(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱昇温機と前記第2の加圧成形機とをこれら機能を一体的に組み込んだ加熱加圧成形機から形成するとともに、加熱加圧成形機を複数台の加熱加圧成形子機から形成しかつ各加熱加圧成形子機をサイクル毎に選択順次動作可能に形成されている請求項4記載の混合粉末の高密度成形装置。
前記第1の加圧成形機で成形された前記混合粉末中間圧縮体を前記加熱昇温機に移送し、前記加熱昇温機で加熱された前記混合粉末中間圧縮体を前記第2の加圧成形機まで移送し、かつ前記第2の加圧成形機で成形された前記混合粉末完成圧縮体を排出部まで移送するワーク移送装置をさらに有する請求項4記載の混合粉末の高密度成形装置。
【背景技術】
【0002】
一般的に、粉末冶金技術は、金属粉末を加圧(圧縮)して所定形状の圧粉体に成形処理し、次いで圧粉体を当該金属粉末の融点近傍温度に加熱して粒子間結合(固化)を促す焼結処理を行う一連の技術である。これにより、形状複雑で寸法高精度の機械部品を低コストで製造することができる。
【0003】
機械部品の一段の小型軽量化要請に伴い、圧粉体の機械的強度の向上が求められる。他方、圧粉体を高温雰囲気に晒すと磁気特性が劣悪化すると言われている。かくして、例えば、磁心用圧粉体の実際製造に際しては、その後の高温処理(焼結処理)を省略する場合がある。換言すれば、高温処理(焼結処理)をしなくても、機械的強度を高める方法が模索されている。
【0004】
ここに、機械的強度は、圧粉体の密度を高めるにしたがって大幅(双曲線的)に高まるとされている。代表的な高密度化方法としては、金属粉末に潤滑剤を混合させることで摩擦抵抗力の低減を図りつつ加圧成形する方法が提案(例えば、特開平1−219101号公報(特許文献1))されている。一般的には、基金属粉末に約1重量%(1wt%)の潤滑剤を混合した混合粉末を加圧成形する。さらなる高密度化を目指した幾多の提案がされている。これら提案は、潤滑剤自体の改善と、加圧成形・焼結処理に係るプロセスの改善に大別される。
【0005】
前者に属するものとしては、潤滑剤をボール状炭素分子と板状炭素分子を組み合わせた炭素分子複合体とする提案(特開2009−280908号公報(特許文献2))、25℃における針入度が0.3〜10mmである潤滑剤とする提案(特開2010−37632号公報(特許文献3))を挙げることができる。いずれも金属粉末同士、並びに金属粉末と金型との摩擦抵抗力を低減する考え方である。
【0006】
後者に属するものとしては、温間成形・焼結粉末冶金方法(特開平2−156002号公報(特許文献4))、ハンドリング容易化前置温間成形粉末冶金方法(特開2000−87104号公報(特許文献5))、2回プレス−2回焼結粉末冶金方法(特開平4−231404号公報(特許文献6))および1回成形−焼結粉末冶金方法(特開2001−181701号公報(特許文献7))が知られている。
【0007】
最初の温間成形・焼結粉末冶金方法は、固体潤滑剤および液体潤滑剤を混合した金属粉末を予熱することで潤滑剤の一部(または、全部)を溶融させかつ粒子間に潤滑剤を分散させる。これにより、粒子間および粒子・金型間の摩擦抵抗力を下げることで、成形性を向上しようとするものである。ハンドリング容易化前置温間成形粉末冶金方法は、温間成形工程に先立ち混合粉末を加圧してハンドリング可能な低密度(例えば、密度比が76%未満)の一次成形体を成形する一次成形工程を設け、この一次成形体を青熱脆性が生じる温度よりも低温の状態でかつ一次成形体を一旦崩壊しつつ二次成形工程を実施して二次成形体(圧粉体)を得るものである。2回プレス−2回焼結粉末冶金方法は、合金化成分を含む鉄粉末混合物をダイ内で加圧しつつ生の圧縮体を生成し、この圧縮体(圧粉体)を870℃で5分間だけ予備焼結して予備焼結体を生成し、この予備焼結体を加圧することで2回プレス済の予備焼結体を生成し、しかる後に2回プレス済の予備焼結体を1000℃で5分間焼結することにより焼結部品を生成する方法である。最後の1回成形−焼結粉末冶金方法は、金型を予め予熱しかつ内面に潤滑剤を帯電付着しておく、次いでこの金型内に加熱された鉄基粉末混合物(鉄基粉末+潤滑剤粉末)を充填し、所定温度で加圧成形して鉄基粉末成形体となし、次いで鉄基粉末成形体に焼結処理を施し、さらに光輝焼入れを行い、その後に焼き戻し処理を施して鉄基焼結体を製造する方法である。
【0008】
このように、潤滑剤や加圧成形・焼結処理プロセスに関するいずれの改善策でも、圧粉体の密度は最高でも7.4g/cm
3(真密度の94%)程度である。機械的強度が不十分である。さらに、焼結処理(高温雰囲気)を施す場合には、温度・時間に応じて酸化が進むので粉末粒子コーティング状態の潤滑剤が燃焼しかつ残渣が発生する結果、加圧成形後の圧粉体品質の劣化を招くから、製造上の密度は7.3g/cm
3以下となるであろう。しかも、いずれの改善策も、複雑でコスト高となる虞が強い。取扱も面倒で実用性に難点がある。
【0009】
特に、電磁機器(モータやトランス等)用の磁心(磁芯)を圧粉体から作製することを考えると、この程度の密度(7.3g/cm
3以下)では、極めて不満足との指摘が強い。損失(鉄損、ヒステリス損)量を減少し、磁束密度を高くするには圧粉体の一層の高密度化が必要である。例えば、平成21年度粉体粉末冶金協会秋季大会での発表資料(株式会社豊田中央研究所殿提供)からしても、明白である。磁心の密度は、例えば7.5g/cm
3でも、実用的には、磁気的特性のみならず機械的強度も不満足であるとの指摘がある。
【0010】
この磁心用圧粉体の製造に関しては、2回成形−1回焼結(1回焼鈍)粉末冶金方法(特開2002−343657号公報(特許文献8))が提案されている。この提案粉末冶金方法は、磁性金属粉末の表面にシリコーン樹脂と顔料とを含む被膜を形成しておけば、その後に高温処理が施されても絶縁性が低下しないという技術事項を根拠とするものである。すなわち、圧粉磁心の製造方法は、表面がシリコーン樹脂と顔料とを含む被膜で被覆された磁性粉末を予備成形して予備成形体を成形し、この予備成形体に500℃以上の温度で熱処理を施して熱処理体とし、次いでこの熱処理体に圧縮成形を施すことを特徴とする。熱処理用の温度は、500℃以下ではその後の圧縮成形時に破断が生じやすく、1000℃以上では絶縁被膜が分解して絶縁性が焼失するので、500〜1000℃の範囲内とする。この高温処理は、予備成形体の酸化を防止する観点から、真空中、不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中で行われる。かくして、真密度98%(7.7g/cm
3)の圧粉磁心を製造できると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、2回成形−1回焼結粉末冶金方法(特許文献8)は、他の提案方法に比較して、ますます複雑化、個別化されるとともに具現化と実施化が難しく、製造コストの大幅高を招く。また、予備成形体を500℃以上で熱処理することを要件としている。圧粉磁心の品質が劣悪化を防止する意味で格別の雰囲気中で行わなければならないので、大量生産には不向きである。特に、ガラス質被膜被覆磁性金属粉末の場合には、ガラス質が変質・溶解してしまうので、適応できない。
【0012】
また、上記したいずれの提案方法・装置(特許文献1〜8)においても、比較的に高温雰囲気内の焼結処理についての実施可能な記述はあるが、加圧成形工程に関する詳細は定かでない。加圧成形機の仕様・機能、加圧力と密度の関係やその限界に関する分析も新たな改善についての記載は認められない。
【0013】
かくして、小型軽量化に伴う一段の機械的強度が求められる点からも、高密度圧粉体(特に、磁心用高密度圧粉体)を確実・安定かつ低コストで製造できる方法・装置の開発が急務とされている。
【0014】
本発明の目的は、混合粉末に加温を挟んだ2回の加圧形成を施すことにより高密度圧粉体を製造できかつ製造コストを大幅に低減することができる混合粉末の高密度成形方法および高密度成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
圧粉体は焼結冶金技術より製造される慣行ゆえに、加圧成形された圧粉体を高温雰囲気(例えば、800℃以上)での焼結処理を施すことが必須とされてきた。しかし、焼結用高温処理は、エネルギー消費が大量でコスト負担が膨大であるばかりか地球的環境保全上も弊害が大きいので、見直す必要がある。
【0016】
また、従来、加圧成形処理は混合粉末を具体的形態として確立するものであり、高温焼結処理の前段階(予備)的な機械的処理として考えられ、そのように取り扱われてきた。しかるに、電磁機器(モータ、トランス等)に供される磁心用圧粉体を製造する場合に限り、例外的に、焼結用高温処理を省略しているのが実状である。高温処理した場合の弊害(磁気特性の劣悪化)を回避するためである。つまり、機械的強度に対する不満足を忍従することを余儀なくされていた。機械的強度の不足は、密度の問題であるから、当然として磁気特性も不十分であった。
【0017】
ここに、高温焼結処理をすることなくかつ加圧成形処理のみで圧粉体の高密度成形ができるならば、圧粉体の産業上の利用と普及を飛躍的に向上できる筈である。本発明は、加圧時の潤滑剤の有効性、潤滑剤粉末を含む圧縮限界性、潤滑剤粉末の混合粉末内での空間的占有性、基金属粉末と潤滑剤粉末の空間的配置状態やそれらの挙動性および潤滑剤の最終処分態様についての研究並びに一般的な加圧成形機の特性、圧縮限界性および圧粉体の密度が強度や磁性に及ぼす影響度についての分析に基づき、かつ機器の安全を担保しつつ実際製造サイクルの短縮化を促進できるものとして、創出したものである。
【0018】
すなわち、本発明は、基金属粉末に粉末潤滑剤を混合した混合粉末を第1の金型に充填し、潤滑剤の粉末状態を維持しつつ第1の加圧工程により真密度比が85〜96%の中間圧粉体を成形し、次いで潤滑剤を加熱して液化させることにより中間圧粉体内の潤滑様相の改変をなし、しかる後に第2の加圧工程を施して真密度に近い高密度の完成圧粉体を成形するものである。換言すれば、高温焼結処理を必須とする従来焼結冶金技術から脱した新たな粉末冶金技術(潤滑剤の液化工程を挟んだ2回の加圧成形)の創成に係り、高密度圧粉体を確実に安定してかつ低コストで製造することのできる画期的で実用的な方法と装置を提供するものである。
【0019】
(1)詳しくは、本発明の第1の態様に係る混合粉末の高密度成形方法は、基金属粉末に
融点が90〜190℃の潤滑剤粉末を
混合粉末全量の0.08〜0.23wt%だけ混合した混合粉末を第1の金型に充填し、第1の加圧力を加えて成形可能な混合粉末中間圧縮体の最高密度を100%とした場合において
該第1の金型内で
該混合粉末に当該第1の加圧力を加え
、かつ、該第1の加圧力を加えた状態で潤滑剤が固形状を維持する温度で密度比が85%〜96%の混合粉末中間圧縮体を成形し、
該第1の金型から取出した混合粉末中間圧縮体を加熱
昇温して
該混合粉末中間圧縮体に含まれる潤滑剤粉末を
液化し、
該昇温された混合粉末中間圧縮体を第2の金型にセットし、
該第2の金型内で
該昇温された混合粉末中間圧縮体に第2の加圧力を加えて高密度の混合粉末完成圧縮体を成形する、ことを特徴とする。
【0021】
また、(
2)上記(
1)の発明において、第2の金型を、混合粉末中間圧縮体の受入れ以前に
潤滑剤粉末の融点相当温度に暖機することができる。
【0022】
また、(
3)上記(1
)の発明において、第2の加圧力が第1の加圧力と等しくされている。
【0023】
さらに、(
4)本発明の第2の態様に係る混合粉末の高密度成形装置は、基金属粉末に
融点が90〜190℃の潤滑剤粉末
を混合粉末全量の0.08〜0.23wt%だけ混合した混合粉末を外部に供給可能な混合粉末供給機と、
該混合粉末供給機を用いて第1の金型に充填された混合粉末に第1の加圧力を加え
、かつ、該第1の加圧力を加えた状態で潤滑剤が固形状を維持する温度で、混合粉末中間圧縮体の最高密度を100%とした場合において密度比が85%〜96%の混合粉末中間圧縮体を成形する第1の加圧成形機と、
該第1の金型から取出された混合粉末中間圧縮体
を加熱昇温し該混合粉末中間圧縮体に含まれる潤滑剤粉末
を液化させる加熱昇温機と、
該昇温済の混合粉末中間圧縮体を第2の金型にセットし、該セットされた
該昇温済の混合粉末中間圧縮体に第2の加圧力を加えて高密度の混合粉末完成圧縮体を成形する第2の加圧成形機と、を具
備する。
【0024】
さらにまた、(
5)上記(
4)の発明において、加熱昇温機と第2の加圧成形機とをこれら機能を一体的に組み込んだ加熱加圧成形機から形成し、加熱加圧成形機を複数台の加熱加圧成形子機から形成しかつ各加熱加圧成形子機をサイクル毎に選択順次動作可能に形成されている。
【0025】
(
6)上記(
4)の発明において、前記第2の金型を暖機する暖機装置を有することができる。
【0026】
(
7)上記(
4)の発明において、前記第1の加圧成形機で成形された前記混合粉末中間圧縮体を前記加熱昇温機に移送し、前記加熱昇温機で加熱された前記混合粉末中間圧縮体を前記第2の加圧成形機まで移送し、かつ前記第2の加圧成形機で成形された前記混合粉末完成圧縮体を排出部まで移送するワーク移送装置をさらに有することができる。
【発明の効果】
【0027】
上記(1)の発明によれば、高密度圧粉体を確実・安定して製造できかつ製造コストを大幅に低減することができるとともに、機器の安全を担保しつつ実際製造サイクルの短縮化を促進できる。
また、上記(1)の発明によれば、第1の加圧工程中における潤滑剤の酸化抑制を助長しつつ十分な潤滑作用を担保できる。しかも、潤滑剤の種類に関する選択性が広い。
【0029】
上記(
2)の発明によれば、第2の加圧成形中における溶解済み潤滑剤の全方向への流動性を一段と高められるから、基金属粒子間のみならず粒子と第2の金型との間の摩擦抵抗力を大幅に軽減維持できる。
【0030】
上記(
3)の発明によれば、加圧成形工程の実施およびその取扱いが容易で、間接的に圧粉体の製造コストの一層の低減にも寄与できる。
【0031】
さらに、上記(
4)の発明によれば、上記(1)〜(
3)に係る混合粉末の高密度成形方法を確実に実施することができるとともに具現化が容易で、取扱いが簡単である。
【0032】
さらにまた、上記(
5)の発明によれば、上記(
4)の発明の場合に比較して装置簡素化を図れる。製造ラインの単純化も促進でき、取扱も一段と容易になる。
【0033】
上記(
6)の発明によれば、第2の金型を暖機することによって、完成圧粉体成形開始時点までに混合粉末中間圧縮体の温度が低下する恐れがある場合であっても混合粉末中間
圧縮体を一定の温度範囲内に収めることができるため、良好な成形効果を得ることができる。
【0034】
上記(
7)の発明によれば、ワーク搬送装置を有することによって、第1の加圧成形機から前記加熱昇温機までの間、加熱昇温機から第2の加圧成形機までの間、そして第2の加圧成形機から排出部までの間でワークを確実に移送することができる。
【0035】
なお、上記以外の本発明の構成および効果については、以下の説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
(第1の実施の形態)
本混合粉末の高密度成形装置1は、
図1〜
図5Eに示す如く、混合粉末供給機10と第1の加圧成形機20と加熱昇温機30と第2の加圧成形機40とを具備し、基金属粉末に低融点の潤滑剤粉末を混合した混合粉末100を第1の金型(下型21)に充填する混合粉末充填工程(PR1)、第1の加圧力P1を加えて成形可能な混合粉末中間圧縮体の最高密度を100%とした場合において第1の金型(下型21)内で混合粉末に第1の加圧力P1を加えて密度比が85〜96%の混合粉末中間圧縮体(中間圧粉体110という場合もある。)を成形する中間圧粉体成形工程(PR2)、第1の金型(下型21)から取出された中間圧粉体110を加熱して中間圧粉体110の温度を当該潤滑剤粉末の融点相当温度に積極的に昇温する加熱昇温工程(PR3)、加熱された中間圧粉体110を第2の金型(下型41)内にセットする工程(PR4)および第2の金型(下型41)内で中間圧粉体110に第2の加圧力P2を加えて高密度の混合粉末完成圧縮体(完成圧粉体120という場合もある。)を成形する完成圧粉体成形工程(PR5)からなる本混合粉末の高密度成形方法を安定・確実に実施することができる。
【0039】
本願明細書中でいう混合粉末100とは、基金属粉末と低融点の潤滑剤粉末との混合物を意味する。また、基金属粉末としては、1種の主金属粉末だけからなる場合と、1種の主金属粉末およびこれに1または複数の合金化成分粉末を混合してなる場合とがあるが、いずれの場合も適応できる。低融点とは、基金属粉末の融点(温度)に比較して温度(融点)が著しく低い温度(融点)でかつ基金属粉末の酸化を大幅に抑制できる温度(融点)であることを意味する。
【0040】
高密度成形装置1を示す
図2において、高密度成形ラインの一番左側(上流側)に配置された混合粉末供給機10は、混合粉末100を第1の加圧成形機20の一部を構成する第1の金型(下型21)に供給してそのキャビティ22内に充填する装置である。一定量の混合粉末100を保留する機能および定量供給機能を有し、全体として初期位置(
図2、
図3A、
図3Bに実線で示した位置)と第1の金型(下型21)の上方位置(
図3A、
図3Bに破線で示した位置)との間を選択的に往復移動可能である。
【0041】
第1の金型(下型21)内の何処にも混合粉末100を均一かつ十分に充填させることが重要であるから、混合粉末100はサラサラ状態でなければならない。つまり、第1の金型(下型21)の内部空間(キャビティ22)の形態は製品形態に応じた形態であるから、製品形態が複雑であるいは狭小部分を有する形態であっても、中間圧粉体110の寸法精度保証上、不均一充填や不十分充填は好ましくない。
【0042】
完成圧粉体120(中間圧粉体110)の形態(寸法、形状)は、特に限定されないが、例として
図5A〜
図5Eに示す。
図5Aはリング形状、
図5Bは円柱形状、
図5Cは細長丸軸形状、
図5Dは円板形状で、
図5Eは複雑形状を示す。
【0043】
すなわち、第1の加圧成形機20の上型(上パンチ)25および下型21のキャビティ22は、中間圧粉体110の形態(形状)に対応する形状とされる。中間圧粉体110の形態が例えば
図5A〜
図5E示すものである場合、それぞれに対応した形状となる。中間圧粉体110の形態が
図5Aに示すリング形状の場合は、
図2、
図3A、
図3Bに示す如く上型(上パンチ)25の形状が円環筒形状でかつ下型21の形状が中空円環筒形状となる。
図5Bに示す円柱形状の場合は、上型(上パンチ)25の形状が中実円筒(円柱)形状でかつ下型21の形状が中空円筒形状となる。
図5Cの円板形状、
図5Dの細長丸軸形状の場合も、同様な形態である(但し、深浅の相違はある)。
図5Eに示す複雑形状の場合は、対応する複雑な形状となる。なお、第2の加圧成形機40の上型(上パンチ)45および下型41のキャビティ42についても同様である。
【0044】
ここに、基金属粉末の粒子間の摩擦抵抗力および基金属粉末と金型内面との摩擦抵抗力を軽減するための潤滑剤は、常温においてサラサラ状態の固形状(非常に小さな粒状)つまり粉末であるものを選択する。例えば液状の潤滑剤を採用すると、混合粉末100の粘度が高くかつ流動性が低くなるので、均一充填や十分充填ができない。
【0045】
次いで、常温下の第1の金型(下型21)内でかつ第1の加圧力P1を加えつつ実行される中間圧粉体成形中、潤滑剤は固形状で所定の潤滑作用を安定維持できなければならない。第1の加圧力P1の加圧により多少の温度上昇が生じる場合があったとしても、同様に安定維持されるべきである。
【0046】
一方において、中間圧粉体成形後に実行される加熱昇温工程(PR3)との関係および基金属粉末の酸化抑制の観点から、潤滑剤粉末の融点は当該基金属粉末の融点に比較して非常に低い融点(低融点)とする必要がある。
【0047】
この実施の形態では、潤滑剤粉末の融点は、90〜190℃の温度範囲内に属する低融点として選択されている。下側温度(例えば、90℃)は、中間圧粉体成形中にある程度の温度上昇が発生したとしても、この温度には到達しないであろう値(例えば、70〜80℃)の上限温度(80℃)に対して余裕をもたせた値(90℃)とし、さらに他の金属石鹸の融点(例えば、110℃)に着目して選択してある。つまり、中間圧粉体の加圧成形中に潤滑油粉末が溶解(液化)して流れ出てしまう心配を一掃する。
【0048】
上側温度(例えば、190℃)は、潤滑剤粉末の種類に関する選択性の拡大の観点からは最小値で、特に加熱昇温工程に際する基金属粉末の酸化抑制の観点からは最大値として選択してある。つまり、この温度範囲(90〜190℃)の下側温度と上側温度は、限界値ではなく境界値として理解されたい。
【0049】
かくして、金属石鹸に属する多くの物質(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等)を潤滑剤粉末として選択的に採用することができる。なお、潤滑剤は粉末状態でなければならないので、粘性のある液体のオクチル酸亜鉛等は採用できない。
【0050】
この実施の形態では、融点120℃のステアリン酸亜鉛粉末を潤滑剤粉末として実施した。なお、本発明においては、特許文献7の発明のように加圧成形時の金型温度よりも低い温度(融点)の潤滑剤を用いかつ最初から潤滑剤を溶解(液化)させつつ加圧成形を実行する考え方は否定する。中間圧粉体110の成形終了以前に溶解した潤滑剤が流出してしまったのでは、途中で潤滑不足の部位が発生し易くなることから、十分な加圧成形を確実かつ安定して行えないからである。
【0051】
潤滑剤粉末の量は、試験研究並びに実際生産を通じた経験則から選択した値とする。まず、中間圧粉体成形工程(PR2)との関係では、潤滑剤粉末の量は、混合粉末全量の0.23〜0.08wt%とする。0.08wt%は中間圧粉体110の成形終了まで潤滑作用を担保できる下限的な値であり、0.23wt%は混合粉末100から中間圧粉体110とする際に期待する圧縮比を得るために必要な上限的な値である。
【0052】
次に、生産実務的な潤滑剤粉末の量は、第1の金型(下型21)内で第1の加圧力を加えて成形される中間圧粉体110の真密度比の値並びに第2の金型(下型41)内での発汗現象を担保できるものとして決定すべきである。この際、作業環境の劣悪化を招く金型から外部への液化潤滑剤の液垂れ(液垂れ現象)の発生を防止する観点を見逃してはならない。この実施形態では、中間圧粉体110の真密度比(真密度100%に対する比)の値を80〜90%としたので、潤滑剤粉末の量は、0.2〜0.1wt%としている。上限側値(0.2wt%)は液垂れ現象の発生防止可能とする観点から決め、下限側値(0.1wt%)は過不足のない必要十分な発汗現象の発現可能とする観点から決める。上記従来提案例(1wt%)の場合に比較して極めて少々であり、産業上の利用性を大幅に向上できる。
【0053】
液垂れ現象の発生防止は、実際生産に対しては極めて重要である。机上発案や研究段階では、加圧時の摩擦抵抗の低減化の観点から潤滑剤が不足することを心配するあまりに過分な潤滑剤を混合する傾向にある。例えば7.3g/cm
3を超える高密度化ができるか否かの試行錯誤の段階にあることから、過分な潤滑剤が液状化して金型から流出する事象には全く無関心である。液垂れ現象の認識さえない。つまり、液化潤滑剤の液垂れは、潤滑剤使用料の増大によるコストアップ、作業環境の悪化による生産性の低下や作業者の負担増大を招くので、これを解決しなければ実用性に欠けかつ普及拡大に繋がらない。
【0054】
0.2wt%の混合粉末100を真密度比80%まで圧縮した中間圧粉体110の場合は、加熱昇温工程(PR3)で当該潤滑剤粉末の融点相当温度に積極的に昇温すると、中間圧粉体110内に点在する粉末潤滑剤が溶融して金属粉末粒間の空孔を満たし、次いで金属粉末粒間を通過して中間圧粉体110の表面に一様に液状潤滑剤が染み出る(噴出する)。つまり、発汗現象が誘発される。この中間圧粉体110を第2の金型(下型41)内で第2の加圧力P2を加えて圧縮する際に、基金属粉末とキャビティ内面壁との摩擦抵抗は大幅に低減される。
【0055】
0.1wt%の混合粉末100を真密度比90%まで圧縮した中間圧粉体110の場合も、0.1wt%を超えかつ0.2wt%未満の範囲内の値の混合粉末100を真密度比90%未満かつ80%を超える範囲内の値まで圧縮した中間圧粉体110である場合も、同様な発汗現象を発現できる。液垂れ現象の発生防止もできる。
【0056】
かくして、高密度成形でき、磁気的特性のみならず機械的強度も満たす圧粉体(例えば、磁心)を製造できる、金型破損の虞も一掃できる。しかも、潤滑剤の消費量を大幅に削減でき、第2の金型(下型41)からの液状潤滑剤の垂れ流しがなくなり作業環境が良好となる。全体として生産性向上および圧粉体製造コスト低減ができるから産業上の利用性を格段に向上できる。
【0057】
因みに、上記したいずれの従来方法・装置(特許文献1〜8)にも、潤滑剤の含有率と混合粉末の圧縮率との関係、潤滑剤の多少による液垂れ現象、発汗現象についての認識がない。
【0058】
特に、温間粉末冶金方法(特許文献5)でさえ、ハンドリング容易化のために密度比76%未満の一次成形体を成形する点については理解できるが、高密度成形に関する技術的根拠並びに実施可能な事項は何も開示されていない。いわんや、その後に一旦、一次成形体を崩壊してから二次成形体を成形する点からすれば、一次成形、二次成形の積み上げにより高密度化を図る技術思想を否定することに他ならない。
【0059】
第1の加圧成形機20は、混合粉末供給機10を用いて第1の金型(下型21)に充填された混合粉末100に第1の加圧力P1を加えて混合粉末中間圧縮体(中間圧粉体110)を成形する装置であり、この実施の形態ではプレス機械構造である。
【0060】
図2において、第1の金型装置は、ボルスタ側の下型(ダイス)21とスライド5側の上型(パンチ)25とからなる。下型21のキャビティ22は、
図5Aに示す中間圧粉体110の形態(リング形状)に対応する形状(中空円環筒形状)とされている。すなわち、上型(上パンチ)25は下型21(キャビティ22)内に押込み可能な形態(
図2、
図3A、
図3Bに示す円環筒形状)とされ、スライド5により昇降運動される。キャビティ22の下方には、可動部材23が上下方向に変位可能に嵌装されている。
【0061】
第1の加圧成形機20の上型(上パンチ)25および下型(ダイス)21のキャビティ22は、中間圧粉体110の形態(形状)に対応する形状とされるので、中間圧粉体110の形態が
図5(B)〜(E)示すものである場合も、それぞれに対応した形状となる。なお、第2の加圧成形機40の上型(上パンチ)45および下型41のキャビティ42についても同様である。
【0062】
可動部材23は、グランドレベルGL以下に設けられた貫通穴24を通して突き上がるノックアウトピン(図示省略)によって上方に変位される。つまり、第1の金型[下型21(キャビティ22)]内の中間圧粉体110を、移送レベルHLまで押し上げることができる。外部からみれば、第1の金型(下型21)内の中間圧粉体110を外部(HL)に取出すための第1の取出装置として働く。中間圧粉体110が加熱昇温機30側に移送された後に、可動部材23はノックアウトピンとともに初期位置に戻る。もっとも、他の格別の装置から第1の取出装置を形成してもよい。
【0063】
第1の加圧成形機20における加圧力P(第1の加圧力P1)とこれに対応して得られる中間圧粉体110の密度比(密度ρ)との関係を、
図4を参照して説明する。横軸は加圧力Pを指数で示してある。この実施形態における最大能力(加圧力P)は10Ton/cm
2であり、これを横軸指数100とする。Pbは金型破損圧力で、横軸指数140(14Ton/cm
2)である。縦軸は密度比(密度ρ)を指数で示している。縦軸指数100は真密度比(密度ρ)が97%(7.6g/cm
3)に当たる。
【0064】
この実施の形態では、基金属粉末が磁心用ガラス質絶縁被膜被覆鉄粉末(真密度が7.8g/cm
3)とされ、潤滑剤粉末が0.2〜0.1wt%の範囲内のステアリン酸亜鉛粉末でありかつ第1の加圧力P1が混合粉末中間圧縮体を縦軸指数82〜92[密度ρ(6.24〜7.02g/cm
3)相当]に当たる真密度比80〜90%に圧縮できるものと選択されている。
【0065】
因みに、縦軸指数102は密度ρ(7.75g/cm
3)に当たり、真密度比(密度ρ)は99%に相当する。
【0066】
なお、基金属粉末としては、磁心用鉄系アモルファス粉末(磁心用Fe−Si合金粉末)、磁心用鉄系アモルファス粉末、磁心用Fe−Si合金粉末、機械部品用純鉄粉末等でもよい。
【0067】
第1の加圧力P1を上げて行くと、第1の加圧成形機20で得られる密度ρは、
図4に示す特性A(曲線)に従って高くなる。第1の加圧力P1(横軸指数100)で、密度ρが7.6g/cm
3となる。真密度比は97%である。第1の加圧力P1をこれ以上の値に上昇させても、密度ρの向上は極微である。金型破損の虞が強い。
【0068】
従来は、加圧成形機(プレス機械)の最大能力で加圧して得られた密度ρに満足できない場合には、一段と大型のプレス機械を装備しなければならなかった。しかし、最大能力を例えば1.5倍に大型化しても、密度ρの向上は軽微である。かくして、現在プレス機械で得られるが低い密度ρ(例えば、7.5g/cm
3)で妥協していたのが実状であった。
【0069】
ここに、現在プレス機械をそのまま利用して、縦軸指数100(7.6g/cm
3)から102(7.75g/cm
3)まで向上できることになれば、画期的と理解できる。つまり、密度ρを2%向上できるなら、磁気特性を大幅(双曲線的)に向上できかつ機械的強度をも飛躍的に向上できるからである。しかも、高温雰囲気での焼結処理を一掃化できるので、圧粉体の酸化を大幅に抑える(磁心性能の低下を防止できる)。
【0070】
以上を実現化するために、第1の加圧成形機20で成形した中間圧粉体110を加熱することで潤滑剤の溶解(液化)を促し、しかる後に第2の加圧成形機40で2回目の加圧成形処理を施すように形成されている。第2の加圧成形機40おいて中間圧粉体110を加圧すると、
図4の特性B(直線)に示すように縦軸指数102に相当する高密度(7.75g/cm
3)を達成できる。詳細は、第2の加圧成形機40の説明において、追記する。
【0071】
加熱昇温機30は、第1の金型(下型21)から取出された混合粉末中間圧縮体(中間圧粉体)110を加熱して当該中間圧粉体110の温度を当該潤滑剤粉末の融点相当温度に積極的に昇温する装置である。
図2において、加熱昇温機30は、図示しない温風発生源と、吹付けフード31、排気循環フード33等を含み、金網状保持部材32に位置づけされた中間圧粉体110に温風を吹付けて加熱し、その温度を潤滑剤粉末の融点相当温度(例えば、120℃)に昇温する。
【0072】
この低温加熱処理の技術的意義を第1の加圧成形処理との関係において説明する。下型21(キャビティ22)内に充填された混合粉末100を観察してみると、基金属粉末との関係において潤滑剤粉末の存在が比較的に疎である部分(疎部分)と密である部分(密部分)とが認められる。密部分は、基金属粉末の粒子間の摩擦抵抗力および基金属粉末と金型内面との摩擦抵抗力を小さくできる。疎部分は、これら摩擦抵抗力が大きくなる筈である。
【0073】
第1の加圧成形機20での加圧中、密部分は低摩擦なので圧縮性が勝り、圧縮化進行し易い。疎部分は高摩擦なので圧縮性が劣り、圧縮化が遅れる。いずれにしても、予め設定された第1の加圧力P1の値に応じた圧縮進行困難化現象が発生する。つまり、圧縮限界が生じる。この状態下で金型21から取出した中間圧粉体110の破断面を拡大観察すると、上記密部分であった部分は基金属粉末が一体的様相で圧接されている。しかし、潤滑剤粉末も紛れ込んでいる。疎部分であった部分は、圧接された基金属粉末間に僅かな隙間(空間)が残っている。潤滑剤粉末は殆ど見当たらない。
【0074】
かくして、密部分であった部分から潤滑剤粉末を除去すれば、圧縮可能な隙間が生まれる。疎部分であった部分の隙間に潤滑剤を補給することができれば、その部分の圧縮性を高められる。
【0075】
すなわち、第1の加圧成形終了後の中間圧粉体110を加熱して潤滑剤粉末の融点相当温度(例えば、120℃)に昇温することで、潤滑剤粉末を溶解(液化)させその流動性を高める。密部分であった部分から溶け出した潤滑剤はその周辺に浸み込みかつ疎部分であった部分に補給される。したがって、基金属粉末の粒子間の摩擦抵抗力を小さくでき、潤滑剤粉末が占めていた空間も圧縮できることになるわけである。基金属粉末の粒子と金型内面との摩擦抵抗力も小さくできる。
【0076】
次に、第2の加圧成形機40は、第2の金型(下型41)にセットされた昇温済の中間圧粉体110に、第2の加圧力P2を加えて高密度の完成圧粉体120を成形するための装置である。
【0077】
本実施の形態においては、第2の金型(下型41)の暖機機能を設けている。しかし、昇温済の中間圧粉体110の温度が、第2の金型(下型41)内において第2の加圧力P2を加えた完成圧粉体成形開始時点までに成形に支障が生じない一定の温度範囲内に収まっていれば、第2の金型を暖機しなくても本発明の高密度成形を実施できる。
【0078】
しかし、中間圧粉体110の熱容量が小さい場合、第2の金型までの移送時間や移送経路が長い場合、混合粉末の組成や中間圧粉体110の形態などによって、昇温済の中間圧粉体110が完成圧粉体成形開始時点までに温度低下する虞のある場合には、第2の金型(下型41)を暖機した方が良好な成形効果を得ることができる。後記する第2の暖機装置47は、このために設けられている。
【0079】
なお、この実施形態における第2の加圧成形機40の最大能力(加圧力P)は、第1の加圧成形機20の場合と同じ10Ton/cm
2である。かくして、第1の加圧成形機20と第2の加圧成形機40とは1台のプレス機械として構成され、
図2に示す共通のスライド5で各上型25、45は同期昇降される。この点からも、装置経済が有利で、完成圧粉体120の製造コストを低減できる。
【0080】
図2において、第2の金型装置は、ボルスタ側の下型(ダイス)41とスライド5側の上型(パンチ)45とからなる。下型41のキャビティ42は、下部は完成圧粉体120の形態(リング状形態)に対応する形状(円環筒形状)とされ、上部が中間圧粉体110を受入れ可能に僅かに大きい形態とされている。上型45は下型41(キャビティ42)内に押込み可能な形態とされ、スライド5により昇降運動される。キャビティ42の下方には、可動部材43が上下方向に変位可能に嵌装されている。なお、第2の金型(下型41)と第1の金型(下型21)とは、圧縮対象(中間圧粉体110と完成圧粉体120)との上下方向寸法差に相当する高さ(位置)調整がされている。
【0081】
可動部材43は、グランドレベルGL以下に設けられた貫通穴44を通して突き上がるノックアウトピン(図示省略)によって上方に変位される。つまり、第2の金型[下型41(キャビティ42)]内の完成圧粉体120を、移送レベルHLまで押し上げることができる。外部からみれば、第2の金型[下型41(キャビティ42)]内の完成圧粉体120を外部(HL)に取出すための第2の取出装置として働く。なお、他の格別の装置から第2の取出装置を形成してもよい。完成圧粉体120が排出シュータ59に排出され、加熱昇温機30から新たな中間圧粉体110を受けた後に、可動部材43はノックアウトピンとともに初期位置に戻る。
【0082】
第2の金型(下型41)には、設定温度変更可能な第2の暖機装置47が設けられている。この第2の暖機装置47は、中間圧粉体110を受入れる(セットされる)までに、潤滑剤粉末(ステアリン酸亜鉛)の融点相当温度(例えば、120℃)に第2の金型[下型41(キャビティ42)]を暖める(暖機する)。昇温済の中間圧粉体110を冷やすこと無く受入れることができる。これにより、先に溶解(液化)した潤滑剤の再固形化を防止しつつ潤滑作用を担保することができる。なお、第2の暖機装置47は、この実施の形態では電熱加熱方式(ヒーター)とされているが、温油や温水を循環して暖機する循環方式の加熱装置などでも実施することができる。
【0083】
この意味において、第2の暖機装置47は、完成圧粉体120が加圧成形完了となるまで、加熱可能とされている。かくすれば、加圧成形中における溶解済み潤滑剤の全方向への流動性を一段と高められるから、基金属粒子間のみならず粒子と第2の金型[下型41(キャビティ42)]との間の摩擦抵抗力を大幅に軽減維持できる。
【0084】
これに関連し、この実施の形態では、第1の金型(下型21)を暖機するための図示しない暖機機能を設けている。しかし、昇温加熱工程前に第1の金型(下型21)を暖機して中間圧粉体110を予備昇温しなくても本発明の高密度成形加工は実施できる。
【0085】
しかし、混合粉末の組成や中間圧粉体110の形態が特異的である場合、中間圧粉体110の熱容量が大きい場合、大きな加熱昇温機30を設けられない場合、あるいは作業環境温度が低い場合は、中間圧粉体110の加熱昇温に長時間を費やす虞がある。かかる場合には、第1の金型(下型21)を暖機した方が好ましい。そのため、この実施の形態では、第1の金型を暖機している。
【0086】
すなわち、第1の金型[下型21(キャビティ22)]にも、設定温度変更可能な第1の暖機装置(図示省略)を設け、中間圧粉体110の成形終了後で加熱昇温機30に引き渡す以前に第1の金型(下型21)を暖機して潤滑剤粉末を予熱可能に形成している。そうすることにより、加熱昇温時間を削減でき、生産サイクルの短縮化が実現できる。
【0087】
第2の加圧成形機40における加圧力P(第2の加圧力P2)とこれに対応して得られる完成圧粉体120の密度ρとの関係を、
図4を用いて説明する。
【0088】
第2の加圧成形機40で得られる密度ρは、特性Bに従う。すなわち、第1の加圧成形機20の場合(特性A)とは異なり、第2の加圧力P2を上げて行くに従って次第に密度ρが高まるわけでない。つまり、第1の加圧成形工程における最終の第1の加圧力P1(例えば、横軸指数75あるいは85)を越えるまでは密度ρは高くならない。第2の加圧力P2が最終の第1の加圧力P1を超えると、一気に密度ρが高まる。第2の加圧成形は、あたかも第1の加圧成形を連続的に引き継いで行われるものと理解される。
【0089】
かくして、第1の加圧成形工程において、第1の加圧力P1を何時でも最大能力に対応する値(横軸指数100)まで上昇させた運転をしなくてもよいことになる。つまり、圧縮限界以降に第1の加圧成形を続行した場合の無駄な時間、消費エネルギーを排斥できる。製造コスト低減に繋がる。また、横軸指数100を越える過負荷運転を回避し易くなるので、金型破損の心配がない。全体として、運転取扱いが容易で安全かつ安定運用ができる。
【0090】
ワーク移送装置50は、第1の取出装置(可動部材23、貫通穴24)によって第1の金型(下型21)から取出された中間圧粉体110を加熱昇温機30内の所定位置に移送可能で、昇温後の中間圧粉体110を加熱昇温機30から第2の金型(下型41)まで移送可能で、第2の取出装置(可動部材43、貫通穴44)によって第2の金型から取出された完成圧粉体120を高密度成形装置1外へ排出する排出部、例えば、排出シュータ59に移送可能に形成されている。ワーク移送装置50は、第1の加圧成形機20から加熱昇温機30までの間、加熱昇温機30から第2の加圧成形機40までの間、そして第2の加圧成形機40から排出シュータ59までの間でワークを確実に移送することができる。
【0091】
この実施の形態のワーク移送装置50は、
図3Bに示す同期運転される3つの送りバー51、52、53から構成されている。送りバー51、52、53は、移送要求時に
図3Aの紙面奥行き側から手前
図3Bの移送ラインに進行され、左から右へ移動させた後に元の位置に退行する。セット装置(送りバー52、可動部材43、貫通穴44)は、昇温された混合粉末中間圧縮体(中間圧粉体110)を該融点相当温度に暖機された第2の金型[下型41(キャビティ42)]にセットする。
【0092】
なお、ワーク移送装置は、2次元あるいは3次元方向に駆動されるフィンガー等を含み、各金型等にワークを順次移送するトランスファー装置などから形成してもよい。
【0093】
ところで、中間工程で潤滑剤を積極的に液状化させる技術導入に関しては、その圧縮特性が独特であることに注意すべきである。つまり、
図4に示す如く、粒状潤滑剤下において第1の加圧力P1を加えて行う中間圧粉体110の圧縮は急峻な立ち上がりかつその後に緩慢となる特性Aに従う。一方、液状潤滑剤下において第2の加圧力P2を加えた行う完成圧粉体120の圧縮は第1の加圧力P1を超えると急激(一気)に立ち上がりかつその後は一定を保つ特性Bに従う。
【0094】
ここに重大な技術事項が内在する。中間圧粉体成形工程(PR2)と完成圧粉体成形工程(PR5)との総合的生産サイクルの短縮化を企図するには、急峻後緩慢な特性Aに従う中間圧粉体成形工程(PR2)において真密度比をある程度まで高めておき、それから急激後一定な特性Bに従う完成圧粉体成形工程(PR5)に引き継ぎさせたいという考え方がある。この考え方によると、緩慢特性時の成形時間が長いと、結果として無駄な時間を費やしたと後悔する場合が生じる。また、金型破損に至る事態を招く虞がある。
【0095】
対して、急峻後緩慢特性Aの急峻特性並びに引き継ぎ後の急激特性Bに着目して、中間圧粉体成形工程(PR2)での真密度比は低く抑えても早急に当該工程を終了させ、速やかに完成圧粉体成形工程(PR5)に引き継ぎさせたいという考え方がある。この考え方によると、無駄時間を最小化できそうである。
【0096】
しかし、これら独特な特性A、Bは、当業者間においても認識不足の感がある。また、製造の実際において、どのようなタイミングで特性Aから特性Bに引き継がせるかの選択設定はオペレータの専権的で恣意的な作業に属すると言える。したがって、中間圧粉体成形工程(PR2)を急速終了させたい一念から、切換えタイミングを早めに選択する場合がある。つまり、圧縮程度をほどほどのところで繰り上げかつ直ちに完成圧粉体成形に移行させる選択がされた場合には、完成圧粉体成形工程(PR5)において、次なる問題が生じ得る。
【0097】
すなわち、中間圧粉体110の圧縮率(密度比)が低いと、相対的に完成圧粉体成形工程(PR5)における圧縮率を大きくしなければならない。これは、完成圧粉体成形に必要とするスライドの下降ストロークが大きくなることを意味する。すると、中間圧粉体110の外周面と第2の金型のキャビティ42の内壁面との上下方向相対移動量(圧接摺動距離)が、スライドストローク拡大分だけ増大することになる。相対移動量の増大に比例して、両者間の摩擦抵抗力が急増する。つまり、過負荷状態を招来するばかりか、金型破損の虞がある。
【0098】
出願人の幾多の実用化試験研究によると、基金属粉末の種類、潤滑剤の種類や量、第2の金型(下型41)と中間圧粉体110との投入セット時の径方向間隙の値等々のパラメータを勘案しつつ試行した。結果として、第1の加圧力P1を加えて成形可能な混合粉末中間圧縮体(中間圧粉体110)の最高密度を100%とした場合に、第1の金型(下型21)内で混合粉末に第1の加圧力P1を加えて密度比が85%以上に圧縮しておけば、その問題は発生しないという検証を得た。
【0099】
つまり、密度比が80%までは発汗現象を発現できるということとは別に、第2の加圧成形処理中の過負荷状態や金型破損を回避するためには、第1の加圧成形処理を密度比85%未満で終了させてしまう早期タイミング切換えを選択した運用はすべきでない。なお、密度比85%以上ならその問題は発生しないが、目的が金型破損回避の点からすれば、上限側は密度比96%以下とするが好ましい。この密度比96%は制限値ではなく境界値であるから、100%未満として選択してもよい。いずれにしても、密度比85%未満の中間圧粉体110を第2の加圧成形処理に引き渡すべきではない。
【0100】
かかる実施の形態に係る混合粉末の高密度成形装置では、次のような工程により高密度成形方法を実施する。
【0101】
(混合粉末の調達)
基金属粉末(磁心用ガラス質絶縁被膜被覆鉄粉末)と0.2wt%の潤滑剤粉末(ステアリン酸亜鉛粉末)を混合してサラサラ状態の混合粉末100を調達する。所定量だけ混合粉末供給機10に補給する(
図1の工程PR0)。
【0102】
(混合粉末の充填)
所定タイミングにおいて、混合粉末供給機10が
図3Bに示すように所定位置(実線)から補給位置(破線)に移動される。次いで、混合粉末供給機10の供給口が開放され、第1の加圧成形機20の空の下型21(キャビティ22)内に定量の混合粉末100が充填される(
図1の工程PR1)。例えば2秒間で充填できる。充填後に供給口が閉鎖され、混合粉末供給機10は所定位置(実線)に戻る。
【0103】
(中間圧粉体の成形)
図2のスライド5とともに第1の加圧成形機20の上型25が下降して下型21(キャビティ22)内の混合粉末100を第1の加圧力P1で加圧する第1の加圧成形処理が始まる。固形状の潤滑剤は十分な潤滑作用を営む。圧縮された中間圧粉体110の密度ρは、
図4の特性Aにしたがって高くなる。この実施の形態では、第1の加圧力P1が横軸指数(例えば、30)相当の圧力(3.0Ton/cm
2)に到達した場合に第1の加圧成形処理を終了する。横軸指数30は、真密度比が85%に相当し、密度ρは6.63g/cm
3(縦軸指数87相当)まで高まっている。例えば8秒間の加圧成形が終了すると、
図3Aに示すように金型(下型21)内に中間圧粉体110が成形されている(
図1の工程PR2)。その後、スライド5により上型25が上昇する。なお、第2の加圧成形機40では、先の中間圧粉体110に関する第2の加圧成形処理が同期して行われている。
【0104】
(中間圧粉体の取出し)
第1の取出装置(可動部材23)が働き、中間圧粉体110が移送レベルHLに突き上げられる。つまり、下型21から取出される。すると、
図3Bに示すように、ワーク移送装置50が働き、その送りバー51により中間圧粉体110は加熱昇温機30へ向けて移送される。この段階で、可動部材23が下方の初期位置に戻される。移送後の中間圧粉体110は、
図3Aに示す如く金網状保持部材32上に位置決めされている。
【0105】
(加熱昇温)
図3Aにおいて、加熱昇温機30が起動する。吹付けフード31から温風が吹付けられ中間圧粉体110は、潤滑剤粉末の融点相当温度(例えば、120℃)に昇温される(
図1の工程PR3)。つまり、潤滑剤が溶解され、その流動により中間圧粉体110内の潤滑剤分布を均一的に改変する。加熱昇温時間は例えば8〜10秒である。なお、温風は金網状保持部材32、排気循環フード33を通して再循環利用される。
【0106】
(昇温済の中間圧粉体のセット)
昇温された中間圧粉体110は、
図3Bに示すように、ワーク移送装置50(送りバー52)により第2の加圧成形機40へ移送され、下型41の上方に位置決めさられ、下型41(キャビティ42)内の可動部材43上にセットされる(
図1の工程PR4)。
【0107】
(金型の暖機)
第2の加圧成形機40において、起動選択されている場合は、第2の暖機装置47が働く。中間圧粉体110を受入れる(セットされる)以前に、金型[下型41(キャビティ42)]を潤滑剤粉末の融点相当温度(120℃)に暖める。その後に受入れた昇温済み中間圧粉体110内の潤滑剤の再固形化を防止することができる。
【0108】
(完成圧粉体の成形)
図2のスライド5とともに上型45が、
図3Aに示すように下降して下型41(キャビティ42)内の中間圧粉体110を第2の加圧力P2で加圧し始める。液状の潤滑剤が十分な潤滑作用を営む。圧縮された中間圧粉体110の密度ρは、
図4の特性Bにしたがって高くなる。つまり、第2の加圧力P2が横軸指数(例えば、30…加圧力3.0Ton/cm
2)を超えると、真密度比85%に相当する密度ρが6.63g/cm
3から急激に縦軸指数102相当の密度ρ(7.75g/cm
3)に高まる。第2の加圧力P2を横軸指数100(10Ton/cm
2)まで上げると、密度ρ(7.75g/cm
3)は全体的に均一となる。この際の必要スライドストローク(相対移動量)は短いから、過負荷状態や金型破損の虞はない。しかも、加圧成形の進行に伴い潤滑剤が全方向に流出する発汗現象が発生するので、基金属粒子間のみならず粒子と金型との摩擦抵抗力を効率よく軽減できる。例えば、8秒間の第2の加圧成形処理が終了すると、第2の金型(下型41)内に完成圧粉体120が成形されている(
図1の工程PR5)。その後、スライド5により上型45が上昇する。なお、第1の加圧成形機20では、後の中間圧粉体110に関する第1の加圧成形処理が同期して行われている。
【0109】
(製品取り出し)
第2の取出装置(可動部材43)が働き、完成圧粉体120が移送レベルHLに突き上げられる。つまり、下型41から取出される。すると、
図3Bに示すように、ワーク移送装置50が働き、その移送バー53により完成圧粉体120は排出シュータ59に向けて移送される。この段階で、可動部材43が下方の初期位置に戻される。縦軸指数102に当たる密度ρ(7.75g/cm
3)の完成圧粉体120は、潤滑剤粉末が低融点であるからガラス質が変質・溶解することが無い。よって、渦電流損失が小さく、磁束密度を高められる高品質の磁心用圧粉体を能率よく製造することができると理解される。
【0110】
(製造サイクル)
以上の各工程による高密度成形方法によれば、順番に供給充填される金属粉末(混合粉末100)についての第1の加圧成形処理、加熱昇温処理および第2の加圧成形処理を同期実行できるので、最長の加熱昇温処理時間(例えば10秒)にワーク移送時間(例えば、2〜4秒)を加えた12〜14秒のサイクル時間で高密度圧粉体(完成圧粉体120)を製造することができる。従来例における30分以上の高温焼結処理時間だけとの比較においても、製造・生産時間を飛躍的に向上できると理解される。例えば、小型軽量複雑形状で機械的強度の高い自動車用部品や、磁気特性および機械的強度が優れた電磁機器用部品の供給を安定化できそれらの生産コストの低減にも大きく貢献できる。
【0111】
しかして、この実施の形態によれば、基金属粉末に低融点の潤滑剤粉末を混合した混合粉末100を第1の金型(下型21)に充填し、第1の加圧力P1を加えて成形可能な中間圧粉体の最高密度を100%とした場合において第1の金型内で混合粉末に第1の加圧力P1を加えて密度比が85〜96%の中間圧粉体110を成形し、この中間圧粉体110を加熱して潤滑剤粉末の融点相当温度(例えば、120℃)に積極的に昇温し、昇温済み中間圧粉体110を第2の金型(下型41)にセットしかつ第2の金型(下型41)内で第2の加圧力P2を加えて完成圧粉体120を成形する高密度成形方法であるから、高密度圧粉体を確実・安定して製造できかつ製造コストを大幅に低減することができる。また、機器(金型等)の安全を担保しつつ実際製造サイクルの短縮化を促進できる。
【0112】
また、高温で長時間の焼結処理を一掃することができるので、圧粉体110、120の酸化を大幅抑制できるばかりか、エネルギー消費の極限化および製造コストの大幅削減化を達成できる。地球的環境保全上も歓迎される。
【0113】
また、潤滑剤粉末の融点が90〜190℃の温度範囲内に属する低融点であるから、酸化抑制を助長しつつ潤滑剤の選択性を拡大できる。
【0114】
また、第2の暖機装置47により第2の金型(下型41)を暖機するので、第2の加圧成形中における溶解済み潤滑剤の全方向への流動性を一段と高められる。つまり、基金属粒子間のみならず粒子と第2の金型(下型41)との間の摩擦抵抗力を大幅に軽減維持できる。
【0115】
また、第2の加圧力P2を第1の加圧力P1と等しい値とすることができるから、加圧成形工程の実施およびその取扱いが容易で、間接的に圧粉体の製造コストの一層の低減にも寄与できるとともに、装置具現化に際しては例えば1台のプレス機械をベースとして簡単に構築することができる。
【0116】
また、基金属粉末を磁心用ガラス質絶縁被膜被覆鉄粉末から磁心用鉄系アモルファス粉末、磁心用Fe−Si合金粉末のいずれに変更しても、他の条件を同一としても、基金属粉末の種類に対応する優れた磁気特性を有する磁心部品を能率よくかつ安定して製造できる。
【0117】
顧みて、従来装置(例えば、プレス機械)の能力(
図4の横軸指数100)では縦軸指数100に相当する密度以上に高めることが不可能であったのに対して、本発明によれば同一装置で縦軸指数102に相当する密度まで高めることができる。この事実は、当該技術分野において画期的なことと賞賛される。
【0118】
さらに、高密度成形装置1が、混合粉末供給機10と第1の加圧成形機20と加熱昇温機30と第2の加圧成形機40とから構成されているので、上記の高密度化方法を確実かつ安定して実施することができる。
【0119】
(第2の実施の形態)
この実施の形態は、
図6に示されている。第1の実施の形態の場合に比較して、混合粉末供給機10および第1の加圧成形機20はそのままとし、加熱昇温機30と第2の加圧成形機40とを一体的に形成したことを特徴とする。
【0120】
すなわち、高密度成形装置は、第1の実施の形態の場合における加熱昇温機30と第2の加圧成形機40とをこれら機能を一体的に組み込んだ加熱加圧成形機70から形成されている。加熱加圧成形機70は、複数台(この実施形態では、2台)の加熱加圧成形子機70A、70Bから形成され、各加熱加圧成形子機70A、70Bは図示しない制御装置によって製造サイクル毎に選択順次動作可能とされている。
【0121】
各加熱加圧成形子機70A、70Bは、基本構造が第1の実施の形態における第2の加圧成形機40に相当するものとされている。また、各加熱加圧成形子機70A、70Bには、第1の実施形態の場合における加熱昇温機30および第2の暖機装置47の各機能に対応する複合機能をもたせた複合機能型加熱装置48を設けてある。
【0122】
すなわち、複合機能型加熱装置48は、設定温度切換機能を有する電熱方式とされている。予め(中間圧粉体110を受け入れる以前に)、下型41を潤滑剤融点相当温度(例えば、120℃)に暖機することができる。中間圧粉体110を受け入れた後は、中間圧粉体110の全体を潤滑剤融点相当温度(例えば、120℃)に加熱昇温可能に発熱量を大きく切り換える。加熱部位を選択切換えすることもできる。この加熱昇温終了後に第1の実施の形態における第2の加圧成形機40の場合と同じ第2の加熱成形処理を行う。複合機能型加熱装置48は、第2の加熱成形処理中に中間圧粉体110の温度を潤滑剤融点相当温度(例えば、120℃)以上に保持可能に働く。
【0123】
図6に示すように、各加熱加圧成形子機20、70A、70Bは、独立プレス機械構造とされ、各スライド5、5A、5Bは各機用モータの回転制御によりそれぞれに昇降駆動される。つまり、各加熱加圧成形子機70A、70Bの一方(他方)が加圧成形動作する場合は他方(一方)は予熱であり加圧成形動作はしない。加熱加圧成形機70を製造サイクルタイムとの関係から3台以上の加熱加圧成形子機から形成する場合も同様である。
【0124】
かかる実施の形態の装置では、第1の加圧成形機20で第3番目の中間圧粉体110を加圧成形中に、一方加熱加圧成形子機70A(または、加熱加圧成形子機70B)で第2番目の中間圧粉体110を加熱昇温しかつ他方加熱加圧成形子機70B(または、加熱加圧成形子機70A)で第1番目の中間圧粉体110を完成圧粉体120とするように加圧成形中である。
【0125】
しかして、この実施の形態によれば、加熱加圧成形機70を同一構造の複数台の加熱加圧成形子機70A、70Bから構築すればよいから、第1の実施形態の場合に比較して装置簡素化を図れる。製造ラインの単純化も促進でき、取扱も一段と容易になる。
【0126】
なお、第1の加圧成形機20と加熱加圧成形子機70A(または、加熱加圧成形子機70B)あるいは第1の加圧成形機20および各加熱加圧成形子機70A、70Bを、1台のプレス機械構造として構築することも可能である。