特許第5881832号(P5881832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881832
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】昇降機制動システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/18 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   B66B5/18 Z
【請求項の数】17
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-534524(P2014-534524)
(86)(22)【出願日】2011年10月7日
(65)【公表番号】特表2014-528392(P2014-528392A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】US2011055222
(87)【国際公開番号】WO2013052059
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2014年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ビラード,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ピエヒ,ズビグニエフ
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−168993(JP,A)
【文献】 特開2008−030884(JP,A)
【文献】 特開2007−284217(JP,A)
【文献】 特表2002−532366(JP,A)
【文献】 特開2004−338830(JP,A)
【文献】 実公昭54−008303(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機システムのための制動システムであって、
昇降機かごに配置され、かつ昇降機システムのレールと摩擦係合可能な2つ以上の制動表面と、
前記2つ以上の制動表面のうちの少なくとも1つの制動表面に動作可能に連結され、かつ前記少なくとも1つの制動表面の、前記レールとの係合および/またはこれからの係脱を促して、前記昇降機システムの動作中に前記昇降機かごを停止および/または保持するように構成された、前記昇降機かごに配置された1つ以上の作動装置と、
制動システムの係合の前に前記2つ以上の制動表面と前記レールとの間の選択された距離を維持するために、前記2つ以上の制動表面のうちの少なくとも1つの制動表面を貫通する1つ以上の制動ガイドと、
を備える、制動システム。
【請求項2】
前記1つ以上の作動装置が、前記少なくとも1つの制動表面と磁気的に相互作用する1つ以上の電気コイルを備える、請求項1に記載の制動システム。
【請求項3】
前記1つ以上の電気コイルが、励磁されると、前記少なくとも1つの制動表面が前記レールから離れるように促すように構成されている、請求項2に記載の制動システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの制動表面を前記レールに対して付勢するための少なくとも1つの付勢部材を含む、請求項1に記載の制動システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの付勢部材が、皿ばねのスタックを備える、請求項4に記載の制動システム。
【請求項6】
前記制動システムを前記昇降機かごに連結するための少なくとも1つの支持体を更に備える、請求項1に記載の制動システム。
【請求項7】
前記制動システムが、前記少なくとも1つの支持体に滑動可能に連結される、請求項6に記載の制動システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの支持体が、少なくとも部分的にコンプライアントな材料から形成される、請求項6に記載の制動システム。
【請求項9】
昇降機システムであって、
昇降路内に固定された1つ以上のレールと、
前記1つ以上のレールに沿って、前記昇降路を通って移動するように構成された昇降機かごと、
前記昇降機かごに固着された1つ以上の制動システムであって、
前記1つ以上のレールと摩擦係合可能な2つ以上の制動表面と、
前記2つ以上の制動表面のうちの少なくとも1つの制動表面に動作可能に連結され、かつ前記少なくとも1つの制動表面の、前記レールとの係合および/またはこれからの係脱を促して、前記昇降機システムの動作中に前記昇降機かごを停止および/または保持するように構成された、1つ以上の作動装置と、
制動システムの係合の前に前記2つ以上の制動表面と前記レールとの間の選択された距離を維持するために、前記2つ以上の制動表面のうちの少なくとも1つの制動表面を貫通する1つ以上の制動ガイドと、を備える、1つ以上の制動システムと、
を備える、昇降機システム。
【請求項10】
前記1つ以上の作動装置が、前記少なくとも1つの制動表面と磁気的に相互作用する1つ以上の電気コイルを備える、請求項9に記載の昇降機システム。
【請求項11】
前記1つ以上の電気コイルが、励磁されると、前記少なくとも1つの制動表面が前記レールから離れるように促すように構成されている、請求項10に記載の昇降機システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの制動表面を前記レールに対して付勢するための少なくとも1つの付勢部材を含む、請求項9に記載の昇降機システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの付勢部材が、皿ばねのスタックを備える、請求項12に記載の昇降機システム。
【請求項14】
前記制動システムを前記昇降機かごに連結するための少なくとも1つの支持体を更に備える、請求項9に記載の昇降機システム。
【請求項15】
前記制動システムが、前記少なくとも1つの支持体に滑動可能に連結される、請求項14に記載の昇降機システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの支持体が、少なくとも部分的にコンプライアントな材料から形成される、請求項14に記載の昇降機システム。
【請求項17】
前記1つ以上の制動システムが、4つの制動システムである、請求項9に記載の昇降機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する主題は、昇降機システムに関する。より詳しくは、主題の開示は、昇降機のための制動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
牽引昇降機システムは、昇降機かごに取り付けられる、一般的にロープまたはベルトである持ち上げ手段を駆動する、マシンと呼ばれる、牽引滑車を有するモーターによって駆動される。この昇降機かごの速度および移動は、個々に設置され、かつ調整される、昇降機システム全体にわたって散在する様々なデバイスによって制御される。例えば、マシンのところのブレーキは、通常動作中には昇降機かごを保持し、非常時動作中は、最初の応答として昇降機かごを停止させ、かつ保持するために用いられる。加えて、昇降機かごに搭載される安全ブレーキは、冗長制動デバイスとして利用されて、非常時の場合に昇降路内でかごを停止させることが可能である。これらの個別のデバイスのすべての設置および設定には、経費および時間がかかる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の1つの態様によれば、昇降機システムのための制動システムは、昇降機かごに位置付けられ、かつ昇降機システムのレールと摩擦係合可能な2つ以上の制動表面を含む。1つ以上の作動装置が、昇降機かごに位置付けられ、2つ以上の制動表面のうちの少なくとも1つの制動表面に動作可能に連結される。この1つ以上の作動装置は、少なくとも1つの制動表面の、レールとの係合および/またはこれからの係脱を促して、昇降機システムの動作中に昇降機かごを停止および/または保持するように構成される。1つ以上の制動ガイドが、2つ以上の制動表面とレールとの間の選択された距離を維持するために、昇降機かごに位置付けられる。
【0004】
これに加えてまたは代替的に、本発明は、個々にまたは様々に組み合わされて、次の特徴のうちの1つ以上を含み得る:少なくとも1つの制動表面と磁気的に相互作用する1つ以上の電気コイルを含む1つ以上の作動装置、励磁されると、少なくとも1つの制動表面がレールから離れるように促すように構成された1つ以上の電気コイル、少なくとも1つの制動表面をレールに向けて付勢する少なくとも1つの付勢部材、皿ばねのスタックを備える少なくとも1つの付勢部材、昇降機かごに制動システムを連結する少なくとも1つの支持体、少なくとも1つの支持体に滑動可能に連結された制動システム、および少なくとも部分的にコンプライアントな材料から形成された少なくとも1つの支持体。
【0005】
本発明の別の態様によれば、昇降機システムは、昇降路内に固定された1つ以上のレールと、前記1つ以上のレールに沿って、昇降路を通って移動するように構成された昇降機かごとを含む。1つ以上の制動システムは、昇降機かごに固着され、かつ1つ以上のレールと摩擦係合可能な2つ以上の制動表面を含む。1つ以上の作動装置は、2つ以上の制動表面のうちの少なくとも1つの制動表面に動作可能に連結される。1つ以上の作動装置は、少なくとも1つの制動表面の、レールとの係合および/またはこれからの係脱を促して、昇降機システムの動作中に昇降機かごを停止および/または保持するように構成される。1つ以上の制動ガイドは、2つ以上の制動表面とレールとの間の選択された距離を維持するために、昇降機かごに位置付けられる。
【0006】
本発明のこの態様または他の態様において、代替的に、少なくとも1つの制動システムが、4つの制動システムである。
【0007】
これらおよび他の長所および特徴は、図面とともに以下の説明を読めばより明らかになるであろう。
【0008】
本発明とみなされる主題事項は、本明細書の終わりのところで特許請求の範囲において特定的に指摘され、かつ区別可能に請求されている。本発明の前述の特徴および他の特徴ならびに長所は、以下の添付図面と共に次の詳細な説明を読めば明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】昇降機システムの実施形態の略図である。
図2】昇降機のための制動システムの実施形態の斜視図である。
図3】昇降機のための制動システムの実施形態の断面図である。
図4】昇降機のための制動システムの実施形態の別の断面図である。
図5】昇降機のための制動システムの別の実施形態の斜視図である。
図6】昇降機のための制動システムの更に別の実施形態の斜視図である。
図7】昇降機のための制動システムの更に別の実施形態の斜視図である。
図8a】昇降機のための制動システムの別の実施形態の斜視図である。
図8b】昇降機のための制動システムの更に別の実施形態の斜視図である。
図9】昇降機のための制動システムの別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、昇降機システム10の実施形態を示す。昇降機システム10は、マシン12として知られる、昇降機システムを駆動するための牽引滑車11bを有するモーター11aを含む。マシン12は、持ち上げる手段、例えば、昇降路18内の上方および/または下方の昇降機かご16の移動を促すために、1つ以上のプーリー上で、これ以降「ロープ」14と呼ばれる、持ち上げ手段、例えば1つ以上のベルトまたはロープを駆動する。1つ以上のレール20、一般的には少なくとも2つのレール20は、昇降路18内に位置付けられ、昇降機かご16は、レール20が昇降機かご16の移動を案内するように、昇降路18の中に位置決めされる。一般に22で示される制動システムは、昇降機かご16に固着される。制動システム22は、レール20と相互作用して、昇降機10の通常動作中に昇降機かご16を保持し、例えば、乗客を載せたりおよび/または降ろしたりするために床のところで停止する。更に、制動システム22の一部の実施形態は、従来の非常ブレーキ、すなわち安全ブレーキの機能を含み、例えば昇降機かご16が所定の速度を超過する非常時の場合に、昇降機かご16の移動を減速および/または停止させる。
【0011】
図2を参照すると、制動システム22の実施形態が示されている。制動システム22は、例えば、制動システム22の様々なコンポーネントが自身に固着されている1つ以上の支持体24を介して昇降機かご16に固着される。図2の実施形態では、各々の支持体24はU字形状であり、支持体24は、制動システム22の各々の端部に位置付けられている。一部の実施形態では、4つの制動システム22が昇降機かご16に固定され、2つの制動システム22が2つのレール20の各々のところに存在する。制動システム22は、レール20の各々の側部に位置付けられた当て板26を含む。当て板26は、ブレーキブラケット28に固着される。ブレーキパッド32が自身に取り付けられた制動板30は、各々の当て板26とレール20との間に位置付けられる。制動板30は、ブレーキパッド32が、摩擦によって昇降機かご16を減速、停止、または保持するためにレール20と係合するように、レール20に向かって連節可能となっている。
【0012】
図3を参照すると、制動板30およびブレーキパッド32は、複数のばね、例えば1つ以上の皿ばねスタック34によってレール20に向かって付勢される。各々のばねスタック34は、当て板26のばねポケット36の中に位置付けられ、一部の実施形態では、ばねスタック34のためのばねガイドとして機能するばねピン38の周りに配置される。代替的には、ポケット壁40は、ばねガイドとして機能し得る。1つ以上の電気コイル42は、当て板26の中に位置付けられる。励磁されると、電気コイル42は、磁場を生成し、ばねスタック34の付勢力を圧倒して、ブレーキパッド32をレール20から引き離し、これで昇降機かご16がレール20に沿って移動できるようにする。昇降機かご16を減速、停止、または保持することが所望されるとき、電気コイル42は消磁され、これによりばねスタック34が、ブレーキパッド32をレール20と接触することを促すことを許容する。昇降機かご12を減速、停止、または保持するための必要な制動力は、制動パッド32をレール20と接触させるばねスタック34のばね力と、レール20に対するブレーキパッド32の摩擦力とによって提供される。
【0013】
図4を参照すると、制動システム22は支持体24に固着されるが、横方向の「遊び」があって、これにより制動システム22は支持体24に対して横方向に移動することが可能である。これが、レール20の長さに沿ったレール位置のいかなる揺れまたは他のこのような変動にも制動システム22が追随することを許容する。一部の実施形態では、この遊びは、当て板26から支持体24を貫通する1つ以上の搭載ピン44を介して制動システム22を支持体24に搭載することによって達成される。搭載ピン44は、制動システム22の横方向の移動を許容するために、支持体24に滑動可能に位置付けられる。しかしながら、図4の搭載スキームは単なる例示であることを理解すべきである。
【0014】
図5〜8は、制動システム22に対する例示の代替搭載スキームを図示する。図5では、ブレーキブラケット28はブラケットタブ46を含み、搭載ピン44は、ブラケットタブ46を貫通して、支持体24の中に達している。図6は、支持体24がブレーキブラケット28のフランジ50のところで制動システム22に連結される実施形態を図示する。図7は、制動システム22の全長にわたって延長する1つの支持体24が利用される実施形態を図示する。図8の実施形態では、支持体24は、エラストマーなどのコンプライアントな材料から形成される。このコンプライアントな材料は、制動システム22の横方向の移動を許容する。
【0015】
図2を再度参照すると、制動システム22は、1つ以上のブレーキガイド48を含む。ブレーキガイド48は、低摩擦材料から形成され、レール20の各々の側部に位置付けられ、ブレーキパッド32が後退位置にあるとき、ブレーキガイド48がブレーキパッド32以前にレール20に接触するようにレール20に向かって延長し、制動システム22が作動されないときに、ブレーキパッド32とレール20との間の選択された距離を維持するために利用される。ブレーキガイド48は、レール20の位置変動に遭遇するときに、制動システム22の横方向移動を促すために、制動システム22に対して固定される。作動すると、制動板30およびブレーキパッド32は、当て板26およびガイド48に対して移動し、レール20に向かって移動する。図2に示すように、ブレーキガイド48は、当て板26に固定される、または代替的に、当て板26に一体化され得る。ブレーキガイド48の使用によって、ブレーキパッド32は、ブレーキパッド32が後退位置にあるときに、レール20により近接して位置付けられることが許容される。制動表面とレール20との間の選択された距離を維持することによって、制動システムは、レール20と係合するための制動板30の必要とされる走行距離を減少させることが可能である。レール20とブレーキパッド32との間の隙間を減少させることによって、ブレーキパッド32を後退させるために必要な力が軽減され、したがって、この機能のために必要とされる、コイル42などの作動装置のサイズが減少する。
【0016】
代替的には、ガイド48は、レール20の一方または双方の側部上のローラーであってもよい。ガイド48がレール20の一方の側部に位置付けられているだけである場合、制動システム22は、制動システム22が作動していない時に、ガイド48が通常はレール20と接触しているように、ばねまたは他のこのようなデバイスによって、付勢される。
【0017】
更に、図8に示すように、ブレーキガイド48は、代替的には、制動板30のガイド開口部から制動板30を貫通し得るが、制動板30は、ブレーキアセンブリ22の作動中は、ブレーキガイド48を通過する。
【0018】
ここで図9を参照すると、上述した両面制動システム22に加えて、制動システム22は、固定ブレーキパッド32がレール20の第1の側部にあり、可動制動板30およびブレーキパッド32がレール20の第2の側部に位置付けられている、単面であり得る。電気コイル42が消磁されるとき、可動制動板30およびブレーキパッド32は、レール20と接触するように促されて、更に、固定ブレーキパッド32をレール20と接触するように引く。
【0019】
本発明を、限られた数の実施形態のみに関連して詳述したが、本発明はこのような開示された実施形態に制限されないことが容易に理解されるべきである。むしろ、本発明は、今まで説明しなかったが、本発明の精神および範囲に整合した任意の数の変形、変更、置換、または均等の装置を組み込むように修正することが可能である。加えて、本発明の様々な実施形態を説明したが、本発明の態様は、説明された実施形態の一部しか含んでいないことを理解すべきである。したがって、本発明は、前述の説明によって制限されるものと見なすべきではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9