(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明による実施例1の打上げ花火の玉皮1の斜視図である。
【
図2】(a)は同実施例1の玉皮材2の正面図である。(b)は同実施例1の玉皮1の正面図である。
【
図3】同実施例1の截頭円錐筒3の正面からの斜視図である。
【
図4】同実施例1の截頭円錐筒3の背面からの斜視図である。
【
図5】(a)は同実施例1の扇型台紙5の平面図である。(b)は同実施例1の円形台紙6の平面図である。
【
図6】同実施例1における玉皮材2のプレス成形のセットの様子を示す正面断面の模式図である。
【
図7】本発明による実施例1の変形例である玉皮材2´の斜視図である。
【
図8】(a)は本発明による実施例2の玉皮材202(円錐筒203)の正面からの斜視図である。(b)は同実施例2の扇形台紙205の平面図である。
【
図9】(a)は本発明による実施例3の玉皮材320(円錐筒330)の正面からの斜視図である。(b)は同実施例3の扇形台紙305の平面図である。
【
図10】(a)は本発明による実施例4の玉皮材402(円筒体403)の正面からの斜視図である。(b)は同実施例4の方形台紙405の平面図である。
【
図11】(a)は本発明による実施例5の玉皮材502(二段円錐筒503)の正面からの斜視図である。(b)は同実施例5の二段円錐筒503の正面図である。
【
図13】(a),(b)はそれぞれ実施例5の変形例による台紙505´の平面図である。
【
図14】(a)は同実施例5の玉皮材502(二段円錐筒503)の平面図である。(b)は同実施例5の変形例の玉皮材502´(二段円錐筒503´)の平面図である。
【
図15】(a)は本発明による実施例6の玉皮材602(二段円錐筒603)の正面図である。(b)は同実施例6の玉皮材602(二段円錐筒635)の正面図である。
【
図16】同実施例6における玉皮材602のプレス成形のセットの様子を示す正面断面の模式図である。
【
図17】本発明による実施例7の截頭円錐筒703の背面からの斜視図である。
【
図18】同実施例7の扇型台紙705の平面図である。
【
図19】同実施例8の截頭円錐筒803の斜視図である。
【
図20】(a)は同実施例9の玉皮材902の正面図である。(b)は同実施例9の玉皮1の正面図である。
【
図21】(a)は同実施例9の円筒903の斜視図である。
【
図22】同実施例9における玉皮材902のプレス成形のセットの様子を示す正面断面の模式図である。
【
図23】同実施例10の円形台紙1006の斜視図である。同実施例10における玉皮材1006のプレス成形のセットの様子を示す正面断面の模式図である。
【
図24】実施例1に基づき実際に製造した実例の斜視図である。
【
図25】実施例1に基づき実際に製造した実例の別の方向からの斜視図である。
【
図26】実施例9に基づき実際に製造した実例の斜視図である。
【
図27】実施例9に基づき実際に製造した実例の別の方向からの斜視図である。
【
図28】実施例10の玉皮製造方法の第1工程である。
【
図29】実施例10の玉皮製造方法の第2工程である。
【
図30】実施例10の玉皮製造方法の第3工程である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施例1による打上げ花火の玉皮1(以下、単に玉皮1という。)について
図1〜
図6を参照して以下に説明する。玉皮1は、
図1に示すように、上部が開口した中空半球状であり、上部1aと、下部1bと、それらの境界に緯方向に輪状に形成される接合部1cと、を備え、上部が開口した中空半球体に成形された打上げ花火の玉皮である。玉皮1は、後述の玉皮材2を絞りプレスすることにより、中空半球状に成形されるものであり、その円周上端には、玉皮1を二つ合わせて花火玉とする際の接合部1cが形成される。少なくとも、上部を構成する上部玉皮材と、底部を構成する下部玉皮材と、から構成される玉皮材2を、プレスで一体成型することにより玉皮1が形成される。これに加えて、その他の、玉皮材を加えても良い。材料は厚紙が一般的であるが、適宜、他の材料を採用してもよい。接合部1cはプレスで潰された形状であり、一般的には、不規則な形状の溝が形成される。また玉皮1の表面にはプレス痕が形成されることがある。
【0037】
次に実施例1の玉皮1の製造方法を説明する。玉皮材2を絞りプレスすることにより、中空半球状に成形される。玉皮材2は、第1の玉皮材である截頭円錐筒3と、截頭円錐筒3の小径側に設けられる第2の玉皮材である底板4とからなる(
図2(a)参照)。これに、適宜、第3の玉皮材を付加してもよい。よって、玉皮1は、截頭円錐筒3を材料とする下部が切り欠かれた半球体の上部12と、底板4を材料とする上部12の下部に接続する弧状面を有する下部13とが一体的に成形されることとなる(
図1,
図2(b)参照)。本実施例では玉皮材2を二つ重ねてこれらを一体的にプレス成形するため、玉皮1は厚み方向に二重構造となる。
【0038】
截頭円錐筒3は、
図2(a),
図3,
図4に示すように、下方に向かって縮径する円筒体であり、小径側の下端には縮径端31が形成され、大径側の上端には拡径端32が形成される。縮径端31と拡径端32との間には周径が遷移するテーパ面33が形成される。テーパ面33は上方に向かって末広がりな外傾斜面となる。
【0039】
截頭円錐筒3は、
図5(a)に示すような、左右側辺に雄係合部51と雌係合部52とを有する扇型台紙5を丸めて、雄係合部51および雌係合部52を係合させて係合部34(
図3,
図4参照)とすることにより形成される。扇型台紙5は扇形の中心側が切り取られ、元々の弧が外弧53となり、切り取られた部分の周縁が内弧54となった形状である。外弧53または内弧54がなす扇形の中心角θは任意の値をとりうる。
【0040】
雄係合部51は、
図5(a)に示す通り、扇型台紙5の側辺から突設して形成され、雌係合部52は扇型台紙5の逆の側辺の近くに設けられるスリットである。係合のための形状はこれに限られず用いることができる。係合部34は、扇型台紙5を巻いて雄係合部51を雌係合部52に挿し込むことにより形成されることとなる(
図3,
図4参照)。係合部34には糊付けするとよい。また、係合部34は、截頭円錐筒3において部分的に二重の板厚を有することとなるので、扇型台紙5のうち雄係合部51および雌係合部52の近傍の側辺は適宜切り欠いておくのもよい。
【0041】
底板4は、
図5(b)に示すように、円形台紙6であって、截頭円錐筒3の縮径端31の直径以上の直径を有するものである。
【0042】
底板4の片面には、
図5(b)に示す通り、中心から離間した位置から円周上にまで延び出す溝61を放射状に設けてある。溝61は底板4の形状をプレスして打ち抜く際に同形状に配置した放射状の刻印を打つと簡便に設けることができる。玉皮1の大きさや底板4の材質、作成する花火玉の種類等により適宜調整し得る。溝61の深さはゼロから板厚までの任意の値をとることができる。すなわち、溝61を設けないこととしてもよいし、溝61を切り込みとしてもよい。また、溝61は、
図5(b)のような8条の放射状のものに限られず、その数の増減や幅・長さの調整を行うこともできる。溝61の形状は、放射状に限られず、例えば複数個の同心円や、螺旋状に設けることもできる。溝61を片面のみならず両面に設けてもよく、表裏で別々の形状としてもよい。
【0043】
玉皮材2は、底板4を截頭円錐筒3の内側に載置することにより構成される(
図2(a)参照)。これにより玉皮材2は玉皮材、すなわち、半球状の玉皮1に近い形状の立体となる。底板4の直径は縮径端31の直径以上であるため、底板4を截頭円錐筒3の拡径端32の側から内部に載置すると、底板4は縮径端31付近に内接されることとなる。底板4の載置は溝61が上側となるように行うが逆とすることも可能である。また、底板4を截頭円錐筒3の下方から外接して設けることもできる。なお、玉皮材2は、その展開図の形状を有する円形台紙6と底板4とを組み立てた組立玉皮材であり、このように展開図を分割した複数の台紙から組み立てることもできるし、下記実施例に示すように一つの台紙から一体的に組み立てることもできる。
【0044】
玉皮1は、
図6に示す通り、玉皮材2を二つ重ねて絞りプレスすることにより成形される。すなわち、下から截頭円錐筒3、底板4、截頭円錐筒3、底板4の順に重ねることとなるが、必ずしもこの順番に従う必要はない。また、玉皮材2を重ねずに一つだけ用いて成形してもよく、玉皮材2を三つ以上に複層化することもできる。さらに玉皮材2において、截頭円錐筒3と底板4とが一対一に対応している必要はなく、一つの截頭円錐筒3に対して底板4を二つ設けることもできる。各部品間には適宜糊付けをしてからプレス成形するとよい。
【0045】
玉皮材2を複層化する際には、それぞれの係合部34の円周上における間隔が等しくなるようにずらして重ねると好ましい。玉皮材2を二つ重ねる際には、それぞれの係合部34が重ならないように対向させて、すなわち、これらの角度位置を180度離間させて隔置する。玉皮材2を三つ重ねる際には、それぞれの係合部34の角度位置を120度離間させて隔置するとよい。
【0046】
玉皮材2のプレス成形は、
図6に示す通り、凸半球形の雄型7と凹半球形の雌型8とによって、部分的な絞り・曲げが作用しつつ行われ、玉皮材2は上部が開口した中空半球状の玉皮1に成形される。プレスの際には必要に応じて、材料に湿り気を与えたり、熱を与えたりしてもよい。扇型台紙5にはカット代が見込んであり、曲げ成形と同時に玉皮材2の円周上端部21をカットして玉皮1の接合部1cを整えるが、そのようなカット代を設けずに、プレス曲げと同時に突き当て成形して扇型台紙5の外弧53をそのまま玉皮1の接合部1cに利用してもよい。
【0047】
截頭円錐筒3および底板4の材質としては黄板紙等の厚紙を用いる。また、その他のボール紙や、和紙、クラフト紙、新聞紙等を張り合わせたものを用いることもできる。また、パルプ材や古紙の集成材、その他の植物繊維、合成繊維、その他の合成樹脂等による薄肉の材料を用いることもできる。また、難燃剤や防水材等を使用することもできる。
【0048】
各部材のおよその寸法について5号玉を例にして挙げる。5号玉の玉皮1は、直径がφ140mm、厚みが3mmである。プレス成形前については、玉皮材2の高さが65mm、縮径端31がφ100mm、拡径端32がφ145mmである。また、扇型台紙5は外弧53がφ390mm、内弧54がφ250mm、中心角θが140度であり、厚みが1.5mmである。扇型台紙5の係合部34の係合しろは片側15mmに設定されている。円形台紙6は直径がφ97mmであり、厚みが1.5mmである。これらは一例にすぎず同じ5号玉の玉皮1であってもこれら以外の寸法で作成することも可能である。
【0049】
玉皮1は従来の製造方法による玉皮と同様に花火玉の製造に用いる。すなわち、玉皮1を二つ用意してその一つの中心に穴を空けて導火線を挿し込み、二つの玉皮1の内部に割薬、親星、芯星等を詰め、これらを二つ重ね合わせて外側に和紙やクラフト紙等の上貼紙を貼りつけて球状の花火玉とする。
【0050】
本発明実施例による玉皮1の効果について説明する。従来の放射状に切れ目を入れた円形の台紙を二枚重ねて絞りプレスして玉皮とするものは、半球状の円周上端に近づくほど曲げ成形の際の絞り量が大きくなって材料肉が局所的に寄せ集められ肥厚化されてしまい、また、そのような材料肉厚の変動は半球状の円周上においてばらつきがあるため、半球状に成形された後、時間が経つにつれて反りや歪み等の形状変化が甚大であった。しかし、本発明実施例による玉皮1は、従来のように完全な平面から球面を成形するものでなく、より半球形状に近い立体的な形状の玉皮材2をプレス成形するため、曲げ伸びによる薄肉化や絞り曲げ部分の局所的な材料肉の偏在は極力抑えられ、より均一な肉厚の半球形状が形成されることとなる。そのため、玉皮1はより真円度が高く、経時的変化による歪みもほとんど発生しない。例えば、従来の玉皮のように花火玉の組立工程において玉皮に導火線を挿し込んだ箇所の接着剤を乾かしている間に玉皮に歪みが発生してしまうといったことはなく、都度、球形に馴染ませる必要がなくなるため、玉皮1を用いると作業効率が向上する。また、玉皮1自体の経時的な形状変化が非常に少ないことから、玉貼りが終わって保管する際にも花火玉の真円度を保つことができる。
【0051】
玉皮1は上記効果を奏する上、安価に製造することができる。従来の半球状の上部に短筒状の紙管材を設ける構成も、玉皮1と同じように経時的な形状変化があまり起こらず真円度も高いという効果を奏するが、これと比較すると玉皮1はより形状変化に強い上、半分以下のコストで製造することができる。
【0052】
雄係合部51を雌係合部52に挿し込む構成により、他の部材を用いることなく扇型台紙5から截頭円錐筒3を容易かつ安価に組み立てることができる。
【0053】
円形台紙6にあらかじめ溝61を設けておくことにより、平面から球面に成形する際にも円形台紙6がプレス型に馴染みやすく、円滑に行うことができる。特に溝61を放射状に設けると、局所的に絞りが大きな曲げ部分の材料肉の余りを吸収して球面の凹凸を減らすことができ、寸法精度の向上や経時的変化による歪みの防止を図ることができる。
【0054】
扇型台紙5および円形台紙6は簡潔な形状であるため、截頭円錐筒3ないし玉皮材2の組立を容易に行うことができる。底板4を截頭円錐筒3の縮径端31付近に載置して内設すると、玉皮材2のうち截頭円錐筒3の周縁を摘んで持ち上げることによって、截頭円錐筒3および底板4を一体的に扱うことができ、作業効率が向上する。また、底板4を截頭円錐筒3の下方から外設するときと比べると、玉皮1における底板4に相当する部分の内圧に対する強度が向上し、玉皮1の全体の強度をより均一にすることができる。
【0055】
玉皮1は、任意の数の玉皮材2を重ねて構成することができ、同じ寸法の部品を用いても、厚み・強度を調整することができる。玉皮材2を複層化する際に、玉皮材2の円周上端部21におけるそれぞれの係合部34の間隔を等しくすることにより、玉皮1における強度分布をより均一にすることができる。
【0056】
曲げ成形と同時に玉皮材2の円周上端部21をカットすることにより、玉皮1の接合部1cが整うため、花火玉の組立時において玉詰め後、二つの玉皮1を合わせることが容易となり、真円度も増すこととなる。一方、扇型台紙5にカット代を見込まず、プレス曲げと同時に突き当て成形して扇型台紙5の外弧53をそのまま玉皮1の接合部1cとすることもでき、この場合は材料歩留まりが向上し、切れ端のゴミが発生することもなくなる。従来の放射状に切れ目を入れた円形の台紙をプレスして玉皮とするものは、プレス曲げにより円周上端に凹凸が必ず発生することとなるが、本発明によって扇型台紙5の外弧53をそのまま玉皮1の接合部1cとすると、プレス曲げによっても円周上端に発生する凹凸は微小であり、これについてもプレス下死点において突き当て成形することにより接合部1cの平坦度を保つことができるということである。この場合、玉皮1の円周上端部の材料密度が大きくなり、真円度の形状保持性がさらに向上する。
【0057】
図7に示す通り、実施例1と同様な玉皮材2´を、従来の放射状に切れ目を入れた円形の台紙9´に載置して重ねた状態でプレス成形することによって半球状の玉皮とすることもできる。また、台紙9´を玉皮材2´に載置して重ねてもよい。このように従来の円形の台紙を重ねても、絞りによる局所的な肥厚化のない玉皮材2´と重ねて一体的に成形することによって、玉皮の経時的な形状変化を少なくするという本発明の効果を得ることができる。
【0058】
本発明の実施例2による玉皮201について
図8を参照して説明する。各構成に付す符合は実施例1におけるものの200番台とし、実施例1と共通する点についてはこれを援用し、説明を省略する。実施例2の玉皮201は、
図8(a)に示す通り、底板4を截頭円錐筒3と別途に設けないで、一つの部品から玉皮材202を構成するというものである。ここでは扇型台紙5に代えて、内弧54のない扇形台紙205を用いる(
図8(b)参照)。雄係合部251と雌係合部252との係合により係合部234を形成すると、実施例1のような截頭円錐筒3ではなく、円錐筒203が組み立てられることとなる(
図8(a)参照)。この円錐筒203をそのまま玉皮材202として用い、実施例1と同様にしてプレス成形して玉皮201を得る。
【0059】
実施例2では、部品点数が削減されたことにより、材料費・作業効率の観点から一層の低コスト化を図ることができる。実施例2の玉皮材202を実施例1の玉皮材2に重ねてプレス成形することによって玉皮を得ることもできる。その他、実施例2の玉皮材202を従来の放射状に切れ目を入れた円形の台紙と重ね合わせてプレス成形することによっても玉皮を得ることができ、ここにおいても本発明の効果は奏されることとなる。
【0060】
本発明の実施例3による玉皮301について
図9を参照して説明する。実施例3の玉皮301は実施例2の変形例である。この変形例では、扇形台紙205の頂点を切り欠いた扇形台紙305を用いる(
図9(b)参照)。すなわち、実施例1の扇型台紙5における内弧54ほどではないが、扇形台紙305には微小な内弧354が形成されることとなる。扇形台紙305を巻いて組み立てられる円錐筒330の下端には穴356が形成される(
図9(a)参照)。
【0061】
実施例3による玉皮301によると、実施例2では玉皮201の底部が肉厚化されてしまうところ、絞り曲げで余る材料肉を穴356により吸収できるため、厚みをより均一にすることができる。プレス成形後に玉皮301に残る穴356には、花火玉の組立の際に導火線を挿し込むことに利用できる。もう一方の半球側の玉皮301の穴356は上貼紙を貼る際に埋めてもよいし、もう一方の半球側には穴356のない上記の玉皮1や玉皮201を用いてもよい。また、扇形台紙305に下記実施例4におけるスリット436に相当するものを設けてもよい。
【0062】
本発明の実施例4による玉皮401について
図10を参照して説明する。各構成に付す符合は実施例2におけるものの400番台とし、実施例2と共通する点についてはこれを援用し、説明を省略する。実施例4の玉皮401は、実施例2の円錐筒203に代えて円筒体403(
図10(a)参照)を用いて玉皮材402を構成するというものである。円筒体403は方形台紙405(
図10(b)参照)を丸めて、雄係合部451と雌係合部452とを係合させ係合部434とすることにより組み立てられる。円筒体403の下部には8条のスリット436を設ける。スリット436は起点となる辺から直角に設けているが、円筒体403の高さ方向に対して斜めに傾くように設けてもよい。この円筒体403を玉皮材402とし、これをプレス成形することにより玉皮401を得る。本実施例では円筒体403を重ねずにプレス成形するが、二つ重ねることとしてもよい。
【0063】
プレス成形の際には、玉皮401の下部413が特に絞り量が大きくなるところ、スリット436により不規則に潰れて変形することを避けつつ、半球状に成形することができる。この実施例では、従来の放射状に切れ目を入れた円形の台紙を絞りプレスして玉皮とする方法と同様に絞り量は大きくなるが、プレス成形前にあらかじめ立体形状である玉皮材402とすることによって成形量は減り、また、絞る箇所が玉皮401の下部413であるため、玉皮401の合わせ面411の真円度は保たれることとなる。スリット436は上記のような8条のものに限られず、6条など別の構成にすることができる。また、スリット436について、切り込みのみならず、切り欠いた形状のものとしてもよい。
【0064】
本発明の実施例5による玉皮501について
図11〜12を参照して説明する。各構成に付す符合は実施例2におけるものの500番台とし、実施例2と共通する点についてはこれを援用し、説明を省略する。実施例5では、実施例2の円錐筒203におけるテーパ面の角度を上部と下部とで異なるものにした二段円錐筒503を用いて玉皮材502とするものである。具体的には、
図11(a),(b)に示す通り、二段円錐筒503は上部テーパ面533aと下部テーパ面533bを備え、上部テーパ面533aは下部テーパ面533bよりも小さなテーパ角となる。本実施例と同様にして三段以上の多段円錐筒としてもよい。
【0065】
二段円錐筒503の展開図である台紙505は、
図12のように、組み立てた際に上部テーパ面533aを構成する上部台紙555aと、下部テーパ面533bを構成する下部台紙555bとからなる。上部台紙555aは実施例1の扇型台紙5(
図5(a)参照)に類似した形状であり外弧553と内弧554とを備える扇型である。下部台紙555bは実施例2の扇形台紙205(
図8(b)参照)に類似した形状の弧557を持つ扇形である。下部台紙555bは上部台紙555aの内弧554に接して設けられ、上部台紙555aおよび下部台紙555bは連結部556によって一体となっている。本実施例では
図12に示すように中ほどに連結部556を設けて上部台紙555aと下部テーパ面533bとを接続しているが、この連結部556の位置は任意に設定できる。例えば、
図13(a)に示す通り、下部台紙555b´の弧557´における連結部556´の位置を端部に設けたり、
図13(b)に示す通り、上部台紙555a´の内弧554´における連結部556´の位置を端部に設けたりすることができる。
【0066】
図12に示す通り、上部台紙555aは上部雄係合部551aと上部雌係合部552aとを備え、下部台紙555bは下部雄係合部551bと下部雌係合部552bとを備える。上部雄係合部551aの上下端と下部雄係合部551bの上端とを切り欠き、重合部分の材料肉を減らすようにしている。上部係合部534aおよび下部係合部534bは、台紙505から二段円錐筒503に組み立てた状態にあっては、周方向において同じ角度位置となるようにしているが(
図14(a)参照)、これとは角度位置の位相が互いに異なる角度、例えば180度離間した角度位置等に設けても良い(
図14(b)参照)。上部係合部534aおよび下部係合部534bの相対的な角度位置の変更は上述した連結部556の位置の調整により行うことができる(
図13(a)(b)参照)。
【0067】
上部雄係合部551aと上部雌係合部552aとを係合させて上部係合部534aとなし、下部雄係合部551bと下部雌係合部552bとを係合させて下部係合部534bとなすことにより、台紙505から二段円錐筒503が組み立てられる。実施例1と同様に上部係合部534aおよび下部係合部534bの周方向における角度位置が重ならないように配慮して二つの二段円錐筒503を重ねることにより玉皮材502としてプレス成形する。
【0068】
本発明の実施例5によると、玉皮材502がさらに半球状に近い形となるため、プレス成形する際の材料の絞り量や伸び量が少なくなり、玉皮501をさらに均一で安定した半球形状に成形することができる。上部テーパ面533aと下部テーパ面533bは連結部556によって連結されている上、上部テーパ面533aは下部テーパ面533bに載置されることとなるため、二段円錐筒503の形状は崩れることなく、一体的に取り扱うことができる。
【0069】
連結部556を下部台紙555bの弧557または上部台紙555aの内弧554の任意の位置に設定することにより(
図13,
図14参照)、玉皮材502を組立てた際のいっそうの強度の均一化を図ることができる。例えば、
図14(a)のように上部係合部534aと下部係合部534bとの周方向における角度位置を同一にした二段円錐筒503にして台紙の歩留まりや組立て性を向上させた上、他の二段円錐筒503と重ねて玉皮材502とする際にはこれらの係合部をそれぞれ180度ずらした位相にして強度分布の均一化を図ることができる。また例えば、
図14(b)のように上部係合部534a´と下部係合部534b´との位相を180度ずらして、一つの二段円錐筒503´において強度分布の均一化を図ったり、二つ重ねる際にもこれらを90度ずつずらすことによって、強度分布のさらなる均一化を図ったりすることもできる。なお、本発明の適用にあたっては多くの場合、そのような強度の均一化は、玉皮材を用いることそのものによって、すなわち、あらかじめ上部が円形に開口した立状体に組み立ててからプレス成形することによって、十分な効果を得ることができるものである。
【0070】
本発明の実施例6による玉皮601について
図15,
図16を参照して説明する。実施例6は実施例5の変形例であって各構成に付す符合は実施例5におけるものの600番台とし、実施例5と共通する点についてはこれを援用し、説明を省略する。玉皮601は、それぞれ異なる形状の二段円錐筒603と二段円錐筒635とを重ねて玉皮材602とするものである。
図15(a)に示す二段円錐筒603は高さ方向において下部テーパ面633bの割合が上部テーパ面633aよりも大きく、
図15(b)に示す二段円錐筒635は上部テーパ面637aの割合が下部テーパ面637bよりも大きくなっている。
図16に示すように、これらの二段円錐筒603と二段円錐筒635とを重ねて玉皮材602とする。この玉皮材602をプレス成形することによって、上部と下部の継ぎ目が異なる高さとなり、強度分布がより均一化された玉皮601が形成されることとなる。二段円錐筒603と二段円錐筒635とを上下逆に重ねてもよい。また、上部テーパ面633a,637aと下部テーパ面633b,637bとの割合は任意に設定することができる。例えば、上部と下部の継ぎ目の高さの他、玉皮材602を雌型680に載置する際の安定性を考慮してこれらを設定してもよい。
【0071】
本発明の実施例7による玉皮701について
図17,
図18を参照して説明する。玉皮701は実施例1と同様な形状の截頭円錐筒703を用いるものであって、截頭円錐筒703にあらかじめ複数の小穴725を設けて形成するものである(
図17参照)。截頭円錐筒703は
図18に示す扇型台紙705を組み立てることにより構成される。図示は省略するが底板740についても同様な小穴を設ける。本実施例ではこの截頭円錐筒703に底板740(図示略)を載置して玉皮材702とし、この玉皮材702を二つ重ねることなくプレス成形して玉皮701を得る。本実施例においては、実施例1の扇型台紙5と同様な台紙に小穴725を設けたが、同様にして、扇型台紙5、円形台紙6、扇形台紙205、305、方形台紙405または台紙505、655に小穴725を設けることもできる。
【0072】
この玉皮701は、例えば、小割物花火で入れ子状に複数個詰められる小玉用の玉皮や、八重芯等の二重以上の複層構造の割物花火における内部の芯紙として用いることのできるものであって、小穴725は花火玉の点火時における爆炎を通すためのものである。従来の放射状に切れ目を入れた円形の台紙を二枚重ねて絞りプレスして玉皮とするものは、上部に絞り曲げにより材料の紙が重なる部分が相当程度に大きく発生することとなり、円形の台紙に小穴をあらかじめ設けていても、絞り曲げによって塞がれてしまうものも多く、狙いの小穴の個数よりも多めに空ける必要があった。そうすると、貫通する小穴の数が玉皮ごとにバラつき、爆発時の不具合や強度低下を招いたりしていた。しかし、本実施例の玉皮701によると、絞り曲げの後に材料の紙が重なる部分は、係合部734のみであるため、設定した小穴725がプレス成形によって塞がれることはなく、確実に打上げ時の爆炎を通し、不要な強度低下も避けることができる。
【0073】
本発明の実施例8による截頭円錐筒803について
図19を参照して説明する。截頭円錐筒803は実施例1と同様な形状の截頭円錐筒703を若干変更したものであって、截頭円錐筒803の拡径端832にあらかじめ切り欠き836を設けて形成するものである(
図19参照)。これによりプレスの際に截頭円錐筒803が変形しやすくなる。また、縮径端831に唾部837を設けて、プレスの際に、底板4(
図2等参照)を受け止めやすくしている。底板等の他の玉皮材の部品については、前記実施例のいずれのものでも適宜採用可能である。
【0074】
本発明の実施例9による玉皮901について、
図20〜
図22を参照して説明する。玉皮901の製造に際しては実施例4と同様な形状の円筒903を用いるものであるが、スリット436がなく、また、紙管を適宜の長さに切断した円筒玉皮材である。底板904等の他の玉皮材の部品については、前記実施例のいずれのものでも適宜採用可能である。製造工程は
図22に示す通り、前記実施例で説明した通り、円筒903と底板904から構成される玉皮材902を雌型8に配置し、雄型7のプレスによって製造するものである。本実施例9により、経時的変化による歪みが非常に少ない打上げ花火の玉皮を得ることができ、真円度を向上させ、作業性を向上させ、製造コストの低減を図ることができる。円筒903は紙管を切断するだけ製作されるものであり、截頭円錐筒3と比較して、工程が簡素化される上に、プレス時の寸法精度が高くなる。
【0075】
図23に示す円形台紙1006は、
図5(b)の円形台紙6と同様に半径方向に複数の切込み1061を放射状に設けた上で、各片を傾斜させることで、境界部分で各片が上下に重複した変形例である。
【0076】
図24、
図25は、実施例1に基づき実際に製造した実例である。接合部分は、他の部分に比較して、凹形状であるが、場所によっては、凸形状となることもあり得る。また、接合部分に適宜、別の玉皮材を配置してプレスしてもよい。
【0077】
図26、
図27は、実施例9に基づき実際に製造した実例である。接合部分は、他の部分に比較して、凹形状であるが、場所によっては、凸形状となることもあり得る。
【0078】
実施例10は、
図28〜
図30に示す通り、実施例9の製造方法(
図22参照)とは、別の製造方法を示すものである。
【0079】
図28に示す通り、第1工程においては、雄型7に円筒903を装着し、第2工程においては、雄型7を押し下げて、
図29に示す通り、雌型8に圧接し、お椀形状に湾曲した湾曲円筒903´を製造し、これを雄型7から取り外す。これを繰り返して複数の湾曲円筒903´を予め用意する。
【0080】
図30に示す通り、第3工程においては、雄型7に湾曲円筒903´を装着し、雌型8に底板904を置き、雄型7を押し下げて、雌型8に圧接し、
図20(b)に示す玉皮901を製造する。第3工程を繰り返して、複数の玉皮901を製造する。
【0081】
図28〜30に示す製造工程に代えて、玉皮901を1個、1個、個別に第1工程から第3工程をそれぞれ繰り返して、順次製造しても良い。すなわち、
図29で湾曲円筒903´を成形したら雄型7から取り外さずに、そのまま、雄型7を上昇させ、雌型8に底板904を置いて、雄型7を下降させて、玉皮901を製造してもよい。
【0082】
なお本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることが出来るものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれることとなる。例えば、打上げ花火と同じような構成に作られる水上花火は法律上の観点等によっては打上げ花火には分類されないこととなるが、本発明でいう打上げ花火に含まれることは無論である。また、本発明の実施においては上記の実施例における各構成を複数併用することもでき、各実施例における構成は他の実施例においても採り得る。例えば、実施例1における玉皮材2に実施例2における玉皮材202を重ねてプレス成形することや、実施例5の台紙505において実施例7の小穴725を設けることなどが挙げられる。