【実施例】
【0154】
J. 実施例
以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をこれよりさらに説明する。これらの実施例が、本発明の態様を示す一方で、単に例示として提供されることが理解されるべきである。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的特徴を確認することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更および修正を行って、それを様々な使用および条件に適合させることができる。したがって、本明細書に示され記載されているものに加えて、本発明の様々な修正が、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正もまた、添付の特許請求の範囲の範囲に入ることが意図される。本明細書で参照された文書はすべて、参照により組み入れられる。
【0155】
材料および方法
細胞培養:
細胞株GM08402(Coriell Cell Repositories)およびBJhTERTは、10% FBS(Sigma)、1×非必須アミノ酸(Gibco)、2 mM l-グルタミン(Sigma)、および1×ペニシリン-ストレプトマイシン(PEST、Sigma)を補充したフェノールレッドおよびl-グルタミン不含MEM(Gibco)中で培養した。マウス胎仔線維芽細胞(MEF)は、10% FBS、2 mM l-グルタミン、および1×PESTを補充したフェノールレッドおよびl-グルタミン不含DMEM(Gibco)中で培養した。ONCO-DG-1、SW-480、A-427、およびHCT-15(4つすべてDSMZによる)、SKOV3、ならびにSKBR3は、10% FBS、2 mM l-グルタミン、および1×PESTを補充したRPMI培養液(Sigma)中で培養した。A-549(DSMZ)は、10% FBS、2 mM L-グルタミン、および1×PESTを補充したフェノールレッドおよびL-グルタミン不含DMEM(Gibco)中で培養した。HUP-T3(DSMZ)は、10% FBS、2 mM L-グルタミン、および1×PESTを補充したMEM-イーグル培養液(Sigma)中で培養した。
【0156】
組織切片の調製:
E14.5マウス胚の新鮮凍結9-μm切片は、Superfrost Plus Goldスライド(Thermo Scientific)上に載せた。HER2陽性乳癌由来の完全に匿名化された新鮮凍結ヒト組織切片は、スウェーデンバイオバンク法(Swedish Biobank Legislation)に従って、Department of Pathology, Uppsala University Hospitalの新鮮組織バイオバンク(Fresh Tissue Biobank)から入手した。4μm厚の乳房組織切片は、Starfrost顕微鏡スライド(Instrumedics)上に載せた。
【0157】
インサイチュー実験のための試料の前処理:
細胞をSuperfrost Plusスライド(Thermo Scientific)上に播種し、接着させた。細胞が所望のコンフルエンシーに達した時点で、それらをPBS中の3%(w/v) パラホルムアルデヒド(Sigma)中で室温(20〜23℃)にて30分間固定した。固定後、スライドをDEPC処理PBS(DEPC-PBS)で2回洗浄し、一連のそれぞれ3分間の70%、85%、および99.5%エタノールにより脱水した。分子反応は、スライド上に付着させたSecure-seal(Grace Bio-Labs、直径9 mmおよび深さ0.8 mm)中で行った。各試料に対して、50-μl反応容積を使用した。RNAをより容易にcDNA合成に利用できるようにするために、細胞に0.1 M HClを室温で10分間適用した。これに続き、DEPC-PBSでの短時間の洗浄を2回行った。組織は、わずかな例外を除いて、細胞株と同様に処理した。組織固定は、PBS中の2%(w/v) パラホルムアルデヒド中で行った。次に、組織を0.1 M HCl中の0.01%ペプシン(Sigma)で37℃にて2分間透過処理した。分子反応は、組織上に載せたSecure-seal(直径13 mm、深さ0.8 mm;Grace Bio-Labs)中で100μlの反応容積で行った。逆転写は一晩行い、連結、RCA、および検出プローブハイブリダイゼーションのためのインキュベーション時間は倍にした。マウス組織について、連結はT4 DNAリガーゼを用いて行った。
【0158】
オリゴヌクレオチド配列:
オリゴヌクレオチド配列(表1〜3)は、GenBankアクセッション番号NM_001101.3(ACTB)、NM_007393.3(Actb)、NM_198253.2(TERT)、NM_002467(MYC),NM_001005862.1(ERBB2)、NM_009606(Acta1)、NM_009609(Actg1)、およびNM_033360(KRAS)を用いて設計した。パドロックプローブはすべて、製造業者の緩衝液A中の0.2 U μl
-1 T4ポリヌクレオチドキナーゼ(Ferments)+1 mM ATPを用いて2μMの濃度で37℃にて30分間かけて5'リン酸化し、その後65℃で10分間処理した。培養細胞におけるβ-アクチン転写物検出については、他の指示のない限り、検出のためにプライマーP-βe1をパドロックプローブPLP-βe1と共に、プライマーP-βe6をパドロックプローブPLP-βe6と共に、プライマーP-βhumをパドロックプローブPLP-βhumと共に、およびプライマーP-βmusをパドロックプローブPLP-βmusと共に使用した。TERTはプライマーP-TERTおよびパドロックプローブPLP-TERTを用いて、cMycはプライマーP-cMycおよびパドロックプローブPLP-cMycを用いて、ならびにHER2はプライマーP-HER2およびパドロックプローブPLP-HER2を用いて検出した。マウス組織における転写物の検出に関して、β-アクチンについてはパドロックプローブPLP2-βmusと共に、およびα1-アクチンについてはパドロックプローブPLP-α1musと共にプライマーP-α1βmusを使用し、ならびにγ1-アクチン検出についてはプライマーP-γ1musをパドロックプローブPLP-γ1musと共に使用した。KRAS遺伝子型同定については、プライマーP-KRASをパドロックプローブPLP-KRAS-wtGGT、PLP-KRAS-mutGTT、およびPLP-KRAS-mutGATと組み合わせて使用した。
【0159】
KRAS遺伝子型同定実験のための試料調製:
細胞株ONCO-DG-1、A-427、SW-480、HCT-15、A-549、およびHUP-T3(すべてDSMZ)をコラーゲンI 8-ウェル培養スライド(BD BioCoat)上に播種し、接着させた。細胞が所望のコンフルエンシーに達した時点で、それらをDEPC処理PBS(DEPC-PBS)中の3%(w/v) パラホルムアルデヒド(Sigma)中で室温(20〜23℃)にて30分間固定した。固定後、スライドをDEPC-PBSで2回洗浄し、スライドからプラスチックウェルを除去した。その後スライドを、それぞれ1分間の70%、85%、および99.5%エタノールというエタノール系列により脱水した。
【0160】
結腸直腸癌および肺癌患者からの新鮮凍結およびFFPEヒト腫瘍組織は、スウェーデンバイオバンク法および倫理審査法(Ethical Review Act)(ウプサラ倫理審査委員会(Uppsala Ethical Review Board)承認、参照番号2006/325および2009/224)に従って、Department of Pathology and Cytology(Botling and Micke, 2011), Uppsala University Hospitalのバイオバンクから入手した。
【0161】
-80℃で貯蔵された新鮮凍結腫瘍試料から、Starfrost顕微鏡スライド(Instrumedics)上にテープ転写した新鮮凍結組織切片(4μm)を調製した。スライドをDEPC-PBS中の3%(w/v) パラホルムアルデヒド中で室温にて45分間固定し、その後0.1 M HCl中の0.01%ペプシン(Sigma、#P0609)で37℃にて2分間透過処理し、続いてDEPC-PBSで短時間洗浄した。
【0162】
新鮮な外科的結腸直腸癌および肺癌標本から、Superfrost Plus顕微鏡スライド上に調製された捺印を得た。スライドの調製後、スライドを1分間風乾し、その後-80℃で貯蔵した。スライドをDEPC-PBS中の3%(w/v) パラホルムアルデヒド中で室温にて30分間固定し、続いてDEPC-PBSで短時間洗浄した。
【0163】
FFPE組織切片(4μm)は、Superfrost Plus顕微鏡スライド(Menzel Glaser)上に載せ、60℃で30分間加熱した。次に、スライドをキシレン中に15+10分間浸漬することによって脱パラフィンし、その後エタノール系列(100%中で2×2分間、95%中で2×2分間、70%中で2×2分間、および最後にDEPC-H
2O中で5分間)により徐々に再水和した。スライドをDEPC-PBSで2分間洗浄してから、DEPC-PBS中の4%(w/v) パラホルムアルデヒドで室温にて10分間固定し、続いて再度DEPC-PBSで2分間洗浄した。次に、FFPE組織スライドを0.1 M HCl中の2 mg ml-1ペプシン(Sigma #P7012)中で37℃にて10分間透過処理した。DEPC処理H
2O(DEPC-H
2O)で5分間洗浄し、その後DEPC-PBSで2分間洗浄することにより、消化を停止した。最後に、DEPC-PBS中の4%(w/v) パラホルムアルデヒドを用いて、室温で10分間かけてスライドの2回目の固定を行い、DEPC-PBSで2分間洗浄した。組織の前処理が完了した後、スライドを、それぞれ1分間の70%、85%、および99.5%エタノールというエタノール系列により脱水した。
【0164】
組織のKRAS変異状態は、以前に記載された通りに(Sundstorm et al. (2010), BMC Cancer, 10, 660)、パイロシーケンシング(Pyromark Q24 KRAS、Qiagen GmbH、Hilden, Germany)により解析した。
【0165】
インサイチューcDNA検出手順:
試料をM-MuLV反応緩衝液中でプレインキュベートした。次に、M-MuLV反応緩衝液中、1μMのcDNAプライマーを20 U μl
-1のRevertAid HマイナスM-MuLV逆転写酵素(Fermentas)、500 nM dNTP(Fermentas)、0.2μg μl
-1 BSA(NEB)、および1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤(Fermentas)と共にスライドに添加した。スライドを37℃で3時間〜一晩インキュベートした。インキュベーション後、スライドをPBS-T(0.05% Tween-20(Sigma)を含むDEPC-PBS)で短時間洗浄し、続いてDEPC-PBS中の3%(w/v) パラホルムアルデヒド中で室温にて30分間の後固定段階を行った。後固定後、試料をPBS-Tで2回洗浄した。標的cDNA鎖をパドロックプローブハイブリダイゼーションに利用できるようにするために、生成されたRNA-DNAハイブリッドのRNA部分をリボヌクレアーゼHで分解した。これは、パドロックプローブのハイブリダイゼーションおよび連結と同じ段階で行った。大部分の反応について、連結にはAmpligase(Epicentre)を使用した。試料をまず、Ampligase緩衝液(20 mM Tris-HCl、pH 8.3、25 mM KCl、10 mM MgCl
2、0.5 mM NAD、および0.01% Triton X-100)中でプレインキュベートした。次に、0.5 U μl
-1 Ampligase、0.4 U μl
-1 RNase H(Fermentas)、1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤、Ampligase緩衝液、50 mM KCl、および20%ホルムアルデヒドの混合物中で100 nMの各パドロックプローブを用いて、連結を行った。最初に37℃で30分間、その後45℃で45分間のインキュベーションを行った。マウス胚組織切片においてアクチン転写物アイソフォームを検出する場合、連結は代わりにT4 DNAリガーゼ(Fermentas)を用いて行った。試料を次にまず、T4 DNAリガーゼ緩衝液(Fermentas)中でプレインキュベートした。次に、0.5 mM ATPおよび250 mM NaClを補充したT4 DNAリガーゼ緩衝液中で、100 nMの各パドロックプローブを、0.1 U μl
-1 T4 DNAリガーゼ、0.4 U μl
-1 RNase H、1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤、および0.2μg μl
-1 BSAと共に添加した。次いで、スライドを37℃で30分間インキュベートした。AmpligaseまたはT4 DNAリガーゼによる連結後、スライドを、0.05% Tween-20を含むDEPC処理2×SSCで37℃にて5分間洗浄し、PBS-Tでリンスした。スライドを、φ29 DNAポリメラーゼ緩衝液(Fermentas)中で短時間プレインキュベートした。次に、提供される反応緩衝液中の1 U μl
-1 φ29 DNAポリメラーゼ(Fermentas)、1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤、250μM dNTP、0.2μg μl
-1 BSA、および5%グリセロールを用いて、RCAを行った。インキュベーションを37℃で60分間行った。インキュベーションに続いて、PBS-Tで洗浄した。2×SSCおよび20%ホルムアミド中の100 nMのそれぞれ対応する検出プローブを用いて、37℃で30分かけてRCPを可視化した。次にスライドをPBS-Tで洗浄し、Secure-sealを除去し、一連のそれぞれ3分間の70%、85%、および99.5%エタノールを用いてスライドを脱水した。100 ng ml
-1 DAPIを含むVectashield(Vector)で乾燥スライドを封入して、細胞核を対比染色した。
図5中の細胞膜の対比染色のためのプロトコールは、以下の「WGA染色」に記載する。
【0166】
WGA染色:
細胞質を対比染色するため、1×PBS中に希釈した2.5μg ml
-1 WGA 488(Invitrogen)を添加して、室温で60分間置いた。この後、PBS-Tで2回洗浄して、脱水してから、先に記載されるように封入およびDAPIによる核染色を行った。
【0167】
単一細胞定量化:
図6中の単一細胞定量化に関しては、個々の細胞に印をつけ、印のつけられた領域内のRCPを計数するために、特注のMatLabスクリプトを使用した。MatLabでのRCPの定量化は、本明細書で他の実施例において定量化のために用いられたBlobFinderソフトウェアと比較して、RCPが定義される方法が異なる。結果として、その結果は、BlobFinder解析と比較して約30%少ないRCPを示す。
【0168】
画像の取得および解析:
培養細胞の画像は、100 W水銀ランプ、CCDカメラ(C4742-95、Hamamatsu)、ならびにDAPI、FITC、Cy3、Cy3.5、およびCy5を可視化するための励起および発光フィルターを含むコンピュータ制御フィルターホイールを備えたAxioplan II落射蛍光顕微鏡(Zeiss)を用いて取得した。画像を捕獲するために、×20(Plan-Apocromat、Zeiss)、×40(Plan-Neofluar、Zeiss)、または×63(Plan-Neofluar、Zeiss)対物レンズを使用した。画像は、Axiovisionソフトウェア(4.3版、Zeiss)を用いて収集した。細胞画像のための露出時間は、DAPIに関して、260〜340 ms(×20倍率において)、10〜80 ms(×40)、または220 ms(×63);FITCに関して、40 ms(×40)または220 ms(×63);Cy3に関して、560〜640 ms(×20)、110〜160 ms(×40)、または200 ms(×63);Texas Redに関して、110 ms(×40)または250 ms(×63);およびCy5に関して、6,350 ms(×20)、180 ms(×40)、または350 ms(×63)であった。SKBR3およびSKOV3細胞については、すべてのRCPが画像化されることを確実にするために、画像をz-stackとして収集した。実施例3における新鮮凍結マウス胚組織切片でのα1-アクチンおよびβ-アクチンの画像化は、CCDカメラ(AxioCam MRm、Zeiss)および×20 Plan-Apochromat対物レンズを備えたMirax Midiスライドスキャナー(3D Histech)を用いて画像化した。スライドスキャナーにおける露出時間は、DAPIに関して45 ms、Cy3に関して270 ms、Texas Redに関して340 ms、およびCy5に関して3,200 msであった。定量化のため、画像中のRCPおよび細胞核の数を、BlobFinderソフトウェア(バージョン3.0_β)を用いてデジタル的に計数した。培養細胞については、5つの20×顕微鏡画像において定量化を行った(各試料につきおよそ20〜30個の細胞)。各画像について、RCPの総数を核の数で除した。次に、5つの画像の結果から各試料の平均値を算出し、これを細胞当たりのRCPとして報告する。
図6において用いられた単一細胞定量化のための手順は、上記の「単一細胞定量化」に記載されている。
【0169】
細胞におけるβ-アクチン転写物定量化のためのqPCR
細胞株GM08402の2つの別個の継代物を、細胞を計数した後に収集し、全細胞溶解物からRNAを単離するためのプロトコールと共にPARISキット(Ambion)を用いて、細胞から全RNAを精製した。DNAフリーキット(Ambion)を用いて、精製RNAから微量のDNAを除去した。対応する酵素緩衝液中の20 U RevertAid HマイナスM-MuLV逆転写酵素(Fermentas)、0.5μgオリゴ(dT)プライマー(20マー)、1 mM dNTP、および1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤を含む混合物中で、700 ngの鋳型RNAを用いて、第1鎖cDNA合成を行った。試料を37℃で5分間、その後42℃で60分間インキュベートした。70℃で10分間加熱することによって、反応を停止した。検量線作成のための鋳型を合成するために、予備PCRを行った。このPCRでは、細胞継代物のうちの1つに由来する1μlのcDNAを、全量50μlにおいて、0.02 U μl
-1 Platinum Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)、PCR緩衝液、2 mM MgCl
2、200μM dNTP、200 nM ACTBfwdプライマー、および200 nM ACTBrevプライマーの混合物中で増幅した。PCRは、95℃で2分、続いて45回のサイクル(95℃で15秒、50℃で15秒、および72℃で1分)、および最後の72℃で5分で行った。溶液からDNAを精製するためのプロトコールに従って、Illustra GFX PCRおよびゲルバンド精製キット(GE Healthcare)を用いて、PCR産物を精製した。Nanodrop 1000分光光度計(Thermo Scientific)を用いて精製PCR産物の濃度を測定し、マイクロリットル当たりの分子数を算出した。全量30μl中、2μlの鋳型cDNAまたは希釈した検量線PCR産物を、SYBR Green(Invitrogen)、0.02 U μl
-1 Platinum Taq DNAポリメラーゼ、PCR緩衝液、2 mM MgCl
2、200μM dNTP、200 nM ACTBfwdプライマー、および200 nM ACTBrevプライマーと共に用いて、qPCRを実行した。qPCRは、予備PCRと同じプログラムを用いて実行した。検量線試料は同一試料の2つ組で実行し、細胞の2つの継代物によるcDNA試料は3つ組で実行した。2つの細胞継代物に関する転写物コピー数の計数は、回収時に計数された細胞の数に基づいた。次いで、細胞株の平均β-アクチンmRNAコピー数を決定した。インサイチュー多重検出実験のためのqPCRによる効率推定のプロトコールは、以下の通りである。
【0170】
細胞株GM08402、SKBR3、およびBJhTERTを、細胞を計数した後に回収し、RiboPureキット(Ambion)を用いて細胞から全RNAを精製した。DNAフリーキット(Ambion)を用いて、精製RNAからDNA痕跡を除去した。RNA 6000 Picoチップ(Agilent)を用いてAgilent Bioanalyzerで、RNAの濃度および質を調べた。第1鎖cDNA合成は、大容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems)を用いて行った。調製されたcDNAを×4希釈してから、TaqMan qPCRで解析した。PCRプライマーおよびTaqManプローブは、Applied Biosystemsから、確証された20×TaqMan Gene Expression Assays(β-アクチンに関してアッセイ番号Hs99999903_ml、TERTに関してHs00972650_ml、およびHER2に関してHs99999005_mH)として購入した。異なる遺伝子の検量線のための鋳型は、PCRによって作製した。このPCRでは、BJhTERT細胞株に由来する1μlのcDNAを、異なる遺伝子に関して別個の反応物において、0.02 U μl
-1 Platinum Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)、1×PCR緩衝液、2 mM MgCl2、200μM dNTP、および0.01×各プライマーミックス(0.2μΜの各プライマー)の混合物中で増幅した。全PCR量は50μlであり、PCRは、95℃で2分、続いて45×のサイクル(95℃で15秒および60℃で1分)で行い、60℃で5分で終了した。Illustra GFX PCRおよびゲルバンド精製キット(GE Healthcare)を用いて、PCR産物を精製した。Nanodrop 1000分光光度計(Thermo Scientific)を用いて精製PCR産物の濃度を測定し、μl当たりの分子数を算出した。全量20μlにおいて、1×TaqMan Gene Expression Assayプライマーおよびプローブミックスを加えた1×TaqMan Universal PCR Master Mix, No AmpErase UNG(Applied Biosystems)中で4μlの鋳型cDNAまたは検量線PCR産物を用いて、qPCRを実行した。qPCRプログラムは、95℃で10分、続いて95℃で15秒および60℃で1分の40×のサイクルで実行した。試料はすべて2つ組で実行し、それらは検量線の段階希釈物、段階希釈したcDNA試料、細胞株由来のRNA対照、および鋳型なしの対照を特徴とした。転写物コピー数の算出は、回収時に計数された細胞の数に基づいた。
【0171】
細胞株および組織におけるKRASのインサイチュー遺伝子型同定:
分子インサイチュー反応はすべてSecure-seal(Grace Bio-Labs Inc.)中で行い、組織または捺印の反応容積は、試料のサイズに応じて100μl(直径13 mm、深さ0.8 mmのサイズ)または350μl(直径22 mm、深さ0.8 mmのサイズ)のいずれかであった。細胞に用いられたSecure-sealは、50μlの全容積(直径9 mmおよび深さ0.8 mmのサイズ)を有した。Secure-sealを細胞または組織上に載せ、PBS-T(0.05% Tween-20(Sigma)を含むDEPC-PBS)で短時間洗い流すことによってウェルを脱水した。
【0172】
その後、ごくわずかな例外を除いて、試料を同様に処理した。後固定は、細胞株および腫瘍捺印については30分であるのに対して、新鮮凍結およびFFPE組織については45分間行った。また、FFPE組織の後固定については、3%(w/v) パラホルムアルデヒドの代わりに3.7%ホルムアルデヒドを使用した。最後に、組織上で行ったRCAインキュベーション時間は、培養細胞および腫瘍捺印(2時間)と比較してより長かった(5時間)。すべての反応について、スライドは加湿チャンバー内でインキュベートした。
【0173】
KRAS遺伝子型同定実験のためのオリゴヌクレオチド:
オリゴヌクレオチド配列(表4)は、GenBankアクセッション番号NM_033360(KRAS)、NM_005228(EGFR)、NM_001126114.1(TP53)、およびNM_001101.3(ACTB)用いて設計した。パドロックプローブはすべて、PNK緩衝液A中の0.2 U μl
-1 T4 PNK(Ferments)および1 mM ATPを用いて10μMの濃度で37℃にて30分間かけて5'リン酸化し、その後65℃で10分間処理した。異なる組織試料および細胞株に適用されたプライマー、パドロックプローブ、および検出プローブを、表6に要約する。
【0174】
M-MuLV反応緩衝液中、1μMのcDNAプライマーを20 U μl
-1のRevertAid HマイナスM-MuLV逆転写酵素(Fermentas)、500μM dNTP(Fermentas)、0.2μg μl
-1 BSA(NEB)、および1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤(Fermentas)と共にスライドに添加した。スライドを37℃で3時間インキュベートした。
【0175】
インキュベーション後、PBS-Tでウェルを洗い流すことによってスライドを短時間洗浄し、続いてDEPC-PBS中の3%パラホルムアルデヒド(w/v)中で室温にて45分間(新鮮凍結およびFFPE組織)または30分間(捺印)の後固定段階を行った。後固定後、PBS-TでSecure-sealチャンバーを洗い流すことによって、試料を洗浄した。
【0176】
KRAS遺伝子型同定実験のためのRNase H消化、パドロックプローブのハイブリダイゼーションおよび連結:
パドロックプローブハイブリダイゼーションに利用可能な一本鎖標的cDNA鎖を作出するために、生成されたRNA-DNAハイブリッドのRNA部分をRNase Hで分解した。これは、パドロックプローブのハイブリダイゼーションおよび連結と同じ段階で行った。反応は、Ampligase緩衝液中の1 U μl
-1 Ampligase(Epicentre)、0.4 U μl
-1 RNase H(Fermentas)、1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤、50 mM KCl、20%ホルムアルデヒドの混合物中で100 nMの各パドロックプローブを用いて行った。最初に37℃で30分間、その後45℃で45分間のインキュベーションを行った。連結後、PBS-Tでチャンバーを洗い流して、スライドを洗浄した。未知組織試料の前向きKRAS変異検出については、KRASコドン12および13パドロックプローブのすべてのカクテルを、10 nMの最終濃度で混合した。
【0177】
KRAS遺伝子型同定実験のための環状化パドロックプローブの増幅および検出:
提供される反応緩衝液中の1 U μl
-1 φ29 DNAポリメラーゼ(Fermentas)を、1 U μl
-1 RiboLock RNase阻害剤、250μM dNTP、0.2μg μl
-1 BSA、および5%グリセロールと共に用いて、RCAを行った。インキュベーションは、37℃で、腫瘍捺印および細胞株については2時間、ならびに新鮮凍結およびFFPE組織についてはおよそ5時間行った。RCA後、PBS-TでSecure-sealチャンバーを洗い流して、試料を洗浄した。2×SSCおよび20%ホルムアミド中の100 nMのそれぞれ対応する検出プローブを用いて、37℃で15分かけてRCPを可視化した。次に、PBS-Tでチャンバーを洗い流すことによってスライドを再度洗浄し、Secure-sealを除去し、一連のそれぞれ30秒間の70%、85%、および99.5%エタノールを用いてスライドを脱水した。100 ng ml
-1 DAPIを含むVectashield(Vector)で乾燥スライドを封入して、細胞核を対比染色した。
【0178】
KRAS遺伝子型同定実験のための画像の取得および解析:
画像は、100 W水銀ランプ、CCDカメラ(C4742-95、Hamamatsu)、ならびにDAPI、FITC、Cy3、およびCy5を可視化するための励起および発光フィルターを含むコンピュータ制御フィルターホイールを備えたAxioplanII落射蛍光顕微鏡(Zeiss)を用いて取得した。画像を捕獲するために、新鮮凍結およびFFPE組織に対して×10(Plan-Apocromat、Zeiss)対物レンズを使用し、腫瘍捺印に対して×20(Plan-Apocromat、Zeiss)対物レンズを使用し、ならびに最後に細胞に対して×63(Plan-neofluar、Zeiss)対物レンズを使用した。画像は、Axiovisionソフトウェア(4.8版、Zeiss)を用いて収集した。説明のために提示される画像は、印刷を明確にするために画像編集ソフトウェアを用いて加工した。異なるカラーチャネルの閾値は、ImageJ 1.42qを用いて設定し、Cy3およびCy5でのKRASシグナルのより明らかな可視化のために、最大値フィルターを適用した。
【0179】
実施例1:
パドロックプローブを用いた培養ヒト細胞におけるβ-アクチン(ACTB)転写物の検出
培養ヒト細胞におけるβ-アクチン(ACTB)転写物を検出するために、それぞれ第1エキソンおよび最終エキソン中の配列を標的化する2つの異なるパドロックプローブを使用した。この転写物に関する以前の報告と一致するこの転写物の以前の知見と一致して、細胞の細胞質に局在する多くの明るい点状シグナルが可視化された。検出効率は2つのパドロックプローブについて同様であり、この場合、検出が、転写物に沿った標的位置に大きく依存しないことが示された(
図5)。対照的に、cDNA合成反応から逆転写酵素を除いた場合には、シグナルは検出されず、シグナルがcDNA依存的であることが検証された(
図5)。GM08402細胞株におけるβ-アクチンmRNAの定量的PCR(qPCR)データ(細胞当たり2,000コピー)との比較に基づいて、全体的なインサイチュー検出効率は、利用可能な転写物の約30%であると推定された。β-アクチンmRNA発現における細胞間変動の他の報告と一致して、細胞間のシグナル数にかなりの変動があった(
図6)。
【0180】
実施例2:
インサイチューでの培養細胞における転写物の単一ヌクレオチド変化の検出
検出の高い選択性を実証するために、アッセイを用いて、インサイチューで転写物の単一ヌクレオチド変化を検出した。β-アクチンにおいて発現される多型は稀であり、そのため遺伝子型同定標的として、ヒトとマウスのβ-アクチン配列間の単一塩基の違いを使用した。共培養したヒトおよびマウス線維芽細胞を、パドロックプローブPLP-βhum(ヒト)およびPLP-βmus(マウス(Mus musculus))ならびに標的プライミングRCAを用いるcDNAのインサイチュー遺伝子型同定に供した。共培養物中の細胞の2つの亜集団間に、明確な区別が認められた。環状化段階における完全に一致したパドロックプローブの優先選択により、リガーゼによる2つの標的間の区別が確実になる。
【0181】
実施例3:
インサイチューでの新鮮凍結組織における転写物の単一ヌクレオチド変化の検出
固定化組織切片における方法を試験するために、頸部の高さで横断切断されたE14.5マウス胚由来の新鮮凍結組織において、近縁の骨格筋α1-アクチン(Acta1)および細胞質β-アクチン(Actb)転写物を標的化した。単一塩基だけ異なる標的配列を考慮して設計されたパドロックプローブを用いて、2つのアクチン転写物は組織中でうまく検出された。α1-アクチンシグナルは主に骨格筋に分布したのに対して、β-アクチンシグナルは広く分布したが、非筋肉組織においてわずかにより多くのシグナルを示した。細胞質α1-アクチン(Acta1)転写物に特異的なプローブを含めることにより、同じ遺伝子ファミリーに由来する3つの転写物を識別する能力が実証された。
【0182】
実施例4:
発現プロファイリングのための転写物の検出
発現プロファイリングのための転写物の多重検出に関する本方法の能力を試験するために、3つの癌関連転写物、HER2(ERBB2としても知られる)、cMyc(MYCとしても知られる)、およびTERTに対してパドロックプローブを設計した。参照転写物としてβ-アクチンを用いて、これらの転写物を4つの細胞株(ヒト卵巣癌細胞株、ヒト乳癌細胞株、TERT不死化ヒト包皮線維芽細胞細胞株、および初代線維芽細胞培養物)においてアッセイした。癌関連遺伝子の発現レベルは、細胞株間で異なった(
図2a〜d)。卵巣癌および乳癌細胞株が、HER2およびcMyc転写物の発現の類似のパターンを示したのに対して、TERT不死化線維芽細胞は、TERT転写物の検出可能なレベルを有する唯一の細胞型であった。4つの細胞株はすべてβ-アクチンを発現し、正常線維芽細胞株において、これは検出可能なレベルで発現された、調べられた中で唯一の転写物であった。これらの結果をqPCRデータおよび入手可能な文献と比較し、異なる細胞株において予測された相対発現レベルとの良好な相関関係、および異なる転写物間の検出効率の著しい一貫性が認められた(実施例5)。調べたすべての転写物について、発現の大きな細胞間変動が認められたが、これは培養物中の単一細胞における発現の以前の研究と一致する。
【0183】
実施例5:
ヒト細胞株における癌関連転写物の発現
実施例4に記載されるように、3つの癌関連転写物、TERT、HER2、およびcMycを4つの細胞株においてアッセイした。インサイチューデータによると、細胞株はすべてハウスキーピング遺伝子β-アクチンを発現したが、癌関連転写物の発現において異なった。次に、インサイチュー実験における検出効率の変動を評価できるようにするため、GM08402、BJhTERT、およびSKBR3細胞株においてqPCR測定を行って、異なる転写物を定量化した。TERT発現のqPCR測定から、BJhTERT細胞株における比較的高い発現(247分子/細胞)、およびSKBR3乳癌細胞株における低発現(6分子/細胞)が示された。qPCRにより、TERT発現は正常初代線維芽細胞において検出されなかった。TERTのqPCRデータは、文献中に見出されるTERTのmRNA発現レベルと良好に相関する(BJhTERTに関して220分子/細胞、およびSKBR3に関して0.57分子/細胞(Yi et al., 2001))。したがって、BJhTERTにおいて細胞当たり39個のRCPが検出されたというインサイチュー結果は、qPCRデータに基づいて16%の検出効率に相当する。HER2転写物は、卵巣癌および乳癌細胞株において過剰発現されることが知られている。SKBR3細胞株において、HER2 mRNA数/細胞は168〜336分子であると報告されており、本明細書に記載されるqPCR測定は177分子/細胞であった。インサイチューで検出されたHER2 mRNA数/細胞は25であった。これにより、SKBR3細胞におけるHER2転写物の検出効率は14%となる。HER2発現は、正常初代線維芽細胞またはBJhTERT細胞株において、qPCRによって検出され得なかった。SKOV3細胞におけるcMycの発現レベルは、同じ細胞株におけるHER2転写物の数の約4分の1と推定され、これは本明細書に記載されるインサイチュー測定と良好に相関する。単独でアッセイした場合、培養線維芽細胞におけるβ-アクチンの検出効率は、転写物のqPCR測定およびインサイチュー検出に基づいて、30%であると推定された。これらの多重実験において、検出効率は、同じqPCR推定に基づいて、わずかに低く約15%である。同様の影響が癌転写物においても認められ、それらは多重において約15%の検出効率を示す一方で、個々ではより良好に機能する。特にcDNAプライマーのLNA修飾塩基は相互に非常に強力に結合する能力を有するため、多重実験における標的について観察されたより低い検出効率は、異なるパドロックプローブおよび/またはcDNAプライマー間の相互作用に起因する可能性が高い。多重反応の検出プロトコールは、プローブおよび/またはプライマーの濃度を最適化することによって、改善することができる。さらに、qPCR測定は、細胞株間の相対的β-アクチン発現レベルに関して、インサイチュー測定と良好な相関関係を示す。まとめると、これらのデータから、異なる細胞型におけるRCPの相対レベルは、細胞集団における真の相対転写物レベルの優れた推定値であることが示される。したがって、本方法は、異なる試料における相対発現プロファイリングに適していると考えられる。qPCRによるmRNA定量化において、逆転写反応は変化を導入することが知られているが、このことはインサイチューでの逆転写についても当てはまる可能性が高い。
【0184】
実施例6:
新鮮凍結HER2陽性ヒト乳癌組織における転写物分布の検出
本発明の技法はまた、新鮮凍結HER2陽性ヒト乳癌組織切片においてHER2転写物分布を評価するために使用した。腫瘍組織において予測される癌細胞および正常間質の存在と一致して、発現は細胞間で大きく異なった。
【0185】
実施例7:
KRAS野生型および変異体細胞におけるKRAS点変異の遺伝子型同定
本発明の方法はまた、KRAS野生型および変異体細胞におけるKRAS点変異を遺伝子型同定するために使用した(
図7)。それらの対応するRCPの色に基づいて、異なる細胞型を明らかに識別することができた。KRAS癌遺伝子の活性化変異は、全ヒト腫瘍の17%〜25%において見出され、組織標本においてこれらの変異および他の腫瘍細胞特異的マーカーをインサイチューでモニターするためのアッセイは、臨床病理学研究にとって大いに価値があると考えられる。KRASにおける点変異についてヘテロ接合性である細胞株に由来する77個の細胞を解析することにより、対立遺伝子発現の研究の可能性をさらに調べた。かなりの細胞間変動を伴って、48%が野生型転写物という平均対立遺伝子比が認められ(
図6bおよび7)、均衡のとれた対立遺伝子転写が示された。本実験において、7個を超えるRCPを有するすべてのヘテロ接合性細胞は、両対立遺伝子からのシグナルを示した。7個未満のシグナルを示す細胞については、単一細胞において2対立遺伝子発現の可能性および不均衡な対立遺伝子発現の程度を決定することは難しい。
【0186】
実施例8:
cDNAプライマーへのLNA塩基取り込みの効果
逆転写段階の効率を高めるために、ロックド核酸(LNA)塩基が取り込まれたRTプライマーを使用した。LNA修飾オリゴヌクレオチドは、これまでにFISHで用いられており、2塩基または3塩基ごとにLNAと置換されたDNA/LNAミックスマー(mixmer)が最もよく機能する。標的に対するハイブリダイゼーション効率の増加に加えて、プライマーのLNA含量は、RNase Hによる分解から標的RNAを保護するように設計することができる。このことは、本方法において、インサイチューで合成されたcDNAが、cDNAプライマーのハイブリダイゼーションにより、細胞内で、検出されるmRNA分子に対する局在性を維持し得ることを意味する(
図1)。異なるLNA置換を有するcDNAプライマー(表2)を、PLP-βe1パドロックプローブ標的部位のその後の検出に関して、インサイチューで試験した。5'末端において2塩基ごとにLNAで置換されたプライマーが、3塩基ごとの置換を有するプライマーよりも良好に機能することが判明した(
図3)。合計して5個、7個、または9個のLNA塩基を含むプライマーもまた調べ、9個のLNA塩基を付加することで、インサイチューにおけるシグナルの量がわずかに減少することが判明した。LNAが、逆転写酵素がプライマーからcDNAを合成する能力を妨げないことを確実にするために、LNA塩基はプライマーの5'側に配置し、3'側は未修飾のままにした。プライマーの全長を30ヌクレオチドから25ヌクレオチドに短くしても、結果に影響しないことが判明し、したがってプライミングはプライマー中のLNA塩基の存在によって妨げられないと結論づけられた。
【0187】
実施例9:
cDNA合成効率
ハイブリダイズするcDNAプライマーとパドロックプローブの標的配列との間の最適な距離を確実にするために、細胞において生成されたcDNA分子の長さを調べた。β-アクチンmRNAの5'末端から異なる距離に位置するcDNAプライマーを用いて、インサイチュー検出実験を設定した。次にインサイチューで逆転写を行い、得られたcDNA分子を、逆転写されたcDNAの3'末端近傍に標的配列を有するPLP-βe1で検出した。次に、異なるプライマーに関して、細胞当たり形成されたRCPの数を定量化した。試験したプライマーは、プライマー部位の始めから転写物の末端まで測定して、およそ90〜500 nt長の範囲のcDNA分子をもたらすためのものであった(プライマー配列については表3を参照されたい)。主に短い分子が形成されること、およびcDNAプライマー部位はパドロックプローブ標的部位に近接して位置すべきであることが判明した(
図4)。逆転写のためのプライマーを設計する方法に関する詳細を提供するばかりでなく、cDNA合成長が限定されることに関する知識は、RCA反応の遂行にとって実際的関連性を有する。本プロトコールでは、インサイチューの内因性ミトコンドリアDNA分子について最初に記載された標的プライミング戦略(Larsson et al. (2004) Nat. Methods, 1, 227-232,)が用いられた。標的プライミングは、標的分子の近接3'末端からプライマーを作出するために、一本鎖DNAに対してφ29 DNAポリメラーゼの3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を利用する。RCA反応の効率は、ミトコンドリアDNAの突出3'末端の長さが0ヌクレオチドから130ヌクレオチドに増加するにつれて減少することが示された。本方法において非常に短いcDNA分子が生成されたため、標的プライミングRCAアプローチを、標的鎖のさらなる調製なしに、cDNA検出のためのシグナル増幅にも効率的に適用することができる。
【0188】
実施例10:
パドロックプローブの連結のための異なるリガーゼ
これまでにパドロックプローブ連結に用いられてきた主に2種類の酵素が存在する;ATP依存性T4 DNAリガーゼおよびNAD+依存性Ampligase(商標)である。両リガーゼを、パドロックプローブを用いるcDNAのインサイチュー検出について試験し、優れた検出効率が得られた。しかしながら、ヒトおよびマウス細胞において、単一ヌクレオチド分解能を伴う配列を検出するための実験を行う場合に、Ampligaseが、非一致プローブからより低い割合のシグナルを生成することが判明した。T4 DNAリガーゼによる正しいシグナルの割合は、ヒト細胞について87%(ヒトRCP/全RCP)であり、マウス細胞について98%(マウスRCP/全RCP)であった。これはAmpligase(商標)と対照的であり、この酵素は、マウス標的配列についてはT4 DNAリガーゼと比較して変化しなかったものの、ヒト標的配列についてはるかにより高い選択性を有した(98%正しい)。異なるアクチンアイソフォームの転写物は高い割合の類似性を共有し、多くの偽遺伝子が存在するため、これらの予期せぬ陽性シグナルのいくつかは、単純なインシリコ配列解析を行った場合には現れない、パドロックプローブ標的配列と類似した配列から生成されると考えられる。これらの観察に加えて、Ampligase(商標)は、T4 DNAリガーゼよりも、一致した基質に対してより特異的であることが知られている。
【0189】
実施例11:
インサイチュー変異検出のためのアッセイ設計
コドン12および13(G12S、G12R、G12C、G12D、G12A、G12V、およびG13D)およびコドン61(Q61H)におけるKRASの点変異、ならびにEGFRの点変異(G719A、G719C、S768I、およびL858R)、およびTP53の点変異(S127FおよびP190S)について、パドロックプローブを設計した。異なる標的の野生型形態のためのパドロックプローブも同様に設計した。変異特異的パドロックプローブは、遺伝子型に応じて異なる3'末端の最終ヌクレオチドを除いて、同一標的配列を有して設計した。この位置のミスマッチは用いられるDNAリガーゼによって許容されず、そのため点変異のような単一ヌクレオチドの違いは効率的に識別される。さらに、例えば緑色および赤色といった異なる蛍光色素で標識された検出プローブを用いてRCPを相互に識別するために、野生型および変異体パドロックには検出プローブのための2つの異なる部位が存在する。また、細胞型間で比較的一定した発現を有する内部参照として、付加的なフルオロフォアによって検出されるACTB転写物の検出をこれらのアッセイに含めた。試料にわたってACTBシグナルを比較することにより、異なる試料における検出効率の推定が提供された。ACTBデータは本研究の開発段階において有用であったが、変異スコアリングおよび組織分類には不必要であることが判明した。
【0190】
実施例12:
KRAS状態が公知である新鮮凍結結腸組織および肺組織における変異検出
パドロックプローブの選択性は、最初に野生型および変異特異的KRAS細胞株においてインサイチューで試験した。プローブの質を確認した後、本発明者らのインサイチュー遺伝子型同定法を、KRAS状態が公知である10個の新鮮凍結ヒト結腸癌組織および肺癌組織に適用した。この検証段階では、各プローブ対(一方のプローブは特定の変異に対し、もう一方は対応する野生型変種に対する)を、KRAS状態が公知である新鮮凍結組織試料の集合において個々に試験した。野生型プローブは、緑色蛍光RCPを生成するように設計し、変異特異的プローブは赤色蛍光RCPを生成するように設計した。試料は、最も稀な変異であるG12Rを除いたすべてのコドン12および13変異を示した。しかしながら、試験した細胞株のうちの1つにおいて、G12R変異のパドロックプローブ対の性能をやはり特異性について検証した。このようにして、KRAS野生型腫瘍組織を、通常の蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)と同様の様式で顕微鏡可視化によって、活性化KRAS変異を保有する腫瘍を有する組織と識別することができた。KRAS変異を有する結腸および肺切片は、パドロックプローブ対中のプローブの両方から生成されるシグナルの混合物を示したのに対して、正常組織は野生型パドロックプローブからのみシグナルを示した。10個の試料を視覚的に調べることにより、組織内および組織間の両方のKRAS発現レベルにおいて、変動が明らかに見られ得る。全体として、KRASのわずかにより高い発現レベルが、結腸と比較して肺において認められた。結果から、ほとんどの症例が、腫瘍細胞領域内で野生型および変異体KRASシグナルの両方を示すことが示され、ヘテロ接合性発現が示唆された。対照的に、1つの肺試料は、腫瘍領域においてほぼ変異体シグナルのみを示し、わずかに存在する野生型シグナルは正常な周囲の間質に属した。これは、KRASホモ接合性変異またはヘテロ接合性消失(LOH)を反映し得た。
【0191】
実施例13:
FFPE組織における変異検出
インサイチューパドロックプローブ技法がFFPE組織に適用できるかどうかを評価するために、これを試験した。この種の組織材料に適用されるプロトコールは、前処理手順を除いて、本質的に新鮮凍結組織と同様であった。それぞれのパドロックプローブ対を適用して、コドン12および13中に公知のKRAS変異を有する14個の結腸直腸FFPE癌組織の集合において、KRAS変異解析を行った。組織はすべて、野生型および変異体パドロックプローブの両方から生成されるシグナルの混合物を示したが、シグナル数(KRASおよびACTBの両方に関する)の変動が組織間で顕著であり、これはおそらくはFFPE試料間で予測される組織の質の差を反映している。さらに、野生型シグナルと変異体シグナルの比率もまた、同じKRAS変異を保有する組織間で異なることが認められ、これはおそらくは腫瘍特異的な特性を反映している。コドン61で最もよく見られる変異(Q61H)についてもプローブを設計し、2つの結腸腫瘍FFPE試料において試験し、これらは変異体としてうまくスコア化された。
【0192】
実施例14:
変異状態が未知である前向き臨床試料におけるKRASのインサイチュー検出
パドロックプローブが選択的であることを最初に検証した後、すべてのプローブを混合して、症例がKRAS陽性であるか否かという最初の診断的質問に答え得る単一反応物にした。これを、KRAS変異特異的パドロックプローブの単一対を用いるインサイチュー変異検出と、KRASコドン12および13変異に関するすべてのプローブを含むパドロックプローブカクテルを用いる多重検出アプローチを比較することによって試験した。組織の可視化検査に基づく結果から、複数のプローブが2コドン標的部位をめぐって競合する場合に、効率も選択性も失われないことが示された。したがって、この解析は、腫瘍が活性化KRAS変異を有するか否かの迅速な答えを提供する。それにもかかわらず、必要であれば、この技法を用いて、連続切片においてすべての変異について個々に単純に試験することにより、正確な配列変化を明らかにする可能性がなお存在する。
【0193】
その後、KRAS変異状態が未知である8個の前向き肺FFPE組織において、多重変異検出が実証された。全肺癌症例のおよそ15〜30%が活性化KRAS変異を有する。パドロックプローブおよびRCAを用いて変異解析を行った後、8症例のうちの3症例が変異していると結論づけられた。この結果を同じ組織におけるパイロシーケンシングと比較し、示唆された遺伝子型がすべての症例について正しいと確認された。
【0194】
細胞学的調製物を含む診断設定において本方法を試験するため、KRAS変異状態が未知である8個の前向き新鮮結腸癌標本から腫瘍捺印を調製した。非固定組織に関するプロトコールを用いて、パドロックプローブおよび標的プライミングRCAを用いる多重KRAS変異検出を調製した。捺印の顕微鏡検査により、2症例はインサイチュー変異アッセイにおいて陽性であることが判明したのに対して、残りの6個の腫瘍捺印は野生型シグナルのみを示した。その後、同じ症例に由来する対応するFFPE腫瘍切片からのDNAを、パイロシーケンシングによりKRAS変異について試験した。パイロシーケンシング結果は、インサイチューアッセイと完全に一致した。
【0195】
実施例15:
組織マイクロアレイにおけるハイスループット変異スクリーニング
組織マイクロアレイ(TMA)を用いて、1枚のスライド上で何百もの患者FFPE腫瘍試料を解析することができ、これは、大きな患者コホートにおいてタンパク質発現(免疫組織化学(IHC)による)および遺伝子コピー数変化(FISHによる)を特徴づけるために用いられてきた。ここでは、25個のFFPE結腸試料(2つ組)を含むTMAを、KRASコドン12および13変異の可能性についてアッセイした。アレイは、すべてKRASについて変異状態が未知である正常結腸粘膜、管状腺腫、鋸歯状腺腫、原発腫瘍、および一致する転移由来の試料からなった。全試料のうち11個が、KRAS陽性であることが判明した‐腺腫2個、鋸歯状腺腫1個、原発腫瘍4個、およびそれらの一致する転移。対応するFFPEブロックにおけるパイロシーケンシングによる変異解析は、インサイチューデータと完全に一致した。
【0196】
実施例16:
腫瘍進行および組織学的不均一性に関連する変異癌遺伝子対立遺伝子の差次的発現
腫瘍にわたる変異癌遺伝子の可変発現は、潜在的に、単一癌病変の異なる領域において標的療法に対する可変反応をもたらし得る。そのため、インサイチューアッセイを用いて、症例を、発現された変異の異なるパターンについてスクリーニングした。コドン61変異を有する1つの結腸癌症例では、正常結腸粘膜から低度および高度異形成ならびに浸潤癌への組織学的進行が、単一スライド上で可視化され得た。腫瘍進行に沿って、変異の発現の明らかな増加が存在した。したがって、EGFR阻害剤に対する耐性のレベルが、異なる新生物区画における該発現レベルに従うかどうかを推測することができる。
【0197】
また、そのうちの8個が陽性であることが判明している9個のFFPE肺組織のセットにおいて、EGFR L858R変異を標的化した。インサイチュー変異アッセイの結果は、DNA配列決定データと完全に一致した。肺試料のうちのいくつかは10年以上前に収集されたにもかかわらず、多数のシグナル、特に変異体シグナルを有して高い検出効率が認められ、これは腫瘍において増幅されたEGFRからの高いmRNA発現を反映し得る。1つの肺試料では、腫瘍増殖パターンに関して大きな組織学的不均一性が認められた。野生型EGFRは正常気管支上皮でのみ発現された。気管支肺胞上皮/鱗状増殖パターンを有する領域において、変異EGFRの発現は低く、野生型対立遺伝子の発現と等しかった。変異対立遺伝子の発現は、絶対数の点で、および野生型対立遺伝子に対して、より低分化の腺領域において増加した。変異体EGFRの発現は、充実性増殖パターンを有する領域においてピークになった。したがって、L858Rの発現レベルがEGFR-TKI療法に対する腫瘍クローンの感受性に影響するのであれば、この個々の腫瘍において、腫瘍の低分化領域は高分化領域よりも良好に反応すると予測される。
【0198】
実施例17:
複数の変異を有する腫瘍における発現パターン
腫瘍内不均一性をさらに研究するために、複数の点変異を有することが公知である腫瘍に対してプローブを設計した。個別化療法とは、患者の個々の特徴に合わせた療法を意味する。次世代配列決定技術の出現は、これから次第に、研究者およびおそらくは間もなく臨床医に、総合して個別化療法の改善された機会を提供し得る個々の腫瘍の変異プロファイルを提供しつつある。腫瘍の一部から調製されたDNAを配列決定することで、その試料中のすべての変異が明らかになるが、それらが腫瘍の異なるサブクローン中に存在する場合には明らかとはならない。本発明者らの技術を用いて遺伝子間腫瘍不均一性を研究できることの概念実証として、EGFR、KRAS、およびTP53の変異の特有の組み合わせを保有するFFPE事例のスクリーニングのために、個別化インサイチュー変異アッセイを設定した。
【0199】
1つの肺癌症例は、活性化EGFR変異G719C、および抗EGFR療法に対する耐性と関連しているEGFR S768I変異に関して陽性であった。いずれの変異変種も、パドロックプローブに基づくインサイチュー技法を用いてうまく検出され、それらの個々の発現パターンが同定された。腫瘍切片にわたって、G719C変異の発現は、S768I変異と比較して高かった。この症例は抗EGFR療法を受けなかった患者を示し、そのため耐性変異の発現増加の選択圧は存在しなかったため、発現された変異対立遺伝子間のこの均衡が予測され得る。
【0200】
別の肺FFPE試料を、腫瘍抑制遺伝子TP53のS127F変異と組み合わせてG719A EGFR変異についてアッセイした。この組織のインサイチュー解析から、TP53の野生型形態のみを発現し、EGFR対立遺伝子のいずれの発現も検出され得なかった間質領域内の細胞が示された。この組織試料のヘマトキシリンおよびエオシン(HE)染色により、野生型TP53を有する細胞集団がリンパ球であることが確認された。TP53 S127F変異陽性の腫瘍領域は、野生型EGFRおよびG719Aパドロックプローブの両方からのシグナルを示したが、野生型TP53パドロックプローブからのシグナルは示さず、TP53 LOHが示唆された。
【0201】
KRAS G12CおよびTP53 P190S変異が報告されているFFPE肺組織試料に対して、パドロックプローブのセットを適用した。野生型および変異体のTP53シグナルが異なる区画(それぞれ間質および腫瘍)に位置した先の症例とは対照的に、この場合、腫瘍区画内において、変異体および野生型TP53転写物がヘテロ接合性様式で発現された。同様に、野生型および変異体KRASシグナルも、野生型KRAS対立遺伝子と比較して変異体の発現がより高い状態で、腫瘍領域にわたって均等に分布していた。この2症例における野生型および変異体対立遺伝子の発現パターンのこの違いは、インサイチュー技法がDNA配列決定の補完物として含まれなかったならば、同定されなかったであろう。さらに、このインサイチューアッセイは単一細胞レベルで情報を明らかにするため、特有の情報(例えば、同一細胞内の2つ以上の変異の発現)を同定し、詳細に研究することができる。同一細胞内の異なる対立遺伝子の共局在は、腫瘍内の細胞内にそれらが共存するという強力な証拠を提供するが、共局在がないことは、特定の細胞系譜においてそれらが共発現されることを証明しない。これらの細胞のいずれにおいても全4つの対立遺伝子は検出されなかったが、染色パターンの最も可能性の高い解釈は、KRAS変異はすべてのTP53変異陽性細胞によって保有されるというものである。
【0202】
実施例11〜17の考察
実施例11〜17は、腫瘍組織切片および細胞学的調製物において点変異を特異的に標的化する多重インサイチューアッセイの確立を記述している。インサイチューでmRNAの逆転写によって合成された転写物を、変異体または野生型特異的パドロックプローブで標的化し、RCAによって検出可能なレベルまで増幅する。その後、得られた野生型および変異産物を異なる色のフルオロフォアで標識する。このパドロックプローブに基づくアッセイは、分子的癌診断のための変異解析を腫瘍組織切片上で直接行うことができることを初めて実証する。多重化インサイチューアッセイを開発し、結腸直腸癌において抗EGFR療法に対する耐性と関連しているKRASコドン12および13における活性化点変異に関する概念実証として検証した。プローブの選択性は、最初は個々に試験した。KRAS変異体と野生型の試料の間には明確な区別があり、遺伝子型は、対応する蛍光シグナルの単純な顕微鏡可視化によって容易に決定された。多重検出に関して、単一の対応するパドロックプローブ対と、すべてのコドン12および13 KRASパドロックプローブのカクテルとの対照比較により、2つのアプローチが効率および特異性の点で類似していることが示された。新鮮凍結組織は高品質のDNAおよびRNAを含み、分子研究のための貴重な基準として役立つため、パドロックプローブ戦略は非固定組織調製物において開発した。しかしながら、新鮮凍結組織における診断の実行は、実質的かつ高価なバイオバンク化の労力を必要とする。別法として、新鮮切断腫瘍表面からの捺印上で非固定腫瘍細胞を使用した。したがって、試料が到着した日にKRAS変異状態を決定することができ、これは本発明者らの日常的なパイロシーケンシングアッセイと一致した。
【0203】
FFPE組織ブロックは、日常的な外科病理学において包括的に用いられ、組織保存記録内に何年もの間保存され得る。しかしながら、ホルマリンによって誘導される生体分子の架橋は、DNAおよびRNAの断片化を生じる。それにもかかわらず、短い長さのパドロックプローブを、二重の認識部位および連結の必要性と組み合わせることで、このアッセイは固定組織病理学標本に理想的なものとなる。ホルマリン固定組織に最適化されたプロトコールを用いて、日常的なFFPE切片におけるインサイチュー検出が達成され、KRAS状態が未知である前向き外科的癌標本がうまく特徴づけられた。このアッセイの有望な見込みは、何百ものFFPE癌試料を、変異の存在についてTMA上で同時にスクリーニングすることができるということである。このようにして、TMAが利用可能な後向き患者コホートにおけるバイオマーカー発見に関して、点変異のハイスループットスクリーニングを、タンパク質発現に関するIHCおよび染色体異常に関するFISH解析と同様に行うことができた。インサイチュープロトコールは、任意の簡便なFISHアッセイのように自動化に適合させて、日常的使用のためにアッセイの実行を容易にすることができる。さらに、必要に応じて、蛍光読み取りを、明視野画像化のための組織化学的染色に変更することもできる。
【0204】
腫瘍不均一性は複雑な概念である。1つの局面は、後天性体細胞変異を有する癌細胞と、遺伝的に正常な間質細胞および炎症細胞の可変的混合物である。第2の局面は、新生物発生前区画と浸潤区画、高悪性度領域と低悪性度領域、浸潤前面と中心腫瘍領域、および可変的分化パターン、例えば、肉腫様、腺様、扁平上皮、または神経内分泌等に関する、腫瘍区画内の形態学的およびおそらく遺伝的変化である。第3の局面は、腫瘍の異なる部分において、変異対立遺伝子の発現が、プロモーターおよびスプライシング変異、エピジェネティックな変化、または遺伝子コピー数異常、例えば、増幅、欠失、およびLOHによって影響され得ることである。これらは、ゲノムレベルで解析することは困難であり得る。記載されるインサイチュー技法によって、腫瘍不均一性のこれらすべての困難な特徴の研究が可能になる。変異および野生型対立遺伝子のヘテロ接合性およびホモ接合性発現が、腫瘍細胞において認識され得、おそらくは、変異体腫瘍および野生型細胞の抽出された混合物の平均値をもたらすPCRに基づく技法では検出されなかったであろう、特定の組織標本に関する基礎的情報の1つの形態を実証する。このアッセイは、結腸癌試料において、腫瘍進行に沿った変異KRASコドン61対立遺伝子の発現増加を示す。肺腺癌の症例においては、活性化EGFR変異の発現が、特有の組織学的構造を有する領域において異なることが実証された。さらに、変異TP53対立遺伝子がそれぞれEGFRおよびKRASの活性化変異と共に可視化され得た2つの肺癌症例によって示されるように、この技法により、複数の異なる変異が腫瘍病変にわたってどのように分布し、関連しているのかの精査が可能になる。したがって、インサイチューでの変異解析は、癌の発生、腫瘍の進行および転移などの過程を精査するのに役立ち得る。将来の研究に関して、興味深い適用は、標的療法に応答した耐性変異の出現の研究である。EGFRの二重変異を有する1つの症例が示され、この場合、新規耐性変異を有する患者において予測され得るように、治療反応と関連する変異の発現と並行して、耐性変異の低発現が見られた。EGFR治療後の経過観察試料の解析により、患者特異的な反応が、2つの変異の発現に関して組織学的レベルで明らかにされ得ると考えられる。
【0205】
本研究でアッセイした79個の患者試料は、この20年間の間の異なる時点で収集され、様々な条件下で処理されたという事実にもかかわらず、それらはすべて、この提示される方法に適した組織材料としての資格があった。さらに、特異的に設計されたパドロックプローブは、全体として14個の異なる点変異のインサイチュー検出のためにうまく適用され、この変異アッセイが頑健性を提供し、これを様々な供給源に由来する組織材料上での他の変異の検出にも容易に適合させることができるという信頼性を与える。結論として、提示されるパドロックプローブおよびRCA技術は、診断的分子病理学およびトランスレーショナル癌研究に関する、複雑な腫瘍組織において組織学-遺伝子型相関関係を研究するための重要なアッセイであると考えられる。
【0206】
実施例18:
Braf変異の検出
BRAFは、異なる種類の腫瘍、主に悪性黒色腫、マイクロサテライトにおけるミスマッチ修復欠損(MSI)を示す散発性結腸直腸腫瘍、低悪性度卵巣漿液性癌、および
甲状腺乳頭癌における体細胞変異を示す。これらの変異の80%は、アミノ酸置換V600Eを引き起こすホットスポットトランスバージョン変異T1799Aに相当する。
【0207】
最もよく見られる変異はV600E変異(置換‐ミスセンス)である。
標的cDNA領域(変異塩基):
BRAFパドロックプローブ標的領域(アーム:15+15 nt)
【0208】
参考文献
以下の参考文献は、それらが、本明細書中に記載されるものを補足する例示的な手順の詳細またはその他の詳細を提供する程度まで、参照により本明細書に明確に組み入れられる。