【実施例】
【0025】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1は本発明の導電路シールド構造を採用するワイヤハーネスの図である。また、
図2及び
図3は包囲式シールド部材における側部同士のラップシールド状態を示す図、
図4はワイヤハーネス本体の製造工程に係る図、
図5は端末処理工程に係る図、
図6は製造工程の他の例に係る図である。
【0026】
図1において、引用符号21はシールド機能を有するワイヤハーネスを示している。ワイヤハーネス21は、例えば自動車においてシールド機能を発揮させる必要がある箇所に配索されている。ワイヤハーネス21は、ワイヤハーネス本体22と、このワイヤハーネス本体22の両端末にそれぞれ設けられて電気的な接続を行う公知の接続部(図示省略)とを含んで構成されている。ワイヤハーネス21は、以下、低圧のものとして説明するがこの限りでないものとする(例えばハイブリッド自動車や電気自動車等の高圧のものにも適用可能であるものとする)。
【0027】
ワイヤハーネス本体22は、一対の絶縁線心23(導電路)と、銅電線24と、包囲式シールド部材25と、包囲式保護部材26とを含んで構成されている。このようなワイヤハーネス本体22には、摩耗防止部材27、耐熱部材(図示省略)、及び遮熱部材28(
図5参照)のうち少なくとも一つが必要に応じて設けられている。ワイヤハーネス本体22は、これ自身が低コストとなるように構成されている。先ず、上記の各構成部材について説明をする。
【0028】
絶縁線心23は、導体29と、この導体29の外側に設けられる絶縁体30とを備えて構成されている。導体29は、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金等の導電性を有する金属部分であって、ワイヤハーネス21の配索に必要な長さに形成されている。導体29は、多くの素線を撚り合わせてなる導体構造のものが採用されている。尚、丸単心となる導体構造(丸棒線)、四角形の単心となる導体構造(角棒線)、又はバスバー形状となる導体構造等であってもよいものとする。導体29は、これをアルミニウム製にすると、安価且つ軽量であるというメリットを有する。
【0029】
絶縁体30は、導体29に対する被覆であって、絶縁性を有する公知の樹脂材料を押し出し成形することにより形成されている。
【0030】
絶縁線心23は、図示のような二本に限らず、例えば七本やこれ以上の数であってもよいものとする。また、絶縁線心23は、図示のような撚り合わせに限らず、非撚り合わせや、撚り合わせと非撚り合わせの組み合わせであってもよいものとする(撚り合わせに関しては後述する)。絶縁線心23は、このサイズが適宜選定されるものとし、公知の細物電線のサイズや太物電線のサイズのいずれであってもよいものとする。
【0031】
銅電線24は、直上に他の積層体のない銅製の裸線であって、ドレン線としての機能を有している。銅電線24は、撚り合わせ状態にある一対の絶縁線心23に対し縦添えされるように配置されている。このような銅電線24は、絶縁線心23と同じ長さに形成されている。銅電線24のサイズは、適宜設定されるものとする。銅電線24は、包囲式シールド部材25に対して電気的に接触することが必須であるものとする。
【0032】
包囲式シールド部材25は、一対の絶縁線心23及び銅電線24を一括して包み囲むシールド部材であって、フィルム状、シート状、又はテープ状に形成されている。包囲式シールド部材25は、包囲式のシールド部材となるように形成されている。包囲式シールド部材25は、本実施例において、一対の絶縁線心23及び銅電線24を縦添えにて包み囲むことができるように形成されている。
【0033】
図1及び
図2において、包囲式シールド部材25は、アルミ箔31と、このアルミ箔31の一方の面に設けられて銅電線24の外周面に接触するメッキ層32と、アルミ箔31の他方の面側に設けられて絶縁をする樹脂製の基材33とを含んで構成されている。包囲式シールド部材25は、上記構成を積層するような構造にて形成されている。尚、アルミ箔31と基材33は接合層34にて一体化するようになっているが、この限りでないものとする。すなわち、蒸着等の他の方法にて一体化するようになってもよいものとする。
【0034】
メッキ層32は、錫メッキによりなる層であって、平面状態にあるアルミ箔31の上に厚みを均一にして形成されている(平面状態であればメッキ層32をバラツキなく均一に施すことができるという効果を奏する)。メッキ層32は、導電性を有しており、銅電線24とアルミ箔31との電食を防止するために施されている。メッキ層32は、特に限定するものでないが、例えば1μm程度の厚みになるように施されている。
【0035】
アルミ箔31は、アルミニウム製となる公知の金属箔であって、基材33の全面に形成されている。又は、基材33の一側部35に基材単独部36を確保することができるように形成されている。本実施例においては後者が採用されている。すなわち、基材33の一側部35に基材単独部36を確保することができるようにアルミ箔31が形成されている。基材単独部36に関しては後述する(尚、上記後者に対する前者の場合は、後述する折り返し形成部38を形成するものとする)。アルミ箔31は、特に限定するものでないが、例えば10μm程度の厚みになるように形成されている。アルミ箔31は、シールド機能を発揮させる必要がある箇所に合わせて長さ等が設定されている。
【0036】
接合層34は、アルミ箔31と基材33とを剥がれなく接合するための層であって、本実施例においては公知の糊が用いられている(一例であるものとする)。
【0037】
基材33は、包囲式シールド部材25のベースとなる層であって、絶縁性を有するものにて形成されている。基材33は、本実施例において、ポリエチレンテレフタレートからなるPTEシートが用いられている(一例であるものとする。この他、例えばポリエステルシート、アセテート布、ポリエステル布、ガラスクロス、絶縁紙、PTE織布、ポリエステル布等が挙げられるものとする)。基材33は、特に限定するものでないが、例えば25μm程度の厚みになるように形成されている。
【0038】
基材33は、上記の如く、この一側部35に基材単独部36を確保することができるように形成されている。基材単独部36は、基材33のみとなる部分であって、一対の絶縁線心23及び銅電線24を包み囲む際に、基材33の他側部37を覆うことができるように形成されている(
図1及び
図2の場合、すし巻き(海苔巻き)状に包み囲んで覆っている)。基材単独部36は、アルミ箔31やメッキ層32を露出させないようにする絶縁部分として形成されている。基材33の他側部37を一側部35にて覆い、これにより重ね合わせ部分にすると、アルミ箔31がラップするようなラップシールド状態が形成されるようになっている。上記重ね合わせ部分は、本実施例において単に重ね合わせているだけであるが、例えば熱溶着、熱融着等により、基材単独部36の内面と基材33の外面とを固着するようにしてもよいものとする。上記重ね合わせ部分や固着部分は、長手方向全体にわたって形成されている。
【0039】
尚、基材33の一側部35及び他側部37を重ね合わせて所謂拝み巻きする場合には、
図3(c)に示す如くの位置に基材単独部36を配置すればアルミ箔31やメッキ層32の露出を防止することができるようになっている。また、
図3(a)及び(b)に示す如く基材単独部36を折り返して他側部37を覆うようにすれば、この場合もアルミ箔31やメッキ層32の露出を防止することができるようになっている。
図3(a)及び(b)における基材単独部36は、これを折り返しすることが可能な折り返し形成部38としても形成されている。この他、基材単独部36を形成しない場合は、一側部35及び他側部37を重ね合わせて上記拝み巻きをし、そして重ね合わせ先端を内側へ折り返しすることにより折り返し形成部を形成すれば、アルミ箔31やメッキ層32の露出を防止することができるようになるものとする。
【0040】
図1及び
図2に戻り、包囲式保護部材26は、一対の絶縁線心23及び銅電線24を一括して包み囲んだ状態の包囲式シールド部材25を保護する部材であって、フィルム状、シート状、又はテープ状に形成されている。包囲式保護部材26は、必要最小限の厚みで保護をすることができるように形成されている。包囲式保護部材26は、包囲式シールド部材25と同じ大きさ、又は若干大きくなるような大きさに形成されている。本実施例においては、包囲式シールド部材25を縦添えにて包み囲むことができる大きさに形成されている。包囲式保護部材26としては、本実施例において、ポリエチレンテレフタレートからなるPTEフィルムが用いられている(一例であるものとする)。包囲式保護部材26は、絶縁性を有している。
【0041】
包囲式保護部材26は、この一側部及び他側部を重ね合わせ、そしてテープにて粘着固定されるようになっている。又は、必要に応じて例えば熱溶着、熱融着等により固着されるようになっている。重ね合わせ部分や固着部分は、長手方向全体にわたって形成されている。尚、重ね合わせ状態に関しては、包囲式シールド部材25と同様であってもよいものとする。また、重ね合わせ位置は、包囲式シールド部材25の重ね合わせ位置の反対側に配置するなど、同じ位置でない方が好適であるものとする。
【0042】
包囲式保護部材26の外側所定位置には、
図5に示す如くの摩耗防止部材27、耐熱部材(図示省略)、遮熱部材28が設けられている。摩耗防止部材27は、耐摩耗性が必要な箇所のみに設けられている。摩耗防止部材27を採用することにより、過剰品質を防止することができ、以てコスト低減を図ることができるという効果を奏する。一方、耐熱部材も耐熱性が必要な箇所に設けられており、摩耗防止部材27と同様に過剰品質を防止することができ、以てコスト低減を図ることができるという効果を奏する。他方、遮熱部材28も遮熱性が必要な箇所に設けられており、摩耗防止部材27と同様に過剰品質を防止することができ、以てコスト低減を図ることができるという効果を奏する。摩耗防止部材27や耐熱部材や遮熱部材28は、例えばテープ状に形成することが好適であるものとする(一例であるものとする。フィルム状やシート状であってもよいものとする)。テープ状に形成した場合には、巻き数に応じて厚みを調整することができるという利点を有している。摩耗防止部材27としては、公知のジョイントテープ等の比較的厚い保護部材が挙げられるものとする。また、耐熱部材としては、耐熱樹脂混合物が挙げられるものとする。また、遮熱部材28としては、熱反射部材とシート状部材とを積層したものが挙げられるものとする。
【0043】
次に、上記構成及び構造に基づきながらワイヤハーネス本体22及びワイヤハーネス21の製造について説明をする。
【0044】
図4(a)において、一対の絶縁線心23に対し銅電線24を添えるような格好でこれらを並べる。次に、
図4(b)及び(c)に示す如く一対の絶縁線心23及び銅電線24を包み囲むように包囲式シールド部材25を組み付ける。この時、内側となる包囲式シールド部材25のメッキ層32が銅電線24に確実に接触するように包囲式シールド部材25を組み付ける。続いて、
図4(d)及び(e)に示す如く一対の絶縁線心23及び銅電線24を一括して包み囲んだ状態の包囲式シールド部材25に対し、これを更に包み囲むように包囲式保護部材26を組み付ける。包囲式保護部材26は、包囲式シールド部材25に対し密着させるような組み付けをしてもよいし、包囲式シールド部材25との間に若干の隙間が生じるような組み付けをしてもよいものとする。以上によりワイヤハーネス本体22の製造が完了する。
【0045】
図5(a)において、ワイヤハーネス本体22の一方の端末に対し端末処理39をする場合、包囲式シールド部材25及び包囲式保護部材26を他方の端末側へとスライドさせる。他方の端末は、包囲式シールド部材25及び包囲式保護部材26のスライド移動により露出量が減少する。次に、ワイヤハーネス本体22の他方の端末に対し端末処理40をする場合には、
図5(b)に示す如く包囲式シールド部材25及び包囲式保護部材26を一方の端末側へとスライドさせる。一方の端末は、包囲式シールド部材25及び包囲式保護部材26のスライド移動により露出量が減少する。
【0046】
尚、包囲式シールド部材25及び包囲式保護部材26をスライド移動させない場合には、ワイヤハーネス本体22の両端末に寸法Aで示すスペースがそれぞれ必要になる。これに対し本実施例においてはスライド移動を採用することから、上記寸法Aよりも短い寸法Bを確保すればよいことになる(寸法A>寸法B)。従って、包囲式シールド部材25の全長を長くすることができ、結果、シールド範囲を拡大することができるという効果を奏する。
【0047】
図5(c)において、包囲式保護部材26の外側所定位置に摩耗防止部材27、耐熱部材(図示省略)、遮熱部材28を設けると、ワイヤハーネス21の製造が完了する。
【0048】
ワイヤハーネス21の製造に関し、
図6(a)及び(b)に示す如く一対の絶縁線心23を撚り合わせずに略平行に(非撚り合わせ)配置し、これにより製造をしてもよいものとする。また、
図6(c)及び(d)に示す如く一対の絶縁線心23の一部に撚り合わせをし、これにより製造をしてもよいものとする。撚り合わせの不要な箇所を非撚り合わせにすることにより、過剰品質を防止し、また、製造を簡素化してコスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【0049】
以上、
図1ないし
図6を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、電食を防止するための錫メッキ(メッキ層32)をバラツキなく均一に施すことができるという効果を奏する。また、アルミ箔31を構成に含む包囲式シールド部材25を用いることから、これを安価に提供することができるという効果を奏する。従って、本発明によれば、電食を避けつつコスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【0050】
この他、本発明によれば、包囲式保護部材26を用いることから、包囲式シールド部材25の外側においてもコスト低減を図ることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、過剰品質を防止することから、より一層コスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【0051】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。