特許第5881685号(P5881685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881685
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】軸発電機システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20160225BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   H02M7/48 R
   H02M7/12 K
   H02M7/12 T
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-513597(P2013-513597)
(86)(22)【出願日】2011年5月2日
(65)【公表番号】特表2013-535181(P2013-535181A)
(43)【公表日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】EP2011056892
(87)【国際公開番号】WO2011154196
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2013年5月10日
(31)【優先権主張番号】102010023019.7
(32)【優先日】2010年6月8日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ブルノッテ、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヒラー、マルク
(72)【発明者】
【氏名】ゾマー、ライナー
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−535258(JP,A)
【文献】 特表2009−506736(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/098201(WO,A1)
【文献】 特表2009−514490(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/146961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶上に設けられた、軸発電機(18)と、前記軸発電機(18)と前記船舶の船内電力系統(48)との間に設けられてそれらを周波数的および電圧的に分離する電圧中間回路形コンバータ(42)と、船内電力系統側(以下、単に「系統側」と記述する)のインダクタンスとを有する軸発電機システムにおいて、
前記電圧中間回路コンバータ(42)が、軸発電機側(以下、単に「発電機側」と記述する)と前記系統側とにそれぞれ変換器(44,46)を有し、ここに前記船内電力系統(48)は、その運転状態に依存して異なる共振周波数を持ち得る独立系統であり、
前記発電機側および前記系統側の両変換器(44,46)が、直流電圧側で互いに結合されており、
前記系統側の変換器(46)が、少なくとも2つの相モジュールを有しており、
前記相モジュールが、それぞれ上側および下側の弁アーム(P1,N1,P2,N2,P3,N3)を有しており、
前記上側および下側の弁アーム(P1,N1,P2,N2,P3,N3)が、それぞれ電気的に直列接続された複数の2極サブシステム(SM1,…,SMn)を有しており、
前記2極サブシステム(SM1,…,SMn)が、それぞれ単極性の蓄積コンデンサ(CSM)を有しており、
各前記蓄積コンデンサ(CSM)に、それぞれ逆並列接続されたダイオード(D1,D2)を有する2つのターンオフ制御可能な半導体スイッチ(S1,S2)の直列回路が、電気的に並列接続されており、
前記各弁アーム(P1,N1,P2,N2,P3,N3)が含んでいる前記複数の2極サブシステム(SM1,…,SMn)のうちから選択してオンにする個数を制御し、それに応じて前記系統側の変換器(46)から出力される出力電圧を前記系統側で要求される系統電圧に適合せしめること、および、前記蓄積コンデンサ(CSM)の蓄積容量ならびに前記半導体スイッチ(S1,S2)のスイッチング周波数に応じて前記各弁アーム(P1,N1,P2,N2,P3,N3)が含んでいる前記複数の2極サブシステム(SM1,…,SMn)のうちから選択してオンにする個数を制御し、それに応じて前記系統側の変換器(46)から出力される出力電流を、前記船内電力系統(48)内で短絡が発生した際に前記系統側の変換器(46)の端子電圧の調整によって高い動的応答性で以て制限せしめた
ことを特徴とする軸発電機システム。
【請求項2】
前記発電機側の変換器(44)が、多パルス形ダイオード整流器である
ことを特徴とする請求項1記載の軸発電機システム。
【請求項3】
前記発電機側の変換器(44)が、多パルス形自励変換器である
ことを特徴とする請求項1記載の軸発電機システム。
【請求項4】
前記系統側のインダクタンスが、系統リアクトル(50)である
ことを特徴とする請求項1記載の軸発電機システム。
【請求項5】
各前記系統リアクトル(50)が、コンデンサ(C1)と抵抗(R1)との直列回路に結合されており、前記抵抗(R1)の自由端が、互いに電気的に導電接続されている
ことを特徴とする請求項4記載の軸発電機システム。
【請求項6】
各前記系統リアクトル(50)が、コンデンサ(C1)と抵抗(R1)との直列回路と結合され、前記コンデンサ(C1)の自由端が、互いに電気的に導電接続されている
ことを特徴とする請求項4記載の軸発電機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸発電機を有する軸発電機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1から軸発電機システムが公知である。軸発電機システムは、割安な電気エネルギーを発生すべく船舶において頻繁に使用されるシステムである。船舶の船内発電設備の構成部分である軸発電機システムは、次の構成要素を有する。
− 可変回転数で駆動されて可変周波数の電気エネルギーを発生する軸発電機、
− 軸発電機と船内電力系統との周波数的および電圧的な分離のための、発電機側の整流器と、系統側インバータと、直流電流中間回路又は直流電圧中間回路とから成る中間回路形コンバータとして実施された静止形周波数変換装置、
− 電流中間回路形コンバータの場合に必要な、中間回路電流を平滑するための中間回路リアクトル、
− 電圧中間回路形コンバータの場合に必要な、中間回路電圧を平滑するための中間回路コンデンサ、
− 短絡電流および高調波を制限するための系統リアクトル、
− 短絡安全性の向上および系統無効電力補償のために必要な、始動電動機付き調相機、
− 軸発電機制御の際に軸発電機励磁電流を調整するための、場合によっては整合変圧器を有する、励磁用変換器、
− 全電子式の調節・制御・監視装置、
− 故障時および短絡時に軸発電機システムの極めて重要な機能部分に給電するためのバッテリ式補助給電装置。
【0003】
この軸発電機システムの系統側は開閉器により船内系統母線に接続可能である。系統内において過激な負荷を確実に回避するために、系統リアクトルとして、いわゆる二重リアクトルが設けられている。この二重リアクトルによって、高調波の伝搬が防止され、短絡電流が、かなり低減される。この二重リアクトルは、しばしば、分離リアクトルコイル、平衡リアクトル、平滑リアクトルとも呼ばれる。理想的な二重リアクトルは、複数の小空隙を有する1つの鉄心上に漏れインダクタンスの少ない2つの巻線を備えた、特殊変圧器である。
【0004】
非特許文献2から、短絡安全性向上のための二重リアクトルの使用方法が認識され得る。この文献には、ディーゼル電気駆動されるクルーズ船における系統特性を二重リアクトルによって改善するための、2つの系統構想が紹介されている。二重リアクトルの使用によって、電気推進システムの反作用が低減される。軸発電機システムの電力変換器を用いたことの反作用として、給電を行う船内電力系統に著しい高調波を発生し、それに因って、系統特性が悪化する。
【0005】
補助装置、照明装置、航海用機器および通信装置に給電するための、船内業務用電力系統、ならびに、居住区域内の給電システムは、高調波の少ない給電電圧を必要とする。高すぎる歪率は、追加損失、動作障害をもたらし、極端な場合、構成要素の破壊を招き得る。二重リアクトルによって高調波の少ない部分系統が取り出することができる。
【0006】
更に、この非特許文献2から、10MW以上の軸出力においてサイクロコンバータによって給電される同期電動機がスクリュー駆動装置として使用されるということが認識され得る。サイクロコンバータによって給電される同期電動機の他に、負荷転流形コンバータ付きの変換器給電形電動機も、スクリュー駆動装置として使用される。
【0007】
特許文献1から、廃熱回収式船舶推進システムの運転のための方法ならびに廃熱回収式船舶推進システムが公知である。この船舶推進システムは、特に、系統側変圧器を有するコンバータによって船内電力系統から給電される軸発電機/電動機を有する。軸発電機の電動機としての運転は、「電力取り入れ運転(PTI=Power-Take-In)」と呼ばれる。軸発電機、静止形周波数変換装置、および系統側変圧器は、エネルギーが軸発電機から船内電力系統へ供給されるや否や、同様に軸発電機システムを構成する。軸発電機の発電機としての運転、即ち船内電力系統のために電気エネルギーを発生する運転は、「電力取り出し運転(PTO=Power-Take-Off)」と呼ばれる。しかし、この特許においては、この軸発電機は、主にブースタ駆動装置として、ディーゼルエンジン駆動装置に加えて設置されている。主駆動装置が使用効率よく運転され、ディーゼル発電機セットを遮断することができる。
【0008】
軸発電機が電動機運転から発電機運転へと切り替えられる時間帯では、船内電力系統の電圧および周波数がそれぞれ予め定められた限界値を下回らないように、所定のエネルギー源が電気エネルギーを船内電力系統へ供給する。この種の切り替えは、電力系統故の障時、特に船の停電時に行われる。公知の軸発電システムがブースタ駆動装置として使用される場合には、電動機/発電機運転切り替え中に調相機がエネルギー源となって、このエネルギー源から船内電力系統にエネルギーが供給される。
【0009】
軸発電機システムの別の構成では、静止形周波数変換装置として電圧中間回路形コンバータが設けられる。この電圧中間回路形コンバータは中間回路コンデンサを有し、この直流回路コンデンサが軸発電機の運転切り替え中に船内電力系統にエネルギーを供給するエネルギー源となる。電圧中間回路形コンバータが発電機側および系統側にそれぞれ自励パルス幅変調変換器、特にIGBTパルス幅変調変換器を有する場合には、特に高速の切り替えが行われる。
【0010】
発電機側および系統側にそれぞれパルス幅変調制御されるIGBT変換器を有するこの種の電圧中間回路形コンバータが、特許文献2の図3に詳細に示されている。ブースタ駆動装置としての軸発電機システムにおいて、駆動装置用コンバータとして、電流中間回路形コンバータの代わりに電圧中間回路形コンバータを使用することによって、船内電力系統は、周波数的にだけでなく、電圧的にも、発電機から分離される。更に、電圧中間回路形コンバータは無効電力を供給することができるので、調相機がもはや必要でなくなる。
【0011】
軸発電機システムの静止形周波数変換装置として電流中間回路形コンバータが使用される場合には、二重リアクトルおよび変圧器のほかに、始動用電動機を有する調相機が必要となる。既に冒頭に述べたように、短絡安全性を高めるために、理想的には特殊変圧器である二重リアクトルが必要とされる。この変圧器は、コンバータ出力電圧と船内系統電圧との間の電圧整合のために必要とされる。これらの付加的な構成要素はそれぞれ組み込みスペースを必要とするが、そのスペースは、船内に十分に存在するわけではない。
【0012】
軸発電機システムの静止形周波数変換装置として電圧中間回路形コンバータを使用するとすれば、コンバータ出力電圧と船内系統電圧との間の電圧整合のために変圧器を設けなければならないこととなる。電圧中間回路形コンバータの両変換器は、2レベル回路(低圧)又は3レベル回路(中圧)で構成されることとなる。10MW以上の出力の場合には複数の2レベルコンバータもしくは3レベルコンバータを出力側で電気的に並列接続し、対称化制御、所謂Δi制御を行わなければならないであろう。低圧コンバータでは、現在のところ、1200V乃至1700Vの電圧クラスのターンオフ制御可能な半導体スイッチ、特に絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が使用される。これに対して、中圧コンバータの場合には、3300Vから4500V迄もしくは6500V迄の電圧クラスのIGBTもしくはIGCTが使用される。しかし、電圧クラスの上昇に伴って、スイッチング周波数は低下するが、半導体価格は上昇することとなる。
【0013】
IGBTのスイッチング周波数が制限されているので、船内電力系統側では、系統反作用に対する船級協会の要求を遵守することができるようにフィルタ措置を講じなければならないであろう。特に、明らかに1kVを上回る中間回路電圧を有する中圧コンバータの場合、スイッチング周波数は数百Hzに制限されている。それによってフィルタ設計は更に困難になる。船内電力系統は、運転状態に依存して異なるインピーダンス、従って異なる共振周波数を持つ独立系統であるために、フィルタ設計はもともと既に困難である。従って電圧中間回路形コンバータの出力端に作用する合成共振周波数も変化し、それに因って、フィルタ設計を電圧中間回路形コンバータのスイッチング周波数に合わせることが非常に難しいものとなる。
【0014】
静止形周波数変換装置としての電圧中間回路形コンバータの発電機側変換器もしくは系統側変換器に使用されるIGBTのスイッチング周波数が低いので、このコンバータの動的応答性が制限されている。それによって、例えば系統短絡、系統電圧の喪失および回復のような過渡的な運転状態は、構成要素の標準を超えた冗長設計にも拘らず、ほとんど制御できない。更に、上述のフィルタは過渡的な運転状態において振動を起こしやすい。
【0015】
系統短絡およびその他の過渡的な運転状態の制御は特に重要である。この過渡的な運転状態を何らかの方法で制御することを可能にするためには、軸発電機システムの電圧中間回路形コンバータは常に系統にとどまらなければならないであろう。即ち、この電圧中間回路形コンバータは過電流の故に遮断されてはならない。これは、正常運転時にも短絡時にも電流を2点調節によって制御するか、又は、個々の相において点弧信号を一時的に阻止した後に再びその阻止を解除することによって、達成することができるであろうと考えられる。しかしながら、コンバータ出力電圧に予測不能な高調波振動が発生し、それによって既存の系統フィルタが励起されるであろう。その結果、多大な費用をかけないと系統高調波に対する必要な限界を守ることはできないであろう。
【0016】
これらの理由から、現在、特に中圧用途に関しては、前述の中圧範囲における要求を満たす電圧中間回路形コンバータを有する軸発電機システムは、未だ実用化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】独国特許第102006020144号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102005059760号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】1983年6月発行のドイツ刊行物“HANSA”第120巻第13号第1203−1207頁の抜き刷り“WGA23-ein modernes Wellengeneratorsystem”
【非特許文献2】1997年発行の刊行物“Jahrbuch der Schiffbautechnischen Gesellschaft 91.Band”の第173頁以下に掲載されたW.Schild、Dr.W.Planitz共著の論文“Netzgestaltung mit Duplexdrosseln”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、静止形周波数変換装置として電圧中間回路形コンバータを有する軸発電機システムを提供することにあり、これにより、特に系統短絡を動的に制限しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この課題は、本発明に係る請求項1の特徴事項によって解決される。
【0021】
電圧中間回路形コンバータの系統側変換器を、分散された複数のエネルギー蓄積器を有する変換器として構成することによって、各弁アームのサブモジュールの個数に応じて、この変換器の出力電圧をあらゆる任意の船内系統電圧に適合させることができる。サブモジュールの数が多くなるに従って、この変換器の出力電圧の電圧波形の階段数が増すので、船内電力系統側では、系統反作用に対する船級協会の要求を遵守することを可能にするためのフィルタ手段を設ける必要がなくなる。同様に、サブモジュールの数が多いので、中圧コンバータにおいて、本質的に、より高いスイッチング周波数で動作させ得る低圧用のターンオフ制御可能な半導体スイッチを使用することが可能となる。それによって、分散された複数のエネルギー蓄積器を有するこの変換器は、結果的に生じる高いスイッチング周波数を有し、従って、この変換器の出力電流を、短絡時に端子電圧の高速調整によって高い動的応答性で制限することができる。即ち、この変換器は、短絡時においてもはや過電流の故に遮断されることはない。従って、短絡電流の供給に関する船内電力系統の要求を簡単に満たすことができる。即ち、軸発電機システムの静止形周波数変換装置としての本発明による電圧中間回路形コンバータは、二重リアクトルなしに提供可能である短絡安全性を有する。
【0022】
分散された複数のエネルギー蓄積器を有する変換器のサブモジュールにおいて使用される低圧用IGBT(LV−IGBT)の高いスイッチング周波数によって、この変換器は、結果的に非常に高いスイッチング周波数を有する。それによって、付属の制御装置の限界周波数が同様に高い値にシフトされるので、その周波数は船内電力系統で起こり得る共振の領域外にある。それによって、設備に依存しないパラメータ設定が可能である。
【0023】
分散された複数のエネルギー蓄積器を有する変換器の制御特性によって、その分散された複数のエネルギー蓄積器を有する変換器である系統側変換器と、非制御変換器、例えばダイオード整流器である発電機側変換器とを有する電圧中間回路形コンバータにおいて、この電圧中間回路形コンバータの中間回路電流をほぼ一定に保つことができる。それにより、軸発電機システムの発電機の発電機電流は、少ない高調波成分を有するものとなり、その高調波成分の実効値は小さくなる。このようにして、発電機電流は、ほぼブロック状となって、軸発電機システムの損失が減少する。
なお、本願発明に係る、より具体的な望ましい各態様については、請求項2−7に記載のとおりのものとすることができる。すなわち;
請求項2に記載の如く、発電機側の変換器(44)を、非制御変換器、例えば6パルス又はそれ以上のような、多パルス形ダイオード整流器であるようにすることは、望ましい態様である。
また、
請求項3に記載の如く、発電機側の変換器(44)を、例えばIGBTパルス幅変調変換器のような、多パルス形自励変換器であるようにすることは、望ましい態様である。
また、
請求項4に記載の如く、系統側のインダクタンスが変圧器(22)であるようにすること、すなわち変圧器(22)のインダクタンスを系統側のインダクタンスとして用いるようにすることは、望ましい態様である。
また、
請求項5に記載の如く、系統側のインダクタンスが系統リアクトル(50)であるようにすること、すなわち系統リアクトル(50)のインダクタンスを系統側のインダクタンスとして用いるようにすることは、望ましい態様である。
また、
請求項6に記載の如く、各系統リアクトル(50)が、コンデンサ(C1)と抵抗(R1)との直列回路に結合されており、前記抵抗(R1)の自由端が、互いに電気的に導電接続されるようにし、それらによって形成される減衰コンデンサアームと系統リアクトル50のインダクタンスとで低域通過フィルタを構成せしめるようにすることは、望ましい態様である。
また、
請求項7に記載の如く、各系統リアクトル(50)が、コンデンサ(C1)と抵抗(R1)との直列回路に結合されており、前記コンデンサ(C1)の自由端が、互いに電気的に導電接続されているようにし、それらによって形成される減衰コンデンサアームと系統リアクトル50のインダクタンスとで低域通過フィルタを構成せしめるようにすることは、望ましい態様である。
【0024】
本発明をさらに説明するために、本発明による軸発電機システムの実施形態を概略的に示す図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、軸発電機駆動用コンバータとして電中間回路形コンバータを有する公知の船舶推進システムの原理図を示している。
図2図2は、図1に示した公知の船舶推進システムと同様に軸発電機駆動用コンバータとして電中間回路形コンバータを有するが、図1に示した公知の船舶推進システムとは異なり調相機を省略した、公知の船舶推進システムの原理図を示している。
図3図3は、本発明による軸発電機システムの第1の実施形態を示す図である。
図4図4は、本発明による軸発電機システムの第2の実施形態を示す図である。
図5図5は、図3もしくは図4による軸発電機システムの系統側の変換器の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
特許文献1から公知の船舶推進システム2は、図1に従って、低速回転する2サイクルディーゼルエンジンとして構成された主機4を有し、この主機4はスクリュー軸6を介して船の推進用スクリュー8を有する。船内系統母線10によって具体的に示された船内電力系統のためのエネルギー発生のために、多数の発電機12が設けられ、これらの発電機12はそれぞれ主機よりも高速回転する補機14によって駆動される。補機14は一般に高速回転する4サイクルディーゼルエンジンである。通常は、それぞれ1つの発電機12とディーゼルエンジン14とが1つのディーゼル発電機セット16を構成している。
【0027】
軸発電機/電動機18が機械的にスクリュー軸6に連結され、電気的にコンバータ20および変圧器22を介して船内電力系統の船内系統母線10に接続されている。コンバータ20として電流中間回路形コンバータが設けられており、このコンバータは発電機側および系統側にそれぞれ1つの制御可能な変換器24および26を有し、両変換器の直流電圧側は中間回路リアクトルにより互いに導電接続されている。これらの制御可能な変換器24および26のための制御信号は、制御・調節システム28によって発生させられる。軸発電機/電動機18としては低速回転する同期機が使用されるので、軸発電機/電動機18は付加的に励磁用変換器30を介して船内系統母線10に導電接続されている。軸発電機システムのコンバータ20として電流中間回路形コンバータが設けられており、この電流中間回路形コンバータは船内電力系統に有効電力しか供給できないので、船内電力系統の無効電力需要は調相機32によって供給される。この調相機32は通常運転時には移相要素としてしか動作せず、有効電力を船内系統母線に供給しない。始動用コンバータ34および始動用電動機36は調相機32の始動に使用される。始動用コンバータ34の制御は同様に制御・調節システム28によって行われる。
【0028】
軸発電機/電動機18と、付属の制御・調節システム28を有する電流中間回路形コンバータと、始動用コンバータ34および始動用電動機36を有する調相機32とは、先に述べた非特許文献1から公知の軸発電機システムを構成している。
【0029】
この公知の船舶推進システムの場合には軸発電機18が電動機として運転され、それによって電気エネルギーが船内電力系統から電流中間回路形コンバータおよび軸発電機/電動機18により機械エネルギーに変換される。それによって船内電力系統内の予備電力を船舶の推進力増強のために利用し、それによって船舶速度を高めるか、又は同じ速度のままで主機4の負荷を軽減することができる。
【0030】
少なくとも始動用コンバータ34と始動用電動機36とを有する特別な調相機32を不要とするために、図2には他の公知の船舶推進システム38の原理図が概略的に示されている。この船舶推進システム38は、コンバータ20として電圧中間回路形コンバータが設けられている点で、図1による船舶推進システム2と異なっている。軸発電機18が電動機運転されるので、この電圧中間回路形コンバータは中間回路コンデンサバッテリ40のほかに発電機側に同様に制御可能な変換器24を有する。この電圧中間回路形コンバータの制御可能な変換器24および26として、それぞれ1つの自励式パルス幅変調変換器、特にIGBTパルス幅変調変換器が設けられている。中間回路コンデンサバッテリ40は、軸発電機18の電動機運転から発電機運転への切り替え期間中に、船内電力系統の電圧および周波数がそれぞれ設定された限界値を下回ることがないように、電気エネルギーが船内電力系統へ供給されなければならないように設計されている。
【0031】
この軸発電機システムは、廃熱回収システムによるエネルギー発生の予定外の中断時にのみ、電動機運転から発電機運転へ切り替えられる。この切り替えはディーゼル発電機セット16が始動されるまでの間、続けられる。即ち、軸発電機システムの発電機運転は、短い渡り時間のためにのみ設けられている。この渡り時間の間、船内電力系統内の高調波成分は我慢される。船内電力系統内のこの高調波成分を低減するためには、船内電力系統側にフィルタ手段が必要ということになるが、このフィルタ手段は図示されていない。従って、この軸発電機システムは、主としてブースタ駆動装置として使用される。
【0032】
電圧中間回路形コンバータの系統側変換器26の変換器弁、例えば絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ(IGBT)が、コンバータ出力電圧が高いために制限されたスイッチング周波数を有することに因って、存在するフィルタのフィルタ設計が更に困難なものとなる。そのフィルタ設計は、特に船内電力系統が、運転される負荷に依存して非常に異なるインピーダンス、従って異なる共振周波数を有し得る独立系統であることに因って、困難なものとなる。従って、コンバータ20の系統側端子に作用する合成共振周波数も変化し、それによってフィルタ設計をコンバータのスイッチング周波数に合わせることが困難になる。
【0033】
系統側変換器26の高圧用IGBTの制限されたスイッチング周波数およびそれにともなう限られた動的応答性によって、例えば負荷投入、船内電力系統での短絡、系統回復のような過渡的な運転状態の制御が困難であり、この電圧中間回路コンバータの構成要素の過剰設計を招くことを避けがたい。制御を難しくする他の困難性は、使用されるフィルタが過渡的な運転状態において振動を起こしやすいことにある。
【0034】
系統反作用に対する船級協会の要求を遵守しては、系統短絡および他の過渡的な運転状態を制御することを可能にするためには、この電圧中間回路形コンバータは軸発電機システムの静止形周波数変換装置として適していない。この理由から、電圧中間回路形コンバータを有するこの軸発電機システムは主として電動機運転され、エネルギー発生システムの障害発生時にのみ切り替え時間中に移行される発電機運転時には、系統反作用に対する要求を遵守することができないことを我慢しなければならない。同様に、この運転状態においては過渡的な運転状態が発生しないことが前提とされる。軸発電機システムのこの発電機運転は、ディーゼル発電機セット16が始動されるまでの間のみ続く。
【0035】
図3には本発明による軸発電機システムの第1の実施形態が示されている。この本発明による軸発電機は、軸発電機18の他に、電圧中間回路形コンバータ42を有しており、その電圧中間回路形コンバータ42は、発電機側変換器44として、非制御変換器、例えば6パルス又はそれ以上の多パルス数のダイオード整流器を有する。発電機側変換器44としては、多パルス自励変換器を設けるようにしてもよい。本発明による軸発電機システムは、系統側(船内電力系統側)変換器46として、分散された複数のエネルギー蓄積器を備えた1つの変換器を有する。両変換器44および46の直流電圧側は直流的に互いに導電接続されている。この実施形態では分散された複数のエネルギー蓄積器を備えた変換器である系統側変換器46の交流側は変圧器22により船内電力系統48に接続可能である。
【0036】
図4には本発明による軸発電機システムの第2の実施形態が示されている。この実施形態は、分散された複数のエネルギー蓄積器を備えた変換器である系統側変換器46の交流側が系統リアクトル50を介して船内電力系統48に接続可能である点で、図3による実施形態と相違する。
【0037】
分散された複数のエネルギー蓄積器を備えた変換器46の等価回路図が図5に詳細に示されている。この図によれば、この変換器463つの相モジュールを有し、れらの相モジュールは、それぞれ上側および下側弁アームP1およびN1、P2およびN2、P3およびN3を有する。各相モジュールのこれらの両弁アームP1,N1もしくはP2,N2もしくはP3,N3は、各1つのブリッジアームを成している。上側および下側弁アームP1およびN1、もしくはP2およびN2、もしくはP3およびN3の接続点が、各相モジュールの交流電圧側端子L1,L2,L3として引き出されている。変換器内部の回路電流の平滑のために、結合された複数の複数のアームリアクトルLzが使用される。これらの交流側端子L1,L2,L3には1つの系統リアクトル50が接続されている。これらの3つの相モジュールは電気的に互いに並列接続されて、詳しくは示されていない直流電圧給電装置(発電機側変換器44)に接続されており、この直流電圧給電装置は、分散された複数のエネルギー蓄積器CSMを備えた変換器46の直流電圧端子PおよびNに接続されている。これらの直流電圧端子PおよびNの間に、生成された直流電圧Udcが現れる。
【0038】
同様に、この等価回路から、各弁アームP1,N1,P2,N2,P3,N3が多数の電気的に直列接続された2極サブモジュールSM1,SM2,…,SMnを有することが分かる。各2極サブモジュールSM1,SM2,…,SMnは、サブモジュールSM1の拡大図によれば、単極性の蓄積コンデンサCSMと、2つのターンオフ制御可能な半導体スイッチS1およびS2と、2つのダイオードD1およびD2とを有する。両ターンオフ制御可能な半導体スイッチS1およびS2は電気的に直列に接続され、この直列回路が単極の蓄積コンデンサCSMに電気的に並列接続されている。ターンオフ制御可能な半導体スイッチS1およびS2に逆並列にそれぞれダイオードD1もしくはD2が接続されている。従って、これらのダイオードD1およびD2はそれぞれフリーホイーリングダイオードを成している。両ターンオフ制御可能な半導体スイッチS1およびS2の接続点はモジュール端子X2として引き出されている。単極性の蓄積コンデンサCSMの負側端子が第2のモジュール端子X1を成す。単極性の蓄積コンデンサCSMの充電状態においてコンデンサ電圧USMが生じる。
【0039】
各弁アームP1,N1,P2,N2,P3,N3の2極サブシステムSM1,SM2,…,SMnのこれらのコンデンサ電圧USM1,USM2,…,USMnは加算されて、それぞれ弁電圧UZP1,UZN1,UZP2,UZN2,UZP3,UZN3となる。それぞれ1つの相モジュールの2つの弁電圧UZP1とUZN1との和、UZP2とUZN2との和、UZP3とUZN3との和が、直流電圧端子PおよびNの間に現れる直流電圧Udcとなる。
【0040】
これらの2極サブモジュールSM1,SM2,…,SMnのそれぞれは、3つのスイッチング状態、即ちスイッチング状態I、IIおよびIIIのうちの、1つのスイッチング状態に制御される。複数のモジュール端子X2およびX1に、どのスイッチング状態I、IIもしくはIIIで、どの端子電圧UX2X1が現れ、スイッチング状態I、IIもしくはIIIにおいて、ターンオフ制御可能な半導体スイッチS1およびS2が、どのようにゲート制御されるかは、この図示の変換器回路構成を開示するドイツ特許出願公開第10103031号明細書から、その内容を引き出すことができる。
【0041】
図4の実施形態に対しては、系統リアクトル50と軸発電機システムの出力端子52,54,56との間に、それぞれコンデンサC1と抵抗R1との直列回路が接続され、これらの抵抗R1の自由端が互いに導電接続されている。その直列回路の両構成要素C1およびR1の順序は、この図に対して取り替えてもよい。その場合には、コンデンサC1の自由端が互いに導電接続される。これらの減衰コンデンサアームは系統リアクトル50のインダクタンスと共に低域通過フィルタを構成し、3つの抵抗R1の接続点58が軸発電機システムの中性点を成している。この接続点58には、船内電力系統48の接地端子に対して高抵抗が接続されるとよい。この種の高抵抗接続により、高抵抗接地された船内電力系統48における地絡事故を検出することができる。
【0042】
分散された複数のエネルギー蓄積器CSMを備えた変換器46の場合に、電気的に直列接続された2極サブモジュールSM1,SM2,…,SMnの個数によって、一方では階段状出力電圧の階段数が決定され、他方ではコンバータ出力電圧が船内電力系統のあらゆる任意の振幅、例えば中圧系統に適合させられる。変換器46の相モジュールの各弁アームP1,N1,P2,N2,P3,N3の2極サブモジュールSM1,SM2,…,SMnの個数が多いほど、コンバータ出力電圧がますます正弦波状になる。それによって、系統反作用に対する船級協会の要求を遵守することを可能にするのに、もはやフィルタ手段は必要でなくなる。
【0043】
2極サブモジュールSM1,SM2,…,SMnのターンオフ制御可能な半導体スイッチS1およびS2として、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、特にLV−IGBTが使用される。1200V乃至1700Vの阻止電圧を有するこれらのLV−IGBTは、3300V,4500V乃至6500Vの阻止電圧を有するHV−IGBTに比べて、著しく高いパルス周波数でスイッチングさせることができる。更にLV−IGBTはHV−IGBTに比べて著しく安価である。中圧コンバータ42におけるLV−IGBTおよび多数の2極サブモジュールSM1,SM2,…,SMnの使用によって、このコンバータ42の出力電流を短絡時に高い動的応答性にて制限することができる。それによって、船内電力系統に対する短絡電流供給に関する要求を簡単に満たすことができる。変換器46の弁アームP1,N1,P2,N2,P3,N3ごとの2極サブモジュールSM1,SM2,…,SMnの個数が多いおかげで、船内電力系統側のフィルタを省略することができるので、過渡的な運転状態を、より容易に制御することができる。この理由は、船内電力系統側にフィルタがもはや存在しないことから、過渡的な運転状態がもはや振動を励起し得ないことにある。同様に、分散された複数のエネルギー蓄積器CSMを有する変換器46の弁アームP1,N1,P2,N2,P3,N3ごとの2極サブモジュールSM1,SM2,…,SMnの個数に応じて、この変換器46を容易にあらゆる任意の出力電圧に適合させることができ、それによって、多くの用途において変圧器22を省略することが可能となる。
【0044】
軸発電機システムの電圧中間回路形コンバータ42の船内電力系統側の変換器26として分散された複数のエネルギー蓄積器を有する変換器46を使用することによって、この電圧中間回路形コンバータ42の制御・調節ステム28のために非常に高いクロック周波数を使用することができ、それによって、この制御・調節ステム28の限界周波数は、起こり得る共振の領域外に存在することとなる。それによって、コンバータ46の、設備に依存しないパラメータ設計が可能となる。
【0045】
電圧中間回路形コンバータ42の船内電力系統側の変換器26を多数のエネルギー蓄積器CSMを有する変換器46として構成することによって、電圧中間回路形コンバータ42を軸発電機コンバータ20として使用することができるので、始動用コンバータ34と始動用電動機36とを有する調相機32は、もはや必要ではなくなる。同様に、フィルタおよび変圧器は、船内電力系統側において、もはや必要ではなくなる。この変換器の構成によって、中圧コンバータにおける2極サブモジュールSM1,SM2,…,SMnにLV−IGBTが使用され、それにより、この変換器46は多数のサブモジュールSM1,SM2,…,SMnと相まって、結果的に高いスイッチング周波数を有することとなり、短絡電流を高い動的応答性で以て制限することが可能となる。中間回路コンデンサバッテリ40を多数の分散された複数のエネルギー蓄積器CSMに分割した電圧中間回路形コンバータである、軸発電機コンバータの船内電力系統側の変換器26としての分散された複数のエネルギー蓄積器CSMを有する変換器46により、ディーゼル式電気推進船舶における電力系統特性を、著しく改善することが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
18 軸発電機
22 変圧器
42 電圧中間回路形コンバータ
44 発電機側変換器
46 系統側変換器
48 船内電力系統
50 系統リアクトル
52,54,56 出力端子
C1 コンデンサ
R1 抵抗
SM 単極の蓄積コンデンサ
N1,N2,N3 下側弁アーム
P1,P2,P3 上側弁アーム
S1,S2 ターンオフ制御可能な半導体スイッチ
SM1〜SMn 2極サブモジュール(2極サブシステム)
図1
図2
図3
図4
図5