(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合粉末充填位置、加熱昇温位置および引渡中継位置を第1の軸線を中心とする第1の円軌跡上に離隔配置しかつ前記引渡中継位置、完成圧粉体成形位置および製品排出位置を第2の軸線を中心とする第2の円軌跡上に離隔配置し、
前記第1の金型移送装置、加熱前圧粉体移送装置および加熱後圧粉体移送装置が第1の軸線を中心として回動可能な第1の回転テーブルを利用して構築され、
前記第2の金型移送装置、完成圧粉体移送装置および第2の金型戻し移送装置が第2の軸線を中心として回動可能な第2の回転テーブルを利用して構築されている、請求項6記載の高密度成形装置。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0042】
(第1の実施の形態)
本混合粉末の高密度成形装置1は、
図1〜
図6Eに示す如く、混合粉末供給機10とコンテナ23と混合粉末移行装置(下パンチ37)と第1の加圧成形機30と加熱昇温機40と中間圧粉体移行装置(押出ロッド50)と第2の加圧成形機60と製品排出装置70を具備し、
図1(A)に示す混合粉末100をコンテナ23に充填する混合粉末充填工程(PR1)、混合粉末100を第1の金型31に移行する混合粉末移行工程(PR2)、第1の金型31内で混合粉末100に第1の加圧力P1を加えて混合粉末中間圧縮体(中間圧粉体110という場合もある。)を成形する中間圧粉体成形工程(PR3)、成形された中間圧粉体110を加熱してその温度を当該潤滑剤粉末の融点相当温度に積極的に昇温する加熱昇温工程(PR4)、加熱された中間圧粉体110を第2の金型61に移行する中間圧粉体移行工程(PR5)、第2の金型61内で中間圧粉体110に第2の加圧力P2を加えて高密度の混合粉末完成圧縮体(完成圧粉体120という場合もある。)を成形する完成圧粉体成形工程(PR6)および製品排出工程(PR7)からなる本混合粉末の高密度成形方法を、安定・確実に実施することができるように形成されている。
【0043】
また、この実施の形態では、混合粉末充填位置(中間圧粉体成形位置)Z11、加熱昇温位置Z12および引渡中継位置Z13に第1の金型31を移送するための第1の金型移送装置(第1の金型戻し移送装置)81と加熱前圧粉体移送装置82と加熱後圧粉体移送装置83を設け、引渡中継位置Z13(引受中継位置Z21)、完成圧粉体成形位置Z22および製品排出位置Z23に第2の金型61を移送するための第2の金型移送装置91、完成圧粉体移送装置92および第2の金型戻し移送装置93を設けて、金型の迅速かつ円滑な移送を担保する。
【0044】
さらに、第1の金型移送装置81、加熱前圧粉体移送装置82および加熱後圧粉体移送装置83を
図2の第1の回転テーブル80を利用した一体的構造としかつ第2の金型移送装置91、完成圧粉体移送装置92および第2の金型戻し移送装置93を
図2の第2の回転テーブル90を利用して一体的構造とし、究極的構成の簡略化を達成する。
【0045】
本願明細書中でいう混合粉末100とは、基金属粉末と低融点の潤滑剤粉末との混合物を意味する。また、基金属粉末としては、1種の主金属粉末だけからなる場合と、1種の主金属粉末およびこれに1または複数の合金化成分粉末を混合してなる場合とがあるが、いずれの場合も適応できる。低融点とは、基金属粉末の融点(温度)に比較して温度(融点)が著しく低い温度(融点)でかつ基金属粉末の酸化を大幅に抑制できる温度(融点)であることを意味する。
【0046】
高密度成形装置1を示す
図3において、高密度成形ラインの上流側の混合粉末充填位置Z11に配置された混合粉末供給機10は、混合粉末100をコンテナ23に充填する装置である。
図1(A)の混合粉末充填工程(PR1)を実行する際に用いられる。一定量の混合粉末100を保留する機能および定量供給機能を有し、全体として初期位置(
図2、
図3で左方向の図示しない位置)とコンテナ装置20との間を選択的に往復移送可能である。
【0047】
コンテナ装置20は、上部にストッパー22を有する中空円筒形状の本体21と、下部にストッパー25を有しかつ中心に中空円筒形状のコンテナキャビティ24を有するコンテナ23と、コンテナ23を上方に向けて付勢するバネ26とからなり、混合粉末充填位置Z11に位置決めされている。コンテナキャビティ24には、第1の加圧成形機30(第1の金型31)の一部を構成する下パンチ37が摺動自在に嵌装され、コンテナ23との上下方向の相対位置により充填される混合粉末100の充填量が決まる。コンテナ23は、バネ26の付勢力によりストッパー25がストッパー22に制止された状態で
図3(A)に示す上下方向の初期位置に保持される。
【0048】
第1の加圧成形機30の第1の金型31を構成するダイス32のキャビティ33に混合粉末100を直接充填するよりも、一旦コンテナ23(コンテナキャビティ24)に充填してから、キャビティ33内に混合粉末100を移行させる方が、予圧により少々圧縮した状態として大量の混合粉末100を充填することができる。また、混合粉末中間圧縮体110とともに第1の金型31(ダイス32)を引渡中継位置(加熱昇温位置Z12)へ移送することが容易となる。ワーク(圧粉体)のみを第1の金型31から取り出して第2の金型に移送する従来例に比較すれば、構造の大幅な簡素化ができる。予圧は、詳細後記の混合粉末移行装置(下パンチ37)の働きにより与えられる。
【0049】
コンテナ23から第1の金型31(ダイス32)内の何処にも混合粉末100を均一かつ十分に充填させることが重要であるから、混合粉末100はサラサラ状態でなければならない。つまり、第1の金型31(ダイス32)の内部空間(キャビティ33)の形態は、製品形態に応じた形態とする。製品形態が複雑であるいは狭小部分を有する形態であっても、中間圧粉体110の寸法精度保証上、不均一充填や不十分充填は好ましくない。
【0050】
完成圧粉体120(中間圧粉体110)の形態(寸法、形状)は、特に限定されないが、例として
図6A〜
図6Eに示す。
図6Aはリング形状、
図6Bは円柱形状、
図6Cは細長丸軸形状、
図6Dは円板形状で、
図6Eは複雑形状を示す。この実施の形態における中間圧粉体110(完成圧粉体120)は、
図3、
図6Bに示す円柱形状であり、第1の金型31の内部空間(キャビティ33)の形態はこれに対応する形態に仕上げられている。
【0051】
ここに、基金属粉末の大部分を占める基金属粒子間の摩擦抵抗力および基金属粉末と金型内面との摩擦抵抗力を軽減するための潤滑剤は、常温においてサラサラ状態の固形状(非常に小さな粒状)であるものを選択する。例えば液状の潤滑剤を採用すると、混合粉末100の粘度が高くかつ流動性が低くなるので、均一充填や十分充填ができない。
【0052】
次いで、常温下の第1の金型31(キャビティ33)内でかつ第1の加圧力P1を加えつつ実行される中間圧粉体成形中に、潤滑剤は固形状で所定の潤滑作用を安定維持できなければならない。第1の加圧力P1の加圧により多少の温度上昇が生じる場合があったとしても、同様に安定維持されるべきである。
【0053】
一方において、中間圧粉体成形後に選択的に実行される
図1の加熱昇温工程(PR4)との関係および基金属粉末の酸化抑制の観点から、潤滑剤粉末の融点は当該基金属粉末の融点に比較して非常に低い融点(低融点)とする必要がある。
【0054】
潤滑剤粉末の融点は、例えば、90〜190℃の温度範囲内に属する低融点として選択されている。下側温度(90℃)は、中間圧粉体成形中にある程度の温度上昇が発生したとしても、この温度には到達しないであろう値(例えば、70〜80℃)の上限温度(80℃)に対して余裕をもたせた値(例えば、90℃)とし、さらに他の金属石鹸の融点(例えば、110℃)に着目して選択してある。つまり、中間圧粉体110の加圧成形中に潤滑油粉末が溶解(液化)して流れ出てしまう心配を一掃する。
【0055】
上側温度(190℃)は、潤滑剤粉末の種類に関する選択性の拡大の観点からは最小値で、特に加熱昇温工程に際する基金属粉末の酸化抑制の観点からは最大値として選択してある。つまり、この温度範囲(例えば、90〜190℃)の下側温度と上側温度は、限界値ではなく境界値として理解されたい。
【0056】
かくして、金属石鹸に属する多くの物質(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等)を潤滑剤粉末として選択的に採用することができる。なお、潤滑剤は粉末状態でなければならないので、粘性のある液体のオクチル酸亜鉛等は採用できない。
【0057】
この実施の形態では、融点120℃のステアリン酸亜鉛粉末を潤滑剤粉末として実施した。なお、本発明においては、特許文献7の発明のように加圧成形時の金型温度よりも低い温度(融点)の潤滑剤を用いかつ最初から潤滑剤を溶解(液化)させつつ加圧成形を実行する考え方は否定する。中間圧粉体110の成形終了以前に溶解した潤滑剤が流出してしまったのでは、途中で潤滑不足の部位が発生し易くなりことから、十分な加圧成形を確実かつ安定して行えないからである。
【0058】
潤滑剤粉末の量は、試験研究並びに実際生産を通じた経験則から選択した値とする。この実施の形態に係る中間圧粉体成形工程(PR3)との関係では、潤滑剤粉末の量は、混合粉末全量の0.23〜0.08wt%とする。0.08wt%は中間圧粉体110の成形終了まで潤滑作用を担保できる下限的な値であり、0.23wt%は混合粉末100から中間圧粉体110とする際に期待する圧縮比を得るために必要な上限的な値である。
【0059】
次に、生産実務的な潤滑剤粉末の量は、第1の金型31内で第1の加圧力P1を加えて成形される中間圧粉体110の真密度比の値並びに第2の金型内での発汗現象を担保できるものとして決定すべきである。この際、作業環境の劣悪化を招く金型から外部への液化潤滑剤の液垂れ(液垂れ現象)の発生を防止する観点を見逃してはならない。
【0060】
この実施形態では、中間圧粉体110の真密度比(真密度100%に対する比)の値を80〜90%としたので、潤滑剤粉末の量は0.2〜0.1wt%としている。上限側値(0.2wt%)は液垂れ現象の発生防止可能とする観点から決め、下限側値(0.1wt%)は過不足のない必要十分な発汗現象の発現可能とする観点から決める。上記従来提案例(1wt%)の場合に比較して極めて少々であり、産業上の利用性を大幅に向上できる。
【0061】
液垂れ現象の発生防止は、実際生産に対しては極めて重要である。机上発案や研究段階では、加圧時の摩擦抵抗の低減化の観点から潤滑剤が不足することを心配するあまりに過分な潤滑剤を混合する傾向にある。例えば7.3g/cm
3を超える高密度化ができるか否かの試行錯誤の段階にあることから、過分な潤滑剤が液状化して金型から流出する事象には全く無関心である。液垂れ現象の認識さえない。つまり、液化潤滑剤の液垂れは、潤滑剤使用料の増大によるコストアップ、作業環境の悪化による生産性の低下や作業者の負担増大を招くので、これを解決しなければ実用性に欠けかつ普及拡大に繋がらない。
【0062】
0.2wt%の混合粉末100を真密度比80%まで圧縮した中間圧粉体110の場合は、加熱昇温工程(PR3)で当該潤滑剤粉末の融点相当温度に積極的に昇温すると、中間圧粉体110内に点在する粉末潤滑剤が溶融して金属粉末粒間の空孔を満たし、次いで金属粉末粒間を通過して中間圧粉体110の表面に一様に液状潤滑剤が染み出る(噴出する)。つまり、発汗現象が誘発される。この中間圧粉体11を第2の金型内で第2の加圧力P2を加えて圧縮する際に、基金属粉末とキャビティ内面壁との摩擦抵抗は大幅に低減される。
【0063】
0.1wt%の混合粉末100を真密度比90%まで圧縮した中間圧粉体110の場合も、0.1wt%を超えかつ0.2wt%未満の範囲内の値の混合粉末100を真密度比90%未満かつ80%を超える範囲内の値まで圧縮した中間圧粉体110である場合も、同様な発汗現象を発現できる。液垂れ現象の発生防止もできる。
【0064】
かくして、高密度成形ができ、磁気的特性のみならず機械的強度も満たす圧粉体(例えば、磁心)を製造できる、金型破損の虞も一掃できる。しかも、潤滑剤の消費量を大幅に削減でき、金型からの液状潤滑剤の垂れ流しがなくなり作業環境が良好となる。全体として生産性向上および圧粉体製造コスト低減ができるから産業上の利用性を格段に向上できる。
【0065】
因みに、上記したいずれの従来方法・装置(特許文献1〜8)でも、潤滑剤の含有率と混合粉末100の圧縮率との関係、潤滑剤の多少による液垂れ現象、発汗現象の認識がない。特に、温間粉末冶金方法(特許文献5)でさえ、その目的がハンドリング容易化のためか密度比が76%未満の一次成形体を成形する点は理解できる。しかし、高密度成形に関する技術的根拠並びに実施可能な事項は何も開示されていない。いわんや、その後に一旦、一次成形体(中間圧粉体120)を崩壊してから二次成形体(完成圧粉体)を成形する点からすれば、一次成形、二次成形の積み上げにより高密度化を図る技術思想を否定することに他ならない。
【0066】
第1の加圧成形機30は、混合粉末供給機10を用いて第1の金型31(キャビティ33)に供給された混合粉末100に第1の加圧力P1を加えて混合粉末中間圧縮体110を成形する装置であり、この実施の形態ではプレス機械構造である。
【0067】
図3(A)、(B)において、第1の金型31はボルスタ側の下型(ダイス32、下パンチ37)とスライド(図示省略)側の上型(上パンチ36)とからなる。ダイス32のキャビティ33は、上記したように
図5(B)に示す中間圧粉体110の形態(円柱形状)に対応する形状(中空円筒形状)とされている。コンテナキャビティ24の形状に対応する。上パンチ36は、上方のスライド(図示省略)により昇降運動される。上パンチ36の下面は、平面形状でキャビティ33の上方部分を閉塞可能である。つまり、ダイス32の上面の大部分に当接する。
【0068】
なお、第1の加圧成形機30のダイス32のキャビティ33は、中間圧粉体110の形態(形状)に対応する形状とされるので、中間圧粉体110の形態が
図6A、
図6C〜
図6E示すものである場合も、それぞれに対応した形状となる。
図6Aに示すリング形状の場合は、円環筒形状となる。
図6Cに示す細長丸軸形状の場合は
図6Bの円柱形状と同様な形状とするが上下方向に長い。
図6Dに示す円板形状の場合も同様な形状となるが上下方向に短い(薄い)。
図6Eに示す複雑形状の場合は、対応する複雑形状となる。なお、第2の加圧成形機60(第2の金型61)のダイス62のキャビティ63についても同様である。
【0069】
混合粉末移行装置は、コンテナキャビティ内の混合粉末100をコンテナ23に対応位置決めされた第1の金型31のキャビティ33内に移行させる装置で、下パンチ37から構成され、上パンチ36とダイス32との協働により移行動作する。
【0070】
すなわち、
図3(A)において、上パンチ36が下降して第1の回転テーブル80(金型保持部85)に保持されたダイス32の上面に当接する。当該ダイス32を押下げる。ダイス32の下面がコンテナ23の上面に当接しているので、当該コンテナ23を押下げる。下パンチ37の上下方向の位置変化はない。したがって、コンテナキャビティ24内の混合粉末100は、下パンチ37により押上げられて、第1の金型31のダイス32(キャビティ33)内に移行される。この際、コンテナキャビティ24の上下方向寸法の方が、キャビティ33の上下方向寸法よりも大きいから、コンテナキャビティ24内の混合粉末100は予圧効果により予圧縮されながらキャビティ33内に移行される。すなわち、混合粉末移行装置(上パンチ36、下パンチ37)は、コンテナキャビティ24内の混合粉末100をコンテナ23に対応位置決めされた第1の金型31のキャビティ33内に移行させることができる。
【0071】
図3(B)に示す如く、上パンチ36が下方位置(最下限位置)に下降した状態で、下パンチ37との協働により混合粉末100を圧縮した中間圧粉体110を成形することができる。つまり、第1の加圧成形機30として、第1の金型31のキャビティ33内の混合粉末100に第1のパンチ(上パンチ36)から第1の加圧力P1を加えて混合粉末中間圧縮体(中間圧粉体110)を成形する。混合粉末移行装置(下パンチ37)が設けられているので、キャビティ33内に直接充填する場合に比較して、大量の混合粉末100を供給できかつ圧縮移行できるから、中間圧粉体110を高密度化し易い。中間圧粉体110の寸法精度も高い。スライドが上昇すると上パンチ36が
図3(C)に示す上方位置に上昇する。この際、第1の回転テーブル80は、上限位置に上昇する。コンテナ23はバネ26により、
図3(A)に示す元の位置に戻される。
【0072】
第1の加圧成形機30における加圧力P(第1の加圧力P1)とこれに対応して得られる中間圧粉体110の真密度比(密度ρ)との関係を、
図5を参照して説明する。横軸は加圧力Pを指数で示してある。この実施形態における最大能力(加圧力P)は10Ton/cm
2であり、これを横軸指数100とする。Pbは金型破損圧力で、横軸指数140(14Ton/cm
2)である。縦軸は真密度比(密度ρ)を指数で示している。縦軸指数100は真密度比(密度ρ)が97%(7.6g/cm
3)に当たる。
【0073】
この実施の形態では、基金属粉末が磁心用ガラス質絶縁被膜被覆鉄粉末とされ、潤滑剤粉末が0.2〜0.1wt%の範囲内のステアリン酸亜鉛粉末でありかつ第1の加圧力P1が混合粉末中間圧縮体(中間圧粉体110)を縦軸指数82〜92[密度ρ(6.24〜7.02g/cm
3)相当]に当たる真密度比80〜90%に圧縮できるものと選択されている。
【0074】
因みに、縦軸指数102は密度ρ(7.75g/cm
3)に当たり、真密度比(密度ρ)は99%に相当する。
【0075】
なお、基金属粉末としては、磁心用鉄系アモルファス粉末(磁心用Fe−Si合金粉末)、磁心用鉄系アモルファス粉末、磁心用Fe−Si合金粉末、機械部品用純鉄粉末等でもよい。
【0076】
第1の加圧力P1を上げて行くと、第1の加圧成形機30で得られる密度ρは、点線で示す特性A(曲線)に従って高くなる。第1の加圧力P1(横軸指数100)で、密度ρが7.6g/cm
3となる。真密度比は97%である。第1の加圧力P1をこれ以上の値に上昇させても、密度ρの向上は極微である。金型破損の虞が強い。
【0077】
従来は、加圧成形機(プレス機械)の最大能力で加圧して得られた密度ρに満足できない場合には、一段と大型のプレス機械を装備しなければならなかった。しかし、最大能力を例えば1.5倍に大型化しても、密度ρの向上は軽微である。かくして、現在プレス機械で得られるが低い密度ρ(例えば、7.5g/cm
3)で妥協していたのが実状であった。
【0078】
ここに、特に、現在プレス機械をそのまま利用して、縦軸指数100(7.6g/cm
3)から102(7.75g/cm
3)まで向上できることになれば、画期的と理解できる。つまり、密度ρを2%向上できるなら、磁気特性を大幅(双曲線的)に向上できかつ機械的強度をも飛躍的に向上できるからである。しかも、高温雰囲気での焼結処理を一掃化できるので、圧粉体の酸化を大幅に抑える(磁心性能の低下を防止できる)。なお、プレス機能をもつ別個な機械を構築しあるいは流用しても実施することができる。
【0079】
以上を実現化するために、第1の加圧成形機30で成形した中間圧粉体110を加熱することで潤滑剤の溶解(液化)を促し、しかる後に第2の加圧成形機60で2回目の加圧成形処理を施すように形成されている。第2の加圧成形機60おいて中間圧粉体110を加圧すると、
図5に実線で示した特性B(直線)にしたがって高密度化し、縦軸指数102に相当する高密度(7.75g/cm
3)を達成できる。詳細は、第2の加圧成形機60の説明において、追記する。
【0080】
加熱昇温機40は、
図3(D)、(E)を参照し、加熱昇温位置Z12に位置決めされた第1の金型31および混合粉末中間圧縮体(中間圧粉体110)を加熱して中間圧粉体110の温度を融点相当温度に積極的に昇温する装置である。この加熱昇温機40は、上部にストッパー42を有する中空円筒形状の本体41と、下部にストッパー45を有しかつ上部にヒーター47を収容させるための収容部44を有する昇降ロッド43と、昇降ロッド43を上方に向けて付勢するバネ48とからなる。昇降ロッド43は、バネ48の付勢力によりストッパー45がストッパー42に制止された状態で、
図3(D)に示す初期上方位置に保持される。
【0081】
この状態で、収容部44に第1の金型31(ダイス32)が載置(対応位置決め)されると、第1の回転テーブル80が下限位置に下降して
図3(E)の状態となる。すると、ヒーター47がONとされ中間圧粉体110を加熱昇温する。ヒーター47をONするタイミングは設定変更可能である。例えば、
図3(D)に示すように中間圧粉体110が載置されたタイミングでもよい。電力事情や生産サイクル等から許される限りにおいて常時ON状態とすることも可能である。
【0082】
第1の加圧成形機30における低温加熱処理の技術的意義を、第1の加圧成形処理との関係において説明する。第1の金型31(ダイス32)内に充填された混合粉末100を観察してみると、基金属粉末との関係において潤滑剤粉末の存在が比較的に疎である部分(疎部分)と密である部分(密部分)とが認められる。密部分は、基金属粉末の粒子間の摩擦抵抗力および基金属粉末と金型内面との摩擦抵抗力を小さくできる。疎部分は、これら摩擦抵抗力が大きくなる筈である。
【0083】
第1の加圧成形機30での加圧中、密部分は低摩擦なので圧縮性が勝り、圧縮化進行し易い。疎部分は高摩擦なので圧縮性が劣り、圧縮化が遅れる。いずれにしても、予め設定された第1の加圧力P1の値に応じた圧縮進行困難化現象が発生する。つまり、圧縮限界が生じる。この状態下でダイス32から取出した中間圧粉体110の破断面を拡大観察すると、上記密部分であった部分は基金属粉末が一体的様相で圧接されている。しかし、潤滑剤粉末も紛れ込んでいる。疎部分であった部分は、圧接された基金属粉末間に僅かな隙間(空間)が残っている。潤滑剤粉末は殆ど見当たらない。
【0084】
かくして、密部分であった部分から潤滑剤粉末を除去すれば、圧縮可能な隙間が生まれる。疎部分であった部分の隙間に潤滑剤を補給することができれば、その部分の圧縮性を高められる。
【0085】
すなわち、第1の加圧成形終了後の中間圧粉体110を加熱して潤滑剤粉末の融点相当温度(例えば、120℃)に昇温することで、潤滑剤粉末を溶解(液化)させその流動性を高める。密部分であった部分から溶け出した潤滑剤はその周辺に浸み込みかつ疎部分であった部分に補給される。したがって、基金属粉末の粒子間の摩擦抵抗力を小さくでき、潤滑剤粉末が占めていた空間も圧縮できることになるわけである。基金属粉末の粒子と金型内面との摩擦抵抗力も小さくできる。つまり、潤滑剤の液化を促進しつつ第2の加圧成形処理を施す。
【0086】
中間圧粉体移行装置(押出ロッド50)は、第1の金型31(ダイス32)のキャビティ33内の中間圧粉体110を引渡中継位置Z13に位置決めされた第2の金型61(ダイス62)のキャビティ63内に引渡し移行させる装置である。
【0087】
図3(F)、
図4(G)において、中間圧粉体移行装置は、引渡中継位置Z13に位置決めされた押出ロッド50と引渡中継台55から形成され、押出ロッド50は、
図3(F)に示す上限位置と
図4(G)に示す下限位置との間を往復上下動可能である。ロッド径は、
図4(H)に示す上パンチ66の径と同等またはそれよりも多少小さめとすればよい。
【0088】
図3(F)は、第2の金型61が引渡中継台55の上面に対応位置決めされた後に、第1の金型31が上限位置から下限位置に下降して、第2の金型61の上面に載置された場合を示す。この状態下において、押出ロッド50を下降させれば、第1の金型31のキャビティ33内の混合粉末中間圧縮体110を第2の金型61のキャビティ63内に移行させることができる。
【0089】
つまり、
図4(G)に示す引渡中継位置Z13において、中間圧粉体110を第1の金型31から第2の金型61に引き渡すことができる。第2の金型61からみれば、引受中継位置Z21において、中間圧粉体110を第1の金型31から引き受けることになる。つまり、引渡中継位置Z13と引受中継位置Z21とは、同じ位置である。
【0090】
図4(H)に示す第2の加圧成形機60は、第2の金型61にセットされた中間圧粉体110に第2の加圧力P2を加える第2の加圧成形処理を施して高密度の混合粉末完成圧縮体(完成圧粉体120)を成形するための装置である。
【0091】
第2の金型61はボルスタ側の下型(ダイス62、下パンチ相当台67)とスライド(図示省略)側の上型(上パンチ66)とからなり、完成圧粉体成形位置Z22に位置決めされている。ダイス62のキャビティ63の形状は、第1の金型31(ダイス32)のキャビティ33の形状に対応する。つまり、
図5(B)に示す完成圧粉体120の形態(円柱形状)に対応する形状(中空円筒形状)とされている。ダイス62の上部側は、中間圧粉体110を受入れ容易化のためにダイス32の場合に比較して僅かに大きい。
【0092】
図4(H)において、上パンチ66は、上方位置と下方位置との間を昇降運動可能なスライド(図示省略)によりキャビティ内に押し込まれ、中間圧粉体110に第2の加圧力P2を加えて高密度の完成圧粉体120を成形する。この第2の加圧力P2を受ける下パンチ相当台67は、引渡中継台55と同様な構造としたが、
図3(B)に示す下パンチ37を含む同様な構造としてもよい。
【0093】
なお、この実施形態における第2の加圧成形機60の最大能力(加圧力P)は、第1の加圧成形機30の場合と同じ10Ton/cm
2である。かくして、第1の加圧成形機30と第2の加圧成形機60とは1台のプレス機械として構成され、共通のスライドで各金型31、61を同期昇降されるように構築することもできる。この点からも、装置経済が有利で、完成圧粉体120の製造コストを低減できる。
【0094】
第2の加圧成形機60における加圧力(第2の加圧力P2)とこれに対応して得られる完成圧粉体120の密度ρとの関係を、
図5を用いて説明する。
【0095】
第2の加圧成形機60で得られる密度ρは、実線で示す特性Bに従う。すなわち、第1の加圧成形機30の場合[点線で示す特性Aに従う。]とは異なり、第2の加圧力P2を上げて行くに従って次第に密度ρが高まるわけでない。つまり、第1の加圧成形工程(PR3)における最終の第1の加圧力P1(例えば、横軸指数50、75あるいは85)を越えるまでは密度ρは高くならない。第2の加圧力P2が最終の第1の加圧力P1を超えると、一気に密度ρが高まる。第2の加圧成形は、あたかも第1の加圧成形を連続的に引き継いで行われるものと理解される。
【0096】
かくして、第1の加圧成形工程において、第1の加圧力P1を何時でも最大能力に対応する値(横軸指数100)まで上昇させた運転をしなくてもよいことになる。つまり、圧縮限界以降に第1の加圧成形を続行した場合の無駄な時間、消費エネルギーを排斥できる。製造コスト低減に繋がる。また、横軸指数100を越える過負荷運転を回避し易くなるので、金型破損の心配がない。全体として、運転取扱いが容易で安全かつ安定運用ができる。
【0097】
製品排出装置70は、第2の金型61のキャビティ63内の完成圧粉体120を製品排出位置Z23において外部に排出する装置である。
図4(I)において、製品排出装置70は、製品排出位置Z23に対応位置決めされた排出ロッド71と排出台77に組み込まれたシュータ73を含み、排出ロッド71をキャビティ63内に押し込むことで完成圧粉体120を排出することができる。
【0098】
すなわち、排出ロッド71は、図示省略した上限位置と
図4(I)に示す下限位置との間を往復上下動可能である。ロッド径は、
図4(H)に示す上パンチ66の径と同等またはそれよりも多少小さい。第2の金型61が排出台77の上面に対応位置決めされた後に、排出ロッド71を下限位置に下降させれば、第2の金型61を構成するダイス62のキャビティ63内の完成圧粉体120をシュータ73に排出することができる。
【0099】
圧粉体の移送(搬送)方法は、生産サイクルの遅速を決定付けるので、どの方法に決めるかは重要である。また、具体的な構成・構造を如何にするかは、装置経済、取扱・メンテナンス、製造コストに直結するから、これまた重要である。因みに、従来例は、ワークを直線方向に移送(搬送)する場合が多い。
【0100】
この発明においては、2つの回転テーブル80、90を利用した回転移送方式とした。
図2において、混合粉末充填位置Z11、加熱昇温位置Z12および引渡中継位置Z13は、第1の軸線Z1を中心とする第1の円軌跡R1上に離隔配置される。また、引受中継位置Z21、完成圧粉体成形位置Z22および製品排出位置Z23を、第2の軸線Z2を中心とする第2の円軌跡R2上に離隔配置する。この実施の形態では、それぞれに3分割等角(120度)配置してある。そして、第1の軸線Z1を中心として回動可能な第1の回転テーブル80と第2の軸線Z2を中心として回動可能な第2の回転テーブル90を利用した移送装置として構築してある。
【0101】
第1の軸線Z1と第2の軸線Z2の間隔は、引渡中継位置(縦軸線)Z13と引受中継位置(縦軸線)Z21とが同じ位置となるように決定される。第1の回転テーブル80は、第1の軸線Z1を中心にDRL(左回り)方向に間欠回転可能で、金型保持部85を混合粉末充填位置Z11、加熱昇温位置Z12および引渡中継位置Z13のいずれにも対応位置決めできかつその位置で停止保持することができる。
【0102】
第1の回転テーブル80は、上限位置と下限位置との間を昇降可能でかつ上限位置および下限位置のいずれの位置にも停止保持可能である。上限位置とは、
図3(A)、(C)、(D)および(F)に示した状態となる位置であり、下限位置とは、
図3(B)、(E)、(F)および
図4(G)に示した状態となる位置である。また、第1の回転テーブル80は、
図3(D)、(E)に示すバネ48の付勢力に抗して昇降ロッド43を下限位置に下降させる押下力を発生する。
【0103】
図2において、第1の回転テーブル80は移送駆動軸87(回転駆動軸88、昇降軸89)で支持されている。回転駆動軸88はサーボモータで回転角度制御され、第1の回転テーブル80を設定角度に停止保持可能であるから、金型保持部85を各位置Z11、Z12、Z13に正確に対応位置決めすることができる。この回転駆動軸88にスプライン連結された昇降軸89は、シリンダ装置により選択的に上限位置および下限位置のいずれかに第1の回転テーブル80を昇降させて対応位置決めすることができる。金型保持部85には第1の金型31(ダイス32)が取り付けられる。
【0104】
第2の回転テーブル90は、第2の軸線Z2を中心にDRR(右回り)方向に間欠回転可能で、金型保持部95を引受中継位置Z21、完成圧粉体成形位置Z22および製品排出位置Z23のいずれの位置にも対応位置決めする。また、各位置において停止保持することができる。移送回転軸97は回転駆動専用で、この実施の形態では、昇降機能を持たない。すなわち、第2の回転テーブル90は、
図3(F)および
図4(G)、(H)、(I)に示した状態つまり所定の高さに維持されている。金型保持部95には第2の金型61(ダイス62)が取り付けられる。
【0105】
この実施の形態では、第1の回転テーブル80には、複数(3つ)の金型保持部85が3分割等角(120度)配置され、各金型保持部85に第1の金型31を取り付けられている。同様に、第2の回転テーブル90には、複数(3つ)の金型保持部95が3分割等角(120度)配置され、各金型保持部95に第2の金型61が取り付けられている。
【0106】
なお、いずれの回転テーブル80、90も大径円板を用いて形成されているが、複数の腕木状部材を3分割等角(120度)配置してかつ各腕木状部材を第1、第2の軸線Z1、Z2を中心に同期回転可能に装着した構造としてもよい。
【0107】
ここに、第1の金型移送装置81、加熱前圧粉体移送装置82および加熱後圧粉体移送装置83は、第1の回転テーブル80(第1の金型移送装置81、加熱前圧粉体移送装置82、加熱後圧粉体移送装置83)を利用して一体的に構築されているものと理解される。各移送装置81、82、83は、第1の回転テーブル80の第1の軸線Z1を中心とするDRL方向の間欠回転を利用して、金型保持部85を第1の円軌跡R1に沿って移送させつつ第1の金型31を移送する。途中に第1の回転テーブル80の昇降が組み合わされる。
【0108】
第1の金型移送装置81は、
図3(F)に示す引渡中継位置Z13に在る第1の金型31を
図3(A)に示す混合粉末充填位置Z11に移送し、混合粉末充填位置Z11に在るコンテナ23に当該第1の金型31を対応位置決めする。途中に、第1の金型31を下限位置から上限位置まで上昇させる。この第1の金型移送装置81は、第1の金型31を引渡中継位置Z13から混合粉末充填位置Z11に戻す機能からすれば、第1の金型戻し移送装置と言ってもよい。
【0109】
加熱前圧粉体移送装置82は、
図3(B)に示す中間圧粉体成形位置(混合粉末充填位置Z11)に位置する第1の金型31を中間圧粉体成形位置(混合粉末充填位置Z11)から
図3(E)に示す加熱昇温位置Z12に移送しかつ当該第1の金型31を加熱昇温位置Z12に対応位置決めする。途中に、第1の金型31は、
図3(B)に示す下限位置から
図3(C)に示す上限位置まで上昇される。次いで、第1の回転テーブル80の回転により、第1の金型31は
図3(D)に示す加熱昇温位置Z12に移送される。そして、第1の金型31は、上限位置にある収容部44に搭載(対応位置決め)され、その後に、昇降ロッド43の下降動作により下限位置に下降される。
【0110】
加熱後圧粉体移送装置83は、混合粉末中間圧縮体110を収容した第1の金型31を
図3(E)に示す加熱昇温位置Z12から
図3(F)に示す引渡中継位置Z13に移送する。第1の回転テーブル80の昇降動作により、途中に、第1の金型31は上限位置まで上昇され、引渡中継位置Z13に対応位置決めされた後に下限位置まで下降させる。
【0111】
また、第2の金型移送装置91、完成圧粉体移送装置92および第2の金型戻し移送装置93は、第2の回転テーブル90(第2の金型移送装置91、完成圧粉体移送装置92、第2の金型戻し移送装置93)を利用して一体的に構築されているものと理解される。各移送装置91、92、93は、第2の回転テーブル90の第2の軸線Z2を中心とするDRR方向の間欠回転を利用して、金型保持部95を第2の円軌跡R2に沿って移送させつつ第2の金型61を移送する。
【0112】
第2の金型移送装置91は、
図4(G)に示す引受中継位置Z21に在りかつ中間圧粉体110を収容した第2の金型61を
図4(H)に示す完成圧粉体成形位置Z22に移送し、完成圧粉体成形位置Z22に在る下パンチ相当台67に対応位置決めする。第2の回転テーブル90は、120°だけ回転による。
【0113】
完成圧粉体移送装置92は、完成圧粉体120を収容した第2の金型61を
図4(H)に示す完成圧粉体成形位置Z22から移送させかつ
図4(I)に示す製品排出位置Z23に当該第2の金型61を対応位置決めする。第2の回転テーブル90は、DRR方向に120°だけ回転による。
【0114】
第2の金型戻し移送装置93は、完成圧粉体120を排出後の第2の金型61を製品排出位置Z23から
図3(F)に示す引受中継位置(製品排出位置Z23)まで移送させて、第2の金型61を当該引受中継位置(製品排出位置Z23)に対応位置決めする。つまり、第2の金型61を次のサイクルに先立ち戻しておく。
【0115】
圧粉体移送装置が、回転テーブル構造でかつ円軌跡に沿って移送する構成とされている。また、圧粉体の引き渡し方式が、
図3(F)、
図4(G)に示すように第1の金型31から第2の金型61へ直接押出して引き渡す方式とされている。このような回転移送・押出引渡方式とすれば、従来搬送方式(ロボットやトランスファー装置を用いて直線一方向にワーク搬送する。)に比較して、ワーク脱落の心配がなく、ワークとスライドや金型との衝突回避問題も解消し易く、迅速で正確な移送ができる。
図3(A)、(B)に示す混合粉末100の引渡しも、同様である。
【0116】
かかる実施の形態に係る混合粉末の高密度成形装置1では、次のような工程により高密度成形方法を実施する。
図1(A)に示す処理工程と、これに対応させて記載された同(B)の移送動作を参照しながら説明する。なお、各工程を示すブロック内にカッコ書きされた符号(例えば、Z22)は、当該工程が実行されている位置(完成圧粉体成形位置)を示す。
【0117】
(混合粉末の調達)
基金属粉末(磁心用ガラス質絶縁被膜被覆鉄粉末)と0.2wt%の潤滑剤粉末(ステアリン酸亜鉛粉末)を混合してサラサラ状態の混合粉末100を調達する。所定量だけ混合粉末供給機10に補給する(
図1の工程PR0)。
【0118】
(混合粉末の充填)
所定タイミングにおいて、混合粉末供給機10が所定位置(図示しない)から
図3(A)に示す補給位置(点線)に移送される。次いで、混合粉末供給機10の供給口が開放され、コンテナ装置20[空のコンテナキャビティ24]内に定量の混合粉末100が充填される(
図1の工程PR1)。例えば2秒間で充填できる。充填後に供給口が閉鎖され、混合粉末供給機10は所定位置に戻る。この際に、第1の金型移送装置81が働き、第1の金型31(ダイス32)は、
図3(F)の状態から
図3(A)の状態に戻される。
【0119】
(混合粉末の移行)
図3(A)に示す状態において上パンチ36を下降させると、第1の金型31が第1の回転テーブル80ごと下降される。上パンチ36は、バネ26の付勢力に打ち勝って第1の金型31およびコンテナ23を押下げる。下パンチ37は所定位置に位置決め固定されているので、コンテナ23内の混合粉末100は予備圧縮されつつ第1の金型31(ダイス32)のキャビティ33内に移行される。つまり、混合粉末移行装置(下パンチ37)が働く。
【0120】
(中間圧粉体の成形)
さらに、上パンチ36が下降してダイス32(キャビティ33)内の混合粉末100を第1の加圧力P1で加圧する。
図3(B)で、第1の加圧成形処理(
図1の工程PR3)が実行される。粉体(固形状)の潤滑剤は十分な潤滑作用を営む。圧縮された中間圧粉体110の密度ρは、
図5の特性A(点線)にしたがって高くなる。第1の加圧力P1が横軸指数(例えば、30)相当の圧力(3.0Ton/cm
2)になると、真密度比が85%つまり密度ρが6.63g/cm
3(縦軸指数87相当)に高まる。例えば8秒間の加圧成形が終了する。成形された中間圧粉体110は、第1の金型31のキャビティ33に留まる。
【0121】
(中間圧粉体の移送)
図3(C)において、加熱前圧粉体移送装置82が働く。上パンチ36が上方位置に上昇された後に、第1の金型31は中間圧粉体110を収容したまま上限位置(上パンチ36の上方位置よりも下の位置)まで上昇される。次いで、第1の金型31および中間圧粉体110を中間圧粉体成形位置(混合粉末充填位置Z11)から
図3(D)に示す加熱昇温位置Z12に移送する。第1の回転テーブル80は、
図2のDRL方向に120°だけ回転する。コンテナ23が次のサイクルに備えて、下限位置から
図3(A)に示す初期位置(上限位置)に戻される。バネ26の付勢力による。第1の金型31は、
図3(D)に示すように、加熱昇温位置Z12でかつ上限位置(第1の金型31の上限位置よりも低い。)に在る加熱昇温機40(収容部44)に対応位置決めされる。引き続き、昇降ロッド43が下降して、第1の金型31を
図3(E)に示す下限位置(加熱位置)に対応位置決めする。
【0122】
(加熱昇温)
図3(E)において、収容部44が下限位置(第1の金型31の下限位置よりも低い。)に下降すると、加熱昇温機40(ヒーター47)が起動する。ダイス32内の中間圧粉体110は、潤滑剤粉末の融点相当温度(例えば、120℃)に昇温される(
図1の工程PR4)。つまり、潤滑剤が溶解され、その流動により中間圧粉体110内の潤滑剤分布を均一的に改変する。加熱昇温時間は、例えば8〜10秒である。ヒーター47の起動タイミングはこれに限定されない。例えば、
図3(D)の状態から、起動開始させてもよい。
【0123】
(昇温済中間圧粉体の引渡・引受け)
加熱昇温が完了すると加熱後圧粉体移送装置83が働く。
図3(E)、(F)に示すように、昇温された中間圧粉体110は、第1の金型31に収容された状態で、加熱昇温位置Z12から引渡中継位置Z13に移送される。つまり、第1の回転テーブル80は、
図2のDRL方向に120°だけ回転する。大気露出状態で移送されることがないので、中間圧粉体110の温度低下は殆ど認められない。そして、第1の金型31(ダイス32)は、引渡中継台55に待機(対応位置決め)された第2の金型61に載置される。すると、中間圧粉体移行装置(押出ロッド50)が働く。つまり、
図4(G)に示す如く、押出ロッド50が
図3(F)の上方位置から下降して、第1の金型31に収容されている昇温済みの中間圧粉体110を第2の金型61内に移行させる(
図1の工程PR5)。移行終了後に、押出ロッド50は上方位置に戻る。
【0124】
(第1の金型の戻し移送)
中間圧粉体110が第1の金型31から第2の金型61に移行終了されると、第1の金型移送装置81が、
図4(G)に示す第1の金型31を
図3(F)の上限位置に上昇させ、引き続き引渡中継位置Z13から
図3(A)に示す混合粉末充填位置Z11に戻す。コンテナ23に対応位置決めするわけである。この際も、第1の回転テーブル80は、DRL方向に120°だけ回転する。
【0125】
(中間圧粉体の移送)
一方、第2の金型移送装置91も働く。
図3(F)の引受中継位置Z21(引渡中継位置Z13)において引き受けた中間圧粉体110を、
図4(G)の引受中継位置Z21から
図4(H)の完成圧粉体成形位置Z22に移送する。中間圧粉体110は、第2の金型61に収容されたままの状態で移送される。第2の回転テーブル90は、
図2に示すDRR方向に120°だけ回転する。
【0126】
(完成圧粉体の成形)
図4(H)において、スライド(図示省略)とともに上パンチ66が上方位置から下降する。下パンチ相当台67は静止状態で第2の加圧力P2を受ける。つまり、ダイス62(キャビティ63)内の昇温済み中間圧粉体110を、第2の加圧力P2で加圧し始める。液状の潤滑剤が十分な潤滑作用を営む。特に、加圧成形の進行に伴い潤滑剤が全方向に流出する発汗現象が発生する。基金属粒子間のみならず粒子と金型との摩擦抵抗力を効率よく軽減できる。圧縮された中間圧粉体110の密度ρは、
図5の特性B(実線)にしたがって高くなる。つまり、第2の加圧力P2が横軸指数(例えば、30…加圧力3.0Ton/cm
2)を超えると、密度ρが6.63g/cm
3から急激に縦軸指数102相当の密度ρ(7.75g/cm
3)に高まる。第2の加圧力P2を横軸指数100(10Ton/cm
2)まで上げると、密度ρ(7.75g/cm
3)は全体的に均一となる。ここで、例えば8秒間の第2の加圧成形処理が終了すると、金型(41)内に完成圧粉体120が成形されている(
図1の工程PR6)。その後、スライドにより上パンチ66は上方位置まで上昇される。縦軸指数102に当たる密度ρ(7.75g/cm
3)の完成圧粉体120は、潤滑剤粉末が低融点であるからガラス質が変質・溶解することが無い。よって、渦電流損失が小さく、磁束密度を高められる高品質の磁心用圧粉体を能率よく製造することができると理解される。
【0127】
(完成圧粉体の移送)
すると、完成圧粉体移送装置92が働き、完成圧粉体120を第2の金型61に収容したままの状態で、
図4(H)の完成圧粉体成形位置Z22から
図4(I)の製品排出位置Z23まで移送する。製品排出位置Z23つまり排出台77に対応位置決めされる。この期間中、排出ロッド71は上方位置に待機している。第2の回転テーブル90は、DRR方向に120°だけ回転する。
【0128】
(製品排出)
製品排出装置70が働く。
図4(I)において、排出ロッド71が上方位置から下降して第2の金型61内の完成圧粉体120を下方のシュータ73に押し出す。製品排出が終了する(
図1の工程PR7)。終了後に、排出ロッド71は上方位置に上昇し待機状態となる。
【0129】
(第2の金型の戻し移送)
第2の金型戻し移送装置93は、第2の金型61を
図4(I)の製品排出位置Z23から
図3(F)の引受中継位置Z21(引渡中継位置Z13)に戻し移送する。第2の回転テーブル90は、DRR方向に120°だけ回転する。途中に昇降動作しないので、迅速な戻し移送ができる。
【0130】
(製造サイクル)
以上の各工程による高密度成形方法によれば、順番に供給充填される金属粉末(混合粉末100)についての第1の加圧成形処理、加熱昇温処理および第2の加圧成形処理を同期実行可能に構築すれば、最長の加熱昇温処理時間(10秒)に圧粉体移送時間(例えば、2〜4秒)を加えた12〜14秒のサイクル時間で高密度圧粉体(完成圧粉体120)を製造することができ得る。つまり、従来例における30分以上の高温焼結処理時間だけとの比較においても、製造・生産時間を飛躍的に向上できると理解される。例えば、小型軽量複雑形状で機械的強度の高い自動車用部品や、磁気特性および機械的強度が優れた電磁機器用部品の供給を安定化できそれらの生産コストの低減にも大きく貢献できる。
【0131】
しかして、この実施の形態によれば、混合粉末100をコンテナ23に充填し、その後に第1の金型31内に移行しかつ第1の加圧力P1を加えて中間圧粉体110を成形し、加熱して潤滑剤粉末の融点相当温度(例えば、120℃)に積極的に昇温され中間圧粉体110を第2の金型61にセットしかつ第2の加圧力P2を加えて完成圧粉体120を成形する高密度成形方法であるから、高密度圧粉体を確実・安定して製造できかつ製造コストを大幅に低減することができるとともに、実際の生産に適応した混合粉末100の充填作業の高効率化および第1の金型31等の小型軽量化に応えられる。
【0132】
また、高温で長時間の焼結処理を一掃することができるので、圧粉体110、120の酸化を大幅抑制できるばかりか、エネルギー消費の極限化および製造コストの大幅削減化を達成できる。地球的環境保全上も歓迎される。
【0133】
また、潤滑剤粉末の融点が90〜190℃の温度範囲内の低融点であるから、第1の加圧工程中における潤滑剤の十分な潤滑作用を担保できる。しかも、酸化抑制を助長しつつ潤滑剤の選択性を拡大できる。
【0134】
第2の金型61が中間圧粉体110の受入れ以前に融点相当温度に暖機可能であるから、第2の加圧成形中における溶解済み潤滑剤の全方向への流動性を一段と高められる。すなわち、基金属粒子間のみならず粒子と第2の金型61との間の摩擦抵抗力を大幅に軽減維持できる。
【0135】
第1の金型31が中間圧粉体110の成形完了後に暖機可能であるから、中間圧粉体110の昇温時間を含む製造サイクルタイムの短縮化を促進できる。
【0136】
また、第2の加圧力P2を第1の加圧力P1と等しい値とすることができるから、加圧成形中における溶解済み潤滑剤の全方向への流動性を一段と高められる。基金属粒子間のみならず粒子と第2の金型61との間の摩擦抵抗力を大幅に軽減維持できる。しかも、加圧成形工程の実施およびその取扱いが容易で、間接的に圧粉体の製造コストの一層の低減にも寄与できるとともに、装置具現化に際しては例えば1台のプレス機械をベースとして簡単に構築することができる。
【0137】
また、基金属粉末を磁心用ガラス質絶縁被膜被覆鉄粉末から磁心用鉄系アモルファス粉末、磁心用Fe−Si合金粉末のいずれに変更しても、他の条件を同一としても、基金属粉末の種類に対応する磁気特性を有する磁心部品を能率よくかつ安定して製造できる。
【0138】
顧みて、従来装置(例えば、プレス機械)の能力(
図5の横軸指数100)では縦軸指数100に相当する密度以上に高めることが不可能であったのに対して、本発明によれば同一装置で縦軸指数102に相当する密度まで高めることができる。この事実は、当該技術分野において画期的なことと賞賛される。
【0139】
さらに、高密度化装置1が、混合粉末供給機10と混合粉末移行装置(下パンチ37)と第1の加圧成形機30と加熱昇温機40と中間圧粉体移行装置(押出ロッド50)と第2の加圧成形機60と製品排出装置70から構成されているので、上記の高密度化方法を確実かつ安定して実施することができ、低コストで具現化できる。取扱いが簡単である。
【0140】
第1の金型31を移送させる第1の金型移送装置81と加熱前圧粉体移送装置82と加熱後圧粉体移送装置83とを設けかつ第2の金型61を移送させる第2の金型移送装置91、完成圧粉体移送装置92および第2の金型戻し移送装置93を設けてあるので、装置簡素化を図ることができかつ圧粉体の迅速かつ円滑な移送ができる。
【0141】
さらにまた、混合粉末充填位置Z11、加熱昇温位置Z12および引渡中継位置Z13を第1の軸線Z1を中心とする第1の円軌跡R1上に離隔配置しかつ引受中継位置Z21、完成圧粉体成形位置Z22および製品排出位置Z23を第2の軸線Z2を中心とする第2の円軌跡R2上に離隔配置するとともに各移送装置81、82、83が第1の軸線Z1を中心として回動可能な第1の回転テーブル80を利用して構築されかつ各移送装置91、92、93が第2の軸線Z2を中心として回動可能な第2の回転テーブル90を利用して構築されているので、一段の装置簡素化を図れる。製造ラインの一層の単純化も促進でき、取扱も一段と容易になる。従来の直線搬送方向に比較すれば、全体として迅速移送化および小型軽量化を達成できる。
【0142】
(第2の実施の形態)
この実施の形態は、
図7、
図8に示されている。基本的構成・機能は第1の実施形態の場合(
図1〜
図6E)と同じとされているが、第2の加圧成形機60を構成する第2の金型61(ダイス62)に第2の暖機装置64を設けてある。さらに、第1の加圧成形機30を構成する第1の金型31(ダイス32)に第1の暖機装置34を設けている。
【0143】
すなわち、第2の金型61を暖機しつつ加熱昇温済み中間圧粉体110の温度低下を防止可能に形成されている。加えて、第1の金型31を暖機しつつ中間圧粉体110の予備加熱を実行可能である。この実施の形態では、第1の暖機装置34および第2の暖機装置64の双方を設けたが、作業温度環境等によってはいずれか一方を設けるようにしてもよい。
【0145】
実施に際し、昇温済の中間圧粉体110の温度が、第2の金型61内において第2の加圧力P2を加えて成形開始する時点までに一定の温度範囲を外れた低温にまで低下していなければ、第2の金型61を暖機しなくても本発明の高密度成形を実施できる。さらに、昇温加熱工程前に第1の金型31を暖機して中間圧粉体110を予備昇温する必要がない場合がある。その場合には、第2の金型61および第1の金型31を暖機するための暖機機能を設けない場合もある。
【0146】
しかし、中間圧粉体110の熱容量が小さい場合、第2の金型61までの移送時間や移送経路が長い場合、混合粉末100の組成や中間圧粉体110の形態などによっては、昇温済の中間圧粉体110が完成圧粉体120の成形開始時点までに温度低下する虞がある。かかる場合には、第2の金型61を暖機した方が好ましい成形効果を得ることができる。
【0147】
図8において、第2の金型61(ダイス62)には、設定温度変更可能な第2の暖機装置(ヒーター)64が設けられている。この第2の暖機装置64は、中間圧粉体110を受入れる(セットされる)までに、潤滑剤粉末(ステアリン酸亜鉛)の融点相当温度(例えば、120℃)に第2の金型61を暖める(暖機する)。昇温済の中間圧粉体110を冷やすこと無く受入れることができる。これにより、先に溶解(液化)した潤滑剤の再固形化を防止しつつ潤滑作用を担保することができる。
【0148】
この暖機工程は、第1の実施形態における完成圧粉体成形工程(PR6)の以前に実行される。この暖機は、完成圧粉体120が加圧成形完了となるまで、加熱可能に形成してある。かくすれば、加圧成形中における溶解済み潤滑剤の全方向への流動性を一段と高められるから、基金属粒子間のみならず粒子と第2の金型61(ダイス62)との間の摩擦抵抗力を大幅に軽減維持できる。
【0149】
また、混合粉末100の組成や中間圧粉体110の形態が特異的である場合、混合粉末中間圧縮体110の熱容量が大きい場合、大きな加熱昇温機を設けられない場合、あるいは作業環境温度が低い場合は、中間圧粉体110の加熱昇温に長時間を費やす虞がある。かかる場合には、第1の金型31を暖機した方が好ましい。そのため、この実施の形態では、第1の金型31を暖機している。
【0150】
そこで、第1の金型31(ダイス32)内に設定温度変更可能な第1の暖機装置(ヒーター)34を内蔵させ、
図7(A)[
図3(A)に対応する。]に示す状態においてヒーターONにより第1の金型31を暖機可能としている。つまり、加熱昇温機40の一部を構成するものとして利用することができる。この先行暖機により加熱昇温機40での加熱時間を削減でき、生産サイクルの短縮化にも有効である。すなわち、
図7(D)、(E)に示すように両ヒーター47、34により外周面および下面から加熱できるから、中間圧粉体110を全体として平均温度でかつ迅速に昇温することができる。
【0151】
この暖機工程は、第1の実施形態における中間圧粉体成形工程(PR3)の終了後に実行される。この実施の形態では、加熱昇温機40に引き渡されるまで、加熱暖機可能に形成してある。
【0152】
なお、第1の暖機装置34および第2の暖機装置64は、この実施の形態では電熱加熱方式(電気ヒーター)としたが、温油や温水を循環して暖機する循環方式の加熱装置などでも実施することができる。
【0153】
しかして、この実施の形態によれば、第1の実施の形態の場合と同様な作用効果を奏することができることに加え、さらに第2の金型61を予め暖機可能に形成されているので、第2の加圧力P2による加圧成形中に溶解潤滑剤の全方向流動性を一段と高められるから、基金属粒子間のみならず粒子と第2の金型61との間の摩擦抵抗力を大幅に軽減維持できる。
【0154】
また、第1の金型31を暖機可能であるから、暖機実行を選択しておけば、加熱昇温機40の負荷を低減できかつ中間圧粉体110を迅速に昇温できる。生産サイクルの短縮化が実現できる。