【文献】
Baocun Zhu et al.,The determination of thiols based using a probe that utilizes both an absorption red-shift and fluor,Dyes and Pigments,2010年,Vol.86,p.87-92,特にScheme2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
実施の形態1.
本実施の形態に係る蛍光色素は、アゾール誘導体からなる蛍光色素であり、以下の一般式(1)、(2)、(3)で示すことができる。
【0014】
【化3】
【0015】
式(1)および式(3)ではR
1は、そして式(2)ではR
1とR
4の一方は、一般式L
1−M
1で示され、M
1は、置換基を有してもよいピリジニウム基、2級アミニウム基、3級アミニウム基、4級アンモニウム基、ピペリジニウム基、ピペラジニウム基、イミダゾリウム基、チアゾリウム基、オキサゾリウム基、キノリウム基、ベンゾイミダゾリウム基、ベンゾチアゾリウム基又はベンゾオキサゾリウム基である窒素カチオン含有基、あるいは置換基を有してもよいピリジル基、2級アミノ基、3級アミノ基、ピペリジル基、ピペラジル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、キノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基又はベンゾオキサゾリル基である窒素含有基を示し、L
1は、−(CH=CR
6)
n−で表され、Mと中心ピリジン環または中心ベンゼン環とを連結するリンカーであり、nは1から5の整数からなり、R
6は、水素原子;置換基を有してもよい炭素数1から6の直鎖状または分岐状のアルキル基;置換基を有してもよいスルホ基;置換基を有してもよいイミダゾリウム基、ピリジニウム基およびフラン基からなる群から選択された複素環基;置換基を有してもよい2級アミノ基、3級アミノ基および4級アミノ基からなる群から選択されたアミノ基;置換基を有してもよいヒドロキシ基;置換基を有してもよいアルコキシ基;置換基を有してもよいアルデヒド基;置換基を有してもよいカルボキシル基;置換基を有してもよい芳香族基のいずれか1種を示し、式(2)のR
1とR
4の残部、そして式(1)から(3)のR
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基または複素環基を示し、Xは置換基を有していてもよい窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子又はボロン原子を示し、R’は芳香環を含んでもよいアルキル基からなる脂肪族炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基、An
−は、ハロゲン化物イオン、CF
3SO
3−、BF
4−又はPF
6−を示す。リンカーは、発色部と標識対象である生体分子との間の立体障害を緩和させ、結合部と生体分子の標識部位との結合を容易にするので、より高い標識率を与えることが可能である。
【0016】
R
2およびR
3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基または複素環基であることが好ましい。該置換基としては、
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、スルホニル基、芳香族炭化水素基または複素環基を挙げることができる。該置換基としてのアルキル基は、置換または無置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。また、該置換基としてのアルケニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基である。また、該置換基としてのアルキニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基である。また、該置換基としてのアルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基またはフェノキシ基である。また、該置換基としてのアルキルエステル基は、炭素数1から6の直鎖状又は分岐状のアルキルエステルである。また、該置換基としての芳香族炭化水素基は単環又は多環を含むアリール基である。また、該置換基としての複素環基は、例えばチエニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基またはキノリル基である。また、R
2、R
3が、スルホニル基を有するアリール基であってもよい。
【0017】
上記のR
2およびR
3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいチエニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基またはキノリル基であることが好ましい。無置換あるいはフェニル基を用いた場合に比べ、蛍光波長が大きく長波長シフトし、大きなストークスシフトが得られるからである。より好ましくは、R
2およびR
3が、置換基を有してもよいチエニル基を示し、該置換基が、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基または複素環基である。
ここで、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基としては、単環または多環を含むアリール基であり、置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等を挙げることができる。なお、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基は、該置換基を1から3個含むことができ、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、スルホニル基、芳香族炭化水素基または複素環基を挙げることができる。該置換基としてのアルキル基は、置換または無置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。また、該置換基としてのアルケニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基である。また、該置換基としてのアルキニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基である。また、該置換基としてのアルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基またはフェノキシ基である。また、該置換基としてのアルキルエステル基は、炭素数1から6の直鎖状又は分岐状のアルキルエステルである。
また、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基としては、置換または無置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基等を挙げることができる。
また、置換基を有してもよい複素環基としては、置換または無置換のフラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基またはキノリル基を挙げることができる。
チエニル基の置換基としては、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、さらに好ましくは単環または多環を含むアリール基であり、具体例としては、置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等を挙げることができる。なお、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基は、該置換基を1から3個含むことができ、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、スルホニル基、芳香族炭化水素基または複素環基を挙げることができる。該置換基としてのアルキル基は、置換または無置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。また、該置換基としてのアルケニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基である。また、該置換基としてのアルキニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基である。また、該置換基としてのアルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基またはフェノキシ基である。また、該置換基としてのアルキルエステル基は、炭素数1から6の直鎖状又は分岐状のアルキルエステルである。
【0018】
本実施の形態によれば、蛍光色素が高い水溶性を有しているので、生体分子に対する標識率を向上させることができ、高感度の生体分子の検出が可能となる。また、蛍光色素の置換基を変えることにより励起波長及び発光波長を変化させ、ストークスシフトの大きい2種以上の蛍光色素を用いることが可能となり、一つの試料中に含まれる複数の標的分子を同時に検出することが可能となる。特に、R
2およびR
3に、置換基を有してもよいチエニル基を用いた場合、100nmを越えるストークスシフトが得られるので、励起光の影響を受けることがなく高感度の検出が可能となる。
【0019】
また、本実施の形態では、アゾール誘導体として、ジアゾール誘導体の例を示したが、以下の一般式で表されるトリアゾール誘導体を用いることもできる。トリアゾール誘導体を用いても、ジアゾール誘導体の場合と同様の効果を得ることができる。
【0020】
【化4】
【0021】
式(7)および式(9)ではR
1は、そして式(8)ではR
1とR
7の一方は、一般式L
3−M
3で示され、M
3は、置換基を有してもよいピリジニウム基、2級アミニウム基、3級アミニウム基、4級アンモニウム基、ピペリジニウム基、ピペラジニウム基、イミダゾリウム基、チアゾリウム基、オキサゾリウム基、キノリウム基、ベンゾイミダゾリウム基、ベンゾチアゾリウム基又はベンゾオキサゾリウム基である窒素カチオン含有基、あるいは置換基を有してもよいピリジル基、2級アミノ基、3級アミノ基、ピペリジル基、ピペラジル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、キノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基又はベンゾオキサゾリル基である窒素含有基を示し、L
3は、−(CH=CR
6)
n−で表され、M
3と中心ピリジン環または中心ベンゼン環とを連結するリンカーであり、nは1から5の整数からなり、R
6は、水素原子;置換基を有してもよい炭素数1から6の直鎖状または分岐状のアルキル基;置換基を有してもよいスルホ基;置換基を有してもよいイミダゾリウム基、ピリジニウム基およびフラン基からなる群から選択された複素環基;置換基を有してもよい2級アミノ基、3級アミノ基および4級アミノ基からなる群から選択されたアミノ基;置換基を有してもよいヒドロキシ基;置換基を有してもよいアルコキシ基;置換基を有してもよいアルデヒド基;置換基を有してもよいカルボキシル基;置換基を有してもよい芳香族基のいずれか1種を示し、式(8)のR
1とR
7の残部、そして式(7)から(9)のR
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基又は複素環基を示し、Xは置換基を有していてもよい窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子又はボロン原子を示し、R’は芳香環を含んでもよいアルキル基からなる脂肪族炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基、An
−は、ハロゲン化物イオン、CF
3SO
3−、BF
4−又はPF
6−を示す。
【0022】
R
2およびR
3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基または複素環基であることが好ましい。該置換基としては、
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、スルホニル基、芳香族炭化水素基または複素環基を挙げることができる。該置換基としてのアルキル基は、置換または無置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。また、該置換基としてのアルケニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基である。また、該置換基としてのアルキニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基である。また、該置換基としてのアルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基またはフェノキシ基である。また、該置換基としてのアルキルエステル基は、炭素数1から6の直鎖状又は分岐状のアルキルエステルである。また、該置換基としての芳香族炭化水素基は単環又は多環を含むアリール基である。また、該置換基としての複素環基は、例えばチエニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基またはキノリル基である。また、R
2、R
3が、スルホニル基を有するアリール基であってもよい。
【0023】
また、ジアゾール誘導体の場合と同様、上記のR
2およびR
3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいチエニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基またはキノリル基であることが好ましい。無置換あるいはフェニル基を用いた場合に比べ、蛍光波長が大きく長波長シフトし、大きなストークスシフトが得られるからである。より好ましくは、R
2およびR
3が、置換基を有してもよいチエニル基を示し、該置換基が、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基または複素環基である。また、チエニル基の置換基についてはジアゾール誘導体の場合と同様のものを用いることができる。
【0024】
実施の形態2.
本実施の形態に係る蛍光色素は、イミダゾール誘導体から成る蛍光色素であり、以下の一般式で示すことができる。イミダゾール誘導体を用いても、実施の形態1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0025】
【化5】
【0026】
ここで、式(10)、(12)および(13)のR
1とR
4の一方、そして式(11)および(14)のR
1、R
4およびR
5のいずれか一つは、一般式L
4−M
4示され、M
4は、置換基を有してもよいピリジニウム基、2級アミニウム基、3級アミニウム基、4級アンモニウム基、ピペリジニウム基、ピペラジニウム基、イミダゾリウム基、チアゾリウム基、オキサゾリウム基、キノリウム基、ベンゾイミダゾリウム基、ベンゾチアゾリウム基又はベンゾオキサゾリウム基である窒素カチオン含有基、あるいは置換基を有してもよいピリジル基、2級アミノ基、3級アミノ基、ピペリジル基、ピペラジル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、キノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基又はベンゾオキサゾリル基である窒素含有基を示し、L
4は、−(CH=CR
6)
n−で表され、M
4と中心ピリジン環または中心ベンゼン環とを連結するリンカーであり、nは1から5の整数からなり、R
6は、水素原子;置換基を有してもよい炭素数1から6の直鎖状または分岐状のアルキル基;置換基を有してもよいスルホ基;置換基を有してもよいイミダゾリウム基、ピリジニウム基およびフラン基からなる群から選択された複素環基;置換基を有してもよい2級アミノ基、3級アミノ基および4級アミノ基からなる群から選択されたアミノ基;置換基を有してもよいヒドロキシ基;置換基を有してもよいアルコキシ基;置換基を有してもよいアルデヒド基;置換基を有してもよいカルボキシル基;置換基を有してもよい芳香族基のいずれか1種を示し、式(10)、(12)および(13)のR
1とR
4の残部、式(11)および(14)のR
1、R
4およびR
5の残部、そしてR
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基又は複素環基を示し、Xは置換基を有していてもよい窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子又はボロン原子を示し、R’は芳香環を含んでもよいアルキル基からなる脂肪族炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基、An
−は、ハロゲン化物イオン、CF
3SO
3−、BF
4−又はPF
6−を示す。
【0027】
R
2およびR
3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基または複素環基であることが好ましい。該置換基としては、
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、スルホニル基、芳香族炭化水素基または複素環基を挙げることができる。該置換基としてのアルキル基は、置換または無置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。また、該置換基としてのアルケニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基である。また、該置換基としてのアルキニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基である。また、該置換基としてのアルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基またはフェノキシ基である。また、該置換基としてのアルキルエステル基は、炭素数1から6の直鎖状又は分岐状のアルキルエステルである。また、該置換基としての芳香族炭化水素基は単環又は多環を含むアリール基である。また、該置換基としての複素環基は、例えばチエニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基またはキノリル基である。また、R
2、R
3が、スルホニル基を有するアリール基であってもよい。
【0028】
また、R’、R”は芳香環を含んでも良いアルキル基からなる脂肪族炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基を示す。ここで、その脂肪族炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基には、上記と同様のものを用いることができる。
【0029】
また、実施の形態1の場合と同様、上記のR
2およびR
3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいチエニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基またはキノリル基であることが好ましい。無置換あるいはフェニル基を用いた場合に比べ、蛍光波長が大きく長波長シフトし、大きなストークスシフトが得られるからである。より好ましくは、R
2およびR
3が、置換基を有してもよいチエニル基を示し、該置換基が、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基または複素環基である。
また、チエニル基の置換基については実施の形態1の場合と同様のものを用いることができる。
【0030】
実施の形態3.
本実施の形態に係る蛍光色素は、アゾール誘導体からなる蛍光色素であり、以下の一般式(4)、(5)、(6)で示すことができる。
【0031】
【化6】
【0032】
式(4)および式(6)ではR
1は、そして式(5)ではR
1とR
4の一方は、一般式L
2−M
2で示され、M
2は、置換基を有してもよいピリジニウム基、2級アミニウム基、3級アミニウム基、4級アンモニウム基、ピペリジニウム基、ピペラジニウム基、イミダゾリウム基、チアゾリウム基、オキサゾリウム基、キノリウム基、ベンゾイミダゾリウム基、ベンゾチアゾリウム基又はベンゾオキサゾリウム基である窒素カチオン含有基、あるいは置換基を有してもよいピリジル基、2級アミノ基、3級アミノ基、ピペリジル基、ピペラジル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、キノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基又はベンゾオキサゾリル基である窒素含有基を示し、L
2は、M
2と中心ピリジン環または中心ベンゼン環とを連結するリンカーであり、直接結合、あるいは−(CH
2)
n−(nは1〜4の整数)、−NHCOO−、−CONH−、−COO−、−SO
2NH−、−HN−C(=NH)−NH−、−O−、−S−、−NR(Rはアルキル基)、−Ar−(Arは芳香族炭化水素基)、−CO−Ar−NR−、からなる群から選択された1種以上の官能基を示し、式(5)のR
1とR
4の残部、式(4)から式(6)のR
2およびR
3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいチエニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基またはキノリル基を示し、Xは置換基を有していてもよい窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子又はボロン原子を示し、R’は芳香環を含んでもよいアルキル基からなる脂肪族炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基、An
−は、ハロゲン化物イオン、CF
3SO
3−、BF
4−又はPF
6−を示す。
【0033】
より好ましくは、R
2およびR
3が、置換基を有してもよいチエニル基を示し、該置換基が、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基または複素環基である。ここで、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基としては、単環または多環を含むアリール基であり、具体例としては、置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等を挙げることができる。なお、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基は、該置換基を1から3個含むことができ、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、スルホニル基、芳香族炭化水素基または複素環基を挙げることができる。該置換基としてのアルキル基は、置換または無置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。また、該置換基としてのアルケニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基である。また、該置換基としてのアルキニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基である。また、該置換基としてのアルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基またはフェノキシ基である。また、該置換基としてのアルキルエステル基は、炭素数1から6の直鎖状又は分岐状のアルキルエステルである。
また、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基としては、置換または無置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基等を挙げることができる。
また、置換基を有してもよい複素環基としては、置換または無置換のフラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基またはキノリル基を挙げることができる。チエニル基の置換基としては、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であり、具体例としては、置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等を挙げることができる。なお、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基は、該置換基を1から3個含むことができ、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、スルホニル基、芳香族炭化水素基または複素環基を挙げることができる。該置換基としてのアルキル基は、置換または無置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。また、該置換基としてのアルケニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基である。また、該置換基としてのアルキニル基は、無置換の炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基である。また、該置換基としてのアルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基またはフェノキシ基である。また、該置換基としてのアルキルエステル基は、炭素数1から6の直鎖状又は分岐状のアルキルエステルである。
【0034】
本実施の形態においても、実施の形態1の場合と同様の効果を有する。すなわち、蛍光色素が高い水溶性を有しているので、生体分子に対する標識率を向上させることができ、高感度の生体分子の検出が可能となる。また、置換基を変えることにより励起波長及び発光波長を変化させ、ストークスシフトの大きい2種以上の蛍光色素を用いることが可能となり、一つの試料中に含まれる複数の標的分子を同時に検出することが可能となる。特に、R
2およびR
3に、置換基を有してもよいチエニル基を用いた場合、蛍光波長が600nm以上であって、かつ100nmを越える、好ましくは120nmを越える、より好ましくは150nmを越えるストークスシフトが得られるので、励起光の影響を受けることがなく高感度の検出が可能となる。
【0035】
(製造方法)
本発明の蛍光色素は、例えば窒素含有基としてピリジル基を含む場合、以下の方法により製造することができる。すなわち、アゾール誘導体又はイミダゾール誘導体のハロアルキル体とトリフェニルホスフィンとを反応させてホスホニウム塩を調製し、このホスホニウム塩とフォルミルピリジンとを用いてウィッティヒ反応により二重結合を介してピリジル基を導入してピリジル体を得る。また、窒素カチオン含有基として、ピリジニウム基を含む場合には、そのピリジル体と、活性エステルのブロモ体とを反応させて、ピリジニウム塩を得ることにより製造することができる。ここで、ハロアルキル体は、アゾール誘導体又はイミダゾール誘導体のヒドロキシ体にハロゲン化剤を反応させる方法を用いることにより得ることができる。ハロゲン化剤には、塩化チオニル、塩化ホスホリル、三塩化リン、五塩化リン、塩化スルフリル、塩素、臭化チオニル、臭素等を用いることができ、好ましくは塩化チオニル又は塩化ホスホリルである。
【0036】
上記の方法は、窒素カチオン含有基の場合、活性エステルのブロモ体を用い、以下に述べる結合部となる活性エステルを含むピリジニウム塩を得る方法について説明したが、上記において導入したピリジンにヨウ化メチルなどのハロアルカン類、ハロアルケン類あるいはハロカルボン酸類を反応させることによりピリジニウム塩を製造することもできる。この場合、ハロアルカン類、ハロアルケン類の末端にイソチオシアネート基、無水マレイン酸などの、以下に述べる結合部となる官能基を含む場合、生体分子と結合させることができる。また、ハロカルボン酸類を用いた場合、ピリジンに化学結合させることで末端にカルボン酸を有するピリジニウム体となるため、ヒドロキシスクシンイミドなどの活性エステル基を導入することもできる。
【0037】
また、本発明の蛍光色素に生体分子に結合する結合部を設けることもできる。結合部は例えば窒素カチオン含有基又は窒素含有基に設けることができる。結合部は、生体分子と結合する反応性基を有し、その反応性基は共有結合又はイオン結合により生体分子と結合する。
【0038】
共有結合として、例えばアミド結合、イミド結合、ウレタン結合、エステル結合、又はグアニジン結合を形成する場合、反応性基には、生体分子のアミノ基、イミノ基、チオール基、カルボキシル基又はヒドロキシル基と反応可能な官能基が好ましい。その官能基には、例えば、イソチオシアネート基、イソシアネート基、無水マレイン酸基、エポキシ基、ハロゲン化スルホニル基、塩化アシル基、ハロゲン化アルキル基、グリオキザル基、アルデヒド基、トリアジン基、カルボジイミド基そして活性エステル化したカルボニル基等を用いることができる。好ましくは、イソチオシアネート基、イソシアネート基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基、トリアジン基、カルボジイミド基そして活性エステル化したカルボニル基から選択されたいずれか1種を用いることが好ましい。より好ましくは、イソチオシアネート基、イソシアネート基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基、トリアジン基、カルボジイミド基そして活性エステル化したカルボニル基から選択されたいずれか1種を用いることが好ましい。さらに好ましくはトリアジン基、カルボジイミド基又は活性エステル化したカルボニル基である。これら反応性基と反応する窒素カチオン含有基の官能基としては、例えばカルボキシル基を用いることができる。例えば、活性エステル化したカルボニル基には、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステルやマレイミドエステルを用いることができる。N−ヒドロキシ−スクシンイミドを用い、縮合剤としてN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いることによりN−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル体を経由してアミド結合により蛍光色素と生体分子が結合する。また、カルボジイミド基には、DCCや1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド等のカルボジイミド試薬を用いることができる。カルボジイミド体を経由してアミド結合により蛍光色素と生体分子とを結合させることができる。
【0039】
また、イオン結合を形成する反応性基には、アニオン性基やカチオン性基を用いることができる。アニオン性基としては、例えばスルホニル基やカルボキシル基を用いることができる。これらのアニオン性基は、生体分子のカチオン性基、例えばアミノ基とイオン結合する。また、カチオン性基としては、4級アンモニウム基やピリジニウム基等の窒素カチオン含有基を用いることができる。これらカチオン性基は、生体分子のアニオン性基、例えばカルボキシル基とイオン結合する。なお、本発明においては、中心ピリジン環または中心ベンゼン環に結合した窒素カチオン含有基が反応性基としてのカチオン性基を兼ねることができる。
【0040】
(用途)
本発明の蛍光色素は、標識された固体あるいは半固体状態の生体分子の蛍光を測定する検出方法であれば、あらゆる生体分子の検出方法に適用することができる。従来の蛍光色素に代えて用いることにより、高感度で、化学的に安定で操作性に優れ、さらに低コストの検出方法を提供することができる。本発明の蛍光色素は、生体分子試料に蛍光色素を直接反応させて標識しても良く、あるいは生体分子試料と、本発明の蛍光色素で標識されたプローブとを反応させて標識する方法を用いることもできる。さらに、本発明の蛍光色素で標識した生体分子試料を電気泳動によりサイズ分離する方法を用いることもできる。例えば、核酸を検出対象とするDNAマイクロアレイ法や、プライマーやターミネータを用いるPCR法に用いることができる。
【0041】
また、タンパク質を検出対象とする場合、通常、電気泳動後のタンパク質の検出には染色色素が用いられている。泳動後のゲル中に、染色色素、例えばクーマシーブリリアントブルー(CBB)を浸透させてタンパク質を染色し、UVを照射して発光させる方法が用いられる。しかしながら、従来の染色色素を用いる方法は簡便であるが、感度が100ng程度と低く微量のタンパク質の検出には適さない。また、ゲルを介して染色色素を浸透させるため、染色に長時間を要するという問題もある。これに対し、本発明の蛍光色素を用いると高感度であり、微量タンパク質の検出には好適である。さらに、サイズ分離したタンパク質を質量分析して同定することもできる。
【0042】
ここで、タンパク質には、アルブミン、グロブリン、グルテリン、ヒストン、プロタミン、そしてコラーゲン等の単純タンパク質、核タンパク質、糖タンパク質、リボタンパク質、リンタンパク質、金属タンパク質等の複合タンパク質のいずれも検出対象とすることができる。例えば、リンタンパク質、糖タンパク質、総タンパク質の染色色素に対応させて3種の蛍光色素を用い、二次元電気泳動で分離したタンパク質試料において、リンタンパク質、糖タンパク質及び総タンパク質を染色することができる。また、TOF−Mass等の質量分析を行うことにより、タンパク質を同定できるので、特殊なタンパク質を生成させる、ガンやウィルスによる感染症などの疾病の診断や治療に応用することが可能である。また、コラーゲンは、動物の結合組織を構成するタンパク質であり、独特の繊維状構造をとる。すなわち、3本のポリペプチド鎖からなり、そのペプチド鎖が寄り集まって三重鎖を形成する。コラーゲンは、一般に極めて免疫原性が低いタンパク質であり、食品、化粧品、医薬品等の分野で広く利用されている。しかし、コラーゲンのペプチド鎖に蛍光色素を導入しても、従来の蛍光色素ではその安定性が十分とは言えず、より安定な蛍光色素が必要とされている。そこで、本発明の蛍光色素を用いてコラーゲンを標識することにより、安定かつ高感度な検出を行うことが可能となる。
【0043】
また、タンパク質と特異的に結合する抗体を本発明の蛍光色素で標識することにより、タンパク質を標識することもできる。例えば、IgG抗体をペプシンで処理するとF(ab’)
2と呼ばれるフラグメントが得られる。このフラグメントをジチオスレイトール等で還元するとFab’と呼ばれるフラグメントが得られる。Fab’フラグメントは1つもしくは2つのチオール基(−SH)を有している。このチオール基に対してマレイミド基を作用させて特異的な反応を行うことができる。すなわち、本発明の蛍光色素に反応性基としてマレイミド基を導入し、フラグメントのチオール基と反応させることにより抗体を標識することができる。この場合、抗体の生理活性(抗原捕捉能)を失うことがない。
【0044】
なお、本発明の蛍光色素でアプタマーを標識することもできる。アプタマーはオリゴ核酸からなり、塩基配列に依存して種々の特徴ある立体構造をとることができるので、その立体構造を介してタンパク質を含むあらゆる生体分子に結合することができる。この性質を利用し、本発明の蛍光色素で標識したアプタマーを特定のタンパク質に結合させ、被検出物質との結合によるそのタンパク質の構造変化に伴う蛍光変化から間接的に被検出物質を検出することができる。
【0045】
また、本発明の蛍光色素を用いて金属イオンの検出を行うこともできる。体内のDNAやタンパク質などの安定性や高次構造の維持、機能発現、そして生体内のすべての化学反応を司る酵素の活性化など、生体内で起こるあらゆる生命現象に金属イオンは関与している。そのため、生体内での金属イオンの動きをリアルタイムで観察できる金属イオンセンサは医療分野を初めとしてその重要性が叫ばれている。従来、生体分子に蛍光色素を導入した金属イオンセンサが知られている。例えば、K
+イオン存在化において、K
+イオン取り込んで特殊な構造をとる配列を有する核酸を利用する金属イオンセンサが提案されている(J. AM. CHEM. SOC. 2002, 124, 14286-14287)。エネルギートランスファーを起こす蛍光色素を核酸の両端に導入する。通常は色素間距離があるためエネルギートランスファーは起きない。しかし、K
+イオン存在下では核酸が特殊な形をとる結果、蛍光色素がエネルギートランスファーを起こす距離に近接することで、蛍光を観察することができる。また、ペプチドに蛍光色素を導入した亜鉛イオンセンサも提案されている(J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 3053-3054)。これらの従来の蛍光色素に代えて本発明の蛍光色素を用いることにより、従来に比べ高感度で取り扱いが容易な金属イオンセンサを提供することが可能となる。なお、生体内に存在する金属イオンであれば、すべての金属イオンを検出することが可能である。
【0046】
また、本発明の蛍光色素を用いて、細胞内のシグナル観察を行うこともできる。内部シグナルや環境情報に対する細胞の応答には、イオンから酵素へと多大な分子が関与している。シグナル伝達過程では特殊なプロテインキナーゼが活性化し、特殊な細胞タンパク質のリン酸化を導くことで様々な細胞応答の初期応答を担っていることが知られている。ヌクレオチドの結合と加水分解はこれらの活性に重大な役割を果たしており、ヌクレオチド誘導体を用いることで、シグナル伝達挙動を素早く観察することが出来る。例えば、プロテインキナーゼC(PKC)は細胞膜におけるシグナル伝達において重要な役割を果たしている。このCa
2+依存セリン/スレオニンプロテインキナーゼはジアシルグリセロールやフォスファティジルセリンの様な膜構成脂質上で活性化され、イオンチャネルや細胞骨格タンパク質に存在するセリンやスレオニンをリン酸化することで膜表面電化を変えシグナル伝達を行っている。これらを生細胞において動的に観察することで細胞のシグナル伝達の観察を行うことができる。
【0047】
ここで、ヌクレオチド誘導体は酵素の基質や阻害剤として供給され、孤立性タンパク質の構造と力学の探査、膜結合タンパク酵素の再構成、ミトコンドリアのようなオルガネラ、除膜筋線維のような組織のヌクレオチド結合タンパク質部分に、結合してその調節を行っている。また、最近ではG−タンパク質の阻害剤や活性体のようなシグナル伝達に影響を与える化合物の存在も解ってきている。このヌクレオチド誘導体に本発明の有機EL色素からなる標識色素を導入することで、これらの細胞内シグナル伝達の動的観察を高感度で、かつ取り扱い容易に行うことが可能となる。
【0048】
また、本発明の蛍光色素を、組織又は細胞試料中の標的核酸や標的タンパク質の発現レベルの検討に用いる組織又は細胞の染色色素としても用いることができる。すなわち、本発明の染色色素を真核細胞の染色に用いると、乾燥状態でも蛍光を発することから標識後の保存などの点で従来の色素よりも優れた性能を示す。また、真核細胞のみならず、細胞骨格用色素としても十分に用いることが可能である。この他、ミトコンドリア、ゴルジ体、小胞体、ソリゾーム、脂質二重膜などの標識に用いることが可能である。これら、標識された細胞等は、湿潤及び乾燥のあらゆる条件下で観測が可能であるため、汎用性が大きい。観測に際しては、蛍光顕微鏡などを用いることができる。
【0049】
また、臨床段階で人体より採取された組織は、ミクロトームなどの機器を用いて薄膜にスライスした後、染色されている。ここでは、Cy色素及びAlexa色素が用いられている。しかしながら、既存の色素は安定性が非常に悪く、再診断の際には、再びサンプルを作製する必要がある。また、作製されたサンプルは標本として保存することが不可能である。しかし、上記の従来の色素に比べ本発明の蛍光色素は、非常に安定な色素であるので、染色した組織を標本として保存することが可能である。
【0050】
また、ガンや感染症等の診断には、抗体の特異的認識能を利用したイムノアッセイが用いられている。イムノアッセイは、標識抗体を用いて目的の抗原を検出する方法であり、標識物質に酵素を用いる酵素イムノアッセイ(ELISA法)や標識物質に蛍光色素を用いる蛍光イムノアッセイ(FIA法)等が用いられている。ELISA法は、最終的な検出は標識物質である酵素の反応によって生じるさまざまなシグナル(発色、発光、化学発光等)を検出及び定量することにより行う。一方、FIA法は、標識物質である蛍光色素に励起光を照射し、それによる蛍光を検出及び定量することにより行う。FIA法は蛍光色素を用いるため鮮明なコントラストを有し定量性に優れ、またELISA法に比べ、より短時間での検出が可能でかつ操作も簡便であるという特徴を有している。しかしながら、従来の蛍光色素は標識率が低いという問題がある。例えば、抗体に対して200倍モル程度の蛍光色素を用いているが、この条件下においても標識率は50−60%程度であった。そのため、蛍光色素を大量に使用する必要があるため検出費用が高コストになったり、未反応の蛍光色素を除去するための処理工程が必要となり検出に長時間を要するという問題があった。これに対し、本発明の蛍光色素を用いることにより、標識率を向上させることができるので、より高感度の検出を行うことが可能となる。
【0051】
また、本発明の蛍光色素を化粧用組成物に用いることもできる。蛍光色素を含む化粧用組成物は、夜間や室内における演出用の化粧としてだけでなく、蛍光色素の明色化効果を利用して、ファンデーションや毛髪の染色剤等に用いられている。ここで、明色化効果とは、蛍光色素が紫外光を吸収して可視光を放出して、皮膚や毛髪に明るさや鮮やかさを与える効果をいう。日本の室内照明には、昼光色や白色の蛍光灯が使われているが、これらの蛍光灯からの光は、青や緑が主であり赤が少ない。そのため、女性の化粧肌は青白くくすんで見えるという問題がある。これに対し、本発明の蛍光色素を用いることにより、例えば、橙色の光を放出する蛍光色素を用い、鮮やかな赤味の色を発色させてくすみの解消を図ることが可能である。また、毛髪の染色に用いると、蛍光色素は可視領域の放出光線により毛髪の色を変えるだけでなく、毛髪の輝きを増加させることも可能である。
【0052】
また、本発明の蛍光色素をマーキング剤に用いることもできる。本発明の蛍光色素を含むマーキング剤は、通常の可視光下では不可視であるが、紫外線等の励起光を照射することにより蛍光色素を発光させて視認することができる。この性質を利用し、犯罪防止や犯罪捜査を目的として、物品や人体等の識別や物質の検出等に使用することができる。マーキング剤の対象物には、偽造や盗難等の犯罪の防止や犯罪捜査の対象となる物品や人体が含まれる。例えば、紙幣、小切手、株券、各種証明書等の重要文書や、自動車、オートバイ、自転車、美術品、家具、ブランド品、衣服等の物品、人体の皮膚、頭髪、爪等の身体表面部分、潜在指紋等の遺留物質等を挙げることができる。さらに、対象物を構成する材料に関しては、上質紙、OCR紙、ノーカーボン紙、アート紙等の紙や、塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等のプラスチックや、金属や、ガラスや、セラミックスや、羊毛、木綿、絹、麻等の天然繊維や、再生セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維や、人体皮膚や体液中のタンパク質等を挙げることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例により限定されるものではない。
【0054】
合成例1.
以下に、4,7−ジフェニル−1,2,5−オキサジアゾロピリジンの窒素カチオン体の合成例を示す。
【0055】
【化7】
【0056】
(1)ジケトン誘導体(2)の合成
500ml三口フラスコ中で4−メトキシアセトフェノン(1) 30.0g(0.25mol)、亜硝酸ナトリウム0.15gを酢酸100mlに溶解した。水浴中、硝酸100mlを酢酸100mlに溶解したものを1時間かけて滴下した。その後、室温で2日間撹拌した。反応混合物を500mlの水にゆっくりと入れ、沈殿を生成させた。沈殿物は濾過し、クロロホルムに溶解した。クロロホルム相を飽和重曹水で洗浄し、10%NaCl水溶液で2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下、クロロホルムを留去し、オキサジアゾール−N−オキサイド(2)を得た(収量30.5g、収率82%)。
【0057】
(2)ジケトン誘導体(3)の合成
500ml三口フラスコ中でオキサジアゾール−N−オキサイド(2) 14.7g(0.05mol)をアセトニトリル400mlに溶解した。それに金属亜鉛6.0g、酢酸7ml、無水酢酸20mlを添加した。水浴中で反応温度が35℃を超えないように冷却した。6時間撹拌して反応終点とした。反応混合物を濾過し、不溶分を除去した。アセトニトリルを減圧下留去して残渣を得た。残渣をクロロホルムで再結晶し、オキサジアゾールジベンゾイル体(3)を得た(収量9.6g、収率69%)。
【0058】
(3)ジフェニルオキサジアゾロピリジンエチルエステル体(4)の合成
500ml三口フラスコ中でオキサジアゾールジベンゾイル体(3) 10.0g(0.035mol)をブタノール300mlに溶解した。そこへグリシンエチルエステル塩酸塩32.0g(0.23mol)を添加した。24時間加熱還流を行った。ブタノールを減圧下留去し、残渣を得た。残渣を200mlのクロロホルムに溶解し、10%塩酸、飽和重曹水、10%NaCl水溶液で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルムで再結晶し、4,7−ジフェニル−1,2,5−オキサジアゾロピリジンエチルエステル(4)(以下、エステル体(4)という。)を得た(収量7.6g、収率65%)。
【0059】
次いで、エステル体(4)をNaBH
4存在下、還元反応を行い、ジアミノアルコール体(5)を得、これと塩化チオニルを反応させチアジアゾロピリジンクロロメチル体(6)を得、これにトリフェニルホスフィンを反応させてホスホニウム塩(7)を得、さらにウィティヒ反応によりビニル体(8)を得、そして活性エステルを含むピリジニウム塩(9)(Lが−CH=CH−の場合)を合成した。以下に反応例を示す。
【0060】
【化8】
【0061】
(4)ジアミノアルコール体(5)の合成
エステル体(4)(1.73g、5mmol)とNaBH
4(1.30g、35mmol)のエタノール溶液(100ml)を12時間加熱還流後、反応液を水に注入し、一夜放置後に沈澱をろ過してジアミノアルコール体(5)を得た(収量1.17g、収率80%)。
【0062】
(5)クロロメチル体(6)の合成
室温下、アルコール体(5)(1.17g)のクロロホルム溶液(60ml)に塩化チオニル(6ml)、ピリジン−NaBH
4(3ml)をこの順で滴下、その後3時間30分加熱還流後、反応液を水に注入し、飽和重曹水で中和し、クロロホルムで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧留去して得た残渣をカラム(Kanto C−60、ヘキサン/クロロホルム=3/1(v/v)処理してクロロメチル体(6)を得た(収量1.11g、収率82%)。
【0063】
(6)ホスホニウム塩(7)の合成
クロロメチル体(6) 112.6mg(0.33mmol)とトリフェニルホスフィン(96mg、0.37mmol)のトルエン溶液(5ml)を3日間加熱還流後、沈澱をろ過し、エーテルで洗浄してホスホニウム塩(7)を得た(収量108mg、収率55%)。
【0064】
(7)ビニル体(8)の合成
氷冷下、m−フォルミルピリジン(16μL,0.18mmol)と水酸化カリウム(純度85%、15mg)のエタノール溶液(1ml)にホスホニウム塩(7)(140.5mg,0.23mmol)を加え、その温度で1時間30分撹拌した。沈澱をろ過し、エタノール、水で洗浄後、乾燥して、4,7−ジフェニル−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ビニルピリジン)(以下、ビニル体(8)という。)を得た(収量44mg、収率62%)。
【0065】
(8)活性エステルを含むピリジニウム塩(9)の合成
ビニル体(8)(40mg、0.10mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(32mg、0.11mmol)のトルエン溶液(2ml)を5日間加熱還流後、沈澱をろ過して活性エステルを含むピリジニウム塩(9)を得た。
【0066】
合成例2.
以下に、4,7−ジ(メトキシフェニル)−1,2,5−オキサジアゾロピリジンの窒素カチオン体の合成例を示す。
【0067】
【化9】
【0068】
(1)ジケトン誘導体(11)の合成
500ml三口フラスコ中で4−メトキシアセトフェノン(10) 37.5g(0.25mol)、亜硝酸ナトリウム0.15gを酢酸100mlに溶解した。水浴中、硝酸100mlを酢酸100mlに溶解したものを2時間かけて滴下した。その後、室温で2日間撹拌した。反応混合物を500mlの水にゆっくりと入れ、沈殿を生成させた。沈殿物を濾過し、クロロホルムに溶解した。クロロホルム相を飽和重曹水で洗浄し、10%NaCl水溶液で2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下、クロロホルムを留去し、オキサジアゾール−N−オキサイド(11)を得た(収量34.5g、収率78%)。
【0069】
(2)ジケトン誘導体(12)の合成
500ml三口フラスコ中でオキサジアゾール−N−オキサイド(11) 17.7g(0.05mol)をアセトニトリル400mlに溶解した。それに金属亜鉛12.0g、酢酸7ml、無水酢酸20mlを添加した。水浴中で反応温度が30℃を超えないように冷却した。12時間撹拌して反応終点とした。反応混合物を濾過し、不溶分を除去した。アセトニトリルを減圧下留去して残渣を得た。残渣をクロロホルムで再結晶し、オキサジアゾール−N−オキサイド(12)を得た(収量10.2g、収率60%)。
【0070】
(3)ジメトキシフェニルオキサジアゾロピリジンエチルエステル体(13)の合成
500ml三口フラスコ中でオキサジアゾール−N−オキサイド(12) 15.6g(0.046mol)をブタノール300mlに溶解した。そこへグリシンエチルエステル塩酸塩32.0g(0.23mol)を添加した。24時間加熱還流を行った。ブタノールを減圧下留去し、残渣を得た。残渣を200mlのクロロホルムに溶解し、10%塩酸、飽和重曹水、10%NaCl水溶液で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルムで再結晶し、4,7−ジ(メトキシフェニル)−1,2,5−オキサジアゾロピリジンエチルエステル体(13)(以下、エステル体(13)という。)を得た(収量13.0g、収率70%)。
【0071】
次いで、エステル体(13)をNaBH
4存在下、還元反応を行い、ヒドロキシメチル体(14)を得、これと塩化チオニルを反応させオキサジアゾロピリジンクロロメチル体(15)を得、これにトリフェニルホスフィンを反応させてホスホニウム塩(16)を得、そしてウィティヒ反応により活性エステルを含むピリジニウム塩(18)(Lが−CH=CH−の場合)を合成した。以下に反応例を示す。
【0072】
【化10】
【0073】
(4)ヒドロキシメチル体(14)の合成
氷冷下、エステル体(13)(202mg、0.50mmol)のTHF溶液(3ml)に DIBALのトルエン溶液(アルドリッチ製、濃度1.5mol/L、6μL)を滴下し、その後氷冷下で30分、続いて室温で30分撹拌した。反応液を水に注入し、3%塩酸水溶液を加えて酸性(沈澱が消失)とし、クロロホルムで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧留去して得た残渣をシリカゲル(Kanto C−60)に分散させて一夜80℃で加熱した。このシリカゲルを酢酸エチルで洗浄し、洗浄液を減圧留去して得た残渣をカラム(Kanto C−60、ヘキサン/酢酸エチル=2/1(v/v))処理してヒドロキシメチル体(14)を得た(収量69mg、収率41%)。
【0074】
(5)クロロメチル体(15)の合成
ヒドロキシメチル体(14)(95mg)と塩化チオニル(3ml)のクロロホルム溶液(3ml)を2時間加熱還流後、反応液を水に注入し、飽和重曹水で中和し、クロロホルムで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧留去して得た残渣をカラム(Kanto C−60、ヘキサン/クロロホルム=5/1(v/v))処理してクロロメチル体(15)を得た。
【0075】
(6)ホスホニウム塩(16)の合成
クロロメチル体(15)(127mg、0.44mmol)とトリフェニルホスフィン(126mg、0.48mmol)のトルエン溶液(4ml)を24時間加熱還流後、沈澱をろ過してホスホニウム塩(16)を得た(収量168.6mg、収率54%)。
【0076】
(7)ビニル体(17)の合成
氷冷下、ホスホニウム塩(16)(168.6mg、0.26mmol)と水酸化カリウム(純度85%、30mg)のエタノール溶液(3ml)にm−フォルミルピリジン(27μL、0.29mmol)を加え、その温度で1時間、続いて室温で1時間撹拌した。沈澱をろ過し、カラム(Kanto C−60、クロロホルム/酢酸エチル=10/1(v/v))処理して、4,7−ジ(メトキシフェニル)−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ビニルピリジン)(以下、ビニル体(17)という。)を得た(収量86mg、収率76%)。
【0077】
(8)活性エステルを含むピリジニウム塩(18)の合成
ビニル体(17)(86mg、0.20mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(63mg、0.22mol)のトルエン溶液(2ml)を3日間加熱還流後、沈澱をろ過して活性エステルを含むピリジニウム塩(18)を得た。
合成例3.
以下に、4,7-ジフェニル-1,2,5-チアジアゾロピリジンの窒素カチオン体の合成例を示す。
【0078】
【化11】
【0079】
(1)ジケトン誘導体(2)の合成
500ml三口フラスコ中で4-メトキシアセトフェノン(1)30.0g (0.25mol)、亜硝酸ナトリウム0.15gを酢酸100mlに溶解した。水浴中、硝酸100mlを酢酸100mlに溶解したものを1時間かけて滴下した。その後、室温で2間撹拌した。反応混合物を500mlの水にゆっくりと入れ、沈殿を生成させた。沈殿物を濾過し、クロロホルムに溶解した。クロロホルム相を飽和重曹水で洗浄し、10%NaCl 水溶液で2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下、クロロホルムを留去し、オキサジアゾール-N−オキサイド(2)を得た(収量30.5g、収率82%)。
【0080】
(2)ジケトン誘導体(3)の合成
500ml三口フラスコ中でオキサジアゾール-N-オキサイド(2)14.7g(0.05mol)をアセトニトリル400mlに溶解した。それに亜鉛6.0g、酢酸7ml、アセトン20mlを添加した。水浴中で反応温度が35℃を超えないように冷却した6時間撹拌して反応終点とした。反応混合物を濾過し、不溶分を除去した。アセトニトリルを減圧下留去して残渣を得た。残渣をクロロホルムで再結晶し、オキサジアゾールジベンゾイル体(3)を得た(収量9.6g、収率69%)。
【0081】
(3)ジフェニルオキサジアゾロピリジンエチルエステル体(4)の合成
500ml三口フラスコ中でオキサジアゾールジベンゾイル体(3)10.0g(0.035mol)をブタノール300mlに溶解した。そこへグリシンエチルエステル塩酸塩 32.0g(0.23mol)を添加した。24時間加熱還流を行った。ブタノールを減圧下留去し、残渣を得た。残渣を200mlのクロロホルムに溶解し、10%HCl、飽和炭酸水素ナトリウム、10%NaCl水溶液で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルムで再結晶し、4,7−ジフェニル−1,2,5−オキサジアゾロピリジンエチルエステル体(4)(以下、エステル体(4)という。)を得た(収量7.6g、収率65%)。
【0082】
次いで、エステル体(4)をNaBH
4存在下、還元反応を行い、ジアミノアルコール体(5)を得、これと塩化チオニルを反応させチアジアゾロピリジンクロロメチル体(6)を得、これにトリフェニルホスフィンを反応させてホスホニウム塩(7)を得、さらにウィティヒ反応によりビニル体を得、そして活性エステルを含むピリジニウム塩(Lが−CH=CH−の場合)を合成した。以下に反応例を示す。
【0083】
【化12】
【0084】
(4)ジアミノアルコール体(5)の合成
エステル体(4) 1.73g(5mmol)とNaBH
4 1.30gNaBH4(35mmol)のエタノール溶液(100ml)を12時間加熱還流後、反応液を水に注入し、一夜放置後に沈澱をろ過してジアミノアルコール体 (5)を得た(収量1.17g、収率80%)。
【0085】
(5)クロロメチル体(6)の合成
室温下、アルコール体(5)(1.17g)のクロロホルム溶液(60ml)に塩化チオニル(6ml)、ピリジン−NaBH
4(3ml)をこの順で滴下、その後3時間30分加熱還流後、反応液を水に注入し、炭酸水素ナトリウムで中和し、クロロホルムで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧留去して得た残さをカラム(Kanto C−60;ヘキサン/クロロホルム=3/1(v/v))処理してクロロメチル体(6)を得た(収量1.11g、収率82%)。
【0086】
(6)ホスホニウム塩(7)の合成
クロロメチル体(6)(112.6mg、0.33mmol)とトリフェニルホスフィン(96mg、0.37mmol)のトルエン溶液(5ml)を3日間加熱還流後、沈澱をろ過し、エーテルで洗浄してホスホニウム塩(7)を得た(収量108mg、収率55%)。
【0087】
【化13】
【0088】
(7)ビニル体(8a)の合成
氷冷下、ホスホニウム塩(7)(168.6mg、0.26mmol)と水酸化カリウム(純度85%、30mg)のエタノール溶液(3ml)にp−フォルミルピリジン(27μL、0.29mmol)を加え、その温度で1時間撹拌後、室温で1時間撹拌した。沈澱をろ過し、カラム処理して、4,7−ジフェニル−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ビニルピリジン)(以下、ビニル体(8a)という。)を得た(収量67mg、66%)。
【0089】
(8)活性エステルを含むピリジニウム塩(9a)の合成
ビニル体(8a)(63mg、0.16mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(50mg、0.18mol)のトルエン溶液(4ml)を3日間加熱還流後、沈澱をろ過して活性エステルを含む4−ビニルピリジニウム塩(9a)を得た。
【0090】
合成例4.
合成例3で合成したホスホニウム塩(7)を出発物質として活性エステルを含む3−ビニルピリジニウム塩を合成した。以下に合成例を示す。
【0091】
【化14】
【0092】
(1)ビニル体(8b)の合成
氷冷下、ホスホニウム塩(7)(150mg、0.25mmol)と水酸化カリウム(純度85%、30mg)のエタノール溶液(4ml)にm−フォルミルピリジン(26μL、0.28mmol)を加え、その温度で1時間撹拌後、室温で1時間撹拌した。沈澱をろ過し、カラム処理して、4,7−ジフェニル−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(3−ビニルピリジン)(以下、ビニル体(8b)という。)を得た(収量57mg、収率58%)。
【0093】
(2)活性エステルを含むピリジニウム塩(9b)の合成
ビニル体(8a)(40mg、0.10mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(31mg、0.11mol)のトルエン溶液(4ml)を4日間加熱還流後、沈澱をろ過して活性エステルを含む3−ビニルピリジニウム塩(9a)を得た。
【0094】
合成例5.
合成例3で合成したホスホニウム塩(7)を出発物質として活性エステルを含む2−ビニルピリジニウム塩を合成した。以下に合成例を示す。
【0095】
【化15】
【0096】
(1)ビニル体(8c)の合成
氷冷下、ホスホニウム塩(7)(100mg、0.17mmol)と水酸化カリウム(純度85%、30mg)のエタノール溶液(4ml)にo−フォルミルピリジン(17μL、0.19mmol)を加え、その温度で1時間撹拌後、室温で1時間撹拌した。沈澱をろ過し、カラム処理して、4,7−ジフェニル−1,2,5−チアジアゾロピリジン−6−(2−ビニルピリジン)(以下、ビニル体(8c)という。)を得た(収量49mg、収率73%)。
【0097】
(2)活性エステルを含むピリジニウム塩(9c)の合成
ビニル体(8c)(40mg、0.10mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(31mg、0.11mol)のトルエン溶液(3ml)を3日間加熱還流後、沈澱をろ過して活性エステルを含む2−ビニルピリジニウム塩(9c)を得た。
【0098】
合成例6.
以下に、4,7−ジ(メチルフェニル)−1,2,5−チアジアゾロピリジンの窒素カチオン体の合成例を示す。
【0099】
【化16】
【0100】
(1)ジケトン誘導体(11)の合成
500ml三口フラスコ中で4−メトキシアセトフェノン(10) 30.0g(0.22mol)、亜硝酸ナトリウム0.15gを酢酸100mlに溶解した。水浴中、硝酸100mlを酢酸100mlに溶解したものを1時間かけて滴下した。その後、室温で2日間撹拌した。反応混合物を500mlの水にゆっくりと入れ、沈殿を生成させた。沈殿物を濾過し、クロロホルムに溶解した。クロロホルム相を飽和重曹水で洗浄し、10%NaCl水溶液で2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下、クロロホルムを留去し、オキサジアゾール−N−オキサイド(11)(26.6g、収率75%)を得た。
【0101】
(2)ジケトン誘導体(12)の合成
500ml三口フラスコ中でオキサジアゾール−N−オキサイド(11) 15.0g(0.05mol)をアセトニトリル400mlに溶解した。それに金属亜鉛6.0g、酢酸7ml、アセトン20mlを添加した。水浴中で反応温度が35℃を超えないように冷却した。6時間撹拌して反応終点とした。反応混合物を濾過し、不溶分を除去した。アセトニトリルを減圧下留去して残渣を得た。残渣をクロロホルムで再結晶し、オキサジアゾールジベンゾイル体(12)を得た(収量8.4g 、収率59%)。
【0102】
(3)ジメチルフェニルオキサジアゾロピリジンエチルエステル(13)の合成
500ml三口フラスコ中でオキサジアゾールジベンゾイル体(12)10.0g(0.033mol)をブタノール300mlに溶解した。そこへグリシンエチルエステル塩酸塩32.0g(0.23mol)を添加した。24時間加熱還流を行った。ブタノールを減圧下留去し、残渣を得た。残渣を200mlのクロロホルムに溶解し、10%塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム、10%NaClで洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルムで再結晶し、4,7−ジ(メチルフェニル)−1,2,5−オキサジアゾロピリジンエチルエステル体(13)(以下、エステル体(13)という。)を得た(収量8.6g、収率70%)。
【0103】
次いで、エステル体(13)をNaBH
4存在下、還元反応を行い、ジアミノアルコール体(14)を得、これと塩化チオニルを反応させチアジアゾロピリジンクロロメチル体(15)を得、これにトリフェニルホスフィンを反応させてホスホニウム塩(16)を得、さらにウィティヒ反応によりビニル体を得、そして活性エステルを含むピリジニウム塩を合成した。
【0104】
【化17】
【0105】
(4)ジアミノアルコール体(14)の合成
エステル体(13)(1.86g、5mmol)とNaBH
4(1.30g、35mmol)のエタノール溶液(100ml)を8時間加熱還流後、反応液を水に注入し、一夜放置後に沈澱をろ過してジアミノアルコール体(14)を得た(収量1.41g、収率88%)。
【0106】
(5)クロロメチル体(15)の合成
室温下、アルコール体(14) 1.20g(3.7mmol)のクロロホルム溶液(50ml)に塩化チオニル(5ml)、ピリジン−NaBH
4(3ml)をこの順で滴下し、その後3時間加熱還流した。反応液を水に注入し、炭酸水素ナトリウムで中和し、クロロホルムで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧留去して得た残さをカラム処理してクロロメチル体(15)を得た(収量1.08g、収率80%)。
【0107】
(6)ホスホニウム塩(16)の合成
クロロメチル体(15)(146mg、0.40mmol)とトリフェニルホスフィン(115mg、0.044mmol)のトルエン溶液(6ml)を2日間加熱還流した。沈澱をろ過し、エーテルで洗浄してホスホニウム塩(16)を得た(収量116mg、収率46%)。
【0108】
ホスホニウム塩(16)を用いて活性エステルを含む4−ビニルピリジニウム塩を合成した。以下の反応例を示す。
【0109】
【化18】
【0110】
(7)ビニル体(17a)の合成
氷冷下、ホスホニウム塩(16)(150mg、0.24mmol)と水酸化カリウム(純度85%、30mg)のエタノール溶液(3ml)にp−フォルミルピリジン(24μL、0.26mmol)を加え、その温度で1時間撹拌後、室温で1時間撹拌した。沈澱をろ過し、カラム処理して、4,7−ジ(メチルフェニル)−1,2,5−チアジアゾロピリジン−6−(4−ビニルピリジン)(以下、ビニル体(17a)という。)を得た(収量53mg、収率53%)。
【0111】
(8)活性エステルを含むピリジニウム塩(18a)の合成
ビニル体(17a)(50mg、0.12mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(36mg、0.08mol)のトルエン溶液(3ml)を3日間加熱還流後、沈澱をろ過して活性エステルを含む4−ビニルピリジニウム塩(18a)を得た。
【0112】
合成例7.
合成例6で合成したホスホニウム塩(16)を出発物質として、活性エステルを含む3−ビニルピリジニウム塩を合成した。以下に合成例を示す。
【0113】
【化19】
【0114】
(1)ビニル体(17b)の合成
氷冷下、ホスホニウム塩(16)(150mg、0.25mmol)と水酸化カリウム(純度85%、30mg)のエタノール溶液(4ml)にm−フォルミルピリジン(26μL、0.28mmol)を加え、その温度で1時間撹拌後、室温で2時間撹拌した。沈澱をろ過し、カラム処理して、4,7−ジ(メチルフェニル)−1,2,5−チアジアゾロピリジン−6−(3−ビニルピリジン)(以下、ビニル体(17b)という。)を得た(収量54mg、収率51%)。
【0115】
(2)活性エステルを含むピリジニウム塩(18b)の合成
ビニル体(17b)(50mg、0.12mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(37mg、0.11mol)のトルエン溶液(5ml)を5日間加熱還流後、沈澱をろ過して活性エステルを含む3−ビニルピリジニウム塩(18b)を得た。
【0116】
合成例8.
合成例6で合成したホスホニウム塩(16)を出発物質として、活性エステルを含む2−ビニルピリジニウム塩を合成した。以下に合成例を示す。
【0117】
【化20】
【0118】
(1)ビニル体(17c)の合成
氷冷下、ホスホニウム塩(16)(100mg、0.16mmol)と水酸化カリウム(純度85%、30mg)のエタノール溶液(4ml)にo−フォルミルピリジン(16μL、0.18mmol)を加え、その温度で1時間撹拌後、室温で1時間撹拌した。沈澱をろ過し、カラム処理して、4,7−ジ(メチルフェニル)−1,2,5−チアジアゾロピリジン−6−(2−ビニルピリジン)(以下、ビニル体(17c)という。)を得た(収量54mg、収率80%)。
【0119】
(2)活性エステルを含むピリジニウム塩(18c)の合成
ビニル体(17c)(50mg、0.12mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(36mg、0.13mol)のトルエン溶液(3ml)を3日間加熱還流後、沈澱をろ過して活性エステルを含む2−ビニルピリジニウム塩(18c)を得た。
【0120】
合成例9.
以下に、4,7−ジ(メチルチエニル)−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(3−ピリジニウム)の活性エステル体の合成例を示す。
【0121】
【化21】
【0122】
(1)ジケトン体(22)の合成
三口フラスコ中で2−アセチル−5−メチルチオフェン(21)を 25.00g(0.18mol)、亜硝酸ナトリウムを0.40g入れ、酢酸40mlで攪拌、溶解した。次に硝酸30mlと酢酸40mlの混合液を反応液に2時間かけて滴下した。滴下後、攪拌しながら2日間放置した。反応物を吸引濾過し、上澄みを水で洗浄し、乾燥機で2日間乾燥した。乾燥物をエタノールで再結晶し、ジケトン体(22)を得た(収量20.3g、収率68%)。
【0123】
(2)ジケトン体(23)の合成
ジケトン体(22) 5.00g(0.015mol)をアセトニトリル190mlに溶解した。溶解後、酢酸1.50ml、無水酢酸4.38mlを加え、40℃で攪拌。次に亜鉛粉末6.84gを投入し、30分間反応させた後、セライト上で亜鉛を吸引濾過にて濾別した。減圧下、溶媒を留去し、残渣をクロロホルムに溶解した。飽和重曹水、塩酸水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下、留去した。カラムクロマトグラフィーで分離精製を行った後、エタノールで再結晶した。ジケトン体(23)を得た(収量2.76g、収率58%)。
【0124】
(3)ピリジル体(24)の合成
ナスフラスコにジケトン体(23)を1.00g(0.003mol)、エタノール90mlを加え、60℃に加熱し、溶解した。それに3−ピコリルアミン 2.56g(0.02mmol)を溶解した。次にトリエチルアミン7.00mlを投入し、18時間加熱還流した。エタノールを減圧留去した後、塩酸水、飽和重曹水の順に洗浄し、減圧下、乾燥した。残渣をカラムクロマトグラフィーで分離した。エタノールで再結晶し、4,7−ジ(メチルチエニル)−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(3−ピリジン)(以下、ピリジル体(24)という。)を得た(収量0.75g、収率64%)。
【0125】
(4)活性エステル体(25)の合成
ピリジル体(24) 200mg(0.51mmol)、ブロモヘキサン酸活性エステル 148mg(0.51mmol)をトルエン6mlに溶解後、室温で一晩攪拌した。反応終了後吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥して活性エステル体(25)を得た。
【0126】
合成例10.
合成例9において、ブロモヘキサン酸活性エステルに代えてブロモプロピオン酸活性エステルを用いて活性エステル体を合成した。以下に合成例を示す。
【0127】
【化22】
【0128】
(1)活性エステル体(26)の合成
ピリジル体(24) 200mg(0.51mmol)、ブロモプロピオン酸活性エステル 127mg(0.51mmol)をトルエン6mlに溶解後、室温で一晩攪拌した。反応終了後吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥して活性エステル体26)を得た。
【0129】
合成例11.
以下に、4,7−ジ(メチルチエニル)−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジニウム)の活性エステル体の合成例を示す。
【0130】
【化23】
【0131】
(1)ピリジル体(27)の合成
ナスフラスコにジケトン体(23)を1.00g(0.003mol)、エタノール90mlを加え、60℃に加熱し、溶解した。それに4−ピコリルアミン 2.56g(0.02mmol)を溶解した。次にトリエチルアミン7.00mlを投入し、15時間加熱還流した。エタノールを減圧留去した後、塩酸水、飽和重曹水の順に洗浄し、減圧下、乾燥した。残渣をカラムクロマトグラフィーで分離した。エタノールで再結晶し、4,7−ジ(メチルチエニル)−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジン)(以下、ピリジル体(27)という。)を得た(収量0.67g、収率57%)。
【0132】
(2)活性エステル体(28)の合成
ピリジル体(27) 300mg(0.77mmol)、ブロモヘキサン酸活性エステル 214mg(0.77mmol)をトルエン9mlで溶解後、室温で一晩攪拌した。反応終了後吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥して活性エステル体(28)を得た。
【0133】
合成例12.
チエニル基に代えてフェニル基を用いた活性エステル体を合成した。以下に合成例を示す。
【0134】
【化24】
【0135】
(1)ピリジル体(29)の合成
ジケトン体(3) 300mg(1.08mmol)と3−ピコリルアミン 1ml(10mmol)をジオキサン25mlで溶解後、2時間加熱還流を行った。反応終了後、減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製を行い、目的物を分取した。さらにエタノールで再結晶し、4,7−ジフェニル−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(3−ピリジン)(以下、ピリジル体(29)という。)を得た(収量324.80mg、収率48%)。
【0136】
(2)活性エステル体(30)の合成
ピリジル体(29) 200mg(0.57mmol)、ブロモヘキサン酸活性エステル 158mg(0.57mmol)をトルエン6mlに溶解後、室温で一晩攪拌した。反応終了後吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥して活性エステル体(30)を得た。
【0137】
合成例13.
4,7−ジ(ブロモチエニル)−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジン)の活性エステル体の合成例を示す。
【0138】
【化25】
【0139】
(1)ジケトン体(22a)の合成
三口フラスコに2−アセチル−5−ブロモチオフェン(21)を 20.00g(0.10mol)、亜硝酸ナトリウムを0.30g入れ、酢酸40mlで攪拌、溶解した。次に硝酸30mlと酢酸40mlの混合液を反応液に2時間かけて滴下した。滴下後、攪拌しながら2日間放置した。反応物を吸引濾過し、上澄みを水で洗浄し、乾燥機で2日間乾燥した。乾燥物をエタノールで再結晶し、ジケトン体(22a)を得た(収量26.3g、収率58%)。
【0140】
(2)ジケトン体(23a)の合成
ジケトン体(22a) 5.00g(0.011mol)をアセトニトリル150mlに溶解した。溶解後、酢酸1.50ml、無水酢酸4.0mlを加え、40℃で攪拌。次に亜鉛粉末6.0gを投入し、30分間反応させた後、セライト上で亜鉛を吸引濾過にて濾別した。減圧下、溶媒を留去し、残渣をクロロホルムに溶解した。飽和重曹水、塩酸水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下、留去した。カラムクロマトグラフィーで分離精製を行った後、エタノールで再結晶した。ジケトン体(23a)を得た(収量2.67g、収率55%)。
【0141】
(3)ピリジル体(24a)の合成
ナスフラスコ中でジケトン体(23a) 2.00g(0.004mol)に、エタノール90mlを加え、60℃に加熱し、溶解した。それに4−ピコリルアミン 2.56g(0.02mmol)を溶解した。次にトリエチルアミン7.00mlを投入し、24時間加熱還流した。エタノールを減圧留去した後、塩酸水、飽和重曹水の順に洗浄し、減圧下、乾燥した。残渣をカラムクロマトグラフィーで分離した。エタノールで再結晶し、4,7−ジ(ブロモチエニル)−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジン)(以下、ピリジル体(24a)という。)を得た(収量1.18g、収率51%)。
【0142】
(4)活性エステル体の合成
ピリジル体(24a) 200mg(0.57mmol)、ブロモヘキサン酸活性エステル 158mg(0.57mmol)をトルエン6mlに溶解後、室温で一晩攪拌した。反応終了後吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥して活性エステル体を得た。
【0143】
合成例14.
4,7−ジ[(2−フェニル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジニウム)の活性エステル体の合成例を示す。
【0144】
【化26】
【0145】
(1)鈴木カップリングを用いたピリジル体(31)の合成
アルゴン置換したナスフラスコにピリジル体(24a)を200mg(0.38mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム 12.7mgを入れ、2M−炭酸ナトリウム溶液 2.8mlとベンゼン 4mlで溶解した。フェニルボロン酸 99mg(0.83mmol)をエタノール 2mlで溶解し、反応液に投入した。その後、80℃で5時間加熱還流した。反応液に水20ml2を入れ、クロロホルムを用いて抽出した。クロロホルムを減圧下留去し、残渣をヘキサン−クロロホルムで再結晶した。ピリジル体(31)を収量120mg、収率61%で得た。
【0146】
(2)活性エステル体(32)の合成
ピリジル体(31) 300mg(0.58mmol)、ブロモヘキサン酸活性エステル170mg(0.58mmol)をトルエン8mlに溶解後、室温で一晩攪拌した。反応終了後吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥して活性エステル体(32)を得た。
【0147】
合成例
14.
4,7−ジ[(1−ナフチル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジニウム)の活性エステル体の合成例を示す。
【0148】
【化27】
【0149】
(1)鈴木カップリングを用いたピリジル体(33)の合成
アルゴン置換したナスフラスコ中でピリジル体(24a) 200mg(0.38mmol)と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム 12.7mgを入れ、2M−炭酸ナトリウム2.8mlとベンゼン4mlで溶解した。1−ナフチルボロン酸144mg(0.83mmol)をエタノール2mlで溶解し、反応液に投入した。その後、80℃で6時間加熱還流した。反応液に水を20ml入れ、クロロホルムを用いて抽出した。クロロホルムを減圧下留去し、残渣をヘキサン−クロロホルムで再結晶した。ピリジル体(33)を収量190mg、収率55%で得た。
【0150】
(2)活性エステル体(34)の合成
ピリジル体(33) 300mg(0.58mmol)、ブロモヘキサン酸活性エステル170mg(0.58mmol)をトルエン8mlで溶解後、室温で一晩攪拌した。反応終了後吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥して活性エステル体(34)を得た。
【0151】
合成例
15.
4,7−ジ[(2−ナフチル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジニウム)の活性エステル体の合成例を示す。
【0152】
【化28】
【0153】
(1)鈴木カップリングを用いたピリジル体(35)の合成
アルゴン置換したナスフラスコにピリジル体(24a) 200mg(0.38mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム12.7mgを入れ、2M−炭酸ナトリウム2.8mlとベンゼン4mlで溶解した。2−ナフチルボロン酸 144mg(0.83mmol)をエタノール2mlで溶解し、反応液に投入した。その後、80℃で5時間加熱還流した。反応液に水を15ml入れ、クロロホルムを用いて抽出した。クロロホルムを減圧下留去し、残渣をヘキサン−クロロホルムで再結晶した。ピリジル体(35)を収量220mg、収率64%で得た。
(2)活性エステル体(36)の合成
ピリジル体(35)300mg(0.58mmol)、ブロモヘキサン酸活性エステル170mg(0.58mmol)をトルエン8mlで溶解後、室温で一晩攪拌した。反応終了後吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥して活性エステル体(36)を得た。
【0154】
合成例
16.
4,7−ジ[(2−
フェニル)チエニル)]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ビニルピリジニウム)の活性エステル体の合成例を示す。
【0155】
【化29】
【0156】
(1)エチルエステル体(37)の合成
200mlの三口フラスコにジケトン体(23a) 2.0g(4.5mmol)と、エタノール90mlを加え、60℃に加熱し、溶解した。それにグリシンエチルエステル塩酸塩4.8g(31.4mmol)を溶解した。次にトリエチルアミン7mlを投入し、24時間加熱還流した。エタノールを減圧留去した後、塩酸水、飽和重曹水の順に洗浄し、減圧下、乾燥した。残渣をカラムクロマトグラフィーで分離した。エタノールで再結晶し、4,7−ジ(ブロモチエニル)−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−エチルエステル(以下、エチルエステル体(37)という。)を収量1.18g、収率51%で得た。
【0157】
【化30】
【0158】
(
2)鈴木カップリングを用いたエチルエステル体(38)の合成
アルゴン置換したナスフラスコにエチルエステル体(
37)を195mg(0.38mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム12.7mgを入れ、2M−炭酸ナトリウム2.8mlとベンゼン4mlで溶解した。フェニルボロン酸101mg(0.83mmol)をエタノール2mlで溶解し、反応液に投入した。その後、80℃で5時間加熱還流した。反応液に水を15ml入れ、クロロホルムを用いて抽出した。クロロホルムを減圧下留去し、残渣をヘキサン−クロロホルムで再結晶した。エチルエステル体(38)を収量112mg、収率58%で得た。
【0159】
(
3)ヒドロキシメチル体(39)の合成
氷冷下、エチルエステル体(38)(255mg,0.50mmol)のTHF溶液(3ml)にDOBALのトルエン溶液(アルドリッチ社製、濃度1.5M,6μl)を滴下、その後氷冷下で30分、続いて室温で30分撹拌した。反応液を水に注入し、3%HCl水溶液を加えて酸性(沈澱が消失)とし、クロロホルムで抽出した。抽出液をMgSO
4で乾燥、減圧留去して得た残さをシリカゲル(Kanto C-60)に分散させて一夜80℃で加熱した。このシリカゲルを酢酸エチル(AcOEt)で洗浄し、洗浄液を減圧留去して得た残さをカラム処理して(Kanto C-60; Hexane/AcOEt = 2/1 (v/v))、ヒドロキシメチル体(39)を収量89mg、収率38%で得た。
【0160】
(
4)クロロメチル体(40)の合成
ヒドロキシメチル体(39)(100mg)とSoCl
2(3ml)のクロロホルム溶液(3ml)を2時間加熱還流した。反応液を水に注入、NaHCO
3で中和し、クロロホルムで抽出した。抽出液をMgSO
4で乾燥し、減圧留去して得た残さをカラム(Kanto C-60; Hexane/CHCl
3 = 5/1 (v/v))処理してクロロメチル体(40)を収量102mgで得た。
【0161】
(
5)ホスホニウム塩(41)の合成
クロロメチル体(40)(107mg,0.22mmol)とPh3P(63mg,0.24mmol)のトルエン溶液(3ml)を24時間加熱還流した。沈澱をろ過してホスホニウム塩(41)を収量97mg、収率59%で得た。
【0162】
(
6)ビニル体(42)の合成
氷冷下、ホスホニウム塩(41)(210mg,0.28mmol)と水酸化カリウム(純度85%,30mg)のエタノール溶液(3ml)にp-フォルミルピリジン(29μl,0.31mmol)を加え、その温度で1時間、続いて室温で1時間撹拌した。沈澱をろ過し、カラム処理して(Kanto C-60; CHCl
3/AcOEt = 10/1 (v/v))、ビニル体(42)を収量118mg、収率78%で得た。
【0163】
(
7)活性エステル体(43)の合成
ビニル体(42)(108mg,0.20mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(63mg,0.22mmol)のトルエン溶液(2ml)を2日間加熱還流した。沈澱をろ過してピリジニウム塩の活性エステル体(43)を得た。
【0164】
合成例
17.
4,7−ジ[(1−ナフチル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ビニルピリジニウム)の活性エステル体の合成例を示す。
【0165】
【化31】
【0166】
(1)エチルエステル体(44)の合成
アルゴン置換したナスフラスコにエチルエステル体(37) 216mg(0.42mmol)と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム14mgを入れ、2M−炭酸ナトリウム3mlとベンゼン4.5mlで溶解した。1−ナフチルボロン酸155mg(0.90mmol)をエタノール2.5mlで溶解し、反応液に投入した。その後、80℃で7時間加熱還流した。反応液に水を15ml入れ、クロロホルムを用いて抽出した。クロロホルムを減圧下留去し、残渣をヘキサン−クロロホルムで再結晶した。エチルエステル体(44)を収量154mg、収率 60%で得た。
【0167】
(2)ヒドロキシメチル体(45)の合成
氷冷下、エチルエステル体44(268mg、0.44mmol)のTHF溶液(3ml)にDIBALのトルエン溶液(アルドリッチ社製、濃度1.5M,6μl)を滴下、その後氷冷下で30分、続いて室温で30分撹拌した。反応液を水に注入し、3%HCl水溶液を加えて酸性(沈澱が消失)とし、クロロホルムで抽出した。抽出液をMgSO
4で乾燥、減圧留去して得た残さをシリカゲル(Kanto C-60)に分散させて一夜80℃で加熱した。このシリカゲルを酢酸エチル(AcOEt)で洗浄し、洗浄液を減圧留去して得た残さをカラム処理して(Kanto C-60; Hexane/AcOEt = 2/1 (v/v))、ヒドロキシメチル体(45)を収量75mg、収率30%で得た。
【0168】
(3)クロロメチル体(46)の合成
ヒドロキシメチル体(45)(200mg)とSOCl
2(6ml)のクロロホルム溶液(6ml)を2時間加熱還流した。反応液を水に注入し、NaHCO
3で中和し、クロロホルムで抽出した。抽出液をMgSO
4で乾燥し、減圧留去して得た残さをカラム処理して(Kanto C-60; Hexane/CHCl
3 = 5/1 (v/v))、クロロメチル体(46)を収量198mgで得た。
【0169】
(4)ホスホニウム塩(47)の合成
クロロメチル体(46)(103mg,0.18mmol)とPh
3P(56mg,0.20mmol)のトルエン溶液(3ml)を21時間加熱還流した。沈澱をろ過してホスホニウム塩(47)を収量99mg、収率65%で得た。
【0170】
(5)ビニル体(48)の合成
氷冷下、ホスホニウム塩(47)(238mg,0.28mmol)と水酸化カリウム(純度85%、30mg)のエタノール溶液(3ml)にp-フォルミルピリジン(29μl,0.31mmol)を加え、その温度で1時間、続いて室温で1時間撹拌した。沈澱をろ過、カラム(Kanto C-60; CHCl
3/AcOEt = 10/1 (v/v))処理してビニル体(48)を収量126mg、収率70%で得た。
【0171】
(6)活性エステル体(49)の合成
ビニル体(48)(128mg,0.20mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(63mg,0.22mmol)のトルエン溶液(2ml)を2日間加熱還流した。沈澱をろ過してピリジニウム塩の活性エステル体(49)を得た。
【0172】
合成例
18.
4,7−ジ[(2−ナフチル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ビニルピリジニウム)の活性エステル体の合成例を示す。
【0173】
【化32】
【0174】
(1)エチルエステル体(50)の合成
アルゴン置換したナスフラスコにエチルエステル体(37) 232mg(0.45mmol)と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム15mgを入れ、2M−炭酸ナトリウム3mlとベンゼン4.5mlで溶解した。2−ナフチルボロン酸166mg(0.96mmol)をエタノール2.5mlで溶解し、反応液に投入した。その後、80℃で 7時間加熱還流した。反応液に水を15ml入れ、クロロホルムを用いて抽出した。クロロホルムを減圧下留去し、残渣をヘキサン−クロロホルムで再結晶した。エチルエステル体(50)を収量176mg、収率64%で得た。
【0175】
(2)ヒドロキシメチル体(51)の合成
氷冷下、エチルエステル体(50)(250mg,0.41mmol)のTHF溶液(3ml)にDIBALのトルエン溶液(アルドリッチ社製、1.5M,5μl)を滴下、その後氷冷下で30分、続いて室温で60分撹拌した。反応液を水に注入し、3%HCl水溶液を加えて酸性(沈澱が消失)とし、クロロホルムで抽出した。抽出液をMgSO
4で乾燥し、減圧留去して得た残さをシリカゲル(Kanto C-60)に分散させて一夜80℃で加熱した。このシリカゲルを酢酸エチル(AcOEt)で洗浄し、洗浄液を減圧留去して得た残さをカラム処理して(Kanto C-60; Hexane/AcOEt = 2/1 (v/v))、ヒドロキシメチル体(51)を収量95mg、収率41%で得た。
【0176】
(3)クロロメチル体(52)の合成
ヒドロキシメチル体(51)(200mg)とSOCl
2(6ml)のクロロホルム溶液(6ml)を2時間加熱還流した。反応液を水に注入し、NaHCO
3で中和し、クロロホルムで抽出した。抽出液をMgSO
4で乾燥し、減圧留去して得た残さをカラム処理して(Kanto C-60; Hexane/CHCl
3 = 5/1 (v/v))、クロロメチル体(52)を収量201mgで得た。
【0177】
(4)ホスホニウム塩(53)の合成
クロロメチル体(52)(100mg,0.17mmol)とPh
3P(49mg,0.19mmol)のトルエン溶液(3ml)を24時間加熱還流した。沈澱をろ過してホスホニウム塩(53)を収量61mg、収率42%で得た。
【0178】
(5)ビニル体(54)の合成
氷冷下、ホスホニウム塩(53)(170mg,0.20mmol)と水酸化カリウム(純度85%、30mg)のエタノール溶液(3ml)にp-フォルミルピリジン(21μl,0.31mmol)を加え、その温度で1時間、続いて室温で45分間撹拌した。沈澱をろ過し、カラム処理して(Kanto C-60; CHCl
3/AcOEt = 10/1 (v/v))、ビニル体(54)を収量83mg、収率65%で得た。
【0179】
(6)活性エステル体(55)の合成
ビニル体(54)(150mg,0.23mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(75mg,0.26mmol)のトルエン溶液(2.5ml)を2日間加熱還流した。沈澱をろ過してピリジニウム塩の活性エステル体(55)を得た。
【0180】
合成例
19.
4,7−ジ[(2−ビフェニル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ピリジニウム)の活性エステル体の合成例を示す。
【0181】
【化33】
【0182】
(1)鈴木カップリングを用いたピリジル体(56)の合成
アルゴン置換したナスフラスコにピリジル体(27a) 200mg(0.38mmol)と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム12.7mgを入れ、2M−炭酸ナトリウム2.8mlとベンゼン4mlで溶解した。ビフェニルボロン酸164mg(0.83mmol)をエタノール2mlで溶解し、反応液に投入した。その後、80℃で5時間加熱還流した。反応液に水を20ml入れ、クロロホルムを用いて抽出した。クロロホルムを減圧下留去し、残渣をヘキサン−クロロホルムで再結晶した。ピリジル体(56)を収量155mg、収率61%で得た。
【0183】
(2)活性エステル体(57)の合成
ピリジル体(56)(300mg,0.45mmol)、ブロモヘキサン酸活性エステル145mg(0.49mmol)をトルエン8mlで溶解後、室温で一晩攪拌した。反応終了後吸引濾過を行い、濾物を真空乾燥して活性エステル体(57)を得た。
【0184】
合成例
20.
4,7−ジ[(2−ビフェニル)チエニル]−1,2,5−オキサジアゾロピリジン−6−(4−ビニルピリジニウム)の活性エステル体の合成例を示す。
【0185】
【化34】
【0186】
(1)鈴木カップリングを用いたエチルエステル体(58)の合成
アルゴン置換したナスフラスコにエチルエステル体(37) 200mg(0.39mmol)と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム14mgを入れ、2M−炭酸ナトリウム3mlとベンゼン4.5mlで溶解した。2−ナフチルボロン酸140mg(0.81mmol)をエタノール2.5mlで溶解し、反応液に投入した。その後、80℃で7時間加熱還流した。反応液に水を15ml入れ、クロロホルムを用いて抽出した。クロロホルムを減圧下留去し、残渣をヘキサン−クロロホルムで再結晶した。エチルエステル体(58)を収量165mg、収率64%で得た。
【0187】
(2)ヒドロキシメチル体(59)の合成
氷冷下、エチルエステル体(58)(290mg,0.44mmol)のTHF溶液(3ml)にDIBALのトルエン溶液(アルドリッチ社製、濃度1.5M、7μl)を滴下、その後氷冷下で30分、続いて室温で60分撹拌した。反応液を水に注入し、3%HCl水溶液を加えて酸性(沈澱が消失)とし、クロロホルムで抽出した。抽出液をMgSO
4で乾燥、減圧留去して得た残さをシリカゲル(Kanto C-60)に分散させて一夜80℃で加熱した。このシリカゲルを酢酸エチル(AcOEt)で洗浄、洗浄液を減圧留去して得た残さをカラム処理して(Kanto C-60; Hexane/AcOEt = 2/1 (v/v))、ヒドロキシメチル体(59)を収量112mg、収率41%で得た。
【0188】
(3)クロロメチル体(60)の合成
ヒドロキシメチル体(59)(200mg)とSOCl
2(6ml)のクロロホルム溶液(6ml)を2時間加熱還流した。反応液を水に注入し、NaHCO
3で中和し、クロロホルムで抽出した。抽出液をMgSO
4で乾燥、減圧留去して得た残さをカラム処理して(Kanto C-60; Hexane/CHCl
3 = 5/1 (v/v))、クロロメチル体(60)を収量201mgで得た。
【0189】
(4)ホスホニウム塩(61)の合成
クロロメチル体(60)(100mg,0.16mmol)とPh
3P(45mg,0.17mmol)のトルエン溶液(3ml)を24時間加熱還流した。沈澱をろ過して、ホスホニウム塩(61)を、収量61mg、収率42%で得た。
【0190】
(5)ビニル体(62)の合成
氷冷下、ホスホニウム塩(61)(252mg、0.28mmol)と水酸化カリウム(純度85%、30mg)のエタノール溶液(3ml)にp−フォルミルピリジン(29μl,0.31mmol)を加え、その温度で1時間、続いて室温で45分間撹拌した。沈澱をろ過し、カラム処理して(Kanto C-60; CHCl
3/AcOEt = 10/1 (v/v))、ビニル体(62)を収量126mg、収率65%で得た。
【0191】
(6)活性エステル体(63)の合成
ビニル体(62)(150mg,0.22mmol)とブロムヘキサン酸活性エステル(69mg,0.24mol)のトルエン溶液(2.5ml)を2日間加熱還流した。沈澱をろ過して、ピリジニウム塩の活性エステル体(63)を得た。
【0192】
合成例
21(比較例).
比較として、4,7−ジフェニル−1,2,5−オキサジアゾロピリジンエチルエステルの活性エステル体を合成した。
【0193】
50ml三口フラスコで合成例1のエステル体(4) 1.0g(1.6mmol)を30mlのエタノールに溶解した。そこへKOH 0.11g(3.0mmol)を添加した。5時間加熱還流を行った後、反応混合物を50mlの水へ添加した。水溶液を塩酸でpH1に調整し沈殿を得た。沈殿物を水-エタノール(1:1)で再結晶し、カルボン酸体を得た(収量0.47g、収率81%)。
【0194】
50ml三口フラスコでカルボン酸体を70mg(0.17mmol)とN−ヒドロキシスクシンイミド21mg(0.18mmol)をDMF20mlに溶解した。これにDMF5mlに溶解したN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド37mg(0.17mmol)を30分かけて滴下した。滴下後、室温で30時間撹拌した。減圧下、DMFを留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離し、活性エステル体を得た(収量90mg、収率78%)。
【0195】
蛍光スペクトル測定
(測定方法)
合成した蛍光色素を溶媒にDMSOを用いて濃度10
−4Mの溶液を調製し、蛍光波長の測定および吸収波長の測定を行った
【0196】
【表1】
【0197】
(結果)
合成例1から
20の蛍光色素は、いずれも直接水に溶解可能であった。これに対し、窒素カチオン含有基又は窒素含有基を持たない合成例
21の蛍光色素は、直接水に溶解させることができなかった。また、合成したすべての蛍光色素で100nm以上のストークスシフトが得られた。また、4,7−ジフェニル体では、吸収波長が400〜450nmであるのに対し、4,7−チエニル体では、吸収波長が500nm以上であり、600nm以上の蛍光波長が得られた。また、合成例
21の蛍光強度を1.0とすると、合成例1では、11.2、合成例12では6.0と、非常に高い蛍光強度が得られた。
【0198】
生体標本観察
(標本作製方法)
生後7年齢Wistar Ratを用い、4%パラホルムアルデヒド,0.03%グルタールアルデヒド、0.1Mカコジル酸緩衝液にて灌流固定を行い、固定後腎臓を取り出し、4%パラホルムアルデヒドにて後固定を行った。次に、凍結による切片へのダメージを回避するため、25%の高張ショ糖液(溶媒KPBS)に2時間浸漬させた後、包埋剤で試料を包埋し−80℃のディープフリーザーにて試料を凍結させた。凍結後、−20℃に設定したクリオスタットで、8μmの凍結切片を作成し、スライドガラスに貼り付けた。PBSで20分間の洗浄を3回行い、ビオチン化レクチンを室温下、一日間付加させた。次にPBSで10分間の洗浄を3回行なった後、蛍光標識ストレプトアビジンを用い3時間染色させた。染色後、PBSにて洗浄を行い、水溶性封入剤で封入後、蛍光顕微鏡で観察した。
【0199】
(結果)
図1は、合成例9の蛍光色素を用いて染色したもので、
図2は、比較のため、Texas Redを用いて染色したものである。Texas Redでは、非特異的吸着のため尿細管の外側が染色されているが、合成例9の蛍光色素では、外側に全く吸着せず、尿細管内面のブラッシュボーダーのみが染色された。また、尿細管内面のブラッシュボーダーについては、にじみも無く、形状が明確に観察可能であった。