特許第5881709号(P5881709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881709
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】バギー
(51)【国際特許分類】
   B62B 7/08 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   B62B7/08
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-528617(P2013-528617)
(86)(22)【出願日】2011年9月9日
(65)【公表番号】特表2013-537143(P2013-537143A)
(43)【公表日】2013年9月30日
(86)【国際出願番号】EP2011065638
(87)【国際公開番号】WO2012034940
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2014年9月4日
(31)【優先権主張番号】102010037506.3
(32)【優先日】2010年9月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514262842
【氏名又は名称】グリーントム アイピー アンド ライセンシング ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100103414
【弁理士】
【氏名又は名称】戸村 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明
(72)【発明者】
【氏名】ボスト,バート
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01842760(EP,A2)
【文献】 特開昭52−069139(JP,A)
【文献】 特開2002−120618(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0196736(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0237949(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0043699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 7/00−19/04
B62B 1/00− 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開いた状態で傾斜した面を通るスライディングフレームを含むバギー又は折りたたみ可能なベビーカーであり,該スライディングフレームが分割部を有しており,該分割部の領域にジョイントがあるため,折りたたむ際に前記スライディングフレームの上部は,前記スライディングフレームの下部に向かって,前記ジョイントのほぼ水平な軸を中心に旋回可能であり,さらに前記バギーは,ホイール付きアンダフレームも含み,該アンダフレームは,リヤフレーム(13)の下部と,前記スライディングフレームの下部(12)の下方部分とから構成され,折りたたんだ状態では,前記スライディングフレーム下部及び上部,並びに前記アンダフレームの少なくとも一部が互いにほぼ平行又は平坦な角度にあり,前記バギーは平坦でコンパクトな状態となり,両方の互いに旋回可能な前記スライディングフレーム部分は,それぞれほぼU字フレームの形状を有し,前輪(16)の懸架部が前記スライディングフレームの下部(12)にあり,後輪(15)の懸架部は,水平なクロスストラット(131)を有する前記アンダフレームのリヤフレーム(13)にある,バギーであって,
横方向に通るジョイントスリーブ(124)が前記スライディングフレームの下部(12)に取り付けられており,前記ジョイントスリーブ(124)の中に前記リヤフレームの上部の水平クロスストラット(131)が,水平軸(22)を中心に旋回可能に支持されていることを特徴とするバギー。
【請求項2】
前記アンダフレームの両側にそれぞれ支柱(14)が設けられており,前記支柱の下方の各端部は前記アンダフレームの前記リヤフレーム(13)に,前記支柱の上方の各端部は前記スライディングフレームの上部(11)に,それぞれヒンジで取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のバギー。
【請求項3】
前記アンダフレームの前記リヤフレーム(13)が,各側面にそれぞれ1つの支持脚(132,133)を有し,該支持脚のそれぞれの下端部には,それぞれ一方の後輪(15)のための軸が形成されていることを特徴とする,請求項1又は2記載のバギー。
【請求項4】
前記アンダフレームの前記リヤフレーム(13)がプラスチック製の一体形成品であり,前記リヤフレームは,2つの支持脚(132,133),該両方の支持脚を上方で互いに接続している前記水平クロスストラット(131),各前記支持脚の下端部に形成されている,それぞれ一方の後輪(15)のための軸,及び両方の前記支持脚を接続するもう1つの下部クロスストラットを含んでいることを特徴とする,請求項1〜3いずれか一項記載のバギー。
【請求項5】
前記後輪用のブレーキが,前記リヤフレーム(13)の下部クロスストラット(135)に沿ってガイドの中を動くスライダ(19)を含み,該スライダの端部にはブレーキエレメント(191)が装備され,前記スライダが前記ガイド内を一方向に移動する際,前記ブレーキエレメントが,両方の前記後輪(15)で同時に,対応するかみ合いエレメント(151)とかみ合うことを特徴とする請求項1〜4いずれか一項記載のバギー。
【請求項6】
前記スライダ(19)が,ブレーキエレメント(191)として歯形の爪を有し,該爪は前記後輪(15)に取り付けられている対応するリングギヤ(151,152)にかみ合い,一方の後輪では内部リングギヤとのかみ合いが行われ,他方の後輪では外部リングギヤとのかみ合いが行われることを特徴とする請求項5記載のバギー。
【請求項7】
前記ブレーキエレメント(191)を備える前記スライダ(19)は,プラスチック製の弓形の一体形成品であり,該一体形成品のために,前記リヤフレーム(13)の前記下部クロスストラット(135)内の湾曲スロットがガイドとして用いられることを特徴とする請求項5又は6記載のバギー。
【請求項8】
前記スライディングフレームの下部(12)は,上方が塞がれていないU字形ストラットの形プラスチック製の一体形成品であり,前記U字形ストラットの両脚(122,123)の各上端部において,前記スライディングフレームの上部(11)とヒンジで接続するための前記ジョイント(17,18)のそれぞれのジョイントハーフ部品(172,182)を含んでいることを特徴とする請求項1〜7いずれか一項に記載のバギー。
【請求項9】
前記スライディングフレームの下部(12)の下端部に,さらにスリーブ(125)を有し,該スリーブ内には前記前輪(16)の懸架部が,垂直軸を中心に回転可能に取り付けられ,従って操縦可能に取り付けられていることを特徴とする請求項8記載のバギー。
【請求項10】
前記スライディングフレームの上部(11)は,下方が塞がれていないU字形ストラットの形プラスチック製の一体形成品であり,前記スライディングフレームの下部(12)とヒンジで接続するための前記ジョイント(17,18)の,それぞれ対応するジョイントハーフ部品(171,181)を含んでいることを特徴とする請求項8又は9いずれか一項に記載のバギー。
【請求項11】
前記スライディングフレームの上部(11)の前記U字形ストラットの両脚(111,112)の各内側に,布製シートを固定するためのエレメント(114)を有することを特徴とする請求項10記載のバギー。
【請求項12】
前記スライディングフレーム(11,12)及び前記アンダフレーム(12,13)の全支持部品並びに全機能部品が,同一材料のプラスチックから成ることを特徴とする請求項1又は2記載のバギー。
【請求項13】
全ての機能構成部品を備える前記スライディングフレーム(11,12)と前記アンダフレーム(12,13)とが,互いに接続可能な,全部で5つのプラスチック製構成部品,すなわち,前記スライディングフレームの上部(11)を含む1つの構成部品,前記スライディングフレームの下部(12)を含む1つの構成部品,前記リヤフレーム(13)を含む1つの構成部品,並びに2つの前記支柱(14)だけから成り,該支柱の下方の各端部は前記アンダフレームの前記リヤフレーム(13)に,前記支柱の上方の各端部は前記スライディングフレームの上部(12)に,それぞれヒンジで取り付けられていることを特徴とする請求項2記載のバギー。
【請求項14】
前記リヤフレーム(13)の前記上部の水平クロスストラット(131)がスパナ面(131a)を有し,該スパナ面には,適切にサイズ決めされた取付け固定具が前記スライディングフレームの下部(12)の前記ジョイントスリーブ(124)の中に割り当てられているため,前記バギー(10)を組み立てた後で,水平軸(22)を中心に,前記クロスストラット(131)を旋回可能に支持している前記ジョイントスリーブ(124)から前記クロスストラットを取り外すことはできないことを特徴とする請求項1〜13いずれか一項に記載のバギー。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は,バギー又は折りたたみ可能なベビーカーに関し,このバギーは,開いた状態で傾斜した面を通るスライディングフレームを含み,このスライディングフレームは分割部を有しており,この分割部の領域にジョイントがあるため,折りたたむ際にスライディングフレームの上部は,スライディングフレームの下部に向かって,このジョイントのほぼ水平な軸を中心に旋回可能であり,さらに,このバギーは,ホイール付きアンダフレームも含み,折りたたんだ状態では,スライディングフレーム下部及び上部,並びにアンダフレームの少なくとも一部が互いにほぼ平行であるか,又は平坦なアングルの中にあり,バギーは平坦でコンパクトな状態となり,両方の互いに旋回可能なスライディングフレーム部分はそれぞれが例えばU字フレームの形状を有しており,前輪の懸架部がスライディングフレームの下部にあり,後輪の懸架部は水平なクロスストラットを有するアンダフレームのリヤフレーム部分にある。
【0002】
バギーとは,本発明において,幼児用の手押し車を意味し,開いた状態ではこの手押し車の中で子供は着座姿勢をとっており,大体が取り外し可能で持ち運びできる入れ物の中に乳幼児が横たわった姿勢をとっている昔ながらのベビーカーとは異なっている。
【0003】
バギー又はベビーカーは,例えばDE202008017305U1から知られている。この周知のバギーでは,多くの市販モデルと同様に,アンダフレームとしての水平なベース構造があり,このアンダフレームに後輪が取り付けられ,後輪と前輪との間にアンダフレームが伸びている。前輪は,横方向に通るストラットに取り付けられている。傾斜しているスライディングフレームと水平なベース構造の間を,ほぼ垂直方向にサポートエレメントが通り,これらのサポートエレメントの端部は,スライディングフレームともアンダフレームともそれぞれヒンジで連結されている。このシートユニットは,バギーで知られているように,バギーのフレームに取り外し可能に取り付けられている。しかしながら,ここでは,折りたたむ際に,スライディングフレームの上部がスライディングフレームの下部方向に折りたたまれるように,ジョイントを中心に旋回運動が行われる。しかし,バギーの場合は,この旋回運動を逆の回転方向にも実施することが可能であるため,折りたたむ際にはスライディングフレームの上部が後方に旋回する。この周知のバギーでは,ジョイントのロックを外すために,スライディングフレームの上部の押し動作が下方に向かって行われるように設けられている。しかし,ジョイントを外すためには,その他の機構,例えばジョイント自体でも可能であるが,本発明においては重要ではない。
もう1つのバギーは,DE102007047702A1から知られている。この周知のバギーの場合は,アンダフレームがほぼ前輪の方向を示すフロントパイプと,ほぼ後輪の方向に延びるリヤパイプとから成り,その際,開いた状態を側面から見ると,リヤパイプとフロントパイプとが,上部に最高地点のあるほぼ直角の三角形を形成しており,スライディングフレームは,フロントパイプとほぼ面一になっている。下方では,フロントパイプとリヤパイプとの間を,ヒンジで互いに連結されているストラットの配置がほぼ水平に通り,この配置は,折りたたみの際に上方へ引き上げられ,中央でたたまれる。折りたたまれたコンパクトな状態では,この場合,傾斜した軸を中心に内部へ旋回する後輪が2つの前輪の間に位置している。折りたたむ際にフレームの長さを短くするため,ここでは,さらに,スライディングフレームがホルダを通り抜けて前輪の方向に押されるようになっている。従って,折りたたむには,2つの動作,すなわち,アンダフレームを中心に折りたたむ旋回動作と,さらにスライディングフレームのスライド動作とが必要である。
【0004】
前述した種類の,これまで知られているバギーに共通しているのは,スライディングフレームとアンダフレームの大部分が比較的多くの個別部品から成っており,これらは,製造の際に極めて時間のかかる組立てを必要とすることである。この場合,少なくとも部分的に金属部品であるのは,例えばストラッド,ホイール軸,フレーム部品などである。個々の構成部品を接続するためには,ボルト,リベットなどの従来の固定エレメントが用いられる。
【0005】
冒頭に述べた種類の特徴を備えるバギー(英語で「stroller」)は,US2010/0109293A1に説明されている。バギーを手押し移動可能な使用ポジションからコンパクトな輸送ポジションに折りたたむ際の手順は,次のように行われる。まず,スライディングフレームの上部と下部との間のジョイント部分の接続を外し,次に,スライディングフレームの上部をほぼ180°後方に下部まで旋回して閉じる。スライディングフレームの下部の横方向の接続部に取り付けられている前輪の間隔は比較的狭く,アンダフレームのリヤフレームに取り付けられている後輪の間隔は前輪よりも広くなっているため,折りたたんだ状態では前輪の両方が後輪の間に位置している。このバギーでは,リヤフレームがクロスストラットも有しているが,このクロスストラットは,比較的下方に配置されており,後輪から出発しているストラットがこのクロスストラットを通過して上方へジョイントまで続き,このジョイントでスライディングフレームの下部にヒンジで接続されている。このジョイント部分には横方向の接続はない。周知のこのバギーは,第1に,スライディングフレームの中にもう1つのシートフレームを収納するように形成されており,このシートフレームは調整可能であるため,子供を着座姿勢にも,又は直立姿勢にも保つことが可能である。この理由から,フレーム構造全体が非常に複雑になっており,多数の構成部品が含まれている。
【0006】
DE202005013397U1から,もう1つのバギーが知られており,このバギーは,コンパクトな輸送ポジションに折りたたむ際,前述したバギーと同様の動きを示す。しかし,このバギーの場合は前輪が1つしかない。リヤフレームがヒンジでスライディングフレームの下部と接続されている部分には平坦なクロスストラットがあり,これはスライディングフレームの下部の補強のために用いられ,前述のジョイントのための機能は有していない。後輪を備えるリヤフレームにはもう1つのクロスストラットがあり,これは,後輪の方へ傾斜して通る両方のストラットを互いに接続している。しかし,このクロスストラットは,前述のストラットの下方を,距離を置いて通り,同様に前述のジョイントのための機能をもたない。この文献では,このジョイントを外すためのロック解除機構が重要であり,ジョイントを外した後は,輸送ポジションへのバギーの折りたたみが可能となる。この機構は構造が比較的複雑であることから,故障が多く発生しやすい。さらに,このバギーでは,ジョイント周辺部の機構により,一部は,効率的な製造ができない多数の比較的小さな個別部品から成っている。その他でも,このバギーを製造する場合には多数の金属部品が使用される。
【0007】
言及した問題点に基づいて,本発明の課題は,機能性を維持しつつ,より低コストな製造及び組立て時間の短縮に関して,冒頭に述べた種類のバギーの構造を改善することにある。
【0008】
本課題の解決方法は,主請求項の特徴を備える,冒頭に述べた種類のバギーによって提供される。本発明に基づき,横方向に通るジョイントスリーブがスライディングフレームの下部に取り付けられており,このジョイントスリーブの中にリヤフレームの水平な上部クロスストラットが,水平軸を中心に旋回可能に支持されている。
【0009】
本発明に基づくバギーの支持部品は,主として3つの構成部品だけで構成されているのが好ましい。第1の構成部品はスライディングフレームの上部を形成し,第2の構成部品はスライディングフレームの下部を形成し,これは第1の構成部品とジョイントによって接続されているため,スライディングフレームの上部が,スライディングフレームの下部に向かって旋回可能になっている。このスライディングフレームの下部には,前輪を取り付けることもできる。 第3の構成部品は,いわゆるリヤフレームであり,このリヤフレームに後輪を取り付けることができ,その際,このリヤフレームは,バギーを折りたたむ際にスライディングフレームの下部に向かって水平軸を中心に旋回する。DE202008017305U1による従来技術とは異なり,好ましくは,本発明に基づき,スライディングフレームの上部は下部まで折りたたまれるのではなく,この下部から離れる形で,逆の回転方向に後方へ旋回する。さらに,本発明に基づく解決方法では,後輪から前輪に延びる水平の平坦なベース構造がもはやなく,折りたたむ場合には,前輪と後輪とが互いに近づく。これに対して,前輪と後輪との間には水平な接続がない。従って,本発明に基づくバギーは非常に平坦に折りたたむことができる。
【0010】
DE102007047702A1による従来技術から知られている解決方法に対して,本発明に基づく解決方法は,折りたたむ際に,スライディングフレームの上部が内側にスライドするのではなく,スライディングフレームの下部に向かって,共通のジョイント軸を中心に旋回するという点が異なっている。同様に,本発明に基づく後輪を支持するリヤフレームの旋回運動は,後輪を取り付けているストラットが,それぞれ個別に,傾斜した軸を中心に旋回する従来技術とは異なっている。これに対し,本発明によれば,水平軸が1つだけあり,折りたたむ際に,リヤフレームがスライディングフレームの下部に向かってこの水平軸を中心に部分的に旋回し,特に,スライディングフレームの上部の旋回運動と同時に,好ましくは,同じ回転方向にも旋回する。
【0011】
このことは,1回だけの動きでバギーをコンパクトな状態に折りたたむことができるという大きな利点があり,その際,スライディングフレームの上部とリヤフレームとがスライディングフレームの下部(通常,前輪がある部分)まで近づいて,バギーのフレームのこれら3つの主要部品が平坦にたたまれ,これらのフレーム部品はほぼ平行な状態になる。さらに,本発明に基づく解決方法では,言及した従来技術に対して,一連の構成部品が省略される。なぜなら,ここでは,後輪が取り付けられているリンケージと,前輪が取り付けられているリンケージとが,5つのストラットだけを備える構成によって互いに接続されているからである。
【0012】
本発明の特に好ましい発展形態では,アンダフレームの両側にそれぞれ支柱が設けられており,これらの支柱の下方の各端部はアンダフレームのリヤフレームに,支柱の上方の各端部はスライディングフレームの上部に,それぞれヒンジで取り付けられている。これらの支柱は,バギーを開いた状態で,(例えば,かみ合わせなどによって)ジョイントをロックする場合,スライディングフレームの上部の両側を,それぞれリヤフレームに対して支持しており,例えば開いた状態においてほぼ垂直なポジションをとることができる。部品数を減らすため,また,射出成形されたプラスチック製構成部品だけから成るこのバギーの製造コンセプトをできるだけ維持するために,支柱をヒンジで取り付けるためのジョイント突起部を,一方ではスライディングフレームの上部に,及び/又は他方ではリヤフレームにそれぞれ射出成形することができ,それにより,これらの支柱に伴ってさらに2つの構成部品のみが生じるが,その他のジョイントのための固定エレメントは不要である。
【0013】
本発明の好ましい発展形態では,アンダフレームのリヤフレームが各側面にそれぞれ1つ支持脚を有し,この支持脚のそれぞれの下端部には,それぞれ一方の後輪のための軸が形成されている。
【0014】
この場合,さらに好ましいのは,アンダフレームのリヤフレームが一体形成でプラスチックから射出成形された構成部品であり,このリヤフレームは,2つの支持脚,これらの両方の支持脚を上方で互いに接続している水平なクロスストラット,各支持脚の下端部に形成されているそれぞれ一方の後輪用の軸,及び必要に応じて両方の支持脚を接続するもう1つの下部クロスストラットを含んでいる。後輪用の両方の軸がリヤフレームに形成されていることにより,先に言及した必要な構成部品を削減するというコンセプトと,できるだけ全ての構成部品を射出成形されたプラスチックから製造することとが,徹底して追求されている。従来技術から知られているバギーとは異なり,後輪用の軸には,独立した構成部品も,金属部品も不要である。むしろ,これらの軸は,リヤフレームの射出成形時に同時に射出成形することができる。このことにより,後で材料を分別することなく,バギーを完全にリサイクルすることが可能となる。このバギーは,実質的に完全に同一材料が使用されている。さらに,これにより,製造時のバギーの組み立ても非常に単純化される。なぜなら,射出成形された軸に後輪を素早く取り付けることができるからである。
【0015】
本発明の対象は,さらに,とりわけ請求項5の対象である言及した種類の特徴を備えるバギー用の特に有利なブレーキである。これによれば,後輪用のブレーキが,リヤフレームの下部クロスストラットに沿ってガイドの中を動くスライダを含み,このスライダの端部にはブレーキエレメントが装備され,スライダがガイド内を一方向に移動する際,このブレーキエレメントが,両方の後輪で同時に対応するかみ合いエレメントとかみ合うようになっている。ここで有利であるのは,場合によっては唯一の構成部品から製造できる,単純に構成された後輪のブレーキ機構が備えられていることであり,この唯一の構成部品は,同様に射出成形によってプラスチックから製造可能である。なぜなら,両方の後輪のブレーキエレメントはスライダに取り付けられるからである。このスライダ用のガイドはリヤフレームの,例えば言及したクロスストラットに取り付けられており,このクロスストラットは例えば弓形に形成することができる。従って,リヤフレームについても,ブレーキ機構のためのその他の構成部品が不要となる。この場合も,ブレーキ機構には唯一の構成部品を取り付けるだけで済むことから,組立てが極めて単純化される。
【0016】
例えば,ブレーキ機構のための言及したスライダが,ブレーキエレメントとして歯形の爪を有し,これらの爪は後輪に取り付けられている対応するリングギヤにかみ合い,その際,一方の後輪では内部のリングギヤとのかみ合いが行われ,他方の後輪では外部のリングギヤとのかみ合いが行われる。この好ましい構造の実施形態により,スライダを一方向に動かすことによって両方の後輪に同時にブレーキをかけることが可能となる。ブレーキエレメントを備えるスライダは,例えば,一体形成でプラスチックから射出成形された弓形の構成部品であることができ,この構成部品のために,リヤフレームのクロスストラット内の湾曲スロットがガイドとして用いられる。スライダの往復移動により,スライダは,例えば,それぞれブレーキポジションから解除ポジションになる。
【0017】
先に言及した必要な構成部品を削減するというコンセプトと,できるだけ全ての構成部品を射出成形されたプラスチックから製造することとを徹底して追求するため,さらに好ましくは,スライディングフレームの上部と下部とをヒンジで接続するためのジョイントに必要なエレメントも,それぞれ両方の言及した部分に射出成形され,それにより,独立したジョイント構成部品が不要となる。例えば,スライディングフレームの下部は,上方が塞がれていないU字形ストラットの形に一体形成でプラスチックから射出成形された構成部品であり,このU字形ストラットの両脚の各上端部において,スライディングフレームの上部とヒンジで接続するためのジョイントのそれぞれのジョイントハーフ部品を含んでいる。スライディングフレームの上部は,同様に,例えば下方が塞がれていないU字形ストラットの形に一体形成でプラスチックから射出成形された構成部品であり,スライディングフレームの下部とヒンジで接続するためのジョイントの,それぞれ対応するジョイントハーフ部品を含んでいる。従って,スライディングフレームの上部と下部との間をヒンジで接続するのに必要な全てのジョイントエレメントはプラスチックから成り,一体形成かつ射出成形によって,スライディングフレームのこれらの両方の部分に取り付けられている。
【0018】
従来のバギーでは,布製のシートをバギーのフレームに取り付けるために,ボタンなどの独立した固定エレメントを用いることがほとんどであり,大抵の場合,これらの固定エレメントは金属から成り,バギーの初回取付け時に製造者側で取り付けなければならない。これに対し,本発明に基づく解決方法では,好ましくは,スライディングフレームの上部のU字形ストラットの両脚の各内側に,布製シートを固定するためのエレメントが射出成形されているため,この措置によっても,バギー全体のより簡単なリサイクルが可能となり,組立て時間もさらに短縮される。
【0019】
本発明の対象は,さらに,とりわけ請求項12及び13の対象である言及した種類の特徴を備えるバギーの,特に有利に構成されている変更例である。これによれば,このバギーは,スライディングフレーム及びアンダフレームの全支持部品並びに主要な全機能部品が,同一材料のプラスチックから射出成形された構成部品のみから成る。この変更例は,そのようなバギーが何の問題もなくリサイクルできるという特別な利点を有している。様々な材料の構成部品ごとに分別する必要がなく,場合によっては一度も分解せずに,バギー全体を細断して,溶解することができる。
【0020】
さらに,好ましくは,全ての主要な機能構成部品を備えるスライディングフレームとアンダフレームとが,互いに接続可能な,射出成形された全部で5つのプラスチック製構成部品,すなわち,スライディングフレームの上部を含む1つの構成部品,スライディングフレームの下部を含む1つの構成部品,リヤフレームを含む1つの構成部品,並びに2つの支柱から成り,2つの支柱の下端部はそれぞれアンダフレームのリヤフレームに,上端部はスライディングフレームの上部に,それぞれヒンジで取り付けられている。このことにより,非常に少ない構成部品をプラスチックから射出成形し,引き続き,僅かな作業工程でこれらの構成部品を極めて短時間のうちに組み立てることができるため,このバギーは極めて低コストでの生産が可能である。従来のバギーを組み立てるには,このバギーを構成する,ほとんどボルト及びリベット接続によって互いに接続しなければならない個別部品が多数あるために,手作業の組み立て時間を1時間以上も要するが,本発明に基づくバギーの場合は,僅か数分のうちに組み立てることが可能である。このことは,組立て時の人件費を大幅に抑えることにつながり,それによって製造コストがかなり低下することになるのは明白である。
【0021】
本発明に基づく,もう1つの有利な好ましい変更例は,リヤフレームの上部の水平クロスストラットがスパナ面を有し,これらのスパナ面には,適切にサイズ決めされた取付け固定具がスライディングフレームの下部のジョイントスリーブの中に割り当てられているため,バギーを組み立てた後では,水平軸を中心にクロスストラットを旋回可能に支持しているジョイントスリーブからこのクロスストラットを取り外すことはできなくなる。従って,リヤフレームとスライディングフレームの下部との間の接続は,製造者側の初回組立ての際にのみ行うことができるが,後からユーザーによって再び接続を外すことはできないように形成されている。そのため,フレームのこれらの支持部品の接続は継続的に安定しており,偶然に接続が外れることが防止されている。
【0022】
下位請求項で説明されている特徴は,本発明に基づく課題の解決方法の好ましい発展形態である。本発明のその他の利点は,以下の詳細な説明に示されている。
【0023】
以下に,実施例に基づき,添付の図を用いて本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に基づくバギーの変更例による全体の斜視図;
図2】部分的に折りたたんだ状態にあるバギーのもう1つの斜視図;
図3】完全に折りたたんだ状態にあるバギーのもう1つの斜視図;
図4】バギーのスライディングフレームの上部を拡大した詳細図;
図5】バギーのスライディングフレームの下部を拡大した詳細図;
図6】バギーのリヤフレームを後ろから見た図;
図7図6とは少し別の角度から(下側から)見た,スライディングフレームの下部のジョイントスリーブ部分を拡大した詳細図であり,このジョイントスリーブは,リヤフレームの上部クロスストラットを支持している。
図7a】前方から見た,スライディングフレームの下部を拡大した詳細図;
図8】ブレーキ機構のスライダの個別部品図;
図9】スライダのブレーキエレメントが後輪のリングギヤにかみ合う様子を示した詳細図;
図10】リヤフレームに射出成形された後輪用の軸の詳細図;
図11a】スライディングフレームの上部と下部との間の接続部分にあるジョイントの詳細図;
図11b図11aとは別の角度から見た,ジョイントのもう1つの詳細図;
図12】一方の前輪の懸架部の詳細図。
【0025】
まず,図1は,本発明に基づく,開いた使用状態のバギー10の全体の斜視図であるが,フレームのみが示されており,後で詳しく説明するような,バギーのシートを形成する,フレームの部品に固定する布製カバーは表示されていない。フレーム構造全体は,主として3つの主要構成部品,つまり,スライディングフレームの上部11,スライディングフレームの下部12及びリヤフレーム13のみから成る。これに加え,さらに2つの平行な支柱14があり,これらの支柱は,図1に示されている開いた状態ではほぼ垂直に通っている。
【0026】
スライディングフレームの上部11の外形は実質的にU字形であり,このU字形は下方が塞がれていない。スライディングフレームの下部12の外形も実質的にU字形であるが,この場合のU字形は上方,すなわちスライディングフレームの上部11へ向く方が塞がれていない。スライディングフレームの下部12の横方向に通る下方のU形ブリッジ121には,バギー10の両方の前輪16が取り付けられている。バギー10の両方の後輪15は,リヤフレーム13に取り付けられている。後輪15を備えるリヤフレーム13の下部は,スライディングフレームの下部12の下方部分と共に,いわゆるバギーのアンダフレームを形成している。すなわち,このアンダフレームには独立の構成部品は不要であり,スライディングフレームおよびアンダフレームを備える支持構造全体が,言及した3つの主要構成部品,つまり,スライディングフレームの上部11,スライディングフレームの下部12及びリヤフレーム13から成る。これらの3つの主要構成部品は,好ましくは,それぞれが一体形成で,特に射出成形法によってプラスチックから製造され,ほとんど全てのその他の適用及び機能部品は製造後にはすでに3つの主要構成部品に取り付けられており,すなわち一緒に射出成形されているため,後に続く多くの組み立てプロセスを単純化できるか,又は省略することができる。
【0027】
ほぼU字形のスライディングフレームの上部11及びほぼU字形のスライディングフレームの下部12は,それらの両方のU字の脚111,112又は122,123の互いに向かい合う端部がジョイント17,18によってヒンジで相互に接続され,特に,ジョイント17,18のロックを解除すると,上部11が後方に倒れ,ほぼ180°旋回するか,又はたたむことができるように接続されており,バギーは,図3に示されているような平坦に折りたたまれた輸送態勢になる。この場合,スライディングフレームの上部11の両方の側面には,それぞれ外部ジョイントハーフ部品171,181が取り付けられており,これらは,好ましくは,製造の際に射出成形されており,一方,スライディングフレームの下部12には,それぞれ内部ジョイントハーフ部品172,182が取り付けられており,これらも射出成形することができる。それぞれのジョイントハーフ部品は相互作用しており,部分的にかみ合っているため,上部11と下部12とは,ジョイントを外した場合に互いに旋回することができる。一方で,両方の支柱14は,それぞれの上端部がジョイント17,18のやや上部付近でスライディングフレームの上部11のそれぞれ一方の脚に接続され,他方,両方の支柱14の下端部はそれぞれヒンジでリヤフレーム13に接続され,とりわけ,それぞれが1つの支持脚132,133を形成しているリヤフレーム13の一部に接続されている。これらの支柱14は,後輪15の軸134の少し上方でリヤフレーム13にヒンジで取り付けられている。
【0028】
図2及び3は,折りたたんで平坦な輸送ポジションにする場合の,様々な段階のバギーを示している。図1による開いた使用ポジションから出発して,バギー10は両方のジョイント17,18を外した後に折りたたまれ,その際,スライディングフレームの上部11は,ジョイント17,18を横方向に通る軸21を中心に後方及び下方に旋回して,後輪15の方向へ動く。同時に,折りたたむ際,スライディングフレームの下部12は,リヤフレーム13まで近づき,このとき下部12が横方向に通る軸22を中心に旋回するため,前輪16は後輪15まで近づく。この場合,スライディングフレームの下部12には,横方向に通るジョイントスリーブ124が取り付けられており,ジョイント軸22はこのジョイントスリーブを通って延び,その際,ジョイントスリーブ124はリヤフレーム13の上部の水平なクロスストラット131を旋回可能に支持している。次に,図3による完全に折りたたまれたポジションでは,バギーは完全に平坦になり,スライディングフレームの上部11は後輪15を備えるリヤフレーム13の上にあり,このリヤフレームは前輪16を備えるスライディングフレームの下部12の上にある。従って,スライディングフレームの上部11は,図1による開いたポジションから約180°旋回して,図3による完全に折りたたまれたポジションに達する。
【0029】
次の図4は,スライディングフレームの上部11の拡大図を示している。スライディングフレームの上部11は実質的にU字形の外形を有し,このU字形は下方が塞がれていない。従って,両方のU字の脚111,112は,上側が横方向に通るU形ブリッジ113によって互いに接続されている。スライディングフレームの下部12の方を向いている両方のU字の脚111,112のそれぞれの下端部には,それぞれの外部に射出成形された状態で,両方の外部ジョイントハーフ部品171,181が取り付けられ,この部分でスライディングフレームの上部11が両方のジョイント17,18によってスライディングフレームの下部12にヒンジで接続され,その際,ジョイント軸21はこれらのジョイントを通過して横方向に通っている。従って,それぞれの外部ジョイントハーフ部品171,181と共に,重要なエレメント,この場合はリング形のガイドエレメントがU字形のスライディングフレームの上部11の脚に直接取り付けられている。そのため,これに対して,それぞれ相互に作用しているジョイントエレメント,すなわちそれぞれの内部ジョイントハーフ部品172,182は,図5に示されているように,同じくU字形のスライディングフレームの下部12の両方のU字の脚122,123の上端部にそれぞれ取り付けられている。従って,両方のジョイント17,18の主な部品は,スライディングフレームの両方のU字形部分11及び12に射出成形されている。ジョイント機能のためには,さらに必要に応じてジョイント内部部品のみが必要であり,これは,同様にプラスチックから製造することができる。これにより,ジョイント17,18に必要な全構成部品の数は,この種の従来のジョイントに比べ大幅に削減されているため,製造コストも,組立てコストも低下する。
【0030】
さらに図4から分かるように,スライディングフレームの上部11の両方のU字の脚111,112の内側には,それぞれ細長いストリップ115が取り付けられており,これらのストリップの中にはそれぞれ複数の凹部114があり,そこにバギーのシート(ここでは図示されていない)を固定することができる。例えば,これに対応する固定エレメントは,通常は布織物からなるシートに取り付けられており,かみ合わせたりすることができる。従って,追加の金属製の固定エレメントが省略される。これらの凹部を備えるストリップ115は,有利な方法では,上部11の射出成型時に一緒に射出成形される。
【0031】
図5に示されているスライディングフレームの下部12は,バギー10の第2の主要な支持フレーム構成部品を形成している。両方のU字の脚122,123とこれらの脚の下方で接続しているU形ブリッジ121とを備える,上方が塞がれていないU字形の他にも,この下部12は,U形ブリッジ121に対して平行に,このU形ブリッジから上方に離れたところで横方向に通る,両方のU字の脚122,123を互いに接続するジョイントスリーブ124を含み,このジョイントスリーブは,下側が部分的に開放された状態に形成されている。このジョイントスリーブ124の後面及び下側の一部は,図6においても認識できる。好ましいのは,このジョイントスリーブが,スライディングフレームの下部12に射出成形されているため,剛性の高い構成部品であることである。このジョイントスリーブは中空であり,リヤフレーム13の上部の水平なクロスストラット131を回転可能に支持しているため,ここに第2のジョイントが生じ,リヤフレーム13とスライディングフレームの下部12とがこの部分で横方向に通る軸22を中心にヒンジで互いに接続されている。図7は,クロスストラット131のそれぞれの端部が平坦部を有し,この平坦部からスパナ面131aが生じていることを示している。ジョイントスリーブ124には,それぞれ両方の外部先端部分の中に,相応に寸法決めされた凹部124aが形成されており,そのため,製造者側の初回組立て時に,特定の回転ポジションにおいてのみクロスストラット131の平坦部131aをジョイントスリーブ124の中に挿入することができる。バギーが完全に組み立てられると,再度取り外す際に必要となるこの回転ポジションにすることが不可能になる。これにより,バギーの組み立て後に,ジョイントスリーブ124とクロスストラット131との間のヒンジ接続が意図せずに外れ,それによってスライディングフレームの下部12とリヤフレーム13との間のヒンジ接続が外れるのも防ぐ。
【0032】
図6から,バギー10のフレームの第3のより大きな支持構成部品を形成するリヤフレーム13の構造が明らかになる。このリヤフレーム13は,外形がUを思わせる形状を有し,U字の脚は両方の支持脚132,133によって形成されており,これらの支持脚の下端部にはそれぞれ後輪15が取り付けられている。両方の支持脚132,133は,上方に向かって僅かに湾曲して互いに近づき,それぞれの上端部で水平なクロスストラット131によって横方向に互いに接続されており,このクロスストラット131はスライディングフレームの下部12のジョイントスリーブ124の中に収納されている。いわゆるU字形のU形ブリッジを形成する上部クロスストラット131から下方に離れたところに,僅かに湾曲した追加の下部クロスストラット135があり,これは,両方の支持脚132,133を互いに横方向に接続し,リヤフレーム13をさらに安定化している。この湾曲したクロスストラット135は後輪15の少し上を通っている。この湾曲したクロスストラット135とほぼ同じ高さで,それぞれの支持脚132,133にそれぞれ1つの支柱14がヒンジで取り付けられており,これらの支柱は,リヤフレーム13とスライディングフレームの上部11との間をヒンジで接続し,その際,これらの両方の支柱14は,バギー10が開かれている場合,側面から見てほぼ垂直方向に通り,支持脚132,133及びU字の脚111,112の両方に対して鋭角を形成している。スライディングフレームの上部11,スライディングフレームの下部12,リヤフレーム13及び両方の支柱14によって,すなわち,全部で5つの構成部品のみによって,その他の機能を満たす一連のエレメントも含め,バギーの全フレーム構造がすでに包括されている。
【0033】
そのようなエレメントが,図10の詳細図に示されている,一方の後輪15(この図では除外されている)用の軸134である。この軸134は支持脚133の下端部に射出成形され,後ろからリヤフレーム13を見ると,支持脚133から直角に外側へ延びているのが分かる。図5には,リヤフレーム13の支持脚133に取り付けられた後輪15が分かりやすく示されている。一方の後輪の軸134が,図10に拡大された寸法で示されている。支持脚133の射出形成後には,この軸134がすでにこの支持脚に取り付けられているという事実により,後輪15の取付けは,単にこれを取り付けて固定するだけで済んでしまうため,大幅な時間の短縮になる。後になってバギーを廃棄処分する場合も,このことによってリサイクルが簡単になる。なぜなら,後輪を取り外せば,これまで使用されていた金属製の軸で行われるような分解及び分別処理はもう必要ないからである。
【0034】
図6に示されている湾曲した下部クロスストラット135の背面は,図7aで大まかに示されている,スライダ19を収納するために設けられているガイド溝136を有しており,このスライダはこのガイド溝136に沿って移動可能であり,後輪のブレーキ機構の部品である。このスライダ19が,図8に個別に示されている。スライダ19は,好ましくは,射出成形でプラスチックから製造された構成部品である。このスライダ19は,比較的平坦なプラスチック部品であるため,十分に曲がりやすく,湾曲したガイド溝136の中に挿入し,この溝に沿って移動させることができる。スライダ19は,その両方の端部に,それぞれ歯形の爪の形をしたブレーキエレメント191を有している。しかし,この場合,スライダは,両端部に関して非対称的に形成されている。なぜなら,一方の端部では歯形の爪191が下を向き,スライダの他方の端部では歯形の爪が上を向いているからである。後輪15(図9を参照)には,それぞれの支持脚132,133を向く内側に,ホイール接地面に対して同軸に配置されている,内部リングギヤ151と外部リングギヤ152とを備える二重のリングギヤが取り付けられ,この外部リングギヤ152は図9で確認することができる。スライダ19は,ブレーキ作動の際,ここでは詳しく説明されないメカニズムによってある程度その溝の中を移動し,次に,両端部の非対称な形態により,一方の後輪15では下を向いた歯形の爪191が外部リングギヤ152の中にかみ合う。これは,スライダのこの端部が下方に押されるからである。同時に,スライダが移動する際に上方に引っ張られるスライダの他方の端部では,上を向いた歯形の爪191が他方の後輪15の内部リングギヤ151にかみ合うため,両方の後輪で同時にブレーキがかけられる。歯形の爪を備えるスライダ19も,後輪15のリングギヤと同様に,射出成形のプラスチック製構成部品であることが好ましく,それによって,ここでも後のリサイクルを簡単に行うことができる。接地面を備える後輪全体も,必要に応じて完全にプラスチックから成っていてもよい。
【0035】
図11aおよび図11bには,スライディングフレームの上部11を下部12にヒンジで接続するジョイント18の一方が,2つの異なる見方で示されている。図11aでは,ジョイント18が外側から見て斜めに傾き,図11bではこのジョイントがジョイント軸21に対して垂直になっている。これらの図では,外部ジョイントハーフ部品181が上部11のU字形ストラット112に形成されており,他方,内部ジョイントハーフ部品182はスライディングフレームの下部12のU字形ストラット123に形成されていることがよく分かる。両方の互いに面一なU字形ストラット112,123の間には,開いた使用状態において,切り出しを有する分割線23が通り,この分割線は図11a及び図11bの両方で確認される。
【0036】
図12には,操縦可能な一方の前輪16の懸架部がもう一度詳しく示されている。スライディングフレームの下部12には,このために,U形ブリッジ121の外側部分に,バギー10を立たせた状態で下方へ延びるスリーブ125がそれぞれ1つ射出成形されており,このスリーブは前輪の懸架部20の上部の短い脚201を,ほぼ垂直な軸を中心に回転可能に支持している。この懸架部20は,ほぼ逆L字形の構成部品であり,下方に向けられた長いほうの脚202は,この脚から直角に水平方向に外側へ延びる前輪16のホイール軸203を有している。この懸架部もプラスチックから射出成形で製造された構成部品であってよい。従って,この懸架部20に関しても,全体で使用する構成部品の大幅な削減によって,簡単なリサイクルと迅速な組立てという本発明のコンセプトが順守されている。上述した5つの主要な支持構成部品に加え,ブレーキ機構用のスライダ19及び前輪用の2つの懸架部20だけが加わって,4つのホイール以外では,プラスチック製構成部品の数は全部で8個になり,これらは全て射出成形で製造することができる。重量を軽減すると同時に,安定した,機械的負荷に耐えるフレーム構成部品にするため,スライディングフレームの上部11,スライディングフレームの下部12及びリヤフレーム13などのフレーム構成部品は,例えば,十分な肉厚を備える中空のストラットとして製造することができる。この場合,これらの構成部品を製造するために,内部ガス圧利用射出成形を使用することができ,この方法では,複雑に成形された中空の構成部品も製造することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 バギー
11 スライディングフレームの上部
111 U字の脚
112 U字の脚
113 U形ブリッジ
114 シート固定用凹部
115 ストリップ
12 スライディングフレームの下部
121 U形ブリッジ
122 U字の脚
123 U字の脚
124 ジョイントスリーブ
124a 凹部
125 スリーブ
13 リヤフレーム
131 水平クロスストラット
131a スパナ面,平坦部
132 支持脚
133 支持脚
134 後輪用の軸
135 湾曲したクロスストラット
136 ガイド溝
14 支柱
15 後輪
151 内部リングギヤ
152 外部リングギヤ
16 前輪
17 ジョイント
171 外部ジョイントハーフ部品
172 内部ジョイントハーフ部品
18 ジョイント
181 外部ジョイントハーフ部品
182 内部ジョイントハーフ部品
19 スライダ
191 スライダのブレーキエレメント
20 前輪の懸架部
201 Lの短脚
202 Lの長脚
203 前輪のホイール軸
21 軸
22 軸
23 分割線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7a
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12