【実施例】
【0051】
次に実施例および比較例とこれらの試験例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0052】
(入手先)
ビナキサントン粉末(上記[0035]に記載の文献の通り培養と精製することにより製造する。また文献(K.Tatsutaら、Chemistry Letters Vol.36, No.1 (2007))に従い化学合成も可能である)
L−HPC(信越化学工業株式会社)
ラクトース(島貿易株式会社)
PBS(タカラバイオ株式会社)
塩化ナトリウム結晶(ナカライテスク株式会社)
コレステロール(関東化学株式会社)
デスオキシコール酸ナトリウム一水和物(ナカライテスク株式会社)
グルコース(ナカライテスク株式会社)
D−マンニトール(東和化成工業株式会社)
PEG4000(ナカライテスク株式会社)
CMC−Na(ナカライテスク株式会社)
HPC(日本曹達株式会社)
【0053】
実施例1
L−HPC(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)90mgにビナキサントン粉末6mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分102mgと同シリコーンB成分102mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤1を得た。
【0054】
試験例1
実施例1にて製造した製剤1を5mm×7mmの大きさに切断し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS) 1mL中に投入し、37℃にて静置し、製剤から放出されるビナキサントンを高速液体クロマトグラフィー(UFLC、株式会社 島津製作所)により定量し累積放出率を求めた。結果を
図1に示す。
本製剤は、難水溶性物質としてL−HPCを30%含有する製剤であるが、初期バーストが5%未満と小さく抑えられ、放出期間の4週間に亘ってほぼ一定量の持続放出が達成された。
【表1】
【0055】
実施例2
ラクトース45mgとL−HPC 45mgを混合した。さらにビナキサントン粉末6mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分102mgと同シリコーンB成分102mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤2を得た。
【0056】
実施例3
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下(光学顕微鏡(位相差顕微鏡 BX-51-33-PHU-D, OLYMPAS)により粒子径を確認した)に粉砕した塩化ナトリウム15mgとL−HPC 75mgを混合した。さらにビナキサントン粉末6mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分102mgと同シリコーンB成分102mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤3を得た。
【0057】
試験例2
実施例2および実施例3にて製造した各々の製剤(表2に示す)を5mm×7mmの大きさに切断し、PBS 1mL中37℃にて静置し、製剤から放出されるビナキサントンを高速液体クロマトグラフィーにより定量し累積放出率を求めた。結果を
図2に示す。
製剤2および製剤3は難水溶性物質としてL−HPCを含有し、それぞれさらに水溶性添加剤のラクトースまたはNaClを含有する製剤であるが、いずれも初期バーストが少なく放出期間の1ヶ月にわたって良好な持続放出が達成された。
【表2】
【0058】
実施例4
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム20mgとL−HPC 100mgを混合した。さらにビナキサントン粉末40mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分170mgと同シリコーンB成分170mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤4を得た。
【0059】
実施例5
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム30mgとL−HPC 170mgを混合した。さらにビナキサントン粉末100mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分350mgと同シリコーンB成分350mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤5を得た。
【0060】
試験例3
実施例4および実施例5にて製造した各々の製剤(表3に示す)を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求めた。
図3に結果を示す。
製剤4および製剤5は、上記の製剤1から製剤3に比べてビナキサントン含量が高い製剤であるが、いずれの製剤も56日間の長期にわたる良好な持続放出を達成した。
【表3】
【0061】
実施例6
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム12mgとL−HPC 48mgを混合した。さらにビナキサントン粉末60mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分140mgと同シリコーンB成分140mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤6を得た。
【0062】
実施例7
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム12mgとL−HPC 28mgを混合した。さらにビナキサントン粉末80mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分140mgと同シリコーンB成分140mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤7を得た。
【0063】
試験例4
実施例6および実施例7にて製造した各々の製剤(表4に示す)を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求めた。
図4に結果を示す。
製剤6および製剤7は、製剤5よりもさらにビナキサントン含量の異なる製剤であるが、いずれの製剤も40日間以上の長期にわたる良好な持続放出を達成した。
【表4】
【0064】
実施例8
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム18mgとL−HPC 102mgを混合した。さらにビナキサントン粉末60mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分210mgと同シリコーンB成分210mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.23mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤8を得た。
【0065】
試験例5
実施例8で製造した製剤8を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求めた。
図5に結果を示す。
製剤1から製剤7は製剤の厚みが0.3mmであったが、製剤8は0.23mmとさらに厚みが薄いシート製剤であるが、40日間以上の長期にわたる良好な持続放出を達成した。
【表5】
【0066】
実施例9
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム6mgにデスオキシコール酸ナトリウム二水和物17mgとコレステロール17mgを混合した。さらにビナキサントン粉末20mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分70mgと同シリコーンB成分70mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤9を得た。
【0067】
試験例6
実施例9で製造した製剤9を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求めた。
図6に結果を示す。
本製剤は難水溶性物質としてコレステロールを含有し、さらに水溶性添加剤のデスオキシコール酸Na(DC)とNaClを含有する製剤であるが、40日間以上の長期にわたる良好な持続放出を達成した。
【表6】
【0068】
実施例10
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム10mgにデスオキシコール酸ナトリウム二水和物15mgとコレステロール15mgを混合した。さらにビナキサントン粉末20mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分70mgと同シリコーンB成分70mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤10を得た。
【0069】
試験例7
実施例10で製造した製剤10を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求めた。
図7に結果を示す。
本製剤は難水溶性物質としてコレステロールを含有し、さらに水溶性添加剤のデスオキシコール酸Na(DC)とNaClを含有する製剤であるが、1ヶ月以上の長期にわたる良好な持続放出を達成した。
【表7】
【0070】
実施例11
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム16mgにコレステロール24mgを混合した。さらにビナキサントン粉末20mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分70mgと同シリコーンB成分70mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤11を得た。
【0071】
実施例12
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム10mgにコレステロール30mgを混合した。さらにビナキサントン粉末20mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分70mgと同シリコーンB成分70mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤12を得た。
【0072】
試験例8
実施例11および実施例12にて製造した各々の製剤(表8に示す)を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求めた。
図8に結果を示す。
製剤11および製剤12は、難水溶性物質としてコレステロールを含有し、さらに水溶性添加剤のNaClを含有する製剤であるが、いずれの製剤も2ヶ月の長期に亘る良好な持続放出を達成した。
【表8】
【0073】
実施例13
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム10mgにL−HPC 50mgを混合した。さらにビナキサントン粉末20mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分85mgと同シリコーンB成分85mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.5mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤13を得た。
【0074】
実施例14
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム15mgにL−HPC 45mgを混合した。さらにビナキサントン粉末20mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分85mgと同シリコーンB成分85mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.5mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の製剤14を得た。
【0075】
試験例9
実施例13および実施例14にて製造した各々の製剤(表9に示す)を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求めた。
図9に結果を示す。
製剤13および製剤14は、製剤の厚みが0.5mmで、難水溶性添加剤としてL−HPCを含有し、さらに水溶性添加剤のNaClを含有する製剤であるが、いずれの製剤も1ヶ月以上の長期にわたる良好な持続放出を達成した。
【表9】
【0076】
実施例15
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム15mgにL−HPC 85mgを混合した。さらにビナキサントン粉末50mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分175mgと同シリコーンB成分175mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。これを小型ラム式押し出し機にセットし、直径0.3mmのダイスを通して押し出し40℃で1日硬化させ、直径0.35mmのロッド製剤を得た。このロッド製剤を切断して本発明の製剤15を得た。
【0077】
試験例10
実施例15にて製造した製剤15を7mmの長さに切断し、PBS 1mL中37℃にて静置し、製剤から放出されるビナキサントンを高速液体クロマトグラフィーにより定量し累積放出率を求めた。結果を
図10に示す。
本製剤は、直径が0.35mmのロッド状の製剤であり、難水溶性添加剤としてL−HPCを含有し、さらに水溶性添加剤のNaClを含有する製剤であるが、1ヶ月以上の長期にわたる良好な持続放出を達成した。
【表10】
【0078】
比較例1
Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分147mgと同B成分147mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかにビナキサントン粉末6mgを加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の比較製剤1を得た。
【0079】
試験例11
比較例1にて製造した比較製剤1を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求めた。
図11に結果を示す。
本比較製剤はビナキサントンを2%含有し、添加剤を含有しない製剤であるが、4週間に亘ってほとんど放出されずに製剤内に大部分のビナキサントンが残存した。
【表11】
【0080】
比較例2
ヒドロキシプロポキシル基を53%以上含有する水溶性のHPC 75mgにビナキサントン粉末5mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分85mgと同シリコーンB成分85mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の比較製剤2を得た。
【0081】
試験例12
比較例2にて製造した比較製剤2を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求めた。
図12に結果を示す。
本比較製剤はビナキサントンを2%含有し、添加剤としてヒドロキシプロポキシル基含量が53%以上の水溶性のHPCを含有する製剤であるが、1日目の初期バーストで60%以上が放出され、その後の持続的放出は認められなかった。
一方、本発明の添加剤である低置換度HPCは、ヒドロキシプロポキシル基含量が5〜16%の難水溶性の添加剤であり、これを用いた本発明の製剤1では、初期バーストが少なく1ヶ月にわたる持続的放出が達成された(試験例1、
図1)。
【表12】
【0082】
比較例3
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム 90mgにビナキサントン粉末6mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分102mgと同シリコーンB成分102mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の比較製剤3を得た。
【0083】
比較例4
グルコース90mgにビナキサントン粉末6mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分102mgと同シリコーンB成分102mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の比較製剤4を得た。
【0084】
比較例5
D−マンニトール90mgにビナキサントン粉末6mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分102mgと同シリコーンB成分102mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の比較製剤5を得た。
【0085】
比較例6
PEG4000 90mgにビナキサントン粉末6mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分102mgと同シリコーンB成分102mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の比較製剤6を得た。
【0086】
試験例13
比較例3から比較例6にて製造した各々の比較製剤(表13に示す)を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求めた。
図13に結果を示す。
これらの比較製剤は難水溶性添加剤を含有せず、それぞれ異なる水溶性物質を添加剤として含有するものであるが、PEG4000を含有する比較製剤6では初期バーストが大きく、他の比較製剤では比較的初期バーストは小さかったものの、いずれも短期間の放出のみで、脊髄損傷治療に必要とされる長期間の持続的放出を達成することはできなかった。
【表13】
【0087】
比較例7
CMC−Na(カルボキシメチルセルロース-ナトリウム)90mgにビナキサントン粉末6mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分102mgと同シリコーンB成分102mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の比較製剤7を得た。
【0088】
比較例8
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム15mgにCMC−Na 75mgを加えて混合した。さらにビナキサントン粉末6mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分102mgと同シリコーンB成分102mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の比較製剤8を得た。
【0089】
比較例9
ラクトース45mgにCMC−Na 45mgを加えて混合した。さらにビナキサントン粉末6mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分102mgと同シリコーンB成分102mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の比較製剤9を得た。
【0090】
試験例14
比較例7から比較例9にて製造した各々の比較製剤(表14に示す)を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求めた。
図14に結果を示す。
これらの比較製剤はいずれも難水溶性物質を含有せず、水溶性添加剤であるCMC−Naを含有する製剤であるが、
図14から明らかなように、初期バーストのみで持続的放出は認めらなかった。
【表14】
【0091】
比較例10
あらかじめ乳鉢で結晶を直径100μm以下に粉砕した塩化ナトリウム6mgにデスオキシコール酸Na 34mgを加えて混合した。さらにビナキサントン粉末20mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得た。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分70mgと同シリコーンB成分70mgを二本ロールで練合した。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合した。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得た。このシート製剤を切断して本発明の比較製剤10を得た。
【0092】
試験例15
比較例10にて製造した各々の比較製剤10を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求めた。
図15に結果を示す。
本比較製剤は難水溶性物質を含有せず、水溶性添加剤であるデスオキシコール酸Na(DC)とNaClを含有する製剤であるが、1週間程度の短期間の放出のみで、脊髄損傷治療に必要とされる長期間の持続的放出を達成することはできなかった。
【表15】
【0093】
以上、実施例ならびに比較例により本発明の効果を示した。脊髄損傷治療には少なくとも2週間以上、望ましくは1ヶ月以上のセマフォリン阻害剤の持続が必要とされることから、本発明の製剤がこれを可能とすることが示された。
次に、本発明製剤の動物を用いた脊髄損傷の治療効果および局所治療剤として重要な神経組織への近接における毒性評価について評価を行った。
【0094】
試験例16.ラット脊髄完全切断モデルにおける運動機能回復効果
体重200g〜250gの雌性SD系ラットの脊髄を第12胸髄部分で眼科バサミにて完全に切断し、切断部のくも膜下に製剤5(厚さ0.3mmのシート状製剤)を3mm×3mmにカットしたものを留置した。対照としてビナキサントンを含有しないプラセボのシート(ビナキサントンを含有せず、製剤5と同含量の添加物を含有する製剤:L−HPC 17%、塩化ナトリウム3%、シリコーン80%)を同サイズにカットしたもの留置した。手術後1、2、3ヶ月に下肢の運動学的検討(kinematic analysis)を行った。結果を
図16に示す。プラセボ投与群に比較して製剤5の投与群は、平均歩幅(average step length)、最大歩幅(max length)、歩行面積(step cycle area)で顕著な回復が見られた。この結果より本発明製剤によるビナキサントン投与は脊髄損傷の有効な治療法となることが強く示唆された。なお用いた動物数は、薬剤投与群4匹、プラセボ群5匹である。
【0095】
試験例17.神経組織に対する毒性評価
セマフォリン阻害剤の脊髄損傷適用にあたっては、薬剤含有シリコーンシートを損傷部に留置投与した場合、表面付近の薬剤が長時間高濃度に保たれること、および製剤の接着による留置部分の組織表面への直接的影響が懸念される。これを検証するため、脊髄損傷ラットで硬膜下留置後の脊髄表面の変化を調べた。
被験薬剤は製剤5および対照としてプラセボのシート(ビナキサントンを含有せず、製剤5と同含量の添加物を含有する製剤:L−HPC 17%、塩化ナトリウム3%、シリコーン80%)を直径2mmにパンチしたものを用いた。ラット脊髄のT8部の硬膜を切開し(
図17)、放出を安定化させるために予めPBS中に2日間浸漬しておいたシートを硬膜内に挿入し(
図18)、T7付近まで硬膜内で移動させた。4日間飼育後に、灌流固定し脊髄を摘出、シート直下にある脊髄組織を顕微鏡観察した。その結果、プラセボ(
図19)、製剤5(
図20)とも脊髄表面には変化は認められなかった。また、製剤5投与例の病理検査を行ったが、脊髄背側部に変性所見は認められなかった(
図21)。以上の結果より、本発明製剤によるビナキサントン投与の直接的傷害反応は小さいものと示唆された。
【0096】
試験例18.ラット脊髄損傷モデルにおけるリハビリテーションに対するセマフォリン阻害剤シリコーンシート製剤の作用
製剤5(厚さ0.3mmのシート状製剤)を3mm×3mmにカットしたものを用い、セマフォリン阻害剤ビナキサントンの脊髄損傷モデルにおけるリハビリテーションへの影響を検討した。試験例16と同様なラット脊髄完全モデルを作製し、同様に製剤5を、対照群にはプラセボシートを留置した。処置ラットに対し、手術後1週より3ヶ月にわたりトレッドミルによるリハビリテーションを行った。このトレッドミルによるリハビリテーションは、実際に脊髄損傷患者に対して行われるものと同様である。手術後1、2、3ヶ月に下肢の運動学的検討(kinematic analysis)を行った。結果を
図22に示す。平均歩高(Average step height)、最大歩高(Max step height)、歩行面積(Step cycle area)において、リハビリテーションのみを行った群では、手術後2〜3ヶ月で回復が見られたのに対し、製剤5を併用した群では、既に1ヶ月目で顕著な回復を示した。この結果より本発明製剤によるビナキサントン投与は、脊髄損傷治療におけるリハビリテーションの効果を時間的に促進する作用を持つことが示された。なお用いた動物数は、薬剤投与4匹、対照2匹である。
【0097】
試験例19.セマフォリン阻害剤シリコーン製剤の脊髄神経に対する再伸長作用
セマフォリン阻害剤シリコーン製剤が、傷害を受けた脊髄内の神経線維に対し、再伸長作用を示すかどうかを調べた。試験例16および18と同様にラット脊髄完全切断モデルを作製し、製剤5を留置、対照群にはプラセボシートを留置した。製剤5を投与したラットの一部は試験例18と同様な3ヶ月間のリハビリテーションを行った。手術3ヶ月後にラットを灌流固定し脊髄を摘出した。脊髄の凍結切片を作製し、再生神経線維のマーカーであるGAP43に対する抗体を用いて免疫染色を行なった。切断部位を顕微鏡観察したところ、
図23に示すように、薬剤のみを投与したラット(製剤5)および薬剤投与に加えてリハビリテーションを行なったラット(製剤5+リハビリテーション)では、対照群に比較して、GAP43陽性線維が増加していた。これをコンピューターによる画像解析にて定量化したところ、傷害部位(
図24)、傷害部位から1mm頭側、1mm尾側のいずれにおいても(
図25)、薬剤投与群は有意な増加を示した。この結果により、セマフォリン阻害剤シリコーンシート製剤は切断された脊髄内の神経線維を再伸長させる作用があることがわかった。また、電子顕微鏡にて再伸長した神経線維を対照群と製剤5投与群で観察したところ、
図26に示すように、対照群では髄鞘をもつ神経線維が少なかったのに対し、製剤5を投与した群では髄鞘(矢印)を持つ神経線維が顕著に多かった。これによりセマフォリン阻害剤シリコーンシートにより再伸長した神経線維は成熟も促進されることがわかった。なお、用いた動物数は、対照群、薬剤投与群、リハビリテーション併用群とも11匹である。
【0098】
試験例20.セマフォリン阻害剤シリコーン製剤の血管新生促進作用
脊髄損傷後の血管の再形成は組織の損傷の回復に重要である。セマフォリン阻害剤シリコーン製剤が、傷害後の脊髄内の血管新生を促進するかを調べた。試験例19で作製した凍結切片に対し、血管内皮細胞のマーカーであるRECA−1に対する抗体を用いて免疫染色を行なった。切断部位から1mm尾側を顕微鏡観察したところ、
図27に示すように薬剤のみ投与したラット(製剤5)および薬剤投与に加えてリハビリテーションを行なったラット(製剤5+リハビリテーション)では、対照群に比較してRECA−1陽性細胞が増加していた。新生血管は成熟血管に比べ大径であるのでコンピューターにより面積が20μm
2以上の血管の数を計測したところ、傷害部位から1mm頭側、3mm頭側、1mm尾側、3mm尾側のいずれにおいても薬剤投与群は有意な増加を示した(
図28)。この結果により、セマフォリン阻害剤シリコーンシート製剤は脊髄損傷後の血管新生を促進する作用があることがわかった。
【0099】
試験例21.ラット脊髄損傷モデルにおけるセマフォリン阻害剤シリコーンシート製剤の作用とリハビリテーションによる増強
製剤5(厚さ0.3mmのシート状製剤)を3mm×3mmにカットしたものを用い、試験例18とは逆にリハビリテーションがセマフォリン阻害剤ビナキサントンの作用におよぼす影響を検討した。試験例16と同様なラット脊髄完全モデルを作製し、同様に製剤5を、対照群にはプラセボシートを留置した。製剤5を投与した動物群をさらに2群に分け、1群に対しては手術後1週より3ヶ月にわたりトレッドミルによるリハビリテーションを行った。手術後1、2、3ヶ月に下肢の運動学的検討(kinematic analysis)を行った。結果を
図29に示す。平均歩幅(Average step length)、最大歩幅(Max step length)、歩行面積(Step cycle area)において製剤5による回復促進作用が示された。その中で歩行面積(Step cycle area)においては、リハビリと製剤5の併用群は、対照群だけでなく製剤5のみの群に比べても顕著な回復促進が示された。また、平均歩幅(Average step height)、最大歩高(Max step height)においては、製剤5のみによる回復促進は示されなかったが、リハビリの併用により顕著な回復作用を示した。以上の結果より、本発明製剤によるビナキサントン投与はリハビリテーションを併用することにより、その効果が促進されることが示された。なお、用いた動物数は、対照群11匹、薬剤投与群13匹、リハビリテーション併用群11匹である。
【0100】
実施例16
あらかじめ乳鉢で塩化ナトリウム結晶を直径100μm以下に粉砕する。上記塩化ナトリウム 50mgに部分α化デンプン 170mgを混合する。さらにビナキサントン粉末 100mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得る。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分340mgと同シリコーンB成分340mgを二本ロールで練合する。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合する。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得る。このシート製剤を5mm×7mmの大きさに切断して本発明の製剤16を得る。
【0101】
実施例17
あらかじめ乳鉢で塩化ナトリウム結晶を直径100μm以下に粉砕する。上記塩化ナトリウム 30mgにクロスカルメロースナトリウム 70mgを混合する。さらにビナキサントン粉末 100mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得る。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分400mgと同シリコーンB成分400mgを二本ロールで練合する。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合する。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得る。このシート製剤を5mm×7mmの大きさに切断して本発明の製剤17を得る。
【0102】
実施例18
あらかじめ乳鉢で塩化ナトリウム結晶を直径100μm以下に粉砕する。上記塩化ナトリウム 30mgにクロスポビドン 120mgを混合する。さらにビナキサントン粉末 100mgを加えて乳鉢で混合し、混合粉末を得る。一方Dow Corning製 SILASTIC Q7-4750 シリコーンA成分375mgと同シリコーンB成分375mgを二本ロールで練合する。上記シリコーン練合後、速やかに上記混合粉末を全量加え練合する。その後二本ロールで伸展し40℃で1日硬化させ、厚さ0.3mmのシート製剤を得る。このシート製剤を5mm×7mmの大きさに切断して本発明の製剤18を得る。
【0103】
試験例22
実施例16から実施例18にて製造した各々の製剤(表16に示す)を試験例1と同様の方法で試験し、累積放出率を求める。
【表16】