特許第5881608号(P5881608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特許5881608伝熱流体としてのハイドロフルオロエーテルの使用方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881608
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】伝熱流体としてのハイドロフルオロエーテルの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20160225BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   C09K5/10 E
   H01L23/36 D
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-536988(P2012-536988)
(86)(22)【出願日】2010年10月27日
(65)【公表番号】特表2013-509487(P2013-509487A)
(43)【公表日】2013年3月14日
(86)【国際出願番号】US2010054237
(87)【国際公開番号】WO2011053628
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2013年10月17日
(31)【優先権主張番号】12/610,765
(32)【優先日】2009年11月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(72)【発明者】
【氏名】フリン, リチャード エム.
(72)【発明者】
【氏名】コステッロ, マイケル ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ブリンスキー, マイケル ジェイ.
【審査官】 馬籠 朋広
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03739033(US,A)
【文献】 特表2009−528415(JP,A)
【文献】 特表2009−507840(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0156139(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0051916(US,A1)
【文献】 特開2001−342458(JP,A)
【文献】 P JOHNCOCK,SULPHUR-OXYGEN VERSUS CARBON-OXYGEN SCISSION IN TRIFLUOROMETHANESULPHONATES,JOURNAL OF FLUORINE CHEMISTRY,1974年,V4,P25-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00
H01L 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスと、
伝熱流体を用いることを含む、前記デバイスへの又は前記デバイスからの伝熱のための機構と、を備える、伝熱を必要とする装置であって、
前記伝熱流体が、以下の構造式により表される化合物を含み、
Y−R−CHOCH−Y
式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は環状であるペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び、1個以上の炭素原子が鎖状窒素又は酸素ヘテロ原子により置換されたこれらの誘導体からなる群から選択され、各Rは最大で1個の水素原子を含有し、各Yは同じであっても異なっていてもよく、YはH、F又はRCHOCH−基(ただし、Rf’は独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は環状であるペルフルオロ化アルキル基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキル基、及び、1個以上の炭素原子が鎖状窒素又は酸素ヘテロ原子により置換されたこれらの誘導体からなる群から選択され、R’は最大で1個の水素原子を含有する)を表し、並びに分子内の炭素原子の合計数は少なくとも6である、装置。
【請求項2】
デバイスを用意することと、
前記デバイスに又は前記デバイスから伝熱するために伝熱流体を使用することと、を含む伝熱方法であって、
前記伝熱流体が、以下の構造式により表される化合物を含み、
Y−R−CHOCH−Y
式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は環状であるペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び、1個以上の炭素原子が鎖状窒素又は酸素ヘテロ原子により置換されたこれらの誘導体からなる群から選択され、各Rは最大で1個の水素原子を含有し、各Yは同じであっても異なっていてもよく、YはH、F又はRCHOCH−基(ただし、Rf’は独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は環状であるペルフルオロ化アルキル基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキル基、及び、1個以上の炭素原子が鎖状窒素又は酸素ヘテロ原子により置換されたこれらの誘導体からなる群から選択され、R’は最大で1個の水素原子を含有する)を表し、並びに、分子内の炭素原子の合計数は少なくとも6である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝熱流体としてハイドロフルオロエーテルを含む装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種流体が伝熱のために使用されている。伝熱流体の適合性は、用途プロセスに依存する。例えば、いくつかの電気的用途は、不活性であり、高い絶縁耐力を有し、低毒性を有し、良好な環境特性を有し、かつ幅広い温度範囲にわたって良好な伝熱特性を有する伝熱流体を必要とする。他の用途では、精密な温度制御を必要とし、したがって、伝熱流体はプロセス温度範囲全体にわたって単一相であることが必要とされ、かつ伝熱流体特性が予測可能であることが必要とされ、すなわち、組成物が比較的一定したままであって、粘度、沸点などが予測可能であり、精密な温度が維持され、かつ機器が適切に設計可能である。
【0003】
ペルフルオロカーボン、ペルフルオロポリエーテル及びいくつかのハイドロフルオロエーテルは、伝熱のために使用されてきている。ペルフルオロカーボン(PFC)は、高い絶縁耐力及び高い固有抵抗を有することができる。PFCは、不燃性であることができ、一般に構造体の材料に機械的に適合し、限られた溶解作用を呈する。加えて、PFCは、一般に、低い毒性及び操作者のとっての良好な使いやすさを呈する。PFCは、狭い分子量分布を有する製品を生じるようなやり方で製造することができる。しかしながら、これらは1つの重要な欠点を呈し得、すなわち、長期環境残留性である。
【0004】
ペルフルオロポリエーテル(PFPE)は、PFCについて述べられるのと同じ利点の多くを呈する。これらはまた、同じ大きな欠点を有し、すなわち、長期環境残留性である。加えて、これらの材料を製造するために開発された方法は、一定の分子量を有さない生成物を生じ得、したがって、性能がばらつく傾向があり得る。
【0005】
ハイドロフルオロエーテル(HFE)の一部類であるハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)は、PFCと同じ利点のいくつかを呈することができるが、2つの領域で大きく異なる。評価に値するのは、これらが、著しく低い環境残留性を呈することができ、数千年というよりもむしろ数十年の規模での大気寿命を生じることである。しかしながら、伝熱流体として示されるHFPEの一部は、広範に多様な分子量の成分の混合物であり得る。したがって、これらの物理特性は、時間の経過と共に変化し得、これにより、性能を予測することが困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一部のハイドロフルオロエーテルは、伝熱流体として開示されている。しかしながら、不活性で、高い絶縁耐力、低い電気伝導率、化学的不活性、熱安定性及び効果的な伝熱性を有し、幅広い温度範囲にわたって液体であり、広範囲の温度で良好な伝熱特性を有し、更には比較的短い大気寿命及び比較的低い地球温暖化寄与力などの受容可能な環境特性を有する伝熱流体に対しての必要性が存在する。デバイスと、これらの特性を有する伝熱流体を用いるこのデバイスへの又はこのデバイスからの伝熱のための機構と、を必要とする装置に対する必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、デバイスと、このデバイスへの又はこのデバイスからの伝熱のための機構と、を備える、伝熱を必要とする装置が提供され、ここで、機構は伝熱流体を使用することを含み、伝熱流体は、以下の構造式により表される化合物を含む。
Y−R−CHOCH−Y
式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖、環状又は分枝鎖であり得るペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び、1個以上の炭素原子が鎖状窒素又は酸素ヘテロ原子により置換されたこれらの誘導体からなる群から選択され、ここで、各Rは最大で1個の水素原子を含有し、各Yは同じであっても異なっていてもよく、YはH、F又はRCHOCH−基を表し、分子内の炭素原子の合計数は少なくとも6である。
【0008】
別の態様では、デバイスを用意することと、このデバイスに又はこのデバイスから伝熱するために伝熱流体を使用することと、を含む伝熱方法が提供され、
前記伝熱流体が、以下の構造式により表される化合物を含み、
Y−R−CHOCH−Y
式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖、環状又は分枝鎖であり得るペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び、1個以上の炭素原子が鎖状窒素又は酸素ヘテロ原子により置換されたこれらの誘導体からなる群から選択され、ここで、各Rは最大で1個の水素原子を含有し、各Yは同じであっても異なっていてもよく、YはH、F又はRCHOCH−基を表し、分子内の炭素原子の合計数は少なくとも6である。
【0009】
本明細書で使用する場合、
「アルキル基」は、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの任意の組み合わせであり得る1価非芳香族ヒドロカルビル基を指す。
「鎖状ヘテロ原子」は、炭素−ヘテロ原子−炭素鎖を形成するように、炭素鎖又は環状化合物で炭素原子に結合している窒素原子又は酸素原子を指す。
「F」は、フッ素原子を表す。
「部分フッ素化アルキレン」は、アルキル基の少なくとも1個のH原子がフッ素により置換されていることを意味する。
「H」は、水素原子を表す。
「ノナフレート」は、ペルフルオロ−n−ブタンスルホネートを指す。
「ペルフルオロ化」は、炭素に結合している全てのH原子がF原子により置換されていることを意味する。
「トリフラート」は、トリフルオロメタンスルホネートを指す。
「極性非プロトン性溶媒」は、実質的に−OH及び−NH−基を含まない溶媒(すなわち、偶発的な量を超える−OH及び−NH−基を含有しない)を指す。
「Y」は、様々な化学基を表す。
【0010】
提供される装置及び方法は、減殺使用されているものよりも高い比熱容量を有する伝熱流体を含む。提供される装置は、高い絶縁耐力、低い電気伝導度を有し、化学不活性、熱安定性及び効果的な伝熱性を有する、伝熱流体を含む。これらは、広範囲の温度にわたって液体であり、広範囲の温度にわたって良好な伝熱特性を有する。
【0011】
上記の要約は、本発明の全ての実施が開示された各実施形態を記載することを意図しない。以下の詳細な説明により、例示的な実施形態をより具体的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明において、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態を想到し実施し得ることが、理解されるべきである。したがって、以下の「発明を実施するための形態」は、限定する意味で理解すべきではない。
【0013】
特に断りがない限り、明細書及び請求項において使用される、構造体サイズ、量及び物理的特性を表す全ての数は、用語「約」により全ての例で修飾されているものとして理解される。したがって、特にそうではないことが断られない限り、本明細書及び付属の「特許請求の範囲」において記載される数値パラメータは、当業者が本明細書に開示される教示を利用して得ようとする所望の特性に応じて変動しうる近似的な値である。終点による数の範囲の使用は、その範囲内(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)の全ての数及びその範囲内の任意の範囲を含む。
【0014】
デバイスと、このデバイスへの又はこのデバイスからの伝熱のための機構と、を備える、伝熱を必要とする装置が提供される。機構は、伝熱流体を含む。提供される伝熱流体は、下記のハイドロフルオロエーテル化合物を含むことができる。デバイスと、提供される伝熱流体を含む、このデバイスへの又はこのデバイスからの伝熱のための機構と、を含む伝熱方法又はプロセスも含まれる。
【0015】
半導体産業においては、限定された性質(select properties)を有する伝熱流体を必要とする多数のデバイス又はプロセスが存在する。伝熱流体を使用して、熱を除去し、熱を加え、又は温度を維持してよい。下記の半導体プロセスの各々は、除熱又は加熱されるデバイス又は部品を組み込んでいる。除熱又は加熱のいずれかと関係した伝熱が、幅広い温度範囲にわたって起こり得る。したがって、各場合に、操作者にとって使いやすくする他の特徴を有する伝熱流体が、典型的に使用される。伝熱流体が「操作者にとって使いやすい」と考えられるためには、伝熱流体は、低毒性及び難燃性を呈することができる。
【0016】
一実施形態では、デバイスは、半導体ダイスの性能を試験するために使用される機器を備えることができる。ダイスは、半導体基材のウエファーから切り出される個々の「チップ」である。ダイスは、半導体製造工場から入手され、これらが機能要件及びプロセッサ速度要件を満たすか確かめるために検査しなければならない。試験は、性能要件を満たさないダイスから「良品保証済みダイス」(KGD)を選別するために使用される。この試験は、通常、約−80℃〜約100℃の範囲の温度にて行われる。
【0017】
一部の場合では、ダイスは一つずつ試験され、個々のダイは、チャックに把持される。このチャックは、そのデザインの一部として、ダイの冷却の供給をもたらす。他の場合では、複数のダイスがチャックに把持され、連続又は並行のいずれかで試験される。この状況で、チャックは、試験手順中に複数のダイスに冷却を提供する。高温条件下でダイスの性能の特徴を判定するために高温でダイスを試験することが有利であり得る。この場合、室温を優に上回る良好な冷却性能を有する伝熱流体が有利である。一部の場合では、ダイスは、非常に低温にて試験される。例えば、相補的な金属酸化物半導体(「CMOS」)デバイスは、特に低温ほど迅速に機能する。自動化試験機器(ATE)がCMOSデバイスを「基板上」にその恒久論理ハードウェアの部品として採用する場合、低温にて論理ハードウェアを維持することが有利であり得る。
【0018】
それゆえに、ATEに最大の汎用性をもたらすために、伝熱流体は、典型的には、低温及高温の両方にて良好に機能し(すなわち、典型的には広い温度範囲にわたって良好な伝熱特性を有し)、不活性であり(すなわち、不燃性、低毒性、非化学反応性であり)、高い絶縁耐力を有し、環境影響が低く、操作温度範囲全体にわたって予測可能な伝熱特性を有する。
【0019】
別の実施形態では、デバイスは、エッチャーを備えることができる。エッチャーは、約70℃〜約150℃の温度範囲にわたって稼働することができる。典型的には、エッチング中、反応性プラズマを使用して、構造体に非等方散乱的にエッチングして半導体にする。半導体は、シリコンウエファーを含むことができるか、あるいは、II〜VI又はIII〜V半導体を含むことができる。一部の実施形態では、半導体材料は、例えば、GaAs、InP、AlGaAs、GaInAsP又はGaInNAsといった、例えば、III〜V半導体材料を挙げることができる。他の実施形態では、提供されるプロセスは、例えば、カドミウム、マグネシウム、亜鉛、セレン、テルル及びこれらの組み合わせを含むことができる材料のようなII〜VI半導体材料に有用である。代表的なII〜VI半導体材料は、CdMgZnSe合金を含むことができる。CdZnSe、ZnSSe、ZnMgSSe、ZnSe、ZnTe、ZnSeTe、HgCdSe及びHgCdTeなどの他のII〜VI半導体材料も、提供されるプロセスを用いて、エッチングすることができる。処理されることになる半導体は、典型的には、一定温度で保持される。したがって、温度範囲全体にわたって単相を有することができる伝熱流体が、典型的には使用される。加えて、伝熱流体は、典型的には、範囲全体にわたって予測可能な性能を有し、その結果、温度を正確に維持することができる。
【0020】
他の実施形態では、デバイスは、約40℃〜約150℃の範囲の温度にわたって稼働するアッシャーを備えることができる。アッシャーは、ポジ型又はネガ型フォトレジストから作られる光電性有機マスクを除去できるデバイスである。これらのマスクは、エッチング中に使用されて、エッチングされる半導体上にパターンを提供する。
【0021】
一部の実施形態では、デバイスは、約40℃〜約80℃の範囲の温度にわたって稼動できるステッパーを備えることができる。ステッパーは、半導体製造で使用されるフォトリソグラフィの本質的な部分であり、ここで、製造に必要とされるレチクルが製造される。レチクルは、ウエファー又はマスク全体を露光するためにステッパーを用いてステッピングし、繰り返す必要があるパターン像を含有するツールである。レチクルを使用して、光電性マスクを露光するのに必要とされる光と影のパターンを作り出す。ステッパーに使用されるフィルムは、典型的には、仕上がりレチクルの良好な性能を維持するために±0.2℃の温度帯内に維持される。
【0022】
更に他の実施形態では、デバイスは、約50℃〜約150℃の範囲の温度にわたって稼動できるプラズマ強化化学蒸着(PECVD)チャンバーを備えることができる。PECVDのプロセスでは、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び炭化ケイ素のフィルムが、ケイ素と、1)酸素、2)窒素又は3)炭素のいずれかと、を含有する試薬気体混合物中で開始される化学反応により、ウエファー上に成長することができる。ウエファーが置かれるチャックは、それぞれ選択された温度にて均一で一定の温度に保持される。
【0023】
更に他の実施形態では、デバイスは、マイクロプロセッサなどのプロセッサのような電子デバイスを備えることができる。これらの電子デバイスが強力になるにつれて、単位時間当たりに生成する熱量も増加する。したがって、伝熱の機構は、プロセッサ性能において重要な役割を果たす。伝熱流体は、典型的には、良好な伝熱性能、良好な電気適合性(たとえ、冷却板を採用するもののような「間接接触」用途で使用される場合であっても)、並びに、低毒性、低(又は不)燃性及び低環境影響を有する。電気適合性が良好であるには、伝熱流体候補は、高い絶縁耐力、高い体積固有抵抗、及び、極性物質に対する乏しい溶解性を呈することが必要である。加えて、伝熱流体は、良好な機械適合性を呈さなければならず、すなわち、伝熱流体は、構造体の典型的材料に悪影響を与えてはならない。
【0024】
提供されるデバイスは、本明細書では、選択された温度にて冷却、加熱又は維持される、構成要素、部品組立体などとして定義される。このようなデバイスとしては、電気部品、機械部品及び光学部品が挙げられる。本発明のデバイスの例としては、マイクロプロセッサ、半導体デバイス製造に使用されるウエファー、電力制御半導体、配電用スイッチギヤ、電力変圧器、回路板、マルチチップモジュール、パッケージ化された及びパッケージされていない半導体デバイス、化学反応素子、原子炉、燃料電池及びレーザーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
提供される装置は、伝熱機構を備える。デバイスと熱接触している伝熱機構を配置することにより、熱は伝達される。伝熱機構は、デバイスと熱接触して配置されると、デバイスから熱を除去し、又は、デバイスに熱を提供し、又は、デバイスを選択された温度に維持する。熱の流れの方向(デバイスから又はデバイスへ)は、デバイスと伝熱機構との間の相対的温度差によって決定される。提供される装置はまた、冷凍システム、冷却システム、試験機器及び加工機器を備えることもできる。一部の実施形態では、提供される装置は、恒温槽又は熱衝撃試験槽であることができる。
【0026】
伝熱機構は、提供される伝熱流体を含む。加えて、伝熱機構は、例えば、ポンプ、バルブ、流体収納システム、圧力制御システム、コンデンサー、熱交換器、熱源、ヒートシンク、冷凍システム、アクティブ温度制御システム、及びパッシブ温度制御システムが挙げられるがこれらに限定されない、伝熱流体を管理するための設備を備えてもよい。好適な伝熱機構の例としては、PECVDツールにおける温度制御ウエファーチャック、ダイ性能試験のための温度制御試験ヘッド、半導体加工機器内の温度制御作業領域、熱衝撃試験槽液体貯蔵室、及び恒温槽が挙げられるが、これらに限定されない。恒温槽は、典型的には、広い温度範囲にわたって操作される。したがって、望ましい伝熱流体は、好ましくは、広い液体範囲及び良好な低温伝熱特性を有する。このような特性を有する伝熱流体は、恒温槽に対して非常に広い稼動範囲を可能にする。典型的には、ほとんどの試験流体は、広い温度限界に対して流体の交換を必要とする。また、良好な温度制御は、伝熱流体の物理特性を精確に予測するのに本質的である。
【0027】
電子部品又は電気機器の冷却に伝熱流体として現在使用されている材料としては、PFC、PFPE、シリコーンオイル及び炭化水素油が挙げられる。これらの伝熱流体はそれぞれいくらかの欠点を有する。PFC及びPFPEは、環境残留性であり得る。シリコーンオイル及び炭化水素油は典型的に、引火性である。
【0028】
提供される装置は、デバイスへの又はデバイスからの伝熱のための、デバイス及び機構を備え、デバイスは熱伝達流体を含む。伝熱流体は、以下の構造式により表される化合物を含む:
Y−R−CHOCH−Y
式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖、環状又は分枝鎖であり得るペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び、1個以上の炭素原子が鎖状窒素又は酸素ヘテロ原子により置換されたこれらの誘導体からなる群から選択することができ、ここで、各Rは最大で1個の水素原子を含有し、各Yは同じであっても異なっていてもよく、YはH、F又はRCHOCH−基を表し、分子内の炭素原子の合計数は少なくとも6である。代表的な伝熱流体は、例えば、出願者の同時係属中の出願である米国特許出願番号第12/263,661号(Flynnら)(2008年11月3日出願)に開示されている。
【0029】
提供される装置及び方法の伝熱流体の成分として有用であり得るフッ素化エーテルの製造方法は、極性非プロトン性溶媒で実行される。多くのこのような溶媒が既知であり、化学分野で用いられている。例としては、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホラミド(HMPA)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、及びN,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。極性非プロトン性溶媒は、混合溶媒の十分な極性が保持される限り、少量の非極性非プロトン性化合物を含有してもよい。一部の実施形態では、アセトンが特に望ましい。
【0030】
第1の方法は、フッ素化エーテルが形成されるような条件下で、極性非プロトン性溶媒中にて、フッ素化アルコールと、フッ素化スルホネートエステル、及び塩基とを混合することを含む。
【0031】
フッ素化アルコールは、以下の式により表され得る。
X−R−CHOH
式中、
は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖、環状又は分枝鎖であり得るペルフルオロ化アルキレン基、及び1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び1個以上の炭素原子が鎖状窒素又は酸素ヘテロ原子により置換されたこれらの誘導体からなる群から選択され、ここで、各Rは最大で1個の水素原子を含有し、Xは、H、F又はR−CHOCH−基を表す。
【0032】
代表的な二価基Rとしては、例えば、ペルフルオロメチレン、ペルフルオロエチレン(すなわち、ペルフルオロエタン−1,2−ジイル)、ペルフルオロプロパン−1,3−ジイル、ペルフルオロプロパン−1,2−ジイル、ペルフルオロ(2−メチルプロパン−1,3−ジイル)、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタン−1,4−ジイル、ペルフルオロペンタン−1,5−ジイル、ペルフルオロヘキサン−1,6−ジイル、ペルフルオロシクロヘキサン−1,4−ジイル、及びペルフルオロオクタン−1,8−ジイルなどのペルフルオロ化アルキレン基、並びに、例えば、フルオロメチレン及び1,1,2,3,3−ペンタフルオロプロパン−1,3−ジイルなどの部分フッ素化アルキル基が挙げられる。ペルフルオロ化及び部分フッ素化アルキル基の代表的な誘導体としては、以下のようなフッ素化アルコキシアルキル基が挙げられる:
−CFCFOCFCF−、−CFCFCFOCFCF−、−CFOCFCF−;−CFCFCFOCF(CF)−;
−CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)−;−CFOCOCF(CF)−;
−CFCFCFCFOCF(CF)−、−CFOC−、−CFOC−、−CFCFCFOCFHCF−、
−CFCFCFOCF(CF)CFOCFHCF−、−CFOCOCFHCF−、−CFO(CFCFO)CF−(式中、xは1以上の整数である)、−CFCFN(CFCF)CFCF−、
−CF(CF)NC−、−C(C)NC−、及び−CFCFCFN(CF)CF−。
【0033】
Xは、H、F又はHOCH−基を表す。一部の実施形態では、フッ素化アルコールは、多官能性であってもよく、対応するポリエーテルが生じる。多官能性フッ素化アルコールの例としては、HOCHCHOH,HOCHCHOH,HOCHCHOH,HOCH(CFCFO)CHOH(式中、nは正の整数である)、及びHOCHCFO(CO)(CFO)CFCHOH(式中、j及びkは、1〜50の範囲の整数を表す)が挙げられる。このような場合、Xは、HOCH−を表す。
【0034】
フッ素化スルホネートエステルは、式RCHOS(=O)により表され、式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖、環状又は分枝鎖であり得るペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び1個以上の炭素原子が鎖状窒素又は酸素ヘテロ原子により置換されたこれらの誘導体からなる群から選択され、ここで、各Rは最大で1個の水素原子を含有し、Rは1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキレン基であり、CF又はCが特に好ましい。
【0035】
代表的なR基としては、ペルフルオロメチル、ペルフルオロエチル、ペルフルオロプロピル、ペルフルオロイソプロピル、ペルフルオロブチル、ペルフルオロイソブチル、ペルフルオロペンチル、ペルフルオロヘキシル、ペルフルオロシクロへキシル、及びペルフルオロオクチル;並びに、例えば、1,1,2,2−テトラフルオロエチル、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル、及び1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブチルなどの部分フッ素化アルキル基;並びに、HCFCFOCFCF−、CFCFOCFCF−、HCFCFCFOCFCF−、CFCFCFOCF−、CFOCFCF−;COCF(CF)−;COCF(CF)CFOCF(CF)−;CFOCOCF(CF)−;COCF(CF)−、CFOC−、COCFHCF−、COCF(CF)CFOCFHCF−、CFOCOCFHCF−、CFO(CFCFO)CF−(式中、yは1以上の整数である)、CFCFN(CFCF)CFCF−、(CFNC−、(CNC−及びCFCFCFN(CF)CF−などのペルフルオロ化及び部分フッ素化アルキル基の誘導体が挙げられる。
【0036】
典型的には、フッ素化アルコール及びフッ素化スルホネートエステルは、ほぼ同量(1:1当量比)で組み合わせられるが、例えば、0.8〜1.2の範囲のモル比など、他の比で用いてもよい。有用な塩基としては、有機及び無機塩基が挙げられる。代表的な塩基としては、アルカリ金属炭酸塩(所望により、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物と組み合わせて)、三級アミン、水素化ナトリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
組み合わせられた成分は、成分の反応及び対応するフッ素化エーテルの形成を生じさせる条件下で圧力容器に入れられるが、場合によっては、周囲気圧でガラス容器内で反応を実施してもよい。典型的な条件は、撹拌及び加熱を含むが、場合によっては、一方又はどちらも行わないことが望ましい場合もある。十分な時間が経過した後、典型的には、混合物を周囲温度に戻し(加熱した場合)、次いで、例えば準備的実施例に記載のように、ワークアップ及び精製を行うことによりフッ素化エーテルが得られる。
【0038】
本開示に係る対称フッ素化エーテルの調製に有用な第2の方法では、上記のようなフッ素化アルコール(すなわち、部分フッ素化アルコール)を、極性非プロトン性溶媒中で、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルカンスルホニルフッ化物と組み合わせる。典型的には、穏やかに加熱して、タイムリーに反応を促進する。
【0039】
フッ素化エーテルは、単独又は互いに若しくは通常用いられる溶媒(例えば、アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロ化三級アミン、ペルフルオロ化エーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、芳香族化合物、シロキサン、塩化炭化水素、ヒドロフルオロカーボン及びこれらの混合物)と混合して用いられ得る。このような共溶媒は、典型的には、特定の用途のために、組成物の特性を改質し又は高めるように選択することができ、得られた組成物が本質的に引火点を持たないような(共溶媒対フッ素化エーテルの)比にて、利用することができる。必要に応じて、フッ素化エーテルは、特定の用途に対して非常に特性の類似している他の化合物(例えば、他のフッ素化エーテル)と組み合わせて用いてもよい。特定用途のために特別に所望される特性を付与するために、フッ素化エーテルに微量の任意成分を添加することができる。有用な組成物は、例えば、界面活性剤、染色剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤及びこれらの混合物などの従来の添加剤を含むことができる。
【0040】
デバイスを用意することと、このデバイスへ又はこのデバイスから伝熱するために伝熱流体を使用することと、を含む、伝熱方法も提供される。このデバイスは、提供されている伝熱流体と同様に上記に記載されている。
【0041】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0042】
特に注記のない限り、実施例における、及び本明細書の他の部分における、全ての部、割合、比率などは、重量基準である。以下の実施例では、略称「GC」は、炎イオン化検出器(応答係数に対して補正されていない)を用いるガスクロマトグラフィーを指し;「IR」は、赤外分光法を指し;「GC/MS」は、ガスクロマトグラフィー−質量分析法を指し;「NMR」(例えば、H、19F、13C)は、核磁気共鳴分光法を指し;「mL」は、ミリリットルを指し、「mol」は、モルを指し;及び「g」は、グラムを指す。
【0043】
Perkin Elmer Pyris 1 DSC(示差走査熱量測定機、DSC)、Analytical Instrument No.294を用いて、比熱容量(Cp)を測定した。Perkin Elmer微量天秤Analytical Instrument No.289を用いて、サンプルを計量した。「三曲線」法を使用したが、そこでは空のDSCパン、サファイア熱容量参照ディスク、及びサンプル材料についてスキャンを行なった。Perkin Elmer熱分析ソフトウェアは、サファイア参照の既知の熱容量に対して較正された熱容量を計算する。熱容量データは、−20℃を起点として20℃ずつ増やして取得し、各20℃加熱範囲の真ん中で1つの熱容量値を測定したが、これは各温度範囲の始まり及び終わりにおける過渡的データを回避するためである。
【0044】
準備的実施例A
2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネートの調製
2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタン−1−オール(202g、1.1mol、Sinochem Corp.,Beijing,Chinaから入手)、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホニルフッ化物(332g、1.1mol、Saint Paul,Minnesotaの3M Companyから入手)、及び水(300g)を、3Lの3つ口丸底フラスコ内で組み合わせた。フラスコには電磁スターラー、冷水凝縮器、熱電対及び250mLの添加漏斗が備えられていた。水酸化カリウム水溶液(149.3g、45重量%、1.22当量)を、温度が35℃を超えないような速度で、添加漏斗を介して滴加した。塩基の添加が完了し次第、混合物を室温で16時間攪拌した。次いで、沈殿した塩を混合物から濾過し、下方の液体フルオロケミカル生成物相を上相の水相から分離した。未反応の2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタン−1−オール、及び1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホニルフッ化物を、常圧蒸留で除去した。
【0045】
準備的実施例B
2,2,3,3−テトラフルオロプロピル−1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネートの調製
2,2,3,3−テトラフルオロプロパン−1−オール(202g、1.52mol、Sinochem Corp.から入手)、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホニルフッ化物(465g、1.52mol、3M Companyから入手)、及び水(500g)を、3Lの三口丸底フラスコ内で組み合わせた。フラスコには電磁スターラー、冷水凝縮器、熱電対及び添加漏斗が備えられていた。水酸化カリウム水溶液(45重量%、211.5g、1.7mol、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,Wisconsin)から入手)を、温度が35℃を超えないような速度で、添加漏斗を介して滴加した。水酸化カリウムの添加が完了し次第、混合物を室温で16時間攪拌した。次いで、沈殿した塩を混合物から濾過し、下方の液体フルオロケミカル生成物相を上相の水相から分離した。未反応の2,2,3,3−テトラフルオロプロパン−1−オール、及び1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホニルフッ化物を、常圧蒸留により液状フルオロケミカル生成物相から分離した。
【0046】
準備的実施例C
2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネートの調製
2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタン−1−オール(200g、1.0mol、3M Companyから入手)、及び1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホニルフッ化物(300g、1.0mol、3M Companyから入手)を、1Lの三口丸底フラスコ内で組み合わせた。フラスコにはオーバーヘッド機械的スターラー、冷水凝縮器、熱電対及び添加漏斗が備えられていた。水酸化カリウム水溶液(水中で45重量%、154g、1.05mol)を、温度が35℃を超えないような速度で、添加漏斗を介して滴加した。水酸化カリウムの添加が完了し次第、混合物を室温で16時間攪拌した。次いで、沈殿した塩を混合物から濾過し、下方の液体フルオロケミカル生成物相を上相の水相から分離し、水で1回洗浄して、350gの粗生成物を得た。生成物を大気圧で蒸留し、140〜150℃から沸騰する留分を更に精製することなく用いた(GCによる純度96.3%)。
【0047】
準備的実施例D
2,2,3,3−テトラフルオロプロピルトリフルオロメタンスルホネートの調製
2,2,3,3−テトラフルオロプロパン−1−オール(244.3g、1.85mol、Sinochem Corp.から入手)、トリエチルアミン(187.2g、1.85mol、Aldrich Chemical Co.から入手)、及び500mLのクロロホルムを、2LのParr圧力反応器内で組み合わせ、密閉した。反応温度を−10℃に設定した。トリフルオロメタンスルホニルフッ化物(281.33g、1.85mol、3M Companyから入手)を、温度が−5℃を超えないような速度で添加した。添加が完了し次第、混合物を−10℃で45分間保持した。次いで、反応混合物を空にし、500mLの水で2回、250mLの1NのHClで1回洗浄した。反応混合物のGC分析は、97%が生成物に変換されたことを示した。回転蒸発により、クロロホルム溶媒を除去した。生成物を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、次いで無水硫酸マグネシウムを生成物から濾過した。
【0048】
準備的実施例1
4−(2’,2’,3’,4’,4’,4’−ヘキサフルオロブトキシ)−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロブタン、CFCFHCFCHOCHCFCFHCFの調製
2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタン−1−オール(61.3g、0.337mol、Sinochem Corp.から入手)、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(156.4g、0.337mol)、炭酸カリウム(46.5g、0.337mol)、トリ−n−ブチルアミン(0.75g、0.004mol)、及び150mLのアセトンを、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。18時間激しく撹拌しながら混合物を75℃に加熱した。次いで、混合物を空にし、固体を生成物から濾過した。液体生成物を100mLの水で2回洗浄した。GC分析(応答係数に対して補正されていない)に基づくアルキル化率は、60%であった。透明な相が得られ、次いでそれを同心円管塔を用いて分留し、4−(2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブトキシ)−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロブタン(沸点=150℃)が得られた。この蒸留された画分の純度は、GC分析(応答係数に対して補正されていない)に基づいて98%であった。GC/MS分析は、指定の構造と一致していた。上記方法によりこの化合物について比熱容量を測定し、表1に他の例と共に示す。
【0049】
準備的実施例2
5−(2’,2’,3’,4’,4’,4’−ヘキサフルオロブトキシ)−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロペンタン、H(CFCFCHOCHCFCFHCFの調製
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタン−1−オール(78.2g、0.337mol、Sinochem Corp.から入手)、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(156.4g、0.337mol)、炭酸カリウム(46.5g、0.337mol)、トリ−n−ブチルアミン(0.75g、0.004mol)、及び150mLのアセトンを、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。18時間撹拌しながら混合物を75℃に加熱した。塩を生成物から濾過した。生成物を100mLの水で2回洗浄して、余分な塩を除去した。得られたフルオロケミカル生成物相を分離し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。次いで、同心円管塔を用いて分留することにより、5−(2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブトキシ)−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロペンタンを得た。主な画分は、176〜178℃で沸騰し、GC/MS分析は指定の構造と一致していた。上記方法によりこの化合物について比熱容量を測定し、表1に他の例と共に示す。
【0050】
準備的実施例3
5−(2’,2’,3’,3’−テトラフルオロプロポキシ)−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロペンタン、H(CFCFCHOCHCFCFHの調製
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタン−1−オール(424g、1.83mol、Sinochem Corp.から入手)、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(760g、1.83mol)、炭酸カリウム(252g、1.83mol)、テトラ−n−ブチルアンモニウム臭化物(20g、0.06mol)、及び400gのアセトンを、2LのParr圧力反応器内で組み合わせた。温度を75℃に設定し、混合物を72時間撹拌した。次いで、混合物を空にし、塩を生成物溶液から濾過した。生成物溶液を200mLの水で2回洗浄して、更に塩を除去した。次いで、下方のフルオロケミカル相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、次いで20プレートOldershaw蒸留塔を用いて分画することにより精製した。主な画分(GCにより測定したときの純度約98%、応答係数に対して補正されていない)は、大気圧で170℃の温度で沸騰した。構造は、GC/MS、19F NMR、及びH NMRによる分析と一致していた。上記方法によりこの化合物について比熱容量を測定し、表1に他の例と共に示す。
【0051】
準備的実施例4
1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−5−(2’,2’,3’,3’,4’,4’,5’,5’−オクタフルオロペンチルオキシ)ペンタン、HCFCFCFCFCHOCHCFCFCFCFHの調製
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタン−1−オール(22.1g、0.097mol)を、2時間にわたって、水素化ナトリウム(2.5g、純度95%、0.097mol)の無水ジエチレングリコールジメチルエーテル(200g)懸濁液に、50℃で滴加した。この時間の終わりに、溶液は均質であった。次いで、この溶液に、0℃におけるHCFCFCFCFCHOHとCFCFCFCFSOFとトリエチルアミンとの反応により調製されるHCFCFCFCFCHOS(=O)CHCFCFCFCF(50g、0.097mol)を添加した。次いで、反応混合物を9℃で16時間加熱し、105℃で更に6時間加熱した。反応が完了した後、水(100ミリリットル)を添加し、Dean−Starkトラップを用いて混合物を蒸留して、水及び有機溶媒を蒸留容器に戻し、同時にトラップ内に下方のフルオロケミカル相を分離させた。同心円管蒸留塔を通して得られた30.1gの蒸留により予備精製を実施した。留出物(204〜207℃)は、75/21混合物中の2つの主成分から構成されることが見出され(応答係数に対して補正されていないガスクロマトグラフィー(GC)により測定したとき)、これらは、HCFCFCFCFCHOS(=O)CFCFCFCF及びHCFCFCFCFCHOCHCFCFCFCFHであった。
【0052】
エーテルの精製は、50℃にて、塩化リチウム(25g)のジメチルホルムアミド(200mL)溶液でノナフレート混入混合物を処理することにより影響を受けた。これら特定の条件下では、ノナフレートは、塩化リチウムと速やかに反応して、HCFCFCFCFCHCl及びリチウムノナフレートが得られることが見出された。反応混合物を水に注ぎ、下方のフルオロケミカル相を分離し、水で更に2回洗浄し、得られた混合物を蒸留(沸点:205℃、70℃/2mm Hg)して、応答係数に対して補正されていないGCにより測定したとき、91.5%の純度が得られた。指定の構造は、GC/MS分析、赤外分光法、19F NMR、H NMR、及び13C NMRと一致していた。上記方法によりこの化合物について比熱容量を測定し、表1に他の例と共に示す。
【0053】
準備的実施例5
1−(3’−(2”,2”,3”,3”−テトラフルオロプロポキシ)−1’,2’,2’−トリフルオロプロポキシ)−1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンCFCFCFOCFHCFCHOCHCFCFHの調製。
2,2,3−トリフルオロ−3−(ペルフルオロプロポキシ)プロパノール(71.6g、0.24mol、米国特許出願公開第2007/0051916(A1)号(Flynnら)の実施例1に記載の通り調製)、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(119.23g、0.288mol)、炭酸カリウム(39.7g、0.288mol)、トリ−n−ブチルアミン(0.75g、0.004mol)、及び150mLのアセトンを、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。反応器の温度を75℃に設定し、混合物を24時間撹拌した。次いで、混合物を空にし、塩を生成物溶液から濾過した。生成物溶液を100mLの水で2回洗浄して、更に塩を除去した。次いで、下相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、次いで同心円管塔を用いて分留により精製した。主な画分(GCにより測定したときの純度94%、応答係数に対して補正されていない)は、大気圧で161〜162℃の温度で沸騰した。指定の構造は、GC/MS分析と一致していた。
【0054】
準備的実施例6
3−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロプロパン、HCFCFCHOCHCFCFHの調製。
2,2,3,3−テトラフルオロプロパン−1−オール(50g、0.38mol)、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(157g、0.38mol)、炭酸カリウム(52.3g、0.38mol、及び197gのアセトン(溶媒)を、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。脱気後、反応器を密閉し、混合物を18時間激しく撹拌しながら75℃に加熱した。冷却後、反応器を開け、内容物を濾過して、不溶性塩を除去した。アセトンを回転蒸発により除去した。次いで、この残留物に過剰の水を添加し、Dean Starkトラップを用いて生成物を共沸蒸留して、相分離後、52.7gの粗生成物を水洗浄した。回転蒸発中、溶媒を用いて生成物のエーテルの一部を蒸留し、留出物を水に注ぎ、下方のフルオロケミカル相を分離し、水で1回洗浄した(17.8g)。GC分析により、組み合わせられたフルオロケミカル相に基づくこの段階における収率は、52%であった。生成物を大気圧で蒸留し、次いで112〜152℃の留分を、準備的実施例4に記載のように50℃でLiCl(20g)のN,N−ジメチルホルムアミド(150mL)溶液で処理して、残留2,2,3,3−テトラフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネートを除去した。次いで、同心円管塔を通して生成物を蒸留して、純度98.6%の生成物のエーテル(沸点=134〜135℃)を得た。構造は、GC/MS、IR、19F NMR、H NMR、及び13C NMRと一致していた。上記方法によりこの化合物について比熱容量を測定し、表1に他の例と共に示す。
【0055】
準備的実施例7
5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロペンタン;H(CFCFCHOCHCFの調製
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタン−1−オール(50g、0.215mol)、2,2,2−トリフルオロエチルトリフルオロメタンスルホネート(50g、0.215mol、Synquest Labs,Inc.(Alachua,Florida)から入手)、炭酸カリウム(29.7g、0.215mol)、及び175gのアセトン(溶媒)を、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。脱気後、反応器を密閉し、混合物を16時間激しく撹拌しながら75℃に加熱した。冷却後、反応器を開け、内容物を濾過して、不溶性塩を除去した。アセトンを回転蒸発により除去した。次いで、この残留物に過剰の水を添加し、Dean Starkトラップを用いて生成物を共沸蒸留して、相分離後、60.4gの粗生成物を水洗浄した。GC分析によるこの段階における収率は、50%であった。生成物を大気圧で蒸留し、138℃超の留分をポットで組み合わせ、次いで準備的実施例4に記載のように50℃でLiCl(15g)のN,N−ジメチルホルムアミド(250mL)溶液で処理して、残留2,2,2−トリフルオロエチルトリフルオロメタンスルホネートを除去した。次いで、同心円管塔を通して生成物を蒸留して、純度95.9%の生成物のエーテル(沸点=138〜143℃)を得た。構造は、GC/MS及びH NMR分析と一致していた。上記方法によりこの化合物について比熱容量を測定し、表1に他の例と共に示す。
【0056】
準備的実施例8
4−(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブトキシ)−1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロブタン;CCHOCHの調製。
2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタン−1−オール(50g、0.25mol、3M Companyから入手)、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(120.5g、0.25mol、上記のように調製)、炭酸カリウム(34.5g、0.25mol)、及び175gのアセトン(溶媒)を、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。脱気後、反応器を密閉し、混合物を112時間激しく撹拌しながら75℃に加熱した。冷却後、反応器を開け、内容物を濾過して、不溶性塩を除去した。アセトンを回転蒸発により除去した。回転蒸発中、溶媒を用いて生成物のエーテルの一部を蒸留し、留出物を水に注ぎ、下方のフルオロケミカル相を分離し、回転蒸発残留物に添加した。次いで、この残留物に約250mLの水を添加し、Dean Starkトラップを用いて生成物を共沸蒸留して、相分離後、62gの粗生成物を水洗浄した。GC分析によるこの段階における収率は、11%であった。生成物を、準備的実施例4に記載のように50℃でLiCl(15g)のN,N−ジメチルホルムアミド(250mL)溶液で処理して、残留ノナフルオロブタン−1−スルホネートを除去した。次いで、生成物を純度78%に蒸留した。GC/MS及びH NMRは、指定の構造と一致していた。
【0057】
準備的実施例9
CHOCHCHOCHの調製
2,2,3,3−テトラフルオロブタン−1,4−ジオール(HOCHCHOH、20g、0.123mol、3M Companyから入手)、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル−1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(CCHOSO、119g、0.247mol、上記のように調製)、炭酸カリウム(34.1g、0.247mol)、及び245gのアセトン(溶媒)を、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。脱気後、反応器を密閉し、混合物を112時間激しく撹拌しながら75℃に加熱した。冷却後、反応器を開け、内容物を濾過して、不溶性塩を除去した。アセトンを回転蒸発により除去した。次いで、この残留物に過剰の水を添加し、Dean Starkトラップを用いて生成物を共沸蒸留して、相分離後、57.2gの粗生成物を水洗浄した。GC/MS分析は、より複雑な混合物中の成分(GCによる収率約8.4%)として、予測される生成物CCHOCHCHOCHの存在と一致していた。
【0058】
準備的実施例10
(CFNCCHOCHHの調製
3−[ビス(トリフルオロメチル)アミノ]−2,2,3,3−テトラフルオロ−プロパン−1−オール((CFNCCHOH、25g、0.088mol、3M Company(Saint Paul,MN))、実施例4に記載のように調製されたHCFCFCFCFCHOS(=O)CFCFCFCF(45.4g、0.088mol)、炭酸カリウム(12.2g、0.088mol)、及び175gのアセトン(溶媒)を、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。脱気後、反応器を密閉し、混合物を64時間激しく撹拌しながら75℃に加熱した。冷却後、反応器を開け、内容物を濾過して、不溶性塩を除去した。アセトンを回転蒸発により除去した。次いで、この残留物に過剰の水を添加し、Dean Starkトラップを用いて生成物を共沸蒸留して、相分離後、30.3gの粗生成物を水洗浄した。GC/MS分析は、より複雑な混合物中の成分(GCによる収率約6%)として、予測される生成物(CFNCCHOCHHの存在と一致していた。混合物を蒸留して、純度約35%のエーテルを得、H−NMRはその構造と一致していた。
【0059】
準備的実施例11
8−(2’,2’,3’,3’−テトラフルオロプロポキシ)−1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ペンタデカフルオロオクタン、C15CHOCHCFCFHの調製
ペンタデカフルオロ−1−オクタノール(100g、0.25mol、Exfluor Corp.から入手)、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(103.5g、0.25mol)、炭酸カリウム(34.5g、0.25mol)、Adogen 464(5.5g、Aldrich、50%ジグリム溶液として使用)及び150gのアセトンを600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。反応混合物を75℃に加熱して、混合物を72時間にわたって撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物を濾過して、固体を取り出し、回転蒸発によりアセトンを除去した。残留物に水を添加し、混合物を共沸蒸留して、1回水洗浄したところ、純度約77%で114.2gの所望のエーテルを生じた。生成物を同心円管塔を用いて分留したところ、主な画分は純度99.6%であり、196℃の沸点を有した。上記方法によりこの化合物について比熱容量を測定し、表1に他の例と共に示す。
【0060】
準備的実施例12
5−(2’,2’,3’,3’,3’−ペンタフルオロプロポキシ)−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロフルオロペンタン、HCCHOCHCFCFの調製
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタン−1−オール(50g、0.21mol、Sinochem Corp.から入手)、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(93.1g、0.21mol、0℃におけるメチルt−ブチルエーテル溶媒中でのトリエチルアミンの存在下での2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−オールとノナフルオロブタンスルホニルフッ化物との反応により調製)、炭酸カリウム(29.8g、0.21mol)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(0.5g)及び175gのアセトンを600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。反応器を密封し、温度を75℃に上げ、混合物を16時間撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物を濾過して固体を取り出し、固体を少量のアセトンで1回洗浄した。アセトン溶液を水に注ぎ、下方のフルオロケミカル相を分離し、水で1回洗浄したところ、89.5gの液体を得、これは約24%の所望のエーテル生成物であった。生成物を同心円管塔を用いて蒸留し、留出物(124℃〜150℃で分留)をLiCl(20.6g、0.48mol)のDMF(250mL)溶液で50℃にて約1時間処理して、残留物のブタンスルホネート出発物質をより低沸点物質CCHClに転化させた。水をDMF溶液に添加し、生成物を共沸し、水で1回洗浄し、同心円管塔を用いて蒸留することにより精製したところ、純度99.2%、沸点=150℃で最終エーテル生成物を得た。構造は、GC/MS及びH−NMRと一致していた。上記方法によりこの化合物について比熱容量を測定し、表1に他の例と共に示す。
【0061】
準備的実施例13
4−[1,1ジフルオロ−2−(2,2,3,3−テトラフルオロ−プロポキシ)−エチル]−2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン(I)の調製
【化1】

2,2−ジフルオロ−2−(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン−4−イル)−エタノール中間体の調製
オーバーヘッドスターラー、水冷コンデンサー、熱電対及び添加漏斗を取り付けた3リットルの丸底ガラスフラスコ内で、テトラグリム(400g)及び水素化ホウ素ナトリウム(20g、0.54mol)を組み合わせた。反応混合物を窒素下で保持した。内容物を70℃に加熱し、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン(Aldrich)を電気化学的フッ素化してその後メタノールでエステル化することにより作られたジフルオロ−(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリ−4−イル)−酢酸メチルエステル(175g、0.516mol)を2.5時間にわたって添加した。混合物を更に16時間にわたって70℃に保持した。反応混合物を室温に冷却し、メタノールを2時間(115mL)にわたって添加した。水(810mL)を添加し、次いで硫酸(69g、98%)を滴加した。反応混合物を分液漏斗に注ぎ、下方のフルオロケミカル相を水で2回洗浄した。
【0062】
同一の充填量での第2組を実行し、2つの組をこの段階で組み合わせ、真空下で蒸留したところ、2,2−ジフルオロ−2−(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン−4−イル)−エタノール(223g)を得、GC分析によると純度は97.7%であった。GC分析に基づいた収率は、67.8%であった。構造をGC/MSにより確認した。
【0063】
4−[1,1ジフルオロ−2−(2,2,3,3−テトラフルオロ−プロポキシ)−エチル]−2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロ−モルホリンの調製
2,2−ジフルオロ−2−(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロ−モルホリン−4−イル)−エタノール(100g、0.325mol、上記のように調製)、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルノナフルオロブタンスルホネート(138.6g、0.33mol)、炭酸カリウム(44.7g、0.32mol)及び200mLのアセトン(溶媒)を600−mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。脱気後、反応器を密閉し、混合物を64時間激しく撹拌しながら75℃に加熱した。冷却後、反応器を開け、内容物を濾過して、不溶性塩を除去した。反応混合物を水に注ぎ、下方のフルオロケミカル相を分離し、水で更に3回洗浄したところ、ガスクロマトグラフィーにより80.7%の所望のエーテルを含有する120.9グラムの物質を得た。GC分析に基づくこの段階における収率は、71.4%であった。エーテルの精製は、ノナフレート汚染混合物を塩化リチウム(0.77g)のジメチルホルムアミド(約10mL)溶液により50℃にて準備的実施例4で述べたように処理することにより、達成した。反応混合物を水に注ぎ、水蒸気蒸留した。下相を水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、同心円管蒸留塔を用いて分留した。主な画分(19F−NMRにより測定したときの純度99.1%)は、大気圧で174.1℃〜174.4℃の温度にて沸騰した。上記方法によりこの化合物について比熱容量を測定し、表1に他の例と共に示す。
【0064】
【表1】

CE1〜3は、比較実施例1〜3である。
【0065】
表1は、−20℃、0℃、20℃及び40℃にて測定された様々な代表的な伝熱流体の比熱容量データ(J/gK)を示す。3つの比較実施例を示す。比較実施例2及び3のデータのみを25℃にて測定した。CE1は、Novec 7500であり、市販の伝熱流体である。FC−43(CE2)は、伝熱に使用される別の市販の流体である。Novec 7500及びFC−43はどちらも、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能である。CE−3はZT−180であり、Solvay Solexis S.p.A.から入手可能な市販の伝熱流体である。熱容量は、提供された伝熱流体及びこれを組み込んでいるデバイスが比較材料よりも伝熱について高い容量を有し、それゆえに、効率的であり、有用であることを示す。
【0066】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する「特許請求の範囲」によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。本開示に引用された全ての参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。