【課題を解決するための手段】
【0023】
上述の発明の課題は、それぞれの独立請求項に記載されるTOハウジング、及びTOハウジングの製造方法により解決される。
【0024】
本発明の好ましい実施形態および展開構成例は、それぞれの従属請求項から読み取ることができる。
【0025】
本発明は、受信機ダイオードまたは送信機ダイオードを備えるデバイスを収容するためのベースを有している、高周波用途向けのTOハウジングに関するものである。
【0026】
該モジュールは特に、複数の半導体デバイス、いわゆるチップ、1つのフォトダイオードおよび/またはレーザ・ダイオードから構成されているが、そこではこのチップに、さらに別の電子デバイスが、特に1つの増幅器アッセンブリが含まれている。
【0027】
該基部は、金属製部品であり、特に実質的に円筒形状または矩形の構成部品として、構成されていると好適である。
【0028】
受信機ダイオードおよび/または送信機ダイオードは、データを伝送するために使用される。これは当業者には知られており、それ以上解説するには及ばない。
【0029】
送信機ダイオードまたは受信機ダイオードを備えるデバイス、又はこのデバイスに接続された増幅器ユニットは、複数のボンディング・ワイヤーを利用して、それぞれの接続リード線に接続されている。そこではこれらの接続リード線が、高周波技術を利用したデータ伝送に利用されるようになっている。
【0030】
該デバイスは通常、該基部の上に置かれ、次に少なくとも2つのボンディング・ワイヤーを利用して接触(contact)、すなわちそれぞれの接続リード線に接続されるようになっている。
【0031】
そのための様々な方法として、特に熱圧着ボンディング(thermo-compression bonding)、サーモソニック・ボール・ウェッジ・ボンディング(thermosonic ball-wedge bonding)、ならびに超音波ウェッジ・ウェッジ・ボンディング(ultrasonic wedge-wedge bonding)が、当業者には知られている。
【0032】
該デバイスは、本発明においては、例えば、増幅器ユニットを備えるチップと、これに接続されている、特にSMDデバイスとして構成された送信機ダイオードまたは受信機ダイオードとを含むモジュールとして、構成されるものであってもよい。
【0033】
該接続リード線は、パッセージ(passage:通路)内で、該基部を通じてのびており、さらにシーリング・コンパウンドを利用して、該基部に対して絶縁されるとともに、該基部内に固定されている。
【0034】
特に、ガラス・シーリング・コンパウンドが使用されるようになっている。誘電率が可能な限り低いガラス、特に硼珪酸ガラスが使用されると好適である。
【0035】
特に、送信機ダイオードまたは受信機ダイオードの各々に対して、データ伝送のために2本の接続リード線が割り当てられている。
【0036】
該接続リード線は、通例、該基部の上面または下面に対して実質的に垂直に、すなわち、これらのリード線が貫通するパッセージ(passage)の主たる延伸方向に対して平行に延びている。
【0037】
本発明の実施形態の一例においては、1つのパッセージの内部に、2本の接続リード線が、並べて配置されている。これは、微分型または平衡型の伝導形態である。
【0038】
本発明の別の実施形態においては、1つの接続リード線に対して1つのパッセージを提供し、さらに、該基部を介したリターン・パス(return path)を提供する。
【0039】
本発明の核心を成す思想は、ボンディング・ワイヤー(bonding wires)の長さの短縮に関するものであるが、ここで、ボンディング・ワイヤーの長さは、本発明の主意においては、該ボンディング・ワイヤーが1つの接触点から別の接触点まで延びている間の距離を指す。
【0040】
ボンディング・ワイヤーの長さを短縮するために、本発明にしたがって、様々な対策が考えられる。
【0041】
第1に、少なくとも1本の接続リード線が、送信機ダイオードまたは受信機ダイオードを備えるデバイス側の断面積を、該パッセージの内部における断面積よりも拡大することが考えられる。
【0042】
そのためには特に、この接続リード線に1つの板状もしくはきのこ形の部分が備えられるとよい。
【0043】
断面積をこのように拡大することにより、接続リード線は、モジュールに隣接した部分が肥厚化され、ボンディング・ワイヤーのための接触点が、該モジュールの接触点により近いところに位置することになる。
【0044】
さらにもう1つの可能性が、該パッセージ(passage)の内部における端子線の非対称な配置方式である。
【0045】
すなわち一方では、端子線を該パッセージの内部中央に配置するのではなく、その位置を該モジュールに向かってずら(offset)して配置することが考えられる。
【0046】
ほかにも該接続リード線を、該パッセージの内部に、それと共軸にではなく、斜めに差し込んで、該モジュールの接触点の方を指し示すようにすることも考えられる。
【0047】
さらにもう1つの可能性が、アングル加工された(angled)構成形態であるが、そこでは該接続リード線の各アングル加工部が、該モジュールの方向を指し示すようになっている。
【0048】
それ以外にも、受信機ダイオードまたは送信機ダイオードを備えるデバイス、すなわち特にチップを該パッセージの領域内に突出させるように構成することにより、ボンディング・ワイヤーの長さを短縮することができる。
【0049】
すなわちこのチップは、上面図において該パッセージと少なくとも部分的に重なり合って、接続リード線の接触点に、より近接したものとなっている。
【0050】
もっとも、ボンディング・ワイヤーの長さを短縮するための上述の様々な設計変更に随伴して、該パッセージの領域内では、接続リード線のキャパシタンスが、全長にわたり、または長さの一部にわたり、増大しかねないことが今では判明している。
【0051】
インピーダンスZは、高周波域においては、公然周知であるように、インダクタンスLとキャパシタンスCとの比の平方根として規定されている。
【0052】
このときに該パッセージの領域内のキャパシタンスが増大すると、インピーダンスは低下するが、その結果、高周波伝送路には、信号反射による損失の増大を来すことになる。
【0053】
ところが今では本発明の発明者により、少なくとも1本の接続リード線を、シーリング化合物をともなう基部におけるパッセージの領域から少なくとも部分的に突出させることにより、上述のキャパシタンスの増大を、補償できることが突き止められたのである。
【0054】
しかしながらこの接続リード線のその際の突出量は、最も高い周波数スペクトルの波長の4分の1以下となっている。
【0055】
この接続リード線の突出部(protruding portion)(または余分な長さ部分(excess length))は、好ましくは該接続リード線の一部であり、そこでは、該接続リード線が、露出する(即ち、空気により覆われる)ように延びており、この接続リード線が接続されている1つの回路基板と、シーリング・コンパウンドにより被覆されることになるパッセージとの間に位置している。つまり、この接続リード線の接続は、シーリング・コンパウンドから距離をおいたところで確立されている。しかし、該余分な長さ部分の範囲において、該接続リードは、該シーリング・コンパウンドよりも誘電率が低い材料で取り囲むようにすることもありえる。
【0056】
回路技術面からも、本発明を記述することができる。
【0057】
該接続リード線の考えられる長さは、通常、有効スペクトルの最も高い周波数の波長の4分の1よりも短いために、これらの線は、集中デバイス(concentrated devices)として計算することができる。
【0058】
該チップを該接続リード線と接続するボンディング・ワイヤーは、それに関するインダクタンスL
bを有している。
【0059】
該パッセージ内に配置された接続リード線は、ガラス製シーリング・コンパウドの誘電率が高いために、キャパシタンスC
dを規定する。
【0060】
本発明は、追加のインダクタンスL
ueが、該接続リード線が空気により覆われている、TOハウジングの下面における余分な長さ部分によって生じていることを提案する。
【0061】
回路技術的には、前述のように導電性要素の等価回路の文脈において、L
B−C
D−L
UE回路がこの方法により規定される。
【0062】
特に、該余分な長さ部分の寸法が適切に決定されることにより、信号パスのインピーダンスが適合化され、その結果、該インピーダンスは、反射を最小限化するように該回路上の導電パスのインピーダンスと一致される。
【0063】
インダクタンスL
ueの大きさは、回路基板と基部間のスペースを通じて適合される。
【0064】
このスペースを正確に維持するために、一実施形態は、TOハウジングの下面に取り付けられているスペーサを提供し、該スペーサは、該回路基板に対する予め規定された距離を保障するように、隆起状に形成されている。
【0065】
それにより、高周波域におけるインピーダンスを、30Ωから80Ωの間、好適には40Ωから60Ωの間に設定することができる。
【0066】
インダクタンスL
bは80pHから300pHの間、C
dは0.065pFから0.024pFの間、および/またはL
ueは80pHから300pHの間であると好適である。
【0067】
該余分な長さ部分の長さは、例えば次のようにして決定されるとよい。
【0068】
まず最初に、該ボンディング・ワイヤーの長さに応じて、集中デバイスとして考えられる該ボンディング・ワイヤーのインダクタンスが決定される。例えば、ボンディング・ワイヤーの長さが80μmから300μmまでである場合は、該インダクタンスは、80pHから300pHの間となる。
【0069】
続いて該余分な長さ部分が、スミス・チャートを使用して、例えば20GHzの高周波数に基づき、決定もしくは推定されることができる。
【0070】
またその際には、シーリング・コンパウンドの誘電率のせいで、シーリング・コンパウンドの中に埋め込まれた接続リード線が、通例は50Ωである理想的な見かけのインピーダンスを有していない点に配慮するようにしている。その結果、スミス・チャートのインピーダンス・ポイントの位置が、誘導性の半部(inductive half)から容量性の半部(capacitive half)へシフトすることになる。
【0071】
同様に集中デバイスであると看做される該パッセージの下側の該余分な長さ部分は、当業者にとっては公然周知である方法により計算することができるインピーダンスを規定する。さらに、該パッセージと該余分な長さ部分との間のインピーダンスの差は、結果的に、スミス・チャートの左側に向かうインピーダンスジャンプをもたらすことになる。
【0072】
その後には、このスミス・チャートに基づいて、接続点における正規化インピーダンスが、このスミス・チャートの実軸と概ね符合するように、すなわち該インピーダンス・ポイントがスミス・チャートの容量性の半部へと上方にシフトするように、該余分な長さ部分の寸法を決定することができる。
【0073】
この種のTO−CANは、回路基板、特に1つのリジッド・タイプ、フレックス・リジッド・タイプ、および/またはマルチレイヤー・タイプのプリント基板を利用して、接続されるようにするとよい。
【0074】
送信機ダイオードまたは受信機ダイオードを実装したTOハウジングは、好ましくは、30Ωから120Ωの間のインピーダンスを有する。
【0075】
シーリング・コンパウンドにより充填されたパッセージから突出する部分の該接続リード線の長さは、0.1
mm〜3mm、好ましくは0.15
mm〜1mmである。
【0076】
本発明の展開構成例においては、少なくとも1つの接続リード線の断面積は、電気接続のサイドにおける断面積が該パッセージ中の断面積に比べて拡大している。
【0077】
すなわち、所望のインピーダンスを設定するために、該パッセージ内部に位置する接続リード線は、より小さくなっている。
【0078】
送信性能(transmission performance)を向上するためには、ほかにも、少なくともその断面において、角張った、特に矩形の接続リード線を形成することが考えられる。
【0079】
本発明の一実施形態においては、該パッセージの断面形状が、送信機ダイオードまたは受信機ダイオード側に向かって先細りするように、特にテーパ状に、または段付き形状に、構成されている。
【0080】
該パッセージがこのように先細りすることによって、接続リード線が該TOハウジングの内部に入り込む領域においては、該パッセージの断面積が小さくなるために、その結果、それ以外の設計上の対策を不要として、デバイスをさらに該接続リード線の近くに置くことができるようになる。
【0081】
あるいはその代わりに、またはそれと組み合わせて、1つの補助的な基部を、特に金属基部を、接続リード線の脇に追加して備え、この基部の上に該デバイスを置くようにすることも考えられる。
【0082】
ほかにも、該パッセージの領域に1つの開口部を有する中間プレートを設けた該ハウジングを提供し、該開口部から該接続リード線が該ハウジングの内部へと突出しするようにすることも考えられるが、そこではこの開口部は、該パッセージよりも小さい径を有する。
【0083】
該デバイスは、該接続リード線に近いところで、該中間プレート上に配置されるようにしてもよい。
【0084】
ボンディング・ワイヤーの長さは、1mm未満、非常に好ましくは0.5mm未満、特に極めて好ましくは0.25mm未満であると、好適である。
【0085】
本発明にしたがい送信機ダイオード又は受信機ダイオードを備えたTOハウジングは、毎秒20ギガビットを上回る伝送速度でのデータ伝送に使用することができる。
【0086】
本発明は、それ以外にもさらに、TOハウジングの製造方法、特に上記で説明したようなTOハウジングの製造方法にも関している。
【0087】
まず最初に、1つの送信機ダイオードまたは受信機ダイオードが備えられた1つのデバイスを収容するための1つの基部を準備する。
【0088】
この基部は、特に金属打抜き部品として構成されたものであるとよい。
【0089】
受信機ダイオードまたは送信機ダイオードを備えたこのデバイスは、ボンディング・ワイヤーを利用して、接続リード線に接続されている。
【0090】
これらの接続リード線は、パッセージを通じて貫通し、シーリング・コンパウンド、特にガラス・シーリング・コンパウンドを利用して、基部の内部でシールされている。
【0091】
本発明にしたがった方法においては、ボンディング・ワイヤーの長さを短縮するために、少なくとも1本の接続リード線が、パッセージ内部での断面積に対して、デバイス側で拡大された断面積を有するように形成され、もしくはパッセージにおいて非対称に配置され、又は接続リード線がアングル加工を施して形成される。
【0092】
ほかにもこのデバイスは、その少なくとも一部をリードスルーの領域内に突出させるようにするとよい。
【0093】
ゾーン毎に異なるキャパシタンスの増大を少なくとも部分的に補償するために、少なくとも1本の接続リード線を、端子側でシーリング・コンパウンドにより充填されたパッセージから突出させるようにしている。