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特許5881680複数のプローブのネットワークを含む電磁環境をシミュレートするシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881680
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】複数のプローブのネットワークを含む電磁環境をシミュレートするシステム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/11 20150101AFI20160225BHJP
   H04B 17/21 20150101ALI20160225BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20160225BHJP
   H04B 17/15 20150101ALI20160225BHJP
【FI】
   H04B17/11
   H04B17/21
   H04B17/29
   H04B17/15
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-508430(P2013-508430)
(86)(22)【出願日】2011年4月26日
(65)【公表番号】特表2013-529014(P2013-529014A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2011056571
(87)【国際公開番号】WO2011138190
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年2月27日
(31)【優先権主張番号】1053593
(32)【優先日】2010年5月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512282512
【氏名又は名称】サティモ インダストリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ニコラ
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−227213(JP,A)
【文献】 特開平10−022889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/00−17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁環境をシミュレートするシステムであって、
複数のプローブのネットワークであって、前記複数のプローブは、試験位置に置かれた少なくとも1つの試験アンテナを試験するために、電磁放射を前記プローブから離れた前記試験位置へ放射し、又は前記試験位置から受信し、又は放射及び受信する、ネットワーク、
前記プローブをチャネルエミュレータに接続する複数のチャネル、
第1の信号放射ユニット、
第2の信号受信ユニット、
を有し、前記第1及び第2のユニットの一方は、前記チャネルエミュレータに接続され、
第1の測定位置と前記チャネルを較正する第2の位置とを有する切り替え装置により特徴付けられ、前記第1の測定位置では、前記切り替え装置は、前記エミュレータをそれぞれ前記プローブの少なくとも1つに少なくとも1つの関連する前記チャネルを介して接続し、前記第1及び第2のユニットの他方を前記試験アンテナに接続し、前記第2の位置では、前記切り替え装置は、前記エミュレータを前記第1及び第2のユニットの前記他方に前記少なくとも1つの関連するチャネルを介して、前記プローブのネットワークを通過することなく接続し、前記第2の位置は前記第1の位置と異なる、システム。
【請求項2】
前記チャネルエミュレータは、前記第1の信号放射ユニットに接続され、前記第1の測定位置にある前記切り替え装置は、前記エミュレータをそれぞれ前記プローブの少なくとも1つに前記少なくとも1つの関連するチャネルを介して接続し、前記第2の信号受信ユニットを前記試験アンテナに接続し、前記チャネルを較正する前記第2の位置にある前記切り替え装置は、前記エミュレータを前記第2の信号受信ユニットに前記少なくとも1つの関連するチャネルを介して、前記プローブのネットワークを通過することなく接続する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記チャネルエミュレータは、前記第2の信号受信ユニットに接続され、前記第1の測定位置にある前記切り替え装置は、前記エミュレータをそれぞれ前記プローブの少なくとも1つに前記少なくとも1つの関連するチャネルを介して接続し、前記第1の信号放射ユニットを前記試験アンテナに接続し、前記チャネルを較正する前記第2の位置にある前記切り替え装置は、前記エミュレータを前記第1の放射ユニットに前記少なくとも1つの関連するチャネルを介して、前記プローブのネットワークを通過することなく接続する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の測定位置にある前記切り替え装置は、前記エミュレータの複数のアクセスをそれぞれ前記複数のプローブに複数の前記関連するチャネルを介して接続し、前記第1及び第2のユニットの他方を前記試験アンテナに接続し、前記チャネルを較正する前記第2の位置にある前記切り替え装置は、前記エミュレータの複数のアクセスを前記第1及び第2のユニットの他方に前記複数の関連するチャネルを介して、前記プローブのネットワークを通過することなく接続し、前記第2の位置は前記第1の位置と異なる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記チャネルエミュレータは、各関連するプローブの信号の周波数、位相、振幅及び極性のうちの少なくとも1つのパラメータをチャネル毎に独立に変化させる制御可能な変換手段を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、前記第1及び第2の位置の両方の間を通し前記第1及び第2の位置のいずれかに維持する前記切り替え装置を制御する手段を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記切り替え装置は、前記接続を保証する前記位置を有するスイッチ等を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムは、前記少なくとも1つのチャネルにより伝達される信号を、共にそれぞれ互いに直交する第1及び第2の極性を有する2つの第1及び第2の経路に分割するために、互いに直交する2つの第1及び第2の極性を生成するユニットを有し、両ルートは、前記関連するプローブに接続され、前記2つの第1及び第2の経路のそれぞれを振幅及び位相で重み付けするために重み付け手段が設けられる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記試験アンテナは、前記第1及び第2のユニットの他方に、少なくとも1つのケーブルを介したワイヤを通じて接続される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記試験アンテナは、前記第1及び第2のユニットの他方に、オンボード放射体及び/又は受信機により少なくとも1つの無線リンクを介して無線で接続される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記切り替え装置は、前記チャネルエミュレータと前記プローブのネットワークとの間に置かれる、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のシステムにより電磁環境をシミュレートする方法であって、前記システムは、複数のプローブのネットワークであって、前記複数のプローブは、試験位置に置かれた少なくとも1つの試験アンテナを試験するために、電磁放射を前記プローブから離れた前記試験位置へ放射し、又は前記試験位置から受信し、又は放射及び受信する、ネットワーク、前記プローブをチャネルエミュレータに接続する複数のチャネル、第1の信号放射ユニット、第2の信号受信ユニット、を有し、前記第1及び第2のユニットの一方は、前記チャネルエミュレータに接続され、
前記切り替え装置は、前記チャネルを較正する第2の位置に置かれ、前記第2の位置では、前記切り替え装置は、前記エミュレータを前記第1及び第2のユニットの他方に前記少なくとも1つの関連するチャネルを介して、前記プローブのネットワークを通過することなく接続し、
前記チャネルを較正する第2の位置では、前記プローブのネットワークを通過せずに、前記チャネルエミュレータを通過する間に、複合伝送係数の値が、前記第1の信号放射ユニットと前記第2の信号受信ユニットとの間の各チャネルについて得られ、
前記切り替え装置は、次に第1の測定位置に置かれ、前記第1の測定位置では、前記切り替え装置は、前記エミュレータをそれぞれ前記プローブの少なくとも1つに前記少なくとも1つの関連するチャネルを介して接続し、前記第1及び第2のユニットの前記他方を前記試験アンテナに接続し、
前記試験アンテナは、少なくとも1つの信号を前記第1の信号放射ユニットから前記第2の信号受信ユニットへ、前記少なくとも1つのプローブを通る前記少なくとも1つのチャネルを介して送ることにより、及び少なくとも前記少なくとも1つのチャネルの前記複合伝送係数から得られた値に従って計算された補正を前記信号に適用することにより、前記第1の測定位置で試験される、方法。
【請求項13】
前記補正は、少なくとも前記少なくとも1つのチャネルの前記複合伝送係数から得られた値に従って、及び事前に前記装置で測定された送信パラメータに更に従って計算される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験領域に置かれた試験用オブジェクトを試験するために、該試験領域に向けて電磁放射を放射するプローブの少なくとも1つのネットワークを含む電磁環境を生成するシステムに関する。試験用オブジェクトは、少なくとも1つのアンテナを有する。放射プローブのネットワークの構成は、受信プローブのネットワークの構成に置き換えられることができる。
【背景技術】
【0002】
電磁環境を生成するシステムの応用分野は、個々に又は同時にアクセスできる1又は複数のアンテナを含む種々の試験用オブジェクトの試験である。ここで、該アンテナは、1又は複数の内蔵受信機又は放射体に接続されてもされなくてもよい。これらの試験用オブジェクトは、例えば、1又は複数のオンボード受信機と関連付けられた、携帯電話機、所謂「無線」機器又は民生機器用、航空機器用若しくは軍事機器用の任意の他のアンテナ装置であり得る。例えば、当業者に知られたある種の試験は、複数の入力及び複数の出力を備えた所謂「MIMO(Multiple Input Multiple Output)」機器の特性に関する。
【0003】
したがって、試験用オブジェクトに、例えば試験領域のあちこちに角度を付けて分布したプローブからの種々の電磁放射を受けさせることにより、該試験用オブジェクトを試験する可能性が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
少なくとも1つの信号生成器が、1又は複数の無線周波数信号(RF信号)を生成するために設けられる。信号生成器は、例えば、RF信号を離散周波数で生成するネットワークアナライザ若しくは周波数合成器、通信プロトコルに従って変調RF信号を生成する無線通信テスタ、又は任意の他のRF信号源であってもよい。少なくとも1つの信号受信機が、1又は複数の無線周波数信号を受信するために設けられる。信号受信機は、ネットワークアナライザ又は無線通信テスタ等が生成器から離れて位置するような場合、周波数合成器と関連付けられた受信機のような場合、信号生成器に統合されてもよい。受信機を有すると、例えば送信又は通信品質の点で試験用オブジェクトを評価できるように、試験用オブジェクトの応答を収集できる。
【0005】
チャネルエミュレータは、1又は複数のチャネルを通じて信号生成器から来る無線周波数信号を多重化及び変換できるようにするために用いられる。各チャネルの信号は、該信号を試験領域に向けて放射するプローブへ、実施(conducted)モードで送信される。チャネルエミュレータを有するので、例えば、チャネル毎に独立に、プローブにより放射される信号の位相、振幅、周波数及びグループ時間を変えることができる。プローブは、単一円形極性、線形極性又は2直交極性を有してもよい。各プローブの極性で個々に、及び必要な場合には他のプローブの他の極性と異なる方法で、信号を送信するために、各プローブの極性は、放射される信号を受信するチャネルと関連付けられてもよい。
【0006】
RF信号生成器及び受信機、チャネルエミュレータ及びプローブネットワークを有する試験システムは、試験用オブジェクトが試験外の実際の環境における通常使用中に直面する電磁環境を生成するために用いることができる。このような装置は、例えば文献US−A−2008/0056340から分かる。
【0007】
通常、電磁シナリオを生成するシステムを構成するために、事前に知られた応答を有し且つ試験領域の中央にアンテナとして置かれた異なるダイポールが用いられることが知られている。
【0008】
このようなダイポールは、狭い周波数帯を有するという欠点を有する。これは、較正を行うために多数のダイポールが必要である。さらに、このようなダイポールは、単一の極性を有するという欠点を有する。これは、双極プローブのネットワークを備えたシステムの場合には、周波数帯毎に、試験領域の中央に異なる極性の2個のダイポールを使用する必要がある。
【0009】
これにより、試験領域の中央に置かれた、知られているダイポールで実施された測定により、ダイポールの応答を所定の設定された信号に整合させるために、各チャネルの特性が補正される。この補正は、信号生成器からダイポールまでのグループ時間、振幅及び位相応答の点で、各チャネルの応答を均一化させるという主目的を有する。また、当業者は、例えば、ダイポールの代わりに磁気ループ又はスロットを備えたアンテナ種類のアンテナを使用できることも知られている。しかし、後者は、ダイポールの欠点と同様の欠点を有する。
【0010】
したがって、この較正は、長期にわたり、複雑で、骨の折れるものであり且つ適用が困難である。
【0011】
ダイポールを用いたこの較正技術の他の主要な欠点は、実際のプローブネットワークの較正がないことである。実際に、ダイポールを用いた較正技術は、チャネルエミュレータを介した信号生成器とダイポールまでのプローブネットワークとの間の送信経路の均一化に主に対応する。これは、例えばプローブの各極性の無線電気軸を均一化させるプローブネットワークの較正自体に対応せず、このプローブの各極性の無線電気軸を均一化せずにプローブネットワークによる品質測定を保証することはできない。
【0012】
最後に、ダイポールを用いたこの較正技術の別の主要な欠点は、適用される較正の本質的な不安定性である。実際に、この方法で較正されると、電磁シナリオを生成するシステムは、長期に渡り安定した応答を有さず、プローブにより放射された電磁波に関して望ましい動作特性について、異なる試験用オブジェクトで実施された測定の正当性が疑われる。これは、主に、チャネルエミュレータ及び実際のチャネルが、アクティブなマイクロ波周波数要素を有し、例えばその応答が時間と共に及び温度に従って変化するという事実に起因する。これは、試験用オブジェクトの応答を測定した1日の間の変動により表される。つまり、第1の試験用オブジェクトで第1の信号から1日の第1の時間に実行された試験は、後の第1の応答を与え、同じ第1の試験用オブジェクトに同じ第1の信号から1日の第2の時間に実行した同じ試験は、第1の応答と異なる予測できない第2の応答を与え得る。したがって、ダイポールを用いた較正が1日の内に頻繁に繰り返される場合を除いて、試験は再現可能ではない。この頻繁な繰り返しは、測定レートの点で大いに不利である。これは、特定のチャネルエミュレータがそれぞれの開始時に較正を必要とするという事実により更に悪化する。
【0013】
本発明は、各チャネルのための簡易且つ自動的な較正を得ることを目的とする。この各チャネルの較正は、実際のプローブネットワークの較正とは独立であり、この各チャネルの較正により、上述の欠点が克服できる。
【0014】
この目的のために、本発明の第1の主題は、電磁環境をシミュレートするシステムであって、
複数プローブ(S)のネットワーク(200)であって、試験位置に置かれた少なくとも1つの試験アンテナ(300)を試験するために、電磁放射を前記プローブ(S)から離れた前記試験位置へ放射する及び/又は前記試験位置から受信する、ネットワーク、
−前記プローブをチャネルエミュレータ(600)に接続する複数のチャネル(C)、
−第1の信号放射ユニット(400)、
−第2の信号受信ユニット(410)、
を有し、前記第1及び第2のユニット(400、410)の一方は、前記チャネルエミュレータ(600)に接続され、
第1の測定位置と前記チャネル(C)を較正する第2の位置とを有する切り替え装置(100)により特徴付けられ、前記第1の測定位置では、前記切り替え装置(100)は、前記エミュレータ(600)を前記プローブの少なくとも1つ(S)にそれぞれ少なくとも1つの関連する前記チャネル(C)を介して接続し、前記第1及び第2のユニット(410、400)の他方を前記試験アンテナ(300)に接続し、前記第2の位置では、前記切り替え装置(100)は、前記エミュレータ(600)を前記第1及び第2のユニット(410、400)の他方に前記少なくとも1つの関連するチャネル(C)を介して、前記プローブ(S)のネットワーク(200)を通過することなく、接続し、前記第2の位置は前記第1の位置と異なる。
【0015】
本発明の一実施形態によると、前記チャネルエミュレータ(600)は、前記第1の信号放射ユニット(400)に接続され、前記第1の測定位置にある前記切り替え装置(100)は、前記エミュレータ(600)をそれぞれ前記プローブの少なくとも1つ(S)に前記少なくとも1つの関連するチャネル(C)を介して接続し、前記第2の信号受信ユニット(410)を前記試験アンテナ(300)を介して接続し、前記チャネル(C)を較正する前記第2の位置にある前記切り替え装置(100)は、前記エミュレータ(600)を前記第2の信号受信ユニット(410)に前記少なくとも1つの関連するチャネル(C)を介して、前記プローブ(S)のネットワーク(200)を通過することなく接続する。
【0016】
本発明の一実施形態によると、前記チャネルエミュレータ(600)は、前記第2の信号受信ユニット(410)に接続され、前記第1の測定位置にある前記切り替え装置(100)は、前記エミュレータ(600)をそれぞれ前記プローブの少なくとも1つ(S)に前記少なくとも1つの関連するチャネル(C)を介して接続し、前記第1の信号放射ユニット(400)を前記試験アンテナ(300)に接続し、前記チャネル(C)を較正する前記第2の位置にある前記切り替え装置(100)は、前記エミュレータ(600)を前記第1の放射ユニット(400)に前記少なくとも1つの関連するチャネル(C)を介して、前記プローブ(S)のネットワーク(200)を通過することなく接続する。
【0017】
本発明の一実施形態によると、前記第1の測定位置にある前記切り替え装置(100)は、前記エミュレータ(600)の複数のアクセス(A)をそれぞれ前記複数のプローブ(S)に複数の前記関連するチャネル(C)を介して接続し、前記第1及び第2のユニット(410、400)の他方を前記試験アンテナ(300)に接続し、前記チャネル(C)を較正する前記第2の位置にある前記切り替え装置(100)は、前記エミュレータ(600)の複数のアクセス(A)を前記第1及び第2のユニット(410、400)の他方に前記複数の関連するチャネル(C)を介して、前記プローブ(S)のネットワーク(200)を通過することなく接続し、前記第2の位置は前記第1の位置と異なる。
【0018】
本発明の一実施形態によると、前記チャネルエミュレータ600は、各関連するプローブ(S)の信号の周波数、位相、振幅及び極性のうちの少なくとも1つのパラメータをチャネル(C)毎に独立に変化させる制御可能な変換手段(T)を有する。
【0019】
本発明の一実施形態によると、前記システムは、前記第1及び第2の位置の両方の間を通し前記第1及び第2の位置のいずれかに維持する前記切り替え装置(100)を制御する手段(116、122、135)を有する。
【0020】
本発明の一実施形態によると、前記切り替え装置(100)は、前記接続を保証する前記位置を有するスイッチ等(11、13)を含む。
【0021】
本発明の一実施形態によると、前記システムは、前記少なくとも1つのチャネル(C)により伝達される信号を、共にそれぞれ互いに直交する第1及び第2の極性を有する2つの第1及び第2の経路(710)に分割するために、互いに直交する2つの第1及び第2の極性を生成するユニット(700)を有し、両ルートは、前記関連するプローブ(S)に接続され、前記2つの第1及び第2の経路(710)のそれぞれを振幅及び位相で重み付けするために重み付け手段が設けられる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、前記試験アンテナ(300)は、前記第1及び第2のユニット(410、400)の他方に、少なくとも1つのケーブル(330)を介したワイヤを通じて接続される。
【0023】
本発明の一実施形態によると、前記試験アンテナ(300)は、前記第1及び第2のユニット(410、400)の他方に、オンボード放射体及び/又は受信機(320)により少なくとも1つの無線リンクを介して無線で接続される。この場合、受信/放射は、試験用オブジェクトで行われ、無線(radio frequency:RF)リンクは、有用な値を回収するためにのみ用いられる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、前記切り替え装置(100)は、前記チャネルエミュレータ(600)と前記プローブ(S)のネットワーク(200)との間に置かれる。
【0025】
本発明の別の主題は、上述のようなシステム(1)により電磁環境をシミュレートする方法であって、当該システムは、複数のプローブ(S)のネットワーク(200)であって、前記複数のプローブは、試験位置に置かれた少なくとも1つの試験アンテナ(300)を試験するために、電磁放射を前記プローブ(Si)から離れた前記試験位置へ放射及び/又は前記試験位置から受信する、ネットワーク(200)、前記プローブをチャネルエミュレータ(600)に接続する複数のチャネル(C)、第1の信号放射ユニット(400)、第2の信号受信ユニット(410)を有し、前記ユニット(400、410)の一方は前記エミュレータ(600)に接続され、
−前記切り替え装置(100)は、前記チャネル(C)を較正する第2の位置に置かれ、前記第2の位置では、前記切り替え装置(100)は、前記エミュレータ(600)を前記第1及び第2のユニット(410、400)の他方に前記少なくとも1つの関連するチャネル(C)を介して、前記プローブ(S)のネットワーク(200)を通過することなく接続し、
−前記チャネル(C)を較正する第2の位置では、前記プローブ(S)のネットワーク(200)を通過せずに、前記チャネルエミュレータ(600)を通過する間に、複合伝送係数の値が、前記第1の信号放射ユニット(400)と前記第2の信号受信ユニット(410)との間の各チャネル(C)について得られ、
−前記切り替え装置(100)は、次に第1の測定位置に置かれ、前記第1の測定位置では、前記切り替え装置(100)は、前記エミュレータ(600)をそれぞれ前記プローブの少なくとも1つ(S)に前記少なくとも1つの関連するチャネル(C)を介して接続し、前記第1及び第2のユニット(410、400)の他方を前記試験アンテナ(300)に接続し、
−前記試験アンテナ(300)は、少なくとも1つの信号を前記第1の信号放射ユニット(400)から前記第2の信号受信ユニット(410)へ、前記少なくとも1つのプローブ(S)を通る前記少なくとも1つのチャネル(C)を介して送ることにより、及び少なくとも前記少なくとも1つのチャネル(C)の前記複合伝送係数から得られた値に従って計算された補正を前記信号に適用することにより、前記第1の測定位置で試験される。
【0026】
本発明の一実施形態によると、前記補正は、少なくとも前記少なくとも1つのチャネル(C)の前記複合伝送係数から得られた値に従って、及び事前に前記装置で測定された送信パラメータに更に従って計算される。
【0027】
本発明の一実施形態によると、複数のチャネルは、それぞれ、無線周波数信号生成器から来る信号を、電磁放射を放射する複数のプローブのネットワークのプローブへ送信する。この較正装置は、複数のチャネルを相関させ、複数のチャネルの較正を可能にする。複数のチャネルは、それぞれ、無線周波数信号を受信する複数のプローブのネットワークのプローブから来る信号を、無線周波数信号受信機へ送信する。
【0028】
実施形態において、この装置は次の特徴がある。
【0029】
−当該装置は、チャネルエミュレータとプローブのネットワークとの間に挿入される。
【0030】
−当該装置は、スイッチ、分割器及び/又はカプラの組立体を有する。この組立体は、第1の所謂測定位置及び第2の所謂チャネル較正位置を有する。前記第1の所謂測定位置は、前記チャネルエミュレータの第1の種ル欲の少なくとも1つをそれぞれ前記ネットワークのプローブの少なくとも1つに前記少なくとも1つの関連するチャネルを介して接続する可能性、及び前記試験用アンテナが受信アンテナとして動作するとき、前記試験用アンテナを無線周波数信号の受信機に接続する可能性を与える。前記第2の所謂チャネル較正位置では、スイッチ、分割器及び/又はカプラの構成は、前記プローブのネットワークを通過することなく、前記エミュレータの前記第1の出力少なくとも1つを前記受信機の入力に接続する。前記第2の位置は前記第1の位置と異なる。
【0031】
−前記試験用オブジェクトが無線であるとき、第1の所謂測定位置を有するスイッチ、分割器及び/又はカプラの組立体では、前記チャネルエミュレータの少なくとも1つの第1の出力においてそれぞれ、ネットワークの少なくとも1つのプローブに少なくとも1つの関連するチャネルを介して接続する可能性、及び測定室内に置かれ試験用アンテナとの無線リンクを保証する通信アンテナを無線周波数信号の受信機に、前記試験用オブジェクトの測定中に接続する可能性、前記ネットワークのプローブから信号を受信する可能性を与える。無線周波数信号生成器及び受信機は、ここでは、通常、当業者が無線通信テスタと称するものに対応する。第2の所謂チャネル較正位置を有するスイッチ、分割器及び/又はカプラの組立体の構成は、プローブのネットワークを通過することなく、前記エミュレータの第1の出力の少なくとも1つを前記受信機の入力に接続する可能性を与える。
【0032】
本発明の実施形態によると、以下の通りである。
【0033】
−ケーブルを通じて給電され且つ受信機として動作する試験用アンテナでは、第1の所謂測定位置で、スイッチ組立体は、エミュレータの複数の第1の出力をそれぞれ複数のプローブに、複数の関連するチャネルを介して接続し、試験用アンテナを無線周波数信号受信機の入力に接続し、第2の所謂チャネル較正位置で、スイッチ組立体は、プローブのネットワークを通過することなく、エミュレータの複数の第1の出力を分析ユニットの受信入力に接続し、前記第2の位置は前記第1の位置と異なる。
【0034】
−ケーブルを通じて給電され且つ放射体として動作する試験用アンテナでは、第1の所謂測定位置で、スイッチ組立体は、エミュレータの複数の第1の入力をそれぞれ複数のプローブに、複数の関連するチャネルを介して接続し、試験用アンテナを無線周波数信号生成器の出力に接続し、第2の所謂チャネル較正位置で、スイッチ組立体は、プローブのネットワークを通過することなく、エミュレータの複数の第1の入力を無線周波数信号生成器の出力に接続し、前記第2の位置は前記第1の位置と異なる。
【0035】
−前記ネットワークのプローブから信号を受信する試験用無線オブジェクトでは、第1の所謂測定位置で、スイッチ組立体は、エミュレータの複数の第1の出力をそれぞれ複数のプローブに、複数の関連するチャネルを介して接続し、測定室内に置かれ試験用オブジェクトとの無線リンクを保証する通信アンテナを無線周波数信号受信機の入力に接続し、第2の所謂チャネル較正位置で、スイッチ組立体は、プローブのネットワークを通過することなく、エミュレータの複数の第1の出力を分析ユニットの受信入力に接続し、前記第2の位置は前記第1の位置と異なる。
【0036】
−前記ネットワークのプローブへ向けて放射する試験用無線オブジェクトでは、第1の所謂測定位置で、スイッチ組立体は、エミュレータの複数の第1の入力をそれぞれ複数のプローブに、複数の関連するチャネルを介して接続し、測定室内に置かれ試験用オブジェクトとの無線リンクを保証する通信アンテナを無線周波数信号生成器の出力に接続し、第2の所謂チャネル較正位置で、スイッチ組立体は、プローブのネットワークを通過することなく、エミュレータの複数の第1の入力を無線周波数信号生成器の出力に接続し、前記第2の位置は前記第1の位置と異なる。
【0037】
−較正装置は、前記第1及び第2の位置の両方の間を通し前記第1及び第2の位置のいずれか一方に維持するスイッチ組立体を制御する手段を有する。
【0038】
−スイッチ組立体は、前記接続を保証するために前記位置を有するスイッチ、分割器及び/又はカプラ及び/又は同様のものを有する。
【0039】
本発明の一実施形態によると、上述の較正装置により、RF信号生成器の出力と複数の無線放射プローブのネットワークのプローブの入力までの間のチャネルを較正する方法が提供され、当該方法は以下の特徴がある。
【0040】
−第2の所謂チャネル較正位置に置かれたスイッチ組立体であって、前記第2のチャネル較正位置では、前記スイッチ組立体は、プローブのネットワークを通過することなく、前記チャネルエミュレータの第1の出力の少なくとも1つを分析ユニットの受信入力に接続する。
【0041】
−次に、前記チャネルエミュレータを通過する、生成器と無線周波数信号受信機との間の各チャネルの複合伝送係数の値が得られ記録される。
【0042】
−次に、所謂測定位置に置かれたスイッチ組立体であって、前記測定位置では、前記スイッチ組立体は、前記エミュレータの第1の出力の少なくとも1つを前記プローブの少なくとも1つに前記少なくとも1つの関連するチャネルを介して接続し、前記受信入力を前記試験アンテナに接続する。
【0043】
−前記試験用アンテナの測定中又は測定後に、スイッチ組立体が第2の所謂チャネル較正位置に置かれたときに記録された伝送係数の複合値から各チャネルについて得られた複合補正が適用される。この補正で、チャネルエミュレータ及び無線周波数信号生成器とネットワークのプローブの入力との間に置かれた能動要素の特性及び変動を含むことにより、特に位相、振幅及びグループ時間の点で、チャネルの特性を均一化することができる。
【0044】
−最後に、異なるチャネルのこの補正、第2の補正を適用することが可能である。第2の補正の値は、追加で且つチャネルの較正とは完全に独立した方法で実行されたプローブネットワークの較正から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明は、以下の添付の図面を参照した非限定的な例としてのみ与えられる説明を踏まえて一層良好に理解されるだろう。
図1】本発明による、ケーブルを通じて給電され且つ受信機として動作する試験用アンテナ組立体の測定を実施するためにスイッチ組立体が第1の位置にある、電磁環境を生成するシステムに適用される、チャネルを較正する装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態による、チャネルを較正するために測定を実施するためにスイッチ組立体が第2の位置にある、図1の較正装置の概略図である。
図3】本発明の一実施形態による、プローブネットワークから信号を受信する試験用無線オブジェクトの測定を実施するために、スイッチ組立体が第1の位置にある、電磁環境を生成するシステムに適用される、チャネルを較正する装置の概略図である。
図4】本発明の一実施形態による、チャネルを較正するために測定を実施するためにスイッチ組立体が第2の位置にある、図3の較正装置の概略図である。
図5】本発明の一実施形態による、極性を生成する追加組立体を通じて給電される双極プローブネットワークから信号を受信する試験用無線オブジェクトの測定を実施するために、スイッチ組立体が第1の位置にある、電磁環境を生成するシステムに適用される、チャネルを較正する装置の概略図である。
図6】本発明の一実施形態による、双極プローブネットワークから信号を受信する試験用無線オブジェクトの測定を実施するために、スイッチ組立体が第1の位置にある、電磁環境を生成するシステムに適用される、チャネルを較正する装置の概略図である。
図7】本発明の一実施形態による、チャネルを較正するために測定を実施するためにスイッチ組立体が第2の位置にある、図6の較正装置の概略図である。
図8】本発明の一実施形態による、双極プローブネットワークへ向けて放射する試験用無線オブジェクトの測定を実施するために、スイッチ組立体が第1の位置にある、電磁環境を生成するシステムに適用される、チャネルを較正する装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の一実施形態によると、チャネルを較正する装置100は、試験領域内に置かれた試験用オブジェクト300を試験するために該試験領域に向けて電磁放射を受信又は放射する少なくとも1つのプローブのネットワーク200、1又は複数の無線周波数信号を生成する信号生成器400、1又は複数の無線周波数信号を受信及び分析する信号受信機410、並びに信号生成器400から1又は複数のチャネルCを通じてネットワーク200のプローブSの入力Eまで進む無線周波数信号を多重化及び変換するために用いられるチャネルエミュレータを有する。プローブネットワーク200のプローブSの数は、2以上である。
【0047】
各プローブSは、そのプローブに固有の所定の放射パターンに従って電磁放射を放射できる。プローブSのネットワークは、例えば、これらの放射パターンの最大が試験領域の中央の方向を指すように向けられる。放射パターンは、それらの関連するプローブに対してそれぞれ固定されている。勿論、プローブSは、試験領域の中央に向かう以外の任意の方向に放射するよう他の方向に向けられてもよい。
【0048】
試験領域の中央には、試験用オブジェクト300が置かれる。試験用オブジェクト300は、図3乃至8のようなオンボード放射体又は受信機320に接続され(これは、携帯電話機又はモバイルコンピュータの場合には試験用無線オブジェクトと称される)、又は図1及び図2のようなケーブル330を通じて直接給電され且つスイッチ340により選択される(これは、ケーブルを通じて給電される試験用アンテナと称される)、1又は複数のアンテナ310を有する。
【0049】
試験用無線オブジェクト300の場合には、図3乃至8に示すように補助アンテナ22の使用が知られている。これは、試験用オブジェクトがプローブから信号を受信するとき(図3、5及び6)、試験用オブジェクトから情報を受信するために、試験用オブジェクトとの通信リンクを確立させるか、又は試験用オブジェクトがプローブへ向けて信号を放射するとき(図8)、試験用オブジェクトへ向けて情報を送る。
【0050】
各プローブSは、プローブが単極(単一極性Pに従う放射パターンを有する)か双極(2直交極性Pに従う放射パターンを有する)かに依存して、1又は複数の入力Eを有する。プローブSは、共通支持体210の所定の形状に従って固定される。プローブSは、試験用オブジェクト300の周囲を移動可能である。
【0051】
プローブSのネットワーク200は、例えば、円形又は球形の形状を有し、その中心は試験領域の中心と一致する。
【0052】
一実施形態では、プローブSのネットワーク200は、支持体210の上に球形の形状を有し、その中心は試験領域の中心と一致する。
【0053】
別の実施形態では、プローブSのネットワーク200は、円筒形支持体210の上に位置付けられ、例えば円形の断面の軸は試験領域の中心を通る。
【0054】
別の実施形態では、図に例として示されたような、プローブSのネットワーク200は、垂直面において円形輪状冠の形状をした、中心が試験領域の中心と一致する支持体210により運ばれる。
【0055】
別の実施形態では、プローブSのネットワーク200の支持体210は、垂直面又は水平面において円弧、例えば準円弧の形状を有し、中心が試験領域の中心と一致する、弧であってもよい。
【0056】
プローブSは、例えば、それらの支持体210に規則的に、例えば図に示されるように試験領域の中心に対して等角に分布されてもよい。
【0057】
プローブSは、無響室内にある。無響室の内壁は、電磁放射の反射を防ぐために、例えば知られているが、頂点が室の内側に向けられた発泡体ピラミッドの形状の電磁吸収体で完全に覆われる。
【0058】
プローブの支持体210は、試験領域の中心を囲む。支持体210は、試験用オブジェクト300を支持するための柱21を通すために、下に向かって開いていてもよい。
【0059】
プローブの支持体210は、例えば、リングの形状を有する。
【0060】
プローブの支持体210は、例えば、図中で縦である。
【0061】
プローブの支持体210は、水平であってもよく、又は水平及び垂直に対してゼロでない傾きを有してもよい。
【0062】
プローブの支持体210は、互いに独立の且つネットワーク200のプローブS又はプローブSのグループを支持する種々の支持体に、無響室内で分布され分散されてもよい。
【0063】
柱21は、その先端部に機械的2軸位置決め装置を受けることができる。機械的2軸位置決め装置は、支持構成210が図1乃至8に示したように垂直面に置かれた円形輪状冠の形状を有する場合に、試験用オブジェクトを試験領域の中心の周りに±90度だけ傾け、試験用オブジェクトの垂直面(正面)又は水平面(方位面)の両方で試験を実施できるようにする。
【0064】
各プローブSの入力Eは、図1乃至4に示したような無線周波数信号を伝達するチャネルCに接続される。したがって、プローブSは、試験領域へ向けて電磁放射を放射する。この電磁放射は、プローブSの入力Eに現れる無線周波数に対応する。
【0065】
逆も同様で、プローブは、試験領域に置かれた試験用オブジェクトから放射された電磁信号を受信し、プローブの入力Eに接続されたチャネルCを介して結果として生じた無線周波数信号を送信できる。
【0066】
双極プローブSの場合には、直交極性Pの各々に対応するプローブの2個の入力Eの各々は、通常、図6乃至8に示したように無線周波数信号を伝達するチャネルCに接続される。
【0067】
双極プローブの場合には、図5のように、一般に極性生成ユニットと呼ばれるモジュール700を追加することが可能である。モジュール700は、チャネルにより伝達された無線周波数信号を分割し、それにより生成された2つの経路の各々を、双極プローブの両入力Eにアクセスするために、振幅及び位相において重み付けする可能性を与える。これらの2つの直交極性は、用いられる重み付け係数に従い所与の極性の区別を有する円形極性又は線形極性を与えるために結合される。一実施形態では、極性生成ユニット700は、例えば、それぞれ双方向分割器710、2つの制御可能な可変減衰器720及び2つの制御可能な可変位相シフタ730を備えた組立体を有する。各組立体は、その入力でチャネルCに接続され、その2つの出力で双極プローブSの2つの入力Eに接続される。極性生成ユニット700は、双極プローブSの場合にチャネルCの数が2で分割できる経済的な手段である。しかしながら、この場合には、プローブSの両方の極性は、関連し同時に放射される。これは、プローブの各入力Eが独立したチャネルCに接続されているときには該当しない。
【0068】
チャネルエミュレータ600は、信号生成器400から1又は複数のチャネルCを通じてネットワーク200のプローブSの入力Eまで進む無線周波数信号を多重化及び変換するために用いられる。逆も同様であり、チャネルエミュレータ600は、ネットワーク200のプローブSの入力Eから1又は複数のチャネルCを通じて信号受信機410まで進む無線周波数信号を多重化及び変換するために用いることができる。チャネルエミュレータ600は、通常、図1及び3に示したような各プローブSの各入力Eに接続された又は図5に示したような極性生成ユニット700の各双方向分割器710の各入力に接続された各チャネルCに対応する双方向アクセスAを有する。双極プローブの場合には、図6及び8に示したように、それぞれプローブSの2つの入力Eの一方に接続された2つのチャネルCを関連付けることも可能である。したがって、複数のプローブS,...,S,...,Sに対して、複数のチャネルC1,1,...,Ci,1,...,Cn,1に対応して複数のアクセスA1,1,...,Ai,1,...,An,1が提供される。ここで、図1乃至5のようなプローブ当たり1チャネルの場合には、1≦i≦n且つn≧2である。
【0069】
図6乃至8のようなプローブ当たり2個の別個のチャネルの場合には、複数のプローブS,...,S,...,Sに対して、複数のアクセスA1,1,A1,2...,Ai,1,Ai,2...,An,1,An,2及び複数のチャネルC1,1,C1,2...,Ci,1,Ci,2...,Cn,1,Cn,2、1≦i≦n且つn≧2が提供される。
【0070】
チャネルエミュレータ600は、通常、各チャネルCの信号生成器400から来る無線周波数信号を変換するデジタル制御可能手段Tを有することが知られている。これらの変換手段Tは、それぞれ、独立に適用でき、又は例えば各チャネルCにより伝達される無線周波数信号に対する位相、振幅及びグループ時間の変更には及ばない。したがって、これらの変換手段Tにより、各チャネルCからの無線周波数信号に複雑な較正を独立に適用することが可能である。
【0071】
電磁環境を生成するシステムの適切な電力平衡を得るために、チャネルエミュレータ600の各アクセスAi,jが無線周波数信号増幅器810に接続され得ることが知られている。これらの増幅器810は、図1乃至7に示したような増幅ユニットと称されるモジュール800の一部である。低雑音増幅器820の使用は、図8に示したようなプローブネットワークの受信測定構成の場合に、プローブSから来る無線周波数信号を増幅することも意図している。後者の場合には、双方向増幅ユニット800を適用することも可能である。図8に示されるように、双方向増幅ユニット800は、それぞれ頭−尾接合して取り付けられた2つのスイッチ830、増幅器810及び増幅器820を有する組立体を有し、各チャネルCにより信号生成器400からプローブSの入力Eへ伝達された無線周波数信号の増幅又はプローブSの各入力Eから来て各チャネルCにより受信機410へ伝達された無線周波数信号の増幅を可能にする。
【0072】
本発明の一実施形態によると、チャネルを較正する装置100は、チャネルエミュレータ600とプローブネットワーク200との間に、より具体的には増幅ユニット800と極性生成ユニット700とが存在する場合にはそれらの間に置かれる。
【0073】
本発明の一実施形態によると、チャネルを較正する装置100は、以下を有する。
【0074】
−チャネルエミュレータ600のアクセスAとネットワーク200のプローブSの入力Eとの間に置かれたスイッチ又はカプラ又は分割器の組立体。より具体的には、例えば、スイッチ11i,1は、図1乃至8のように、増幅ユニット800が存在する場合にはそれを通じてチャネルCi,1毎にエミュレータ600のアクセスAi,1に接続された共通アクセス112i,1図1乃至4及び図6乃至8のようにネットワーク200のプローブSの入力Ei,1、又は図5のように極性生成ユニット700が存在する場合にはそれを通じてプローブSの両入力Ei,1及びEi,2に接続されたアクセス113i,1、並びにスイッチ又は分割器の組立体12のアクセス121i,1に接続されたアクセス114i,1を有する。スイッチ11i,1のスイッチ部115i,1の位置は、制御信号116i,1により制御され、ある位置では図1、3、5、6及び8のように共通アクセス112i,1をアクセス113i,1に接続させ、他の位置では図2、4及び7のように共通アクセス112i,1をアクセス114i,1に接続させる。
【0075】
−スイッチ又は分割器の組立体12。これに関して、アクセス121がスイッチ又はカプラ又は分割器11のアクセス114に接続され、共通アクセス123がスイッチ13のアクセス132に接続される。より具体的には、例えば、スイッチの組立体12のアクセス121i,1は、図1乃至8に示したように、スイッチ11i,1のアクセス114i,1に接続される。組立体12のスイッチ部の位置は、制御信号122により制御され、任意のアクセス121i,jを共通アクセス123に接続させる。
【0076】
−スイッチ13。スイッチ13のアクセス132は、スイッチ又は分割器の組立体12の共通アクセス123に接続される。スイッチ13のアクセス133は、試験用アンテナ310(図1及び2)又は通信アンテナ22(図3乃至8)に接続するケーブル23に接続される。スイッチ13の共通アクセス131は、ネットワーク200のプローブSが放射中に動作する測定構成の場合には無線周波数信号受信機410に接続し(図1乃至7)、又はネットワーク200のプローブSが受信中に動作する測定構成の場合には無線周波数信号生成器400に接続する(図8)ケーブル411に接続される。スイッチ13のスイッチ部134の位置は、制御信号135により制御され、ある位置では図1、3、5、6及び8のように共通アクセス131をアクセス133に接続させ、他の位置では図2、4及び7のように共通アクセス131をアクセス132に接続させる。
【0077】
要素11、12及び13は、例えば、同じ物理筐体101内で、チャネルを較正するユニット100にグループ化される。この筐体101の異なる物理インタフェースは、スイッチ又は分割器又はカプラ11の共通アクセス112に接続されたコネクタ102、スイッチ又は分割器又はカプラ11のアクセス113に接続されたコネクタ103、スイッチ13のアクセス133に接続されたコネクタ104、及びスイッチ13の共通アクセス131に接続されたコネクタ105により実現される。したがって、要素11、12及び13のスイッチ部の異なる位置に依存する筐体101の異なるコネクタ間の全ての可能な経路の全ての複合伝送係数(transmission coefficient)は、電磁環境を生成する手段とは完全に独立に且つ別々に特徴付けられ記録することができ、したがって、各チャネルの補正係数の計算に用いることがでる。一実施形態では、較正は、筐体101の出力における壁遷移まで実行される。
【0078】
本発明の一実施形態によると、チャネルを較正する装置100の動作は、以下の通りである。
【0079】
図1、3、5、6及び8に示したチャネルを較正する装置の第1の位置では、装置は、電磁環境を生成するシステムと共に試験用オブジェクト300を測定するために透過的に用いられる。
【0080】
この第1の位置では、各チャネルCi,jについて、スイッチ11i,jは、スイッチ部115i,jによりアクセス113i,jに接続された共通アクセス112i,jにより、チャネルエミュレータ600の出力Ai,jをネットワーク200のプローブSの入力Ei,jに接続する。この第1の位置では、スイッチ13は、試験用アンテナ310から又は通信アンテナ22からのケーブル23を、図1、3、5及び6の測定構成では無線電気信号410の受信機に、図8の測定構成では無線電気信号400の生成器に、スイッチ部134を通じて共通アクセス131に接続されたアクセス133により接続する。
【0081】
この第1の位置では、異なるプローブSの入力Ei,jへチャネルCi,jを通じて送信された無線周波数信号は、所与の電磁環境のシミュレーションを可能にする。各チャネルCi,jの各無線周波数信号は、各プローブSの各入力Ei,jに特有であり、プローブ入力毎に異なり予め定めることがでる。
【0082】
この第1の位置では、試験用アンテナ310(図1)又は通信アンテナ22(図3、5、6)から来る信号は、スイッチ13により、無線周波数信号受信機410へ向けて切り替えられる。この第1の位置では、ネットワーク200のプローブSが受信機として動作する測定構成では(図8)、無線周波数生成器400からの信号は、スイッチ13により、通信アンテナ22又は試験用アンテナ310へ向けて切り替えられる。
【0083】
勿論、第1の位置では、信号チャネルCi,j又はチャネルCの部分集合は、スイッチ11により、プローブSの入力Eに切り替えられ、同時に他のチャネルはそれらの関連するプローブ入力に切り替えられなくてもよい。したがって、第1の位置では、少なくとも1つのチャネルCi,jは、スイッチ11i,jにより、プローブSの入力Ei,jに切り替えられる。この第1の位置では、少なくとも1つのチャネルCi,j、チャネルCの1つの部分集合、又は全てのチャネルCは、スイッチ11i,j、スイッチ11の1つの部分集合、又は全てのスイッチ11により、プローブSの入力Ei,j、プローブSの入力Eの1つの部分集合、又はプローブSの全ての入力Eに切り替えられる。
【0084】
図2、4及び7に示した、チャネルを較正する装置100の第2の位置では、装置100は、プローブネットワーク200のプローブSを通過することなく、及び試験用アンテナ310又は通信アンテナ22を通過することなく、チャネルを較正するための測定を実行するために用いられる。したがって、これは、試験用オブジェクトを測定するために装置100の第1の位置の前に適用されるステップである。
【0085】
この第2の位置では、各チャネルCi,jについて、スイッチ11i,jは、スイッチ部115i,jを通じてアクセス114i,jに接続された共通アクセス112i,jにより、チャネルエミュレータ600の出力Ai,jをスイッチ又は分割器12の組立体12のアクセス121i,jに接続する。この第2の位置では、スイッチ又は分割器の組立体12は、アクセス114i,jに接続されたアクセス121i,jのうちの選択された1つを共通アクセス123に向ける可能性を与える。この第2の位置では、スイッチ13は、スイッチ部134を通じて共通アクセス131に接続されたアクセス132により、共通アクセス123に接続されたアクセス132自体を、図2、4及び7の較正の構成のために無線電気信号受信機410に接続し、逆も同様に、試験用オブジェクトにより放出される放射を受信するために構成された、プローブネットワーク200で電磁環境を生成するシステムの適用の場合には、無線電気信号生成器400に接続する。
【0086】
この第2の位置では、少なくとも1つのチャネルCi,j、チャネルCの1つの部分集合、又は全てのチャネルCは、スイッチ11i,j、スイッチ11の1つの部分集合、又は全てのスイッチ11により、スイッチ又は分割器の組立体12のアクセス121i,j、アクセス121の1つの部分集合、又は全てのアクセス121に切り替えられる。
【0087】
アクセス121i,jがモジュール12で選択されると、チャネルCi,jの無線周波数信号は、共通アクセス123へ、次にスイッチ部134及び帰路411を通じて共通アクセス131に接続されたアクセス132を介して信号受信機410へ向けられる。したがって、この第2の位置は、信号生成器400から信号受信機410までの各チャネルの複合特性の全体を、プローブネットワークを通過することなく測定及び記録することを可能にする。よって、測定された複合値は、各チャネルの補正係数の計算で用いることができる。
【0088】
代替として、全てのアクセス121に現れる全信号は、モジュール12により多重化された形式で、共通アクセス123へ送信される。
【0089】
制御ユニットは、スイッチ11及び13を切り替えるために、制御入力122が存在するときはこの制御入力122だけでなく、制御入力116、135以外からの制御を設けられる。マルチプレクサ12が完全に受動的である場合、制御122は存在しない。したがって、第1の位置及び第2の位置の両方の間を通過させるために、チャネル較正装置100を制御する手段116、135が供給される。
【0090】
本発明の一実施形態によると、無線周波数信号生成器400の出力に対応するプレーンとチャネル較正装置100を含む筐体101のアクセス103に対応するプレーンとの間のチャネルを較正する方法は、以下の主なステップを有する。
【0091】
−アクセスプレーン102及び103との間の全ての可能な経路及び筐体101のアクセスプレーン102と105との間の全ての可能な経路の全ての複合伝送係数は、要素11、12及び13のスイッチ部の異なる位置に従って測定及び記録される。これらの複合伝送係数は、電磁環境を生成する手段と完全に独立に及び別個に(例えば、工場で)特徴付けられ記録される。これらの複合伝送係数は、システム1の動作周波数範囲で測定される。これらの複合伝送係数の測定は、1年又は複数年程度の非常に離れた時間間隔で繰り返すことができ、従来のマイクロ波周波数測定機器の較正と互換性がある。
【0092】
装置100は、第2の所謂チャネル較正位置に置かれる。該第2のチャネル較正位置では、少なくとも1つのチャネルCi,jは、プローブネットワーク200を通過することなく、無線周波数信号受信機410の入力に接続され、逆も同様であり、プローブネットワーク200を通過することなく、無線周波数信号生成器400の出力に接続される。
【0093】
−複合伝送係数の値は、チャネルエミュレータ600と増幅ユニット800が存在する場合にはそれを通過する間に、無線周波数信号生成器400の出力に対応するプレーンと無線周波数信号受信機410の入力に対応するプレーンとの間の各チャネルCi,jについて測定及び記録される。これらの複合伝送係数は、システム1の動作周波数範囲で測定される。これらの複合伝送係数の測定は、チャネルエミュレータ600の特性及び無線周波数信号生成器400とチャネル較正システム100との間に置かれた増幅ユニット800のような別の能動要素の特性の時間依存変化を考慮に入れるために、近い時間間隔で繰り返されなければならない。これらの時間間隔は、1時間又は数時間程度であってもよい。この測定をチャネルエミュレータの起動及び無線周波数信号生成器400とチャネル較正システム100との間に置かれた能動要素の起動の度に行う必要があることがある。
【0094】
−特に後で測定に用いられる周波数帯にわたって位相、振幅及びグループ時間の点でチャネルCの応答を均一にするために、前述のステップで測定された複合係数から、各送信チャネルCi,jに行われるべき補正の複合値が計算され記録される。これらの補正は、チャネルエミュレータ及び無線周波数信号生成器400とチャネル較正システム100との間に置かれた全ての能動要素の特性及び変動(例えば、時間変動、熱変動等)を含む。
【0095】
−装置100は、第1の所謂測定位置に置かれる。該第1の測定位置では、少なくとも1つのチャネルCi,jはプローブSの入力Ei,jに接続され、試験用アンテナ310又は通信アンテナ22は無線周波数信号受信機410の入力に接続される。
【0096】
−試験用オブジェクト300の測定中又は測定後に、前述のステップで各チャネルCi,jについて計算された複合補正値が適用される。
【0097】
本発明の実施形態によると、較正装置100によりチャネルを較正する方法は、チャネルCを較正する動作をプローブネットワーク200の較正動作から分離し、以下の可能性を与える。
【0098】
−チャネルCの較正及びプローブネットワーク200の較正を完全に独立にする。したがって、特に位相、振幅、無線電機アクセス、位相中心及びグループ時間に点でプローブの応答を均一化するステップを有するプローブネットワーク200の較正は、別個に実行されることが分かり、1年程度の時間間隔で非常に正確な技術であり、従来のマイクロ波周波数測定機器の較正と互換性がある。
【0099】
−各チャネルCi,jに補正を適用する。各チャネルCi,jについて、プローブネットワークの較正と独立に行われたチャネルCの較正から複合値が得られる。
【0100】
−各チャネルCi,jに追加補正を適用する。各チャネルCi,jについて、チャネルの較正と別個に且つ完全に独立に行われたプローブネットワークの較正から複合値が得られる。
【0101】
したがって、本発明による装置は、各チャネルCi,jの頻繁な再較正を非常に速く、自動的に且つプローブネットワーク200と独立に可能にすることにより、チャネルエミュレータ600の変動及び増幅ユニット800のような能動要素の変動を補正する可能性を与える。これは、毎回再びプローブを較正しなければならないことを回避するので、チャネルの較正が容易に、速く、非常に正確になる。より頻繁に実行されるチャネルの較正から実行される補正は、電磁環境を生成するシステム1により、時間に渡り更に安定した更に正確な試験用オブジェクト300の測定を可能にする。この正確さは、プローブの較正と独立になったチャネルの較正が、プローブの較正を実行すること、非常に正確な方法、及び各チャネルCi,jについてプローブの応答を均一化するために追加の非常に効率的な補正を各チャネルCi,jに適用する可能性を与えることが分かったという事実により、更に増進される。
【0102】
したがって、複数のプローブのネットワークを有する電磁環境を生成するシステムの速く、容易で、正確且つ広帯域の較正のための装置及び方法が得られる。
【0103】
以上では、生成器は第1の信号放射ユニット(400)を形成し、受信機は第2の信号受信ユニット(410)を形成した。
図1
図2
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図8