特許第5881785号(P5881785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5881785連続熱処理炉の燃焼制御方法及び連続熱処理炉の改造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881785
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】連続熱処理炉の燃焼制御方法及び連続熱処理炉の改造方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/56 20060101AFI20160225BHJP
   C21D 1/34 20060101ALI20160225BHJP
   F23N 1/02 20060101ALI20160225BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20160225BHJP
   F23C 3/00 20060101ALI20160225BHJP
   F23D 14/12 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   C21D9/56 101B
   C21D9/56 101C
   C21D1/34 P
   F23N1/02 E
   F23N1/02 K
   F23C99/00 311
   F23C3/00 301
   F23D14/12 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-154563(P2014-154563)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-30858(P2016-30858A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2015年8月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊輔
【審査官】 小谷内 章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−245400(JP,A)
【文献】 特開昭61−264125(JP,A)
【文献】 特開平05−070824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/56−9/66
F23D 14/00−14/18
F23D 14/26−14/84
F27B 9/00−9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理炉内を走行するストリップの走行方向に沿って複数のラジアントチューブバーナーを並設させ、前記のラジアントチューブバーナーに燃料と燃焼用空気を供給し、ラジアントチューブバーナー内において燃料を燃焼させて、熱処理炉内を走行するストリップを連続して熱処理する連続熱処理炉の燃焼制御方法において、各ラジアントチューブバーナーにおける燃焼と停止とを個別に制御する燃焼制御装置を設け、前記の燃焼制御装置により、一部のラジアントチューブバーナーにおける燃焼を停止させると共に、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナーを切り換えるようにし、燃焼動作を行うラジアントチューブバーナーにおいては、NOxの発生を抑制するように供給する燃焼用空気の空気比μを低くして燃焼を行う一方、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーにおいては、燃焼用空気を供給してラジアントチューブバーナー内に発生した煤を除去することを特徴とする連続熱処理炉の燃焼制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の連続熱処理炉の燃焼制御方法において、各ラジアントチューブバーナーに個別に燃料を供給する個別燃料供給管に燃料の供給と停止とを切り換える開閉弁を設けると共に、各ラジアントチューブバーナーに個別に燃焼用空気を供給する個別空気供給管にラジアントチューブバーナーに供給する燃焼用空気の供給量を制御する制御手段を設けたことを特徴とする連続熱処理炉の燃焼制御方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の連続熱処理炉の燃焼制御方法において、前記の燃焼制御装置により一部のラジアントチューブバーナーにおける燃焼を停止させるにあたり、熱処理炉の炉内温度が所定の熱処理温度を保つように、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナーの数を制御することを特徴とする連続熱処理炉の燃焼制御方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の連続熱処理炉の燃焼制御方法において、燃焼動作を行うラジアントチューブバーナーに供給する燃焼用空気の空気比μを1.1以下にすることを特徴とする連続熱処理炉の燃焼制御方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の連続熱処理炉の燃焼制御方法において、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーに供給する燃焼用空気の量を、燃焼動作を行うラジアントチューブバーナーを供給する燃焼用空気の量より少なくすることを特徴とする連続熱処理炉の燃焼制御方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の連続熱処理炉の燃焼制御方法において、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーに供給する燃焼用空気を予め加熱させることを特徴とする連続熱処理炉の燃焼制御方法。
【請求項7】
熱処理炉内を走行するストリップの走行方向に沿って複数のラジアントチューブバーナーを並設させ、前記のラジアントチューブバーナーに燃料と燃焼用空気を供給し、ラジアントチューブバーナー内において燃料を燃焼させて、熱処理炉内を走行するストリップを連続して熱処理する既存の連続熱処理炉に対して、各ラジアントチューブバーナーにおける燃焼と停止とを個別に制御する燃焼制御装置を追加して設け、前記の燃焼制御装置により、一部のラジアントチューブバーナーにおける燃焼を停止させると共に、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナーを切り換えるようにし、燃焼動作を行うラジアントチューブバーナーにおいては、NOxの発生を抑制するように供給する燃焼用空気の空気比μを低くして燃焼を行う一方、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーにおいては、燃焼用空気を供給してラジアントチューブバーナー内に発生した煤を除去することを特徴とする連続熱処理炉の改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理炉内を走行するストリップの走行方向に沿って複数のラジアントチューブバーナーを並設させ、前記のラジアントチューブバーナーに燃料と燃焼用空気を供給し、ラジアントチューブバーナー内において燃料を燃焼させて、熱処理炉内を走行するストリップを連続して焼鈍等の熱処理を行う連続熱処理炉の燃焼制御方法及び連続熱処理炉の改造方法に関するものである。特に、ラジアントチューブバーナーに燃料と燃焼用空気を供給して、ラジアントチューブバーナー内において燃料を燃焼させるにあたり、ラジアントチューブバーナーの燃焼動作時にNOxが発生するのを抑制すると共に、ラジアントチューブバーナー内に煤が付着するのを防止するようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
走行するストリップを連続して熱処理するにあたり、従来から、特許文献1,2等に示されるように、熱処理炉内を走行するストリップの走行方向に沿って複数のラジアントチューブバーナーを並設させ、前記のラジアントチューブバーナーに燃料と燃焼用空気を供給し、ラジアントチューブバーナー内において燃料を燃焼させて、熱処理炉内を走行するストリップを連続して熱処理するようにしたものが用いられている。
【0003】
ここで、ラジアントチューブバーナーに燃料と燃焼用空気を供給して、ラジアントチューブバーナー内において燃料を燃焼させるにあたり、供給する燃焼用空気の量を、燃料を燃焼させるのに必要とされる理論空気量にした場合、実際には、燃料と燃焼用空気とが均一に混合されない等の様々な原因によって、不完全燃焼を起こして煤が発生し、ラジアントチューブバーナー内に煤が付着して燃焼に不具合が生じ、ラジアントチューブバーナー内に偏熱が生じて、ラジアントチューブが変形したりするという問題があった。
【0004】
このため、従来においては、ラジアントチューブバーナーに燃料と燃焼用空気を供給して、ラジアントチューブバーナー内において燃料を燃焼させるにあたり、理論空気量に対して実際に供給する燃焼用空気量の比、すなわち空気比μを1.15〜1.30程度にして、ラジアントチューブバーナーに供給する燃焼用空気の量を理論空気量よりもかなり多くし、不完全燃焼による煤の発生を防止することが提案されている。
【0005】
しかし、このようにラジアントチューブバーナー内に供給する燃焼用空気の空気比μを1.15〜1.30程度にして燃焼を行うようにした場合、燃焼時における火炎の温度が高くなってNOxの発生量が増加し、環境衛生を害するという問題があった。
【0006】
このため、従来の連続熱処理炉においては、ラジアントチューブバーナー内に煤が付着して燃焼に不具合が生じるのを防止すると共に、燃焼時における火炎の温度が高くなってNOxの発生量が増加するのを抑制することはできなかった。
【0007】
また、特許文献1のものにおいては、連続熱処理炉内をストリップの進路に沿って複数のゾーンに区分けし、ゾーン毎における必要熱量に応じて、各ゾーンに設けられたラジアントチューブバーナーに供給する燃焼ガスの流量を制御することが提案されている。
【0008】
しかし、特許文献1に示されるように、各ゾーンに設けられたラジアントチューブバーナーに供給する燃焼ガスの流量を制御するようにした場合においても、各ラジアントチューブバーナーに供給する燃焼用空気の空気比μを低くすると、ラジアントチューブバーナー内に煤が付着して燃焼に不具合が生じ、また、燃焼用空気の空気比μを大きくすると、燃焼時における火炎の温度が高くなって、NOxの発生量が増加するようになり、依然として、ラジアントチューブバーナー内に煤が付着して燃焼に不具合が生じるのを防止すると共に、燃焼時における火炎の温度が高くなってNOxの発生量が増加するのを抑制するということはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−35015号公報
【特許文献2】特開2002−294347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、熱処理炉内を走行するストリップの走行方向に沿って複数のラジアントチューブバーナーを並設させ、前記のラジアントチューブバーナーに燃料と燃焼用空気を供給し、ラジアントチューブバーナー内において燃料を燃焼させて、熱処理炉内を走行するストリップを連続して熱処理する場合における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0011】
すなわち、本発明の連続熱処理炉の燃焼制御方法においては、前記のようにラジアントチューブバーナーに燃料と燃焼用空気を供給して、ラジアントチューブバーナー内において燃料を燃焼させるにあたり、ラジアントチューブバーナーの燃焼動作時にNOxが発生するのを抑制すると共に、ラジアントチューブバーナー内に煤が付着するのを適切に防止できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法においては、前記のような課題を解決するため、熱処理炉内を走行するストリップの走行方向に沿って複数のラジアントチューブバーナーを並設させ、前記のラジアントチューブバーナーに燃料と燃焼用空気を供給し、ラジアントチューブバーナー内において燃料を燃焼させて、熱処理炉内を走行するストリップを連続して熱処理する連続熱処理炉の燃焼制御方法において、各ラジアントチューブバーナーにおける燃焼と停止とを個別に制御する燃焼制御装置を設け、前記の燃焼制御装置により、一部のラジアントチューブバーナーにおける燃焼を停止させると共に、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナーを切り換えるようにし、燃焼動作を行うラジアントチューブバーナーにおいては、NOxの発生を抑制するように供給する燃焼用空気の空気比μを低くして燃焼を行う一方、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーにおいては、燃焼用空気を供給してラジアントチューブバーナー内に発生した煤を除去するようにした。
【0013】
ここで、前記のように燃焼動作を行うラジアントチューブバーナーにおいて、供給する燃焼用空気の空気比μを低くして燃焼を行うと、燃焼時における火炎の温度が上昇するのが抑制されて、NOxの発生が抑制されるようになる一方、燃焼用空気の空気比μが低いため、燃焼時にラジアントチューブバーナー内に煤が発生しやすくなる。
【0014】
一方、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーにおいて、燃焼用空気を供給すると、前記のようにラジアントチューブバーナー内において発生した煤がこの燃焼用空気と反応して分解され、ラジアントチューブバーナー内における煤が除去されるようになる。ここで、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーに供給する燃焼用空気として、予め燃焼排ガスとの熱交換等により加熱された燃焼用空気を用いると、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーの温度が大きく低下するのが防止されて、炉内温度が低下するのが抑制されるようになる。
【0015】
そして、本発明に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法のように、前記の燃焼制御装置により、一部のラジアントチューブバーナーにおける燃焼を停止させると共に、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナーを切り換えるようにすると、燃焼動作時に、NOxの発生を抑制するように燃焼用空気の空気比μを低くしたためにラジアントチューブバーナー内に煤が発生して、ラジアントチューブバーナー内に煤が付着しても、燃焼動作を停止した時点で、前記のように燃焼用空気を供給することにより、ラジアントチューブバーナー内における煤が燃焼用空気と反応して分解され、ラジアントチューブバーナー内から煤が除去されるようになる。
【0016】
ここで、前記のように燃焼制御装置により、一部のラジアントチューブバーナーにおける燃焼を停止させると共に、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナーを切り換えるようにし、燃焼動作を行うラジアントチューブバーナーにおいては、NOxの発生を抑制するように供給する燃焼用空気の空気比μを低くして燃焼を行う一方、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーにおいては、燃焼用空気を供給してラジアントチューブバーナー内に発生した煤を除去するにあたっては、各ラジアントチューブバーナーに個別に燃料を供給する個別燃料供給管に燃料の供給と停止とを切り換える開閉弁を設けると共に、各ラジアントチューブバーナーに個別に燃焼用空気を供給する個別空気供給管にラジアントチューブバーナーに供給する燃焼用空気の供給量を制御する制御手段を設けるようにすることができる。
【0017】
また、本発明に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法において、前記のように燃焼制御装置により、一部のラジアントチューブバーナーにおける燃焼を停止させるにあたっては、熱処理炉内において走行するストリップが適切に熱処理されるようにするため、熱処理炉の炉内温度が所定の熱処理温度に保たれるように、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナーの数を制御することが好ましい。
【0018】
また、前記のように燃焼動作を行うラジアントチューブバーナーにおいて、供給する燃焼用空気の空気比μを低くするにあたっては、NOxの発生が適切に抑制されるように、空気比μを1.1以下にすることが好ましい。例えば、ラジアントチューブバーナーに供給する燃焼用空気の空気比μを1.05にした場合、空気比μが1.20の場合に比べて、一般にNOxの発生量が10〜20%程度低下する。
【0019】
また、前記のように燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーに燃焼用空気を供給するにあたり、供給する燃焼用空気の量が多くなると、供給された燃焼用空気によってラジアントチューブバーナー内が冷やされて、熱処理炉の炉内温度が低下するおそれがある。このため、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーに供給する燃焼用空気の量を、燃焼動作を行うラジアントチューブバーナーを供給する燃焼用空気の量より少なくすることが好ましい。
【0020】
また、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーに燃焼用空気を供給した場合に、供給された燃焼用空気によってラジアントチューブバーナー内が冷やされて、熱処理炉の炉内温度が低下するのを防止するため、燃焼用空気として、予め燃焼排ガスとの熱交換等により加熱された燃焼用空気を用いることが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法においては、燃焼のON/OFF制御を行うラジアントチューブバーナーを用い、燃焼がOFFされているラジアントチューブバーナーに燃焼用空気だけを供給させるようにすることもできる。
【0022】
また、本発明に係る連続熱処理炉の改造方法においては、処理炉内を走行するストリップの走行方向に沿って複数のラジアントチューブバーナーを並設させ、前記のラジアントチューブバーナーに燃料と燃焼用空気を供給し、ラジアントチューブバーナー内において燃料を燃焼させて、熱処理炉内を走行するストリップを連続して熱処理する連続熱処理炉において、各ラジアントチューブバーナーにおける燃焼と停止とを個別に制御する燃焼制御装置を追加して設け、前記の燃焼制御装置により、一部のラジアントチューブバーナーにおける燃焼を停止させると共に、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナーを切り換えるようにし、燃焼動作を行うラジアントチューブバーナーにおいては、NOxの発生を抑制するように供給する燃焼用空気の空気比μを低くして燃焼を行う一方、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーにおいては、燃焼用空気を供給してラジアントチューブバーナー内に発生した煤を除去させるようにする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法においては、前記のように各ラジアントチューブバーナーにおける燃焼と停止とを個別に制御する燃焼制御装置を設け、この燃焼制御装置により、一部のラジアントチューブバーナーにおける燃焼を停止させると共に、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナーを切り換えるようにし、燃焼動作を行うラジアントチューブバーナーに供給する燃焼用空気の空気比μを低くして、燃焼時におけるNOxの発生を抑制すると共に、燃焼動作を停止しているラジアントチューブバーナーに燃焼用空気を供給して、このラジアントチューブバーナー内における煤を除去させるようにした。
【0024】
この結果、本発明に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法においては、ラジアントチューブバーナーの燃焼動作時においてNOxが発生するのが適切に抑制されると共に、ラジアントチューブバーナー内に煤が付着するのも適切に防止され、各ラジアントチューブバーナーにおいて適切な燃焼を安定して行うことができるようになる。
【0025】
また、本発明に係る連続熱処理炉の改造方法に示すように、連続熱処理炉を改造すると、従来の連続熱処理炉においても、前記の本発明に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法を実施することができ、同様の効果が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法に使用する熱処理炉を示した概略断面図である。
図2】前記の実施形態に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法において、燃焼制御装置により各ラジアントチューブバーナーにおける燃焼と停止とを個別に制御し、一部のラジアントチューブバーナーにおける燃焼を停止させる状態を示した部分概略説明図である。
図3】前記の実施形態に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法において、燃焼制御装置により、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナーを切り換えた状態を示した部分概略説明図である。
図4】前記の実施形態に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法において、各ラジアントチューブバーナーにおける燃焼と停止とを個別に制御するにあたり、各ラジアントチューブバーナーに供給する燃焼用ガス(燃料)と燃焼用空気の量を切り換える状態を示したタイムチャートである。
図5】前記の実施形態に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法において、燃焼制御装置によって各ラジアントチューブバーナーにおける燃焼と停止とを個別に制御する場合の変更例を示した部分概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る連続熱処理炉の燃焼制御方法は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0028】
この実施形態においては、図1に示すように、熱処理炉10内の下部と上部とにそれぞれロール11を、熱処理炉10の入口12から出口13に向けて複数並設させ、入口12から熱処理炉10内に導入されたストリップ1を、入口12から出口13に向けて、熱処理炉10内における下部と上部のロール11に順々に架け渡すようにして、ストリップ1を熱処理炉10の入口12から出口13に向けて走行させるようになっている。
【0029】
また、この熱処理炉10内においては、前記のように走行するストリップ1の走行方向に沿って複数(例えば100本以上)のラジアントチューブバーナー20を並設させ、これらのラジアントチューブバーナー20に、燃料となる燃料ガスと燃焼用空気を供給して、ラジアントチューブバーナー20内において燃料ガスを燃焼させ、前記のように下部と上部のロール11に架け渡されて熱処理炉10内を入口12から出口13に向けて走行するストリップ1を連続して熱処理するようにしている。
【0030】
ここで、前記の各ラジアントチューブバーナー20に燃料ガスと燃焼用空気を供給するにあたっては、図2及び図3に示すように、燃料ガスをガス案内管30から個別ガス供給管(個別燃料供給管)31を通して各ラジアントチューブバーナー20に導くようにすると共に、燃焼用空気を空気案内管40から個別空気供給管41を通して各ラジアントチューブバーナー20に導くようにしている。
【0031】
そして、燃料ガスをラジアントチューブバーナー20に導く前記の個別ガス供給管31には、ラジアントチューブバーナー20への燃料ガスの供給と停止とを切り換える開閉弁32を設けている。
【0032】
また、燃焼用空気をラジアントチューブバーナー20に導く前記の個別空気供給管41には、ラジアントチューブバーナー20に供給する燃焼用空気の供給量を制御する制御手段として、ラジアントチューブバーナー20への燃焼用空気の供給と停止とを切り換える開閉弁42を設けると共に、この開閉弁42を迂回するようにしてバイパス管43を設け、さらにこのバイパス管43に制御弁44を設けている。
【0033】
そして、個別空気供給管41に設けた前記の開閉弁42を閉じた場合に、バイパス管43を通してラジアントチューブバーナー20に導かれる燃焼用空気の量をこの制御弁44によって制御するようにしている。また、このように開閉弁42を閉じた場合には、開閉弁42を開けてラジアントチューブバーナー20に燃焼用空気を供給する場合に比べて、バイパス管43を通してラジアントチューブバーナー20に導かれる燃焼用空気の量が少なくなるようにしている。なお、前記の制御弁44の開度を大きくするほど、煤を除去する効果が大きくなり、ラジアントチューブバーナー20に付着した煤を短時間で除去できるようになる。
【0034】
また、この実施形態においては、前記の各個別ガス供給管31に設けられた開閉弁32及び前記の各個別空気供給管41に設けられた開閉弁42の開閉を制御する燃焼制御装置50を設け、この燃焼制御装置50により、各ラジアントチューブバーナー20における燃焼と停止とを個別に制御するようにしている。
【0035】
ここで、燃焼動作を行うラジアントチューブバーナー20においては、前記の燃焼制御装置50により、前記の個別ガス供給管31に設けられた開閉弁32及び前記の個別空気供給管41に設けられた開閉弁42を開けて、燃料ガスと燃焼用空気をラジアントチューブバーナー20に供給し、ラジアントチューブバーナー20内において燃料ガスを燃焼させるようにしている。
【0036】
ここで、このようにラジアントチューブバーナー20内において燃料ガスを燃焼させるにあたり、この実施形態においては、個別空気供給管41を通してラジアントチューブバーナー20に導かれる燃焼用空気の空気比μを低くし、例えば、燃焼用空気の空気比μを1.05〜1.10にして燃焼させるようにしている。
【0037】
そして、このように燃焼用空気の空気比μを1.05〜1.10にして燃焼させると、燃焼時における火炎の温度が上昇するのが防止されて、燃焼時におけるNOxの発生が抑制されるようになるが、このラジアントチューブバーナー20内に煤が発生しやすくなる。
【0038】
また、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナー20においては、前記の燃焼制御装置50により、前記の個別ガス供給管31に設けられた開閉弁32及び前記の個別空気供給管41に設けられた開閉弁42を閉じて、燃料ガスが個別ガス供給管31を通してラジアントチューブバーナー20に供給されないようにして燃焼を停止させると共に、前記の開閉弁42を通して燃焼用空気がラジアントチューブバーナー20に導かれないようにする。この場合、燃焼用空気については、前記の制御弁44が設けられたバイパス管43を通して適当量の燃焼用空気がラジアントチューブバーナー20に供給されるようになる。
【0039】
そして、このように燃焼を停止させたラジアントチューブバーナー20に、バイパス管43を通して適当量の燃焼用空気をラジアントチューブバーナー20に供給させると、前記のようにラジアントチューブバーナー20内に発生している煤がこの燃焼用空気と反応して分解し、このラジアントチューブバーナー20内から煤が除去されるようになる。
【0040】
ここで、この実施形態においては、前記の燃焼制御装置50により各ラジアントチューブバーナー20における燃焼と停止とを個別に制御するにあたり、図2及び図3に示すように、一部のラジアントチューブバーナー20において、個別ガス供給管31に設けられた開閉弁32及び前記の個別空気供給管41に設けられた開閉弁42を閉じて、燃料ガスが個別ガス供給管31を通してラジアントチューブバーナー20に供給されないようにして燃焼を停止させる一方、他のラジアントチューブバーナー20においては、個別ガス供給管31に設けられた開閉弁32及び個別空気供給管41に設けられた開閉弁42を開けて、燃料ガスと燃焼用空気をラジアントチューブバーナー20に供給して燃料ガスを燃焼させるようにする。
【0041】
そして、図2及び図3に示すように、前記のように燃焼を停止させるラジアントチューブバーナー20を適当なタイミングで変更させ、燃料ガスを燃焼させるラジアントチューブバーナー20と、燃焼を停止させて燃焼用空気のみを供給して煤を除去するラジアントチューブバーナー20とを順々に切り換えるようにしている。
【0042】
ここで、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナー20の数については特に限定されないが、熱処理炉10内において走行するストリップ1が適切に熱処理されるようにするため、熱処理炉10の炉内温度が所定の熱処理温度に保たれるようにして、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナー20の数を制御させるようにする。
【0043】
例えば、図4に示すように、燃料ガスを燃焼させるラジアントチューブバーナー20の本数が常に同じになるようにしながら、順番にラジアントチューブバーナー20の燃焼を停止させるようにして、ラジアントチューブバーナー20に付着した煤を除去させるようにすることが好ましい。
【0044】
また、複数本のラジアントチューブバーナー20の燃焼を停止させるにあたっては、ストリップ1の走行方向に並設された所定本数毎にラジアントチューブバーナー20を停止させるようにする他、並設された複数本のラジアントチューブバーナー20をまとめて燃焼ゾーン毎に停止させるようにすることもできる。
【0045】
また、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナー20の割合は、走行するストリップ1の走行速度や、ラジアントチューブバーナー20の取付間隔や、前記の制御弁44の開度による煤の除去時間等によって異なるが、ラジアントチューブバーナー20全体の10〜30%にすることが適当である。これは、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナー20の割合が少ないと、煤の除去効果が少なくなる一方、多くなりすぎると、熱処理炉10の炉内温度が所定の熱処理温度よりも低下するおそれが生じるためである。
【0046】
また、温度調整のために、燃焼のON/OFF制御を行うラジアントチューブバーナー20を用いた場合には、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナー20を前記のように順番に切り換えなくても、温度調整のために燃焼をOFFさせるタイミングで、燃焼をOFFさせるラジアントチューブバーナー20に燃焼用空気だけを供給して、ラジアントチューブバーナー20における煤を除去させるようにすることもできる。
【0047】
そして、燃料ガスと燃焼用空気を供給して燃料ガスを燃焼させるラジアントチューブバーナー20においては、前記のようにラジアントチューブバーナー20に導かれる燃焼用空気の空気比μを1.05〜1.10の低い値にして燃焼させるため、燃焼時における火炎の温度が低くなって、燃焼時におけるNOxの発生が抑制されるようになる。
【0048】
また、このように燃焼用空気の空気比μを1.05〜1.10の低い値にして燃料ガスを燃焼させた場合、このラジアントチューブバーナー20内に煤が発生するが、前記のように燃料ガスを燃焼させるラジアントチューブバーナー20と、燃焼を停止させるラジアントチューブバーナー20とを適当なタイミングで切り換えると、ラジアントチューブバーナー20への燃料ガスの供給が停止されて、ラジアントチューブバーナー20における燃焼が停止した状態では、図4に示すように、制御弁44が設けられたバイパス管43を通して適当量の燃焼用空気だけが供給されるようになり、前記のようにラジアントチューブバーナー20内に発生している煤が、この燃焼用空気と反応して分解され、このラジアントチューブバーナー20内から煤が除去されるようになる。
【0049】
この結果、燃料ガスを燃焼させるラジアントチューブバーナー20においてNOxが発生するのを適切に防止することができると共に、燃焼時にこのラジアントチューブバーナー20内に煤が発生しても、このラジアントチューブバーナー20における燃焼を停止させると、このラジアントチューブバーナー20内における煤が前記のように燃焼用空気と反応して除去され、ラジアントチューブバーナー20内に煤が付着して蓄積するのが防止されるようになり、NOxが発生するのを抑制しながら各ラジアントチューブバーナー20において安定した燃焼が適切に行えるようになる。
【0050】
なお、前記のように燃焼が停止されたラジアントチューブバーナー20に燃焼用空気だけを供給した場合に、このラジアントチューブバーナー20内の温度が低下するのを抑制するため、前記の燃焼用空気として、予め燃焼排ガスとの熱交換等により加熱された燃焼用空気を用いるようにすることができる。
【0051】
また、前記の実施形態においては、燃焼を停止させたラジアントチューブバーナー20に適当量の燃焼用空気を供給させるにあたり、燃焼用空気をラジアントチューブバーナー20に導く個別空気供給管41に設けた開閉弁42を迂回するようにしてバイパス管43を設けると共に、このバイパス管43に制御弁44を設けるようにしたが、燃焼を停止させたラジアントチューブバーナー20に適当量の燃焼用空気を供給させる方法はこのようなものに限定されない。
【0052】
例えば、図5に示すように、ラジアントチューブバーナー20に供給する燃焼用空気の供給量を制御する制御手段として、燃焼用空気をラジアントチューブバーナー20に導く個別空気供給管41に流量調整弁45を設け、この流量調整弁45を前記の燃焼制御装置50によって制御し、ラジアントチューブバーナー20に供給させる燃焼用空気を制御させるようにすることができる。
【0053】
このようにした場合、ラジアントチューブバーナー20の燃焼動作時には、前記の流量調整弁45を通してラジアントチューブバーナー20に対して前記のような適当な量の燃焼用空気が供給されるようにして、NOxの発生が少ない燃焼が行われるようにする。一方、ラジアントチューブバーナー20の燃焼停止時には、前記の流量調整弁45を通してラジアントチューブバーナー20に供給される燃焼用空気を少なくし、ラジアントチューブバーナー20内における煤を、このように供給された燃焼用空気と反応させて分解し、煤をラジアントチューブバーナー20内から除去させるようにする。
【0054】
なお、図示していないが、前記の個別ガス供給管31に設けられた開閉弁32に代えて流量調整弁を用い、ラジアントチューブバーナー20に供給する燃料ガスの量を変更させて、ラジアントチューブバーナー20における燃焼量を個別に調整させるようにすることも可能である。
【0055】
また、既存の連続熱処理炉においても、前記の実施形態に示すように、燃料ガスをラジアントチューブバーナー20に導く個別ガス供給管31に、ラジアントチューブバーナー20への燃料ガスの供給と停止とを切り換える開閉弁32を設けると共に、燃焼用空気をラジアントチューブバーナー20に導く個別空気供給管41に、ラジアントチューブバーナー20に供給する燃焼用空気の供給量を制御する前記のような各制御手段を設け、さらに各ラジアントチューブバーナー20における燃焼と停止とを個別に制御する燃焼制御装置50を設け、この燃焼制御装置50により、前記の実施形態と同様に、各ラジアントチューブバーナー20における燃焼と停止とを個別に制御させることにより、前記の実施形態のものと同様の効果が得られるようになる。
【符号の説明】
【0056】
1 :ストリップ
10 :熱処理炉
11 :ロール
12 :入口
13 :出口
20 :ラジアントチューブバーナー
30 :ガス案内管
31 :個別ガス供給管(個別燃料供給管)
32 :開閉弁
40 :空気案内管
41 :個別空気供給管
42 :開閉弁
43 :バイパス管
44 :制御弁
45 :流量調整弁
50 :燃焼制御装置
図1
図2
図3
図4
図5