(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内周側に嵌合凹部を形成する環状の外周壁を有する樹脂製のリセプタクルインシュレータ、リセ側回路基板の回路パターンに対して実装可能でありかつ上記リセプタクルインシュレータに支持した複数のリセプタクルコンタクト、及び上記リセ側回路基板に実装可能でありかつ上記リセプタクルインシュレータに固定した固定部を有するリセ側固定金具、を具備し、
上記嵌合凹部にプラグコネクタのプラグインシュレータの嵌合凸部を嵌合したときに、プラグ側回路基板の回路パターンに実装可能でありかつ該プラグインシュレータに支持した複数のプラグコンタクトが上記リセプタクルコンタクトと接触し、かつ、上記プラグコネクタが上記リセ側固定金具に接触するリセプタクルコネクタの製造方法であって、
成形型によって、上記リセ側固定金具の弾性接触片を外周側に弾性変形させるステップ、
上記外周壁の内周側の表面の形状を上記弾性接触片によって規定しながら、インサート成形により上記リセ側固定金具の上記固定部と上記リセプタクルインシュレータを一体化するステップ、及び
上記成形型を上記リセプタクルインシュレータ及び上記リセ側固定金具から分離して上記弾性接触片を自由状態に復帰させることにより、該弾性接触片を上記外周壁の内周側の表面から内周側に離間させるステップ、
を有することを特徴とするリセプタクルコネクタの製造方法。
【背景技術】
【0002】
デスクトップ型PC(パーソナルコンピュータ)、ノート型PC、スマートフォン等の携帯端末、或いは、タブレット型PC等の電子機器や電気機器は一般的に、電子部品を実装した回路基板と、別の電子部品を実装した別の回路基板を内蔵している。
【0003】
特許文献1、2のコネクタは、これら二つの回路基板どうしを接続するためのコネクタであり、回路基板(リジッド基板)に実装したリセプタクルコネクタと、別の回路基板(リジッド基板)に実装したプラグコネクタと、を具備している。
これらのリセプタクルコネクタは、リセプタクルインシュレータと、複数のリセプタクルコンタクトと、一対のリセ側固定金具と、を備えている。リセプタクルインシュレータは、環状の外周壁と、外周壁の内側に形成した嵌合凹部と、を備えている。複数のリセプタクルコンタクトはリセプタクルコネクタの長手方向に並んだ状態でリセプタクルインシュレータに支持させてある。一対のリセ側固定金具は、リセプタクルインシュレータに形成した取付孔に対して圧入することによりリセプタクルインシュレータに固定してある。またリセ側固定金具は、弾性変形可能な弾性接触片を備えている。各リセプタクルコンタクトは回路基板の実装面に形成した回路パターンに実装可能であり、リセ側固定金具は当該実装面に形成した接地パターンに実装可能である。
【0004】
一方、プラグコネクタは、プラグインシュレータと、複数のプラグコンタクトと、一対のプラグ側固定金具と、を備えている。プラグインシュレータは、上記嵌合凹部に嵌合可能な環状の嵌合凸部を備えている。各プラグコンタクトは回路基板の実装面の回路パターンに実装可能であり、プラグ側固定金具は当該実装面に形成した接地パターンに実装可能である。
【0005】
リセプタクルコネクタの嵌合凹部に対してプラグコネクタの嵌合凸部を嵌合(接続)すると、各プラグコンタクトが各リセプタクルコンタクトに対してそれぞれ接触するので、リセプタクルコネクタ側の回路基板に実装した電子部品とプラグコネクタ側の回路基板に実装した電子部品が互いに電気的に導通する。
【0006】
リセプタクルコネクタとプラグコネクタを接続すると、リセ側固定金具の弾性接触片に対してプラグ側固定金具が接触し、リセ側固定金具とプラグ側固定金具が強固に係合するので、リセプタクルコネクタとプラグコネクタの嵌合状態が確実に保持される。またリセ側固定金具の弾性接触片に対してプラグ側固定金具が接触したときに、作業者はクリック感を感じることができる。
【0007】
さらに、リセ側固定金具が弾性接触片を備えているので、リセプタクルコネクタとプラグコネクタを接続した後に両者を分離し、その後に再度リセプタクルコネクタとプラグコネクタを接続した場合においても、リセ側固定金具とプラグ側固定金具は互いに強固に係合する。
なお、リセ側固定金具及びプラグ側固定金具が弾性接触片を備えていない場合は、リセプタクルコネクタとプラグコネクタを1回接続するだけで、リセ側固定金具及び(又は)プラグ側固定金具が傷ついたり破損する可能性が高くなる。仮にリセ側固定金具及び(又は)プラグ側固定金具が傷ついたり破損すると、リセプタクルコネクタとプラグコネクタを接続した後に両者を分離しその後に再度リセプタクルコネクタとプラグコネクタを接続したときのリセ側固定金具とプラグ側固定金具の係合力が低下するので、リセプタクルコネクタとプラグコネクタの嵌合状態の保持力が低下したり、作業者がクリック感を感じられなくなるおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印方向を基準としている。
本実施形態のコネクタ10は、プラグコネクタ15とリセプタクルコネクタ35を具備している。
【0019】
まずはプラグコネクタ15の詳しい構造について主に
図4、
図5を参照しながら説明する。
プラグコネクタ15は大きな構成要素としてプラグインシュレータ16と、多数のプラグコンタクト25と、二つのプラグ側固定金具28と、を具備している。このプラグコネクタ15は、図示を省略したプラグ用成形型を利用したインサート成形により全体を一体化したものである。
プラグインシュレータ16は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂料からなる左右方向に延びる板状部材である。プラグインシュレータ16は、上端部を構成する天井板部17と、天井板部17の下面の周縁部全体から下方に突出する環状壁からなる嵌合凸部18と、を具備している。天井板部17と嵌合凸部18によって形成された空間は係合凹部19を構成している。嵌合凸部18の前壁及び後壁には、前後両面及び下面に跨る断面略U字形のコンタクト取付溝21が左右方向に並べて多数凹設してある(
図5参照)。さらに嵌合凸部18の左右両側部の表面には金具取付用凹部22がそれぞれ凹設してある(
図5参照)。
【0020】
各プラグコンタクト25は、ばね弾性を備えた銅合金(例えばリン青銅、ベリリウム銅、チタン銅、コルソン銅)の薄板を図示形状となるようにスタンピング成形したものであり、表面には金や錫などによってメッキを施してある。プラグコンタクト25は、断面略U字形をなす本体部の内側部分を構成する上下方向に延びる接触片26と、本体部の外側部分の上端から略水平に延びるテール片27と、を有している。プラグコンタクト25はテール片27を除く部分がコンタクト取付溝21に埋設している。
【0021】
各プラグ側固定金具28は金属板を図示形状にスタンピング成形したものであり、その表面には金や錫などによってメッキが施してある。
プラグ側固定金具28は、上下方向に対して直交する平板状の基片29と、基片29の周縁部から上方に突出する端部固定片30と、基片29の周縁部から上方に突出する一対の接触片31Aと、接触片31Aから上方に突出するテール片31Bと、各接触片31Aの表面に突設した係止突起32と、を具備している。端部固定片30と基片29の接続部はR面30aにより構成してあり、一対の接触片31Aと基片29の接続部はR面31aにより構成してある。さらに端部固定片30がその上端部に一対の抜け止め突起30bを具備しているので、プラグコネクタ15とリセプタクルコネクタ35の着脱作業を繰り返しても端部固定片30がプラグインシュレータ16から(下方向に)脱落するおそれは小さい。さらに基片29のR面30aと反対側の縁部にもR面29aが形成してある。各プラグ側固定金具28のテール片31Bの上端部は天井板部17の上端面より僅かに上方に突出している。
【0022】
以上構造のプラグコネクタ15は回路基板34(リジッド基板。プラグ側回路基板。
図1参照)の一方の面に形成した実装面に実装する。具体的には、各プラグコンタクト25のテール片27を回路基板34の実装面(下面)に形成された回路パターン(図示略)に対してはんだ付けし、かつ、各プラグ側固定金具28のテール片31Bを当該実装面に形成された接地パターン(図示略)に対してはんだ付けする(所謂ストレート(ST)接続)。回路基板34の実装面にはプラグコネクタ15とは別の電子部品(例えば高機能用モジュールや半導体、大容量メモリ等)が実装してある。
【0023】
続いてリセプタクルコネクタ35の詳しい構造について主に
図1、
図2、
図6−
図13を参照しながら説明する。
リセプタクルコネクタ35は大きな構成要素として一対のリセ側固定金具37と、リセプタクルインシュレータ50と、多数のリセプタクルコンタクト60と、を具備している。
【0024】
左右一対のリセ側固定金具37は前後対称な形状である。各リセ側固定金具37は金属板をプレス成形したものであり、その表面には金や錫などによってメッキが施してある。リセ側固定金具37は、前後方向に延びる短手側固定部38と、短手側固定部38の両端部から左右方向に延びる長手側固定部39と、短手側固定部38及び長手側固定部39の外周縁部からそれぞれ略下向きに延びる短手側テール片40及び長手側テール片41と、短手側固定部38及び長手側固定部39の内周縁部からそれぞれ略下向きに延びる固定突片42及び弾性接触片43と、を具備している。弾性接触片43の断面形状は矩形であり(
図13参照)、弾性接触片43の内面には係止凹部44が凹設してある。また固定突片42の短手側固定部38側の端部はR面42aにより構成してあり、一対の弾性接触片43の長手側固定部39側の端部はR面43aにより構成してある。
【0025】
リセプタクルインシュレータ50は、共に金属製の上型UM(成形型)と下型DM(成形型)(
図12参照)を利用したインサート成形により一対のリセ側固定金具37と一体化したものである。
上型UMの下面は平面により構成してあり、当該下面の左右両端近傍には前後一対の金具対応凹部UM1が凹設してある(さらに後述する外周壁52、係合凸部53、嵌合凹部54、コンタクト取付溝56、変形許容溝57等に対応した形状の凹凸が形成してある)。下型DMの上面は平面により構成してあり、当該上面の左右両端近傍には前後一対の金具対応凹部DM1が凹設してある(さらに後述する底板部51、外周壁52、コンタクト取付溝56、変形許容溝57等に対応した形状の凹凸が形成してある)。
リセ側固定金具37とリセプタクルインシュレータ50を
インサート成形する際は、まず各キャリア(不図示)に連結されたリセ側固定金具37の長手側テール片41の下端部を金具対応凹部DM1に嵌合(
図12の下型DMの後半部を参照)させながら、下型DMの上面に一対のリセ側固定金具37を載せ、次いで下型DMの上方に位置する上型UMを下降させて、上型UMの下面を下型DMの上面に接触させる(型締めする)。すると上型UMの各金具対応凹部UM1が自由状態にあるリセ側固定金具37の対応する長手側固定部39、長手側テール片41、及び弾性接触片43に対して上方から嵌合し、各弾性接触片43を対向する長手側テール片41側に弾性変形させる(
図12の上型UMの後半部を参照)。
そしてこの状態で上型UMと下型DMの間に形成された成形空間に絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂材料(リセプタクルインシュレータ50の構成材料)を射出注入し、該成形空間内で当該合成樹脂材料を硬化させる。当該合成樹脂材料が硬化した後に下型DMと上型UMを型開きし(
図12の上型UM及び下型DMの前半部を参照)、さらにリセ側固定金具37を上記キャリアから切断すれば(後述するリセプタクルコンタクト60のリセプタクルインシュレータ50に対する圧入作業後に切断を行っても良い)、一対のリセ側固定金具37とリセプタクルインシュレータ50の一体物が現れる。
【0026】
完成したリセプタクルインシュレータ50は
図6−
図12等に示した左右方向に延びる部材である。リセプタクルインシュレータ50は、下部を構成する底板部51と、底板部51の上面の周縁部全体から上方に突出する平面視矩形の環状壁からなる外周壁52と、底板部51の上面から上方に突出する係合凸部53と、を具備している。外周壁52は、左右一対の短手構成部52aと、左右の短手構成部52aの前後両端同士を接続する前後一対の長手構成部52bと、を備えている。短手構成部52aの内面には前後一対の接触凸部52a1が突設してある。外周壁52から内周側に離間する係合凸部53は左右方向に直線的に延びており、その左右両端の上端部はR面53aにより構成してある。さらに係合凸部53の左右両端面は、下方に向かうにつれて対向する短手構成部52a側に延びる傾斜案内面53bにより構成してある。外周壁52と係合凸部53の間に形成された空間は環状の嵌合凹部54を構成している。
外周壁52の左右両端部の表面には、リセ側固定金具37の短手側固定部38(固定部)、長手側固定部39(固定部)、短手側テール片40(固定部)、長手側テール片41(固定部)、及び固定突片42(固定部)が埋設した金具固定溝55が凹設される(短手側固定部38は短手構成部52aに固定され、長手側固定部39は長手構成部52bに固定され、固定突片42は外周壁52の内周面に固定される)。さらに前後の長手構成部52bの左右両端部の内周面には、弾性接触片43と対応した形状(断面矩形。
図13参照)をなしかつ金具固定溝55と連続する収納溝55aが凹設してある。下型DMと上型UMが閉じているときは(型開きする前は)、
図12の後半部、
図13に示すように、各弾性接触片43全体が収納溝55a内に位置しており(弾性接触片43の収納溝55aとの対向面全体が収納溝55aの内面に接触しており)、各弾性接触片43の内面は外周壁52の内周面と滑らかに連続している。しかし下型DMと上型UMを型開きすると、各リセ側固定金具37の弾性接触片43が自由状態に弾性復帰して弾性接触片43が収納溝55aの内面から内周側に円滑に剥離するので、
図11及び
図12の前半部に示すように、各弾性接触片43の一部は収納溝55a内に留まりかつ各弾性接触片43の内面が外周壁52の内周面から内周側に僅かに突出して離間する。さらにリセ側固定金具37の短手側テール片40及び長手側テール片41の下端部はリセプタクルインシュレータ50の下面より僅かに下方に突出する。
外周壁52の前後の長手構成部52bの左右両端部を除く部分は前壁52cと後壁52dにより構成してある。前壁52cの後面及び後壁52dの前面には上下方向に延びるコンタクト取付溝56が、左右方向に並べて多数(プラグコンタクト25と同数)凹設してある。さらに係合凸部53の直前に位置する底板部51の底面と係合凸部53の前面とに跨る部分には、対応する前壁52cのコンタクト取付溝56と連続する変形許容溝57が
設けてあり、同様に、係合凸部53の直後に位置する底板部51の底面と係合凸部53の後面とに跨る部分には、対応する後壁52dのコンタクト取付溝56と連続する変形許容溝57が
設けてある(
図6、
図7、
図10参照)。
【0027】
各リセプタクルコンタクト60はプラグコンタクト25と同様の要領によって成形したものであり、略水平なテール片61と、テール片61の内側端部から上方に延びる固定片62と、固定片62の上端部に連続する略S字形の弾性接触片63と、を具備している。
各リセプタクルコンタクト60は、リセ側固定金具37と一体化したリセプタクルインシュレータ50の下方から各コンタクト取付溝56及び各変形許容溝57に対して挿入し、固定片62をコンタクト取付溝56に対して圧入(固定)することにより、リセ側固定金具37と一体化したリセプタクルインシュレータ50に取り付けてある。リセプタクルコンタクト60(固定片62)をリセプタクルインシュレータ50(コンタクト取付溝56)に固定すると、弾性接触片63が変形許容溝57の内面から離間するので、弾性接触片63は変形許容溝57内において弾性変形可能である(
図10、
図14参照)。さらに各リセプタクルコンタクト60のテール片61が、底板部51の下面の下方に位置する(
図10、
図14参照)。
【0028】
以上構造のリセプタクルコネクタ35は、回路基板34と平行(略平行も含む)な板材である回路基板70(リジッド基板。リセ側回路基板)の実装面に形成された回路パターン(図示略)に対して各リセプタクルコンタクト60のテール片61をはんだ付けし、さらに当該実装面に形成された接地パターンに対して各リセ側固定金具37の短手側テール片40及び長手側テール片41の下端部をはんだ付けすることにより、回路基板70に対して固定(実装)する(
図1参照)(所謂ストレート(ST)接続)。回路基板70の実装面にはリセプタクルコネクタ35とは別の電子部品(例えば、CPU、コントローラー、メモリ等)が実装してある。
【0029】
以上構成のプラグコネクタ15とリセプタクルコネクタ35は以下の要領で接続する。
まずは
図1、
図2に示すように、プラグコネクタ15とリセプタクルコネクタ35を互いの前後位置及び左右位置を一致させながら上下方向に対向させる。そしてプラグコネクタ15を下方に移動させて嵌合凸部18を嵌合凹部54に嵌合し、係合凹部19を係合凸部53に嵌合する(
図3、
図14、
図15参照)。すると各プラグコンタクト25の接触片26が対応するリセプタクルコンタクト60の弾性接触片63を弾性変形させながら弾性接触片63に対してそれぞれ接触するので、プラグコンタクト25及びリセプタクルコンタクト60を介して回路基板34と回路基板70が電気的に導通可能になる。
【0030】
さらに、左右のプラグ側固定金具28の端部固定片30の前後の抜け止め突起30bが短手構成部52aの前後の接触凸部52a1に対して接触する(
固定突片42とプラグ側固定金具28は離間する)と共に各接触片31Aが対応する弾性接触片43を長手側テール片41側(外周側)に弾性変形させながら対応する弾性接触片43に対して接触し、かつ、各係止突起32が対応する係止凹部44に嵌合する(
図15参照)。
また、プラグコネクタ15のプラグ側固定金具28がR面29a、R面30a、及び一対のR面31aを有する一方で、リセプタクルコネクタ35が係合凸部53のR面53a及び傾斜案内面53b並びにリセ側固定金具37のR面42a及び一対のR面43aを有している。そのため、リセプタクルコネクタ35にプラグコネクタ15を嵌合する際に、プラグコネクタ15のR面29a、R面30a、及びR面31aをリセプタクルコネクタ35のR面53a(及び傾斜案内面53b)、R面42a、及びR面43aにそれぞれ接触させると、R面29aとR面53a(及び傾斜案内面53b)、R面30aとR面42a、及び、R面31aとR面43aが互いに案内作用を発揮する。さらにプラグコネクタ15の端部固定片30の前後の抜け止め突起30bが、樹脂製の接触凸部52a1に接触(摺接)する。そのため、プラグコネクタ15をリセプタクルコネクタ35に対して円滑に嵌合挿入することが可能である。
【0031】
そして本実施形態のリセプタクルコネクタ35は、インサート成形によりリセ側固定金具37とリセプタクルインシュレータ50を一体化しているので、コネクタ10(リセプタクルコネクタ35)が小型化した場合においてもリセプタクルインシュレータ50に対するリセ側固定金具37の固定強度を大きくすることが可能である。そのため、コネクタ10(リセプタクルコネクタ35)が小型化した場合においても、リセプタクルコネクタ35の回路基板70に対する剥離強度、及び、プラグ側固定金具28(
プラグコネクタ15)とリセ側固定金具37(リセプタクルコネクタ35)の間の嵌合保持力を高くすることが可能である。
さらに、リセ側固定金具37の弾性接触片43は自由状態において外周壁52の収納溝55aの表面(外周壁52の内周側の表面)から内周側に離間しており、その板厚方向に弾性変形可能となっている。そのため、リセプタクルコネクタ35とプラグコネクタ15を接続した後に両者を分離しその後に再度リセプタクルコネクタ35とプラグコネクタ15を接続した場合においても、リセ側固定金具37とプラグ側固定金具28を強固に係合させることが可能である。
【0032】
さらに本実施形態のリセプタクルコネクタ35は、上型UM(の金具対応凹部UM1)によってリセ側固定金具37の弾性接触片43を外周側に弾性変形させた状態でインサート成形を行うことにより、長手構成部52bの左右両端部の内周側の表面の形状を弾性接触片43(の長手側テール片41との対向面)によって規定しながら外周壁52を成形している。そしてインサート成形後に上型UMをリセプタクルインシュレータ50(嵌合凹部54)から引き抜いて弾性接触片43を自由状態に復帰させることにより、弾性接触片43を(硬化した)外周壁52の収納溝55aの表面(外周壁52の内周側の表面)から内周側に離間させている。
このように長手構成部52bの左右両端部の内周側の表面の形状を弾性接触片43(の長手側テール片41との対向面)によって規定しているので、リセプタクルインシュレータ50(の底板部51)に
(リセ側固定金具37の直下に位置する)貫通孔を設ける必要がなくなる。即ち、外周壁52の長手構成部52bの左右両端部の内周側の表面(収納溝55aの表面)の形状を弾性接触片43によって規定しない場合は、
図16に示すように下型DMとは別タイプの下型を用いる必要がある。この下型の上面には前後一対の突起が上向きに突設してあり、インサート成形時には一対の突起を前後の弾性接触片43の長手側テール片41との対向面に接触させ(当該突起と
上型との間で弾性接触片43を前後から挟み込み)かつ長手側テール片41と突起の間に隙間を形成する。この状態でインサート成形を行えば、リセプタクルインシュレータ50を構成する合成樹脂材料が長手側テール片41と突起の間に流れ込むので、
図16に示すように長手側テール片41と突起の間に外周壁が形成されることになる。しかしこの製造方法では、リセプタクルインシュレータが硬化したときに、上記下型の上記突起によってリセプタクルインシュレータの底板部に
(リセ側固定金具37の直下に位置する)貫通孔が形成されてしまう(
図16参照)。
しかし、仮にリセプタクルインシュレータの底板部に貫通孔が形成されると、リセ側固定金具37の弾性接触片43と回路基板70とを絶縁するのが難しくなる。また外周壁(の弾性接触片43と対向する部位)が本実施形態の外周壁52(の弾性接触片43と対向する部位)より薄肉になるので、リセプタクルインシュレータの機械的強度が低下し、さらに
外周壁(の弾性接触片43と対向する部位)によるリセ側固定金具37の支持強度が低下してしまう。さらに外周壁(の弾性接触片43と対向する部位)が薄肉になると、当該部分を構成する合成樹脂材料の流動性が低下するので、当該部分の形状を高精度に成形するのが難しくなる。
これに対して本実施形態のリセプタクルコネクタ35の製造方法では、これらの不都合が生じるおそれがない。
【0033】
さらにリセプタクルコネクタ35のリセ側固定金具37の平面形状が略コ字形なので、直線形状のもの(例えば短手側固定部38及び短手側テール片40に相当する部位のみを有する形状)と比べて、リセプタクルインシュレータ50に対するリセ側固定金具37の固定強度が大きい。さらにリセプタクルコネクタ35はR面53a、傾斜案内面53b、R面42a、及びR面43aを備えている。そのためコネクタ10(リセプタクルコネクタ35)を小型化した場合においても、リセ側固定金具37がリセプタクルインシュレータ50から剥離するおそれを小さくし、かつ、プラグコネクタ15とリセプタクルコネクタ35を様々な(平面視における)角度から円滑に嵌合挿入することが可能である。
さらにインサート成形によりリセプタクルインシュレータ50に対するリセ側固定金具37の固定強度
を大きくしているので、プラグコネクタ15とリセプタクルコネクタ35の嵌合時にリセプタクルインシュレータ50の両端部の変形や破損を防止できる。
【0034】
またプラグコネクタ15にプラグ側固定金具28を設けてこのプラグ側固定金具28をリセプタクルコネクタ35のリセ側固定金具37に接触させているので、プラグコネクタ15からプラグ側固定金具28を省略してプラグインシュレータ16をリセ側固定金具37に接触させる場合と比べて、リセ側固定金具37との接触によってプラグコネクタ15(プラグインシュレータ16)が破損したり変形するおそれが小さい。
さらにプラグ側固定金具28とリセ側固定金具37が互いに接続するので、プラグコネクタ15とリセプタクルコネクタ35を接続する際に、作業者の手等からプラグコネクタ15に流れた静電気をプラグ側固定金具28及びリセ側固定金具37を介して回路基板70の上記接地パターン側に意図的に流すことが可能である。そのためリセ側固定金具37に伝わった静電気が放電によってリセプタクルコンタクト60(及び回路基板70の上記回路パターン)に流れて、回路基板70(及び回路基板34)に接続した電子部品等が静電破壊するおそれは小さい。
また、プラグコネクタ15とリセプタクルコネクタ35を接続した後に、プラグ側固定金具28とリセ側固定金具37に接地のための電流を流すことが可能である。また、プラグ側固定金具28とリセ側固定金具37を回路基板34と回路基板70の回路パターンに実装すれば、プラグコネクタ15とリセプタクルコネクタ35を接続した後に、プラグ側固定金具28とリセ側固定金具37に電源等の数アンペア程度の電流を流すことが可能である。
さらに、プラグ側固定金具28の各接触片31Aが弾性接触片43に接触したときに弾性接触片43が弾性変形するため、プラグコネクタ15がリセプタクルコネクタ35内で微小に動いたとしても接触片31Aと弾性接触片43の接触状態は維持される。また、(リセプタクルインシュレータにリセ側固定金具を圧入するための取付孔等を形成する場合や、リセプタクルインシュレータの底板部に貫通孔を形成する場合に比べて)外周壁52の剛性が高くかつ長手側テール片41の剛性が高いので、リセプタクルインシュレータにリセ側固定金具を圧入するための取付孔等を形成したりリセプタクルインシュレータの底板部に貫通孔を形成する場合に比べて弾性接触片43の接圧の低下を抑制することができる。
【0035】
以上、本発明を上記各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば、リセ側固定金具37’、37’’、37’’’の弾性接触片43’、43’’、43’’’の断面形状を
図17−
図19に示す形状にしてもよい。これらの弾性接触片43’、43’’、43’’’は、インサート成形が完了した後に下型DMと上型UMを型開きすることにより、各リセ側固定金具37’、37’’、37’’’の弾性接触片43’、43’’、43’’’を自由状態に円滑に弾性復帰させ易い(弾性接触片43’、43’’、43’’’が収納溝55a’、55a’’、55a’’’の内面から円滑に剥離し易い)形状である。そのため、仮にリセプタクルインシュレータ50を構成する合成樹脂材料の粘性が多少高い場合であっても、弾性接触片43’、43’’、43’’’を自由状態に弾性復帰させ易い(弾性接触片43’、43’’、43’’’を収納溝55a’、55a’’、55a’’’の内面から剥離させ易い)。
さらにリセ側固定金具37、37’、37’’、37’’’のプレス成形時に弾性接触片43、43’、43’’、43’’’の左右両端面を粗く成形した後に、この左右両端面をシェービング加工によって平滑面(に近い状態)にしてもよい。このようにすればインサート成形が完了した後に下型DMと上型UMを型開きしたときに、弾性接触片43、43’、43’’、43’’’を自由状態に弾性復帰させ易くなる(弾性接触片43、43’、43’’、43’’’を収納溝55a、55a’、55a’’、55a’’’の内面から剥離させ易くなる)。
【0036】
また
図20に示す形状のリセ側固定金具
37’’’’を採用してもよい。
このリセ側固定金具
37’’’’は、自由状態において長手側固定部39の長手側テール片41と反対側の端部から斜め下方に延びる傾斜部45と、自由状態において傾斜部45の下端部から下向きに延びる垂下部46と、を備えており、垂下部46の表面に係止凹部44を形成している。
このリセ側固定金具
37’’’’を採用した場合も上記実施形態と同様の作用効果を発揮可能である。
【0037】
図21に示す変形例の成形型は、上型UMの形状を一部変更した上型UM’と、前後一対の中間型MMと、下型DMと、を備えるものである。上型UM’は、リセ側固定金具37の外周側に位置する部位が上型UMに比べて短い。
この成形型を利用してリセ側固定金具37とリセプタクルインシュレータ50の一体物をインサート成形する場合は、リセ側固定金具37の前後両側に配置した一対の中間型MMを互いに接近する方向に移動させて、各中間型MMを前後のリセ側固定金具37の外面に接触させながら、前後の中間型MMの上下両面を上型UM’と下型DMとで挟み込む。インサート成形が完了したら、上型UM’と下型DMを上下に移動させかつ前後の中間型MMをそれぞれ前後(離間方向)に移動させることにより型開きする。
この変形例によっても上記と同様のリセプタクルコネクタ35を製造することが可能である。
【0038】
またプラグコネクタ15からプラグ側固定金具28を省略してもよい。
またプラグコネクタ15とリセプタクルコネクタ35の一方を対応する回路基板に対して所謂ライトアングル(RA)態様で接続してもよい。
さらにリジッド基板以外の回路基板(例えば、FPC(フレキシブルプリント回路基板))をプラグコネクタ15やリセプタクルコネクタ35に接続してもよい。