特許第5881799号(P5881799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5881799グラビア版ロールのバラード鍍金剥離装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5881799
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】グラビア版ロールのバラード鍍金剥離装置
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/06 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   B41N1/06
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-216995(P2014-216995)
(22)【出願日】2014年10月24日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】514272081
【氏名又は名称】株式会社堀地工作所
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】堀地 修二
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−289183(JP,A)
【文献】 特開昭61−263754(JP,A)
【文献】 特開昭55−125274(JP,A)
【文献】 特開昭61−169293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/06
B41F 13/11
B41C 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア版ロールの周面及び両側端面に対し剥離層を介して形成されたバラード鍍金を前記グラビア版ロールの周面及び両側端面から剥離するようにしたバラード鍍金剥離装置であって、
前記グラビア版ロールの両側端面に設けられた中心孔部にそれぞれ挿通して当該グラビア版ロールをその軸芯回りに回転自在に支承する一対の支承片と、
前記一対の支承片のうちの少なくとも一方に連結され、前記グラビア版ロールを軸芯回りに一定速度で回転させる駆動手段と、
前記グラビア版ロールの両側端面側にそれぞれ設けられ、前記駆動手段による前記グラビア版ロールの回転時に当該グラビア版ロールの両側端面及び周面に連続するコーナー部に対し押圧された状態で回転する一対のローラと、
を備え、
前記グラビア版ロールの回転時に当該グラビア版ロールの両側端面及びコーナー部に対しローラを押圧した状態で回転させて、前記バラード鍍金に圧延による歪みを付与して前記グラビア版ロールの周面及び両側端面から浮き上がらせつつ当該バラード鍍金に亀裂を生じさせて剥離することを特徴とするグラビア版ロールのバラード鍍金剥離装置。
【請求項2】
前記グラビア版ロールの周面側にも、前記駆動手段による前記グラビア版ロールの回転時に当該グラビア版ロールの周面に対しその軸芯方向の一方から他方へ順次押圧された状態で回転するローラが設けられている請求項1に記載のグラビア版ロールのバラード鍍金剥離装置。
【請求項3】
前記ローラとしては、凸型ローラが適用されている請求項1又は請求項2に記載のグラビア版ロールのバラード鍍金剥離装置。
【請求項4】
前記一対の支承片は、上下に配置され、前記グラビア版ロールの中心孔部にそれぞれ挿通されて当該グラビア版ロールを上下方向の軸芯回りに回転自在に支承している請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のグラビア版ロールのバラード鍍金剥離装置。
【請求項5】
前記グラビア版ロールの周面側に押圧される前記ローラの軸は、前記グラビア版ロールの軸芯と略平行に設定されている請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のグラビア版ロールのバラード鍍金剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア版ロールの周面及び両側端面に対し形成されたバラード鍍金を剥離するバラード鍍金剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、グラビア版ロールは、鉄またはアルミニウムにより形成されている。また、グラビア版ロールの周面及び両側端面に対しニッケルによる中間鍍金を介して銅による下地鍍金が皮膜されたものもある。そして、グラビア版ロールの周面及び両側端面には剥離層を形成するための剥離液が塗布され、その上から銅による鍍金を施してバラード鍍金を形成している。このバラード鍍金に対し、グラビア印刷される絵柄に対応した位置にセルと呼ばれる多数の窪みを機械的彫刻方法又は腐蝕法によって形成した後で、グラビア印刷での耐久性を確保するためにクロム鍍金を施している。
【0003】
ところで、グラビア版ロールは、その周面及び両側端面に対してグラビア印刷を終えたバラード鍍金をクロム鍍金と共に剥離し、新たに剥離層を介してバラード鍍金を形成することで、再利用が図られている。その場合、グラビア印刷を終えたバラード鍍金は、タガネでロール端面の端を捲り上げ、その捲り上げた端をペンチで掴んでさらに捲り上げるように切り裂く作業によって剥離されるものの、グラビア版ロールの周面及び両側端面に対して、バラード鍍金が部分的に残存するおそれがあり、このような作業では、後処理が非常に面倒である上、多大な時間を要することになる。
【0004】
そこで、従来より、グラビア印刷を終えたバラード鍍金とグラビア版ロールの周面及び両側端面との間に高圧空気噴射ノズルを向けて高圧空気を噴射することで、バラード鍍金をグラビア版ロールの周面及び両側端面から浮き上がらせ、その浮き上がったバラード鍍金をカッターで引き裂いてカットを進行させることで、バラード鍍金をグラビア版ロールの周面及び両側端面から高圧空気によって剥離するようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−250251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記従来のものでは、グラビア印刷を終えたバラード鍍金とグラビア版ロールの周面及び両側端面との間に高圧空気を噴射することで、バラード鍍金を浮き上がらせて剥離可能な状態にできるものの、グラビア印刷を終えたバラード鍍金とグラビア版ロールの周面及び両側端面とは密着状態にあるため、両者間への高圧空気の噴射によるバラード鍍金の浮き上がり具合を予測することができない。そのため、バラード鍍金の浮き上がり具合に応じて高圧空気噴射ノズルをバラード鍍金とグラビア版ロールの周面及び両側端面との間の任意の位置に差し入れる手作業が必要となり、剥離作業の自動化が図れない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、グラビア印刷を終えたバラード鍍金を剥離する際の剥離作業を自動化させることができるグラビア版ロールのバラード鍍金剥離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、グラビア版ロールの周面及び両側端面に対し剥離層を介して形成されたバラード鍍金を前記グラビア版ロールの周面及び両側端面から剥離するようにしたバラード鍍金剥離装置を前提とする。更に、前記グラビア版ロールの両側端面に設けられた中心孔部にそれぞれ挿通して当該グラビア版ロールをその軸芯回りに回転自在に支承する一対の支承片と、前記一対の支承片のうちの少なくとも一方に連結され、前記グラビア版ロールを軸芯回りに一定速度で回転させる駆動手段と、前記グラビア版ロールの両側端面側にそれぞれ設けられ、前記駆動手段による前記グラビア版ロールの回転時に当該グラビア版ロールの両側端面及び周面に連続するコーナー部に対し押圧された状態で回転する一対のローラと、を備える。そして、前記グラビア版ロールの回転時に当該グラビア版ロールの両側端面及びコーナー部に対しローラを押圧した状態で回転させて、前記バラード鍍金に圧延による歪みを付与して前記グラビア版ロールの周面及び両側端面から浮き上がらせつつ当該バラード鍍金に亀裂を生じさせて剥離することを特徴としている。
【0009】
また、前記グラビア版ロールの周面側にも、前記駆動手段による前記グラビア版ロールの回転時に当該グラビア版ロールの周面に対しその軸芯方向の一方から他方へ順次押圧された状態で回転するローラを設けることがこのましい。
【0010】
また、前記ローラとして、凸型ローラを適用することがこのましい。
【0011】
また、前記一対の支承片を、上下に配置し、前記グラビア版ロールの中心孔部にそれぞれ挿通させて当該グラビア版ロールを上下方向の軸芯回りに回転自在に支承することがこのましい。
【0012】
更に、前記グラビア版ロールの周面側に押圧される前記ローラの軸を、前記グラビア版ロールの軸芯と略平行に設定することがこのましい。
【発明の効果】
【0013】
以上、要するに、一対の支承片に支承されて回転するグラビア版ロールの両側端面及びコーナー部に対しローラを押圧した状態で回転させて、グラビア版ロールの周面及び両側端面に対し密着状態のバラード鍍金に圧延による歪みを付与してグラビア版ロールの周面及び両側端面から浮き上がらせつつ当該バラード鍍金に亀裂を生じさせて剥離することで、グラビア印刷を終えたバラード鍍金をグラビア版ロールの周面及び両側端面から剥離する際に、グラビア版ロールの両側端面及びコーナー部に対し押圧した状態で回転するローラによってグラビア版ロールの周面及び両側端面からバラード鍍金が剥離するため、手作業が不要となり、バラード鍍金の剥離作業を自動化させることができる。
【0014】
また、グラビア版ロールの周面側にも、グラビア版ロールの回転時に当該グラビア版ロールの周面に対しその軸芯方向の一方から他方へ順次押圧された状態で回転するローラを設けることで、このローラによってグラビア版ロールの周面においても密着状態のバラード鍍金に圧延による歪みを付与して浮き上がらせつつ当該バラード鍍金に亀裂を生じさせて剥離し易くし、バラード鍍金の剥離作業をより効率よく行うことができる。
【0015】
また、ローラとして凸型ローラを適用することで、グラビア版ロールの両側端面及び周面に対してローラが曲面で押圧され、グラビア版ロールの両側端面及び周面に対するローラの押圧による傷付きを可及的に防止することができる。
【0016】
また、一対の支承片を上下に配置し、グラビア版ロールを上下方向の軸芯回りに回転自在に支承することで、バラード鍍金剥離装置の平面上での占有スペースが非常に小さなものとなり、バラード鍍金剥離装置の省スペース化を図ることができる。
【0017】
更に、グラビア版ロールの周面側に押圧されるローラの軸をグラビア版ロールの軸芯と略平行に設定することで、グラビア版ロールの周面に対しその軸芯方向の一方から他方へ順次ローラが均一に押圧され、グラビア版ロールの周面に対するローラの押圧による傷付きを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係るグラビア版ロールのバラード鍍金剥離装置の概略構成を示す正面図である。
図2図1のバラード鍍金剥離装置の平面図である。
図3図1のグラビア版ロールの縦断正面図である。
図4図3のグラビア版ロールの側面図である。
図5図3のグラビア版ロールの端面付近での拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明の実施の形態に係るグラビア版ロールのバラード鍍金剥離装置を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態に係るグラビア版ロールのバラード鍍金剥離装置の概略構成を示す正面図、図2はバラード鍍金剥離装置の平面図をそれぞれ示している。
【0021】
図1及び図2において、1はバラード鍍金剥離装置であって、このバラード鍍金剥離装置1は、グラビア版ロールGを鉛直軸回りに回転させる駆動手段2と、この駆動手段2により回転するグラビア版ロールGの上下両側端面をそれぞれ個別に押圧するローラとしての上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dと、駆動手段2により回転するグラビア版ロールGの周面を押圧するローラとしての周面用ローラベアリング3Mと、を備えている。
【0022】
駆動手段2は、バラード鍍金剥離装置1の筐体10の上下両端部において鉛直軸回りに回転自在に支持された上下一対の支承片21,22を備えている。この支承片21,22は、グラビア版ロールGの上下両側端面にそれぞれ開口する中心孔部G1,G1に挿通されて当該グラビア版ロールGをその軸芯m回りに回転自在に支承している。また、各支承片21,22は、略円錐形状に形成され、その斜面と略一致するテーパー面に形成された中心孔部G1,G1に対し挿通されて合致し、グラビア版ロールGを各支承片21,22に対し隙間のない状態で上下方向から支承している。この場合、グラビア版ロールGの軸芯mは鉛直方向に延びている。
【0023】
各支承片21,22のうちの下側の支承片22は、その下端にプーリ221が回転一体に連結されている。筐体10の下端部には、出力軸231を下方へ延ばした第1モータ23が設けられている。この第1モータ23の出力軸231の先端(図では下端)には、プーリ232が回転一体に連結されている。そして、第1モータ23の出力軸231のプーリ232と、下側の支承片22の下端のプーリ221との間には、無端ベルト222が架け渡され、第1モータ23の出力軸231からの回転力が無端ベルト222を介して下側の支承片22に伝達されてグラビア版ロールGをその軸芯m回りに回転させるようにしている。
【0024】
この場合、グラビア版ロールGは、第1モータ23の回転力によって、一定の回転数(一定速度)、例えば約300rpmで回転している。なお、グラビア版ロールGの回転数は、これに限定されるものではなく、50rpm〜400rpmの範囲であればよい。
【0025】
一方、上側の支承片21は、筐体10の上下方向へ延びる第1支柱11に沿って上下方向へ昇降可能な昇降部材12の下面に突設されている。この昇降部材12には、図示しないが上下両端が軸回転可能に支持された雄ねじ部材に螺着された雌ねじ部材が固着され、雄ねじ部材を正逆回転可能な第2モータ(図示せず)により軸回転させることで、雄ねじ部材に対し雌ねじ部材を上下方向へ移動させて昇降部材12を昇降させるようにしている。また、昇降部材12は、第1モータ23の上方を上下方向へ延びる第2支柱13にも上下方向へ昇降自在に支持され、雄ねじ部材に対する雌ねじ部材の連れ回りを防止している。
【0026】
上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dのうち、下側端面用ローラベアリング3Dは、グラビア版ロールGの半径方向外方へ向かって延びる軸31を介して回転自在に支持されている。この軸31は、筐体10の下端部に対し下側の支承片22の近傍において昇降自在に支持された下側支持部材30に軸支持部材301を介して設けられている。下側支持部材30は、ラックアンドピニオン機構32を備えている。このラックアンドピニオン機構32は、下側支持部材30に取り付けられ、かつ上下方向へ等間隔に歯切りされたラック321と、筐体10に取り付けられ、ラック321に噛み合うピニオン322が出力軸323に回転一体に連結された正逆回転可能なモータ324とを備え、モータ324の正逆回転に応じて下側支持部材30を昇降させて、下側端面用ローラベアリング3Dをグラビア版ロールGの下側端面に押圧する押圧位置と下側端面から離間する離間位置とに変換するようにしている。
【0027】
また、下側端面用ローラベアリング3Dは、グラビア版ロールGの回転時に押圧位置に変換されて下側端面に対し押圧されると、連れ回り回転する。また、軸支持部材301は、図示しないエアシリンダの伸縮動作に応じて下側支持部材30に対し軸31方向へ移動可能に支持されているとともに、図示しないリンク機構を介してグラビア版ロールGの下側端面から周面の下端部に連続する下側のコーナー部G0にも下側端面用ローラベアリング3Dを回り込ませるように下側支持部材30に対し揺動可能に支持されている。そして、下側端面用ローラベアリング3Dは、押圧位置に変換された際に、下側エアシリンダ33の押圧力(30〜40kg/cm)によってグラビア版ロールGの下側端面及び下側のコーナー部G0に押圧される。この下側エアシリンダ33は、筐体10の下端部と下側支持部材30との間に設けられ、軸31を介して下側端面用ローラベアリング3Dをグラビア版ロールGの下側端面及び下側のコーナー部G0に押圧している。
【0028】
一方、上側端面用ローラベアリング3Uは、グラビア版ロールGの半径方向外方へ向かって延びる軸35を介して回転自在に支持されている。この軸35は、筐体10の上端部に対し上側の支承片21の近傍において昇降自在に支持された上側支持部材36に軸支持部材361を介して設けられている。上側支持部材36は、ラックアンドピニオン機構37を備えている。このラックアンドピニオン機構37は、上側支持部材36に取り付けられ、かつ上下方向へ等間隔に歯切りされたラック371と、筐体10に取り付けられ、ラック371に噛み合うピニオン372が出力軸373に回転一体に連結された正逆回転可能なモータ374とを備え、モータ374の正逆回転に応じて上側支持部材36を昇降させて、上側端面用ローラベアリング3Uをグラビア版ロールGの上側端面に押圧する押圧位置と上側端面から離間する離間位置とに変換するようにしている。
【0029】
また、上側端面用ローラベアリング3Uは、グラビア版ロールGの回転時に押圧位置に変換されて上側端面に対し押圧されると、連れ回り回転する。また、軸支持部材361は、図示しないエアシリンダの伸縮動作に応じて上側支持部材36に対し軸35方向へ移動可能に支持されているとともに、図示しないリンク機構を介してグラビア版ロールGの上側端面から周面の上端部に連続する上側のコーナー部G0にも上側端面用ローラベアリング3Uを回り込ませるように上側支持部材36に対し揺動可能に支持されている。そして、上側端面用ローラベアリング3Uは、押圧位置に変換された際に、上側エアシリンダ34の押圧力(30〜40kg/cm)によってグラビア版ロールGの上側端面及び上側のコーナー部G0に押圧される。この上側エアシリンダ34は、筐体10の上端部と上側支持部材36との間に設けられ、軸35を介して上側端面用ローラベアリング3Uをグラビア版ロールGの上側端面及び上側のコーナー部G0に押圧している。
【0030】
更に、周面用ローラベアリング3Mは、グラビア版ロールGの上側端面と下側端面との間で昇降する昇降支持部材(図示せず)にグラビア版ロールGの軸芯mと平行に延びる軸39を介して回転自在に支持されている。この昇降支持部材には、図示しないが上下両端が軸回転可能に支持された雄ねじ部材に螺着された雌ねじ部材が固着され、雄ねじ部材を正逆回転可能な第3モータ(図示せず)により軸回転させることで、雄ねじ部材に対し雌ねじ部材を上下方向へ移動させて昇降支持部材を昇降させるようにしている。また、周面用ローラベアリング3Mの軸39は、昇降支持部材に対しグラビア版ロールGの周面に向かって半径方向外方から接離可能に支持された接離支持部材(図示せず)に設けられている。この接離支持部材にもラックアンドピニオン機構が備えられ、このラックアンドピニオン機構は、接離支持部材に取り付けられ、かつグラビア版ロールGの半径方向外方から等間隔に歯切りされたラックと、昇降支持部材に取り付けられ、ラックに噛み合うピニオンが出力軸に回転一体に連結された正逆回転可能なモータとを備え、モータの正逆回転に応じて接離支持部材を昇降支持部材に対しグラビア版ロールGの周面に向かって半径方向外方から接離させて、周面用ローラベアリング3Mをグラビア版ロールGの周面に押圧する押圧位置と周面から離間する離間位置とに変換するようにしている。
【0031】
また、周面用ローラベアリング3Mは、グラビア版ロールGの回転時に押圧位置に変換されて周面に対し押圧されると、連れ回り回転する。また、周面用ローラベアリング3Mは、図示しないエアシリンダの伸縮動作に応じてグラビア版ロールGの半径方向外方から内方へ移動可能とされている。そして、周面用ローラベアリング3Mは、押圧位置に変換された際に、図示しない周面用エアシリンダの押圧力(30〜40kg/cm)によってグラビア版ロールGの周面に押圧される。この周面用エアシリンダは、昇降支持部材と接離支持部材との間に設けられ、軸39を介して周面用ローラベアリング3Mをグラビア版ロールGの周面に押圧している。
【0032】
そして、駆動手段2の下側の支承片22及び無端ベルト222を介してグラビア版ロールGを回転させる第1モータ23、上側の支承片21の昇降部材12を昇降させる雄ねじ部材を正逆回転する第2モータ、下側端面用ローラベアリング3Dの下側支持部材30を昇降させるラックアンドピニオン機構32のモータ324、下側端面用ローラベアリング3Dの軸支持部材301を軸31方向へ移動させるエアシリンダ、上側端面用ローラベアリング3Uの上側支持部材36を昇降させるラックアンドピニオン機構37のモータ374、上側端面用ローラベアリング3Uの軸支持部材361を軸35方向へ移動させるエアシリンダ、周面用ローラベアリング3Mの昇降支持部材を昇降させる雄ねじ部材を正逆回転する第3モータ、周面用ローラベアリング3Mの接離支持部材を昇降支持部材に対し接離させるラックアンドピニオン機構のモータは、制御装置4により制御されている。
【0033】
また、上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3D並びに周面用ローラベアリング3Mとしては、湾曲部分の径が半径800〜1200mmの範囲(特に半径1000mmが好ましい)に設定された凸型ローラが適用されている。この場合、各ローラベアリング3U,3D,3Mは、凸型ローラが適用されている関係上、それぞれが押圧されるグラビア版ロールGの周面及び上下両側端面に対し点で接触している。
【0034】
図3はグラビア版ロールGの縦断正面図、図4はグラビア版ロールGの側面図、図5はグラビア版ロールGの端面付近での拡大断面図をそれぞれ示している。
【0035】
図3図5に示すように、グラビア版ロールGの各中心孔部G1の孔壁にはそれぞれキー溝G2が設けられている。また、各支承片21,22のうちの下側の支承片22の周面には、キー溝G2と合致するキー221が突設されている。そして、下側の支承片22のキー221と、グラビア版ロールGの各中心孔部G1のキー溝G2との嵌め込みによって、下側の支承片22の回転力がグラビア版ロールGにダイレクトに伝達されている。
【0036】
また、グラビア版ロールGは、円筒形状の周壁G3と、この周壁G3の両端に接合され、中心部にそれぞれ中心孔部G1,G1を有する両端壁G4,G4とからなる。周壁G3及び両端壁G4,G4は、鉄により成形されている。グラビア版ロールGの周壁G3の表面には、ニッケルによる中間鍍金G5が皮膜され、この中間鍍金G5の表面には銅による下地鍍金G6が皮膜されている。そして、下地鍍金G6の表面には剥離層G7を形成するための剥離液が塗布され、その上から銅による鍍金を施してバラード鍍金G8が形成されている。このバラード鍍金G8に対し、グラビア印刷される絵柄に対応した位置にセルと呼ばれる多数の窪みG9,G9,…を機械的彫刻方法又は腐蝕法によって形成した後で、グラビア印刷での耐久性を確保するためにクロム鍍金G10が施されている。この場合、グラビア版ロールGの周壁G3の表面に対し順に被覆又は形成される中間鍍金G5、下地鍍金G6、剥離層G7、バラード鍍金G8、及びクロム鍍金G10は、両端壁G4,G4から中心孔部G1,G1の斜面に至る範囲まで被覆又は形成されている。なお、剥離層G7を形成する剥離液には銀の粉末が混入されている。
【0037】
また、グラビア版ロールGの周壁G3の両端は、その表面が徐々に縮径する略紡錘形状の曲面に形成され、両端壁G4,G4の表面に対し緩やかなカーブを描いて連続するコーナー部G0を形成している。
【0038】
ここで、グラビア印刷を終えたグラビア版ロールGのバラード鍍金G8をクロム鍍金G10と共に周壁G3の表面(周面)及び両端壁G4,G4の表面(上下両側端面)の下地鍍金G6からバラード鍍金剥離装置1によって剥離する際の制御装置4による制御の一例について説明する。
【0039】
先ず、グラビア印刷を終えたグラビア版ロールGの下端壁G4(下側端面)の中心孔部G1に下側の支承片22を挿通し、下側の支承片22のキー221を下端壁G4の中心孔部G1のキー溝G2嵌め込む。それから、予め上昇させていた昇降部材12を、第2モータにより雄ねじ部材を軸回転させて下降させ、その下面の上側の支承片21をグラビア版ロールGの上端壁G4(上側端面)の中心孔部G1に挿通し、グラビア版ロールGを上下の支承片21,22同士の間で支承する。
【0040】
次いで、第1モータ23を駆動し、下側の支承片22を無端ベルト222を介して回転させて、グラビア版ロールGをその軸芯m回りに回転させる。このとき、グラビア版ロールGは約300rpmで回転している。
【0041】
それから、周面用ローラベアリング3Mの軸39を支持する接離支持部材を昇降支持部材に対しラックアンドピニオン機構によりグラビア版ロールGの周面に向かって半径方向外方から接近させて周面用ローラベアリング3Mを離間位置から押圧位置まで変換し、周面用エアシリンダの押圧力(30〜40kg/cm)によってグラビア版ロールGの周面に周面用ローラベアリング3Mを押圧する。この状態で、周面用ローラベアリング3Mをグラビア版ロールGの上側端面から下側端面までの間で昇降支持部材を第3モータにより所定時間(例えば10分程度)掛けてゆっくりと下降させる。このとき、グラビア版ロールGの周面において下地鍍金G6に対し密着状態のバラード鍍金G8に圧延による歪みを付与して下地鍍金G6から浮き上がらせつつ当該バラード鍍金G8に亀裂を生じさせて剥離し易くしている。
【0042】
この昇降支持部材により下降する周面用ローラベアリング3Mがグラビア版ロールGの下側端面に近づき始めると、上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dの軸35,31を支持する上側支持部材36及び下側支持部材30を筐体10に対しラックアンドピニオン機構37,32によりグラビア版ロールGの端面に向かって接近させて上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dを離間位置から押圧位置まで変換し、周面用エアシリンダの押圧力(30〜40kg/cm)によってグラビア版ロールGの上下両側端面に上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dを押圧する。この状態で、上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dをそれぞれエアシリンダの伸縮動作に応じて軸31方向外方へ移動させる。このとき、グラビア版ロールGの上下両側端面において下地鍍金G6に対し密着状態のバラード鍍金G8に圧延による歪みを付与して下地鍍金G6から浮き上がらせつつ当該バラード鍍金G8に亀裂を生じさせて剥離し易くしている。
【0043】
更に、上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dの軸35,31を支持する軸支持部材361,301のうちの一方を、エアシリンダの伸縮動作に応じて上側支持部材36又は下側支持部材30に対し軸35方向へ移動可能させるとともに、リンク機構を介してグラビア版ロールGのコーナー部G0にも上側端面用又は下側端面用ローラベアリング3U,3Dを回り込ませるように上側支持部材36又は下側支持部材30に対し揺動させ、上側端面用又は下側端面用ローラベアリング3U,3Dをグラビア版ロールGのコーナー部G0に押圧させる。このとき、グラビア版ロールGのコーナー部G0において下地鍍金G6に対し密着状態のバラード鍍金G8に圧延による歪みを付与して下地鍍金G6から浮き上がらせつつ当該バラード鍍金G8に亀裂を生じさせている。
【0044】
したがって、本実施の形態では、制御手段4の制御によって、上下一対の支承片21,22に支承されて回転するグラビア版ロールGの上下両側端面及び周面に対し上側端面用、下側端面用及び周面用ローラベアリング3U,3D,3Mを押圧した状態で回転させるとともに、上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dの一方をコーナー部G0にも押圧した状態で回転させて、グラビア版ロールGの上下両側端面及び周面の下地鍍金G6に対し密着状態のバラード鍍金G8に圧延による歪みを付与して下地鍍金G6から浮き上がらせつつコーナー部G0のバラード鍍金G8に亀裂を生じさせて剥離することで、グラビア印刷を終えたバラード鍍金G8を下地鍍金G6から剥離する際に、グラビア版ロールGの両側端面及び周面に対し押圧した状態で回転する上側端面用、下側端面用、周面用ローラベアリング3U,3D,3Mと、グラビア版ロールGのコーナー部G0に対し押圧した状態で回転する上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dの一方とによって、下地鍍金G6からバラード鍍金G8が円滑に剥離するため、手作業が不要となり、バラード鍍金G8の剥離作業をバラード鍍金剥離装置1によって自動化させることができる。
【0045】
また、上側端面用、下側端面用及び周面用ローラベアリング3U,3D,3Mとして、湾曲部分の径が半径800〜1200mmの範囲(特に半径1000mmが好ましい)に設定された凸型ローラが適用されているので、グラビア版ロールGの両側端面及び周面に対して上側端面用、下側端面用及び周面用ローラベアリング3U,3D,3Mが曲面で押圧され、グラビア版ロールGの両側端面及び周面に対する上側端面用、下側端面用及び周面用ローラベアリング3U,3D,3Mの押圧による傷付きを可及的に防止することができる。
【0046】
また、一対の支承片21,22が上下に配置され、グラビア版ロールGを上下方向の軸芯m回りに回転自在に支承しているので、バラード鍍金剥離装置1の平面上での占有スペースが非常に小さなものとなり、バラード鍍金剥離装置1の省スペース化を図ることができる。
【0047】
更に、周面用ローラベアリング3Mの軸39がグラビア版ロールGの軸芯mと平行に設定されているので、グラビア版ロールGの周面に対しその軸芯m方向の一方から他方へ順次周面用ローラベアリング3Mが均一に押圧され、グラビア版ロールGの周面に対する周面用ローラベアリング3Mの押圧による傷付きを確実に防止することができる。
【0048】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記実施の形態では、上下一対の支承片21,22に対しグラビア版ロールGを上下方向の軸芯m回りに回転自在に支承したが、一対の支承片を水平方向に配置し、グラビア版ロールが水平方向の軸芯回りに回転自在に支承されていてもよい。
【0049】
また、前記実施の形態では、昇降支持部材により下降する周面用ローラベアリング3Mがグラビア版ロールGの下側端面に近づき始めたときに、上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dをグラビア版ロールGの上下両側端面に押圧させて回転させたが、上側端面用及び下側端面用ローラベアリングを周面用ローラベアリングによるグラビア版ロールの周面への押圧と同時にグラビア版ロールの上下両側端面に押圧させてもよい。この場合には、グラビア版ロールの周面でのバラード鍍金の剥離を検知するセンサなどを設けておくことで、センサが検知した際にバラード鍍金の剥離が完了したと判断して、グラビア版ロールの周面での周面用ローラベアリングによる押圧を途中で中止して剥離作業に要する時間の短縮化を図ることもできる。
【0050】
また、前記実施の形態では、周面用ローラベアリング3Mの軸39をグラビア版ロールGの軸芯mと平行に設定したが、周面用ローラベアリングをグラビア版ロールの周面に押圧した際に連れ回り可能であれば、当該ローラベアリングの軸の角度はグラビア版ロールの軸芯と平行でなくてもよい。
【0051】
また、前記実施の形態では、制御手段4の制御によって、グラビア版ロールGを回転させ、このグラビア版ロールGの上下両側端面及び周面に対し上側端面用、下側端面用及び周面用ローラベアリング3U,3D,3Mを押圧した状態で回転させるとともに、上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dの一方をコーナー部G0にも押圧した状態で回転させたが、グラビア版ロールを回転させた後の上側端面用、下側端面用及び周面用ローラベアリングの押圧による回転タイミングはこれに限定されるものではなく、作業者が設定した任意のタイミングに制御手段の制御を変更してもよい。
【0052】
更に、前記実施の形態では、グラビア版ロールGの周壁G3及び両端壁G4,G4の表面に中間鍍金G5を介して被覆した下地鍍金G6に、剥離層G7を介してバラード鍍金G8及びクロム鍍金G10を形成したが、グラビア版ロールの周壁及び両端壁の表面に対し剥離層を介してバラード鍍金が施されていてもよい。また、グラビア版ロールの周壁及び両端壁が共にアルミニウムにより成形されていてもよい。
【0053】
また、前記実施の形態では、銅による鍍金を施したバラード鍍金G8を形成したが、亜鉛やニッケルなどによる鍍金を施したバラード鍍金が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 バラード鍍金剥離装置
21,22 上側及び下側の支承片
2 駆動手段
3U 上側端面用ローラベアリング(ローラ)
3D 下側端面用ローラベアリング(ローラ)
3M 周面用ローラベアリング(ローラ)
39 周面用ローラベアリングの軸
m 軸芯
G グラビア版ロール
G0 コーナー部
G1 中心孔部
G6 下地鍍金
G7 剥離層
G8 バラード鍍金
【要約】
【目的】グラビア印刷を終えたバラード鍍金を剥離する際の剥離作業を自動化させることができるグラビア版ロールのバラード鍍金剥離装置を提供する。
【解決手段】グラビア版ロールGを上下一対の支承片21,22によって支承し、鉛直方向へ延びる軸芯m回りに一定速度で回転させる。グラビア版ロールGの回転時にその上下両側端面に対し上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dを押圧させて回転させると共に、上側端面用及び下側端面用ローラベアリング3U,3Dの一方をグラビア版ロールGのコーナー部にも押圧させて回転させ、バラード鍍金に圧延による歪みを付与して浮き上がらせつつ当該バラード鍍金に亀裂を生じさせて自動的に剥離している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5