−71894号公報
【特許文献2】特開2008−168173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に開示された多流路機器は、その使用用途こそ違えども、機器を構成する1枚の流路板(プレート)における流路本数、流路長さは、流路板自体の寸法、流路の製作加工方法から自ずと限界が発生する。すなわち、プレート1枚あたりの流路本数を増やした場合、流路長さが短くなり、媒体を多量に流すことができるが、多流路機
器内に媒体が留まる時間が短くなり、熱交換効率や反応効率が落ちる状況が発生することになる。一方、プレートにおいて流路長さを長くした場合、流路本数が減るため、媒体を多量に流すことが難しいといった問題が発生する。
【0008】
この対策としては、多流路機器を直列乃至は並列に複数接続して必要量の処理を行うことが考えられるが、接続配管の取り回しの問題や、多流路機器の設置スペースの確保などの課題があった。前述した特許文献1,2は、多流路機器自体の構造を開示するものであって、上記した問題を解決するための指針を開示するものとはなっていない。
そこで、本発明は上記問題点を鑑み、熱交換や化学反応などの所望とする処理を大容量の媒体であっても確実に行うことのできる多流路機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係る多流路機器は、導入された媒体の熱交換乃至は化学反応を行わせるユニットが厚み方向に積層されてなる多流路機器であって、一のユニット内を流通してきた媒体を当該ユニットに隣接する他のユニットに流入させる流路が、一のユニット及び他のユニットの外側に設けられた外部流路とされていることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記外部流路は、ユニットの側面に接して設けられているとよい。
好ましくは、前記外部流路の内部には、一のユニットから流出した媒体を混合して、他のユニットに対して媒体を再分配可能とする再分配手段が設けられているとよい。
好ましくは、前記再分配手段は、前記外部流路の内部に媒体流通方向に交わるように配備され且つ媒体が流通可能とされた多孔板からなるとよい。
なお、本発明にかかる多流路機器の最も好ましい形態は、複数の凹状溝を流路として表面に有すると共に、一方側に前記流路の入口又は出口が形成され、他方側に前記流路の出口又は入口が形成されている方形の流路板が当該流路板の厚み方向に積層されてなり、且つ前記流路に導入された媒体の熱交換乃至は化学反応を行わせるユニットを有しており、前記ユニットは、平面視において前記入口と出口とが異なる位置にある流路板を前記流路板の厚み方向に積層することで、各層に流れる流体が混ざらない構成とされていて、前記ユニットが、前記流路板の厚み方向に複数積層されていて、一のユニット内を流通してきて前記出口から流出した媒体を当該ユニットに隣接する他のユニットの前記入口へと流入させる流路が、一のユニット及び他のユニットの外側に設けられた外部流路とされていることを特徴とする。
好ましくは、前記ユニットは、前記流路板を互い違いに前記厚み方向に積層することで構成されているとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多流路機器を用いることで、熱交換や化学反応などにおいて、所望とする処理を大容量の媒体であっても確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る多流路機器が熱交換器として使用されることを模式的に示した図である。
【
図2】本発明に係る多流路機器の構造を模式的に示した図である。
【
図3】
図2のA−A線矢視であって、本発明に係る多流路機器を構成する流路板の平面図である。
【
図4】本発明に係る多流路機器がリアクタとして使用されることを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る多流路機器を図を基に説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態として、多流路機器1が熱交換器2として利用されている場合について説明する。
この熱交換器2の説明を行う前に、まず、熱交換器2が取り付けられる代表的な装置であるヒートポンプ装置3について説明を行う。
【0014】
図1に示すように、ヒートポンプ装置3は、低温側から高温側へと熱を移動させる装置である。ヒートポンプ装置3は、圧縮機4と、利用側熱交換器2Bと、膨張弁5と、空気熱交換器2Aとを備え、これら圧縮機4、利用側熱交換器2B、膨張弁5及び空気熱交換器2Aは配管6で接続されている。配管6は作動媒体が循環する流路となっている。
配管6内の作動媒体は、空気熱交換器2Aにおいて外部の空気から冷媒への熱移動が行われることにより熱を吸収し、蒸発して圧縮機4に吸い込まれ、この圧縮機4にて高温・高圧のガスに圧縮されて利用側熱交換器2Bに送られる。さらに、冷媒は、利用側熱交換器2Bにおいて冷媒は熱を放出して液体になり、膨張弁5で減圧されて再び空気熱交換器2Aに戻り、液体から気体へと相変化する。
【0015】
さて、上述したヒートポンプ装置3の空気熱交換器2Aや利用側熱交換器2Bとして用いられる熱交換器2に関しては、効率(作動媒体から利用側媒体への熱伝達効率)が高いことが要求される。しかしながら、熱交換器2の効率を上げようとして、熱交換器2を直
列乃至は並列に複数接続して必要量の処理を行おうとしても、配管6の取り回しの問題や、熱交換器2の設置スペースの確保などの課題がある(詳細は、前述の「発明が解決しようとする課題」で述べた通り)。
【0016】
そこで、本実施形態では、空気熱交換器2Aや利用側熱交換器2Bを、導入された作動媒体の熱交換を行う熱交換ユニット7が厚み方向に積層されてなる積層型熱交換器2で構成し、さらに、一の熱交換ユニット7内を流通してきた媒体を当該熱交換ユニット7に隣接する他の熱交換ユニット7に流入させる流路が、熱交換ユニット7の外側に設けられた外部流路8とされている構造としている。
【0017】
以下、空気熱交換器2Aや利用側熱交換器2B(以下、両者をまとめて熱交換器2と呼ぶ)の詳細を説明する。
図2は、熱交換器2の断面構造を示したものである。
熱交換器2は、導入された作動媒体と利用側媒体との熱交換を行う熱交換ユニット7を4つ備えており(ユニットA〜ユニットD)、この4つの熱交換ユニット7を厚み方向(上下方向)に積層した構成を有している。
【0018】
各熱交換ユニット7の構造としては、種々のものが採用可能である。例えば、プレート式熱交換器構造を有していてもよい。
プレート式熱交換器2は、ステンレス板やアルミニウム板等の薄板金属製の伝熱板(伝熱プレート)を複数枚積層し、その伝熱プレート間を作動媒体と熱源の流体が交互に流れることによって、熱交換を行うものである。この伝熱プレートの表面には、伝熱効果を高めるために、ヘリンボーンパターンや波形パターンが加工されている。伝熱プレートの四隅には、作動媒体及び熱源を通過させる孔が設けられている。
【0019】
また、熱交換ユニット7の構造として、複数の凹状溝を流体の流路9として表面に有している流路板12が積層されてなる熱交換器2を採用することができる。
具体的には、
図3に示す如く、流路板12は、例えばステンレスやアルミなどの金属からなる厚さ数ミリメートルの長方形の平板である。流路板12の長手方向(
図3の左右方向)の両端部において、長手方向に沿った一方に作動媒体の入口10として流路9が開放され、他方に作動媒体の出口11として流路9が開放されている。作動媒体の入口10と出口11とは、流路板12の長手方向に沿って対面する位置に形成されている。例えば、
図3(a)に示す如く、平面視した流路板12の右下部に作動媒体の入口10が設けられる場合、作動媒体の出口11は流路板12の左上部に設けられる。
図3(a)に積層される流路板12は、
図3(b)に示すように、平面視した流路板12の右上部に作動媒体の入口10が設けられ、作動媒体の出口11は流路板12の左下部に設けられたものとされる。このように入口10、出口11が異なる位置にある流路板12を互い違いに積層することで、各層に流れる流体が混ざらないユニット構造とされている。
【0020】
流路板12の表面には、冷却プレートの幅方向に蛇行するように複数の流路9が形成されていて、作動媒体の入口10と出口11とをつないでいる。この複数の流路9は、互いにほぼ平行となるように形成されており、互いに交わることはない。従って、入口10からから流入した作動媒体は、流入した流路9だけを通って出口11に達する。
流路9が流路板12の幅方向に蛇行しているのは、限られた面内で可能な限り流路9を長くとることを目的としたからであり、その目的のためには、流路9は、
図3に示した蛇行以外の軌跡を辿っても構わない。
【0021】
以上説明した構成の流路板12が、作動媒体用の流路板12、冷却媒体(水、空気)用の流路板12としてそれぞれ用意され、その上で、交互に積層されて1つの熱交換ユニット7が形成される。
さて、
図2に示すように、以上説明した熱交換ユニット7(単にユニットと呼ぶこともある)が、本実施形態の場合、複数(4つ)備えられ、厚み方向(上下方向)に積み重ねられている。各ユニット7間には、作動媒体や利用側媒体、冷却媒体が混合しないように隔壁板13が配備されている。この隔壁板13は、平面視で熱交換ユニット7と同じ形状とされている。最上段の熱交換ユニット7の上面には、上壁板16が設けられ、最下段の熱交換ユニット7の下面には、下壁板17が設けられている。
【0022】
さらに、熱交換ユニット7内を流通してきた媒体(例えば、作動媒体)を当該熱交換ユニット7に隣接する他の熱交換ユニット7に流入させる流路9が、熱交換ユニット7の外側に設けられた外部流路8の形で配設されている。
詳しくは、ユニットAの作動媒体の出側と、ユニットBの作動媒体の入側が同じ側(
図2の右側)となるように設定されており、両者を縦方向に結ぶ外部流路8ABが設けられている。同様に、ユニットBの作動媒体の出側と、ユニットCの作動媒体の入側が同じ側(
図2の左側)となるように設定されており、両者を縦方向に結ぶ外部流路8BCが設けられている。ユニットCの作動媒体の出側と、ユニットDの作動媒体の入側が同じ側(
図2の右側)となるように設定されており、両者を縦方向に結ぶ外部流路8CDが設けられている。
【0023】
これらの外部流路8(8AB,8BC,8CD)は、断面視で矩形乃至は半円形の筒管から構成されていて、半円形の筒管の開放側が、熱交換ユニット7の側面、言い換えれば熱交換器2の側壁に接して設けられている。
上記した外部流路8ABがある故に、ユニットAを通過した作動媒体は、ユニットAの上方に設置されたユニットBへ導入され、ユニットBを通過した作動媒体は、外部流路8BCを通り、ユニットBの上方に設置されたユニットCへ導入される。その後、ユニットCを通過した作動媒体は、外部流路8CDを通じてユニットCの上方に設置されたユニットDへ導入され、ユニットDから排出された作動媒体は、熱交換器2の外部へと流出する。
【0024】
斯かる熱交換器2であれば、コンパクトな構成ながら、4つの熱交換ユニット7を直列に接続したと同様の高効率で熱交換をすることができるようになる。熱交換ユニット7の段数を増やすことで、作動媒体が流れる流路長さを自由に延ばす(設定する)ことが可能となり、製作制限による流路長さの制限が無くなる。そのため、所望とする熱交換量を確保することが可能となる。
【0025】
ところで、複数の熱交換ユニット7を外部流路8で接続することで、流路長さを延長することができるが、作動媒体が各ユニットの流路9に均一に分配しつつ流れ込む分配効果が後段のユニットへ行くに従って薄れることが、実績として明らかとなってきている。この不都合を回避すべく、本実施形態の利用側熱交換器2Bは、外部流路8の内部に、一の熱交換ユニット7から流出した媒体を混合して、他の熱交換ユニット7に対して媒体を再分配可能とする再分配手段14が設けられている。
【0026】
再分配手段14として、本実施形態の場合、外部流路8の内部に媒体流通方向に交わるように配備され且つ媒体が流通可能とされた多孔板15が採用されている。具体的には、多孔板15は、外部流路8の内側に流れ方向と直交するように設けられた薄板であって、この薄板には、複数の孔が形成されている。この孔の形状、個数、内径、配置ピッチなどは、作動媒体の流量や粘度を勘案して決定すればよく、作動媒体の流れを妨げることなく、且つ作動媒体を攪拌・混合することが可能なものとすることが好ましい。なお、再分配手段14として、編目構造体などを採用することもできる。
【0027】
多孔板15は、外部流路8の中途部であればどの位置に設けてもよいが、本実施形態の場合、外部流路8の中央部(上下に沿った中央部)に配設され、多孔板15の一辺は隔壁板13に接して固定されるようになっている。なお、気体および液体などの単一相の場合は、多孔板15を、熱交換ユニット7の作動媒体の出口11又は入口10に配備してもよい。また、気液混相流などで流路ごとに均一に分配したい場合などは、多孔板15を、熱交換ユニット7の作動媒体の入口10に配備してもよい。
【0028】
ある熱交換ユニット7(例えばユニットA)から流出し、次の熱交換ユニット7(ユニットB)へ流動する作動媒体は、多孔板15を通過することで攪拌混合され、ユニットB内に形成された流体流路9に均一に分配して流れ込むようになる。斯かる作用(更なる均一性をもたすために流体を一旦排出後、ヘッダ内において多孔板15などを利用し、再分配を行い、均一な混合を得たのち反応を継続する)は全ての多孔板15で実現される。そのため、各熱交換ユニット7では均一に作動媒体が流れ、最大限の熱交換がなされることとなり、利用側熱交換器2Bとして最大限の効率を引き出すことが可能となる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態として、多流路機器1がマイクロチャネルリアクタ20として利用されている場合について説明する。
【0029】
マイクロチャネルリアクタ20は、
図3に示すような、表面に流路9が蛇腹状に形成された流路板12を備え、この流路板12が厚み方向に多数積層されてなる。流路板12に形成された流路9は、本実施形態の技術分野においてマイクロチャネルと呼ばれるものであり、幅1ミリ前後の微細な流路である。このマイクロチャネルと呼ばれる流路9は、例えばケミカルエッチングなどのエッチング技術を用いて形成されるものであり、その深さは、流路幅の0.4〜0.6倍程度である。
【0030】
このマイクロチャネルリアクタ20内の微小な流路9内に混合対象液体を流すことにより、単位体積あたりにおける混合対象液体同士の接触面積が飛躍的に増大し、このことが当該混合対象液体同士の混合の効率が高まる。
図4は、この実施の形態にかかる液体混合装置21を示す。この装置は、互いに可溶性を有する第1液体及び第2液体を混合させるためのものであり、当該混合のためのマイクロチャネルリアクタ20と、このマイクロチャネルリアクタ20に第1液体を供給する第1液体供給部22と、マイクロチャネルリアクタ20に第2液体を供給する第2液体供給部23を備える。
【0031】
このような液体混合装置21に備えられたマイクロチャネルリアクタ20に関しても、
図2,
図3に示すような構造を採用することができる。すなわち、一の反応ユニット24(第1実施形態の熱交換ユニット7に対応)内を流通してきた媒体を当該反応ユニット24に隣接する他の反応ユニット24に流入させる流路9が、反応ユニット24の外側に設けられた外部流路8とされている。この外部流路8の内部には、一の反応ユニット24から流出した媒体を混合して、他の反応ユニット24に対して媒体を再分配可能とする多孔板15などからなる再分配手段14が設けられている。
【0032】
斯かる構成のマイクロチャネルリアクタ20によれば、コンパクトな構成ながら、4つの反応ユニット24を直列に接続したと同様の高効率で化学反応を行うことができるようになる。反応ユニット24の段数を増やすことで、第1液体及び第2液体が流れる流路長さを自由に延ばす(設定する)ことが可能となり、製作制限による流路長さの制限が無くなる。そのため、所望とする化学反応を実現することが可能となる。
【0033】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0034】
1 多流路機器
2 熱交換器
2A 空気熱交換器
2B 利用側熱交換器
3 ヒートポンプ装置
4 圧縮機
5 膨張弁
6 配管
7 熱交換ユニット
8 外部流路
8AB 熱交換ユニットAから熱交換ユニットBへの外部流路
8BC 熱交換ユニットBから熱交換ユニットCへの外部流路
8CD 熱交換ユニットCから熱交換ユニットDへの外部流路
9 流路
10 入口
11 出口
12 流路板
13 隔壁板
14 再分配手段
15 多孔板
16 上壁板
17 下壁板
20 マイクロチャネルリアクタ
21 液体混合装置
22 第1液体供給部
23 第2液体供給部
24 反応ユニット