(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881527
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】型枠連結金物
(51)【国際特許分類】
E04G 17/02 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
E04G17/02 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-114041(P2012-114041)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-241734(P2013-241734A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074192
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】園部 裕司
(72)【発明者】
【氏名】杉野 桂介
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3160202(JP,U)
【文献】
実開昭55−128839(JP,U)
【文献】
特開平07−268997(JP,A)
【文献】
実開昭49−150522(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0193170(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結すべき型枠の桟木同士を突き合わせてその両側から挟持する一対の挟持片部と、その一対の挟持片部それぞれの基端部に連続するベース部とを有し、ベース部の後側面側にハンマー等で叩かれる打撃面部を設けると共に、ベース部にバール等の先端部を差込んで取外すための第1開口部を設けた型枠連結金物において、
打撃面部の長手方向の長さを一対の挟持片部の内側面間の最小間隔以下にすると共に、一対の挟持片部の間の挟持空間と第1開口部との間のベース部に、その一対の挟持片部それぞれの基端部側から当該一対の挟持片部間の中心に向かって延び、先端部間が離れた一対の当接片部を設けると共に、その一対の当接片部と第1開口部との間に、その一対の当接片部の先端部間の隙間を介して該挟持空間に連通する第2開口部を設けたことを特徴とする型枠連結金物。
【請求項2】
請求項1記載の型枠連結金物において、
一対の当接片部は、その先端部間の中心が一対の挟持片部の内側面間の中心線上にほぼ位置するように設けることを特徴とする型枠連結金物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠工事において使用するコンクリートパネルと桟木を組み合わせた型枠同士を連結する型枠連結金物に関する。
【背景技術】
【0002】
釘やボルト等を使用せずに、ハンマー等の打撃により型枠同士を連結する従来の型枠連結金物として、例えば、
図7に示すように、突き合わせた2つの型枠の桟木をその両側から挟持する一対の挟持片部41,41と、その一対の挟持片部41,41それぞれの基端部に連続するベース部42とからなり、ベース部42に、ハンマー等でその後方から叩かれる打撃面部42aと、その金物4を取外すためバール等の先端が差込まれる開口部42bとを設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この型枠連結金物4によれば、釘やボルト等を使用せずに、ハンマー等の打撃によって桟木に嵌めて一対の挟持片部41,41の挟持力によって型枠同士を連結できるため、型枠同士の連結が容易である一方、開口部42bにバール等の先端部を差込んでこの型枠連結金物4を取外して再利用できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3160202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、型枠同士を型枠連結金物によって連結した後、型枠間にコンクリートを打設するが、打設したコンクリートの圧力は相当な大きさになるため、型枠連結金物によって型枠同士が正しく連結されていない場合には、コンクリートの圧力に屈して連結した型枠が外れる恐れがある。
【0005】
しかし、前述の特許文献1に記載された従来の型枠連結金物4では、ハンマー等により打撃面部42aを叩いて型枠連結金物4を桟木の両側に嵌め込むため、打撃面部42aの長手方向の長さが長いと、作業者の熟練度によっては、
図8に示すように、突き合わせた桟木21,21に対し型枠連結金物4を平面視で斜めに装着する場合があった。このように装着した場合、一対の挟持片部41,41は、設計通りの挟持力を発揮できないため、打設したコンクリートの圧力に屈して連結した型枠2,2が外れる恐れがあった。
【0006】
また、従来の型枠連結金物4は、一対の挟持片部41,41が桟木同士をその両側から挟持して連結するため、一定の挟持力を確保するため、通常は、一対の挟持片部41,41の内側面が桟木にめり込んでいる。そのため、コンクリートが硬化して型枠を取外す際、バール等を使用して型枠連結金物4を取外すにしても、大きな力が必要であるという問題があった。
【0007】
また、型枠連結金物4が型枠の桟木に対し水平視直角に装着されていれば、その開口部42bにバール等の先端部を差込むことに関し問題はないが、水平視で斜めに装着されていた場合には、開口部42bが桟木の表面に近付くため、その開口部42bにバール等の先端部を差込み難いという問題があった。特に、作業者はバール等の先端部を真下や真上から挿入するよりも、斜めの方向から挿入する場合が多いため、開口部42bが桟木の表面に近付くと、差込み難くなった。
【0008】
さらに、前述の型枠連結金物4では、一対の挟持片部41,41によって型枠の桟木同士をその両側から挟持しているだけで、ボルト等のように締め付け量や締め付け力を調節できないため、桟木における被挟持部分が大きく凹んでいたり、欠損している等の不良があった場合には、型枠連結金物4を真直ぐ奥まで正しく装着できた場合でも、一対の挟持片部41,41による設計通りの所定の挟持力が得られず、桟木の両側を確実に挟持できない恐れがあった。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、第1には、熟練した作業者でなくても、型枠の桟木に対し平面視で真直ぐに打ち込むことができると共に、型枠の取外し時には容易に取外すことができ、第2には、さらには、この型枠連結金物が桟木に正しく装着されているか否かや、桟木における被挟持部分の不良を容易に確認できる型枠連結金物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る型枠連結金物は、連結すべき型枠の桟木同士を突き合わせてその両側から挟持する一対の挟持片部と、その一対の挟持片部それぞれの基端部に連続するベース部とを有し、ベース部の後側面側にハンマー等で叩かれる打撃面部を設けると共に、ベース部にバール等の先端部を差込んで取外すための第1開口部を設けた型枠連結金物において、打撃面部の長手方向の長さを一対の挟持片部の内側面間の最小間隔以下にすると共に、一対の挟持片部の間の挟持空間と第1開口部との間のベース部に、その一対の挟持片部それぞれの基端部側から当該一対の挟持片部間の中心に向かって延び、先端部間が離れた一対の当接片部を設けると共に、その一対の当接片部と第1開口部との間に、その一対の当接片部の先端部間の隙間を介して該挟持空間に連通する第2開口部を設けたことを特徴とする。
ここで、一対の当接片部は、その先端部間の中心が一対の挟持片部の内側面間の中心線上にほぼ位置するように設けると良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る型枠連結金物によれば、打撃面部の長手方向の長さを一対の挟持片部の内側面間の最小間隔以下にしたため、熟練した作業者でなくても、型枠の桟木に対し平面視で真直ぐに打ち込むことができる。また、一対の挟持片部の間の挟持空間と第1開口部との間のベース部に、その一対の挟持片部それぞれの基端部側から当該一対の挟持片部間の中心に向かって延びる一対の当接片部を設けたため、この型枠連結金物を桟木に装着した場合、桟木の前側面に一対の当接片部それぞれが片持ち梁状態で当接して反発力を受けるので、この型枠連結金物を取外す際、その反発力が加算されて容易に取外すことができる。さらに、第1開口部はベース部の後端側に設けられるため、バール等の先端部が差込み易くなり、この型枠連結金物を容易に取外すことができる。
また、一対の当接片部をその先端部間の中心が一対の挟持片部の内側面間の中心線上にほぼ位置するように設けた場合には、仮に、この型枠連結金物が桟木に対し斜めに装着された場合や、一方の桟木が欠損している等の不良があった場合、突き合わせた桟木同士の内側面の境界線が一対の当接片部の先端部間の中心に位置しないため、この型枠連結金物が桟木に正しく装着されているか否かや、桟木における被挟持部分の不良を容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る型枠連結金物の使用状態を示す斜視図である。
【
図4】この型枠連結金物をハンマー等により叩いて型枠の桟木に装着した状態を示す図である。
【
図5】この型枠連結金物を斜めに装着した状態を示す図である。
【
図6】桟木に不良があった場合の型枠連結金物の装着状態を示す図である。
【
図8】従来の型枠連結金物が斜めに装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る型枠連結金物の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
この型枠連結金物1は、
図1に示すように、連結すべき型枠2,2の桟木21,21同士を突き合わせ、桟木21,21の長手方向に複数(
図1では、説明の便宜上2つとするが、3以上でも勿論良い。)装着されてそれらの両側から挟持するもので、
図2および
図3に示すように、一対の挟持片部11,11と、一対の挟持片部11,11それぞれの基端部に連続するベース部12とを有する。なお、図上、22は、木製のコンクリートパネルである。
【0015】
一対の挟持片部11,11は、例えば、
図3に示すように、それぞれの内側面11a,11aが先端部から基端部に向かうに従って基端部寄りの中間部で凸となるように湾曲した形状で形成されている。そのため、一対の挟持片部11,11の内側面11a,11a間の間隔は、先端部が最大で、基端部に向かう程狭くなり、基端部寄りの中間部で最小になって、その中間部から基端部に向かう程広くなるように形成されており、突き合わせた桟木21,21に装着し易く、かつ、中間部がその桟木21,21にめり込んで所定の挟持力で挟持して、簡単には外れないようにしている。なお、一対の挟持片部11,11それぞれの基端部の内側面側とベース部12との連続部分には、この型枠連結金物1を装着する際に挟持片部11,11がベース部12に対し外側に広がり易くすること等を目的として、凹み部12e,12eが設けられている。
【0016】
ベース部12は、
図2および
図3に示すように、その後方側からハンマー3(
図4参照。)等で叩くための平面状の打撃面部12aを有している。ここで、
図3に示すように、打撃面部12aの長手方向の長さL1を、一対の挟持片部11,11の内側面11a,11a間の最小間隔L2よりも短くしている。このため、
図4に示すように、この型枠連結金物1を桟木21,21の両側に装着する際に、作業者が打撃面部12aの中央付近を叩かずに、中央付近から左右にずれた両側付近を叩いたとしても、その方向は、一対の挟持片部11,11の内側面11a,11a間、すなわち突き合わせた桟木21,21の方向を向くことになる。なお、前述の特許文献1の型枠連結金物4では、
図8に示すように、打撃面部42aの長手方向の長さを、一対の挟持片部41,41の内側面間の最小間隔よりも大きい。その結果、この型枠連結金物1によれば、前述の特許文献1の型枠連結金物4の場合よりも、コンクリートパネル22の桟木21,21に対し平面視で垂直方向に挿入して装着することが可能になり、
図4に示すように型枠連結金物1を型枠2,2の桟木21,21に対し真直ぐに正しく装着できる。
【0017】
また、ベース部12には、その中間より打撃面部12a側にバール等の先端部を差込んで取外すための第1開口部12bを設けると共に、その第1開口部12bよりも挟持片部11,11側に第2開口部12cを設けている。そのため、金物1自体の重量を増大させずに、ベース部12全体を大きくすることが可能となり、作業者がベース部12を掴んだり、桟木21,21に仮装着し易くなり、作業性が向上する。なお、第1開口部12bと同様に、第2開口部12cも、バール等の先端部が差し込まれて、取り外しに利用しても良い。
【0018】
さらに、第1開口部12bは、前述の特許文献1の型枠連結金物4の開口部42bよりも、桟木21,21それぞれの前側面21b,21bから離れるため、この型枠連結金物1が桟木21,21に対し水平視斜めに装着されていたとしても、バール等の先端部を差込み易く、この点でも作業性が向上する。特に、作業者が第1開口部12bにバール等の先端部を挿入する場合、その先端部を真下や真上から挿入するよりも、斜めの方向から挿入する場合が多いため、第1開口部12bが桟木21,21の前側面21b,21bより遠く離れている程、バール等の先端部を第1開口部12bに差込み易くなる。
【0019】
また、ベース部12には、一対の挟持片部11,11の間の挟持空間13と第2開口部12cとの間に、一対の挟持片部11,11それぞれの基端部側から当該一対の挟持片部11,11間の中心に向かって延び、桟木21,21の前側面21b,21bに当接する一対の当接片部12d,12dを設け、その一対の当接片部12d,12dの先端部間の隙間を介して第2開口部12cと挟持空間13とが連通するように構成している。そのため、この型枠連結金物1を
図4に示すようにハンマー3等によって叩いて桟木21,21に正しく装着できた場合、一対の当接片部12d,12dは、片持ち梁状態で桟木21,21の前側面21b,21bに弾接して、桟木21,21から離れる方向に反発力を受けることになる。その結果、この型枠連結金物1を型枠2から取外す際には、その反発力が加算され、その分少ない力でこの型枠連結金物1を取外すことが可能となり、作業性が向上する。
【0020】
また、前述したように作業者は型枠連結金物1を取外す際、バール等の先端部を真下や真上から挿入する場合よりも、斜めの方向から挿入する場合が多いが、この型枠連結金物1では、
図4等に示すように、第1開口部12bの中間部における挿脱方向の開口幅を両端部における同方向の開口幅より広く確保しているため、バール等の先端部を第1開口部12bに差込み易くなり、この点でも作業性が向上する。ただし、本発明では、第1開口部12bの開口幅を中間部ほど広く確保することは、任意である。
【0021】
さらに、この型枠連結金物1では、一対の当接片部12d,12dは、その先端部間の中心が一対の挟持片部11,11の内側面11a,11a間の中心線上にほぼ位置するように設けているため、仮に
図5に示すように、この型枠連結金物1が桟木21,21に対し斜めに装着された場合には、桟木21,21の内側面21c,21cの境界線が、一対の当接片部12d,12dの先端部間の中心に位置しない。このような場合、一対の挟持片部11,11が設計通りの所定の挟持力で桟木21,21の両側を挟持していない恐れがあるが、作業者は一対の当接片部12d,12dの先端部間の中心と、桟木21,21の内側面21c,21cの境界線との比較により、この型枠連結金物1が桟木21,21に対し真直ぐに装着されているか否かを一目瞭然に確認できる。
【0022】
また、仮に、型枠連結金物1が桟木21,21に対し真直ぐに正しく装着された場合でも、例えば、
図6に示すように一方(図上、左側)の桟木21が欠損している等の不良がある場合には、突き合わせた桟木21,21の内側面21c,21cの境界線が、一対の当接片部12d,12dの先端部間の中心に位置しない。従って、このような場合にも、一対の挟持片部11,11が設計通りの所定の挟持力で桟木21,21の両側を挟持していない恐れがあるが、作業者は、一対の当接片部12d,12dの先端部間の中心と、桟木21,21の内側面21c,21cの境界線との比較により、桟木21,21における挟持(装着)部分の不良を一目瞭然に確認することができる。ただし、本発明では、一対の当接片部12d,12dの先端部間の中心が、一対の挟持片部11,11の内側面11a,11a間の中心線上にほぼ位置するように設けることは、任意である。
【符号の説明】
【0023】
1…型枠連結金物、11…挟持片部、12…ベース部、12a…打撃面部、12b…第1開口部、12c…第2開口部、12d…当接片部、13…挟持空間、2…型枠、21…桟木、22…コンクリートパネル、3…ハンマー。