(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上壁と、該上壁の周縁に立設する側壁と、該側壁の端部で形成される開口部と、該開口部の全周縁に形成されるフランジ部とを備え、深さ方向に沿って内側に膨出すると共に外周面で内側に凹むコルゲート部を前記側壁に複数設けてある水処理装置において、
前記コルゲート部の横側壁に外側に膨出する増肉部を設け、該増肉部の裏側に容器内側に膨出する凸部を設け、同じ形状の別の水処理装置を同じ姿勢で積み重ねたときに、前記増肉部に対して、前記別の水処理装置の凸部が当接し、
一対の前記増肉部及び前記凸部を、前記コルゲート部の横側壁のうちの一方に向いている横側壁、及び前記一方に向いている横側壁とは異なる方向に向いている別の横側壁に設けてある水処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の浄化槽の外槽容器における肉厚の段部は、コルゲート部の底壁から外側に膨出するように設けられている。
別の外槽容器を積み重ねる際、そのフランジ部の角が、下方の外槽容器の段部に確実に載置されるようにするためには、段部に当接する部分のフランジ部の角が丸くならないようにする必要がある。
即ち、フランジ部の角の曲率半径ができるだけ小さくなるように成形しなければならない。
しかしながら、浄化槽の外槽容器の成型方法であるシートモールドコンパウンド(SMC)成型においては、一般的に、不均一な硬化による反りや、極端なガラスの配向による屈曲方向の強度不足を避けるため、フランジの角のような屈曲部はできるだけ大きな曲率半径を設けるのが良く、最小でも入隅曲率半径を板厚程度にすることが望ましいと言われている。
そこで、フランジの角のように大きな曲率半径の屈曲部を段部に当接する当接面にしようとすると、屈曲部に角を立たせて当接面を形成するための駄肉が必要となり、段部が一層厚肉となり材料コストが嵩む。
本発明の目的は、別物のスペーサを必要とすることなく積み重ねて保管することができる大型容器を、簡便且つ余分なコストを掛けずに製造することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の
水処理装置に係る第1特徴構成は、上壁と、該上壁の周縁に立設する側壁と、該側壁の端部で形成される開口部と、該開口部の全周縁に形成されるフランジ部とを備え、深さ方向に沿って内側に膨出すると共に外周面で内側に凹むコルゲート部を前記側壁に
複数設けてある
水処理装置において、前記コルゲート部の横側壁に外側に膨出する増肉部を設け、該増肉部の裏側に容器内側に膨出する凸部を設け、同じ形状の別の
水処理装置を同じ姿勢で積み重ねたときに、前記増肉部に対して、前記別の
水処理装置の凸部が当接
し、一対の前記増肉部及び前記凸部を、前記コルゲート部の横側壁のうちの一方に向いている横側壁、及び前記一方に向いている横側壁とは異なる方向に向いている別の横側壁に設けてある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、
水処理装置を積み重ねたときに、下方の
水処理装置のコルゲート部の横側壁に設けた増肉部に対して、上方の
水処理装置の増肉部の裏側に設けてある凸部が当接する。
即ち、本構成においては、下方の
水処理装置の増肉部に対して、上方の
水処理装置のフランジ部とは別の部分である、凸部が当接するように構成されている。
そのため、本構成の
水処理装置では、フランジ部の角が丸みを帯びていても問題はなく、特に当接部分のフランジ部の角を立たせるようにする必要はない。
従って、本構成によれば、フランジ部の成形作業においてフランジ部の角の曲率半径を大きく設定してもよく、当接部分のフランジ部の角を立たせるための駄肉も不要となるため、材料コストが嵩むこともない。
【0008】
例えば、
水処理装置が、一対の増肉部及び凸部を2箇所に備える場合、
水処理装置を積み重ねたときの下方の
水処理装置と上方の
水処理装置との当接箇所は2箇所になる。
しかしながら、
水処理装置を積み重ねる際、下方の
水処理装置に対する上方の
水処理装置の位置が横方向(互いの当接箇所が対向する方向)にずれると、上方の
水処理装置の凸部と下方の
水処理装置の増肉部とが適切に当接せず、上方の
水処理装置が傾くなどして不自然な姿勢で積み重なり、
水処理装置の内面に傷等が生じてしまう虞がある。
しかしながら、本構成によれば、たとえ下方の
水処理装置に対する上方の
水処理装置の位置が横方向に多少ずれたとしても、上方の
水処理装置の凸部と下方の
水処理装置の増肉部との当接箇所のうち少なくとも一つが確実に当接するようになるため、上方の
水処理装置が傾いて不自然な姿勢で積み重なることがなく、
水処理装置の内面に傷等が生じることも防止される。
【0009】
第
2特徴構成は、前記開口部を下側に向けたときに、前記増肉部における、同じ形状の別の
水処理装置の凸部との当接面が、外側ほど高くなるように傾斜する点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、下方の
水処理装置の増肉部の当接面の傾斜によって、積み重ねたときの上方の
水処理装置の凸部に対して内向きの力が作用し易くなるため、上方の
水処理装置の凸部と下方の
水処理装置の増肉部との当接がより外れ難いものとなる。
【0011】
第
3特徴構成は、一対の前記増肉部及び前記凸部のそれぞれに、係合突起部及び係合凹部が形成されており、同じ形状の別の
水処理装置を積み重ねたときに、前記増肉部の係合突起部が、前記別の
水処理装置の凸部の係合凹部に係合する点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、
水処理装置を積み重ねたときに、上方の
水処理装置の凸部に形成された係合凹部に対して、下方の
水処理装置の増肉部に形成された係合突起部が係合するため、上方の
水処理装置の凸部と下方の
水処理装置の増肉部とがより強固に当接して外れ難いものとなる。
【0013】
第
4特徴構成は、前記凸部の係合凹部が、容器の内側に配置される内装部材の係合部分と係合可能である点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、凸部に形成した係合凹部が、
水処理装置を積み重ねる際の係合手段としての機能だけでなく、容器の内側に配置される内装部材との係合手段としての機能をも備えるため、これらの機能を備える部材をそれぞれ別に構成する必要がなく、製造コストの削減にも繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る浄化槽の外槽容器の上側部分の外観斜視図である。
【
図2】
図1の上側部分の内側を下からみたときの平面図である。
【
図3】
図1における第1厚肉構造の増肉部付近を拡大した斜視図である。
【
図4】
図2における第1厚肉構造の凸部付近を拡大した斜視図である。
【
図5】
図1における第2厚肉構造の増肉部付近を拡大した斜視図である。
【
図6】
図2における第2厚肉構造の凸部付近を拡大した斜視図である。
【
図7】
図1に示す2つの上側部分を、開口部を下側にして同じ姿勢で積み重ねたときの状態を示す外観斜視図である。
【
図8】
図7における第1厚肉構造付近を拡大した当接前の斜視図(a)及び当接後の一部切り欠き斜視図(b)である。
【
図9】
図7における第1厚肉構造付近の縦断面図である。
【
図10】
図7における第2厚肉構造付近を拡大した当接前の一部切り欠き斜視図(a)及び当接後の一部切り欠き斜視図(b)である。
【
図11】
図7における第2厚肉構造付近の縦断面図である。
【
図12】本発明の別実施形態に係る浄化槽の外槽容器の上側部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の大型容器の実施の形態として、生活排水等を処理する浄化槽を構成するための外槽容器の上側部分について図面に基づいて説明する。
【0017】
〔実施形態〕
図1及び
図2に示すように、上側部分1は、略長方形状の上壁2と、該上壁2の4方周縁のそれぞれからに立設する側壁(上流側壁3、下流側壁4、右側壁5、及び左側壁6)と、これら4つの側壁の端部で形成される開口部7と、該開口部7の全周縁に形成されるフランジ部8とを備える。
【0018】
2つのマンホール9、被処理水の原水流入口10、及び処理済水放流口(図示せず)のそれぞれが、上壁2、上流側壁3、及び下流側壁4に形成されている。
【0019】
また、
図2に示すように、上側部分1は、上流側壁3及び下流側壁4のそれぞれの幅方向の中央部を通る直線を対称軸Xとする線対称な構造を有するものであり、素材として繊維強化プラスチック(FRP)等を用いて、公知の方法により一体成型で製造することができる。また、上側部分1は、図示しない下側部分とフランジ部8において突き合わせてシール材を介して接着することによって、被処理水を浄化する水処理空間を形成することができる。
【0020】
以下、本実施形態に係る上側部分1において、上流側壁3及び下流側壁4が配置される方向を「長手方向」とし、右側壁5及び左側壁6が配置される方向を「幅方向」とし、上壁2及び開口部7が配置される方向を「深さ方向」として説明する。
【0021】
上側部分1には、深さ方向に沿って内側に膨出すると共に外周面で内側に凹む複数のコルゲート部15a,15b,16a〜16fが設けられており、これらのコルゲート部15a,15b,16a〜16fは、主として上側部分1の変形防止用と機能する。
【0022】
上流側壁3には、第1及び第2コルゲート部15a,15bが原水流入口10を挟むようにして幅方向に並設されており、下流側壁4にも第1及び第2コルゲート部15a,15bが、処理済水放流口(図示せず)を挟むようにして幅方向に並設されている。
また、右側壁5及び左側壁6のそれぞれには、第1〜第6コルゲート部16a〜16fが、長手方向に並設されている。
ここで、コルゲート部15a,15b,16a〜16fの凹みのうち、最も内側に凹んだ部分を底壁Bとし、底壁Bの右端及び左端のそれぞれから立ち上がる壁を右横側壁R及び左横側壁Lと称する(
図3及び
図5参照)。
【0023】
図2に示すように、右側壁5における、第2及び第3コルゲート部16b,16c、並びに第5及び第6コルゲート部16e,16fは、長手方向に互い近接するように設けられている。また、左側壁6においても同様に、第2及び第3コルゲート部16b,16c、並びに第5及び第6コルゲート部16e,16fが、長手方向に互いに近接するように設けられている。これにより、右側壁5及び左側壁6の内側には、深さ方向に沿って外側に凹む第1及び第2溝17a,17bが形成される。
【0024】
図1に示すように、上側部分1のコルゲート部15a,15b,16a〜16fにおけるフランジ部8側の端部には、第1厚肉構造20又は第2厚肉構造30が設けられている。
【0025】
(第1厚肉構造)
第1厚肉構造20は、
図3に示すように、コルゲート部の右横側壁R又は左横側壁Lから外側に膨出する増肉部21と、
図4に示すように、増肉部21の裏側に上側部分1の内側に膨出する凸部22とを備える。
【0026】
図4に示すように、凸部22の端面22aはフランジ部8と面一ではなく、フランジ部8の面よりも少し上壁2側(
図4紙面下側)に引退して設定されている。
【0027】
本実施形態において、上流側壁3及び下流側壁4における第1及び第2コルゲート部15a,15b、並びに右側壁5及び左側壁6における第1及び第4コルゲート部16a,16dでは、第1厚肉構造20を各コルゲート部の右横側壁R及び左横側壁Lの両方に設けており、右側壁5及び左側壁6における第3コルゲート部16cでは、第1厚肉構造20を左横側壁Lにのみ設けており、右側壁5及び左側壁6における第5コルゲート部16eでは、第1厚肉構造20を右横側壁Rにのみ設けている。
【0028】
(第2厚肉構造)
第2厚肉構造30は、
図5に示すように、コルゲート部の右横側壁Rから外側に膨出する増肉部31と、
図6に示すように、増肉部31の裏側に上側部分1の内側に膨出する凸部32とを備える。
【0029】
また、
図5に示すように、第2厚肉構造30の増肉部31におけるフランジ部8側とは反対側の端面には、係合突起部31bが設けられている。
【0030】
また、
図6に示すように、第2厚肉構造30の凸部32の端面32aには、第1溝17a側(第6コルゲート部16fに設けられている第2厚肉構造30の場合は第2溝17b側)及び開口部7側に開口し、かつ、外側ほど深くなるように階段状に窪んだ係合凹部32bが設けられている。
【0031】
この係合凹部32bは、上側部分1と図示しない下側部分を組み合わせて浄化槽を構成した際に、内側に配置される仕切板などの内装部材の係合部分と係合可能に構成してある。つまり、本実施形態では、図示しない2枚の仕切板のそれぞれの周縁部を第1溝17a及び第2溝17bに沿って嵌め込みつつ、当該仕切板の係合部分を、第2厚肉構造30の係合凹部32b内に係合させることによって、仕切板を浄化槽内に固定することができるように構成されている。
【0032】
本実施形態において、右側壁5及び左側壁6における第2コルゲート部16bでは、第2厚肉構造30を右横側壁Rにのみ設けており、右側壁5及び左側壁6における第6コルゲート部16fでは、第2厚肉構造30を左横側壁Lにのみ設けている。
【0033】
(積み重ね作業)
図7に示すように、上記上側部分1を、その開口部7を下側に向けて地面に設置した後、別の上側部分1を、先に設置した上側部分1と同じ姿勢となるように、その開口部7を下側に向けた状態で、先に設置した上側部分1を上方から覆い被せるようにして積み重ねる。
【0034】
このとき、
図8及び
図9に示すように、先に設置した上側部分1の増肉部21の端面21a(当接面)に対して、後から積み重ねた別の上側部分1の凸部22の端面22aが当接して載置される。
【0035】
またこのように第1厚肉構造20の増肉部21と凸部22とが当接すると同時に、
図10及び
図11に示すように、先に設置した上側部分1の第2厚肉構造30の増肉部31の係合突起部31bが、後から積み重ねた別の上側部分1の第2厚肉構造30の凸部32の係合凹部32b内に挿入されて係合した状態で、後から積み重ねた別の上側部分1の第2厚肉構造30の凸部32が、先に設置した上側部分1の第2厚肉構造30の増肉部31の端面31a(当接面)に載置される。即ち、第2厚肉構造30の凸部の係合凹部32bは、図示しない仕切板などの内装部材を固定する際に使用され、さらに、上側部分1を積み重ねて保管等する際にも使用される。
【0036】
図9に示すように、上側部分1の開口部7を下側に向けたときに、第1厚肉構造20の増肉部の端面は、外側ほど高くなるように傾斜(傾斜角d)している。このため、後から積み重ねた別の上側部分1に対して、内向きの力が作用し易くなり、上側部分1が外側に広がることによって第1厚肉構造20の当接が外れるのを防止する。
【0037】
第1厚肉構造20の増肉部21及び第2厚肉構造30の増肉部31の設定高さは、先に設置した上側部分1と後から積み重ねた別の上側部分1の相互の側壁が接触しないような高さ位置に設定されると共に、第1厚肉構造20の増肉部21及び凸部22の肉厚、並びに第2厚肉構造30の増肉部31及び凸部32の肉厚は、少なくとも、上側部分1を保管管理あるいは搬送する際に一般的に積み重ねられる数(例えば、5個〜20個)の積載荷重に耐え得る厚みに設定される。
【0038】
このように、本発明に係る上側部分1によれば、複数の上側部分1を保管管理、搬送する場合、各上側部分1の第1及び第2厚肉構造30を利用して、上側部分1同士の側壁、及びフランジ部8を互いに接触させることなく、順次積み重ねていくことができるため、上側部分1の変形や破損を防止しつつ、分離容易に取り扱うことができる。
【0039】
〔その他の実施形態〕
1.上述の実施形態における上側部分1は、第1厚肉構造20及び第2厚肉構造30の両方を備えるものであるが、この構成に限定されるものではなく、第1厚肉構造20及び第2厚肉構造30のうちのいずれか一方のみを備える構成としても良い。
【0040】
2.上述の実施形態における第1厚肉構造20及び第2厚肉構造30のそれぞれは、コルゲート部の右横側壁R及び左横側壁Lのいずれにも設定することができ、設定する数にも特に制限はない。しかし、同じ側壁に複数のコルゲート部が形成されており、それらのコルゲート部のうちいずれかを選択して第1厚肉構造20を2つ設定する場合、コルゲート部の横側壁のうちの一方に向いている横側壁、及び前記一方に向いている横側壁とは異なる方向に向いている別の横側壁に設けるようにすると良い。例えば、
図12において、第1コルゲート16aのみを選択した場合、第1厚肉構造20を、第1コルゲート16aの右横側壁R及び左横側壁Lに設けても良いし、第2コルゲート部16bと第3コルゲート部16cを選択した場合は、第1厚肉構造20を第2コルゲート部16bの右横側壁Rに設けると共に、もうひとつの第1厚肉構造20を第3コルゲート部16cの左横側壁Lに設けるか、あるいは図示しないが、逆に第1厚肉構造20を第2コルゲート部16bの左横側壁Lに設けると共に、もうひとつの第1厚肉構造20を第3コルゲート部16cの右横側壁Rに設けるようにすると良い。
このように構成することによって、上側部分1を積み重ねる際、たとえ下方の上側部分1に対する上方の上側部分1の位置が横方向(互いの第1厚肉構造20が対向する方向)に多少ずれたとしても、少なくともいずれかひとつの第1厚肉構造20が確実に当接するようになるため、上方の上側部分1が傾いて不自然な姿勢で積み重なることがなく、より確実に安定した姿勢で順次積み重ねていくことができ、結果として上側部分1同士の側壁やフランジ部8が互いに接触することによって傷等が生じることも防止される。尚、上述の構成は、第2厚肉構造30を設ける場合も同様に適用することができる。