(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881490
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】素地溶着装置、及び素地溶着方法
(51)【国際特許分類】
D06H 5/00 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
D06H5/00
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-66521(P2012-66521)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-194349(P2013-194349A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】向山 悟
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−051553(JP,A)
【文献】
特開2006−070380(JP,A)
【文献】
実開平06−055741(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に熱溶着性の接着剤を介して重なる素地を接合する素地溶着装置であって、
三次元形状に湾曲し素地を支持する支持面を有する立体支持部材と、前記立体支持部材の支持面に対向し前記支持面に倣う形状に湾曲したプレス型と、前記立体支持部材の支持面に支持される素地に前記プレス型を押し付ける押圧手段と、前記接着剤をその溶融する温度以上に加熱するヒーターと、前記立体支持部材を前記プレス型に対して回動させる回動手段と、を備えることを特徴とする素地溶着装置。
【請求項2】
前記立体支持部材と前記プレス型とを相対的に移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の素地溶着装置。
【請求項3】
前記立体支持部材の支持面に弾性材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の素地溶着装置。
【請求項4】
前記立体支持部材の支持面を円錐面に沿う凸状とし、前記プレス型を円錐面に沿う凹状としたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の素地溶着装置。
【請求項5】
複数の前記プレス型が前記立体支持部材の支持面に対向することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の素地溶着装置。
【請求項6】
相互に熱溶融性の接着剤を介して重なる素地を接合する素地溶着方法であって、
三次元形状に湾曲した支持面に素地を支持させ前記支持面に倣わせて素地を湾曲させる工程と、
前記立体支持部材の支持面に支持される素地を緊張させる工程と、
前記立体支持部材の支持面に支持される素地を、前記支持面に対向する力により前記支持面に押し付け、前記接着剤を加熱により溶融する工程と、
前記支持面に対向する向きに素地を押し付ける力を断ち、前記接着剤の加熱を断つことにより前記接着剤を硬化させ、前記素地を接着する工程と、
前記素地を前記支持面から離脱させる工程とからなることを特徴とする素地溶着方方法。
【請求項7】
前記支持面に素地を押し付ける前に、前記素地の重なる部位に介在する接着剤のうちの一部を溶融し、この一部の接着剤により前記素地を仮り接合する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の素地溶着方方法。
【請求項8】
相互に熱溶融性の接着剤を介して重なる素地を接合する素地溶着方法であって、
三次元形状に湾曲した支持面に素地を支持させ前記支持面に倣わせて素地を湾曲させる工程と、
前記支持面に素地を押し付ける前に、前記素地の重なる部位に介在する接着剤のうちの一部を溶融し、この一部の接着剤により前記素地を仮り接合する工程と、
前記立体支持部材の支持面に支持される素地を、前記支持面に対向する力により前記支持面に押し付け、前記接着剤を加熱により溶融する工程と、
前記支持面に対向する向きに素地を押し付ける力を断ち、前記接着剤の加熱を断つことにより前記接着剤を硬化させ、前記素地を接着する工程と、
前記素地を前記支持面から離脱させる工程とからなることを特徴とする素地溶着方方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料品の素地を溶着する素地溶着装置、及び素地溶着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糸を用いて素地が縫合された肌着は、その素地の裏にはみ出す糸によって肌着を着る者の皮膚を刺激することがある。そこで、糸に代わる接着剤を用いて複数の素地が次のように接合される。複数の素地のうちの一の素地に熱溶融性の接着剤を塗布し、その接着剤に他の素地を重ね合わせる。これらの素地をプレス型により相互に押し付け、プレス型を伝導するヒーターの熱により接着剤を溶融する。続いてプレス型を素地から離脱させ、接着剤の硬化するのを待って素地の接合が完了する。
【0003】
図8は、シャツ101の胴部103と袖部105との接合部107が仮想線109で表した円柱体の周面のような三次元曲面に沿った形状である例を示している。一方、汎用のプレス型は、素地に押し付けられる部位を平坦な面状としているので、汎用のプレス型を用いて胴部103の開口111と筒状の袖部105とを一度に接合できる範囲113はドットで示した広さに限られる。このため、袖部105の全周を開口111に接合するには、汎用のプレス型による両者の押し付けを何度も繰り返さなければならない。以上の作業は著しく煩雑である。
【0004】
下記の特許文献は、シャツを袖立に被せ、このシャツを一対の曲面板の熱板によりプレスする技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−141291号公報
【特許文献2】特開2000−70597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて為されたものであり、曲面に沿った形状で互いに重なる素地を容易に接合できる素地溶着装置、及び素地溶着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、相互に熱溶着性の接着剤を介して重なる素地を接合する素地接着装置であって、
三次元形状に湾曲し素地を支持する支持面を有する立体支持部材と、前記立体支持部材の支持面に対向し前記支持面に倣う形状に湾曲したプレス型と、前記立体支持部材の支持面に支持される素地に前記プレス型を押し付ける押圧手段と、前記接着剤をその溶融する温度以上に加熱するヒーターと
、前記立体支持部材を前記プレス型に対して回動させる回動手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記立体支持部材と前記プレス型とを相対的に移動させる移動手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記立体支持部材の支持面に弾性材を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記立体支持部材の支持面を円錐面に沿う凸状とし、前記プレス型を円錐面に沿う凹状としたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、複数の前記プレス型が前記立体支持部材の支持面に対向することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、相互に熱溶融性の接着剤を介して重なる素地を接合する素地溶着方法であって、三次元形状に湾曲した支持面に素地を支持させ前記支持面に倣わせて素地を湾曲させる工程と、
前記立体支持部材の支持面に支持される素地を緊張させる工程と、前記立体支持部材の支持面に支持される素地を、前記支持面に対向す
る力により前記支持面に押し付け、前記接着剤を加熱により溶融する工程と、前記支持面に対向する向きに素地を押し付ける力を断ち、前記接着剤の加熱を断つことにより前記接着剤を硬化させ、前記素地を接着する工程と、前記素地を前記支持面から離脱させる工程とからなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記支持面に素地を押し付ける前に、前記素地の重なる部位に介在する接着剤のうちの一部を溶融し、この一部の接着剤により前記素地を仮り接合する工程を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、
相互に熱溶融性の接着剤を介して重なる素地を接合する素地溶着方法であって、三次元形状に湾曲した支持面に素地を支持させ前記支持面に倣わせて素地を湾曲させる工程と、前記支持面に素地を押し付ける前に、前記素地の重なる部位に介在する接着剤のうちの一部を溶融し、この一部の接着剤により前記素地を仮り接合する工程と、前記立体支持部材の支持面に支持される素地を、前記支持面に対向する力により前記支持面に押し付け、前記接着剤を加熱により溶融する工程と、前記支持面に対向する向きに素地を押し付ける力を断ち、前記接着剤の加熱を断つことにより前記接着剤を硬化させ、前記素地を接着する工程と、前記素地を前記支持面から離脱させる工程とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の素地溶着装置を使用して素地を接合する場合、例えば2枚以上の素地のうちの一の素地に熱溶融性の接着剤を塗布し、その接着剤に他の素地を重ね合わせる。或いは、1枚の素地を二つに折り返したとき、二つ折りの素地の内側に熱溶融性の接着剤を塗布する。本発明の素地溶着装置は、三次元形状に湾曲した立体支持部材の支持面によって素地を支持し、押圧手段が、支持面に倣う形状に湾曲したプレス型を立体支持部材の支持面に押し付ける。これにより、素地が接着剤を介して重なり合う部分(以下で接合部と記す。)の全域が支持面とプレス型との間に強く挟まれ、ヒーターの熱により接着剤が溶融する。続いてプレス型を素地から離脱させ、接着剤の硬化するのを待って素地の接合が完了する。
【0017】
本発明の素地溶着装置によれば、以上に述べたように立体支持部材の支持面にプレス型を押し付ける一度の動作により、三次元曲面に接合部を沿わせた素地の接合を完了することができる。このため、従来のように何度もプレス型による素地の押し付けを繰り返す必要がなく、素地を容易に接合することができる。
【0018】
更に、本発明の素地溶着装置は、移動手段により立体支持部材とプレス型とを相対的に移動させることができる。移動手段が立体支持部材からプレス型までの距離を広げることにより、素地を立体支持部材の支持面に支持させる作業を行うためのスペースを両者の間に確保することができる。或いは、移動手段がプレス型と立体支持部材の支持面との対向する距離を適度に調整することができる。
【0019】
更に、立体支持部材の支持面に弾性材を設けた場合、立体支持部材の支持面にプレス型が押し付けられたときに、支持面とプレス型との間に素地の挟まれる力が素地の全域に均一に分散する。このため、本発明の素地溶着装置によれば、素地の一部分に上記の力が集中するのを抑え、接合部の全域を良好に接着することができる。
【0020】
更に、本発明の素地溶着装置は、立体支持部材の支持面を円錐面に沿う凸状とし、プレス型を円錐面に沿う凹状としているので、例えばシャツの胴部の開口に袖部のような筒状の素地を接合するとき、両者の接合部の内側に立体支持部材を挿入させると、両者の接合部を支持面に倣わせて環形に湾曲させることができる。この状態で、立体支持部材の支持面にプレス型を押し付ける一度の動作により素地の接合を完了でき、上記の効果を達成することができる。
【0021】
また、立体支持部材は、その支持面を円錐面に沿わせた形状であるので、立体支持部材の軸方向の一端よりも他端へ向かうに従い立体支持部材の直径は大きくなる。筒状の素地の内側に立体支持部材の一端を挿入させ、立体支持部材の他端へ向けて筒状の素地を移動させれば、筒状の素地の内面に支持面を密着させ筒状の素地を適度に緊張させることができる。この状態で、立体支持部材の支持面にプレス型を押し付ける一度の動作により素地の接合を完了でき、上記の効果を達成することができる。
【0022】
更に、本発明の素地溶着装置は、複数のプレス型が円錐面の周方向に配列しているので、押圧手段が複数のプレス型を立体支持部材の支持面に押し付ける力は、個々のプレス型に均等に加わる。このため、本発明の素地溶着装置によれば、筒状の素地の接合部の全周を一様に接合することができる。
【0023】
更に、本発明の素地溶着装置は、立体支持部材をプレス型に対して回動させる回動手段を備えるので、例えば上記の円錐面の周方向に配列された複数のプレス型に対して、立体支持部材を支持面の周方向に回動させることができる。このため、本発明の素地溶着装置は、立体支持部材の支持面にプレス型を押し付けた後、回動手段が立体支持部材を円錐面の周方向に回動させることができる。続いて、押圧手段が立体支持部材の支持面にプレス型を押し付ける動作を繰り返すことにより、素地の接合部の全域を一様に接合することができる。
【0024】
以上に述べた効果は本発明の素地溶着方法によっても達成することができる。更に、本発明の素地溶着方法によれば、支持面に素地を押し付ける前に、素地の接合部に介在する接着剤のうちの一部を溶融し、この一部の接着剤により素地を接合できる。このため、三次元形状に湾曲した支持面に素地を支持させる工程で、素地を適所に位置決めし、支持面に素地を押し付ける工程で、素地が不用意に滑るのを予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(a)は本発明の実施形態に係る素地溶着装置の動作の一例を示す正面図、(b)はその動作の他例を示す正面図。
【
図2】(a)は本発明の実施形態に係る素地溶着装置の動作の一例を示す側面図、(b)はその動作の他例を示す側面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る素地溶着装置の要部の動作例を示す斜視図。
【
図4】本発明の実施形態に係る素地溶着装置の要部の他の動作例を示す斜視図。
【
図5】本発明の実施形態に係る素地溶着装置に適用した立体支持部材、移動手段、及び回動手段の取付構造を示す側面図。
【
図6】(a)は本発明の実施形態に係る素地溶着装置に適用した立体支持部材に素地を支持させる手順の一例を説明する斜視図、(b)はその手順の他例を説明する斜視図。
【
図7】(a)は本発明の他の実施形態に係る素地溶着装置の要部の動作例を示す断面図、(b)はその動作の他例を示す断面図。
【
図8】従来例の素地溶着方法の手順を説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の実施形態に係る素地溶着装置について説明する。
図1(a)に示す素地溶着装置1をX−X線で破断した断面が
図2(a)に表れ、これと同様に
図1(b)に示す素地溶着装置1を破断した断面が
図2(b)に表れている。図面は特に断らない限り
図1(a)〜
図2(b)を参照する。
【0027】
素地溶着装置1は、素地を支持する支持面3を有する立体支持部材5と、立体支持部材5の支持面3に対向し支持面3に倣う形状に湾曲した複数のプレス型7と、立体支持部材5の支持面3に支持される素地に複数のプレス型7を押し付ける押圧手段9と、
図3に示すヒーター11とを備える。
【0028】
立体支持部材5は、アルミニウム等の金属製の円錐形の中空体であり、その円錐面(周面)を支持面3としている。矢印R,Pは立体支持部材5の軸方向を指し、立体支持部材5の直径は軸方向の一端よりも他端へ向かうに従い大きくなる。立体支持部材5の軸方向の一端には、水平に延びる支軸13が接合され、後述の移動手段15と回動手段17が支軸13を支持している。移動手段15は
図2(a),(b)で省略されている。支持面3は、上記の円錐面に限らず、円柱面、球面、自由曲面、人体の肌の起伏を模した形状、肢体、頸、又は腰のような人体の一部分のような三次元形状に湾曲した形状であっても良い。
【0029】
複数のプレス型7は、アルミニウム等の金属製の塊体であり、立体支持部材5の支持面3の周方向に配列されている。立体支持部材5の支持面3の形状として、上記の円錐面を選択した場合、個々のプレス型7の内面19は支持面3に対向する円錐面である。立体支持部材5の支持面3が凸状の円錐面であるのに対して、個々のプレス型7の内面19は支持面3に倣う凹状の円錐面である。ヒーター11は、
図3に示すようにプレス型7に埋設された複数の棒状の電熱器であっても良い。総てのプレス型7に同様の電熱器が設けられている。
【0030】
押圧手段9は、複数のエアシリンダー21を支持具23を介して筐体25に取り付け、エアシリンダー21のピストンロッド27の動作に従わせて、プレス型7を立体支持部材5の支持面3に対向する方向に進退させるものである。符号29はピストンロッド27を支持面3とプレス型7とが対向する方向に案内するガイドレールを指している。
図3は立体支持部材5の支持面3からプレス型7が後退した状態を示し、
図4は支持面3にプレス型7が押し付けられた状態を示している。
【0031】
図5に示すように、移動手段15は、筐体25に固定され水平方向に延びるスライドレール31と、スライドレール31に滑動自在に係合したスライダー33と、スライダー33に連結され支軸13を軸受けするブラケット35とを備える。図に表れていない駆動源がスライダー33を立体支持部材5の軸方向に動作させる。これにより立体支持部材5、支軸13、及び回動手段17が
図2(a),(b)にそれぞれ示した位置に移動する。
図3の仮想線5'は、立体支持部材5が
図2(a)に示す位置にあることを意味する。
【0032】
回動手段17は、ブラケット35に減速機付き回転機36を取り付け、その出力により支軸13と共に立体支持部材5を支持面3の周方向に回動させるものである。立体支持部材5の支持面3に弾性材37を設けても良く、好ましくは弾性材37がヒーター11の伝熱を遮断する材質であれば良い。弾性材37として、発泡樹脂等の断熱材料から成るシートを支持面3に貼り付け、又は立体支持部材5の全部が断熱性に優れた弾性材料であっても良い。
【0033】
素地溶着装置1を使用した素地溶着方法について説明する。以下の文頭に付した英文字は素地溶着装置1の動作する工程を区分する指標である。
【0034】
A:押圧手段9は、複数のプレス型7を立体支持部材5の支持面3から後退した位置で待機させる。移動手段15が立体支持部材5を矢印Pの向きに移動させる。これにより、立体支持部材5とプレス型7との間に、次の作業を行うためのスペースを確保することができる。
【0035】
即ち、
図6(a)に示すように、熱溶融性の接着剤39が予め塗布された素地41を支持面3に載せ、素地41の接着剤39に素地43を重ね合わせる。この状態で、素地41,43は支持面3に支持され両者の接合部は支持面3に倣って湾曲する。特に、同図(b)に示すシャツ45の胴部47の開口49に筒状の袖部51を接合するとき、両者の内側に立体支持部材5を挿入させると、両者の接合部を支持面3に倣わせて環形に湾曲させることができる。
【0036】
或いは、素地41,43を支持面3に載せる前、又は載せた後で、素地41と素地43とを重ね合わせ、両者の接合部に介在する接着剤39のうちの一部を溶融する。ここで、一部とは、超音波加熱器に接続された直径1〜2mmのピンが接合部に押し当てられる点状の領域である。この領域の接着剤39がピンを伝導する超音波の作用により溶融し、超音波が断たれたときに接着剤39が硬化し素地41,43が接合される。本工程で接合される素地41,43は、これらを引き離そうとする外力に対して、素地41,43の接合を保てる程度に両者を仮止めできれば足りる。
【0037】
図5に示す弾性材37は、支持面3に載せられる素地41,43に接触し、これらが支持面3から不用意に滑落しない程度の摩擦力を発生する。また、
図6(b)は、シャツ45の開口49が立体支持部材5の支持面3に密着し緊張していることを表している。袖部51の内側に立体支持部材5の一端を挿入させ、更に立体支持部材5の他端へ向けて袖部51を移動させれば、開口49に塗布された接着剤39に、袖部51の内面を密着させ、袖部51を緊張させることができる。これは接合部の皺や歪みを予防するのに有効な手順である。開口49、及び袖部51に限らず、あらゆる筒状の素地の内径が立体支持部材5の一端を無理なく挿入させることができ、かつ立体支持部材5の他端の直径を超えない範囲の大きさであれば、ここに述べた効果は達成される。
【0038】
B:移動手段15が立体支持部材5を矢印Rの向きに移動させる。これにより、
図3に示すように、立体支持部材5が複数のプレス型7の内側に進入する。
【0039】
C:押圧手段9が
図4に示すように複数のプレス型7を立体支持部材5の支持面3に押し付け、支持面3に既に載せられた素地41,43を支持面3と複数のプレス型7との間に挟み込ませる。これにより、素地41,43の接合部の全域が支持面3とプレス型7との間に強く挟まれる。また、複数のプレス型7はヒーター11の伝熱により加熱されているので、この熱により接着剤39が溶融する。
【0040】
本工程で、押圧手段9が複数のプレス型7を立体支持部材5の支持面3に押し付ける力は、個々のプレス型7に均等に加わる。このため、素地溶着装置1は、
図6(b)に示す筒状の素地である胴部47の開口49と袖部51の接合部の全周を一様に接合することができる。
【0041】
D:押圧手段9が複数のプレス型7を支持面3から後退させ、支持面3に載せられた素地41,43から複数のプレス型7を離脱させる。移動手段15が立体支持部材5を矢印Pの向きに移動させる。この過程で、プレス型7から素地41,43に伝導するヒーター11の熱が断たれるので接着剤39の温度が下がり、接着剤39が硬化した時点で素地41,43の接合が完了する。素地41,43は作業者によって立体支持部材5から取り外され他所へ搬出される。続いて、新たな素地を立体支持部材5の支持面3に支持させる作業が行われ、上記B〜Cの工程が繰り返される。
【0042】
以上に述べた素地溶着装置1によれば、押圧手段9が立体支持部材5の支持面3に複数のプレス型7を押し付ける一度の動作により、素地41,43の接合、又はシャツ45の開口49と袖部51の接合を完了することができる。このため、従来のように何度もプレス型による素地の押し付けを繰り返す必要がなく、三次元曲面に接合部を沿わせた複数の素地を容易に接合することができる。
【0043】
上記Cの工程で立体支持部材5の支持面3にプレス型7が押し付けられたとき、
図5に示す弾性材37は、支持面3とプレス型7との間で圧縮力を受けて弾性変形し、支持面3とプレス型7との間に素地の挟まれる力をその接合部の全域に均一に分散させる役割を果たす。このため、素地溶着装置1によれば、接合部の一部分に上記の力が集中するのを抑え、接合部の全域を良好に接着することができる。
【0044】
しかも、弾性材37が断熱性に優れた材料であれば、ヒーター11の熱を立体支持部材5へ逃がさないので、ヒーター11の熱は接着剤39を溶融するのに有効に利用される。しかも、このような弾性材37は、立体支持部材5がヒーター11によって加熱されるのを抑止する。このため、素地を立体支持部材5の支持面3に支持させ、又は接合の完了した素地を立体支持部材5から取り外す作業者が、立体支持部材5に手を触れても良い。
【0045】
また、複数のプレス型7が
図4に示すように支持面3に押し付けられた状態で、互いに隣接するプレス型7の側部53同士が密接するのが好ましいが、実際には僅かな隙間が側部53同士の間に空くことがある。この場合、上記Dの工程で、移動手段15が立体支持部材5を矢印Pの向きに移動させた段階で、立体支持部材5から素地41,43を取り外すことなく、回動手段17が、立体支持部材5の支持面3を複数のプレス型7に対して約5°〜40°の角度で回動させ、更に上記B〜Dの工程が繰り返されるようにしても良い。これにより、上記の隙間の有無に関わらず
図6(a),(b)に示す素地の接合部の全域を一様に接合することができる。
【0046】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施することができる。3枚以上の素地の接合部をプレス型7が立体支持部材5の支持面3に押し付けても良い。1枚の素地を二つに折り返すとき、例えば襟、袖等の折返しをするとき、その折り返した素地の内側に接着剤39を塗布すれば、このような1枚の素地を素地溶着装置1を使用して接着することができる。
【0047】
また、ヒーター11を立体支持部材5に取り付けても良い。移動手段15、及び回動手段17を省略しても本発明の実施が妨げられることはない。立体支持部材5の周りに3つ以下、又は5つ以上のプレス型を配列しても良い。支軸13を立体支持部材5のプレス型55と反対側の端部に接合し、
図2(a)に示す筐体25の矢印Pの向きの外方に、
図5に示す移動手段15を配置しても良い。立体支持部材5を筐体25に固定し、移動手段15がプレス型55を立体支持部材5に対して移動させても良い。
【0048】
また、立体支持部材5の支持面3にプレス型7を押し付けるには、1つのプレス型7に対して押圧手段9のエアシリンダー21は1つで足りるが、
図2(a),(b)は、立体支持部材5の軸方向にエアシリンダー21を2つ配列した形態を示している。これは、以上に述べた個々のプレス型7を、互いに別体の2つのプレス型に更に分割しても良いことを示している。
【0049】
例えば、支持面3に支持される素地の接合部が互いに立体支持部材5の軸方向に隔たる位置に2箇所ある場合、上記の別体のプレス型は、2箇所の接合部にそれぞれ押し付けられることになる。また、支持面3の表面積が比較的広い場合、別体のプレス型の数が増える程、支持面3とプレス型との間に素地の挟まれる力を支持面3の全域で均一にするのに有利である。
【0050】
図7(a),(b)に示すように、単一の円錐形のプレス型55を適用しても良い。この場合、移動手段15が立体支持部材5を矢印Rの向きに移動させる力が、押圧手段9に代わってプレス型55の内面19を立体支持部材5に押し付ける。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、衣料品の製造に限らず、あらゆるシート状の可撓材料を接合するのに有益な技術である。
【符号の説明】
【0052】
1...素地溶着装置、3...支持面、5...立体支持部材、7,55...プレス型、9...押圧手段、11...ヒーター、13...支軸、15...移動手段、17...回動手段、19...内面、21...エアシリンダー、23...支持具、25...筐体、27...ピストンロッド、29...ガイドレール、31...スライドレール、33...スライダー、35...ブラケット、36...減速機付き回転機、37...弾性材、39...接着剤、41,43...素地、45,101...シャツ、47,103...胴部、49,111...開口、51,105...袖部、53...側部、107...接合部、109...仮想線。