(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
(概要)
簡潔に、かつ一般的用語で、様々な実施態様が、高所病を最小限に抑え、かつ治療する
ための方法及び装置に関する。高所とは、海抜2,438.4m(8,000フィート)より上、海抜3
,048m(10,000フィート)より上、海抜3,657.6m(12,000フィート)より上、海抜4,267.2
m(14,000フィート)より上、海抜4,876.8m(16,000フィート)より上、海抜5,486.4m(1
8,000フィート)より上、及びそれより高い高度とすることができる。
【0006】
一方法により、個人が高所にいる場合に、治療量の一酸化窒素(NO)が個人の肺に送達
される。該送達は、高所病の症状の発症の前、最中又は後に行うことができる。NOは、数
分間から1日以上の間、連続的に又は断続的に吸入される。別の方法において、空気、酸
素富化空気、又は実質的に純粋な酸素をNOとともに送達して、高所病を治療することがで
きる。
【0007】
高所病を最小限に抑え、かつ治療する様々な方法が、本明細書中に開示される1以上の
送達装置によって実施され得る。一実施態様において、軽量で、手持ち式の装置は、NOガ
スの自己投与を可能にする。該装置は、二酸化窒素(NO
2)を含むリザーバ、該リザーバ
と連結した変換カートリッジ、及び該変換カートリッジと連結した患者用インターフェイ
スを含む。一実施態様において、リザーバは液体四酸化二窒素(N
2O
4)を含み、これはNO
2と平衡にあり、かつNO
2の液体供給源となる。別の実施態様において、リザーバは、窒素
、空気、酸素富化空気、又は実質的に純粋な酸素中の治療量のNOガスを貯蔵する。変換カ
ートリッジは、NO
2が該変換カートリッジを通過する時に、NO
2をNOに変換する。
【0008】
任意に、該送達装置は、NOを個人へ送達するためのポンプを含むことができる。また該
送達装置は、寒冷環境において装置を動作温度で保持するために、変換カートリッジ(及
び場合によってはリザーバ)に付属した加熱素子を含むことができる。あるいは、該液体
N
2O
4リザーバ及び該変換カートリッジは、約5℃を上回る一定温度に保たれるように、体
の間近に身に着けられる。
【0009】
別の実施態様において、該送達装置は、変換カートリッジ及び患者用インターフェイス
を有する独立型のガスボンベである。任意に、該送達装置は、患者用インターフェイスよ
り前のガス配管中に提供されたレキュペレータを含む。該患者用インターフェイスは、人
工呼吸器、ベンチレータ、鼻カニューレ又はマウスピースであってよい。また該患者用イ
ンターフェイスは、ガスバッグ又は他の一時的なガス貯蔵装置を含むことができる。一実
施態様により、該送達装置は、ガスボンベを変換カートリッジに操作可能な状態で連結し
た筐体を含む。別の実施態様において、該筐体は、ガスボンベからのガス圧を調節するた
めの調整器ゲージ及びバルブを含む。加えて、該筐体は、送達装置の可搬性を向上させる
一体となった取っ手を含む。
【0010】
更に別の実施態様において、二酸化窒素を一酸化窒素に変換するための変換カートリッ
ジが、本明細書中に開示される。該変換カートリッジは、第1の端部及び第2の端部を有す
る本体を含む。該本体は、NO
2をNOに変換させる、抗酸化剤の水溶液で飽和された表面活
性材料を含む。該本体の第1の端部は、NO
2、N
2O
4又はNOの供給源と係合する大きさに設定
され、かつ該本体の第2の端部は、患者用インターフェイスと係合可能であるか、又は直
接患者との接触による係合が可能である。
【0011】
他の特徴は、様々な実施態様の特徴を実施例によって示した添付の図面を併せて、下記
の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
高高度の位置における環境などの低酸素環境は、肺における部分的な動脈圧を低下させ
、結果として、急性の低酸素性肺血管収縮(HPV)及び低酸素血症(動脈血中の溶存酸素
濃度の欠乏)を招くおそれがある。HPVは、高い二酸化炭素レベルを伴わない低酸素(低
酸素レベル)の存在下で肺動脈が収縮する生理的現象であり、より高い酸素分圧で血流の
向きを肺胞へと変える。HPVは、心拍出量の低下、肺水腫及び右室不全を含む深刻な血行
動態的事象をもたらし得るが、十分な肺胞の酸素供給を回復することができる場合、元に
戻すことができる。
【0020】
高高度への曝露の初期段階において、急性高所病(AMS)の徴候が現れる場合があり、A
MSの正確な機序は不明であるが、低酸素血症を悪化させることによって一層ひどくなった
ことが示されている。AMSは最近、3000mより高くに到達した順化していない人における頭
痛に加え、以下の症状:a) 食欲不振、悪心又は嘔吐のような胃腸症状、b) 不眠、c) 眩
暈、及びd) 疲弊又は疲労、の1以上を提示することと定義される。それは最も一般的な高
所病の型であり、典型的に6〜10時間以内に症状が現れる。AMSの重要性は、それが高所脳
浮腫(HACE)に進行する場合があるので、早期認識にあり、AMSに罹患している人におい
て、筋肉運動の失調、意識変容又はその両方により臨床的に特定される。
【0021】
高所肺水腫(HAPE)は、低酸素血症のより危険な転帰であり、高所病の最も多い死亡及
び未治療症例の44%を占める。大部分の症例は、高地到達の2日目及び3日目に見られ、若
い、壮健な登山者又は旅行者においてより頻出する。症状は、運動による息切れ、休息時
の息切れへの進行、乾性咳、脱力感及び運動耐容能の低下からなる。該疾患が悪化すると
、肺水腫が見られ、その後に昏睡及び死亡が続く。他の高所病のように、HAPEの発生率は
、上昇率、到達高度、個人の感受性と関連している。軽度のHAPEでさえ、運動強度におい
て明確な影響を及ぼすおそれがあり、最も単純な仕事でさえ疲労困憊することが見出され
る。
【0022】
高所病の管理には、低酸素血の是正、及び肺動脈圧又は脳圧を低下させるための介入治
療を必要とする。最も効果的な治療は、低高度への降下である。現在のところ、即時の降
下が可能でない場合に、高度誘発性の低酸素血症に対する承認された治療法は存在しない
。
【0023】
様々な実施態様は、高所病を最小限に抑え、かつ治療するための方法及び装置に関する
。一般に、一酸化窒素(NO)は吸入するか又は別の方法で個人の肺まで送達される。NOを
使用して、症状を最小限に抑え、及び/又は高所病を予防する。治療用量のNOを提供する
ことは、限定はされないが、酸素療法又は高所病の症状を治療するための早急の低高度へ
の降下を含む、従来の治療の必要性を補うか又は最小化するであろう。加えて、NO処置は
、個人により高い高度において、高レベルの身体活動性を維持させる。例えば、ハイカー
は山を登り続けることができるであろうし、又は兵士は高高度の戦闘活動の間、耐久力及
び能力を維持することができる。あるいは、航空機の客室与圧低下の事態に、パイロット
及び乗客にNOを提供することができる。任意に、NOと純酸素、酸素富化空気(例えば、お
よそ90〜99.9パーセントの酸素)又は純酸素との組み合わせを、高所病の治療に使用する
ことができる。
【0024】
在宅酸素療法は、空気から十分な酸素を得ることができない多くの人々に施される。こ
の治療は有効であるが、該治療には、家庭用酸素発生器、圧縮酸素を含むガスボンベ、又
は吸入の直前に気化してガス状にする液体酸素を含むボンベなどの巨大で及び/又は重い
機器を要するので、患者の移動度は制限される。したがって、軽量で、可搬式の空気によ
るNO送達用装置が、患者の生活の質を向上させる可能性を有する。該装置は、小型の電池
駆動式ポンプによってか又は患者の吸入(喫煙と同様)によって作動する。加えて、NO(
例えば、N
2O
4をNOに変換させる)を提供する治療は、酸素療法より対費用効果が高いであ
ろう。
【0025】
現在、吸入用NOガスを送達するための承認された装置及び方法には、複雑でかつ重い機
器が要求される。該NOガスは、窒素とともに、かつ微量の酸素もない状態で、重いガスボ
ンベに貯蔵される。NOガスは空気又は酸素と、特殊なインジェクター及び複雑なベンチレ
ータを用いて混合され、かつ該混合プロセスは、高精度のマイクロプロセッサを有する機
器及び電子機器を用いて監視される。NO
2は毒性が強いので、該混合プロセス中にNOが二
酸化窒素(NO
2)に酸化されないようにするために、この全ての機器が必要とされる。し
かし、この機器はその大きさ、費用、複雑さ、及び安全性の問題のために、この機器の操
作が医療施設にて高度に熟練した専門家に制限されるので、非医療施設(例えば、戦闘活
動地又は辺ぴな荒地)での使用には寄与しない。
【0026】
対照的に、本明細書中に開示される送達装置は、重いガスボンベ、高機能な電子機器又
は監視機器を必要としない、自給式、可搬式のシステムである。加えて、該送達装置は使
用が容易であり、特別な訓練を必要としない。更に、該送達装置は、個人にNO処置を自己
投与させる。また該送達装置は、軽量で、小型でかつ可搬性のものである。一実施態様に
より、該NO送達装置は、1回限りの使用又は短期間治療のために、葉巻又従来の吸入器の
大きさである。あるいは、該NO送達装置は、より大きな装置であるが、より長い期間NOを
送達することができる可搬性装置である。
【0027】
図1に示すように、NO送達装置100は、リザーバ102を含む。一般的に、リザーバ102は、
NOを貯蔵する方法に応じて、数分〜1日以上の連続使用を持続させるNOを提供する。一実
施態様において、リザーバ102は、NOに変換される治療量のNO
2を貯蔵する。該治療量のNO
は、空気、酸素富化空気又は実質的に純粋な酸素を用いて、必要な濃度に希釈され、貯蔵
される。数日間の長期使用のための別の実施態様において、NOは拡散管中に液体四酸化二
窒素(N
2O
4)として貯蔵される。該四酸化二窒素は、気化してNO
2となることができ、通
常次に、NOに変換される。
【0028】
様々な実施態様において、リザーバ102は、数ミリグラムから数十グラムの液体N
2O
4を
保持するように大きさが設定される。短期間治療については、リザーバ102は、数ミリグ
ラムのN
2O
4を含むように大きさが設定される。例えば、リザーバ102は、20ppmのNOを10分
間提供するであろう、およそ7mgのN
2O
4(l)を保持するように大きさを設定することができ
る。長期用途については、リザーバ102は、数週間などの長期使用のために10g以上のN
2O
4
を含むように大きさを設定することができる。例えば、およそ0.3gのN
2O
4を含むリザーバ
は、20L/分で20ppmのNOを24時間提供することができ、かつ10gのN
2O
4を含むリザーバは、
およそ30日間の間、一定のNO供給を提供する。他の実施態様において、リザーバ102は、1
ml、2ml、3ml、4ml、5ml、10ml未満の液体N
2O
4を保持するような大きさに設定される。
【0029】
図1に、患者用インターフェイス106と直接連結した(かつ脱着可能な)変換カートリッ
ジ104を示す。一実施態様において、患者用インターフェイス106は、変換カートリッジ10
4の一体となった部品である。例えば、変換カートリッジ104の一端は、マウスピース又は
鼻カニューレとして鋳型成形し、かつ形作ることができる。別の実施態様において、患者
用インターフェイス(図示せず)は、単に変換カートリッジ104の第2の端部の開口である
。更に別の実施態様において、変換カートリッジ104の第2の端部は、ガス配管(又は当該
分野で公知の又は開発された他の導管)を受け取るように形成され、かつ大きさが設定さ
れ、それには、マウスピース、鼻カニューレ、フェイスマスク又は完全密封されたフェイ
スマスクを含む。
【0030】
図1に示すように、リザーバ102は、変換カートリッジ104の一端に直線方向に接続され
る。他の実施態様において、リザーバ102は、カートリッジ104に対してほぼ垂直であるか
、又は該リザーバは、該カートリッジに対して角度を有する。加えて、
図1に示すように
、様々な構成要素102、104、106が互いに直接連結される。装置100の1以上の構成要素は
、同時に直接接続されない場合があることも意図される。例えば、
図2を参照すると、様
々な長さのガス配管112(又は他の導管)を使用して、装置100の様々な構成要素102、104
、106を接続することができる。
図2において、患者用インターフェイス106は、変換カー
トリッジ104に直接接続されないが、該患者用インターフェイスは、ガス配管112を介して
変換カートリッジに接続される。この手法は、構成要素102及び104が氷点より上の温度を
維持するために衣類の下に保管できるので、例えば、氷点下の温度において使用され得る
。理想的には、構成要素102は、身体と接触しているか、又は身体の極めて近くにある状
態で維持することができるほぼ一定の温度で、保持される必要がある。構成要素102が液
体N
2O
4を含む場合、一定のNO濃度を維持するために、ほぼ一定温度を維持しなければなら
ない。これは、構成要素102を身体の極めて近くに置くことによって、最良に行われる。
【0031】
図3に、NO
2からNOを発生する変換カートリッジ104の一実施態様を示す。変換カートリ
ッジ104はまた、NO発生カートリッジ、GENOカートリッジ又はGENOシリンダーとも呼ばれ
得る。変換カートリッジ104は、入口105及び出口110を含む。一実施態様において、粒子
フィルター115が入口105及び出口110の両方に位置しており、かつカートジッリ104の残り
の部分には、抗酸化剤の飽和水溶液に浸漬して表面活性材料を被覆した、表面活性材料12
0が充填される。別の実施態様において、粒子フィルター115は、2つの環状フィルター間
に設置された表面活性材料120を有する、2つの同軸上の環状フィルターの形態であってよ
い。この実施態様において、ガスは、該環内部から外部へ、又はその逆へ流れる。別の実
施態様において、表面活性材料120及びフィルター材料115は、焼結した管である1つの固
体マトリクスに鋳造される。
図3の実施例において、該抗酸化剤は、アスコルビン酸であ
る。
【0032】
NO
2をNOに変換するための一般的なプロセスにおいて、NO
2を有する空気流は、入口105
を介して受け取られ、かつ該空気流は、水性抗酸化剤で被覆された表面活性材料120を経
由して出口110に流体連通される。該表面活性材料が湿潤しており、該抗酸化剤が変換に
使い果たされない限り、該一般的プロセスは、周囲温度でのNO
2からNOへの変換に有効で
ある。
【0033】
入口105は、例えば、NO
2の圧縮ボンベ(NO
2タンクとも呼ぶことができる。)からNO
2を
有する空気流を受け取ることができる。また入口105は、窒素(N
2)、空気又は酸素(O
2
)中のNO
2の空気流を受け取ることもできる。入口105はまた、例えば、
図4の装置200など
、液体N
2O
4を含む透過管235を通過して空気流を液体連通させる空気ポンプからのNO
2を有
する空気流を受け取ることもできる。該変換は広い濃度範囲にわたって起こる。約0.2ppm
のNO
2〜約100ppmのNO
2、及び更に1000ppmを上回るNO
2の空気中濃度で実験を行った。一実
施例において、長さおよそ12.7cm(5インチ)及び直径2.03cm(0.8インチ)のカートリッ
ジを、初めにアスコルビン酸の飽和水溶液に浸漬したシリカゲルで充填した。他の大きさ
のカートリッジを設定することも可能である。該湿潤シリカゲルは、Aldrich Chemical社
のA.C.S.(米国化学会)試薬グレード99.1%純度と指定されたアスコルビン酸(すなわち
ビタミンC)及びS8 32-1、グレード40のサイズ35から70のメッシュと指定されたFischer
Scientific International社のシリカゲルを使用して調製した。他の小さいサイズのシリ
カゲルも、その粒子サイズ及び孔径が該粒子と同等という条件で有効である。
【0034】
最大35重量%のアスコルビン酸を水中で混合し、攪拌し、及び該水/アスコルビン酸混
合物をシリカゲルを通して濾過することによって調製したアスコルビン酸の飽和溶液を用
いてシリカゲルを湿潤させ、続いて脱水した。アスコルビン酸で被覆されたシリカゲルが
湿潤している場合に、NO
2からNOへの変換は、良好に進行することが見出されている。NO
2
からNOへの変換は、アスコルビン酸の水性溶液単独ではあまり進行しない。
【0035】
湿潤シリカゲル/アスコルビン酸を充填したカートリッジでは、毎分150mlの流量で、12
日間に渡り停止せずに、空気中1000ppmのNO
2をNOに定量的に変換することが可能であった
。毎分わずか数mlから最大毎分5,000mlまでの流量の範囲の、幅広い流量及びNO
2濃度の試
験に成功した。環状のカートリッジを用いて、最大毎分60,000mlの流量を使用した。該反
応はまた、ビタミンEの異形(例えば、αトコフェロール及びγトコフェロール)など、
他の一般的な酸化防止剤を使用しても進行する。
【0036】
該抗酸化剤/表面活性材料GENOカートリッジを、高所病の治療に使用することができる
。そのような一実施例において、該GENOカートリッジは、圧縮ボンベ供給源からNOを送達
するNO吸入療法用のNO
2スクラバーとして使用することができる。該GENOカートリッジは
、NO
2を取り除くだけでなく、NO
2をNOガスに変換し戻す、次いで、これが患者によって吸
入される。このカートリッジはまた、レキュペレータとも呼ばれる。このGENOカートリッ
ジを使用して、有害レベルのNO
2が、患者によって不注意に吸入されないようにすること
を助ける。加えて、該GENOカートリッジは、患者が全NO用量をNOガスとして(毒性形態の
NO
2としてではなく)受け取ることを確実にする。
【0037】
図4は、ガス透過セル235を有する送達装置200の一実施態様のブロック図である。一般
に、空気の流れは、液体NO
2及びその二量体であるN
2O
4(まとめて236)を有するガス透過
セル235を通過する。該透過セル235はまた、透過発生器、透過装置又は透過管ホルダーと
も呼ばれ得る。また拡散管を、透過管の代わりに使用することもできる。該ガス透過セル
235を出た空気流は、ガス状NO
2を含み、該NO
2はNO発生カートリッジ104によってNOガスに
変換される。該NOガス混合物は、吸入療法用に、例えば、マスク又はカニューレを使用し
て、患者に送達することができる。患者に送達されるNOガス混合物中のNOの濃度は、ガス
透過セル235の温度又はポンプの空気流量を制御することによって、制御することができ
る。
【0038】
一実施態様により、透過管237は、透過管の温度がおよそ20℃の場合に、該透過管を出
たガス流がおよそ毎分20,000mlの流量で約20ppmのNO
2を含むような定常的な流量でNO
2を
放出するように設計される。当業者には明らかなように、透過セル又は拡散管235の温度
を維持することは、患者に送達されるNOの濃度を制御するのに有用である。
【0039】
任意に、送達装置100、200は、リザーバ102又は透過セル235からのNO
2ガスを変換カー
トリッジ104を通して移動せるためのポンプを含むことができる。該ポンプは、電池駆動
、太陽電池式又はクランク式であってよい。あるいは、NO
2ガスは、変換カートリッジの
第2の端部で吸引の力をかけている個人によって、変換カートリッジ104(および拡散又は
透過セル235)を通して吸引される。別の実施態様において、リザーバ102は、圧縮ガスを
含む高圧容器である。バルブ(図示せず)が作動すると、NO
2ガスがリザーバ102から放出
されて変換カートリッジ104を通過し、それにより、吸入に先立ちNO
2ガスはNOに変換され
る。リザーバ102がNOを貯蔵する実施態様において、変換カートリッジ104は、全ての吸入
用NOがNO
2を有していないことを確実にする。
【0040】
別の実施態様において、送達装置100、200はまた、寒冷環境(例えば、およそ5℃未満
、又は抗酸化剤-水の組み合わせが凍るか及び/又はN
2O
4が凍るであろう温度)において使
用するための加熱素子を含むことができる。該加熱素子は、変換カートリッジ104又はガ
ス透過セル235に付属している。該加熱素子は、電気的、化学的又は太陽電池式であって
よい。あるいは、個人の体温を利用して変換カートリッジ及び拡散管を動作温度(すなわ
ち、NO
2が十分な蒸気圧を有し、かつアスコルビン酸-水が液体のままでいる温度)に保ち
、かつNOの用量が十分であるようにするために、変換カートリッジ104又は拡散管235は、
紐で固定するか又は別の方法で個人の身体の近くに保持される。
【0041】
図5に、送達装置300の別の実施態様を示す。送達装置300は、変換カートリッジ304及び
レキュペレータ306を有する独立型のガスボンベ302を含む。独立型ガスボンベ302は、窒
素、空気又は酸素富化空気中のNO
2を含み得る。NO
2ガスは、独立型ガスボンベ302におい
て治療用量まで希釈され得るか、又は液体NO
2及びその二量体N
2O
4が該ボンベ内に含まれ
てもよい。該ボンベの出口は、ゲージ308及びバルブ310を有する調節器と連結される。図
5に示すように、調節器308は、取っ手314及び変換カートリッジ304を係合するためのポー
ト(図示せず)を含む本体312内の構成要素である。この装置に示すように、レキュペレ
ータ306は、患者用インターフェイス318の直前のガス配管316中に設置される。レキュペ
レータ306は、患者用インターフェイス318において形成され得る全てのNO
2ガスをNOガス
に変換し戻す。
図5に示すように、患者用インターフェイス318は鼻カニューレであるが、
該患者用インターフェイスは、マウスピース、カニューレ、ベンチレータ、ガスバッグ又
はフェイスマスクであってもよいことが意図される。
【0042】
図6は、使用することができる拡散管の1つの型の概略図である。リザーバ、構成要素80
6及び狭口径管、構成要素804は、N
2O
4及びNO
2によって化学的に攻撃されない材料から製
造される。ステンレス鋼が適当な材料である。拡散管806の内部は、球状形状を有し、か
つ管804は、液体N
2O
4、構成要素803が、該管内に移動するのを防止するために、該リザー
バ内部まで延びる。この構成は、該装置を任意の方向で機能させ、かつ振動に耐えるよう
にさせる。構成要素805は、リザーバ806と環境とを接続する狭口径キャピラリー管である
。該管の直径及び長さは、温度が一定である場合に、拡散管からの拡散速度を決定する。
【0043】
上記の様々な実施態様は例証のみの目的で提供され、請求項に係る発明を限定すると解
釈されるべきではない。当業者には、本明細書中に例示されかつ記載された例示的実施態
様及び適用に従うことなしに、及び下記の特許請求の範囲に記載される請求項に係る発明
の真の精神及び範囲を逸脱することなしに、請求項に係る発明になされ得る様々な改良及
び変更が容易に理解されるであろう。