(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881616
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】アンシラリーサービスネットワーク装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20160225BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
【請求項の数】52
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-548317(P2012-548317)
(86)(22)【出願日】2011年1月12日
(65)【公表番号】特表2013-517546(P2013-517546A)
(43)【公表日】2013年5月16日
(86)【国際出願番号】CA2011000034
(87)【国際公開番号】WO2011085477
(87)【国際公開日】20110721
【審査請求日】2014年1月10日
(31)【優先権主張番号】61/360,357
(32)【優先日】2010年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/294,818
(32)【優先日】2010年1月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512185051
【氏名又は名称】エンバラ パワー ネットワークス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100136744
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 佳正
(72)【発明者】
【氏名】メトカーフ マルコム
(72)【発明者】
【氏名】サンキー ジョン トッド
【審査官】
貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−345153(JP,A)
【文献】
特開2003−032889(JP,A)
【文献】
特開2003−284244(JP,A)
【文献】
特開2006−094648(JP,A)
【文献】
特開2001−346333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 50/34
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンシラリーサービス(Ancillary Services)を提供すること以外の主プロセスを各々が有する複数のリソースの運用を指示することにより独立系統運用機関(「ISO」)又は総合電力会社にアンシラリーサービスを提供する方法であって、
ISO又は電力会社から、ターゲット設定点、標的設定点完了時間、エネルギー価格及び規制価格を含むアンシラリーサービス要求を受信する段階と、
前記リソースと、前記アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たす前記リソースの運用上の設定点とのコスト効果が高い組み合わせを選択する段階と、
制御信号を前記選択リソースを制御するコントローラに送信し、前記選択リソースに対して前記選択設定点で作動するよう指示する段階と、
をサーバが行う、方法。
【請求項2】
前記選択リソースに対して前記選択設定点で作動するよう指示する前記段階が、
前記コントローラに運用上の前記選択設定点を伝達する段階と、
前記コントローラに前記選択リソースが前記選択設定点で作動するよう命令する段階と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コントローラにより前記選択リソースに対して前記選択設定点で作動するよう指示する段階が、
前記コントローラにより、前記選択設定点が前記選択リソースの主プロセスを満たすかどうかを判定する段階と、
前記選択設定点が前記選択リソースの主プロセスを満たす場合に限り、前記コントローラにより制御される前記選択リソースに対して前記選択設定点で作動するよう指示する段階と、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コントローラから前記リソースの状態を受信する段階を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記リソースの状態が、前記リソースにより消費又は供給された現在の電力、前記リソースにより消費又は供給することができる最大電力、前記リソースにより消費又は供給することができる最小値電力、前記リソースの主プロセスの状態、及び前記リソースの可用性のうちの1つ又はそれ以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リソース及び前記リソースの運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせが、前記リソースの1つ又はそれ以上に関する状態の変化の変化に応答して選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記リソースと、前記アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たす前記リソースの運用上の設定点とのコスト効果が高い組み合わせを選択する前記段階が、
アンシラリーサービスを提供するために利用可能である前記リソースを決定する段階と、
前記利用可能なリソースの許容設定点を決定する段階と、
前記利用可能なリソース及び前記許容設定点の組み合わせを決定する段階と、
各組み合わせのコストを決定する段階と、
前記アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たす最低コストを有する前記組み合わせを選択する段階と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点の適用から生じる前記組み合わせにおけるリソースの主プロセスの状態のあらゆる推定される変化のコストに少なくともある程度基づいて決定される、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点で作動する要求を無効にする前記組み合わせにおけるリソースの何れかのリスクに少なくともある程度基づいて決定される、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点の適用から生じる前記組み合わせにおけるリソースの推定エネルギー消費量に少なくともある程度基づいて決定される、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点の適用から生じる前記組み合わせにおけるリソースに対する機械的損耗の推定償却原価に少なくともある程度基づいて決定される、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点の適用から生じる前記組み合わせにおけるリソースにより提供されたアンシラリーサービスの推定価値に少なくともある程度基づいて決定される、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおけるリソースの各々の状態に少なくともある程度基づいて決定される、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点で作動する指示に対する前記組み合わせにおけるリソースの推定応答速度と、前記アンシラリーサービスを提供する際の応答速度の推定値とに少なくともある程度基づいて決定される、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記リソース及び前記リソースの運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせを選択する前記段階が、特定の設定点にて前記リソースを作動させる推定財務コストに少なくともある程度基づく、請求項1〜14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記アンシラリーサービス要求に対する前記リソースの集約応答をISO又は電力会社に伝達する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
アンシラリーサービスを提供するために前記集約における前記リソースの推定能力をISO又は電力会社に伝達する段階を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アンシラリーサービスを提供すること以外の主プロセスを各々が有する複数のリソースの運用を指示することにより独立系統運用機関(「ISO」)又は総合電力会社にアンシラリーサービスを提供する装置であって、
ISO又は電力会社と前記リソースを制御するコントローラと通信状態にあるサーバを備え、該サーバは、
ISO又は電力会社から、ターゲット設定点、標的設定点完了時間、エネルギー価格及び規制価格を含むアンシラリーサービス要求を受信する段階と、
前記リソースと、前記アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たす前記リソースの運用上の設定点とのコスト効果が高い組み合わせを選択する段階と、
制御信号を前記選択リソースを制御するコントローラに送信し、前記選択リソースに対して前記選択設定点で作動するよう指示する段階と、
を行うように前記サーバにより実行可能なステートメント及び命令が記録されたメモリを有する、ことを特徴とする装置。
【請求項19】
前記コントローラが、前記サーバから受信された運用上の設定点で作動するように前記リソースに指示するよう動作可能である、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記選択リソースに対して前記選択設定点で作動するよう指示する段階が、
前記コントローラに前記選択リソースに対する前記選択設定点を伝達する段階と、
前記コントローラに前記選択リソースが前記選択設定点で作動するよう命令する段階と、を含む、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記コントローラが、
前記選択設定点が前記選択リソースの主プロセスを満たすかどうかを判定する段階と、 前記選択設定点が前記選択リソースの主プロセスを満たす場合に限り、前記選択リソースに対して前記選択設定点で作動するよう指示する段階と、
によって前記選択リソースに対して前記選択設定点で作動するよう指示するように動作可能である、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記コントローラは通信をするように作動可能であり、前記サーバは、前記リソースの状態を受信するように作動可能である、請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記リソースの状態が、前記リソースにより消費又は供給された現在の電力、前記リソースにより消費又は供給することができる最大電力、前記リソースにより消費又は供給することができる最小値電力、前記リソースの主プロセスの状態、及び前記リソースの可用性のうちの1つ又はそれ以上を含む、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記リソース及び前記リソースの運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせが、前記リソースの1つ又はそれ以上に関する状態の変化に応答して選択される、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記リソース及び前記リソースの運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせを選択する前記段階が、
アンシラリーサービスを提供するために利用可能である前記リソースを決定する段階と、
前記利用可能なリソースの許容設定点を決定する段階と、
前記利用可能なリソース及び前記許容設定点の組み合わせを決定する段階と、
各組み合わせのコストを決定する段階と、
前記アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たす最低コストを有する組み合わせを選択する段階と、
を含む、請求項18に記載の装置。
【請求項26】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点の適用から生じる前記組み合わせにおけるリソースの主プロセスの状態のあらゆる推定される変化のコストに少なくともある程度基づいて決定される、請求項18〜25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点で作動する要求を無効にする前記組み合わせにおけるリソースの何れかのリスクに少なくともある程度基づいて決定される、請求項18〜25の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点の適用から生じる前記組み合わせにおけるリソースの推定エネルギー消費量に少なくともある程度基づいて決定される、請求項18〜25の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点の適用から生じる前記組み合わせにおけるリソースに対する機械的損耗の推定償却原価に少なくともある程度基づいて決定される、請求項18〜25の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点の適用から生じる前記組み合わせにおけるリソースにより提供されたアンシラリーサービスの推定価値に少なくともある程度基づいて決定される、請求項18〜25の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおけるリソースの各々の状態に少なくともある程度基づいて決定される、請求項18〜25の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点で作動する指示に対する前記組み合わせにおけるリソースの推定応答速度と、前記アンシラリーサービスを提供する際の応答速度の推定値とに少なくともある程度基づいて決定される、請求項18〜25の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記リソース及び前記リソースの運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせを選択する前記段階が、特定の設定点にて前記リソースを作動させる推定財務コストに基づく、請求項18〜32の何れか1項に記載の装置。
【請求項34】
前記サーバのメモリが更に、前記アンシラリーサービス要求に対する前記リソースの前記集約応答をISO又は電力会社に伝達するために前記サーバにより実行可能なステートメント及び命令が記録されている、請求項18に記載の装置。
【請求項35】
前記サーバのメモリが更に、前記アンシラリーサービスを提供するために前記集約における前記リソースの推定能力をISO又は電力会社に伝達するために前記サーバにより実行可能なステートメント及び命令が記録されている、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
アンシラリーサービスを提供すること以外の主プロセスを各々が有する複数のリソースの運用を指示することにより独立系統運用機関(「ISO」)又は総合電力会社にアンシラリーサービスを提供するコンピュータ可読媒体であって、
ISO又は電力会社から、ターゲット設定点、標的設定点完了時間、エネルギー価格及び規制価格を含むアンシラリーサービス要求を受信する段階と、
前記リソースと、前記アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たす前記リソースの運用上の設定点とのコスト効果が高い組み合わせを選択する段階と、
制御信号を前記選択リソースを制御するコントローラに送信し、前記選択リソースに対して前記選択設定点で作動するよう指示する段階と、
を行うようにサーバにより実行するようステートメント及び命令が記録されたコンピュータ可読媒体。
【請求項37】
前記選択リソースに対して前記選択設定点で作動するよう指示する前記段階が、
前記コントローラに前記選択リソースに対する前記選択設定点を伝達する段階と
前記コントローラに前記選択リソースが前記選択設定点で作動するよう命令する段階と、
を含む、請求項36に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項38】
前記コントローラにより前記選択リソースに対して前記選択設定点で作動するよう指示する前記段階が、
前記コントローラにより前記選択設定点が前記選択リソースの主プロセスを満たすかどうかを判定する段階と、
前記選択設定点が前記選択リソースの主プロセスを満たす場合に限り、前記コントローラにより制御される前記選択リソースに対して前記選択設定点で作動するよう指示する段階と、
を含む、請求項37に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項39】
前記コントローラから前記リソースの状態を受信するため前記サーバにより実行するよう記録させたステートメント及び命令を更に含む、請求項37に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項40】
前記リソースの状態が、前記リソースにより消費又は供給された現在の電力、前記リソースにより消費又は供給することができる最大電力、前記リソースにより消費又は供給することができる最小値電力、前記リソースの主プロセスの状態、及び前記リソースの可用性のうちの1つ又はそれ以上を含む、請求項39に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項41】
前記リソース及び前記リソースの運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせが、前記リソースの1つ又はそれ以上に関する状態の変化に応答して選択される、請求項39に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項42】
前記リソースと、前記アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たす前記リソースの運用上の設定点とのコスト効果が高い組み合わせを選択する前記段階が、
アンシラリーサービスを提供するために利用可能である前記リソースを決定する段階と、
前記利用可能なリソースの許容設定点を決定する段階と、
前記利用可能なリソース及び前記許容設定点の組み合わせを決定する段階と、
各組み合わせのコストを決定する段階と、
前記アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たす最低コストを有する組み合わせを選択する段階と、
を含む、請求項36に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項43】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点の適用から生じる前記組み合わせにおけるリソースの主プロセスの状態のあらゆる推定される変化のコストに少なくともある程度基づいて決定される、請求項36〜42の何れか1項に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項44】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点で作動する要求を無効にする前記組み合わせにおけるリソースの何れかのリスクに少なくともある程度基づいて決定される、請求項36〜42の何れか1項に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項45】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点の適用から生じる前記組み合わせにおけるリソースの推定エネルギー消費量に少なくともある程度基づいて決定される、請求項36〜42の何れか1項に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項46】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点の適用から生じる前記組み合わせにおけるリソースに対する機械的損耗の推定償却原価に少なくともある程度基づいて決定される、請求項36〜42の何れか1項に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項47】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点の適用から生じる前記組み合わせにおけるリソースにより提供されたアンシラリーサービスの推定価値に少なくともある程度基づいて決定される、請求項36〜42の何れか1項に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項48】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおけるリソースの各々の状態に少なくともある程度基づいて決定される、請求項36〜42の何れか1項に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項49】
各組み合わせのコストが、前記組み合わせにおける前記設定点で作動する指示に対する前記組み合わせにおけるリソースの推定応答速度と、前記アンシラリーサービスを提供する際の前記応答速度の推定値とに少なくともある程度基づいて決定される、請求項36〜42の何れか1項に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項50】
前記リソース及び前記リソースの運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせを選択する前記段階が、特定の設定点にて前記リソースを作動させる推定財務コストに少なくともある程度基づく、請求項36〜49の何れか1項に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項51】
前記アンシラリーサービス要求に対する前記リソースの集約応答をISO又は電力会社に伝達するため前記サーバにより実行するよう記録させたステートメント及び命令を更に含む、請求項36に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項52】
アンシラリーサービスを提供するため前記集約における前記リソースの推定能力をISO又は電力会社に伝達するために前記サーバにより実行するよう記録させたステートメント及び命令を更に含む、請求項51に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に独立系統運用機関(ISO)又は総合電力会社にアンシラリーサービス(Ancillary Services)などのサービスを提供する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気は、エネルギーとして浸透としている。電気は、燃えている石炭又は核分裂からの熱、落下している水、太陽光又は風力を含む、供給源からユーザにエネルギーを供給する好都合且つ安全な手段を提供する。電気は容易には貯蔵することができないので、発電(供給)と負荷(需要)は、連続的にバランスを保って維持されなければならない。100年以上にわたり、実質的に総合電力会社は、全システム需要に適合するように発電供給源を連続的に調整することによりこのバランスを維持してきた。電力会社は通常、発電は容易に制御することができるが、負荷は制御することができないと判断していた。
【0003】
電力会社は、幾つかの重要な運用上の問題に直面しており、その1つがシステム規制である。システム規制は、自動発電制御(AGC)としても知られ、秒単位で供給と需要との間の差異を測定し、数秒毎に特定の発電供給源に信号を送信して正確なバランスを維持するプロセスである。従来、電力会社は、この役割に専用の発電機を使用して、応答が速く且つAGCを効果的にすることができる運転範囲を有する設備を選択している。AGCに使用されている発電機は、規制サービスとして知られているサービスを提供している。このサービスはISOにより購入される。
【0004】
規制サービスを購入すると、ISOは、システムバランスを維持するため配電網との間の電力の変更を要求する規制サービス要求信号を規制サービス会社に送ることができる。これらの信号は、数秒毎に生じることができる。規制サービス会社は、要求に対応し、変更の達成を示す信号をISOに返信する。
【0005】
供給、負荷、送電及び配電を含む配電網の特性は、時間と共に変化し、IOSのシステム規制の要求を満たすことがますます難しくなっている。以下の一般的な傾向がこの変更の主な要因となっている。
・常に安定していて制御可能且つ予測可能であった発電は、ほぼ正反対の新しい再生可能な発電に拡張されている。
・従来は専用の応答が速い発電を用いて提供されてきた規制サービスの必要性が著しく増加し、成長し続けることが予想される。同時に、規制を行うのに好適な応答特性を有する供給部分が少なくなっている。ほとんどの新しい発電は、システム規制には適していない大規模火力であるか、又はシステム規制には同様に適していない再生可能な供給である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様によれば、ISO又は電力会社運用区域内で制御可能リソースのネットワークを制御することによりISO又は総合電力会社にアンシラリーサービス(Ancillary Services)を提供する装置が提供される。本装置は、中央サーバコンピュータと、中央サーバコンピュータと通信する複数のコントローラと、を含む。この通信は、インターネットを介して、又は専用の通信ネットワークを介して行うことができる。各コントローラは、リソースサイトに位置し、通常はアンシラリーサービスを提供すること以外の主プロセスに使用される独立した装置である1つ又はそれ以上のリソースデバイスを制御する。コントローラは、中央サーバコンピュータから設定点制御信号を受信して、アンシラリーサービスを提供し、リソースデバイスの主プロセスを満たすようにリソースデバイスを作動させることができる。
【0007】
中央サーバコンピュータは、以下の動作を実行することができるプログラムを備えたメモリを有する。
・アンシラリーサービスなどのサービスを提供するリソースのネットワークの集約能力及び可用性を報告する。
・リソースにより消費又は供給される電力の変更を要求するアンシラリーサービス要求などのISOからサービス要求信号を受信する。
・要求されたアンシラリーサービス要求を供給するようにリソースを作動させるコスト効果が高い手段を決定する。
・変更が必要とされる各リソースサイトにおけるコントローラに対して、各リソースデバイスの動作の変更を要求する設定点制御信号を送信する。
・サービス要求信号を満たす際のリソースのネットワークの集約ステータスを報告する。
【0008】
中央サーバコンピュータとコントローラとの間の通信は双方向である。中央サーバコンピュータは、コントローラに設定点に制御情報を送り、コントローラは、中央サーバコンピュータにリソース状態情報を返送する。例えば、中央サーバコンピュータは、各コントローラから各リソースデバイスの電力消費量を含む電力測定値を収集することができる。この測定値は、リソースデバイスに対して要求された変更を反映することができる。次いで、中央サーバコンピュータは、サービスを供給するのに使用される全てのリソースについて出力レベルの合計を実行し、サービスを提供するために使用されているネットワークにおけるリソースによって使用又は供給される全電力を提供する信号をISOに送ることができる。中央サーバコンピュータはまた、各リソースから収集されたデータを記憶し、タイムスタンプ付きでプロセスを後で監査できるようにすることができる。
【0009】
本発明の一態様によれば、アンシラリーサービスを提供すること以外の主プロセスを各々が有する複数のリソースの運用を指示することにより独立系統運用機関(「ISO」)又は総合電力会社にアンシラリーサービスを提供する方法が提供され、本方法は、
ISO又は電力会社からアンシラリーサービス要求を受信する段階と、
リソースと、アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たすリソースの運用上の設定点とのコスト効果が高い組み合わせを選択する段階と、
選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階と、
を含む。
【0010】
選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階は、
選択リソースと通信状態にあり且つ選択リソースの作動を指示するよう動作可能な1つ又はそれ以上のコントローラに選択リソースに対する選択設定点を伝達する段階と、
コントローラにより選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階と、
を含むことができる。
【0011】
コントローラにより選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階はまた、
コントローラにより、選択設定点が選択リソースの主プロセスを満たすかどうかを判定する段階と、
選択設定点が選択リソースの主プロセスを満たす場合に限り、コントローラにより選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階と、
を含むことができる。
【0012】
本方法は、コントローラからリソースの状態を受信する段階を更に含むことができる。リソースの状態は、リソースにより消費又は供給された現在の電力、リソースにより消費又は供給することができる最大電力、リソースにより消費又は供給することができる最小値電力、リソースの主プロセスの状態、及び、リソースの可用性のうちの1つ又はそれ以上を含むことができる。リソース及びリソースの運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせは、リソースの1つ又はそれ以上に関する状態の変化に応答して選択することができる。
【0013】
リソースと、アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たすリソースの運用上の設定点とのコスト効果が高い組み合わせを選択する段階は、
アンシラリーサービスを提供するために利用可能であるリソースを決定する段階と、
利用可能なリソースの許容設定点を決定する段階と、
利用可能なリソース及び許容設定点の組み合わせを決定する段階と、
各組み合わせのコストを決定する段階と、
アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たす最低コストを有する組み合わせを選択する段階と、
を含むことができる。
【0014】
各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点の適用から生じる組み合わせにおけるリソースの主プロセスの状態のあらゆる推定される変化のコストに少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点で作動する要求を無効にする組み合わせにおけるリソースの何れかのリスクに少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点の適用から生じる組み合わせにおけるリソースの推定エネルギー消費量に少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点の適用から生じる組み合わせにおけるリソースに対する機械的損耗の推定償却原価に少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点の適用から生じる組み合わせにおけるリソースにより提供されたアンシラリーサービスの推定価値少なくともある程度に基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおけるリソースの各々の状態に少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点で作動する指示に対する組み合わせにおけるリソースの推定応答速度と、アンシラリーサービスを提供する際の応答速度の推定値とに少なくともある程度基づいて決定することができる。
【0015】
リソース及びリソースの運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせを選択する段階は、特定の設定点にてリソースを作動させる推定財務コストに少なくともある程度基づくことができる。
【0016】
本方法は、アンシラリーサービス要求に対するリソースの集約応答をISO又は電力会社に伝達する段階、及び/又はアンシラリーサービスを提供するために集約におけるリソースの推定能力をISO又は電力会社に伝達する段階を更に含むことができる。
【0017】
本発明の一態様によれば、アンシラリーサービスを提供すること以外の主プロセスを各々が有する複数のリソースの運用を指示することにより独立系統運用機関(「ISO」)又は総合電力会社にアンシラリーサービスを提供する装置が提供され、本装置は、
ISO又は電力会社及びリソースと通信状態にあるサーバを備え、該サーバは、
ISO又は電力会社からアンシラリーサービス要求を受信する段階と、
リソースと、アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たすリソースの運用上の設定点とのコスト効果が高い組み合わせを選択する段階と、
選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階と、
を行うようにサーバにより実行可能なステートメント及び命令が記録されたメモリを有する。
【0018】
本装置は、サーバ及びリソースと通信状態にある1つ又はそれ以上のコントローラを更に備え、該コントローラが、サーバから受信された運用上の設定点で作動するようにリソースに指示するよう動作可能である。
【0019】
選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階は、
選択リソースと通信状態にある1つ又はそれ以上のコントローラに選択リソースに対する選択設定点を伝達する段階と、
コントローラにより選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階と、を含むことができる。
【0020】
1つ又はそれ以上のコントローラは、
選択設定点が選択リソースの主プロセスを満たすかどうかを判定する段階と、
選択設定点が選択リソースの主プロセスを満たす場合に限り、選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階と、
によって選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示するように動作可能とすることができる。
【0021】
コントローラは、通信するように作動可能とすることができ、サーバは、リソースの状態を受信するように作動可能とすることができる。リソースの状態は、リソースにより消費又は供給された現在の電力、リソースにより消費又は供給することができる最大電力、リソースにより消費又は供給することができる最小値電力、リソースの主プロセスの状態、及び、リソースの可用性のうちの1つ又はそれ以上を含むことができる。リソースのリソース及び運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせは、リソースの1つ又はそれ以上に関する状態の変化に応答して選択することができる。
【0022】
リソース及びリソースの運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせを選択する段階は、
アンシラリーサービスを提供するために利用可能であるリソースを決定する段階と、
利用可能なリソースの許容設定点を決定する段階と、
利用可能なリソース及び許容設定点の組み合わせを決定する段階と、
各組み合わせのコストを決定する段階と、
アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たす最低コストを有する組み合わせを選択する段階と、
を含むことができる。
【0023】
各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点の適用から生じる組み合わせにおけるリソースの主プロセスの状態のあらゆる推定される変化のコストに少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点で作動する要求を無効にする組み合わせにおけるリソースの何れかのリスクに少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、少なくともある程度、組み合わせにおける設定点の適用から生じる組み合わせにおけるリソースにより消費された推定エネルギーに基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点の適用から生じる組み合わせにおけるリソースに対する機械的損耗の推定償却原価に少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点の適用から生じる組み合わせにおけるリソースにより提供されたアンシラリーサービスの推定価値少なくともある程度に基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおけるリソースの各々の状態に少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、少なくともある程度、制御信号に対する組み合わせにおけるリソースの推定応答速度と、アンシラリーサービスを提供する際の応答速度の推定値とに基づいて決定することができる。
【0024】
リソース及び前記リソースの運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせを選択する段階は、特定の設定点にてリソースを作動させる推定財務コストに基づくことができる。
【0025】
サーバのメモリは更に、アンシラリーサービス要求に対するリソースの集約応答を、及び/又はアンシラリーサービスを提供するために集約におけるリソースの推定能力をISO又は電力会社に伝達するためにサーバにより実行可能なステートメント及び命令を記録させることができる。
【0026】
本発明の一態様によれば、アンシラリーサービスを提供すること以外の主プロセスを各々が有する複数のリソースの運用を指示することにより独立系統運用機関(「ISO」)又は総合電力会社にアンシラリーサービスを提供するコンピュータ可読媒体が提供され、コンピュータ可読媒体は、
ISO又は電力会社からアンシラリーサービス要求を受信する段階と、
リソースと、アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たすリソースの運用上の設定点とのコスト効果が高い組み合わせを選択する段階と、
選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階と、
を行うようにサーバにより実行するようステートメント及び命令が記録されている。
【0027】
選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階は、
選択リソースと通信状態にあり、且つ、選択リソースの作動を指示するよう動作可能な1つ又はそれ以上のコントローラに選択リソースに対する選択設定点を伝達する段階と、
コントローラにより選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階と
を含むことができる。
【0028】
コントローラにより選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階は、
コントローラにより選択設定点が選択リソースの主プロセスを満たすかどうかを判定する段階と、
選択設定点が選択リソースの主プロセスを満たす場合に限り、コントローラにより選択リソースに対して選択設定点で作動するよう指示する段階と、
を含むことができる。
【0029】
コンピュータ可読媒体は、コントローラからリソースの状態を受信するためサーバにより実行するよう記録させたステートメント及び命令を更に含むことができる。リソースの状態は、リソースにより消費又は供給された現在の電力、リソースにより消費又は供給することができる最大電力、リソースにより消費又は供給することができる最小値電力、リソースの主プロセスの状態、及び、リソースの可用性のうちの1つ又はそれ以上を含むことができる。リソースのリソース及び運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせは、リソースの1つ又はそれ以上に関する状態の変化に応答して選択することができる。
【0030】
リソースと、アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たすリソースの運用上の設定点とのコスト効果が高い組み合わせを選択する段階は、
アンシラリーサービスを提供するために利用可能であるリソースを決定する段階と、
利用可能なリソースの許容設定点を決定する段階と、
利用可能なリソース及び許容設定点の組み合わせを決定する段階と、
各組み合わせのコストを決定する段階と、
アンシラリーサービス要求並びに各選択リソースの主プロセスを満たす最低コストを有する組み合わせを選択する段階と、
を含むことができる。
【0031】
各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点の適用から生じる組み合わせにおけるリソースの主プロセスの状態のあらゆる推定される変化のコストに少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点で作動する要求を無効にする組み合わせにおけるリソースの何れかのリスクに少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点の適用から生じる組み合わせにおけるリソースの推定エネルギー消費量に少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点の適用から生じる組み合わせにおけるリソースに対する機械的損耗の推定償却原価に少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点の適用から生じる組み合わせにおけるリソースにより提供されたアンシラリーサービスの推定価値少なくともある程度に基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおけるリソースの各々の状態に少なくともある程度基づいて決定することができる。各組み合わせのコストは、組み合わせにおける設定点で作動する指示に対する組み合わせにおけるリソースの推定応答速度と、アンシラリーサービスを提供する際の応答速度の推定値とに少なくともある程度基づいて決定することができる。
【0032】
リソースのリソース及び運用上の設定点のコスト効果が高い組み合わせを選択する段階は、特定の設定点にてリソースを作動させる推定財務コストに少なくともある程度基づくことができる。
【0033】
コンピュータ可読媒体は、アンシラリーサービス要求に対するリソースの集約応答、及び/又はアンシラリーサービスを提供する、集約におけるリソースの推定能力をISO又は電力会社に伝達するためのサーバにより実行するよう記録させたステートメント及び命令を更に含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】リソースデバイスのネットワークを使用してISOに規制及び他のアンシラリーサービスを供給する装置のブロック図である。
【
図2A】ISOと通信する装置の中央サーバコンピュータの機能モジュールを示すシステム図である。
【
図2B】制御可能リソースデバイスのネットワークと通信する装置の中央サーバコンピュータの機能モジュールを示すシステム図である。
【
図3A】中央サーバコンピュータ上での最適化エンジンアルゴリズムの実行を示すフローチャートである
【
図3B】中央サーバコンピュータ上での最適化エンジンアルゴリズムの実行を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(装置)
本明細書に記載の本発明の実施形態において、
図1を参照すると、ISO11又は総合電力会社にシステム規制及び他のアンシラリーサービスを供給する装置10は、ISO11又は電力会社、及びISO又は電力会社運用区域内の複数のリソースデバイス16(或いは「デバイス」又は「リソース」と呼ばれる)とネットワーク14を介して通信する中央サーバコンピュータ12を含む。中央サーバコンピュータ12は、ISOにより要求された1つ又はそれ以上のサービスを配信するようにリソース16を制御するようプログラムされている。リソース16は、一般的に、サーバコンピュータ12(「リソースサイト」)から遠隔のサイト17に位置し、電力(「発電リソース」)を生成する能力を有する発電機、負荷(「負荷リソース」)を消費する能力を有する電動デバイス、及び短期間にわたってエネルギーを貯蔵(「貯蔵リソース」)して後で配電網に戻す能力を有する貯蔵デバイスとすることができる。
【0036】
ISOは、通常は単一の行政区又は州であるが、場合によっては複数の行政区又は州を包含する地理的領域における電力システムの運用を監督、制御、及び監視する。本発明の一実施形態において、装置10は、ネットワークオペレータにより運用され、別名「自動発電制御」(「AGC」)として知られているシステム規制サービスをISOに提供するように構成されているが、本システムは、追加又は代替として、需要応答、再生可能な供給安定化、負荷傾斜維持、運転予備電力、周波数調整、システム慣性、及び緊急時負荷制限(規制サービス及び「アンシラリーサービス」として総称される他のサービス)など、1つ又はそれ以上の他のサービスを提供するように構成することができる。
【0037】
この実施形態において、サーバコンピュータ12は、装置がシステムアンシラリーサービスを提供するためにISOからサービス要求信号(「アンシラリーサービス要求」)を受け取り、詳細には、アンシラリーサービス要求信号は、特定の期間内に全体としてシステムに(又はシステムから)供給される電力の変更をもたらすよう装置10に対する要求を表す。要求信号は通常、ほぼ6秒毎の程度で極めて頻繁に更新される。この要求に応答して、サーバコンピュータ12は、装置10の部分的制御下にある、負荷リソース、発電リソース、又は貯蔵リソースの1つ又はそれ以上の運用を変えることにより、コスト的に最適な方法で電力を変更するように複数のリソース16を運用する。更に詳細には、サーバコンピュータ12は、非比例の非線形的な方法で通常は独立した複数のリソースの運用を調整することができ、この非比例の非線形的な方法により、制御されたリソース16の集約応答が、同じリソース16が独立して制御された場合又は比例もしくは線形的な方法で制御された場合よりもアンシラリーサービス要求信号により密接に近似させることが可能になる。
【0038】
サーバコンピュータ12は、Linux、リアルタイムソフトウェア、及び長期間データベースなど、信頼性のあるオペレーティングシステムが装備された冗長サーバコンピュータシステムである。サーバコンピュータ12は、インターネット及びバックアップ電源への信頼性のある接続が存在する、無許可の物理的アクセスから保護されたセキュアな場所に設置されることが望ましい。サーバコンピュータ12は、十分な処理能力を集約するため、又は故障時の冗長性を提供するため、もしくはその両方のために複数のハードウェアシャーシにわたって分散されたシステムとすることができる。1つのシャーシは、主サーバコンピュータ12として作動し、別のシャーシは、バックアップサーバコンピュータ12として作動することができる。各シャーシは、マルチコア可能なオペレーティングシステムを実行することができる。
【0039】
サーバコンピュータ12は、インターネット14を介して直接、又はセキュリティトンネリングハードウェア又はソフトウェアを伴ってISO11と通信することができる。或いは、サーバコンピュータ12にフレームリレーのようなISO11への専用通信リンク18を取り付けることができる。
【0040】
サーバコンピュータ12は、サーバコンピュータ12に接続されるリソース16の全てを調べるソフトウェアプログラムが格納されたメモリを有し、ISO11により指定された目標レベル又は調節を達成するコスト効果が高い手段を選択する。
【0041】
この実施形態において、制御可能リソース16は、全ての負荷リソースであり、詳細には、複数の単一速度送送水ポンプ、アナログ電気ボイラ及びアナログ電動送風機を含む。これらの電動デバイス16は通常、ISO11にアンシラリーサービスを提供すること以外の主プロセスを処理することを意図されており、装置10は、これらのデバイス16の本来の主プロセスにより定義された運用制約内でのみアンシラリーサービスを提供するようにこれらのデバイス16を作動させるように構成されている。例えば、送水ポンプは、主として地方自治の給水タンクの水位を調節するために使用され、各電気ボイラは、主として複合型電気ガス加熱システムの一環として建物に熱及び家庭用温水を供給するのに使用され、ブロワーは、主として廃水処理タンクに曝気するのに使用される。各デバイス16は、これらの主要目的を実施するコントローラ(「ローカルデバイスコントローラ」)を含む。
【0042】
ローカルデバイスコントローラ22に加えて、遠隔に位置するサーバコンピュータ12と通信し且つ各デバイス16の作動を制御する別のコントローラ20が、システムアンシラリーサービス向けにリソースサイト17に設置されており(「サービスコントローラ」)、各サービスコントローラ20は、運用上の設定点を含むサーバコンピュータ12から制御信号を受信して、アンシラリーサービスを提供するために指定の設定点にてデバイスを作動させるようにプログラムされているが、各サービスコントローラ20はまた、設定点がローカルデバイスコントローラ22により定義された運用制約内であるときにのみこれらのデバイス16を作動させるようにプログラムされている。換言すれば、サービスコントローラ20は、デバイス16が主プロセスに使用されるよう主プロセスオペレータが要求したときに、ローカルデバイスコントローラ22がサービスコントローラ20を無効にできるようにプログラムされている。例えば、地方自治体の浄水場オペレータは、貯水タンクを満水時の10%と90%との間に保つことを要求する場合があり、サービスコントローラ20は、水位がこの範囲内である間にサーバコンピュータ12がこの貯水タンクに向けてポンプを作動させることができるようにプログラムされている。しかしながら、タンク内の水位が満水時の90%にまで上昇すると、ローカルデバイスコントローラ22は、サーバコンピュータ12がポンプをオフに維持することを望む場合でもポンプの電源をオンにする。これらの主プロセスを処理するために所与の時間で使用されている制御可能リソース16は、サーバコンピュータ12に対して「オフライン」であるとみなされ、システム規制を行うのに利用可能ではなく、逆に、デバイスがこれらの主な運用制約内にある制御可能リソース16は、「オンライン」とみなされ、システム規制を行うために利用可能である。「オフライン」リソースは、全体のネットワーク作動点がISO11要求を満たすように他の「オンライン」リソースを用いてサーバコンピュータ12により補償される。
【0043】
次いで、サーバコンピュータ12は、全てのオントロジに使用される全てのステータスデータと、ISO11との全ての通信と、潜在的な監査目的に向けて維持すべき全ての制御動作と、を記憶する。
【0044】
この実施形態のサービスコントローラ20は、インターネット14に接続し且つリソースサイト17にてリソースデバイス16に接続する能力を有する小型の堅牢なコンピュータである。サービスコントローラ20とサーバコンピュータ12との間の接続は、セキュアな通信手段を使用して、多くの場合はサーバコンピュータ12とISO11との間の通信に使用される同様の又は同じセキュリティプロトコルを使用してインターネット14を介して達成される。サービスコントローラ20は、幾つかの方法、即ち、リソースデバイス16用コントローラ又はガバナーとの直接配線、リソース場所にてリソースデバイスを制御するのに使用される遠隔監視制御情報取得(SCADA)システムとの直接接続、又はリソースデバイス16を制御するためにリソースサイト17にてローカル制御システムにより使用されるネットワーク14との接続のうちの1つを使用して、発電リソース、負荷リソース又は貯蔵リソースに接続される。サービスコントローラ20はまた、収益基準に即してリソースにより供給又は消費されている電力を測定する計量デバイス(図示せず)に接続されている。
【0045】
サービスコントローラ20は、コントローラ又は測定機器への直接配線、リソースサイト17にてリソースデバイス16を測定するのに使用されるSCADAシステムとの直接接続、又はリソースデバイス6を測定するためにリソース場所にてローカルコントローラ22により使用されるネットワーク14との接続により、運用制約を適切に満たすことが確実にできるようにするために必要に応じて追加の測定機器(図示せず)に接続することができる。
【0046】
作動時には、サービスコントローラ20は、設定点信号をサーバコンピュータ12から受信し、リソースサイト17にてリソースデバイス16の1つ又はそれ以上からの消費又は発電の変更を指示する。サービスコントローラ20は、リソースデバイス16の運用制約に照らして受信信号の妥当性を確認し、必要であれば信号をクランプする。ローカルデバイスコントローラ22は、サーバコンピュータ12により特定されたリソースデバイス16に設定点信号を送り、要求された変更を指令する。
【0047】
更新間隔(例えば2秒)毎に、サービスコントローラ20は、サーバコンピュータ12に一連の信号を送る。具体的には以下の通り。
・リソースサイト17での各リソースデバイス16の運用のステータス又はレベル(各サービスコントローラに接続される複数のリソースデバイスが存在することができる)。サービスコントローラ20は、当該サイトにて生成又は消費された電力を反映する全電力信号を集約してサーバコンピュータ12に送る。
・サービスコントローラ20は、別個の信号をサーバコンピュータ12に送り、リソースサイト17にて既存のリソースデバイス16が利用可能な最大及び最小値電力レベルを定義する。
・以下で説明するように、コスト計算サブルーチンを実行するためにサーバコンピュータ12により必要とされる何らかの追加の状態情報。
及び、
・サービスコントローラ20自体又はSCADAもしくは他のローカル制御システム22がサーバコンピュータ12の制御を中断した場合の何らかの指標、及びサーバコンピュータ12の制御が中断された場合の現在のローカル制御設定点。
【0048】
次いで、サービスコントローラ20は、リソースサイト17にてあらゆるリソースについて測定されたコマンドステータス及び電力レベルを記憶する。ローカルサービスコントローラ20でのデータ記憶は、長い期間(例えば2年)にわたり全ての記録を維持するのに十分でなければならない。サーバコンピュータ12及びサービスコントローラ20は、ノード間の全てのタイムスタンプされた通信を適切に解釈できるように時間同期されている。サーバコンピュータ12とサービスコントローラ20との間の制御及びステータスプロトコルにより、ネットワーク問題(例えばパケット損失又は再組立)で誤った制御動作が確実に発生しないようにする。システムは、約4秒のISO11コマンド間の所期のサイクル時間、及び約2秒のサーバコンピュータ12とサービスコントローラ20との間のサイクル時間で連続的に稼動する。データのローカル記憶は、サーバコンピュータ12及びサービスコントローラ20において維持され、収益等級メーターでタイムスタンプされる。このデータの可用性により、システムが実際にISO要求信号に対して要求されたように応答していることを確認するために、プロセス全体が監査を受けることが可能になる。
【0049】
代替の実施形態によれば、別個のサービスコントローラ20を設置する代わりに、ローカルデバイスコントローラ22の既存のプログラミングを修正し、サーバコンピュータ12と通信して、サーバコンピュータ12から受信された制御信号に従ってデバイス16を作動させるようにしてもよい。
【0050】
別の代替の実施形態として、サービスコントローラ20は、ローカルデバイスコントローラ22のプログラミングを組み込むことができる。
【0051】
更に代替の実施形態として、装置10は、ネットワークを介して互いに通信する複数のサーバコンピュータ12を含むことができる。一実施形態において、マスタサーバコンピュータは、複数のローカルサーバコンピュータと通信することができる。各ローカルサーバコンピュータは、複数のリソースデバイス16を制御し、集約リソースデバイス16が、単一のリソースデバイス16としてマスタサーバコンピュータに示されるように、その制御下にあるリソースデバイス16を集約することができる。更に、各ローカルサーバコンピュータは、ローカルサーバコンピュータと通信している更なる下位ローカルサーバコンピュータに対してマスタサーバコンピュータとして機能することができる。
【0052】
(作動)
図2A及び
図2Bを参照すると、サーバコンピュータ12は、ISO11からアンシラリーサービス要求信号を受信して処理し、その後、サービスコントローラ20を介して制御可能リソース16に制御信号を送信し、全体としてアンシラリーサービス要求信号に対して適切な応答を行うようにしてリソース16を作動させるようにプログラムされている。アンシラリーサービス要求信号は、少なくとも、(a)ターゲット設定点、(b)標的設定点完了時間、(c)エネルギー価格、及び(d)規制価格を含む。目標設定点は、ネットワークにおける動作点出力又はネットワークにおける絶対動作点出力の変更とすることができる。目標設定点完了時間は、サーバコンピュータ12が目標設定点を達成するのに必要な時間量であり、エネルギー価格は、アンシラリーサービス要求が行われた時点の電気の卸売価格であり、以下でより詳細に説明するように、特定の設定点にてリソースを作動させる財務コストを求める際のコスト関数により使用することができる。規制価格は、要求されたサービスの提供に対してISO11がRSNに支払う金額であり、また、コスト関数によって使用することができる。
【0053】
システム規制信号は、当該技術分野でよく知られているように、SCADAコンピュータシステム30を介してISO11から送信される。SCADAは、接続又は専用物理チャネル34の各端部32にて、セキュリティを有するインターネットを介して制御サーバとセキュアな通信接続を設定する。
【0054】
サーバコンピュータ12は、アンシラリーサービス要求信号を処理し、詳細にはサーバコンピュータ12により処理できる標準化された形式に信号をフォーマットように実行される幾つかのソフトウェアモジュールを有する。例えば、ユニット変換モジュール36は、要求信号からの電力、時間及び価格の単位をサーバコンピュータ12が理解できる単位に変換する。要求信号のデータが適切にフォーマットされると、このデータは、集約制御データベース38内に記憶され、フィルタリングモジュール40により任意選択的にフィルタリングすることができる。フィルタリングモジュール40は、要求信号にフィルタを適用して要求信号内の短いスパイクを除外し、当該スパイクは、十分に迅速な応答速度又は十分に制限的な運用制約を有していない制御可能リソースにより満たすことのできない設定点の迅速な変更を表す。
【0055】
フィルタリングされた要求信号は、サイト制御モジュール44が使用するために、フィルタリングされた集約制御データベース42内に記憶される。サイト制御モジュール44は、アンシラリーサービス要求信号に対する適切な応答を行うために特定の時間にどのリソースを作動させるべきかを判定するプログラミングを含む。詳細には、サイト制御モジュール44は、どのリソース16が何れかの所与の時間で作動するのが最もコスト効果が高いかを判定するリソース管理プログラムを実行し、次いで、アンシラリーサービス要求を満たすリソース16に制御信号を送る。特定の時点でのリソース16を作動させる相対コストを求めるために、サイト制御モジュールプログラミングは、特定の時点での各リソース16を作動させる財務コストに帰属するコスト計算サブルーチンを含む。コスト計算サブルーチンは、当該時間インスタンスにてリソース16を作動させるのに必要とされる電気の購入価格、及び当該時間インスタンスにてリソース16を使用するためデバイス16の主プロセスオペレータに支払われなければならないコストなどの要因を考慮に入れる。次に、集約したコストに、当該時間インスタンスにて各リソース16に割り当てられたリスク係数を乗算し、このリスク係数は、ある時間期間にわたってリソース16がシステム規制を提供するのに使用されるというリスクを考慮しており、主プロセスオペレータは、システム規制運用を無効にして、主目的のためにリソース16を使用する。
【0056】
コスト計算サブルーチンの入力は、ISOアンシラリーサービス要求信号のエネルギー価格データ、並びに各リソースから送信されてそれぞれのサイトステータスデータベース46(「サイト1ステータス」、「サイト2ステータス」、その他のように、
図2A及び
図2Bに図示される)に記憶されているステータスデータを含む。詳細には、ステータスデータは、特定のリソース16のデバイスが現在使用されているかどうかと、ローカルコントローラ22がサーバコンピュータ12により送られたシステム規制制御信号を無効にしているかどうかと、プロセス及びデバイス制約、即ち主プロセスを処理するため(例えば、その限界値を超えて満たされたときに貯水タンクにポンプ送給するため)のデバイス16の作動要件によって又は装置自体の物理的作動限界値(例えば、デバイスが過熱したとき)によって決定付けられるデバイス16の作動に対する何らかの限界値を定義するパラメータと、を含む。このステータスデータは、各リソース16の「オントロジ」を定義すると考えることができる。
【0057】
ここで
図3A及び
図3Bを参照しながら、サイト制御モジュール44上でのリソース管理プログラムの作動について説明する。上述したように、このプログラムの目的は、ISO11から受信したアンシラリーサービス要求信号に基づいて、要求信号に適切な応答を行うために特定の時間においてどのリソース16を作動させるべきかを決定することである。プログラムは、アンシラリーサービス要求信号からの目標設定点完了時間データを使用して集約応答制限時間60を算出することから開始し、この制限時間は、制御可能リソース16が規制応答を行うように働くことができる最新時間を表す。
【0058】
次いで、プログラムは、ブロック62において、集約応答の上側及び下側不感帯を算出する。この段階は、アンシラリーサービス要求信号内の目標設定点の精度を決定するものであり、通常は、要求信号自体の一部としてISO11により設けられ、或いは、その市場ルールの一部として非明示的に設けられる。
【0059】
次に、プログラムは、制御可能リソース16が作動できる設定点の複数の実施可能な組み合わせを生成する組み合わせ定義サブルーチン64を実行する。各組み合わせは、各制御可能リソース16を作動させる提案された設定点を含む。詳細には、組み合わせ定義サブルーチン64は、最初に、各リソースサイトをチェックして、各サイトからのステータス信号が最新であるかどうかを判定(ブロック66)し、いいえの場合、リソース16は、ネットワークの一部ではないとみなされる(ブロック68)。はいの場合、サブルーチンは、ローカルコントローラ22がリソース16のサーバコンピュータの制御を無効にしているかどうかを確認(ブロック70)し、はいの場合、リソース16は、「オフライン」とみなされ、ローカルコントローラ22により命令された設定点にて作動しなければならない。いいえの場合、リソース16は、オンラインとみなされ、各々について潜在的に異なるコストであっても何れかの提案された設定点で作動することが許容される(ブロック72)。
【0060】
組み合わせ定義サブルーチンは、許容リソース16の全てについての設定点の数及び値を決定するために各サイトプロキシ17にわたりループすることにより、各リソース16について繰り返す(ブロック74)。各実施可能な設定点のセットの決定は、以下のように数学的に表すことができる。
【0061】
設定点Sの各実施可能なセットはN個の設定点のセットであり、ここでNはネットワーク内のリソース16の数、セットは各リソース16について1つの設定点を含む。
【数1】
ここでNは、ネットワーク内のリソースの数、Sはリソースの設定点である。
【0062】
考慮される各有効な設定点のセットは、ISO11により設定された精度制約を満たさなければならず、即ち、
【数2】
ここで、
S
ISOはISO11から受け取った設定点、
L
LOWERは下位精度要件、
L
UPPERは上位精度要件である。
【0063】
この精度制約を満たす設定点の何れかのセットは、ISOの集約設定点、即ちアンシラリーサービス要求を満たすのに使用することができるリソースネットワークの実施可能な状態である。
【0064】
リソースネットワークにおける何れか1つのリソース16は、リソース16が作動できる設定点のセットを有する。例えば、巻線の1つのセットのみを有するACモータは、状態ON及びOFFに関連した2つの実施可能な設定点を有する。速度調節可能な駆動ポンプは、2よりも多い(例えば3又は4つの)固定数の設定点を有し、可変速駆動ポンプは、OFFと最高速度との間の連続状態の設定点を有する。
【数3】
ここで、
Mはリソースの許容設定点の数(場合によっては無限)、
S
i,jRESOURCEはネットワークにおけるリソースiのj番目の許容設定点、
S
iRESOURCEはネットワークにおけるリソースiの許容設定点のセットである。
【0065】
組み合わせ定義サブルーチンが完了すると、アンシラリーサービス要求信号を満たすリソース設定点の全ての実施可能なセットを定式化することができる単一のデータ構造体が利用可能である。
【0066】
設定点の複数の実施可能な組み合わせを有するデータ構造体が作成されると、プログラムは、コスト計算サブルーチン76を初期化して、設定点の各組み合わせについて集約コストを算出し、最低集約コストを有する組み合わせを選択し、この選択組み合わせは、設定点の提案された組み合わせによるリソースを作動させる最低コストを表す。コスト計算サブルーチンが実行される前に、プログラムは、最良コスト組み合わせを無限大に設置し(ブロック78)、次いで、明らかに実施可能でない又は利用可能でない組み合わせを削除するよう設定点の組み合わせを間引きする(ブロック80)。次に、コスト計算サブルーチン76は、集約応答時間に到達したかどうかをチェックすることで開始する(ブロック81)。いいえの場合、サブルーチン76は、集約コスト変数をゼロに初期化する(ブロック82)。次いで、サブルーチンは、提案された組み合わせ及び各リソースの応答制限時間からの対応する設定点にて各リソース16を作動させるコストを算出又は検索するために全てのサイトプロキシ17にわたってループする(ブロック84)。これらの結果に基づいて、最適以下のセットの更なる間引きを行うことができる。
【0067】
ここで、コスト計算サブルーチンにおけるコスト計算関数の作動について説明する。各リソースの各実施可能な設定点について、当該設定点にてリソースを作動させることに対応した利得(又は逆に言えば、コスト)が存在する。コスト関数は、実施可能な設定点、設定点の適用時間、リソースの現在及び過去の状態、及び潜在的追加情報を入力として取得してコスト価値を生じさせる関数である。よって、何れかの所与の時間において、各リソースについて、リソースの実施可能な設定点のコストのセットであるコストセットが存在する。
【数4】
ここで、
Mはリソースの許容設定点の数(場合によっては無限)、
C
i,jRESOURCEはネットワークにおけるリソースiのj番目の許容設定点、
C
iRESOURCEはネットワークにおけるリソースiの許容設定点のセットである。
【0068】
各リソースについて、設定点P及び状態ベクトル
を取り、コストを生じるコスト関数
が定義される。このコスト関数は、リソースの許容設定点のセットを用いてリソースについてのコストのセットを求めるのに使用される。
【数5】
【0069】
尚、詳細には、状態ベクトル
のコスト関数に対する実施可能な入力に起因して、リソースのコストのセットは時間可変とすることができる。
【0070】
利得又はコストに関しての多くの実施可能な割当て又は解釈が存在するが、最適化を成功させるためには、全てのリソースコスト関数全体にわたって生じる値が全く同じに重み付けされ、よって直接的に同等にできることが重要である。即ち、例えば、
【数6】
(即ち、リソース1のコスト1がリソース2のコスト1よりも小さい)である場合、設定点1にてリソース2を作動させるよりも、設定点1でリソース1を作動させるほうがよいことが常に当てはまる。
【0071】
全てのコスト関数にわたってこの一貫した重み付けを達成する1つの方法は、コスト関数が生じる値が、実際には、指定の設定点にてリソースを作動させる実際的な財務的利得又はコストであるかどうかである。
【0072】
コスト関数の設計には、以下のことを含む幾つかの考慮事項が含まれる。
1.リソースがシステム規制以外の何らかのプロセスに寄与しているか、又はシステムアンシラリーサービスを供給するための専用のものであるか。
2.別のプロセスに寄与しているリソースの場合、
a.リソースが、規制を行うために通常のプロセス目標の一部であり且つ通常のプロセス目標からの偏差のコスト(例えば、プロセスから作り出した製品の品質低下のコスト)であるというプロセスの状態。
b.プロセスにより課せられた運用制約と、現在のプロセス状態及び設定点を考慮した場合のこの制約に違反するリスク。このリスク評価は、制約に違反するコスト、又は制約が達成された場合の規制収益損失のリスクと組み合わされる。
3.設定点にて作動させるためのリソースによる消費エネルギー、又は設定点にて消費されたエネルギーと通常のプロセス目標にて消費されるエネルギーとの差異。
4.リソースの機械的損耗の償却原価。
5.リソースの規制の価値。
6.リソースの稼動中のステータス。
7.制御信号に対するリソースの応答速度及び規制を行う際の応答速度の値。
【0073】
コスト計算サブルーチンにより処理している設定点組み合わせについて集約コストが算出されると、集約コストを現在の記録された最良コストと比較し(ブロック86)、これが初めてコスト計算サブルーチンが実行されたときである場合、第1の組み合わせの集約コストは、間違いなく初期化された無限大値未満であり、プログラムは、最良コストを有するこの第1の組み合わせを選択する。コスト計算サブルーチン76に戻って、サーチ時間限界に到達したかどうかをチェックし、いいえの場合、組み合わせの全てが処理又は間引されるまで繰り返し、最良コストを有する組み合わせが選択される。制限時間に到達した場合、これまでの最良コストを有する組み合わせが選択される。
【0074】
最良コストの組み合わせが選択されると、プログラムは、最良コストが構成可能で且つ実施可能な時間変化の最大コストを下回るかどうかを判定する(ブロック88)。最大コストは、ネットワークオペレータがアンシラリーサービスを提供するために支払う用意がある最大コストコストを表しており、そのサービス要求信号においてISO11により提供された規制価格及び実施可能な他の財務要因を考慮することにより求められる。最良コストが最大コストを下回らない場合、プログラムは、設定点タイムアウトタイマを起動して(ブロック90)、新しいISOサービス要求信号が受信されているかどうか、又は装置10が有益な方法で応答することができる(即ち、最大コストよりも低い最良コストを有する組み合わせを見つけ出すことができる)ように1つ又はそれ以上のリソースのステータスが変わるかどうかを確認するのを待機する。このような新しい要求信号が受信されない場合、プログラムは停止し、SO11にアンシラリーサービスを提供するのを止める(ブロック92)。
【0075】
最良コストが最大コストよりも低い場合、プログラムは、最良コスト設定点組み合わせを実行し、リソース16に要求信号への応答を生成するように動作させることができる。これは、全てのリソースサイト17にわたってループして、最良コスト設定点組み合わせに従ってリソース設定点及び目標時間を設定することにより達成される(ブロック94)。換言すると、
図2A及び
図2Bを参照し、サイト制御モジュールは、サイト制御データ記憶装置48内に各リソース16についての設定点を記憶し、次いで、
図2A及び
図2Bにおいて「サイトnプロキシ」と示されるソフトウェアモジュールは、セキュアな通信チャネルを介してサービスコントローラ20に設定点を送信する役割を担う。これにより、受信された設定点に従ってリソース16の制御された作動がもたらされる。
【0076】
更に
図2A及び
図2Bを参照すると、サーバコンピュータ12は、次いで、サービスコントローラ20の各々からデータを収集し、ISO11に単一の応答信号を提示するために収集されたデータを集約及び記憶する(ブロック50及び52)。サーバコンピュータ12は、集約された応答信号に加えて、幾つかの信号をISO11に送る。具体的には、
・装置10により制御可能な全てのリソースにより使用又は供給されている現在の全負荷又は発電(ISO11から受信されたサービス要求への基本応答)、
・装置10が当該時点にて使用又は生成することができる最大利用可能負荷又は発電、
・装置10が当該時点にて使用又は生成することができる最小利用可能負荷又は発電、
・使用される中間点、及び、
・規制を行うための装置10の可用性を示すフラグ。
【0077】
次に、サーバコンピュータ12は、全てのオントロジに使用された全ての状態データ、ISO11との全ての通信、及び潜在的な監査目的に維持されるべき全ての制御動作を記憶することができる。
【0078】
上述のように、各リソース16は、独自の「オントロジ」を有すると考えることができ、この「オントロジ」は、リソースサイト17にて測定されたリソースに関する全ての関連した状態情報、リソース16の前回の制御からのリソース16に関する全ての関連した状態情報、電力市場に関する全ての関連した状態情報、及びサーバコンピュータ12内に記憶された状態情報に基づいて作動するコスト計算関数を含む。コスト計算関数のクラスは、リソースのクラスについて定義されている。クラス内では、コスト計算関数は、同じ供給源/オブジェクトコードであるが場合によっては異なる構成パラメータを使用する。コスト計算関数のクラスが異なれば、使用する供給源/オブジェクトコード並びに構成パラメータも異なる。コスト計算関数は、全ての可能な状態について当該デバイスの運用コストを定義する。
【0079】
コスト計算関数は、リソースデバイス16について企図されている制御動作を受け入れ、重み付け値である数を返し、ここで重み付けは、ネットワーク内の全てのオントロジにわたって一貫している。重み付け値は、ネットワーク内の全ての他のデバイス16と比較した評価の時点での規制源としての当該デバイス16の相対的メリットを表す。重み付け値、すなわち名目上のコストは、企図されている制御動作についてデバイス16の価値が低いときの方が高く、価値が高いときの方がより低い。例えば、1時間毎に3回だけ作動することができるポンプは、制御変更の直後に高いコストを有し、このコストは、当該ポンプについて制御変更がない状態で時間が経過するにつれて緩慢に低下することになる。
【0080】
デバイス16に厳しい制約がある場合、限界値により、制約違反に対して極めて大きな(又は無限大の)コストが課させられ、又はコスト計算関数が、制約レベル内にある制御動作のみを許可することに限定される。
【0081】
ローカルの主プロセスがサーバコンピュータ12による制御を中断しなければならない場合(例えばタンクが満水であるとき)、サービスコントローラ20は、サーバコンピュータ12に局所的無効を知らせる。この時点で、コスト計算関数は、ローカル制御設定点から逸脱するあらゆる制御動作が無限のコストを有するかのように応答する。
【0082】
サーバコンピュータ12は、標準最適化アルゴリズムを使用して最適応答を計算し、ISO11により確立された目標を満たすために当該ノードにおいてローカルリソース16の作動の変更を指示する、コマンドをサービスコントローラ20の1つ又はそれ以上に送る。次いで、サーバコンピュータ12は、ローカルサービスコントローラ20の各々からデータを収集し、信号を集約してISO11に単一応答を提示するようにする。サーバコンピュータ12は、実際には、集約された応答に加えて幾つかの信号をISO11に送る。具体的には、
・ネットワーク内の全てのリソースにより使用され又は提供されている現在の全負荷又は発電(ISO11から受信されたサービス要求に対する基本応答)、
・ネットワークが当該時点において使用又は生成することができる最大利用可能負荷又は発電、
・ネットワークが当該時点において使用又は生成することができる最小利用可能負荷又は発電、
・使用される中間点、
・規制を行うためのネットワークの可用性を示すフラグ。
【0083】
(実施例)
埋立ガス発電機は、埋め立て現場からメタンを集め、タンク内にガスを貯蔵してこれを燃焼させて電気を生成する。この現場での通常のプロセスは、タンク内のレベルをその能力の50%に維持する割合で電気を生成することである。タンクを完全に空にすることは、発電機が電気を生成できないことを意味する。タンクを満杯にすることは、追加のメタンを大気に放出しなければならず、その結果、発電機の所有者に高額な環境汚染の罰金をもたらすことを意味する。
【0084】
ローカルコントローラがなく、サービスコントローラのみが存在する場合、このコスト関数は、コストとして貯蔵タンクの損耗及びタンクの過剰充填により生じる罰金を含む。利得は、規制収益及び生成されたエネルギーの価格を含む。
【0085】
ローカルコントローラがある場合、罰金を回避するためにタンクを絶対に過剰充填しないという制約を厳しく実施することになる。この場合、タンクのレベルが何らかの限界値を超えたときに、発電機は、埋め立て地から加えられているよりもより迅速にガスをタンクから消費するように最大発電で常時稼動されることになる。このような事象が発生した場合、発電機の出力は、アンシラリーサービス装置10の制御下にある状態を停止し、タンクのレベルがタンクの大気中への放出を必要としないレベルに戻るまで、ローカルコントローラの制御下になる。この場合、先の事例と比較すると、利得は同じであり、即ち、規制収益とエネルギー収益である。コストは、ローカルコントローラが罰金を阻止するので、異なるように評価される。ローカルコントローラがサービスコントローラに優先するときには、デバイスは、全体規制目標に寄与しない固定作動点で動作する。サービスコントローラは、集約規制設定点を継続的に満たすために、局所的に無効にされたリソースを補償しなければならない。無効化されたリソースの補償コストは、リソースのコスト関数の一部になる。
【0086】
サービスコントローラが集約設定点を満たすために発電機をオフにしたと仮定する。発電機がオフである結果として、タンクはメタンで充填されつつある。タンクが充填されて安全限界値を過ぎると、ローカルコントローラは、サービスコントローラからのオフ設定点を無効にし、発電機を最大出力までオンにし、タンクを安全レベルに戻すようにする。集約設定点は変わっておらず、よってサービスコントローラは、他の発電リソースを十分にオフにすることによって、他の負荷リソースを十分にオンにすることによって、又は他の何らかの組み合わせによって発電機の出力を補償し、集約設定点を継続的に満たすようにしなければならない。この措置によって、事実上、リソースのサイズの2倍のネットワークの規制能力が低減され、リソースは、もはや規制に対して制御することができず、このリソースを補償するために使用されているリソースも制御することができない。よって、コスト関数は、ローカルコントローラがサービスコントローラを無効にしなければならないときは常に規制収益の損失をコストとして含む。
【0087】
サービスコントローラの局所的無効化のリスクを低減する方策として、コスト関数は、何らかの時間間隔内の局所的無効化のリスクの評価を含むことができる。このリスク評価は、リソースの状態ベクトルと、当該時間間隔における集約設定点の予測とに基づくものである。このような予測により、リソース設定点が制約に達するのに十分長く(例えば、燃焼ガスがタンク充填速度よりも緩慢に)留まっている可能性を生じさせることになる。この可能性は、制約に達した後の設定点だけではなく全ての設定点について規制収益コスト損失が乗算される。その結果、タンクレベルが満杯状態に近づくにつれてコストパラメータが単調に増加し、設定点がタンクを空にするほどの十分な発電をもたらさないので、コスト関数は、タンクが満杯にならないようにしておく傾向があるコストパラメータを含む。
【符号の説明】
【0088】
10 装置
11 ISO
12 中央サーバコンピュータ
14 ネットワーク
16 リソース
17 リソースサイト
18 専用通信リンク
20 サービスコントローラ
22 ローカルデバイスコントローラ