(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
農業機械が複数の圃場で農作業したときの農作業情報と衛星測位システムによって検出された前記農業機械の作業位置とを対応付けて記憶する情報記憶部と、前記各圃場の地図データを記憶する地図データ記憶部と、前記作業位置及び前記地図データを用いて前記情報記憶部に記憶された前記農作業情報を圃場毎に整理する情報整理部とを備えており、
前記情報整理部は、
前記情報記憶部に記憶された作業位置に基づいて前記農業機械の変化位置を演算する位置変化演算部と、
前記変化位置と、前記地図データに基づいて定められた圃場の基準位置とのズレ量を求めるズレ量演算部と、
前記ズレ量演算部で求めたズレ量の時間的な変化と、前記農業機械のイベント発生のタイミングとに基づいて、前記情報記憶部に記憶された農作業情報が、前記地図データで示された一圃場と一圃場とは異なる他圃場とのいずれかに対応しているかを判定する情報対応関係判定部と、
を備えていることを特徴とする農作業情報管理装置。
前記情報対応関係判定部は、前記農業機械が作業を開始してから前記ズレ量が所定値以上で発生したイベント発生までの間に、前記情報記憶部に記憶された複数の農作業情報のうち、前記イベント発生時の農作業情報を前記他圃場に対応する農作業情報とし、残りの農作業情報を一圃場に対応する農作業情報とすることを特徴とする請求項2に記載の農作業情報管理装置。
前記位置変化演算部は、前記農業機械が移動したときの前記作業位置を平均して前記変化位置として求め、前記ズレ量演算部は、前記変化位置と、前記地図データに基づいて求められた圃場の基準位置である重心位置とのズレ量を求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の農作業情報管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、農作業情報管理システムの全体図を示したものである。
図1、4に示すように、農作業情報管理システム1は、コンバインや田植機等の農業機械2を用いて、圃場3内で農作業したときの農作業情報(農作業情報という)を当該農業機械2で収集し、収集した農作業情報を圃場毎に管理するものである。
【0015】
具体的には、農作業情報管理システム1では、農業機械1の作業位置を衛星測位システム(Global Positioning System、Positioning systemなど)を用いて検出ししながら、農業機械1の農作業情報を収集する。収集した農作業情報や作業位置は、携帯端末などの通信機器を用いてサーバ等から構成された農作業情報管理装置6に送信し、農作業情報管理装置6によって圃場毎に農作業情報が整理される。圃場毎に整理された農作業情報は、例えば、圃場3で農作業するときの作業計画に利用したり、農作業を行った作業日報などの作成等に用いることができる。
【0016】
まず、コンバインを例にとり、農業機械の構成について説明する。
図10はコンバインの全体図を示している。
コンバイン2は、左右一対の走行装置11を備えた機体12に、運転席13、エンジン14、脱穀処理する脱穀装置15、脱穀された作物を貯留するグレンタンク16等を備えて構成されたもので、機体12の前側には、作物(例えば、穀物)を刈り取る刈取部17が設けられている。
【0017】
図1,2に示すように、コンバイン2は、農作業を行ったときの農作業情報として作物の水分、食味、収穫量などを測定する手段を備えている。具体的には、コンバイン2は、作物に含まれる水分量を測定する水分測定部20と、作物の食味を計測する食味測定部21と、作物の収穫量を測定する収穫量測定部22とを備えている。水分測定部20と食味測定部21とは、グレンタンク16の内部、又は、グレンタンク16の周囲に設けられている。
【0018】
食味測定部21は、近赤外光を作物に照射して、透過光の分光分析に基づいて吸収スペクトルを解析し、その解析結果により、作物に含まれるタンパク質等の成分量を求める。収穫量測定部22は、ロードセル等で構成されている。
図2(a)に示すように、農作業情報の中で、水分及び食味の測定は、グレンタンク16に入れられる作物の一部を測定ケース23に入れ、測定ケース23に入れられた作物の水分及び食味を、水分測定部20や食味測定部21によって測定することによって行われる。
【0019】
図2(b)に示すように、測定ケース23内の作物は、測定が終了するとグレンタンク16内に入れられる。また、収穫量は、グレンタンク16内が作物で満杯になった時などに、グレンタンク16の重量を収穫量測定部22によって測定し、グレンタンク16の重量を収穫量に換算することによって求める。
即ち、水分及び食味は、測定ケース23に作物を貯めてサンプリング用の作物を確保後、当該サンプリング用の作物を測定し、一方、収穫量は、グレンタンク16内の作物が満杯になった時点等にグレンタンクの重量を測定しているため、水分及び食味のサンプリング周期と、収穫量のサンプリング周期とは異なり、水分及び食味のサンプリング周期は、収穫量のサンプリング周期よりも周期が短くなる。
【0020】
さて、コンバイン2には、衛星測位システムの1つであるGPS衛星等の信号を受信して位置(例えば、緯度、経度)を検出する位置検出装置25が備えられている。この位置検出装置25によってコンバイン2が農作業を行ったときの作業位置を検出することができる。
なお、位置検出装置25を、GPS衛星等の信号を受信して位置を検出可能な携帯端末(タブレットPCや電話機能を有するスマートフォン等)で構成してもよい。この場合、コンバイン2を操作する操作者が携帯端末を持参して当該コンバイン2を操作するか又は
携帯端末をコンバイン2内に設置して、携帯端末の位置をコンバイン2の作業位置とすればよい。
【0021】
ここで、作物の水分や食味の測定が終了すると、水分や食味の測定時(測定終了時)でのコンバイン2の作業位置が、水分及び食味に関連付けられ、水分及び食味は、コンバイン2を制御する制御装置26、又は、コンバイン2に設けられた無線通信機器27に送信される。また、作物の収穫量の測定が終了すると、収穫量の測定時(測定終了時)でのコンバイン2の作業位置が、収穫量に関連付けられ、収穫量は、制御装置26又は無線通信機器27に送信される。
【0022】
そして、農作業情報(水分、食味、収穫量等)と、作業位置は、制御装置26又は無線通信機器27等に一時的に保存される。これら、制御装置26や無線通信機器27等に一時的に保存された農作業情報及び作業位置は、例えば、外部との無線通信を行う無線通信機器27を介して農作業情報管理装置6に送信される。
図3に示すように、農作業情報管理装置6は、水分、食味、収穫量、作業位置を受信すると、当該農作業情報管理装置6に設けられた情報記憶部30に、所定の間隔で順に、水分、食味、収穫量、作業位置を記憶(保存)する。即ち、情報記憶部30には、所定の間隔(作業位置の検出間隔)で、複数の農作業情報(水分、食味、収穫量)が保存されることになる。例えば、コンバイン2が第1位置(経度34.55989、緯度135.467494)から第2位置(経度34.56449、緯度135.472094)まで移動する間に、情報記憶部30には、24個の農作業情報が保存されることになる。
【0023】
位置検出装置25で検出できる作業位置の精度(位置精度)は、数十cm〜数m程度であり、高性能なものは数cmであるのが実情である。このように、位置精度が数cmである位置検出装置25は開発されているものの、位置精度が数cmであるものは非常に高価であり、コンバインの作業位置を検出するものとして採用することは難しい。
即ち、コンバイン2等に採用される位置検出装置25は、位置精度(測定誤差)が数十cm〜数mであるものが多く、これらの誤差を含んだ作業位置を用いて、コンバイン2が位置する圃場3を特定することは、従来の技術では難しい。
【0024】
また、
図4に示すように、圃場3は一般的に長方形状であって、規則的に縦や横並びになっていることが多いため、形状的な差が少なく、この点からも、作業位置のみによる圃場の特定は難しい。例えば、圃場A、圃場B、圃場C、圃場Dのうち、圃場Aでコンバイン2による農作業を行った場合を考える。
圃場Aで農作業を開始した直後の時点では、コンバイン2は圃場3の入口側に位置することになるが、圃場3の入口は、圃場Aだけでなく圃場Bにも近いため、位置検出装置25によって、コンバイン2の1点の作業位置を検出したとしても、位置検出装置25による作業位置には誤差が含まれるため、1点のみの作業位置を見ただけでは、実際のコンバイン2が圃場Aに居るのか圃場Bに居るのか判定が行い難い。
【0025】
そこで、本発明では、複数の作業位置と、地図データとを用いて後述するような処理を行うことによって、農作業情報と圃場3との対応(関連性)を適正に決定することとしている。特に、本発明では、地図データから求められる圃場の重心位置(中心位置)と作業位置とを用いて、圃場に対応する農作業情報を決定することとしている。
以下、本発明の農作業情報管理装置及び農作業情報管理システムについて説明する。
【0026】
農作業情報管理システム1におけるコンバイン2は、上述した水分、食味、収穫量の他に、農作業情報として、コンバイン2のイベントが発生したときの情報を制御装置26に一時的に保存して、農作業情報管理装置6に送信する。
具体的には、コンバイン2にて農作業を行っている状況下で、グレンタンク16に作物を貯める動作から作物を排出する動作に切り換えるイベント(排出イベントということがある)が発生したとき、グレンタンク16から作物を排出したことを示すイベント内容と、イベント発生時の作業位置を制御装置26に一時的に保存する。そして、これらイベント内容及びイベント発生時の作業位置とを、農作業管理装置に送信する。
【0027】
この実施形態の場合は、作物排出レバー(籾排出レバー)を切りの状態から入りの状態にしてグレンタンク16内の作物をアンローダを介して外部に排出したことを示す排出イ
ベントのフラグと、排出イベント発生時の位置情報とを、コンバイン2から農作業情報管理装置6に送信する。この場合、情報記憶部30には、
図3に示すように、排出イベントが発生したことを示すフラグと、位置情報とが関連付けられて保存される。なお、排出イベントが発生したタイミングが必要な場合は、排出イベントが発生時の位置情報だけでなく、発生した時間をコンバイン側で検出して、その発生時間を農作業情報管理装置6の情報記憶部30に保存してもよい。
【0028】
農作業情報管理装置6は、コンバイン2から送信された農作業情報を収集して、収集後に農作業情報をオフラインにて整理するものである。農作業情報管理装置6は、農作業情報管理装置6は、例えば、ユーザ等が所有するパーソナルコンピュータ、農業管理会社が所有する管理サーバ等で構成されている。コンバイン2を用いて所定の圃場3で農作業(収穫作業)を行うと自動的にコンバイン2の制御装置26に、農作業を行ったときの農作業情報が自動的に収集(保存)される。コンバイン2(制御装置26)に保存された農作業情報は、農作業情報管理装置6に送信される。
【0029】
なお、農作業情報管理装置6に農作業情報を送信する方法は、どのような方法であってもよい。例えば、自動で、定期的(1日毎、1週間毎)に農作業情報を農作業情報管理装置6に送信してもよいし、作業者がコンバイン2の運転席周りに設けた表示装置等を操作することにより送信する農作業情報を決定して無線通信機器27を介して農作業情報管理装置6に農作業情報等を送信してもよいし、無線通信機器27を無線通信する携帯端末等を手動操作して当該携帯端末を介して農作業情報等を農作業情報管理装置6に送信してもよいし、その他の方法で送信してもよい。
【0030】
この農作業情報管理装置6は、農作業情報及び作業位置を記憶する情報記憶部30と、複数の圃場3の地図データを記憶する地図データ記憶部31と、作業位置及び地図データを用いて農作業情報を圃場毎に整理する情報整理部32とを備えている。
情報記憶部30は、不揮発性のメモリ等で構成され、上述したように、コンバイン2から送信された複数の農作業情報(水分、食味、収穫量、イベント内容)及び作業位置(緯度、経度)を記憶すると共に、農作業を行ったときの作業位置とを関連付けて記憶する。
【0031】
地図データ記憶部31も、情報記憶部30と同様に、不揮発性メモリ等から構成されており、複数の圃場3に関する地図データ(例えば、圃場3の緯度、経度、圃場3の輪郭など)を記憶する。また、地図データ記憶部31には、圃場毎の重心位置(圃場の中心)が格納されている。なお、地図データ記憶部31に圃場毎の重心位置が格納されていない場合であっても、地図データには、圃場3の輪郭線(各辺)に対応する緯度及び経度が含まれるため、地図データを用いると圃場3の重心位置を求めることも可能である。
【0032】
情報整理部32は、CPUやプログラム等から構成されており、農作業情報(水分、食味、収穫量、イベント内容)、作業位置(緯度、経度)、地図データ等を用いて、農作業情報の整理を行う。情報整理部32は、例えば、収集した複数の農作業情報の中で、まず、各農作業情報を圃場毎に分け、分けた農作業情報について必要に応じて整理を行う。例えば、圃場毎に分けた複数の農作業情報を用いて、圃場毎の水分や食味を求めたり、圃場毎の収穫量を求める。情報整理部32は、数学等の様々な手法によって農作業情報を整理するものであるが、その整理の仕方は、どのような方法であってもよい。
【0033】
この情報整理部32は、位置変化演算部40と、ズレ量演算部41と、情報対応関係判定部42とを備えている。これら位置変化演算部40、ズレ量演算部41及び情報対応関係判定部42は、CPUやプログラム等から構成されている。
位置変化演算部40は、情報記憶部30に保存された複数の作業位置を用いて、コンバイン2が農作業したときの位置変化を求めるものである。具体的には、位置変化演算部40は、情報記憶部30に保存された作業位置の平均を求める(情報記憶部30内の複数の作業位置に対して、先頭から後ろに掛けて順番に作業位置を足し合わせていき、足し合わせた作業位置を総数で割る)。作業位置の平均値を変化位置とする。なお、位置変化演算部40は、作業位置を読み込む毎に、既に読み込んだ作業位置の平均を算出する。即ち、作業位置の個数がn個ある場合、位置変化演算部40は、n個の作業位置の平均を求める。例えば、n−10個目の作業位置を読み込んだ場合、位置変化演算部40は、n−10
個の作業位置における平均を求め、n−2個目の作業位置を読み込んだ場合、n−2個の作業位置の平均を求め、それぞれの平均を保持する。
【0034】
次に、コンバイン2による農作業(作物の収穫)と、コンバイン2の作業位置の変化について説明する。
図5(a)に示すように、コンバイン2で作物の収穫を行う場合、圃場3の入口から畦際(圃場3の1辺)に沿って条刈りを行いながら、入口の反対側まで進み、この反対側で90度ターンして、圃場3の一辺と略直交する圃場3の他辺(2辺)に沿って進み、横刈りを行う。2辺の近傍での横刈りが終わった後は、圃場3の1辺と略平行な3辺に沿って進みながら条刈りをして、3辺近傍での条刈りが終了すると、4辺に沿って進みながら横刈りを行う。即ち、コンバイン2で作物の収穫を行う場合、圃場3の入口から圃場3の各辺(輪郭線)に沿って反時計回りに周りながら、作物の収穫を行う。
【0035】
このようにコンバイン2は畦際に沿って反時計回りに移動しつつ、次第に圃場3の中心に向かいながら収穫作業を行うため、コンバイン2で収穫作業(農作業)を行ったときの作業位置の平均値(変化位置)の傾向を見ると、変化位置は、コンバイン2の移動量の増加に伴い、圃場3の中心へ向かって変化する。
例えば、
図5(a)に示すように、圃場3の入口であるP1から圃場3の入口の反対側であるP2までコンバイン2が移動した場合、P1からP2までの作業位置の平均値(変化位置)は、
図5(b)に示すように、圃場3の中心(重心位置)とは離れている。
【0036】
さらに、コンバイン2が圃場3内を移動し、例えば、P3で圃場3内を2周した場合、P1からP3までの作業位置の平均値(変化位置)は、圃場3の中心(重心位置)とほぼ同じとなる。即ち、コンバイン2で農作業を行うにあたっては、入口から反時計回りに周りながら圃場3の中心へ向けて作業が行われるため、
図5に示すように、コンバイン2の反時計回りの移動量が増加するに伴って、変化位置は、圃場3の重心位置に近づくことになる。
【0037】
圃場3の重心位置は、それぞれ圃場によって異なる。そのため、上述したように、変化位置を求めたとき、求めた変化位置が所定の圃場3における重心位置とほとんど変わらない場合は、コンバイン2は、重心位置を有する圃場3で農作業を行ったと推測することができる。
まとめると、圃場3で作業を開始した時点から順番に、任意の作業位置までの変化位置(平均)を計算していき、変化位置とほぼ一致する重心位置を有する圃場3が存在した場合、この圃場3で農作業を行ったことを検出することができる。
【0038】
農作業情報管理装置6では、ズレ量演算部41によって、位置変化演算部40で求めた変化位置と、圃場3の基準位置である重心位置とのズレ量を求める。情報対応関係判定部42は、ズレ量演算部41で求めたズレ量に基づいて、コンバイン2が農作業を行った圃場がどの圃場であるか、即ち、情報記憶部30に記憶されている作業情報がどの圃場に対応しているかを判定する。
【0039】
ズレ量演算部41と、情報対応関係判定部42とについて詳しく説明する。
ズレ量演算部41は、情報記憶部30に記憶された農作業情報を整理するとき、まず、農作業を行った候補となる圃場3(候補圃場)についての重心位置を地図データから読み出す。なお、候補圃場の設定は、限定されないが、予め作業者(ユーザ)が農作業情報管理装置6に設定しておいた圃場3を候補圃場としてもよい。或いは、農作業情報管理装置6が情報記憶部30に保存された作業位置を参照し、作業位置の周辺の複数の圃場3を自動的にピックアップして、ピックアップした複数の圃場3を候補圃場としてもよい。
【0040】
以下、説明の便宜上、一の圃場A(一圃場ということがある)と、この圃場Aに隣接する圃場B(他圃場ということがある)との2つの圃場3が候補圃場とし、説明を進める。
ズレ量演算部41は、一圃場である圃場Aの重心位置と位置変化演算部40により求めた変化位置とのズレ量(圃場Aズレ量)を求めると共に、他圃場である圃場Bの重心位置と位置変化演算部40により求めた変化位置とのズレ量(圃場Bズレ量)を求める。
【0041】
ここで、情報記憶部30には、圃場Aで農作業を行ったときの作業位置と農作業情報とが保存されていたとすると、圃場Aズレ量は、
図6(a)に示す傾向となり、圃場Bズレ
量は、
図6(b)に示す傾向になる。
図6(a)、(b)に示すように、圃場Aズレ量は、最初は大きいものの次第に収束して小さい値となり、圃場Bズレ量は、収束するものの大きい値のままでとなる。
【0042】
圃場Aと圃場Bとの計算結果を見比べたとき、圃場Aに対応する圃場Aズレ量は圃場Bズレ量よりも小さく、且つ、ズレ量自体(絶対値)も所定値以下で小さくなる。したがって、農作業情報管理装置6は、情報記憶部30に保存されている農作業情報は、圃場Aに対応するものであると判断する。そして、農作業情報管理装置6は、圃場Aズレ量が所定値以下であって収束した収束区間(安定区間)に対応する作業情報と、収束区間が始まる区間開始ポイントよりも前の作業情報とを圃場Aに対応する作業情報とする。
【0043】
以上まとめると、候補圃場の重心位置と変化位置とのズレ量を候補圃場毎に複数求め、この候補圃場毎のズレ量の中で、ズレ量の変動が少なく、最もズレ量が小さい候補圃場を、農作業を行った圃場3として決定することができる。また、ズレ量の変動が少なく安定した区間(収束区間)の位置情報に対応する作業情報を、農作業を行った圃場3のものであると判定することもできる。
【0044】
さて、上述したように、ズレ量を見ることによってコンバイン2が農作業した圃場を特定し、且つ、農作業を行いながら収集した複数の作業情報がどの圃場に対応しているか決めることができるが、
図7に示すように、圃場Aでの農作業が終了し、これに続けて、圃場Bで農作業を行うことがある。このような場合は、どの時点で、コンバイン2が圃場Aから圃場Bに移り変わり、収集した複数の作業情報の中で、どの部分が圃場Bに対応するものであるか判定する必要がある。
【0045】
そこで、本発明では、上述したようにズレ量だけでなく、コンバイン2が農作業を行ったときの排出イベント発生のタイミングも用いて、複数の作業情報のうち、圃場Aに対応する農作業情報と、圃場Bに対応する農作業情報との区別を情報対応関係判定部42によって行うこととしている。
なお、農作業を行ったときの作業情報を収集するシステムでは、圃場Aから圃場Bに移り変わる前に、圃場Aから圃場Bに持ち越してしまうデータをリセットすることとしている。例えば、作業情報の1つである収穫量は、グレンタンク16の重量に基づいて求めるため、グレンタンク16に作物を入れたまま、コンバイン2が圃場Aから圃場Bに移り変わると、収集した収穫量が圃場Aのものであるのか、圃場Bのものであるのかを混同する可能性がある。そのため、圃場Aから圃場Bへ農作業が移り変わる場合、圃場Aで農作業が終了した時点(例えば、6回目の排出イベント)で、グレンタンク16内の作物を排出し、圃場Bで農作業を開始する前までに、グレンタンク16を空にした後、圃場Bにおける農作業を開始することとしている。
【0046】
次に、ズレ量(圃場Aズレ量)と、排出イベント発生のタイミングとを用いて情報対応関係判定部42について説明する。
図8は、圃場A及び圃場Bで農作業を行った場合でのズレ量の傾向と、排出イベントのタイミングとをまとめたものである。
圃場Aの農作業に続けて、圃場Bの農作業を行った場合、情報記憶部30には、圃場Aの作業位置と圃場Bの作業位置との両方が格納される。そのため、ズレ量の計算には、圃場Aの作業位置と圃場Bの作業位置とのデータが使用されることになるため、圃場Aズレ量の傾向を見ると、
図8に示すように、一旦、圃場Aに対応する重心位置付近で収束していた圃場Aズレ量は、圃場Bでの作業位置の影響によって、圃場Aとされる所定値を超え、次第に増加することになる。
【0047】
一方、圃場Aで農作業を行った場合でも、圃場Bで農作業を行った場合でも、グレンタンク16内の作物が満タンなった時点で、グレンタンク16内の作物を外部に排出するという排出イベントが発生する。排出イベントは、グレンタンク16内の作物が満タンになる度に発生すると共に、圃場Aから圃場Bへ農作業を切り換える際にも行う。
例えば、圃場Aの農業作業中に、複数回の排出イベントがあったとする。圃場A内で発生した排出イベントと、そのときの圃場Aズレ量とを見比べてみると、当該排出イベント時の前後でも、圃場Aズレ量は増加してない。しかしながら、
図8に示すように、圃場B
の農業作業中での排出イベント時は、圃場Aズレ量が所定値以上となる。このように、圃場Bへのコンバイン2の移動に伴って変化する圃場Aズレ量と、排出イベントとを見ることによって、複数の農作業情報のうち、圃場Aに対応する農作業情報なのか、圃場Bに対応する農作業情報なのかを判別することが可能となる。
【0048】
ここで、圃場Aから圃場Bで農作業を行った際、8回の排出イベントが発生したとし、情報対応関係判定部42について説明する。
情報対応関係判定部42は、農作業情報を整理する際、まず、情報記憶部30に記憶された農作業情報の中から排出イベントが発生したときの作業位置を抽出する。情報対応関係判定部42は、例えば、1回目〜8回目までの排出イベントの作業位置を抽出する。
【0049】
そして、情報対応関係判定部42は、1回目〜8回目の排出イベントの各作業位置を用いて、各排出イベント発生時での圃場Aズレ量を参照し、この中から収束期間後であって圃場Aズレ量が所定値以上となっている7回目、8回目の排出イベントを抽出する。そして、初めに圃場Aズレ量が所定値以上となった排出イベント(最初排出イベント)がどれであるか判定する。
【0050】
情報対応関係判定部42は、最初排出イベントが発生した時(7回目の排出イベント)を起点とて、7回目の排出イベント時の農作業情報は、圃場Bに対応ていると判定し、最初排出イベントよりも以降(8回目の排出イベント)に収集された農作業情報も、圃場Bに対応しているとする。
最初排出イベントよりも以前に収集された農作業情報(6回目の排出イベント以前の農作業情報は、圃場Aに対応しているものとする。つまり、情報対応関係判定部42は、圃場Aズレ量が所定値以上であるときの最初排出イベント発生時を起点として、A圃場3(一圃場)に対応する農作業情報と、圃場B(他圃場)に対応する農作業情報との判定を行っている。
【0051】
言い換えれば、コンバイン2が作業を開始してから、圃場Aズレ量が所定値以上となり且つ最初排出ベント発生時までの間に、情報記憶部30に記憶された複数の農作業情報を見たとき、情報対応関係判定部42は、最初排出イベント発生時の農作業情報を圃場Bに対応する農作業情報とし、残りの農作業情報を圃場Aに対応する農作業情報としている。
より詳しく説明すると、情報対応関係判定部42は、7回目の排出イベントを行ったときの圃場Aズレ量が所定値以上であるため、7回目の排出イベントは圃場Aではなく圃場Bで行ったと判定する。そして、情報対応関係判定部42は、6回目の排出イベントが終了後、7回目の排出イベントが開始されるまでの間で収集した水分、食味は圃場Bで農作業したときのものとし、6回目の排出イベントの開始時を起点として、当該起点前までに収集した水分及び食味は、圃場Aで農作業したものとする。
【0052】
以上のように、コンバイン2によって圃場Aや圃場Bで農作業を行いながら農作業情報を収集した場合であっても、情報対応関係判定部42によって、圃場Aに対応する農作業情報と、圃場Bに対応する農作業情報との区別をすることができる。即ち、複数の圃場3で農作業して得られた農作業情報が、どの圃場3に対応しているかを正確に判定されて分けることができるため、各圃場3における農作業情報が、混同することを防止することができる。
【0053】
なお、農作業情報管理システム1を、
図9に示すように、携帯端末50と、管理サーバ51とで構成してもよい。言い換えれば、農作業情報管理装置6の機能を、携帯端末50と管理サーバ51とで構成してもよい。
携帯端末50は、例えば、比較的演算能力の高いスマートフォン(多機能携帯電話)やタブレットPC等の携帯型コンピュータ等で構成され、ネットワークを介して管理サーバ51にアクセスできるようになっている。この携帯端末50は、上述した農作業情報管理装置6と同様に、位置変化演算部40と、ズレ量演算部41と、情報対応関係判定部42とを備えている。位置変化演算部40、ズレ量演算部41及び情報対応関係判定部42は、上述した実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0054】
位置変化演算部40及びズレ量演算部41において、演算を行うときに必要な作業位置や地図データなどデータ(情報)は、携帯端末50が管理サーバ51にアクセスして情報
記憶部30や地図データ記憶部31から取得するようになっている。即ち、携帯端末50は、管理サーバ51から演算に必要な情報を適宜取得して、上述した農作業管理装置6と同様にズレ量に基づいて、農業機械がどの圃場で農作業を行ったか判定することができる。なお、
図9では、位置変化演算部40、ズレ量演算部41、情報対応関係判定部42の全てを携帯端末50に設けているが、これらの一部を管理サーバ51に設けて、携帯端末50と管理サーバ51とでデータ通信を行いながらズレ量を求めるようにしてもよい。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
上述した実施形態では、農業機械の1つであるコンバイン2について説明したが、田植機に適用することも可能である。田植機においては、例えば、施肥の開始や終了を行う動作をイベント発生とすることができ、ズレ量演算部41で求めたズレ量と田植機のイベント発生(施肥開始、終了等)とに基づいて、農作業(田植え)を行ったときの作業位置が地図データで示されたどの圃場に対応しているかを判定することができる。
【0056】
また、農作業情報管理装置6を、無線通信機器27と通信可能な携帯端末で構成してもよい。これに加え、携帯端末に位置検出装置25の機能を設けておけば、ユーザが携帯端末を持って農業機械に乗車するだけで、農作業を行いながら携帯端末に農作業情報及び作業位置を取り込むことができ、さらには、携帯端末を用いて整理も行うことができる。