特許第5881814号(P5881814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5881814エンジン及びその部品の残り耐用寿命を予測する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881814
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】エンジン及びその部品の残り耐用寿命を予測する方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20160225BHJP
   F02C 9/00 20060101ALI20160225BHJP
   F01D 5/14 20060101ALI20160225BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20160225BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   F02C7/00 A
   F02C7/00 D
   F02C9/00 A
   F02C9/00 B
   F01D5/14
   F01D9/02 101
   F01D25/00 W
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-509334(P2014-509334)
(86)(22)【出願日】2012年4月30日
(65)【公表番号】特表2014-518974(P2014-518974A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】US2012035768
(87)【国際公開番号】WO2012151150
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2014年3月13日
(31)【優先権主張番号】13/101,360
(32)【優先日】2011年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル、デヴィッド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】クルカルニ、アナンド エイ
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−520961(JP,A)
【文献】 特開2009−168020(JP,A)
【文献】 国際公開第01/023725(WO,A1)
【文献】 特表2010−502893(JP,A)
【文献】 特開2010−090896(JP,A)
【文献】 特表2008−518150(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/039319(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0161196(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F02C 9/00
F01D 5/14
F01D 9/02
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態ベースの監視システムに使用するために現状を示す電子データ信号を生成する1つ以上のセンサを計装した部品を有するエンジンの残り耐用寿命を予測する方法であって、
前記エンジンの動作寿命を制限する1つ以上の部品を識別すると共に、該部品ごとに、前記エンジンの動作寿命を制限する少なくとも1つの故障モードを識別し、
前記識別した部品の前記識別した故障モードに対し運転時間及び運転温度か又はサイクル数及びサイクル速度に少なくとも基づく予測故障モード率を生成し、
前記識別した部品の前記識別した故障モードに対応させる当該部品の現状を検出するための1つ以上のセンサを、前記識別した部品に備えておいて
前記エンジンを運転し、該エンジン運転中に、前記識別した部品について、前記センサによるデータを含むと共に運転時間及び運転温度の情報又はサイクル数及びサイクル速度の情報を少なくとも含んだ現運転状態に関するデータを取得して当該現運転状態に関するデータ前記識別した故障モードに関連付けて記憶し
前記識別した故障モードに関連付けて記憶した前記現運転状態に関するデータを履歴データとして使用し
前記識別した部品の前記現運転状態に関するデータ、当該部品の前記識別した故障モードに対応する前記履歴データ、及び前記予測故障モード率に基づいて、前記識別した部品の残り耐用寿命をエンジン運転中に判断する、
ことを含む方法。
【請求項2】
前記エンジンの現在及び将来の計画運転状態に関するデータも、前記識別した部品の前記残り耐用寿命を判断するステップにおいて使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記識別した部品の前記判断した残り耐用寿命に基づいて、前記エンジンの将来の計画運転状態を修正することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記センサと電気的に通信する無線テレメータ装置を備え、前記センサから出力される電子データ信号を、前記残り耐用寿命を判断するプロセッサへ転送することを更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記センサを備えるステップにおいて、前記識別した部品の基材に形成された保護コーティング上又は保護コーティング内に前記センサを配置することを含み、前記センサが前記コーティングの現状を検出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記予測故障モード率を生成するステップにおいて、1つ以上の運転温度における運転時間の関数として前記予測故障モード率を生成することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記センサと同じタイプの別のセンサを使用して、前記センサのセンサ較正データを生成し、前記センサの出力を較正することを更に含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記エンジンが圧縮器セクション及びタービンセクションを含むタービンエンジンであり、該タービンエンジンの軸を中心に回転するよう搭載されたブレードを、前記エンジンの動作寿命を制限する部品として識別する請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
状態ベースの監視システムに使用するために現状を示す電子データ信号を無線送信する部品送信機と電気通信する1つ以上のセンサを計装した寿命制限部品を有するエンジンの耐用寿命を予測する方法であって、
前記エンジンの動作寿命を制限する複数の寿命制限部品を識別すると共に、該部品ごとに、前記エンジンの動作寿命を制限する少なくとも1つの故障モードを識別し、
前記識別した各寿命制限品の前記識別した故障モードに対し運転時間及び運転温度か又はサイクル数及びサイクル速度に少なくとも基づく予測故障モード率を生成し、
前記識別した寿命制限部品の前記識別した故障モードに対応させる当該寿命制限部品現状を検出するためのセンサを、前記識別した各寿命制限部品の基材のコーティングに対し備え、
前記センサと電気的に通信して、前記センサから出力される電子データ信号を転送す無線テレメータ装置を備えておいて
前記エンジンを運転し、該エンジン運転中に、前記識別した各寿命制限部品について、転送される前記センサによるデータを含むと共に運転時間及び運転温度の情報又はサイクル数及びサイクル速度の情報を少なくとも含んだ現運転状態に関するデータを取得して当該現運転状態に関するデータを前記識別した故障モードに関連付けて記憶し
前記識別した故障モードに関連付けて記憶した前記現運転状態に関するデータを履歴データとして使用し、
前記エンジンの現在及び将来の計画運転状態に関するデータを使用し、
前記識別した寿命制限部品の前記現運転状態に関するデータ当該寿命制限部品の前記識別した故障モードに対応する前記履歴データと前記予測故障モード率と、前記現在及び将来の計画運転状態に関するデータに基づいて、前記識別した寿命制限部品について、前記識別した故障モードに関連した残り耐用寿命をエンジン運転中に判断する、
ことを含む方法。
【請求項10】
前記識別した故障モードに関連付ける前記現状を監視するために必要なセンサのタイプを識別し、
該センサを装着するための前記寿命制限部品における位置を識別する、
ことを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記センサと同じタイプの別のセンサのデータを、前記センサの較正に使用することを更に含む、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エンジンの将来の計画運転状態、前記識別した各寿命制限部品の前記判断した残り耐用寿命を基に調整し、
前記識別した故障モードごとに前記識別した寿命制限部品の残り耐用寿命を再計算する、
ことを更に含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して運転環境の監視に関し、具体的には、ガスタービンエンジンなどの運転環境における個々の部品の状態に関するデータの送信を可能にする部品に関する。より詳細には、本発明は、タービンエンジンなどの複雑なエンジンシステム及びその部品の残り耐用寿命の予測に使用される、状態ベースの保守システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燃焼タービンは、発電所の発電機の駆動又は船舶や航空機の推進など、様々な用途に使用されている。現代のガスタービンエンジンの燃焼温度は、より効率の高いエンジンに対する需要に応えて上昇し続けている。ガスタービンエンジン内に存在する腐食性の高温環境に耐えるために、超合金材料が開発されてきた。しかし、超合金材料でさえ、何らかの形態の冷却及び断熱の少なくともいずれかを実施しなければ、現世代のガスタービンエンジンの高温の燃焼ガスに対する長時間の曝露に耐えることはできない。
【0003】
ガスタービンエンジンの様々な高温ガス路部品を保護するために、遮熱コーティングが広く使用されている。このようなコーティングの信頼性は、機械の全体的な信頼性にとって重要である。このようなコーティングの設計限界は、主にラボラトリのデータによって決定される。しかし、コーティングの限界をより確実に把握するには、実際のガスタービン環境の応力及び温度に曝された場合の遮熱コーティングの塗工性の確認が必須である。このような現実の運転環境データは取得が非常に困難であり、タービンの回転ブレードのようにエンジンの運転中に動作する部品では特にそうである。
【0004】
発電用ガスタービン又は商用及び軍事用航空機エンジンのような現代のタービンエンジンは極めて高性能化されているが、運転中のタービンエンジン部品の内部状態に関して設計者及び運転者が有している情報は非常に少ない。これは過酷な運転状態に由来するものであり、その故に、重要なエンジン部品の信頼できる情報を収集するために従来型のセンサを使用することができない。
【0005】
現在の多くのタービンが装備しているセンサは、排気ガス路の温度測定、火炎検出及び基本的なタービン運転状態のように限られた機能を実行することはできる。この情報に基づいて、電力会社などのタービン運転者は受動モードでエンジンを運転し、その保守は同様のエンジンの以前の履歴に基づいてスケジュール設定されている。エンジンのリビルド及び定期保守は、個々の部品の寿命の残り又は使用済み期間に関する事前の知識がない状態で実行される。特定の部品の情報が無いことで、早期の故障検出が困難であり、往々にして突然の部品故障による破局的エンジン故障という結果になる。これが、非効率な使用方法、不必要なダウンタイム、及び運転費の大幅な増加を招く。
【0006】
現在、ガスタービン産業の取り組み方はガス路温度の測定に依存しており、エンジンの種別に関する経験及び履歴に基づいて、特定の部品の問題へと遡っていく手法である。この取り組み方は非常に主観的であり、エンジンの既にある過酷な状態しか判定することができない。これは、切迫した損傷の指標を提供せず、部品の劣化又は故障によりエンジンの損傷へと徐々に至り、これを引き起こす事象の進行に対する見通しも提供しない。
【0007】
蒸気タービン内でブレード又はベーンのような部品に計装するには通常、ブレードエアフォイルまで続くリード線をはずみ車に配置することが含まれる。リード線は通常、エポキシによってまとめられる。これらの線は、部品内からタービン筐体へと経路設定される。熱電対のようなセンサを導入するために、部品の圧力境界を侵害することがあり、熱電対を適所に保持するために、蝋付けを充填し直す。各熱電対センサは、診断ユニットに接続される、部品から出るリード線を有する。この方法でタービンの複数の部品を計測する結果、単一の温度運転状態を監視するためだけに大規模な配線網になる。この技術を使用した部品の計装は費用がかかり、1つのタービン内にある多数の部品の計装にとって障壁となる。更に、リード線及びデータ転送は不良であることが多く、費用がかかる修理及びデータ分析の欠陥という結果になることがある。
【0008】
タービンのガス路内の温度測定に熱電対を使用すると不利なことがある。何故なら、ガス路内で温度変化が生じたというフィードバックを運転者に提供するにすぎないからである。温度変化が生じた理由に関しては、いかなる指標も提供されない。測定した温度変化に基づいてブレード又はベーンの問題を診断するには、測定された温度差とベーンの穴のような特定の問題との間に履歴相関がなければならない。この相関は、妥当な確度内まで導出するのは困難で時間がかかり、タービンの運転状態を考慮に入れてエンジンごとに実行する必要がある。温度差を測定する場合、何が問題であるか、又はどこに問題があるのかを予測することは、不可能ではないまでも困難である。その結果、実行すべき修理、交換又は他の保守の範囲を決定するために、通常はタービンを停止し、検査しなければならない。
【0009】
いかなる用途でも、燃焼タービンは通常の運転の一部として様々な保守手順を定期的に受けている。ガスタービンの診断監視システムは一般的に、診断動向を辿るために使用される関連の動向及び欠陥のデータを収集する性能監視機器を含む。診断動向分析では、全体的なガスタービンの性能及び状態の少なくともいずれかを示す特定のプロセスデータ(排気ガスの温度、燃料流量、回転子の速度など)を、ガスタービンのパラメータ基準線と比較する。パラメータ基準線から生の動向データが逸脱した場合、それはすべて保守を必要とする現在又は将来の状態を示す場合がある。このような診断監視システムは、特定の部品状態を予測又は推定することしかできず、特定の部品自体の実際の状態からデータを収集せず、実際の状態に関するいかなる分析も提供しない。
【0010】
この点において、ガスタービンの部品の故障を予測し、保守のスケジュールを設定する従来の方法は、完全には正確でなく、最適化されていない。予知保全に使用される伝統的な「デューティサイクル」は、実際の運転状態、特に設計外の運転を反映しない。ガスタービンの特定部品の実際の寿命は、そのガスタービン及びタービン内の特定部品の実際の使用方に大きく左右される。
【0011】
例えば、タービン内の温度及び応力の上昇、及び攻撃的な環境状態は、標準設計のデューティサイクルで予測された程度を越える過度の磨耗をタービンの部品に引き起こす場合がある。産業用ガスタービンで往々にして経験する設計外の運転状態は、標準的デューティサイクルには反映されない。ガスタービン内にある部品の実際の寿命は、設計のデューティサイクルによる予測より大幅に短い場合がある。あるいは、設計のデューティサイクルで反映された状態に比べて実際のガスタービンが良好な状態を経験した場合、実際の部品の寿命は、設計のデューティサイクルに基づいてスケジュール設定された保守による予測より、実質的に長く続く場合がある。いずれの場合も、予防保守を予測するための標準設計のデューティサイクルモデルは、ガスタービンの部品が経験する実際の摩耗及び剥離を確実には示さない。
【0012】
保守及び部品交換を予測する既知の技術では、熟練専門技術者に頼って、燃焼タービンの運転に関するデータを取得又は解釈する。このような技術では、専門技術者によるそのデータの解釈にばらつきがある。専門技術者はガスタービンから収集した少なくとも運転ログ又はデータを手作業で評価する場合がある。例えば、専門技術者は始動及び停止時間及び出力設定を評価して、ガスタービンが経験するデューティサイクルの数、その頻度、期間及び他の要素を決定する場合もある。また、ガスタービンのデータログが、過度の温度又は応力のような異常状態が存在したことを示した場合、専門技術者は「保守率」を適用して、これら設計外の運転状態の過酷さを数量化する場合もある。
【0013】
これらの技術はいずれも特定の部品又は部品コーティングの実際の状態に関する正確な情報を提供せず、このことが不必要な修理、交換又は保守の実行につながり、運転費の大幅な増加を引き起こすことがある。部品の磨耗、部品コーティングにまたがる熱束流、コーティングの破砕、部品のある区域の歪み、又は部品基材やコーティング内の亀裂形成のような、部品の運転状態を検出するために、遮熱コーティングのような部品コーティング内にセンサを埋め込むなど、部品に直接装着したセンサを組み込んだ監視システム及び方法が現存する。当該システムは、部品の運転状態に関するデータを無線送信する機能を有し、このような運転状態に関してより正確な実時間データを提供することができる。しかし、このような状態ベースの監視/保守システムは、部品又はエンジン寿命予測システム又は方法に組み込まれてこなかった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
次の図面に基づいて本発明を以下に説明する。
図1】本発明の実施形態を適用可能な例示的燃焼タービンの断面図、及び燃焼から部品のデータを収集して分析する例示的監視及び制御システムの図。
図2】複雑なエンジンシステム及びその部品に関する残り耐用寿命の寿命予測を実施するシステム又は方法に含まれるステップを示すフローチャート。
図3A】故障する可能性が最も高いタービンエンジンの部品を識別するヒストグラム。
図3B図3Aで識別された部品の故障モードを識別するヒストグラム。
図4】時間、温度、エンジンの運転サイクル数及びサイクル速度の関数としてコーティングの破砕寿命の予測動向を示す予測曲線。
図5A】時間及び温度の関数として酸化物の成長厚さの動向を示す予測曲線。
図5B】酸化物の厚さ又は酸化物の成長速度の関数としてコーティング減損寿命の動向を示す予測曲線。
図6】エンジン温度の関数としてセンサ出力をプロットしたセンサ較正曲線。
図7A】部品の破砕故障モードによる当該部品の推定耐用寿命を提供する部品寿命曲線。
図7B】部品のコーティング減損(酸化物の成長)故障モードによる当該具品の推定耐用寿命を提供する部品寿命曲線。
図8】部品の相互に異なる推定故障モードを示すエンジン部品寿命図。
図9】列挙した部品に対して判定残り耐用寿命を示すディスプレイ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、当業者なら分かるとおり、発電に使用されるガスタービンなどの例示的燃焼タービン10を示す。本発明の実施形態は、当業者なら分かるように、燃焼タービン10と共に、又は多数の他の運転環境内で、及び様々な目的のために使用することができる。例えば、以下で説明するセンサ及びテレメータ装置の実施形態は、ボイラ、熱交換器及び排気筒の温度及び熱束流を監視し、遮断性能及び劣化を決定し、パイプのファウリングを決定し、振動部品の健全性を評価するために、航空機エンジンに使用することができる。各実施形態は、大型車両の燃焼室の状態を監視し、クランクシャフト、カム、トランスミッション及び差動装置を回転させ、サスペンションとフレームの保全性を決定するために、自動車産業で使用することができる。各実施形態は、砂漠、湿潤と高温のいずれか又は両方の構成で運転されるタンク、携帯用及び他の機器の歪み及び熱束流の測定にも使用することができる。
【0016】
図1を参照すると、燃焼タービン10は、圧縮器12と、少なくとも1つの燃焼器14(破断)と、タービン16とを含む。圧縮器12、燃焼器14及びタービン16は、まとめてガスタービンエンジンと呼ばれ得る。タービン16は、回転中央軸20に固定された複数の回転ブレード18を含む。複数の静止ベーン22がブレード18の間に位置決めされ、ベーン22はブレード18を通り過ぎる空気を案内するような寸法及び構成とされる。ブレード18及びベーン22は通常ニッケル・コバルトから作成され、イットリア安定化ジルコニアのような遮熱コーティング26でコーティングすることができる。同様に、圧縮器12は個々のベーン23の間に位置決めされた複数の回転ブレード19を含む。
【0017】
使用時、空気は圧縮器12を通して引き込まれ、圧縮された後に燃焼器14に向かって送り出される。燃焼器14はその空気を燃料と混合して点火し、作動ガスを生成する。この作動ガスは通常、1300℃より高温である。この気体はタービン16を通って膨張し、ベーン22に従いブレード18を横切って案内される。ガスがタービン16を通過することでブレード18及び軸20を回転させ、この軸20を通して、使用可能な機械的作用が伝達される。燃焼タービン10は、例えば蒸気又は圧縮空気などの冷却剤をブレード18及びベーン22に供給するような寸法及び構成にされた冷却システム(図示せず)も含み得る。
【0018】
ブレード18及びベーン2の運転環境は、高い運転温度に曝され、特に過酷であり、ブレード18及びベーン22に重大な劣化をもたらす場合がある。これは、遮熱コーティング26が破砕するか、又は他の劣化が生じる場合に、特に可能性が高い。本発明の実施形態は、燃焼タービン10の運転中に部品の状態を示すデータを送信するように部品を構成することができるので有利である。例えば、ブレード18,19、ベーン22,23、及びコーティング26は、運転中の各部品の個々の状態を判断して予知保全スケジュールを作成するために直接監視することができる部品固有のデータを送信するように、構成することができる。
【0019】
図1は、本発明の様々な態様に従って使用することができる例示的監視及び制御システム30の概略図も示す。システム30は、アンテナ(Antenna)32と、受信機(Receiver)33と、プロセッサ(Processor)又はCPU34と、データベース(DB)36と、ディスプレイ(Display)38とを含むことができる。プロセッサ34、データベース36及びディスプレイ38は従来のものでよく、アンテナ32及び受信機33は、本発明の各実施形態の機能である性能仕様を有することができる。例えば、アンテナ32及び受信機33は、以下で更に詳細に説明するように、燃焼タービン10全体の様々な位置に配置された複数の送信機から送信される無線テレメータデータを受信するように選択してもよい。
【0020】
本発明の実施形態では、燃焼タービン10内の複数の部品の個々のコーティング内に複数のセンサを埋め込むことができる。別の実施形態では、センサを部品に、特に圧縮器のように部品が遮熱コーティングを必要としない区域に含まれる部品に、表面装着するか又は付着させることができる。例示実施形態のセンサを使用して、少なくとも部品の物理的特徴又は部品のコーティングの特性、更には部品又はコーティングに固有の他の情報に関して、データをシステム30に提供可能である。
【0021】
例えば、例示したセンサを使用して、2つの部品間の磨耗を検出したり、部品のコーティングの熱束流を測定したり、コーティングの破砕を検出したり、部品のある区域の歪みを測定したり、又は、部品又はコーティング内の亀裂形成を測定することができる。当業者であれば、本発明に従い測定及び検出(測定又は検出)することができる部品又は部品コーティングの他の特性や特徴が理解できる。
【0022】
本発明では、様々なセンサ構成をタービン16のブレード18又はベーン22における遮熱コーティング26のような遮熱コーティング内に埋め込めることが理解される。参照することで本明細書の一部をなす、米国特許第6,838,157号、第7,270,890号、第7,368,827号及び第7,618,712号は、本発明の態様に係るセンサを配置するために使用することの可能な、ブレード18,19及びベーン22,23のようなガスタービン部品を計装する方法の様々な形態について説明している。これらの特許は、遮熱コーティング内に溝を形成し、コーティング内にセンサを形成し、コーティングの溝内に裏込め材を配設する様々な方法を開示する。これらの方法及び部品の形態を使用して、本明細書で開示するような高性能部品を形成可能である。
【0023】
参照することで本明細書の一部をなす米国特許第6,576,861号は、本発明の態様に係るセンサ及び送信機に対するセンサコネクタの実施形態を配置するために使用することができる方法及び装置を開示する。この点に関して開示されている方法及び装置は、マスクを使用する必要がない状態で、約100ミクロンと500ミクロンとの間の細かいセンサ又はコネクタ、あるいはセンサ及びコネクタの形体のパターン形成に使用してもよい。導電性材料、抵抗性材料、誘電性材料、絶縁性材料及び他の用途固有の材料を使用して形体を配置することにより、多層電気回路及びセンサを形成してもよい。本発明の態様に従い、他の方法を使用して多層電気回路及びセンサを配置してもよいことが理解される。例えば、低温で吹き付けた材料の付着物の溶射、蒸着、レーザ焼結、及び硬化、更に当業者に既知の他の適切な技術を使用してもよい。
【0024】
本発明の実施形態では、部品に固有又はコーティングに固有の状態を監視し、更に燃焼タービン10の運転又は性能に関する他のデータを収集するために、燃焼タービン10内の多数の場所に複数のセンサ50を配置することができる。例えば、図1は、1つ又は複数のセンサ50をタービン16の1つ又は複数のブレード18の個々の遮熱コーティング26内に埋め込めていることを示す。センサ50は、少なくとも部品固有又はコーティング固有のデータを取得すべき、タービン16の他の部品の遮熱コーティング内に埋め込んでもよいことが理解される。
【0025】
センサ50は、参照することで本明細書の一部をなす米国特許公開2009/0121896及び米国特許出願13/015,765に開示されているような無線テレメータシステムに組み込むことができる。このようなテレメータシステムは、共鳴エネルギー伝達システムのような電力誘導システム又は誘導コイルシステムを使用して、電子データの無線送信用送受信機を組み込んでいる。部品の運転状態を示すことができる電子データ信号を送信するためにセンサ50と電気通信する送受信機を設ける。
【0026】
本発明の実施形態では、ブレード18,19及びベーン22,23のような部品及びタービンエンジン10のこのような部品のコーティングの少なくともいずれかに対応する1つ又は複数の運転状態を示す電子データ信号を受信するために、アンテナ32及び受信機33を含む制御システム30と通信する上記センサ及び無線テレメータシステムを設ける。データベース36は、エンジン10及びエンジンの部品の過去の運転状態に関する履歴データを含めることができる。例えばこのような履歴データは、タービンエンジン10が運転中に受けた様々な負荷、これら各負荷で運転されたタービンエンジン10の時間、経時的な吸排気タービン温度及び圧力、エンジン運転のサイクル数及び各サイクルの速度、を含み得る。エンジン10及びその部品に関するこの履歴データは、エンジン10の状態、部品及び故障モードの発生に影響を及ぼし得る特定の環境パラメータに関するデータも含むことができる。例えば、発電所で使用されるタービンエンジンは、様々な地理的位置に位置する。したがって、周囲温度、湿度及び気圧に関するデータを提供することができる。更に詳細に説明するように、エンジン及び部品の運転状態に関する履歴データをアルゴリズムに入力して、エンジンの複数の部品の残り耐用寿命を決定し、エンジン10の保守スケジュールを効率的かつ正確に決定する。
【0027】
データベース36は、タービンエンジン10の1つ又は複数の運転期間の継続時間にわたる部品の運転状態に関する履歴データを含んでもよい。このような状態には、部品の温度及び部品に広がる流体(空気、排気、蒸気など)の圧力のような遮熱コーティングに対応する状態に関するデータが含まれ得る。他の状態には、基材の振動情報(振動動作の周波数及び振幅データ)、歪み(曲げ/捻れ)のような部品基材に関するものもある。以下で更に詳細に説明するように、これらの運転状態は、エンジン10の特定の部品の残り耐用寿命を推定するためにある期間にわたり連続的に監視され、識別された故障モードと対応付けられる。
【0028】
部品に関する上記履歴データに加えて、エンジンの将来計画される運転パラメータ又は状態に関するデータを提供することができ、これはデータベース36に、又はプロセッサ34によってアクセス可能である使用可能な任意の他のメモリに記憶することができる。履歴エンジンデータに関して以上に示したように、エンジンの将来計画される運転は、エンジン10が運転時に受ける様々な負荷、排気の温度及び圧力、及びこのような状態で運転する時間を指す場合がある。プロセッサ又はCPU34は、エンジン10の1つ又は複数の部品の残り耐用寿命及びエンジンの残り耐用寿命を決定するために、1)エンジンの運転状態に関する履歴データ、2)タービンエンジンの将来計画される運転状態、及び3)以上で言及したセンサ及びテレメータシステムによって提供されるような部品の現運転状態、にアクセスするようにプログラムされるか、又は構成される。この判断に基づき、プロセッサ34は、保守かサービスの少なくともいずれかのためにいつエンジンを停止するか、決定することができる。また、以下に説明する予測寿命曲線を1つ又は複数の寿命予測アルゴリズムに組み込んで、部品及びエンジン10の残り耐用寿命を判定してもよい。
【0029】
図2に示すフローチャートは、残り耐用寿命を予測する状態ベースの監視/保守システム及び方法のステップの概略を示す。このフローにおいて、タービンエンジン10のブレード18,19及びベーン22,23のような部品の運転状態に関する現データを取得するために、上記センサ50及び無線テレメータシステムが使用される。第1ステップ52では、エンジン10の状態を監視する目的で、「寿命制限」部品を、更にこのような部品の故障モードを、識別する。このような部品及び故障モードは、エンジン10及びその部品の修理動向を分析することによって識別してもよい。これは、故障モード影響分析を実行することによって、又はタービンエンジンの修理記録を分析することによって行ってもよい。
【0030】
図3Aを参照すると、エンジン故障を引き起こすことが判明したタービンエンジンの特定の部品が識別される。図示のように、一例として、ブレード及びベーンが、燃焼器、ディスク及びベアリングと比較して最大数の故障の発生源として識別される。特に、この例ではブレードが最大数の故障の発生源であることが判明した。また、図3Bでは、ブレード(又は基材)の歪み、部品基材の溶融、部品の亀裂、遮熱コーティング(TBC)の破砕及びコーティング内の酸化成長によるTBCの減損など、ブレードの様々な故障モードが識別されている。
【0031】
本発明の実施形態では、部品の残り耐用寿命を判断する目的で、ブレード18,19及びベーン22,23の基材に塗布された、ボンディングコートを含む場合も含まない場合もある遮熱コーティングなどのコーティングを、監視する。このようなコーティングは、破砕及びコーティングの減損のような様々な故障モードを有する場合があり、これはコーティング中に酸化物が成長した結果であり得る。このように、部品及びコーティングに対応する運転状態を監視するために、部品に接続した状態で配置された上記センサ50を、コーティング内又はコーティング上に配設する。より詳細には、監視されてコーティングの減損に結びつけられる部品の運転状態は、TBCの温度である。したがって、部品の温度を監視するために熱電対を含む熱束流センサをTBCに配設することができる。また、歪みゲージを基材に取り付けて、静的及び動的振動モードのような状態を監視することができ、これは破砕、亀裂又は歪み故障モードと対応させることができる。
【0032】
第2ステップ54では、各部品及び第1ステップ52で識別された対応する故障モードについて予測される「故障モード率」を生成する。故障モード率又は予測故障モード率とは、部品の1つ又は複数の運転状態の関数として部品の故障モードの推定又は予測発生率と定義することができる。予測故障モード率の例が、図4図5A及び図5Bに示す曲線で表されている。図4を参照すると、破砕による部品の故障の発生率が曲線の点Aにて表され、これは破砕による破局的故障が発生する前に保守を実行すべき部品の閾値寿命を表し得る。
【0033】
図5A及び図5Bには、コーティングの減損による部品の故障モード率が2つの曲線でプロットされている。一般的に、断熱層のコーティング減損は主に、極端な運転温度にてTBC内に経時的に成長する酸化物層の厚さの関数である。したがって、図5Aにおいては、酸化物成長率が、時間及び温度の関数として増加する酸化物の厚さの放物曲線として表される。この酸化物の厚さは、識別される故障モードであるTBCのコーティング減損につながる。コーティングの減損による部品の故障の発生率が曲線上の点Bにて表され、これはコーティングの減損による破局的故障が発生する前に保守を実行すべき部品の閾値寿命を表し得る。
【0034】
故障モードが発生するのがコーティング内であっても基材内であっても、故障モードの発生率は通常、時間及び温度の関数である。すなわち、エンジンが、タービンエンジン内におけるように、極端な温度である期間にわたって運転されることにより、部品の基材又はコーティングは、1つ又は複数の故障モードへに近づいていく。「ベース負荷」エンジンとして運転されるタービンエンジンがあり、このエンジン10は、保守のために停止させるまで長期間にわたって運転される。例えば、このようなエンジンには、保守又はサービスのためにエンジンをシャットダウンするまで3年も運転するものもある。このようなエンジン及び部品では、故障モードの予測は時間及び温度に大きく左右される。しかし、時間及び温度以外の運転状態が故障モードに影響するエンジンもある。具体的には、サイクルとも呼ばれるはるかに短い継続時間、例えば1日又は2日間だけ運転される「ピーク」エンジンと呼ばれるエンジンもある。すなわち、所定の時間にわたってタービンエンジン10が設定数のサイクルだけ運転される。また、サイクル速度も考慮し得る運転状態である。
【0035】
サイクル速度とは、所定の出力でエンジンを運転するのに必要な時間、又はエンジンを停止して周囲温度まで冷却する時間である。サイクル数及びサイクル速度は、TBCとボンディングコートとの間又はTBCと基材との間の、あるいはその両方の境界面に応力を加え、該応力が境界面の亀裂の原因になることがある。そして、この亀裂が破砕につながる。したがって、破砕による部品の予測残り耐用寿命は、時間、温度、サイクル数及びサイクル速度の関数として示される。
【0036】
一実施形態では、上記識別故障モードに最も影響する部品及びエンジンの運転状態を考慮して、ラボラトリテスト及び数学的モデリングのいずれか又は両方を実行する。また、タービンエンジン及びその部品の運転状態に関する履歴データを使用して、これらの予測故障モードを発展させることができる。これは、同様の設計及び性能のタービンのタービンフリート情報に関するデータを調べることによって得ることができる。上述したように、これらの故障モード率を利用して、タービンエンジン部品のコーティング劣化の動向、又は部品の基材の亀裂又は歪みのような他の故障モードを表示することができる。更に、これらの曲線は、部品が故障モードに近づく推定速度に関するデータ、又は故障モードが発生すると予測される時間に関するデータを提供する。
【0037】
上記故障モード率は予測曲線の形態で表されるが、予測故障モード率に関するデータは他の形態又はフォーマットで表すことができる。例えば、故障モード率のデータは、部品(列の1ブレード)及び故障モード(破砕)が発生する推定時間(8,000時間)を識別する1つ又は複数の表を提供するという形式で簡単に表すことができる。
【0038】
ステップ56において、図3A及び図3Bに関する上記故障モードデータ、又は図4図5A及び図5Bに関する故障モード率データを使用して、部品の運転状態を監視するために部品と接続して使用される適切なセンサ50、及び当該センサ50が配置される部品上の位置を、識別することができる。例えば、監視すべき故障モードとして破砕及び酸化物成長速度(コーティングの減損)を選択した場合は、部品又はコーティングの温度を監視するために、遮熱コーティングの熱束流を検出するのに適切なセンサとして熱電対を選択することができる。別の例では、亀裂が対象故障モードである場合は、歪みゲージを選択することができ、部品又はコーティング上に配置して、基材又は遮熱コーティング中の亀裂の存在、深さ、及び方向を検出することができる。また、同様の部品に関する修理データに基づき、部品上にセンサ50を位置決めする際に、故障モードになる可能性が最も高い部品上の位置を識別することができる。
【0039】
適切なセンサ50及び部品上のセンサ50の位置を選択すると、ステップ58において、センサ50を較正する。一実施形態では、図6に示した曲線に現れるようなセンサ較正データが、シミュレートしたタービン運転状態に曝した場合のセンサの出力を示す。具体的には、図6は、様々な温度に曝露した場合の熱電対の出力電圧をプロットしている。このタイプのデータは、異なる供給業者から取得した同じタイプのセンサについてプロットすることができる。このように、計装する部品のセンサ50を同様のセンサで較正する。この方法で、故障モードに対応する運転状態に関するデータを相応に調整して、寿命予測機能のために更に正確なデータを提供することができる。
【0040】
次に、センサ及び無線テレメータシステム(データ取得システム)の製作をステップ60で実行する。上述したように、センサ50及び無線テレメータシステムの部品は、米国特許第6,838,157号、第7,270,890号、第7,368,827号、及び第7,618,712号、そして米国特許公開2009/012189に開示された方法及び材料に従い製作される(これら文献はすべて参照することにより本明細書の一部をなす)。
【0041】
無線テレメータシステム及び制御システム30と連結したセンサ50を有するなどして、運転するように準備されたエンジン10を用い、当エンジンの運転計画を制御システム30に入力する。この計画運転は、タービンエンジン10に対する所要電力出力(すなわち、負荷)及びタービンエンジン10をその負荷で運転する時間に関するデータを含む。このデータには、タービンエンジン10の様々なステージにおける1つ又は複数の推定運転温度など、エンジンの推定運転温度も含むことができる。また、エンジン10の地理的位置に従って変動し得る周囲温度及び気圧のような環境状態も、計画運転を開発する際に考慮することができる。例えば、発電所の環境で長期間にわたって運転する上記の「ベース負荷」エンジンのようなエンジンの所要電力出力は、1年の間に変動し得る。1年間の特定の期間に、電力出力の需要が1年間の他の時よりも大きくなることがある。
【0042】
図2を参照すると、本発明の一実施形態は、エンジン10の動作寿命を制限する可能性があると識別された部品の1つ又は複数の運転状態に関するデータを取得するステップ62を含む。センサ50及び上記無線テレメータシステムを使用して、状態ベースの監視システムは、寿命制限部品の運転状態に関する実時間データを生成することができる。上述したように、このような部品運転状態には、温度、圧力、振動モードデータ、運転時間、サイクル数及びサイクル速度、又は識別故障モードの発生に影響する任意の他の運転状態がある。この現運転状態データを、同じ現運転状態に関する履歴データと組み合わせて使用し、現在の時間間隔における寿命制限部品のうち1つ又は複数の残り耐用寿命を決定することができる。履歴データは、エンジン10の動作寿命にわたって取得され、データベース36に記憶されている部品の現運転状態を表すデータを含む。
【0043】
したがって、ステップ64で、過去のエンジン運転状態に関する情報(履歴データ)を、識別故障モードに対応する現運転状態(ステップ62で取得)に関するデータと共に、寿命予測アルゴリズム及び上記寿命予測モデル(図4図5A及び図5B)に入力し、そして現在の時間間隔で残り耐用寿命を決定するように、プロセッサ34を構成する。この残り耐用寿命の値が図7A及び図7Bに示す曲線で表されている。図7A及び図7Bに関しては、破砕(図7A)及びコーティング減損(図7B)による部品の残り寿命aが、現運転状態を取得したおおよその時間である現時間間隔tに示されている。残り耐用寿命は、寿命制限部品ごとに決定することができ、部品ごとに、各識別故障モードに関して残り耐用寿命を決定することができる。実際には、ディスプレイ38が、所定の部品に関して識別されたすべての故障モード、及び対応する故障モードに従う残り耐用寿命を表す関連時間数を示すことができる。あるいは、ディスプレイ38は、各部品の故障モードに対応する最短の残り寿命値を示すだけの場合もある。
【0044】
データベース36には、識別された各寿命制限部品について、各故障モードに対応する残り耐用寿命の閾値に関するデータも含むことができる。プロセッサ34は、決定された、又は計算された残り耐用寿命がこの閾値より下がった場合、又は閾値より上の所定の範囲内にある場合に、部品及びエンジンのサービス又は保守の可聴的通知及び視覚的通知の少なくともいずれかを送信するように、構成することができる。残り耐用寿命のこの閾値は、図4図5A及び図5Bに示すような故障モードの予測動向から入手することができる。
【0045】
ただし、この閾値は、タービンエンジンフリートデータのようなデータを使用して開発されたモデルに基づいているので、エンジンの実際の運転状態に基づかずに事実上予測される。したがって、他のステップを実行して、より正確な残り耐用寿命を提供することができる。ステップ66では、現在計画され、将来計画される運転状態に関するデータを入力又は提供する。すなわち、エンジン運転中の任意の時にエンジン10について開発される上記計画運転は、電力出力及び温度を含むエンジンの現運転状態、及び将来のためにプログラムされるエンジンの運転状態を含む。本発明の一実施形態では、プロセッサ34は、ステップ66及びステップ68に示すように、現在及び将来計画されるエンジン運転状態に関するデータを寿命予測アルゴリズムに入力して、残り耐用寿命を計算するようにプログラムされる。
【0046】
図7A及び図7Bを参照すると、部品の残り耐用寿命が、現在及び将来のエンジン運転状態を要因として入れた破砕(図7A)及びコーティング減損(図7B)による曲線の形式で表示されている。上述したように、aは、規定された時間間隔にて規定された故障モード(破砕及びコーティング減損)に対応する部品の残り寿命計算値を表す。また、aは、タービンエンジンの始動時間に対して寿命制限時間tに到達する規定された故障モード(破砕の程度又は酸化物の成長によるコーティング減損の量)を表す。したがって、規定された故障モードaにおける残り耐用寿命は、次式のように推定することができる。
Δt=(a−a)/v
式中、vは破砕及びコーティング減損のような規定された故障モードの原因となる重大な運転状態の速度である。
【0047】
本発明の一実施形態では、プロセッサ34は、各識別寿命制限部品の各識別故障モードの残り耐用寿命を決定するように構成される。この情報は、使用可能な任意のフォーマットで表示することができる。例えば、ディスプレイ38はすべての寿命制限部品、及び各故障モードに対応する残り耐用寿命を列挙することができる。あるいは、ディスプレイ38は、1つの部品の残り耐用寿命を表す1つの数字(時間)を示すのみでもよい。この数字は、故障モードについて計算された最短の残り耐用寿命を表す。
【0048】
図8に示すグラフは、エンジン10の運転の任意の時点にて使用して、故障モードの生じる区域を表示することができるエンジン部品寿命チャートを表す。図示のように、バブルA,B,C,D,Eはそれぞれ、時間、温度、サイクル数及びサイクル速度のような運転状態の関数として、故障モードの予想発生区域を表す。このグラフは、将来計画される運転を変化させる、例えば運転温度又は電力出力を調整することにより、又はサイクル数を調整することにより変更することができる。この方法で、部品の残り耐用寿命を必要に応じて延長することができる。
【0049】
別のディスプレイが図9に示され、これは、様々な寿命制限部品を識別し、入力機構72,74,76を提供する。図示のように、部品ごとに残り耐用寿命が時間数で表示され、該時間数は故障モードに対応する最短の残り耐用寿命を表す。入力機構72,74,76によって、使用者は将来計画される運転の運転状態を調整することができ、プロセッサ34は、各部品の残り耐用寿命計算値及び各部品の各故障モードを調整するように構成される。これは、部品及びエンジン10の寿命を延長するために実行することができる。いずれの実施形態でも、図2のステップ70において、過去の部品の運転状態、現在の運転状態、及び将来計画される運転に基づいて計算された残り耐用寿命を与える保守のために、エンジン10をいつ停止するかについて、より多くの情報に基づく判断をすることができる。
【0050】
本発明の様々な実施形態について本明細書で示し、説明してきたが、これら実施形態が例示としてのみ提供されていることは明白である。ここに開示した本発明から逸脱することなく、多数の派生、変更及び置換が可能である。したがって、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9