【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。実施例及び比較例で用いた評価方法は、以下の通りである。
【0042】
(評価方法)
(1.密着性)
ラップフィルムの出荷後の流通、及び家庭での保管を想定し、製膜直後のラップフィルムを28℃に設定した恒温槽にて1ヶ月間保管した後、ラップフィルム同士の密着性を評価した。
【0043】
測定は23℃、相対湿度50%RHの雰囲気中で行なった。まず底面積25cm
2、高さ55mm、重さ400gのアルミ製の治具を2個用意し、双方の治具の底面に底面積と同面積の濾紙を貼り付けた。双方の治具の濾紙を貼り付けた底面に皺が入らないようにラップフィルムを被せて輪ゴムで抑えて固定した。このラップフィルムを被せた2個の治具のラップフィルムを被せた側の底面を重ね合わせて、加重500gで1分間圧着した。次いで、引張圧縮試験機(島津製作所社製;オートグラフ(AG−IS))にて5mm/minの速度で双方のラップフィルム面を相互の面に垂直に引き剥がすときに必要な仕事量(単位 mJ/25cm
2)を測定した。
【0044】
ラップフィルムの密着性は、測定した数値をもとに、以下の4段階で評価した。
評価記号 密着仕事量(mJ/25cm
2) 判定
× 3.2以上 密着性が非常に高すぎ、取扱性が著しく劣る
△ 2.5以上3.2未満 密着性が高すぎ、取扱性に劣る
◎ 2.0以上2.5未満 バランスの取れた満足する密着性を有し、優
れたレベルにある
○ 1.2以上2.0未満 密着性を有し、実用レベルにある
△ 0.8以上1.2未満 僅かに密着性を有すが、実用上問題がある
× 0.8未満 密着性が非常に小さすぎ、実用不可
【0045】
(2.引出性)
密着性と同様に、出荷後の流通、及び家庭での保管を想定し、製膜直後の巻回ラップフィルムを28℃に設定した恒温槽にて1ヶ月間保管した後、巻回ラップフィルムの引出性を評価した。
【0046】
測定は23℃、相対湿度50%RHの雰囲気中で行なった。長さ約310mmで直径を巻回ラップフィルム20の紙管16内径に合わせた駆動部14と、長さ330mmの支点軸15とからなるプラスチック製フリーロールを、巻回ラップフィルム20の幅方向中央とフリーロール駆動部14の長さ方向中央とが合うように、巻回ラップフィルム20の紙管16中に装着した。引張圧縮試験機(島津製作所社製;オートグラフ(AG−IS))上部のロードセル側につり下げたハンガー17と支点軸15が平行で、ハンガー17中央の鉛直方向に巻回ラップフィルム20の幅方向中央が位置するように、巻回ラップフィルム20と一体となったフリーロールの支点軸15を、上記試験機下部18に設置した軸受け19に入れて固定した。さらに、フリーロールと一体になった巻回ラップフィルム20を、引き剥がして上記試験機上部のロードセル側につり下げたハンガー17に皺のないよう両面テープで固定した。
【0047】
次いで、引張圧縮試験機にて1000mm/分の速度で巻回ラップフィルム20を紙管16から垂直に引き剥がした。このとき、巻回ラップフィルムを紙管から引き剥がすのに必要な力の平均値をもって、引出性の測定値(単位:cN/30cm幅)とした。
【0048】
巻回ラップフィルムの引出性は、測定した数値をもとに、以下の4段階で評価した。
評価記号 引出力(cN/30cm) 判定
× 10未満 引出性が軽すぎ、実用不可
◎ 10以上70未満 非常に引出性が良く、優れたレベルにある
○ 70以上80未満 引出性が良く、実用レベルにある
△ 80以上100未満 引出性に劣り、実用上問題あり
× 100以上 引出性が非常に劣り、実用不可(途中切れ等の問題が生じる場合がある)
【0049】
(3.手触り感)
密着性と同様に、出荷後の流通、及び家庭での保管を想定し、製膜直後のラップフィルムを28℃に設定した恒温槽にて1ヶ月間保管した後、ラップフィルムの手触り感を評価した。
【0050】
評価方法は、パネリスト25人がラップのしなやかさ(手触り)に関する官能評価をし、以下の評点の合計(100点満点)を利用して行った。
評価記号 評点(点) 判定
◎ 71以上 適度なしなやかさがあり、非常に優れたレベルにある
○ 57以上71未満 しなやかさがあり、優れたレベルにある
△ 43以上57未満 しなやかさがなく、やや不快な手触りである
× 43未満 しなやかさが全くなく、非常に不快な手触りである
【0051】
(4.成形加工性)
成形加工性は、原料樹脂の溶融押出工程での押出性のことを指す。溶融押出工程での樹脂の押出圧力により、成形加工性を以下の2段階で評価した。
評価記号 樹脂押出圧力(MPa) 判定
◎ 60以上65未満 非常に安定した溶融押出ができ、品質の良いフィル
ムが得られる
○ 65以上67未満 安定した溶融押出が可能であり、問題なくフィルム
が製膜できる
【0052】
[実施例1]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン成分が90質量%、塩化ビニル成分が10質量%)、DBS(セバシン酸ジブチル、田岡化学工業(株))、ESO(ニューサイザー510R、日本油脂(株))、TPG(トリプロピレングリコール、旭硝子(株))をそれぞれ95.2質量%、3.2質量%、1.3質量%、及び0.3質量%の割合で混ぜたもの合計5kgを、ヘンシェルミキサーにて5分間混合させ、24時間以上熟成して塩化ビニリデン系樹脂組成物を得た。
【0053】
上記の塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融押出機に供給して溶融し、押出機の先端に取り付けられた環状ダイでのスリット出口での溶融樹脂温度が170℃になるように押出機の加熱条件を調節しながら、環状に10kg/hrの押出速度で押出した。これを過冷却した後、インフレーション延伸して筒状フィルムとした。この筒状フィルムをニップして扁平に折り畳んで折幅280mmの肉厚み10μmの2枚重ねのフィルムを巻取速度18m/minにて巻き取った。このフィルムを、220mmの幅にスリットし、1枚のフィルムになるように剥がしながら外径36mm、長さ230mmの紙管に20m巻き取り、厚み10μmの巻回ラップフィルムを得た。ラップフィルムの密着性、引出性、手触り感について評価した。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例2]
TPGの含有量を0.06質量%に変更し、塩化ビニリデン系樹脂を95.44質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の処理を行い、実施例2の巻回ラップフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0055】
[実施例3]
TPGの含有量を0.5質量%に変更し、塩化ビニリデン系樹脂を95.0質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の処理を行い、実施例3の巻回ラップフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0056】
[実施例4]
TPGに代えてポリプロピレングリコール(P425、ダウケミカル社)0.3質量%を用いたこと以外は、実施例1と同様の処理を行い、実施例4の巻回ラップフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0057】
[比較例1]
TPGの含有量を0.8質量%に変更し、塩化ビニリデン系樹脂を94.7質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様に処理して、比較例1の巻回ラップフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0058】
[比較例2]
TPGの添加を省略し、塩化ビニリデン系樹脂を95.5質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の処理を行い、比較例2の巻回ラップフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0059】
[比較例3]
TPGの含有量を0.04質量%に変更し、塩化ビニリデン系樹脂を95.46質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様に処理して、比較例3の巻回ラップフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0060】
[比較例4]
TPGの添加を省略し、DBSの含有量を4.0質量%に変更し、塩化ビニリデン系樹脂を94.7質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様に処理し、比較例4の巻回ラップフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0061】
[比較例5]
TPGに代えてトリアセチン(TA、トリアセチンDRA−150、(株)ダイセル化学工業)0.3質量%を用いたこと以外は、実施例1と同様に処理し、比較例5の巻回ラップフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0062】
[比較例6]
TPGに代えて大豆油(大豆白絞油、日清オイリオグループ(株))0.3質量%を用いたこと以外は、実施例1と同様に処理して、比較例6の巻回ラップフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0063】
[比較例7]
TPGに代えてプロピレングリコール(PG、旭硝子(株))0.3質量%を用いたこと以外は、実施例1と同様に処理して、比較例7の巻回ラップフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】