【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の第1の側面は、動的細胞培養のマイクロ構造化チャンバを含むボックスに関する。3つの主な変形例がこの側面を示す。これらの変形例はお互いに独立して又は2つ(又は全ての数)の変形例の組合せで適用され得る。
【0027】
本発明の第1の側面の第1の変形例によれば、本発明は、マイクロシステムと前記マイクロシステムの少なくとも1つのインタフェースコネクタを含むボックスであり、前記マイクロシステムが、動的細胞培養の少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバの形状を持つ下部プレート及び上部プレートを含み、少なくとも1つの前記マイクロ構造化チャンバが、流体的に入口及び/又は出口で、前記上部プレートの穴に脱着可能に挿入されている前記コネクタの少なくとも1組みで接続されていることを特徴とする。
【0028】
この構造により、前記マイクロシステムはいつでも容易に脱着されて顕微鏡観察の下に置かれ、その後再配置される。
【0029】
この変形例の他の有利なかつ非限定的な特徴は:
− 前記ボックスはまた、少なくとも1つのウェルを含み、前記マイクロ構造化チャンバが前記コネクタの組みを介して接続され;
− 前記ウェルの底部が前記チャンバの全ての位置よりも高い位置であり;
− 前記コネクタの組みが、前記ウェルの底部で穴に固定されたコネクタであり;
− それぞれのマイクロ構造化チャンバが入口ウェル及び出口ウェルに接続され、入口及び出口のそれぞれのコネクタの組みが灌流され;
− 前記ボックスがグリップ手段により保持された密閉フードでカバーされた下部ケーシングを含み;
− 前記下部ケーシングが、前記マイクロシステム及びマルチウェルプレートを含み、前記ウェルが前記マルチウェルプレートの1つのウェルであり;
− 前記マルチウェルプレートがポリスチレンで作られた使い捨てプレートであり;
− 前記マルチウェルプレートが、ポリカーボネートで作られたオートクレーブ処理可能なプレートであり;
− 前記フードが、オスコネクタの組みを持ち、前記ウェルとメス入口コネクタを灌流し;
− 前記ボックスが、入口ウェル当たり1つのオスコネクタと1つのメスコネクタを含み、かつ出口ウェル当たり1つのオスコネクタと2つのメスコネクタを含み;
− 前記マイクロシステムがポリジメチルシロキサンを含み;
− 膜挿入が、前記ウェル内に少なくとも1つ設けられる、ことである。
【0030】
本発明の前記第1の側面の第2の変形例によると、本発明は、動的細胞培養の少なくとも1つのウェルと少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバを含み、それぞれのマイクロ構造化チャンバが出口でウェルと接続され、前記ボックスはまた、前記ウェルで終端する少なくとも1つのサンプリングポートであって前記ウェルの全ての位置よりも高い位置に設けられるサンプリングポートを含むことを特徴とする。
【0031】
この構造のために、サンプリングは非常に容易に実施できる。即ち、前記ポートを単純に開き、そこに例えばマイクロピペットを、サンプリングされる前記マイクロ構造化チャンバの出口ウェルに直接挿入すること(即ち細胞の直近)である。
【0032】
この変形例のその他の利点及び非限定的な特徴は:
− 前記サンプリングポートが除去可能なストッパが設けられている;
− 前記ボックスはグリップ手段により保持された密閉フードでカバーされた下部ケーシングを含み;
− 前記サンプリングポートは、入口で前記フード内に含まれたメスコネクタにより構成され;
− 前記フードはまた、前記ウェルを灌流し及び前記メスコネクタと整列される少なくとも1つのオスコネクタを含み;
− それぞれのマイクロ構造化チャンバは、入口ウェル及び出口ウェルに接続され、それぞれがオスコネクタにより灌流され;
− 前記フードは、入口ウェルによるメスコネクタ、及び出口ウェルにつき第2のメスコネクタを含み;
− ウェルの前記メスコネクタが前記ウェルを還流する同じオスコネクタへ接続され、前記コネクタが、前記オスコネクタと前記メスコネクタにより形成される前記配列に関して傾けられており;
− 前記下部ケーシングが、マルチウェルプレートを含み、前記ウェルが前記マルチウェルプレートの1つのウェルであり;
− 前記下部ケーシングがまた、マイクロシステムを含み、マイクロ構造化チャンバが接続される前記ウェルの底部に穴が設けられ、その穴内に前記マイクロシステムの少なくとも1つの組みのインタフェースコネクタが挿入され;
− 前記マイクロシステムが、少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバの形状を含む下部プレート、及び前記コネクタの組みを含む上部プレートを含み;
− 前記マイクロシステムが、前記少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバの形状を含む下部プレート及び上部プレートを含み、前記コネクタの組みが、前記穴に固定され前記上部プレートの穴を通じて前記チャンバを還流し;
− 前記マイクロシステムがポリジメチルシロキサンから形成され;
− 前記マルチウェルプレートがポリスチレン製の使い捨てプレートであり;
− 前記マルチウェルプレートがポリカーボネート製のオートクレーブ処理可能なプレートであり;
− プローブが前記サンプリングポートの少なくとも1つに置かれ;
− 前記プローブが前記ポートのストッパ内に一体化され;
− 挿入膜が前記ウェルの少なくとも1つ内に設けられる、ことである。
【0033】
本発明の第1の側面の第3の変形例はまた、動的細胞培養の少なくとも1つのウェルと少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバを含むボックスであり、それぞれのマイクロ構造化チャンバがウェルの入口で接続され、前記ウェルの底部が前記チャンバの全ての位置よりも高い位置である。
【0034】
この構成により、前記ウェルは泡トラップの機能を充足する。流体のカラムは前記マイクロ構造化チャンバよりも高い位置にあり、それぞれのウェルは上から灌流されることから、泡は選択的に浮力により上方へ逃げて除去される。空気は従って回路中に捕捉されることはない。
【0035】
前記ウェルはまた、タンクの機能を充足する。事実、それぞれのウェルの容量はミリリットルのオーダーである。それぞれのチャンバを理想的に2つのウェルに接続することで、回路中に2から3mLの容量を持たせることになり、それにより外部タンクは必要ではなくなる。
【0036】
さらに、この自動脱ガスは、培地を最初に充填する手順をより簡単にする。即ち、全回路を注意深くパージする必要がない。というのは流体の最初の循環の際に、泡はマイクロ構造化チャンバの上流で除去され、最初のウェルのレベルを調べるだけで十分となるからである。1時間以上の作業が節約される。さらに、この作業が細胞播種の前に完全に実施されない場合には培地は捨てられるという、さらなるリスクを回避できる。
【0037】
最後にこれらのウェルは、前記チャンバに、損失なく必要な1回のピペッティングだけで直接細胞播種することができる。操作は従って迅速、正確であり、幾つかのチャンバで連続的に実施され得る。従来技術のように注射器の使用は必要ではない。前記装置は、最小の費用で数分で操作可能である。
【0038】
この変形例の他の利点及び非限定的な特徴は:
− それぞれのマイクロ構造化チャンバが前記ウェルの底部で穴を介してウェルに直接接続される;
− 前記ボックスはマイクロシステムを含み、前記マイクロシステムのインタフェースコネクタの組みは前記穴に挿入され;
− 前記マイクロシステムは、前記少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバの形状を含む下部プレート及び上部プレートを含み;
− 前記コネクタの組みは、前記上部プレートの部分を形成する変形可能なチューブであり、上部プレートを介して前記細胞播種ピペットの先端が前記チャンバ内に挿入されることができ;
− 前記コネクタの組みが、前記チャンバを前記上部プレートの穴を通じて灌流する穴に固定された1つのコネクタであり;
− それぞれのマイクロ構造化チャンバが入口ウェル及び出口ウェルへ接続され、それぞれがコネクタの組みよりそれぞれ入口と出口で灌流され;
− 前記ボックスが、グリップ手段により保持された密閉フードによりカバーされた下部ケーシングを含み;
− 下部ケーシングが、マイクロシステム及びマルチウェルプレートを含み、前記ウェルが前記マルチウェルプレートのウェルであり;
− 前記フードが、オスコネクタの組みであり、前記ウェル及びメス入口コネクタの組みを還流し;
− 前記ボックスが、入口ウェル当たり1つのオスコネクタと1つのメスコネクタを含み、出口ウェル当たり1つのオスコネクタと2つのメスコネクタを含み;
− 前記マイクロシステムがポリジメチルシロキサンで構成され;
− 前記マルチウェルプレートがポリスチレン製の使い捨てプレートであり;
−前記マルチウェルプレートがポリカーボネート製のオートクレーブ処理可能なプレートであり;
− 挿入膜が、前記ウェルの少なくとも1つ内に設けられている、ことである。
【0039】
本発明の第2の側面によれば、本発明はまた、動的細胞培養システムを提供し、前記システムは:
− 本発明の第1の側面の変形例(又は変形例の組合せ)によるボックス、及び
− 循環手段に適合され、少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバに接続されたた循環パイプを含む少なくとも1つ流体回路を含むことを特徴とする。
【0040】
他の利点及び非限定的な特徴によれば、
− 前記循環手段はマルチチャンネルペリスタポンプである。
【0041】
泡トラップ及びタンクの省略により、前記灌流回路の長さを約半減できる。本発明の第2の側面により細胞培養システムでの毒性研究の結果は、これまで知られた装置により行われる類似の試験に比較してずっと信頼性の高いものとなる。
【0042】
第3の側面によれば、本発明は、本発明の第1の側面の変形例(またはその組合せ)によるボックスの細胞播種方法を提供し、前記方法は:
(a) 前記フードを開き;
(b) 細胞播種する細胞をピペットへ導入し;
(c) 前記ピペットの先端をコネクタの組みに挿入し;
(d) 細胞を前記ピペットから直接前記マイクロ構造化チャンバへ注入し;
(e) 前記フードをしっかり閉めてグリップ手段でロックする、ことを含む。
【0043】
この方法の他の利点及び非限定的な特徴は:
− 前記ピペットは標線付きミクロピペットであり、マイクロ構造化チャンバの最適化細胞播種に対応した既定の細胞量を含むように調整されており;
− ステップ(b)、(c)及び(d)を、前記マイクロ構造化チャンバの数に合わせて繰り返し、
− 前記ピペットが、前記マルチウェルプレートに適合されたマルチチャンネル標線付きピペットである、ことを含む。
【0044】
本発明のその他の特徴及び利点は以下の好ましい実施態様の記載からより明らかとなるであろう。この記載は添付の図面を参照する。