(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881653
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】大動脈弁修復のための弁輪内取付フレーム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-170181(P2013-170181)
(22)【出願日】2013年8月20日
(62)【分割の表示】特願2009-531515(P2009-531515)の分割
【原出願日】2007年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-39820(P2014-39820A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2013年8月21日
(31)【優先権主張番号】60/849,919
(32)【優先日】2006年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11/799,942
(32)【優先日】2007年5月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509097415
【氏名又は名称】ハート, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HAART, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ランキン, スコット ジェイ
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0015179(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0176839(US,A1)
【文献】
特開昭57−107154(JP,A)
【文献】
特表平09−503679(JP,A)
【文献】
特表平11−514546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己大動脈弁尖を有する自己大動脈弁のための弁輪内取付フレームであって、
複数の屈曲部と、複数の相互接続点と、複数の柱と、を備え、
前記屈曲部は、前記大動脈弁尖の下で前記大動脈弁内に収容されるような形状であって前記大動脈弁内で前記大動脈弁尖の正確な接合を保持するような形状に形成され、
各前記屈曲部は、前記各屈曲部の基部に接する横方向平面から上向きに凹にのみ伸びており、
前記相互接続点は、前記屈曲部を接続して前記弁輪内取付フレームを形成し、
前記柱は、前記弁輪内取付フレームの内側領域から外側に向かって伸びていることを特徴とする弁輪内取付フレーム。
【請求項2】
前記弁輪内取付フレームが、3つの屈曲部と前記屈曲部の端を相互接続する3つの相互接続点とを有していることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項3】
前記弁輪内取付フレームが、2つの屈曲部と前記屈曲部の端を相互接続する2つの相互接続点とを有していることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項4】
前記複数の柱の1つは、前記複数の相互接続点の各々から伸びていることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項5】
前記柱が、前記弁輪内取付フレームの横方向平面の内部領域から測って90度から120度の角度で前記弁輪内取付フレームの内側領域から遠ざかる方向に向かって、伸びていることを特徴とする請求項4に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項6】
各前記柱が、前記大動脈弁の半径に等しい長さを有していることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項7】
各前記柱が、前記大動脈弁の半径の70%から130%の長さを有していることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項8】
前記柱の長さが、8〜16mmとされていることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項9】
前記弁輪内取付フレームが、前記大動脈弁の周囲と等しい周囲を有していることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項10】
前記弁輪内取付フレームの直径が、16〜30mmであることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項11】
前記弁輪内取付フレームの直径が、前記大動脈弁の直径未満とされていることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項12】
前記弁輪内取付フレームの直径が、前記大動脈弁の直径よりも2〜8mm小さくされていることを特徴とする請求項9に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項13】
前記弁輪内取付フレームが、金属で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項14】
前記弁輪内取付フレームが、金属ワイヤーで構成されていることを特徴とする請求項11に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項15】
前記弁輪内取付フレームが、プラスチック、重合体、金属、熱可塑性物質、樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項16】
前記弁輪内取付フレームが、前記フレームを貫通する穿孔を更に有していることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項17】
前記弁輪内取付フレームが、重合体で構成される繊維布で覆われた表面を更に有していることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項18】
前記弁輪内取付フレームが、グルタルアルデヒドで固定されたウシ心膜で覆われた表面を更に有していることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項19】
各前記柱が、前記大動脈弁の交連に向かって伸びていることを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【請求項20】
各前記相互接続点は、先端にいくと共に連続的に細くなるとともに、前記弁輪内取付フレームを形成するために該先端において隣接する前記屈曲部同士を接続することを特徴とする請求項1に記載の弁輪内取付フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大動脈弁修復を含む応用において有用な取付フレームに関する。より詳細には、本発明は、大動脈弁輪内に直接挿入される弁輪内取付フレーム(intra-annular mounting frame)に関する。本発明はさらに、弁輪内取付フレームの挿入及び移植方法、並びに、上行大動脈ダクロン(登録商標)グラフトや心膜単尖人工補填物などの補完的装置の挿入及び移植の方法を含む。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の心臓は、基本的に、化学機械的エネルギートランスデューサーとして機能するポンプである。代謝基質の化学エネルギー及び酸素は、血圧の機械的エネルギーに変換されて心筋サルコメアによって心収筋中に流される。ポンプは、収縮期と呼ばれる収縮/駆出のフェーズと、拡張期と呼ばれる弛緩/充填のフェーズを有し、1〜2Hzの周波数で周期的である。
【0003】
人間の心臓は心臓血管系の中心であり、この系は、肺循環及び体循環から構成される2つの並列循環を有する。肺循環は、大静脈から右心房及び右心室へ血を受け取り、肺を介して心拍出を肺動脈内にポンピングする。体循環は、肺静脈から血を受け取り、左心房及び左心室を介して、心拍出を大動脈、全身の動脈、毛細血管、静脈へとポンピングし、そして最終的に大静脈へと血を送り戻す。僧帽弁は上房、左心房、拍出房、左心室の間に位置する。左心房はキャパシターとして機能し、心周期の間に肺から肺静脈経由で血を受け取る。拡張期の間、左心室は、僧帽弁が開くとともに左心房から血を受け取って充填し、収縮期の間には、僧帽弁が閉じて左心室から上行大動脈へ血を前方駆出させる。大動脈弁は左心室と大動脈の間に位置し、通常状態の拡張期の間には、心室から大動脈へ、妨害することなく血を流れさせる。収縮期の間には、大動脈弁が閉じて左心室への逆流を防ぐ。
【0004】
患者の自己弁の外科的な再建は僧帽弁疾患においてスタンダードになりつつある。僧帽弁逸脱症、純弁輪拡大、虚血性僧帽弁逆流、又は心僧帽弁内膜炎のいずれを考えるのかによって、修復は今日ではルーチンとなっており、高い確率で成功し、そして失敗の確率は低くなっている。リウマチ性僧帽弁疾患においても、多くの外科医が積極的修復のプログラムに取り組んでおり、その修復とは、グルタルアルデヒド固定自家心膜を用いる後尖増大、人工的なゴアテックス(登録商標)索条組織の挿入を伴う狭窄僧帽弁輪部装置の摘出、尖脱灰などの技法を弁輪形成術に付加して適用することを含む。現在の目標は、100%に近い僧帽弁疾患の修復率を達成することであり、そして、人工弁置換を大幅に減少させることである。この設定における修復と置換の利点は十分に立証されている。手術死亡率(他の要因により規格化される)は低く、洞調律における抗凝固薬が不要であり、人工弁を用いる場合よりも合併症の確率が低く、患者自身の組織であるために変性しないことから耐久性に優れ、そして、外来異物をあまり用いていないために後の心内膜炎が減少される。そのように、僧帽弁疾患におけるこれらのコンセプトは、心臓手術の分野において急速に標準的治療となってきている。
【0005】
人間の心臓の大動脈弁も、多くの原因から生じる大動脈弁閉鎖不全がもとで病気にかかり得る。共通の原因は、バルサルバ洞の外向き移動及び交連間距離の拡大を伴う弁輪拡大である。形状的にみてこの配置の乱れは、弁輪周囲を大きくするだけでなく、弁尖接合(cusp coaptation)の接合面積を小さくする。弁尖の接合角は、基本的に、平行及び鋭角で対面するような状態から、弁尖が鈍角で配置されるような互いに先端を向け合う状態に変化する。最終的に、接合の中心に隙間が生じ、大動脈弁閉鎖不全の進行がよりいっそうの大動脈弁閉鎖不全を引き起こす弁輪拡大を引き起こし、リークが次第に増大する。
【0006】
大動脈弁疾患の修復においては、僧帽弁の再建と同等の成功には未だ至っていない。過去10年から15年に渡って「交連弁輪形成」技法が使われてきたが、しかしこれは軽度から中程度の二次性大動脈弁閉鎖不全症のみにしか適用することができず、たいていの場合、一次性冠動脈バイパス又は僧帽弁手術が行われる患者にしか適用することができない。交連弁輪形成は、弁輪周囲を縮小させるだけではなく、洞を中心部に移動させる傾向があり、従って弁尖の形状及び接合角を正常化する。しかしながら、交連弁輪形成がなし得る正常化には、形状異常(奇形)による限界があり、この手術によって弁輪全体が修復されるわけではないために、術後も弁輪拡大や大動脈弁閉鎖不全の再発が起こる可能性が残される。その他の装置や方法、例えば、Carpentierら(米国特許第4,451,936号)が教示する弁輪上設置型大動脈弁を含む提案がされてきた。Carpentierほかによるとこの発明は、機械弁及びリーフレット型心臓弁に適用可能であり、また大動脈弁内へ突出することはない。
【0007】
Duranらは、米国特許第5,258,021号の中で、大動脈弁輪の上方の弁輪上方域にある大動脈内部へ挿入する弁形成リングについて記載されている。そのなかで開示される装置は、上からみると円状であり、3つのほぼ正弦曲線の支柱(struts)を有している。
【0008】
米国特許第6,231,602号において、Carpentierらは、大動脈弁輪の上方の組織に縫合された弁形成リング、及び、交連動脈壁交差直下の密集組織に縫合可能な弁輪下方リングを記載している。さらに、弁輪下方リングは、きちんとした配置にあるリーフレットの形状は変化させずまた影響も及ぼさないが、その代り、適切なリーフレット接合修復をせず、むしろ弁輪下方大動脈を狭窄してリーフレットの下部面を中心に移動させる。さらに、該特許は明らかに僧帽弁に関する以前の研究に基づいており、大動脈弁の3次元形状の複雑性を無視しており、弁上方又は弁下方の領域のいずれかを無駄に狭窄してしまっている。また、該特許は、弁輪について、弁輪の上方又は下方のいずれかの大動脈組織の概略的な形状に従ってしか記載しておらず、弁輪の適切なサイズの説明や弁輪がどのように患者に移植されるかについての説明はなされていない。
【0009】
米国特許出願公開第2005/0228494号において、Marquezは、移植後に複数の個別の弁尖に分離可能な心臓弁フレームを記載している。さらに、該特許の発明は人工リーフレットと共に好ましく用いられる。
【0010】
だがしかし、従来技術工程の弁輪上方又は弁輪下方リング及び人工弁は、一般的に大動脈弁の長期改善の点において効果的ではなく、加えて、かなり複雑な手術工程を必要とする。ここで記述される、大動脈内へ挿入されるリングは、弁の上方又は下方に挿入されるように設計されている。単に小型化させる又は周囲を狭窄するために、リングを大動脈弁の下方(弁輪下方)に縫合すると、弁尖を歪ませてしまい弁リークの悪化につながり得る。さらに、この狭窄の概念は、3つの半月状大動脈尖が、弁のコンピテンスを供給するため空間内で特定の配置を満たすために3次元構造である、という事実を無視している。同様に、従来技術の弁輪上方リングも同じ問題を抱えると共にさらに少ない形状基礎しか有しておらず、その理由として、弁輪の上方の大動脈組織の形状に概略的にしか従っていないこと、そして具体的な形状モデルに基づいていないことが挙げられる。
【0011】
従って、大動脈弁を修復するために大動脈弁輪内に直接挿入される取付フレームが所望されている。実際に、大動脈の3次元的な側面を取り入れた科学的に作成されたモデルを含む特徴の組み合わせが、大動脈弁の形状を正常に戻すためには必要であることがわかっている。また、そのようなフレームの挿入及び取り付け方法が所望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、大動脈弁の3次元的特徴にユニークに適応する弁輪内半球状取付フレームの提供である。弁輪内半球状取付フレームは、弁のコンピテンシーを修復するために、大動脈弁解剖学的形態の解剖学的特徴に関して慎重に検討された設計を有している。
【0013】
弁輪内半球状取付フレームの開発に際して、複数の屍体の心臓が解体されて右及び左の冠状動脈弁尖間の交連を通って長手方向に開かれる。検体はピンで平らに留められ、弁輪周囲が、一方の大動脈縁から弁尖の基部にある他方までが直線距離になるようにして計測される。弁輪周囲長さがわかると、弁輪直径及び弁輪半径は、式C = πD = 2πrを含むスタンダードな円数学から決定される。
【0014】
一般的に、各弁尖の交連間直線距離(C/3)は大動脈弁の弁輪直径(C/3.14)に概ね近いとされ、各弁尖の高さは一定で弁の半径の約1mm以内である。さらに各弁尖は、その上面がリーフレットの他の部分よりもわずかに厚くなっているとともに、自由縁に「シールド状(shield-like)」の形状を保持する。また、側面にあるリーフレットの上面は三日月状に平らにされてリーフレットの中心に向かってテーパ状で、そして交連挿入時の接合の領域、ここでは「接合三日月部」と呼ぶ、を形成する。
【0015】
上記の知見より、大動脈弁は
図1に描写されるように円状のモデルとされる。より詳細には、大動脈弁輪及び弁尖は、大動脈を中心円柱とし、弁尖円状部分を同じ半径を有する半球とし、そして代表的な弁尖を円柱の中心で交差させるようにモデリングして近似することができる。数学的には、大動脈の3次元形状は、球座標(r,θ,φ)における下の式系により、前記半球(リーフレット)を半径rを有すると共に(a,b,c)を中心とするようにモデリングすることによって近似することができる。
x = a + rsinφcosθ
y = b + rsinφsinθ
z = c + rcosφ
r>0, 0≦θ<2π, 0≦φ≦π
【0016】
さらに、半径rの円柱(大動脈)は円柱座標(r,Θ,z)における下の式系によりモデリングできる。
x = rcosΘ
y = rsinΘ
z = z
r>0, 0≦Θ<2π, -∞<z<∞
【0017】
同じ半径rを有し、(a1,b1,c1)及び(a2,b2,c2)を中心とした2つの球の交差点は、下の式系の解である。
a1+rsinφ1cosθ1 = a2+rsinφ2cosθ2
b1+rsinφ1sinθ1 = b2+rsinφ2sinθ2
c1+rcosφ1 = c2+rcosφ2
【0018】
半径rを有し(a,b,c)を中心とした球と、同じ半径を持つ筒の交差点は、下記の式系の解である。
a+rsinφcosθ = rsinΘ
b+rsinφsinθ = rcosΘ
c+rcosφ = z
【0019】
上記モデルを用いると、上の2組の式は、弁尖同士及び弁尖と大動脈との交差点を決定するために解かれ、
図2(a)で示されるような交差点を有するモデルを作る。このようなモデルは、大動脈周囲を3分の1に分割して、弁尖が中心で交わるようにし、解体された検体で観測されるように、同じ「接合三日月部」において弁尖の側面の重なりを作る。同様に、結果をプロットすることで、大動脈及びリーフレットの軸に垂直な平面の複数の準位における交差点を描写することができ、そして複数の2次元画像を積み重ねることで、大動脈リーフレットの3次元解剖学的形態を、
図2(b)のように弁の上から見たり、
図2(c)のように弁の下から見たりすることができる。さらに、弁尖半球の底部の中心が円柱大動脈と原点で交差することから、及び、3つの弁尖半球がそれぞれ円柱大動脈の周囲の約1/3にまたがることから、
図3で描写されるように、各弁尖について「シールド形状」が作られる。このモデルを用いて、正常な大動脈弁輪の3次元形状は、弁尖半球と大動脈円柱の交差点を決めることにより、簡単な数学を用いて決定することができる。
【0020】
従って、上記の大動脈弁及び弁尖の次元間関係を弁のコンピテンシーを修復するために使用することができる。より詳細には、解体された検体で計測された直線距離はモデリングされた弁輪周囲にほぼ等しく、個別の弁尖の上縁は弁輪周囲の約1/3に等しくなっている。さらに、弁尖の高さは半球のモデルの弁輪半径にほぼ等しくなるように決定される。弁輪の形状をこの次元に縮小することで、弁尖を垂直及び平行にステントするとともに存在する根底の病状に依存することなく大動脈弁のコンピテンシーを供給することができる。従って、本発明の弁輪内半球状取付フレームは、上で議論したコンピテンシーを持たない弁からコンピテンシーを持つ大動脈弁への次元的関係を修復するために利用される。
【0021】
より詳細には、本発明の弁輪内半球状取付フレームは、弁尖の形状に一致させるために少なくとも第一及び第二平面内に屈曲を含む屈曲部と、さらに、正常な大動脈弁の交連解剖学的形状に一致させるために相互接続点を含む。一実施形態においては、3つの屈曲部のそれぞれが各交連の形状的特徴と一致しているとがった先端で他の屈曲部と隣接してフレームを構成する。好ましい実施形態では、短い柱(post)がそれぞれの点から交連に向かって上方に伸びる。これらの柱の高さは大動脈弁と同等の半径に等しく、交連及び各弁尖を適切な3次元的平行関係に留めて完全な接合を可能にする。
【0022】
フレームは種々の材料から構成することができ、これらの材料は、金属、重合体、熱可塑性物質、プラスチック、及びわずかな変形は可能であるが通常の圧力下では厚みが薄くならないような他の材料を含む。あるいは、フレームは、取り付けする際により良い構造を持つ取付フレームとなるように穿孔処理された金属又はプラスチックのストリップ(strip)でもよい。
【0023】
さらに、フレームは、任意的に、ダクロン(登録商標)布片で覆われていてもよく、このようにして現行の僧帽弁弁形成リング設計のものと同じ材料を利用したり、又あるいはフレームは、グルタルアルデヒドで固定されたウシ心膜又はゴアテックス(登録商標)材料で覆われていてもよい。
【0024】
弁輪内半球状取付フレームは、患者ごとに異なる弁尖内体積及び大動脈弁の形状に合わせるために、種々のサイズを採用することができる。実際の使用時には、弁輪内半球状取付フレームのサイズは、多くの患者において約16〜約30mm範囲内で変動し得る。
【0025】
一般的に、弁輪内半球状取付フレームは種々の方法で大動脈弁輪内に移植されることができる。第一の方法は、弁輪内半球状取付フレームを大動脈弁輪にしっかりと縫合する小さな布片、プレジェット(pledgets)、又はマットレス縫合材の組み合わせのパッドを含み、大動脈組織の断裂を減少させる。あるいは、複数のシールド曲線と同様の屈曲部を有する補完的な単一の弁尖弓(single cusp arcs)が、縫合材が挿入される弁尖の上側に用いられ、患者の弁尖が半剛体の弁輪内半球状取付フレームと上記支持弓(supporting arcs)との間に「はさまれる」ようにする。
【0026】
本発明の目的は、従って、大動脈弁の正常な3次元的特徴を再建するような特徴を有する弁輪内半球状取付フレームを提供することである。
【0027】
本発明の他の目的は、フレームが大動脈弁の輪状の弁尖の形状にほぼ一致するように、少なくとも第一及び第二平面内に屈曲を持つ屈曲部を有する弁輪内半球状取付フレームを提供することである。
【0028】
本発明の他の目的は、弁の交連の周りの領域の形状に一致し、各屈曲部を相互接続する点を有する弁輪内半球状取付フレームを提供することである。
【0029】
本発明の他の目的は、各相互接続点に対応し、交連と弁尖とを適切な3次元的関係に留める助けをする柱を有する弁輪内半球状取付フレームを提供することである。
【0030】
本発明の他の目的は、弁輪内半球状取付フレームを弁尖の下側から弁尖の上側領域に及ぶ縫合材を用いて大動脈弁に移植する方法を提供することである。
【0031】
本発明の他の目的は、取付フレームの屈曲部の形状と同様の形状を有する弁輪の上方に用いられる少なくとも一つの支持弓を含む弁輪内半球状取付フレームの大動脈弁に移植する方法を提供することである。
【0032】
本発明の他の目的は、患者の大動脈弁の少なくとも1つの寸法を計測することによって弁輪内取付フレームをモデリングする方法を提供することである。
【0033】
本発明の他の目的は、モデリングパラメータを診断装置内に統合することによって弁輪内取付フレームのサイズを合わせる方法を提供することである。
【0034】
後述の記載から明らかとなるこれらの側面他は、大動脈弁の3次元的形状に関する十分な考慮をした設計となっている弁輪内半球状取付フレームを用いることにより達成される。本発明の弁輪内半球状取付フレームは、正常な接合が達成されるように適切な弁尖及び交連の関係を有利に再建する。
【0035】
前述の全般的な記載及び後述の詳細な記載は、本発明の実施形態を提供するとともに特許請求の範囲に記載された発明の性質及び特徴を理解するための概要又は構成を提供することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】大動脈弁の半球のモデルの平面図の2次元図である。
【
図2】
図2(a)は円柱状大動脈モデルの側面平面図である。
図2(b)は弁の上側から見た大動脈弁の3次元解剖図である。
図2(c)は弁の下側から見た大動脈弁の3次元解剖図である。
【
図4】弁輪内半球状取付フレームの一実施形態の図である。
【
図5】弁輪内半球状取付フレームの好ましい実施形態の図である。
【
図6】正常な大動脈弁の弁輪上方から見た図である。
【
図7】疾患した大動脈弁の弁輪上方から見た図である。
【
図8】交連を通って長手方向に開かれた解剖された大動脈弁の写真である。
【
図9】長手方向に開かれた弁輪内半球状取付フレームの第一実施形態の図であり、長手方向に開かれた正常な大動脈弁を覆って平らに横たえられている。
【
図10】長手方向に開かれた弁輪内半球状取付フレームの第二実施形態の図であり、長手方向に開かれた正常な大動脈弁を覆って平らに横たえられている。
【
図11】大動脈弁との縫合配置を示すために開かれた弁輪内半球状取付フレームの第一実施形態の図である。
【
図12】弁輪内半球状取付フレームを取り付ける第二実施形態の図である。
【
図13】弁輪内半球状取付フレームの第二実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明による装置及び方法は、大動脈弁修復のために又はその中で有用性があると本明細書に開示されているものの、その装置及び方法論のどちらも、人間の体内にある他の弁を修復するための外科手術を含む他の分野、この分野に限定はされないが、においても用いることが可能である。
【0038】
図4を参照すると、大動脈弁修復において有用な弁輪内半球状取付フレームが示されており、数字10で示されている。弁輪内半球状取付フレーム10は、大動脈弁輪内に挿入されて自己大動脈弁を再建する。
【0039】
弁輪内半球状取付フレーム10は、複数の屈曲部12及び相互接続点14を含む。一般的に、相互接続点14は交連の形状に一致するとともに、屈曲部12も輪状の弁尖の形状に一致する。屈曲部12は、大動脈弁の弁尖の3次元形状に対応するために、半球状取付フレーム10の第一平面及び第二平面近く内で屈曲する。参考までに、横方向平面とは、弁輪内半球状取付フレーム10がもたれるように接する横方向の平面として定義され、各屈曲部12もまた横方向平面に同様に接している。長手方向平面とは、横方向平面を垂直に交差させるとともに弁輪内半球状取付フレーム10の中を垂直に走る平面として定義される。屈曲部12は、横方向平面及び長手方向平面の両方の平面内で屈曲することができ、さらに複数の他の平面内でも屈曲することができる。好ましくは、屈曲部12は、大動脈弁の3次元形状に対応するために、少なくとも2つの平面内で屈曲するとともに、動脈壁に接触して大動脈弁尖を支持及び配列する。さらに、相互接続点14は、相互接続屈曲部12の2つの機能の役割を担うとともに大動脈弁の交連を支持する。詳細には、相互接続点14は、隣接する弁尖間の3次元形状にぴたりと一致するとともに交連の近くに配置するように設計され、これにより、弁尖を支持するとともに弁尖の適切な接合の修復を助ける。相互接続点14の各点は、先端にいくと共に連続的に細くなっており、隣接する弁尖間にあって交連まで達する狭窄空間内にはまるようになっている。そのようにして、交互接続点14は、この弁尖間空間内において、交連直下を支持する。
【0040】
図5は、交互接続点14から上方に伸びる柱16を有する弁輪内半球状取付フレーム10の好ましい実施形態を描写している。柱16は、大動脈弁の交連及び弁尖を適切な平行関係に留めるための機能を担い、それにより大動脈弁に移植された際に、完全な接合を可能にする。
図4の実施形態とは異なり、
図5に示された実施形態の相互接続点14は、隣接する弁尖間の狭窄空間内に十分に伸びずに、かわりに柱16がそのように伸びる。その他に特記している場合、
図4の相互接続点14の先端の高さは、
図5の実施形態の柱16の先端の高さとほぼ同じである。弁輪内半球状取付フレーム10の複数の実施形態の設計特性を完全に理解するためには、大動脈弁の解剖学的形態における3次元的関係を理解及び考慮する必要がある。
【0041】
図6は、大動脈壁20、弁尖22、交連26を有する正常な大動脈弁18の断面図である。大動脈弁18は、実際には完全なる円形ではないものの、しばしば技術の中において、大動脈弁18に関連する計測及び計算にゆとりを持たせることを目的として、円柱物体に典型的に起因するように規定された寸法である。そのようにして、弁尖22のそれぞれが大動脈壁20の周囲の3分の1に付着し、大動脈弁18の中心において、接合して向き合っている。交連26は、隣接する弁尖22が大動脈壁20に付着する接合点として定義される。
図6は正常な大動脈弁18の2次元的側面しか描写していないが、弁尖22及び交連26の両方が描写されるように適切な接合をもって配列するためには、複雑な3次元的配置が必要となる。
【0042】
図7は、大動脈壁20、弁尖22及び大動脈弁リーク24を有する、疾患した大動脈弁の断面図である。リーク24は、
図7に示されるように、大動脈弁輪18の拡大の結果であり得、そしてその結果として、弁尖22は適切に接合されなくなる。基本的に、リーク24は接合の中心の隙間であり、大動脈弁閉鎖不全症を引き起し、これにより次々に大動脈弁18の弁輪拡大を進行させ、従ってリーク24が次第に増大する。
【0043】
図8を見ると、
図8は解剖された大動脈弁18であり、2つの弁尖22間の交連26を通って長手方向に開かれて平らに置かれている。3つの弁尖22のそれぞれは、「シールド状皮弁」として図示され、手がつけられていない2つの交連26が見えており、隣接した弁尖22が接触して点を形成し大動脈壁に付着している。大動脈弁18は、弁尖22の基部近くに位置する一方の大動脈縁(aortic margin)30から他方の大動脈縁30までの直線距離の寸法である弁輪周囲28によって、物理的に特徴付けられる。弁輪周囲から弁輪直径及び弁輪半径が算出されて、大動脈の物理的形状がさらに定義される。さらなる寸法は、弁尖22の基部近くから弁尖22の上部中間点までの距離で定義される弁尖高さ32を含み、通常、正常に機能している大動脈弁の弁輪半径の1mm内とわかる。弁尖長さ34は、ほぼ、一方の交連26から次の交連26までの弁尖22の自由縁の寸法であり、さらに、弁輪周囲28は3つの弁尖22を備えることから、弁輪周囲28を3で割ったものにほぼ等しくなる。
【0044】
これらの計測及び計算は、
図3に描写されるような弁輪内半球状取付フレーム10を形成するために使われ、これらはさらに
図9において、長手方向に開かれ正常な大動脈弁を覆って平らに置かれた状態で、2次元的に描かれている。本発明の弁輪内半球状取付フレーム10は、実際には開かれたり裂かれたりしないが、
図9の2次元的な長手方向に開かれた図により、弁輪内半球状取付フレーム10を大動脈弁18と関連させて描写することが非常に容易になる。3つの屈曲部12のそれぞれは、大動脈18の弁尖22の3つの基部にほぼ隣接して配置される。基部弁尖屈曲部12の屈曲が始まる部分は、弁尖22が大動脈壁に付着している部分の屈曲とほぼ同様である。図示していないものの、手がつけられていない大動脈弁において、屈曲部12は、少なくとも一つのさらなる平面内で屈曲し、手がつけられていない大動脈弁の3つの寸法に対応している。加えて、2つの手がつけられていない交連点14及び図示されていないさらなる交連点14は、大動脈弁18のそれぞれの各交連26に実質的に取り付けられている。弁輪内半球状取付フレーム10の高さ36は、各屈曲部12から各相互接続点14までのおおよその距離であり、大動脈弁18の弁尖高さ32と同様である。さらに、弁輪内半球状取付フレーム10の長さ38は、大動脈弁18の弁輪周囲28の形状及び寸法と同様である。
【0045】
本発明の他の側面において、
図10は、
図9に描写される
図4の実施形態と同様な2次元的長手方向開図で、
図5の実施形態を表したものである。この実施形態においては、柱16は、交連26に向かって上方に伸びることができ、又は、わずかに通り越すことができる。より好ましくは、柱16の高さは、大動脈弁18の高さと等しくあることができ、また弁尖を適切な3次元的平行関係に留めて大動脈弁の完全な接合を可能にする。
【0046】
一般的には、
図4及び
図5の実施形態及びさらなる実施形態における弁輪内半球状取付フレーム10の形状及び寸法は、正常な大動脈とほぼ同様である。多くの場合、弁輪内半球状取付フレームの直径は、弁輪内半球状取付フレームが移植される大動脈弁の算出された直径(弁尖自由縁の長さに基づいている)よりも約2ミリメーター小さく、3つの屈曲部のそれぞれの屈曲の始まり部分は、弁尖の基部と同様か、又は、わずかに大きく又は小さくあることができ、これは、弁輪内半球状取付フレームが交連に柱を含むか否かに部分的に依存し、さらに、大動脈弁の異常の度合いに部分的に依存する。弁輪内半球状取付フレームは、様々な寸法及び実施形態で作成されることができ、大動脈弁の弁尖の正しい接合を提供する。弁輪内半球状取付フレームの周囲長さは、疾患した大動脈弁の形状の必要な交替に依って様々な寸法を有することができる。
図5に示される弁輪内半球状取付フレームの実施形態の平面図である
図13に示されるように、弁輪内半球状取付フレームは、上から見ると一般的に円形状であるとされるが、フレームは、円形状の配置から少々ずれていてもよく、例えば、縁が波状構造のようであってもよい。これらのずれにもかかわらず、円柱として規定された寸法のタイプが弁輪内半球状取付フレームについて使われる。
【0047】
ほとんどの場合、弁輪内半球状取付フレームの直径は、約16〜約30mmであり、その範囲内で様々な異なるサイズであることができ、患者のニーズよって選択することができる。大動脈基部瘤又はマルファン症候群を患う患者に本発明を利用するために、大きなサイズの弁輪内半球状取付フレームを作成することもできる。さらに、屈曲部の基部から交連点にかけて計測される弁輪内半球状取付フレームの高さは異なることができ、しばしば修復された弁の算出される半径に等しくなる。従って、
図5の弁輪内半球状取付フレームを用いた
図4に示される実施形態では、屈曲部の基部から柱の先端までの寸法は、約8〜約15mm(しかしこの範囲内に限られない)である。交連点にある柱は、弁輪内半球状取付フレームの長手方向平面に垂直であり、そして、さらなる実施形態においては、弁輪内半球状取付フレームの内側領域に向かって曲げられ、又は、弁輪内半球状取付フレームの内側領域から外側に向かって曲げられることができる。柱の異なる形状や配置、及び屈曲部の形状は、異なる解剖学的バリエーションの説明に用いられることができる。多くの実施形態においては、ほとんどの弁が等しいサイズの3つの弁尖を有するように屈曲部も互いにほぼ対称であるものの、さらなる実施形態においては、非対称な洞を持つ患者もいることから弁輪内半球状取付フレームを非対称な設計で作成することも可能である。このようなバリエーションは、1つの屈曲部の大きさが他の2つの屈曲部よりも20%大きい弁輪内半球状取付フレームや、1つの屈曲部が他の2つの屈曲部よりも20%小さい弁輪内半球状取付フレームを含む。さらに、弁輪内半球状取付フレームを、2つの弁尖のみが存在するような2つの屈曲部と2つの相互接続点を有するように作成することも可能である。また、さらなる実施形態においては、フレームにゴアテックス(登録商標)コーティングを施したり、種々の異なる重合体を用いてフレーム表面をコーティングしたりすることができる。
【0048】
一般的に、大動脈内の弁輪内半球状取付フレームの位置は、適切な接合のために大動脈壁の屈曲及び大動脈弁の弁尖の両方と対応する必要があるので、弁輪内半球状取付フレームの屈曲部は少なくとも2つの平面内で屈曲することができる。
【0049】
弁輪内半球状取付フレームは、金属、プラスチック、熱可塑性物質、重合体、樹脂、又その他にも大きく拡大した大動脈基部により強い張力が生じた際にも不変に保たれる物質から構成される。好ましくは弁輪内半球状取付フレームは金属ワイヤーや固いプラスチックで構成され、そして最も好ましくは移植された際により良い構造を提供するために穿孔処理された金属又はプラスチックのストリップで構成される。穿孔処理は設置方法により異なるものの好ましくは輪状領域においてほぼ一様であり、縫合のための穿孔の規定の数及び配置が作られて弁輪内半球状取付フレーム上にマークされる。
【0050】
さらなる実施形態においては、弁輪内半球状取付フレームは、ダクロン(登録商標)布という名前で販売されるポリエチレンテレフタラートを含む、しかしこれに限定されるものではない、種々の重合体又は重合体樹脂でカバーされることができる。ダクロン(登録商標)布は一般的に僧帽弁修復に用いられる僧帽輪とともに用いられる。あるいは、弁輪内半球状取付フレームはグルタルアルデヒドで固定されたウシ心膜を用いてカバーされることもでき、これは布でカバーした際には左心室の流路内で血流の速度が大きくなり溶血の原因となる可能性があることから有用である。
【0051】
一般的に、新規の弁輪内半球状取付フレームは、かなり拡大した大動脈基部でさえも修復し、そして大動脈基部の3次元的形状を持続的にステントして支持してさらなる拡大又はそれ以後の遅発性不全を生じさせないようにする。相互接続点から伸びる柱を有する弁輪内半球状取付フレームの実施形態に関して、柱の長さは一般的に大動脈弁の半径の約70〜約130%であり通常は弁の半径とほぼ等しい長さである。より詳細には、弁輪内半球状取付フレームは、コンピテンシーのある大動脈弁の半径に近づけることができ、従って疾患した大動脈弁のサイズを拡大又は減小して弁のコンピテンシーを修復する。弁輪内半球状取付フレームのサイズを合わせるにあたって、弁尖の上部周囲が計測されその後3倍されて大動脈弁全体の周囲が取得される。最も好ましくは、この大動脈弁全体の周囲から約2〜約8mmが差し引かれて弁輪内半球状取付フレームの周囲が決められる。約2〜約8mmを差し引くことは、弁尖毎に約0.67〜約2.33mm、及び、弁の直径を約0.67〜約2.33mmサイズダウンしてフレームを小さくし、弁の再設定(reorientation)を可能にしてより大きな接合の弁尖領域及びより大きな弁のコンピテンシーを供給する。この状況では、弁尖の交連面を柱を用いて弁輪内半球状取付フレームの実施形態に縫合することにより、交連間の面積の大部分を除去することができる。一般的に、弁輪内半球状取付フレームは、自己弁輪の直径を約16〜約27mm、及び、多くの患者において好ましくは約18〜約25mmに再設定するものの、大動脈弁の直径を約18mm以下に再設定することは収縮期の較差を防止するために通常は避けられる。さらに、弁輪内半球状取付フレームは脱出性弁のコンピテンシーを修復するために用いられ、疾患した弁尖が持ち上げられてフレーム内の輪状構造の空間的配置を調整することで大動脈壁内で適切な配置に修複される。
【0052】
弁輪内半球状取付フレームの多くの利点の一つは、必要とされるフレームのサイズを手術前に決める余裕がある点である。患者の大動脈弁尖自由端の寸法の決定には、核磁気共鳴イメージング法(MRI)などのイメージング法を非侵襲的に用いることができる。より詳細には、各交連の高さは弁輪半径におおよそ同等であるとともに、一方の弁輪交連から他方の弁輪交連までの大動脈弁尖の寸法は望ましい弁輪周囲の3分の1に等しくあるべきであり、そしてまた弁輪直径にほぼ等しくあるべきである。そのようにして、弁輪内半球状取付フレームのサイズの決定においては、患者の大動脈弁の弁尖の上部周囲を、MRI、心エコー法、又はその他の技法を用いて計測し、計測された弁尖の上部周囲3倍して疾患した大動脈弁の望ましい弁輪周囲を取得し、そしてその後、コンピテンシーを供給するために全体の周囲をフレームとともに小さくすることでなされる。典型的に、フレームの周囲には弁尖の長さから算出される周囲よりも約2〜約8mm小さい周囲が選択される。これにより、直径へと変換可能な周囲が提供され種々の異なるサイズを有する弁輪内半球状取付フレームが編成される。
【0053】
さらなる実施形態においては、MRI機械及び関連制御を含むイメージング装置は、患者の大動脈弁の寸法を自動的に採取して患者の大動脈弁のコンピテンシーを修復するために要求される適切なサイズ合わせがされた弁輪内半球状取付フレームを出力する、システムパラメータ及び半球のモデルの数学的記述を含むことができる。さらなるデータ出力は、コンピテンシーを修復するため及び移植に際してそれぞれの異なるフレームが作る弁輪直径の減小のために用いられる、異なるサイズを有する弁輪内半球状取付フレームの表示を含む。
【0054】
図11を参照すると、縫合材の配置を2次元で表示するために開かれた弁輪内半球状取付フレーム10が大動脈弁18と共に示されている。弁輪内半球状取付フレーム10は縫合材42を通過させるための穿孔40を屈曲部12及び柱16に有する。縫合材42は平面状のマットレス縫合材であることができ、大動脈弁輪20のすぐ下にある大動脈壁内に通すことができる。好ましい配置においては、縫合材42は大動脈壁内深部を通って弁尖22の下を通過して、弁輪内半球状取付フレーム10を弁尖22及び交連26とぴたりと一致させるように大動脈弁輪18内に直接挿入させることを可能にする。任意的に、3つの平面状のマットレス縫合材を弁尖22毎に、及び、1つの平面状のマットレス縫合材を交連26毎に用いることができ、合計で12個の縫合材を用いて弁輪内半球状取付フレーム10を移植することができる。明らかに、上記よりも少ない又は多い縫合材及びその他の周知の付着法を、大動脈弁輪18内に弁輪内半球状取付フレーム10を配置させる又は取り付けるために用いることができる。大動脈組織の可能な断裂を防ぐために、弁18の上側にマットレス縫合材の上に配置されるプレジェット44を配置させることができる。プレジェット44はテフロン(登録商標)フェルト製のプレジェットでも良く、又は図示されていない他の実施形態においては、プレジェットよりも布の片又はストリップをマットレス縫合材とともに用いても良い。好ましくはプレジェット44は大動脈リーフレットの動きを邪魔しないように小さくても良い。
【0055】
図12を参照すると、弁輪内半球状取付フレーム10を取り付けるための代替の実施形態が示されている。支持弓46は弁輪の上に用いられることができその中に縫合材を挿入することができる。支持弓46は3つの屈曲部を備えることができ、それらの形状は屈曲部と弁尖の大動脈壁への取り付けの形状と交連とに一致する弁輪内半球状取付フレームとほぼ同様であり、その結果、大動脈弁輪は弁輪内半球状取付フレーム10及び支持弓46の間に「挟みこまれる」。縫合材は、弁輪内半球状取付フレームの穿孔を通って大動脈壁を貫通し、弁尖の上側の支持弓へと伸びさらに支持弓の穿孔を通って取り付けを行う。さらなる実施形態においては、縫合材は支持弓の周りに広がることができ、又は周知の他の方法で取り付けを行うことができる。
【0056】
新規の弁輪内半球状取付フレームとサイズ合わせ及び弁輪内半球状取付フレームの移植に関連する方法とが議論されてきたが、本発明は他の病状にも適用可能である。大動脈基部瘤においては、弁輪形成フレームによりリーフレットを残す基部置換を完全に大動脈内で行うことができ、現行の手術工程のように広範囲に渡る外側の切開の必要がなくなる。穿孔のないダクロン(登録商標)グラフトは、グラフトの基部面においてホタテ貝の縁や炎のように波打った形状にされた後バルサルバ洞と一致させるために弁輪内半球状取付フレームと共に使われる。グラフトのサイズは弁輪内半球状取付フレームのサイズと適合させるために選択され、遠位大動脈の直径もさらに考慮に加えられる。
【0057】
冠動脈はその後、グラフトの側面に、ボタンのように又は封入技術によって吻合される。この単純な方法を用いて大動脈弁輪のサイズや形状が決められ、自己大動脈弁が修復されて保存されて、そして基部動脈瘤の疾患においては基部全体及び上方大動脈が置換されるが、この場合現行の技法よりも切開が少なく困難性も低い。
【0058】
その他の病状へのアプローチも可能である。超音波デブリードメントは、カルシウムの骨片を除去するために付属的に使われ、そしてリーフレットが部分的に切除されてグルタルアルデヒド固定自家心膜と置換される。このコンセプトもまた大動脈弁単弁尖置換の問題を生じさせる。再配置することによって基部の形状を修復する方法により、及び、可能性的に基部のサイズをわずかに縮小させることにより、フレーム弁輪形成を用いてわずかな欠陥を補って、より複雑な修復に着手することが可能となる。例えば、もし一つの弁尖がひどく疾患していたり逸脱していたりした場合、グルタルアルデヒドで固定されたウシ心膜尖(フレーム及び自己弁尖のサイズに合うような適切なサイズと形状を有するもの)でその弁尖を置換することができる。人工弁尖は弁輪形成フレームの上側にある弓に取り付けられることができ、この際フレームは弓と人工リーフレットを取り付ける役割を担う。あるいは、フレームは一つの洞に一つの心膜尖を取り付けた状態で製造されることができる。患者の他方の弁の組織を用いることで、3分の2が自己組織であるような完全にコンピテントな弁の形成が成される。心膜の組織は石灰化を防止する現代技術を用いて扱われるが、もし人工リーフレットが手術後に動かなくなった場合でも、人工リーフレットは他のリーフレットのための接合整流装置として機能し、これは全異種グラフト置換においても生じ得るのでおそらくさらなる手術は必要とされない。
【0059】
弁輪内半球状取付フレームは、大動脈弁修復で用いられる他の装置と比較するとユニークであり、弁輪内半球状取付フレームは大動脈弁の3次元的な性質を考慮して設計されることで、弁のコンピテンシーを提供するために必要な配置にするために弁尖及び交連に適切な解剖学的形状を与える。弁輪内半球状取付フレームは、患者の自己弁内の弁輪に直接取り付けられて弁尖の形状を正常な状態に戻す。弁輪内半球状取付フレームの相互接続点の使用を通して、そして好ましくは細い柱(相互接続点)を含むことを通して、弁輪の交連面は、正常な弁尖の形状及び接合を与えるために適切な高さ及び配置まで持ち上げられる。
【0060】
従って、本発明の実施により、従来認知されていなかった特徴を有する正常な弁の形状を修復するための装置が開示された。さらに、本発明は正常な弁の形状の修復のための弁輪内半球状取付フレームの適切なサイズ合わせ及び複数の移植方法を含む。
【0061】
引用した本出願に係る全ての特許及び発行物の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
上記の明細書の記載は当業者による本発明の実施を可能にすることを意図する。明細書の記載を読む上で当業者にとって自明である、可能な変更及び修正の全てを詳細に記すことは意図されていない。しかしながら、そのような修正及び変更の全てが、次の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内に含まれることが意図される。逆の意味であることが特に示されない限り、特許請求の範囲は、本発明で意図される目的を満たすことのできるいずれの取り合わせ又は順序の中の、示される構成要素及び段階をカバーすることが意図される。