(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881672
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】液晶パネルからの液晶抽出方法および液晶パネルの再利用方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20160225BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
G02F1/13 101
B09B5/00 CZAB
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-268767(P2013-268767)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-224972(P2014-224972A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2015年3月6日
(31)【優先権主張番号】102117220
(32)【優先日】2013年5月15日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】515062810
【氏名又は名称】凌暉科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】LWO TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 永俊
【審査官】
小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−139956(JP,A)
【文献】
特開2006−198493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2枚の基板の間に液晶を封入した液晶パネルから該液晶を抽出する方法であって、
(a)前記液晶パネルを、再利用に供する保留領域と、切除する切除領域とに区分けした後、前記液晶パネルにおける前記2枚の基板のいずれか一方の前記切除領域内の前記保留領域近くに該一方の基板をその厚み方向に沿って貫通する第1の貫通孔を設ける工程と、
(b)前記液晶を液化させて前記第1の貫通孔から抽出する工程と、
を含む液晶パネルからの液晶抽出方法により液晶パネルから液晶を抽出する工程と、
(B)前記液晶パネルを前記保留領域と前記切除領域とが切り分けられるように切断し、前記液晶パネルの前記保留領域側の切断面における前記2枚の基板の間の隙間の開口を露出させる工程と、
(C)前記切断面に露出する前記開口から前記2枚の基板の間に液晶を注入する工程と、
(D)注入した前記液晶が流出しないように前記開口を封止する工程と、
を含むことを特徴とする液晶パネルの再利用方法。
【請求項2】
前記工程(D)においては、前記切断面の全体と、前記液晶パネルの前記保留領域における表面および背面の一部であり該切断面からそれぞれ繋がる切断面両側部とを封止材により覆うように前記開口を封止する
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶パネルの再利用方法。
【請求項3】
前記工程(C)においては、前記工程(A)において抽出した液晶と異なる種類の液晶を注入する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶パネルの再利用方法。
【請求項4】
前記工程(C)においては、前記工程(A)において抽出した液晶と同じ種類の液晶を注入する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶パネルの再利用方法。
【請求項5】
前記工程(C)における注入液晶として、前記工程(A)において抽出した液晶を主に使用する
ことを特徴とする請求項4に記載の液晶パネルの再利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの再利用に関し、より詳しくは液晶パネルからの液晶の抽出方法とこれを用いた液晶パネルの再利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの普及に伴い、その廃棄量も増加しているが、廃棄された液晶パネルにおけるガラス基板や、これらガラス基板の間に注入されている液晶は、回収して再利用が可能なものである。また、液晶パネルは、その製造過程において例えば液晶の品質不良や、回路設計の変更など各種原因で、封入した液晶を同種の新しいものにまたは別種のものに交換する場合もある。そこで、液晶パネルから液晶を抽出する必要が生じる。
【0003】
液晶パネルから液晶を抽出するにあたっては、まず液晶パネルの基板の一部を切除することが行われている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
液晶パネルから液晶を抽出する従来の方法としては例えば
図1および
図2に示した方法がある。該方法は以下の工程を踏む。
【0005】
(1)液晶パネル11において保留部位111と切除部位112を定め、これらを分けるカットライン10に沿って液晶パネル11をカットし切除部位112を切除する。これにより、保留部位111には2枚の基板113の切り口とこれらの間に挟まれている液晶115が露出した切断面114が形成される。
【0006】
(2)液晶115を切断面114における基板113の間から抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】台湾特許出願公開第200827051号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の方法によれば、液晶パネルから液晶を抽出することができるが、液晶が注入されている基板間の間隔は非常に小さいものであり、加えて、切断面の形状は細長く、ここから液晶を抽出するには特殊で且つ精密な設備が必要であり、高度な技術が要求される。また、液晶の流動性は高くないので、基板間の間隔の非常に小さい隙間から液晶を抽出するのには相当な時間が掛かり効率がよいとは言えない。
【0009】
これらの問題点に鑑み、本発明は、容易に行うことができ且つ抽出効率が向上された液晶パネルからの液晶抽出方法を提供することを一つの目的とする。
【0010】
また、本発明は、該液晶抽出方法を利用した液晶パネルの再利用方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記一つの目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。即ち、2枚の基板の間に液晶を封入した液晶パネルから該液晶を抽出する方法であって、(a)前記液晶パネルを、再利用に供する保留領域と、切除する切除領域とに区分けした後、前記液晶パネルにおける前記2枚の基板のいずれか一方の前記切除領域内の前記保留領域近くに該一方の基板をその厚み方向に沿って貫通する第1の貫通孔を設ける工程と、(b)前記液晶を液化させて前記第1の貫通孔から抽出する工程と、を含むことを特徴とする液晶パネルからの液晶抽出方法を提供する。
【0012】
なお、前記工程(a)においては、前記第1の貫通孔に加えて、前記2枚の基板のいずれか一方の前記切除領域内に該一方の基板をその厚み方向に貫通する第2の貫通孔を設けることが好ましい。
【0013】
前記第2の貫通孔は、前記工程(a)において、前記第1の貫通孔が設けられた一方ではない他方の前記基板の前記切除領域内に該他方の基板をその厚み方向に貫通するように且つ前記第1の貫通孔と位置がずれるように設けられてもよく、また、前記第2の貫通孔は、前記第1の貫通孔よりも大きく開孔することが好ましい。
【0014】
前記第2の貫通孔を設ける場合は、前記工程(b)において、前記第2の貫通孔に正圧を印加すると共に前記第1の貫通孔に負圧を印加して前記第1の貫通孔から前記液晶を抽出するとよい。
【0015】
また、上記他の目的を達成するために、本発明は、以下の手段も提供する。即ち、(A)上述した液晶パネルからの液晶抽出方法により液晶パネルから液晶を抽出する工程と、(B)前記液晶パネルを前記保留領域と前記切除領域とが切り分けられるように切断し、前記液晶パネルの前記保留領域側の切断面における前記2枚の基板の間の隙間の開口を露出させる工程と、(C)前記切断面に露出する前記開口から前記2枚の基板の間に液晶を注入する工程と、(D)注入した前記液晶が流出しないように前記切断面に露出する前記開口を封止する工程と、を含むことを特徴とする液晶パネルの再利用方法を提供する。
【0016】
前記工程(D)においては、前記切断面の全体と、前記液晶パネルの前記保留領域における表面および背面の一部であり該切断面からそれぞれ繋がる切断面両側部とを封止材により覆うように前記開口を封止することが好ましい。
【0017】
また、前記工程(C)において注入する液晶は、前記工程(A)において抽出した液晶と異なる種類の液晶でもよく、また同じ種類の液晶でもよく、あるいは前記工程(A)において抽出した液晶を主に使用するものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記液晶抽出方法によれば、一方の基板を貫通する第1の貫通孔から液晶を抽出することができるので、従来技術のように特殊で且つ精密な設備を必要とせずに、液晶を容易に且つ効率よく抽出することができる。また、上記液晶パネルの再利用方法も、本液晶抽出方法を利用するので、効率がよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】液晶パネルからの従来の液晶抽出方法を説明する図。
【
図2】上記従来の液晶抽出方法における液晶パネルの切断面を示す図
【
図3】本発明に係る液晶パネルからの液晶抽出方法および液晶パネルの再利用方法の第1の実施形態を示すフローチャート。
【
図4】上記第1の実施形態における液晶パネルを示す正面図。
【
図5】上記第1の実施形態における液晶パネルを示す断面図。
【
図6】上記第1の実施形態において液晶パネルに液晶を注入する態様を示す側面図。
【
図7】上記第1の実施形態において液晶パネルの切断面の開口を封止する態様を示す側面図。
【
図8】本発明に係る液晶パネルからの液晶抽出方法および液晶パネルの再利用方法の第2の実施形態を示すフローチャート。
【
図9】上記第2の実施形態における液晶パネルを示す正面図。
【
図10】上記第2の実施形態における液晶パネルを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の各実施形態を詳細に説明する。
【0021】
(液晶抽出方法:第1の実施形態)
図3、
図4、
図5には、本発明に係る液晶パネルからの液晶抽出方法の第1の実施形態が示されている。この内、
図3は該実施形態のフローチャート、
図4は該実施形態における液晶パネルの態様を示す正面図、
図5はその断面図である。
【0022】
上記液晶抽出方法は、2枚の基板21、21の間に液晶3を封入した液晶パネル2(
図5参照)からその液晶3を抽出する方法であり、
図3に示されているように以下の工程を含む。
【0023】
S61:液晶パネル2を、保留領域22と、切除領域23とに区分けした後、2枚の基板21、21のいずれか一方(
図5においては上方)の切除領域23内の保留領域22近くに、該一方の基板21をその厚み方向に沿ってそれぞれ貫通する第1の貫通孔231と第2の貫通孔232を設ける。
【0024】
S62:液晶3を加熱して液化させてから、第1の貫通孔231より液晶3を抽出する。
【0025】
以下、上記各工程をより詳しく説明する。
【0026】
工程S61では、
図4に示されているように、所定の区分線Lに沿って、液晶パネル2において再利用に供するために残したい領域を保留領域22とし、また、残す必要がなく切除する領域を切除領域23とする。なお、図示における保留領域22、切除領域23の区分け態様は例示であり、これらは需要により所望の形状に区分けすることができる。また、本工程での上述の区分けとは実際に切削などを行うという意味ではなく概念上のものであり、所定の区分線Lも仮想的な線でありうる。
【0027】
第1と第2の貫通孔231、232は、本実施形態においてそれぞれ形状が円形となるように、保留領域22内の区分線L近くにドリル(図示せず)により穿設した。また、第2の貫通孔232は、第1の貫通孔231よりも大きく開孔されている。なお、第1と第2の貫通孔231、232の形成方法、形状、大きさは、本実施形態や図面で示されたものに限らず適宜変更、調整することができる。更に、後述するように第2の貫通孔232は必須ではなく、第1の貫通孔231だけ設けてもよい。
【0028】
工程S62では、液晶3を液化させるため液晶3をその融点まで加熱する。本実施形態では、液晶パネル2を加熱チャンバーに入れることで液晶3を加熱した。なお、具体的な加熱温度は液晶3の種類により異なるが、一般には80℃〜90℃の間であり、該加熱チャンバーの温度もこれに準じて設定されればよい。
【0029】
第1の貫通孔231から液晶3を抽出する方法として、本実施形態では、第1の貫通孔231に負圧を印加して第1の貫通孔231から液晶3を抽出する方法を採った。また本実施形態では、第1の貫通孔231に負圧を印加すると共に第2の貫通孔232に正圧を印加することで、圧力差を強めて第1の貫通孔231からの液晶3の流出を促している。具体的には、例えば負圧側となる抽出ホース51および正圧側となる加圧ホース50を具えたバキューム装置を用いて、抽出ホース51を第1の貫通孔231に繋ぎ、加圧ホース50を第2の貫通孔232に繋いで、バキューム装置を稼動させることで、上記抽出を実施できる。
【0030】
第1の貫通孔231は上述のように本実施形態において円形に形成されているので、バキューム装置のホースの直径が第1の貫通孔231の直径よりも大きさえすれば、ホースの先端を第1の貫通孔231にぴったりとあてがうことで液晶3を抽出することが可能となる。更には、既存のバキューム装置を利用するために、第1の貫通孔231を設ける際にその形状を既存のバキューム装置のホースの先端形状と対応するように設けることもできる。つまり、本発明に係る方法によれば、あらゆるバキューム装置を用いることができ、特殊な設備を用いる必要がないので応用範囲が広い。
【0031】
また、第1の貫通孔231および第2の貫通孔232は共に基板21の厚み方向に沿って貫通するように設けられたものであり、つまりは基板21の表面に設けられているので、従来技術のように液晶を基板間の非常に細い隙間から抽出する必要がなく、抽出作業が容易である。また、第1の貫通孔231が上述のように切除領域23における保留領域22近くに設けられているので、切除領域23に位置する液晶3も保留領域22に位置する液晶3も均等に抽出することができ、抽出にかかる時間が短縮され効率がよい。
【0032】
なお、本実施形態において第2の貫通孔232を第1の貫通孔231よりも孔径が大きくなるように設けたのは、例えば第2の貫通孔232に印加する正圧が、第1の貫通孔231に印加する負圧ほど大きくなくても、第1の貫通孔231および第2の貫通孔232の間の圧力差を強めて第1の貫通孔231からの液晶3の抽出を速めることができるようにするためである。第1の貫通孔231および第2の貫通孔232の相対的な大きさは、抽出に使用する装置や所望の抽出速度によって調整することができる。
【0033】
また、液晶3の抽出のために、第1の貫通孔231と第2の貫通孔232とに圧力差を生み出す具体的な方法は、上述のように抽出ホース51を第1の貫通孔231に繋ぎ加圧ホース50を第2の貫通孔232に繋ぐ方法に限らない。例えば第1の貫通孔231に負圧を印加することができれば、第2の貫通孔232が大気圧であっても、圧力差が生まれ、液晶3は第1の貫通孔231から流出する。更には、第2の貫通孔232が設けられていなくても、第1の貫通孔231に負圧を印加すれば第1の貫通孔231と2枚の基板21、21間とで圧力差が生まれ、第1の貫通孔231から液晶3を抽出することができる。
【0034】
(液晶抽出方法:第2の実施形態)
図8、
図9、
図10には、本発明に係る液晶パネルからの液晶抽出方法の第2の実施形態が示されている。この内、
図8は該実施形態のフローチャート、
図9は該実施形態における液晶パネルの態様を示す正面図、
図10はその断面図である。
【0035】
本実施形態は、上記第1の実施形態に準じるが、
図8に示されているように、第1の実施形態での工程S61を下述する工程S66に置き換えた点で異なる。具体的には、第2の貫通孔232の設置箇所が異なる。即ち、第1の実施形態では第2の貫通孔232を第1の貫通孔231と同じ一方の基板21に設けたのに対して、本実施形態では、第2の貫通孔232を、第1の貫通孔231が設けれていない方である他方の基板21に設けた。以下に工程S66を説明する。
【0036】
S66:液晶パネル2を、所定の区分線Lに沿って、保留領域22と、切除領域23とに区分けした後、2枚の基板21、21のいずれか一方(
図10においては上方)の切除領域23内の保留領域22近くに、該一方の基板21をその厚み方向に沿って貫通する第1の貫通孔231を設ける。また、第1の貫通孔231を設けた一方ではない他方(
図10においては下方)の基板21の切除領域23内に、該他方の基板21をその厚み方向に貫通する第2の貫通孔232を、第1の貫通孔231と位置がずれるように設ける。
【0037】
上記工程S66の後に、第1の実施形態と同じく工程S62を経ることで、液晶3を第1の貫通孔231から抽出することができる。また、第1の貫通孔231と第2の貫通孔232とは重ならないように設けられるので、第1の貫通孔231に負圧を印加すると共に第2の貫通孔232に正圧を印加して液晶3の抽出を行う際に、液晶3の流動範囲が各貫通孔231、232の周囲に限られることを避けることができる。
【0038】
以上、各実施形態において抽出した液晶3は、保存しておき、下述する本発明に係る液晶パネルの再利用に用いることができる。
【0039】
(液晶パネルの再利用方法)
本発明に係る液晶パネルの再利用方法は、上述の液晶抽出方法の各実施形態における工程S61もしくはS66ならびにS62を経た後に行われる、つまり本発明に係る液晶抽出方法によって液晶パネルから液晶を抽出した後に行われるものであり、工程S62に続く以下の工程S63、S64、S65を含んでいる。添付図面は、
図3(フローチャート:第1の実施形態)、
図6(液晶パネルに液晶を注入する態様を示す側面図)、
図7(液晶パネルの切断面の開口を封止する態様を示す側面図)、
図8(フローチャート:第2の実施形態)を参照されたい。
【0040】
S63:液晶3が抽出された液晶パネル2を、保留領域22と切除領域23とが切り分けられるように切断し、液晶パネル2の保留領域22側の切断面221における該2枚の基板21、21の間の隙間220の開口を露出させる。
【0041】
上記切断は、まず一方の基板21に区分線Lに沿って切り目を入れてから他方の基板21にも区分線Lに沿って切り目を入れ、その後に各基材21をそれぞれ切り目に沿って割るようにして切り分けてもよい。切り分けられた切除領域23は、廃棄あるいはリサイクルすることができる。保留領域22は、貫通孔が設けられていないので、そのまま再利用することができる。
【0042】
切断後、保留領域22は、切断面221と、各基板21の互いに反対する表面、つまり液晶パネル2の表面および背面の一部であり切断面221にそれぞれ繋がっている切断面両側部222、222とを有するようになる(
図6および
図7参照)。また切断面221においては、2枚の基板21、21の間の液晶3が封入されていた隙間220の開口が露出する。続く工程S64ではこの開口から液晶を注入する。
【0043】
S64:隙間220の開口から、液晶3を保留領域22内の2枚の基板21、21の間に注入する。
【0044】
本工程においては、
図6に示されているように、切断後の保留領域22を、圧力チャンバー53内に設けた保持具52に固定し、圧力チャンバー53に負圧を印加してから、切断面221を液晶3に接触させた後で、気体を圧力チャンバー53に注入することで、毛細管現象により液晶3が隙間220の開口から2枚の基板21、21の間に入り込む。このような注入方式は周知の技術なのでここでは贅設を省く。
【0045】
なお、ここで注入する液晶3は、上述した液晶抽出の工程S62において抽出した液晶3と種類が異なり、これにより液晶の交換そして液晶パネルの再利用が果たされる。しかし、再利用の目的によっては上記工程S62で抽出した液晶3と同じ種類の液晶3を注入してもよく、あるいは上記工程S62で抽出した液晶3をそのまま再び注入したり、抽出した液晶3に他の液晶を加えて注入用の液晶としてもよい。続く工程S65では注入した液晶が流出しないように隙間220の開口をふさぐ。
【0046】
S65:切断面221に露出している隙間220の開口を封止する。
【0047】
本工程においては、
図7に示されているように、シーリング装置54を用いて、切断面221の全体と、切断面両側部222、222とを例えば膠質の封止材4で覆い、封止材4を硬化させることで、隙間220の開口を封止し、液晶3が流出しないようにする。なお、本工程では、加工コストを抑えるために切断面221のみを封止材4で覆うようにして上記開口を封止してもよい。このようにして液晶3がそれらの間に注入され封止された2枚の基板21、21の保留領域22は、再び液晶パネルとして再利用することが可能となる。
【0048】
上記総括すると、工程S61もしくはS66およびS62を経ることで、液晶パネル2から液晶3を容易に抽出することができ、これにより液晶3を再利用のために回収することができる。また、液晶パネル2において、液晶3を交換したり、不良箇所があるために再加工したり、あたは基板21を切削してパネルのサイズを調整したりする必要がある場合にも、利用するための保留領域22と、切除する切除領域23とに区分けした後に液晶3を抽出して再び同じあるいは別の液晶3を注入することで、上記各目的が果たされる。しかも、液晶3の抽出は、従来のように基板間の非常に細い隙間からではなく、切除領域23に設けた貫通孔から行われるので、特殊な設備などを必要とせず容易に行うことができ且つ抽出効率が高い。また、その後に工程S63〜S65を経ることで、液晶が抽出された液晶パネル2に再び液晶3を封入して液晶パネル2を再利用することができる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る液晶パネルからの液晶抽出方法および液晶パネルの再利用方法は、容易に液晶を抽出することができるので、液晶パネルのリサイクルに有用である。
【符号の説明】
【0051】
2 液晶パネル
21 基板
22 保留領域
220 隙間
221 切断面
222 切断面両側部
23 切除領域
231 第1の貫通孔
232 第2の貫通孔
3 液晶
4 封止材
50 加圧ホース
51 抽出ホース
52 保持具
53 圧力チャンバー
54 シーリング装置
L 区分線