特許第5881545号(P5881545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5881545-石炭焚きボイラに用いられる脱硝装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881545
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】石炭焚きボイラに用いられる脱硝装置
(51)【国際特許分類】
   F23J 15/00 20060101AFI20160225BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20160225BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20160225BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   F23J15/00 G
   B01D53/36 101A
   B01D53/36ZAB
   B01D53/34 129B
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-146868(P2012-146868)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-9888(P2014-9888A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100120053
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 太郎
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 徹
(72)【発明者】
【氏名】梶川 一彦
(72)【発明者】
【氏名】下郡 嘉大
(72)【発明者】
【氏名】原田 友和
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−145366(JP,A)
【文献】 特開昭59−120229(JP,A)
【文献】 実開昭59−055234(JP,U)
【文献】 特開2000−161606(JP,A)
【文献】 特開平6−94234(JP,A)
【文献】 特開平9−133337(JP,A)
【文献】 特開昭62−153604(JP,A)
【文献】 特開2002−28450(JP,A)
【文献】 特開2007−275838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 15/00−08,99/00
B01D 53/34−73,74−85,92
B01D 53/86−90,94,96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭焚きボイラと、
前記石炭焚きボイラに設けられる節炭器と、
前記節炭器の前流側から排ガスを導く前流ダクトと、
前記節炭器の後流側から排ガスを導く後流ダクトと、
前記前流ダクトの後流側に設けられる第1の空気予熱器と、
前記後流ダクトの後流側に設けられる第2の空気予熱器と、
前記第1の空気予熱器又は前記第2の空気予熱器の前流側に設けられる脱硝反応器と、
前記脱硝反応器の前流側に設けられ、前記前流ダクトと前記後流ダクトとを接続する第1のバイパスダクトと、
前記脱硝反応器の後流側に設けられ、前記前流ダクトと前記後流ダクトとを接続する第2のバイパスダクトと
を備えることを特徴とする脱硝装置。
【請求項2】
前記第1のバイパスダクトは、前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器の前流側から前記脱硝反応器に前記排ガスを導き、
前記第2のバイパスダクトは、前記脱硝反応器の後流側から前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器に前記排ガスを導くことを特徴とする請求項1に記載の脱硝装置。
【請求項3】
前記脱硝反応器に流入する前記排ガスの温度が所定の温度以下である場合に、前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器の前流側を流れる前記排ガスの全量を前記脱硝反応器に導く第1の排ガス流量調節器と、
前記脱硝反応器の後流側を流れる前記排ガスの一部を前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器に導く第2の排ガス流量調節器と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱硝装置。
【請求項4】
前記脱硝反応器に流入する前記排ガスの温度が所定の温度以下である場合に、前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器の前流側から前記脱硝反応器に導かれる前記排ガスの流量が多くなるように前記排ガスの流量を調節する第1の排ガス流量調節器と、
前記脱硝反応器の後流側を流れる前記排ガスの一部を前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器に導く第2の排ガス流量調節器と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱硝装置。
【請求項5】
前記脱硝反応器における前記排ガスの差圧に応じて、前記脱硝反応器に流入する前記排ガスの流量を調節する第3の排ガス流量調節器を備えることを特徴とする請求項4に記載の脱硝装置。
【請求項6】
前記第1の空気予熱器及び前記第2の空気予熱器の後流側にそれぞれ設けられ、前記排ガスを吸気するファンと、
前記ファンの吸気量を調節するファン流量調節器と
を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の脱硝装置。
【請求項7】
前記ファン流量調節器は、前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器によって加熱される空気の温度に応じて、前記ファンの吸気量を調節することを特徴とする請求項6に記載の脱硝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚きボイラに用いられる脱硝装置に関し、特に、プラント全体の効率低下をさせることなく、脱硝装置を追設する場合のコストを低減することができる脱硝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚きボイラに用いられる従来の脱硝装置は、図2乃至図4に示すように、節炭器1の前流側及び後流側に、それぞれ排気ダクト(前流ダクト)7,8を備え、排気ダクト(前流ダクト)7,8にそれぞれ第1の空気予熱器2−1及び第2の空気予熱器2−2を備える。また、石炭焚きボイラに用いられる従来の脱硝装置は、図4に示すように、空気予熱器2の後流に、集塵機3及びIDファン4が設けられる場合がある。
【0003】
従来の脱硝装置を石炭焚きボイラに設置する場合、以下のような問題点がある。まず、図2に示すように、各排気ダクト(前流ダクト)7,8に脱硝反応器6をそれぞれ設置する方法が、一般的な脱硝装置の設置方法であるが、この場合、排気ダクト毎に、脱硝反応器6、鉄骨、灰除去装置、及び排ガス分析計等を設置する必要があり、コストがかかる。
【0004】
また、図3に示すように、節炭器1の後流側の排気ダクト(後流ダクト)8に脱硝反応器6を設置し、部分脱硝を行う方法がある。これは、第2の空気予熱器2−2に流れる排ガスを高脱硝することで、出口側のNOx規制値を達成する方法である。また、触媒を用いた選択的触媒還元法では、還元剤であるアンモニアを投入する際に、所定の温度(脱硝可能温度)にしなければ、アンモニアと排ガス中のSOが反応し、酸性硫安(NHHSO)が生成されることにより、触媒性能が低下することが知られている。図2及び図3の脱硝システムでは、石炭焚きボイラ5の負荷が下がると、節炭器1の後流側の排気ダクト(後流ダクト)8に流れる排ガスの温度が、脱硝可能温度を下回る場合があるので、触媒性能が低下し、脱硝することができなくなる。
【0005】
この問題を改善するために、図2及び図3に示すように、節炭器1の前流側の排気ダクト(前流ダクト)7と節炭器1の後流側の排気ダクト(後流ダクト)8を接続するバイパスダクト9を、脱硝反応器6の前流側に設け、節炭器1の後流側の排気ダクト(後流ダクト)8に高温の排ガスを流すことで、排ガス温度を脱硝可能温度まで上昇させることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−11132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4は、一般的な空気予熱器2の配置を示したものである。図4に示すような脱硝システム構成では、空気予熱器2に流入する排ガス量は、排気ダクト(前流ダクト)7と排気ダクト(後流ダクト)8を接続するバイパスダクトを設置するか否かにかかわらず、空気予熱器2に流入する排ガス量は異ならないため、空気予熱器2での熱回収の効率が低下することはない。しかしながら、図2及び図3に示すような脱硝システム構成では、バイパスダクト9を使用して節炭器1の前流側の排気ダクト(前流ダクト)7からの排気ガスを利用して脱硝反応器6の入口温度を昇温させるので、第1の空気予熱器2−1に流れる排ガス量が低下し、熱回収量が減ることで、第1の空気予熱器2−1による加熱空気温度が低下してしまう。この結果、プラント全体の効率が低下することになる。
【0008】
本発明の目的は、プラント全体の効率低下をさせることなく、脱硝装置を追設する場合のコストを低減することができる脱硝装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の脱硝装置は、石炭焚きボイラと、前記石炭焚きボイラに設けられる節炭器と、前記節炭器の前流側から排ガスを導く前流ダクトと、前記節炭器の後流側から排ガスを導く後流ダクトと、前記前流ダクトの後流側に設けられる第1の空気予熱器と、前記後流ダクトの後流側に設けられる第2の空気予熱器と、前記第1の空気予熱器又は前記第2の空気予熱器の前流側に設けられる脱硝反応器と、前記脱硝反応器の前流側に設けられ、前記前流ダクトと前記後流ダクトとを接続する第1のバイパスダクトと、前記脱硝反応器の後流側に設けられ、前記前流ダクトと前記後流ダクトとを接続する第2のバイパスダクトとを備える。
【0010】
この構成によれば、第1のバイパスダクトを流れる排ガスの流量を制御して、脱硝反応器に流入する排ガスを脱硝可能温度に保つことで、脱硝反応器の脱硝性能を維持しつつ、第2のバイパスダクトを流れる排ガスの流量を制御することで、脱硝反応器が設けられていない空気予熱器に流入する排ガスの流量を調節して加熱空気温度を所定の温度に保つことにより、低負荷である場合でもプラント効率の低下を防ぎ、脱硝性能を維持することができる。
【0011】
本発明の脱硝装置では、前記第1のバイパスダクトは、前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器の前流側から前記脱硝反応器に前記排ガスを導き、前記第2のバイパスダクトは、前記脱硝反応器の後流側から前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器に前記排ガスを導く。
【0012】
この構成によれば、脱硝反応器が設けられていない空気予熱器の前流側から脱硝反応器に排ガスを導くことで、脱硝反応器に流入する排ガスを脱硝可能温度に保つことができ、脱硝反応器の後流側から脱硝反応器が設けられていない空気予熱器に排ガスを導くことで、脱硝反応器が設けられていない空気予熱器に流入する排ガスの流量を調節して加熱空気温度を所定の温度に保つことができる。
【0013】
本発明の脱硝装置は、前記脱硝反応器に流入する前記排ガスの温度が所定の温度以下である場合に、前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器の前流側を流れる前記排ガスの全量を前記脱硝反応器に導く第1の排ガス流量調節器と、前記脱硝反応器の後流側を流れる前記排ガスの一部を前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器に導く第2の排ガス流量調節器とを備える。
【0014】
この構成によれば、脱硝反応器に流入する排ガスの温度が脱硝可能温度に達しているか否かに応じて、脱硝反応器が設けられていない空気予熱器の前流側から脱硝反応器に排ガスを全量導くことで、脱硝反応器に流入する排ガスを脱硝可能温度に保つことができる。
【0015】
本発明の脱硝装置では、前記脱硝反応器に流入する前記排ガスの温度が所定の温度以下である場合に、前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器の前流側から前記脱硝反応器に導かれる前記排ガスの流量が多くなるように前記排ガスの流量を調節する第1の排ガス流量調節器と、前記脱硝反応器の後流側を流れる前記排ガスの一部を前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器に導く第2の排ガス流量調節器とを備える。
【0016】
この構成によれば、脱硝反応器に流入する排ガスの温度が脱硝可能温度に達しているか否かに応じて、脱硝反応器が設けられていない空気予熱器の前流側から脱硝反応器への排ガス流量が多くなるように調節することで、脱硝反応器に流入する排ガスを脱硝可能温度に保つことができる。
【0017】
本発明の脱硝装置は、前記脱硝反応器における前記排ガスの差圧に応じて、前記脱硝反応器に流入する前記排ガスの流量を調節する第3の排ガス流量調節器を備える。
【0018】
この構成によれば、第1のバイパスダクトを流れる排ガスの流量を制御して、脱硝反応器に流入する排ガスを脱硝可能温度に保つことで、脱硝反応器の脱硝性能を維持しつつ、脱硝反応器が設けられていないダクトを流れる排ガスの流量を制御して、脱硝反応器が設けられていない空気予熱器に流入する排ガスの流量を調節することにより、空気予熱器に流れる排ガスの流量のアンバランスを防止することができる。
【0019】
本発明の脱硝装置は、前記第1の空気予熱器及び前記第2の空気予熱器の後流側にそれぞれ設けられ、前記排ガスを吸気するファンと、前記ファンの吸気量を調節するファン流量調節器とを備える。
【0020】
この構成によれば、空気予熱器の後流側に設けられたファンが吸気量を調整することで、脱硝反応器の後流側から脱硝反応器が設けられていない空気予熱器に導かれる排ガスの流量を制御することができる。
【0021】
本発明の脱硝装置では、前記ファン流量調節器は、前記脱硝反応器が設けられていない前記空気予熱器によって加熱される空気の温度に応じて、前記ファンの吸気量を調節する。
【0022】
この構成によれば、空気予熱器の加熱空気の温度を監視し、加熱空気の温度に応じた排ガス流量を、第2のバイパスダクトを介して空気予熱器に導くことにより、プラント効率に影響を与えることを防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、プラント全体の効率低下をさせることなく、脱硝装置を追設する場合のコストを低減することができる脱硝装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の脱硝装置の一例を示した系統図である。
図2】複数の空気予熱器ダクトに脱硝反応器をそれぞれ設置した系統図である。
図3】第1の空気予熱器又は第2の空気予熱器に脱硝反応器を設置した系統図である。
図4】ボイラの後流側に脱硝設備を含む系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態の脱硝装置について、図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態の脱硝装置の一例を含む図である。図1に示すように、脱硝装置は、石炭焚きボイラ5に設けられる節炭器1と、節炭器1の前流側から排ガスを導く前流ダクト7と、節炭器1の後流側から排ガスを導く後流ダクト8と、前流ダクト7の後流側に設けられる第1の空気予熱器2−1と、後流ダクト8の後流側に設けられる第2の空気予熱器2−2と、第1の空気予熱器2−1又は第2の空気予熱器2−2の前流側に設けられる脱硝反応器6と、脱硝反応器6の前流側に設けられ、前流ダクト7と後流ダクト8とを接続する第1のバイパスダクト9−1と、脱硝反応器6の後流側に設けられ、前流ダクト7と後流ダクト8とを接続する第2のバイパスダクト9−2とを備える。
【0026】
節炭器1の前流側及び後流側にそれぞれ排気ダクト(前流ダクト)7,8が設けられ、排気ダクト(前流ダクト)7,8に第1の空気予熱器2−1及び第2の空気予熱器2−2がそれぞれ設けられる。第1の空気予熱器2−1及び第2の空気予熱器2−2の後流側には、集塵機3及びIDファン4がそれぞれ設けられる。これらの構成要素を含む石炭焚きボイラ5において、節炭器1の前流側の排気ダクト(前流ダクト)7から第1の空気予熱器2−1へ高温の排ガスが流れ、第1の空気予熱器2−1によって加熱された空気は、一般的に石炭乾燥のために使用される。また、節炭器1の後流側の排気ダクト(後流ダクト)8から第2の空気予熱器2−2へ排ガスが流れ、第2の空気予熱器2−2によって加熱された空気は、一般的に燃焼空気のために使用される。
【0027】
また、石炭焚きボイラ5を運用する際、必要以上の電力又は加熱用の蒸気を発生させる必要がない場合、通常運転時より負荷を下げて運用されることがある。この場合、前流ダクト7から流れてくる排ガス温度が、脱硝可能温度を下回ることがある。また、既設のボイラは、脱硝反応器6などを追設することが事前に考慮されていないので、既設のボイラに脱硝反応器6及びその他周辺設備を追設した場合、ボイラの通常運転時においても後流ダクト8の排ガス温度が脱硝可能温度に達しない場合ある。
【0028】
このような石炭焚きボイラ設備において、ボイラから排気される排ガスを部分脱硝及び全量脱硝する場合、排ガス温度を脱硝可能温度にまで上昇させるために、脱硝反応器6の前流側に設けられる前流ダクト7及び後流ダクト8を結ぶ第1のバイパスダクト9−1を使用する。
【0029】
ただし、第1のバイパスダクト9−1を介して前流ダクト7を流れる排ガスの一部を後流ダクト8に流すと、第1の空気予熱器2−1に流入する排ガス量が変動して、プラント効率に影響を与えてしまう。そこで、本実施の形態では、脱硝反応器6に流入する入口排ガスの温度が、アンモニア注入可能温度(脱硝可能温度)以下である場合は、第1のバイパスダクト9−1を介して前流ダクト7を流れる排ガスの全量を後流ダクト8に流して、脱硝反応器6に導くとともに、第2のバイパスダクト9−2を介して後流ダクト8を流れる排ガスの一部を前流ダクト7に流して、第1の空気予熱器2−1に導く。この際、第1のバイパスダクト9−1を使用しない場合の流量と略同じ流量の排ガスを、第2のバイパスダクト9−2を介して第1の空気予熱器2−1に導くことにより、プラント効率に影響を与えることを防止できる。若しくは、空気予熱器2−1の加熱空気の温度を監視し、加熱空気の温度に応じた排ガス流量を、第2のバイパスダクト9−2を介して第1の空気予熱器2−1に導くことにより、プラント効率に影響を与えることを防止できる。
【0030】
このように、第1のバイパスダクト9−1は、脱硝反応器6が設けられていない空気予熱器(本実施の形態では、第1の空気予熱器2−1)の前流側から脱硝反応器6に排ガスを導き、第2のバイパスダクト9−2は、脱硝反応器6の後流側から脱硝反応器6が設けられていない空気予熱器(本実施の形態では、第1の空気予熱器2−1)に排ガスを導く。
【0031】
また、本実施の形態の脱硝装置は、脱硝反応器6に流入する排ガスの温度が所定の温度(脱硝可能温度)以下である場合に、脱硝反応器6が設けられていない空気予熱器(本実施の形態では、第1の空気予熱器2−1)の前流側を流れる排ガスの全量を脱硝反応器6に導く第1のバイパスダクトダンパ(第1の排ガス流量調節器)17と、脱硝反応器6の後流側を流れる排ガスの一部を脱硝反応器6が設けられていない空気予熱器(本実施の形態では、第1の空気予熱器2−1)に導く第2のバイパスダクトダンパ(第2の排ガス流量調節器)18とを備えることにより、前流ダクト7を流れる排ガスの全量を後流ダクト8に流す。
【0032】
具体的には、酸性硫安が生成する温度は通常約300℃以下と知られているため、アンモニアを注入するアンモニア注入口15の前流側に、硝酸反応器入口温度計16を設置し、排ガス温度が酸性硫安生成温度域(脱硝可能温度未満)まで低下した場合、脱硝反応器6の前流側の第1のバイパスダクトダンパ17を開き、前流ダクトダンパ(第3の排ガス流量調節器)11を閉じ、脱硝反応器6の後流側の第2のバイパスダクトダンパ18を開く。本実施の形態では、第1のバイパスダクトダンパ17及び第2のバイパスダクトダンパ18は、第1のバイパスダクト9−1及び第2のバイパスダクト9−2にそれぞれ設けられている。
【0033】
脱硝反応器6にて脱硝された排ガスの一部は、脱硝反応器6の後流側に設置された第2のバイパスダクト9−2を通じて、第1の空気予熱器2−1の前流側に戻される。この際、第1の空気予熱器2−1が十分な熱量を回収できるように、石炭乾燥に用いられる加熱空気の温度を温度計14で監視し、加熱空気温度が一定(又は所定)となるように、第1の空気予熱器2−1及び第2の空気予熱器2−2の後流側にそれぞれ設けられるIDファン入口ダンパ12の開度を制御することで、第2のバイパスダクト9−2を流れる排ガスの流量が調節される。
【0034】
つまり、本実施の形態の脱硝装置では、排ガスを吸気するIDファン4が、第1の空気予熱器2−1及び第2の空気予熱器2−2の後流側にそれぞれ設けられ、IDファン入口ダンパ(ファン流量調節器)12が、IDファン4の吸気量を調節する。そして、IDファン入口ダンパ12は、脱硝反応器6が設けられていない空気予熱器(本実施の形態では、第1の空気予熱器2−1)によって加熱される空気の温度に応じて、IDファン4の吸気量を調節する。
【0035】
次に、脱硝反応器6の入口排ガスの温度が、アンモニア注入可能温度(脱硝可能温度)以上になった場合、第1のバイパスダクトダンパ17を閉じ、前流ダクトダンパ11を開き、第2のバイパスダクトダンパ18を閉じる。この操作により、前流ダクト7の排ガスは脱硝せずに、後流ダクト8の排ガスを脱硝する。
【0036】
このように、本実施の形態の脱硝装置によれば、第1のバイパスダクト9−1を流れる排ガスの流量を制御して、脱硝反応器6に流入する排ガスを脱硝可能温度に保つことで、脱硝反応器6の脱硝性能を維持しつつ、第2のバイパスダクト9−2を流れる排ガスの流量を制御することで、第1の空気予熱器2−1に流入する排ガスの流量を調節して加熱空気温度を所定の温度に保つことにより、低負荷である場合でもプラント効率の低下を防ぎ、脱硝性能を維持することができる。
【0037】
以上、本発明にかかる実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において変更・変形することが可能である。
【0038】
既設のボイラに脱硝反応器6などを追設する場合、第1の空気予熱器2−1及び第2の空気予熱器2−2に流れる排ガスは、脱硝設備を設置したことによって圧力差が生じ、第1の空気予熱器2−1及び第2の空気予熱器2−2に流入する排ガス量に差異が生じる。この問題を解決するために、脱硝反応器6に設置された脱硝反応器差圧計10の差圧と前流ダクト7に設置されたダクト差圧計19の圧力とを監視し、それぞれが一定(又は所定)となるように前流ダクトダンパ(第3の排ガス流量調節器)11の開度を調節することで、第1の空気予熱器2−1及び第2の空気予熱器2−2に流れる排ガスの流量のアンバランスを防止する。
【0039】
本実施形態の脱硝装置は、脱硝反応器6に流入する排ガスの温度が所定の温度(脱硝可能温度)以下である場合に、脱硝反応器6が設けられていない前記空気予熱器(本実施の形態では、第1の空気予熱器2−1)の前流側から脱硝反応器6に導かれる排ガスの流量が多くなるように排ガスの流量を調節する第1のバイパスダクトダンパ(第1の排ガス流量調節器)17と、脱硝反応器6の後流側を流れる排ガスの一部を脱硝反応器6が設けられていない空気予熱器(本実施の形態では、第1の空気予熱器2−1)に導く第2のバイパスダクトダンパ(第2の排ガス流量調節器)18とを備える。そして、前流ダクトダンパ(第3の排ガス流量調節器)11は、脱硝反応器6における排ガスの差圧に応じて、脱硝反応器6に流入する前記排ガスの流量を調節する。
【0040】
このように、本実施の形態の脱硝装置によれば、第1のバイパスダクト9−1を流れる排ガスの流量を制御して、脱硝反応器6に流入する排ガスを脱硝可能温度に保つことで、脱硝反応器6の脱硝性能を維持しつつ、脱硝反応器6が設けられていないダクト(本実施の形態では、前流ダクト7)を流れる排ガスの流量を制御して、第1の空気予熱器2−1に流入する排ガスの流量を調節することにより、第1の空気予熱器2−1及び第2の空気予熱器2−2に流れる排ガスの流量のアンバランスを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る脱硝装置は、プラント全体の効率低下をさせることなく、脱硝装置を追設する場合のコストを低減することができ、石炭焚きボイラに用いられる脱硝装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 節炭器
2−1 第1の空気予熱器
2−2 第2の空気予熱器
3 集塵機
4 IDファン
5 石炭焚きボイラ
6 脱硝反応器
7 前流ダクト
8 後流ダクト
9−1 第1のバイパスダクト
9−2 第2のバイパスダクト
10 脱硝反応器差圧計
11 前流ダクトダンパ(第3の排ガス流量調節器)
12 IDファン入口ダンパ(ファン流量調節器)
13 空気ダクト
14 温度計
15 アンモニア注入口
16 脱硝反応器入口温度計
17 第1のバイパスダクトダンパ(第1の排ガス流量調節器)
18 第2のバイパスダクトダンパ(第2の排ガス流量調節器)
19 ダクト差圧計
20 ミル
21 煙突
図1
図2
図3
図4